ダーク・ファンタジー小説
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- 君だけを見つめた夏物語
- 日時: 2021/07/30 09:10
- 名前: 優夏 (ID: .H8Y6m32)
第1話『ミステリー部と日暮寺墓場』
…この世には、不思議なことや不可解なことが沢山ある…と、思う。そんな出来事を私はこれから調査していこうと思っている。…この話は、私、霊乃美恵が様々な案件を仲間たちと共に調査していく物語です。
キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…
放課後のチャイムが鳴る。
霊乃「さて、そろそろ活動時間ね。私のするべきことをしなくちゃ。」
私は今、部活でとある案件の調査をしている。
といっても、部員は私だけ。勧誘しても誰も入ってくれない。…何故だろうか。
ちなみに部活名は「ミステリー部」
世の中のミステリーを調査し、あわよくばそれを解決する。それが私が目指すミステリー部だ。
…しかし、部員が私だけでは思うように活動が出来ない。どうしたものか。
私がそんなことを考えていると、
?「そんなところで何をしてるの?」
突然背後から声を掛けられた。
私がその声に振り向くと、
そこにいたのは…
霊乃「あら心音じゃない!」
そう、そこにいたのは霊川心音。私の唯一の友達で、吹奏楽部に入っている子だ。
…実は彼女にはとある秘密があるらしいのだが、それは明かされていない。
心音「何してるの?美恵ちゃん。」
心音は首を傾げて聞いてくる。
霊乃「部活中よ、今からある場所に行くの。」
私は彼女にそう教えてあげた。
心音「ある場所?」
心音は何処に行くのか気になっている様子だ。
霊乃「…ねぇ、良ければ心音も一緒に来ない?」
私は彼女にそう提案する。
心音「えっ!?私も、一緒に…?」
心音は驚いた様な顔をしている。
霊乃「えぇ。だって心音、凄く興味ありげな顔をしているんだもの。ねぇ、良いでしょう?」
私はそう言って彼女の制服の裾を引っ張る。
心音「う、うーん…。分かった、行くよ。」
心音は少し悩ましげな表情をしたが、すぐに頷くとそう言った。
霊乃「やった!じゃあ早く行きましょ♪」
私は彼女にそう声を掛けるとさっさと玄関へ向かった。
心音「あっ、待ってよ美恵ちゃん!何処に行くの~!?」
心音は慌てて私を追いかけながら聞いてくる。
霊乃「着いてからのお楽しみ~!」
そんな彼女に私はそう答えた。
心音「えぇ~!?」
【数分後】
…暫くして、私達は学校近くに建てられたお寺にやって来た。そしてお寺の住職に事情を話してお墓に入らせてもらう。
心音「ね、ねぇ美恵ちゃん。もしかして今日の活動場所って…。」
心音が声を震わせながら私を見る。
霊乃「えぇ、この日暮寺にある墓地よ。」
私はニッコリと笑ってそう言う。
心音「あぁやっぱり…!」
心音はその場にしゃがみ込んで叫ぶ。
霊乃「あら?心音って幽霊とかダメだったかしら。」
私はそう言って首を傾げる。
心音「だ、ダメじゃないけど…。」
心音はゆっくり立ち上がりながらそう呟く。
霊乃「なら良いじゃない。」
私はそう言うと辺りを見回す。
心音「うぅ…。ね、ねぇ、ここで何するの?」
心音はなるべく私の傍に寄りながらそう問い掛けてくる。
霊乃「今日は、とある噂を確かめようと思って。」
私はそう言うと墓場内を歩き出す。
心音「噂って…?」
心音は不安そうな表情をしつつ私の後ろを歩く。
霊乃「仮にA子と呼びましょう。A子はある日友達と肝試しにこのお墓にやって来ました。そして友達とこのお墓内を歩き回ります。…しかし、何も起こりませんでした。」
霊乃「だから、期待はずれだと言って皆で帰ろうとしました。…しかし、A子はふと誰かの視線を感じて振り返りました。するとそこには…」
A子『居たのよ…黒い髪を長く垂らした白い顔の女の子が…!それで私をじっ、と見てたの!』
