ダーク・ファンタジー小説
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- 暴食の正義
- 日時: 2021/03/25 18:28
- 名前: SAGA (ID: 4CQlOYn7)
- 参照: kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13015
「汝、何故力を求めん」
―言う必要はないと思うが。強いて言えば
俺なりの正義の為かな―
「汝の思う正義の形とは」
―形なんてないだろ?学校でもこれが正義とかあれが正義とかないだろ―
「汝、何故己の行いを正義と名乗る」
―みんなが正義の定義をあいまいにしてるから、だから俺が正義を創るんだ―
約2日間に1回更新します。新しい物語出します。
1
久しぶりに夢を見た。
俺が誰かを傷つけ、王様とかが座ってる玉座に座ってた夢だ。
俺は基本夢を見ない。見たとしてもそれが予知夢になるだけだ。
つまりこれが予知夢だとしたら、俺が方法を問わず王になる、ということだ。
怖くない、と言えば嘘になるが、やりたくないという訳ではない。むしろ王になりたいぐらいだ。
―王になるなら何をしようか…
と考えてると、どこからか女の声が聞こえた。
「うぅーん、おふぁよ~ユウくん」
「…」
いったい彼女はなんなんだ。
シャツ一枚でボタンも結構外れてるし、俺のことを容赦なく名前で呼んだ。
いやそもそもなんで俺の家にいるんだ?
「まさか、私のこと忘れてないよね?」
「…あ」
完全に思い出した。
嫌でも未だに信じられない。
こんな美しい人がアイツなんて…
「なあ、お前って本当に―」
そう言おうとしたら、彼女は俺の発言を遮り
「もう!それは言わない約束でしょ!」
と、何故か怒られてしまった。
そんなに彼女は俺に笑顔を浮かべ、こう言った。
「ユウくん、早く朝ご飯を食べよ!
神崎悠。それがおれの名前だ。家族はいない。いや、正確には、半年前にはいた。
母親は自殺し、弟は母に殺され、姉は通り魔に殺された。
父は海外へ行き、神崎の名を伏せあちらで結婚でもしているだろう。
そうだとしたら、きっと家族のことを忘れているだろう。
ではなぜ、俺が一人で(居候扱いの彼女も入れると二人)生活できているのか。
俺は昔から無欲だった。子供のようにあれがほしいとかこれがほしいなんてなかった。
せいぜい必要最低限の道具だけだった。それが理由でお金がかなりあった。
しかし、必ずしも限界はある。いつか俺はここに住めなくなるだろう。
そんなことを考えてると朝食(焼き鮭・白米・わかめの味噌汁)を食べていた彼女が
「おかわり!」
と元気な声を出してきた。
どうやら家に住めなくなるのが早まりそうだ。
彼女のことにも触れておこう。
ベル。それが彼女の名前だ。白髪に白い肌。赤い目に桜色の唇。そして素晴らしい美貌。
ここまでの美人は多分いない。しかし、その見た目を裏返す正体があるが、
俺も初めて知ったときは本気でビビったので今は考えないでおこう。
しかし、見た目の割にはよく食べよく喋る。まるで子供だ。
そんな彼女におかわりを渡すと「そういえばさぁ」と口を動かす。
「そろそろだよね?家の件と学校の件」
「学校の件は忘れてなかったが、家の件はすっかり忘れてたよ」
「えぇー!住む場所なくなるんだよ?ある意味一番重要じゃん!」
「じゃあ食う量減らせ。食費減らせばどうにかなんだろ」
「そ、それは嫌だ…」
「ま、学校はどうせ明日には済ませられるだろ」
と、俺は味噌汁を飲み干す。
―そうだ。明日で全てが報われるんだ。
2
朝ご飯を食べ終え、外出の準備をする。
春にしては寒い方だが、長袖を着れば何とかなるはずだ。
どうやらベルは「女の子」みたいだ。
俺よりも見た目が気になるらしい。俺はそこまで気にしないが、一応鏡は見ておくタイプだ。
「…」
鏡は嫌いだ。灰色に近い白い髪、血のように濃い赤い目。そして病気かのような白い肌。
俺はこの姿が嫌いだ。世間一般では美少年とか言われる姿かもしれない。でも俺は嫌だ。
この忌々しい姿のせいで俺は最悪な目にあったんだ。
「…馬鹿馬鹿しい」
そうだ。全て明日で終わるんだ。
