ダーク・ファンタジー小説

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移星世界#
日時: 2021/05/13 18:57
名前: 彼方 (ID: .4xJpncQ)

 第一話
 ピロン。
『ねえねえ今からどっか遊びに行かない?』
LINEの通知。いやいやながらもスマホを見る。予想通り、送り主は腐れ縁の瑛だった。提案するなら行き先考えてから言えよ、というツッコミが瑛には効かないことはすでに知っている。
『いいね。どこ行く?』
 日向が返信する。面倒くさいが俺も仕方なく会話に加わる。
『○○公園とか?美術の課題あったじゃん、絵描こうよ』
 俺の提案に、日向が乗ってくる。
『OK。じゃあ二時半にアイスと紙と筆記用具持って集合ねー』
『わかったー』
『えー、なんで宿題の話になるの?』
 宿題嫌いの瑛が文句を言う。でもアイスという瑛にとっては魅力的な言葉に吸い寄せられたのか、
『じゃあガリガリ君持っていくねー』
 と返信してきた。俺もアイス持って行かなきゃな。台所まで行って冷凍庫をのぞいてみたが、アイスはなかった。今の時刻は二時ピッタリ。○○公園は結構遠いし、さらにアイスも買っていかなきゃいけないから、そろそろ出ようかな。スケッチブックと筆記用具、それと二百円をもってと俺は家を出た。

 コンビニは○○公園のすぐそこにある。涼しい店内に入った俺はアイス売り場に行き、ガリガリ君ソーダを手に取った。そのままレジに突き進む。会計を終わらせて、袋を開封した。見慣れた鮮やかな水色。かぶりつこうとしたら、「おい」と誰かに肩を叩かれた。
「勝手に食べんな。俺たち着いたばっかりだから」
「ていうか悠もガリガリ君なの?悠はハーゲンダッツかと思ってたのに」
「悠はそんな金持ちじゃないんじゃない?」
「そんなことどうでもいい。さっさと食べちゃおうよ。もうちょっとで時間だよ?」
 俺が腕時計を指さした。二人は納得した表情でうなずいて、それぞれのアイスを買った。”もうちょっとで時間だよ”という俺の言葉の説明は、またあとで。
「ありがとうございましたー」
 外は真夏の太陽のせいで、気温がものすごくぐったりとしている。俺たちは外に出るのもおっくうになって、コンビニのフードコートでアイスを食べることにした。
「そろそろじゃない?」
 アイスも三分の二ほど食べ終わり、時計に目をやった瑛が言った。現在二時三十七分。あることが始まるのは二時四十分。
 「そろそろだ」
 俺たちは急いでアイスをかきこんだ。とうとうあれが始まった。
 ウイイイイイイイイイイイーーーーーーン!!!!!
「移星警報、移星警報。三分後に移星が始まります。移星準備を開始してください。繰り返します。移星警報...」
 街中に、日本中に、世界中に、この警報が鳴り響く。俺はさらにスピードを上げてアイスをかきこんだ。頭がキンとした。
「残り二分...」
 俺たちはゴミ箱にアイスのごみを捨てた。店員さんも急いでいるのを見てちょっと笑った。
「残り一分...」
 俺たちは荷物をしっかりと手に持って、いつでも移星できるようにした。帰って来た時には、もうこのコンビニにはいないのだ。
「十、九、八、七...」
 俺は目を閉じた。
「四、三、二、一」
 世界が真っ白になった。

 


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