霊乃「A子は恐怖で叫び一人慌てて逃げ帰ったそうよ。…でも、他の人達には見えなかったんですって。」
私は墓場内を歩き続けながらそう解説した。
心音「…。」
心音は私が話し終わった後も黙っていた。
…どうしたのだろうか。
霊乃「どうしたの?心音。」
私は首を傾げて問い掛ける。
心音「美恵ちゃん…黒い髪を長く垂らした白い顔の女の子、なんだよね…?」
すると心音はそんなことを聞いてきた。
霊乃「え?えぇ、そうよ。」
私はきょとん、としたがそう言って頷いた。
心音「じゃあ…あれがそう、なのかな…。」
心音は震えた声でそう言うと震える指で墓場内の一ヶ所を指差した。
霊乃「え…?」
私は驚いて心音が指差した方を見る。
…が、そこには何もいなかった。
霊乃「ちょっと、何もいないじゃない。脅かさないでよ、全く…。」
私はそう言うと腕を組む。
心音「嘘…どうして見えないの!?そこにいるのに!」
心音は信じられない、という顔で私を見る。
霊乃「心音、落ち着いて?きっと私の話を聞いて恐怖のあまり幻覚が見えてるのよ。深呼吸をして落ち着きましょう。」
私は彼女にそう言うと微笑んだ。
すると心音はゆっくりと目を閉じ、深呼吸をする。
それがまるで何かの儀式の様に見えたのは気のせいではないだろう。
そして心音は突然カッと目を見開くと
心音「大丈夫、おいで?怖くないよ。」
先程心音が指を指していた場所に話し掛け始めた。
霊乃「こ、心音…?」
私は心音の様子に動揺していた。
…しかし、先程のアレはもしかしたら彼女の秘密に関係しているのでは?そう思った。
心音「なにか、私達に伝えたいことがあるの?」
心音は優しい口調で話し掛けている。
と、
?「私、麗歌。私、遊んでくれる子。探してるの…。あなたは、遊んで…くれる?」
突然女の子の可愛らしい声が聞こえてきた。
霊乃「えっ、声が…聞こえる!?」
私は驚いた。私は霊能力なんて一つも持ち合わせていなかったから。まさか霊の声が聞こえるとは…。
心音「麗歌ちゃん、とっても可愛い名前だね!私は心音。麗歌ちゃんは遊び相手が欲しいんだね?だったら私達が遊んであげる!」
心音は笑顔でそう言う。
麗歌「本当…?遊んで、くれるの…?」
麗歌は少し期待する様な声になる。
心音「うん!ねっ、良いでしょ?美恵ちゃん。」
心音はそう言って私を見る。
霊乃「え?えぇ。」
私は少し驚いたがすぐに頷いた。
麗歌「…ありがとう。」
麗歌の嬉しそうな声が聞こえた。
心音「じゃあ鬼ごっこしよ!私が鬼をするから二人は逃げてね?範囲はこの墓場!墓場から出たら負け。」
心音はそう提案してくる。
霊乃「分かったわ!」
私は頷く。
麗歌「分かった…。」
麗歌もそう返事をした。
心音「じゃあ私10秒数えるから今の内に逃げてね!」
心音はそう言うと数を数え始める。
霊乃「よし、絶対に逃げきってみせるわ…!」
私はワクワクとした気分になりながらそう呟いた。
【数時間後】
それから私達は日が沈むまで楽しく遊んだ。
鬼ごっこ、隠れんぼ、だるまさんが転んだ、歌も歌った。
すると、
麗歌「…お姉ちゃん達、ありがとう。凄く、楽しかった…。」
麗歌のそんな声が聞こえてきた。
心音「私もすっごく楽しかったよ!」
心音はそう言って笑う。
霊乃「そうね、凄く楽しかったわ。久々にこんなに遊んだもの。」
私も笑顔でそう言う。
麗歌「私…誰かと遊んだの、初めて…。」
麗歌はそう呟く。
心音「そうなの…?」
心音は麗歌を見る。
麗歌「私、友達…いないから。いつも、一人ぼっち。寂しかった、誰かと…遊びたかった。」
麗歌は生前のことを話し始めた。
…きっとそれが未練で成仏出来ずにいたのだろう。
心音「…じゃあ、私達は今日からお友達だね!」
心音がふとそう言う。
麗歌「…え?」
麗歌が驚いた様な声を出す。
心音「だって、私達一緒に仲良く遊んだし。ね?」
心音はニッコリと笑って麗歌を見る。
霊乃「あら、良かったわね。お友達が出来て。」
私は祝福の言葉を掛けた。
麗歌「私に、友達が…。」