そして俺なりの正義が下されるんだ。
そう決意し、彼女にこう告げる。
「行こうか。最後の姿を見に」
東京都は日本の中心地、つまり、ここが壊されれば日本の動きは止まると考えている。
今日も今日とて、絶望や嫉妬をはじめとした「負の感情」が大衆を包んでいる。
目が死んでいたり、スマホに向かって愚痴を呟いていたり、友達同士で愛想笑い。
本当に「人間」とは何なのだろうか。
もし神が種をまいて生まれたなら、その神が間違っている。
全てにおいて原初――つまりオリジナルがある。人間は猿から長い年月を重ねて進化し、
今の形がある。しかし、何故今のような醜い者となってしまったのか。
俺は3つの説を考えている。
1つ目はこの世界が創られた世界である説。
俺たちは機械で創られた世界にいるAIではないかと思う。
この世界の外側にAIの思考の元となった人間がいて、何らかの実験をしているはずだ。
2つ目は神によって意図的に歪みが発生した説。
完全なものではなく不完全なものとし、感情を発生させ、戦争などの行いを起こさせるようにしたのではないだろうか。
3つ目はそれ以外の第三者によるもの。
この世界が外のものによって作られてもなく、神によって生まれたわけでもないが、
この世界の誰かが自己的に歪んだ意思を持ち、他の人に受け継がれたという説だ。
当然、全ての説は否定された。唯一3つ目の説は可能性があるとされたが、人間様は欲を満たさなきゃ生きてけない。欲を持つのは当然だ――と言われてしまった。
確かに欲を満たすために人間は今までの愚行を行ってきた。
食欲、睡眠欲。支配欲。欲を挙げてたらキリがない。
「…本当に、何なんだろう」
そう思わず呟くと、俺の隣を歩いていたベルが、
「もしかして、また考えてたの?」
「…ああ」
「ユウくんが考える必要は全然ないんだよ?」
「でも…」
そんな子供みたいな言い訳を言うと彼女は口を尖らせ、
「君はいつも考えすぎ!もう少し楽にしていようよ!」
「楽に?」
「そう、つらいことを忘れて、今を楽しもうよ」
――今を楽しむ…か。
「…それを楽しむとは言わないだろ」
そう苦笑交じりに答えると、俺と彼女は少し話しながらも目的地にたどり着いた。
市立月影学園。かなりの名門校である。
俗に言う天才が集まるところだ。
では何故俺がここに来たのか。
俺はこの学校の元生徒だった。退学処分を受け今は無職になっている。
自分でいうのもなんだが、成績はかなり良かったと思う。授業も真面目に受けてたし、
提出物も全て出していた。なんで退学になったのか。
簡単に言えば、罠にはめられたからだ。
俺は人間より動物を優先する。要は人より猫って感じだ。
野良猫に餌をあげてる様子が勝手にSNSに投稿され、何故か大炎上した。
その結果として月影学園の生徒だとわかり、先生方は俺が悪いとしたらしい。
実際はクラスのいわゆる「不真面目組」に撮られていたが、
通りかかった人が撮ったと教え込まれていた。
ろくに調べずに俺と決めつけられ、しまいには退学処分となって、今に至る。
退学が原因で母は自殺し、弟は母に殺され、父は家を去っていった。
姉だけは俺を支えてくれていたが、通り魔に殺された。
誰が、何故、どうやって、俺の家族を引き裂いたのか。
誰が、何故、どうやって、俺の運命を虚無に変えたのか。
何百、何千、何万とそう自問し、考えた自答はこれだけだった。
―俺が殺した。俺が引き裂いた。俺が虚無へと変えた。
「…神崎君?」
そんな声が俺を腐った世界へと呼び戻した。
「…美晴さん、俺なんかに話しかけていいのか?」
そう答えると、彼女は、
「…うん、授業は終わったし、みんな部活中だから」
と控えめに言った。
「…あっそ。」
―俺って本当に不愛想だな。
「…最近、どう?」
「あんたに言う義理はない」
「…ちゃんと食べてる?なんか前より瘦せてるけど…」
「それも言う義理はない」
「…じゃあ、あの人達のこと、恨んでいる?」
「……君のことも恨んでるけどな」
八木橋美晴。比較的おとなしいが、成績学年トップ10の中に入る天才。
ショートヘアできっちり制服を正しく着ている。真面目という言葉が良く似合うと思う。
だが、俺は彼女が嫌いだ。
「……何であんなことした」
「…」