麗歌は信じられない、という様な声を出している。
麗歌「…ありがとう。」
麗歌の心の底から嬉しそうな声が聞こえた。
…しかしそれきり声が聞こえなくなってしまった。
心音「…。」
不意に心音が悲しそうな顔をする。
霊乃「…?ねぇ、麗歌の声が聞こえないんだけどどうしたの?」
私は心音に声を掛ける。
心音「…成仏したみたい、麗歌ちゃん。」
ぽつり、心音は言う。
霊乃「!そう…。」
私は泣きたくなるのをぐっと堪えてそう言う。
心音「折角友達になれたのに、」
心音はショックを受けている様子だった。
霊乃「…そうね、残念だわ。」
私はうつむく。
…そうして暫く二人で無言でいた後、
心音「あっ、もう真っ暗!そろそろ…帰ろっか。」
ふと心音がそう言う。
霊乃「そうね、そろそろ帰りましょうか。」
私は頷いて、二人で墓場を後にした…。
【第1話、終わり】
- Re: 君だけを見つめた夏物語 ( No.1 )
- 日時: 2021/08/01 20:59
- 名前: 優夏 (ID: gT4Hbmrj)
第2話『ミステリー部と幽霊屋敷の主』
霊乃「はぁ…暇だわ。」
今私は、部室の中で暇で退屈な時間を過ごしている。
…この部室は、かつてのミステリー部の人達が残してくれた大切な場所だ。しかし、このまま部員が私だけの状況が続くと部室が取り消されてしまうらしい。
…それだけはなんとかしなくてはならない。
心音「そうだねぇ…。ねぇ、他に部活が出来そうな場所って無いの?」
ふとそう言うのは吹奏楽部の活動が終わり部室に遊びに来てくれた心音。
霊乃「う~ん…昨日の墓地にはもうそういう噂話はないし、他に幽霊が出そうな場所なんて…」
私は腕を組んで考えつつそう言う。
が、ふと頭に閃光が走る。
霊乃「あ。そうだわ!あそこ、あそこがあるじゃない!」
私は大きな声でそう言うと立ち上がる。
心音「わっ!?びっくりした、急に大声出してどうしたの?」
心音は驚いた顔で私を見る。
霊乃「ふふ、思い出したわ。…この町にはね、とある屋敷が存在するの。」
私は軽く口角を上げながらそう言う。
心音「屋敷?」
心音は首を傾げている。
霊乃「そう、その名も…」
ここで私は一度言葉を切る。
心音「…ごくり。」
心音は生唾を飲み込む。
霊乃「幽霊屋敷~!」
私は脅かす様な口調で言う。
心音「えぇ!?ゆ、幽霊屋敷って、あのお化けだらけのお屋敷のこと…?」
心音は恐る恐る聞いてくる。
霊乃「えぇそうよ!幽霊屋敷、お化けがうじゃうじゃ出てスリル満天!なんて楽しそうな所なのかしら♪」
私は目をキラキラと輝かせてそう言う。
心音「…はぁ、美恵ちゃんは怖い物が好きだね。」
心音はため息をつきながらそう言った。
霊乃「ふふ、当然でしょう?だってこの世には不思議なことや不可解なことが溢れてる!それを調査したり解決出来るなんてめったにないじゃない!」
私はウキウキとした気分でそう述べる。
それから、
霊乃「だから…ね?心音も来てちょうだいよ!今夜の幽霊屋敷探検♪」
私はニッコリと笑って心音を誘った。
心音「えっ、今夜幽霊屋敷探検するの!?」
心音は驚いた顔でそう言う。
霊乃「えぇ、思い立ったが吉日よ。」
私はこくり、と頷く。
心音「う、う~ん…。」
心音は悩ましげな表情をしている。
霊乃「心音…ダメ?」
私は心音におねだりをする。
心音「…分かった、仕方ないから私も行くよ。」
心音は肩を竦めつつ了承してくれた。
霊乃「ほんとに!?ありがとう心音!」
私は心底嬉しいという顔でお礼を言った。
心音「ふふ、どういたしまして。じゃあまた夜にね。」
心音は笑顔でそう言うと去っていった。
霊乃「えぇ。…今夜8時に幽霊屋敷集合よ~!」
私は心音の後ろ姿を見送りながらそう言ったのだった…。
【その日の夜】
心音「うぅ~…寒いし真っ暗だよ~!」
と、心音は身震いしながら言う。
霊乃「仕方ないでしょ?今年の夏は夜がとても寒いの…!」
と、同じく身震いしながら私は言う。
…そう、今年の夏は何故か夜だけ異常に寒いのだ。
昼間は例年通り暑いのに、夜間だけ何故か寒い。
これも所謂ミステリー、いつか調査してやりたいと思っている。
心音「それはそうと…此処が問題の幽霊屋敷?」
心音が目の前の建物を見ながら言う。
霊乃「…えぇ、なんか聞いてた話とちょっと違う気もするけど、此処よ。」
私はそう言うと腕を組む。
心音「えっと、美恵ちゃんはどんな話を聞いてたんだっけ?」
心音は首を傾げる。
霊乃「確か…屋敷の回りにはお化けがうじゃうじゃいて、お化けに見付かると襲いかかってくるって。」
私はそう言いながらもう一度目の前の屋敷を確認する。
そして言った。
霊乃「全っ然お化けなんていないじゃない!」
そう、屋敷の回りにはお化けなんて一体もいなかったのだ。…かと言って屋敷には人気もないし明かりもついていない。
此処が廃屋敷なんだとしたら幽霊の一体や二体いても可笑しくはないのだが。
心音「あっ、もしかしたらお屋敷の中にお化けがいるのかもしれないよ!?」
心音は私をフォローしたいのかそんなことを言ってくる。
霊乃「…本当かしら。」
しかし私は疑いの目を屋敷に向ける。
と、
?1『おいで~…』
?2『おいで~…』
?3『入っておいで~…』
なんと、気味の悪い声が聞こえてきた。
霊乃.心音「!?」
私達はびっくりして屋敷を見る。
心音「も、もしかしてお化けの声!?」
心音が動揺しながら言う。
霊乃「ま、まさか!お化けの姿も見えないのに!」
私は慌てつつそう言う。
心音「見えないだけでそこにいるかもしれないでしょ!?」
心音に正論を言われた私は、
霊乃「っ、じゃあ中に入って確かめましょうよ!本当にお化けがいるのかをね…!」
と、大きな声で言った。
心音「えっ、入るの!?…わ、分かった。」
心音は少し驚いた様だったがすぐに頷いた。
霊乃「分かったならそんな所に突っ立ってないで!早く入って!」
私は心音の後ろに回り込むとそう言って心音の背中をグイグイ押して進めた。
心音「ちょっ、押さないでよ!ちゃ、ちゃんと入るから!自分で進めるからぁ!」
心音は慌てて抵抗したが私の力には勝てず、そのまま屋敷の中へと入っていった。
?「…。」
そんな二人の様子を背後から見守る謎の人影が一つ。
しかしそれを知らない二人は既に屋敷の中…。
霊乃「うわ、真っ暗でなにも見えないわ。…困ったわね。」
玄関から入ってすぐ、私は屋敷内の暗さに足を止めてそう言った。
心音「あ、待って!こんな時の為に懐中電灯を持ってきたの。」
と、心音は首から提げていたカバンから懐中電灯を取り出した。
霊乃「あら、心音ったら気が利くわね!早速つけてちょうだい♪」
私は心音を見てそう言う。
心音「オッケー、じゃあつけてみるね!」
心音はそう言って懐中電灯のスイッチを入れる。
と、懐中電灯は勢い良く光だした。
霊乃「きゃっ、眩しい!こんな光を向けられたらたまったもんじゃないわね…。」
私はその光の眩しさに慌ててそっぽを向いた。
心音「ふふ、じゃあ行こっか!」
心音は笑顔で言うと歩き出す。
霊乃「え、えぇ。そうね、先に進みましょう。」
私はそれに同意して心音の後ろを歩き始めた。
…暫く屋敷内の廊下を歩いていると、階段があったので私達はそれを上がって二階を進んでいた。
心音「うぅ…それにしても空気がひんやりしてて寒いね。」
ふと心音がそんなことを言って腕をさする。
霊乃「そうかしら?どっちかと言えばさっき外にいた時の方が寒かった気がするわ。」
私はきっぱりとそう言う。
心音「そ、そうかなぁ…?」
心音は首を傾げる。
霊乃「そうよ。…それか、心音が寒がりなのかもね。」
私は冗談交じりにそう言ってみせる。
心音「なっ…!わ、私は寒がりじゃないもん!」
心音は怒って此方を振り向きながらそう言ってきた。
霊乃「うふふ、冗談よ!ほら、早く先に進みましょう?」
私はクスクスと笑いながらそう言った。
心音「んもう。…って、あれ?なんか、変な気配を感じない?」
突然、心音がそんなことを言ってくる。
霊乃「え?…私は特に何も感じないけど。」
私は心音に言われて辺りを見回すが特に感じられる気配はない。
心音「…でも、私は感じるの。」
心音はそう言って私を見る。
霊乃「じゃあ、確認してみれば?心音の力で。」
私がそう口にすると
心音「えっ!?ど、どうして私の力のことを…。話したっけ?」
心音はびっくりした顔をする。
霊乃「あのねぇ、私を馬鹿にしないでもらえるかしら?昨日のを見れば分かるわよ。」
私はむっとした顔で腕を組むとそう言う。
…そう、私は昨日の心音の儀式の様な深呼吸を見て勘づいた。心音の秘密はこれか、と。
だがまさかそんな力を隠し持っていたとは、驚きだ。
心音「そう、だったんだ。…じゃあ、もう隠す必要もないし、使わせてもらうね。」
心音はそう言うと、ゆっくりと目を閉じる。
そして深呼吸をして辺りの気配に集中する。
それからカッと目を見開くと
心音「…どうやらこの気配は、お化けじゃないみたい。」
そう心音は真剣な表情で呟いた。
霊乃「えっ?じゃあ、一体なんの…」
私が驚きながらそこまで言った時、
?「ふふっ、どうやらバレてしまったみたいだね。」
ふと背後から男の声が聞こえてきた。
霊乃.心音「!?」
私達はびっくりして後ろを振り返る。
と、そこにいたのは…
?「…ふふ、驚かせてしまったかな?でもまさか、この僕の気配に気が付くとは、どうやら君の力は本物の様だね。心音。」
黒髪で右目がすっぽり隠れている幼い見た目の男だった。
そして男はニッコリと笑って心音を見詰めている。
心音「え、あ、ありがとうございます…?」
心音は戸惑いつつお礼を述べた。
霊乃「ねぇ、貴方は誰!?何者なの?どうして私達についてきたの!?」
私は彼を質問責めにする。
すると、
?「まぁまぁ、落ち着いてよ。まだまだ夜は始まったばかりなんだから、ゆっくり楽しもうじゃないか。」
男はにんまりとした表情で私を見る。
それから、
忍「そうだね、一つずつ質問に答えていこうか。…先ず、僕の名前は忍とでも言っておこうかな。」
忍「それから、僕はこの屋敷の主であり、ここに住む住民達の…ボス。」
忍「で、最後に何故君達についてきたのかは、面白そうだったからさ。最近一人ぼっちで退屈してたから、人の家に入っていく人達を観察するのも面白いかと思って。」
忍は私の質問に丁寧に答えてくれた。
心音「あっ、そっか。私達不法侵入…!ご、ごめんなさい!」
心音ははっと気が付いて忍に頭を下げる。
忍「ふふ、気にしなくていいよ。慣れているからね。…君達以外にも此処に足を踏み入れる人は少なくないんだ。」
忍はそう言って目を細める。
霊乃「ふぅん…。ねぇ、まだ質問があるんだけどいいかしら?」
私は腕を組みつつそう言う。
忍「勿論良いよ、好きなだけ質問してごらん?なんでも答えてあげるから。」
忍はそう言って微笑む。
霊乃「じゃあ遠慮なく。あんた幼そうだけどどうして主なの?親は?此処に住む奴らって誰!?ボスってどういうこと!?」
私は残る疑問を全てぶつけた。
忍「僕の両親は僕が赤ん坊の時にどちらも他界してしまってねぇ。だから今は僕が主なんだ。」
忍「それから此処に住む子達なら君達も知っていると思うよ。っていうか知ってるから来たんでしょ?」
忍「そして僕はその子達を自由自在に扱うことが出来る。だからボスなんだ。…いわば大切な仲間さ。」
忍はまたも質問に丁寧に答えてくれた。
霊乃「私達が此処に住む奴らを知っている…?」
私は首を傾げる。
心音「も、もしかして…お化け?」
心音がぽつり、と呟く。
忍「おっ、心音正解!良く分かったねぇ。」
忍はニヤリと笑ってそう言う。
心音「やっぱり…!ってことは幽霊屋敷の噂は本当だったんだ。」
心音はそう言う。
忍「へぇ…そんな噂があったんだ。嬉しいな、僕の家が有名になっちゃった♪」
忍は嬉しそうに笑った。
霊乃「…取り敢えず、私からの質問は以上よ。心音は何か質問ある?」
私はため息をつきながら心音に聞く。
心音「えっ?え~と、じゃあ…なんで私の名前を知ってるの?」
心音は少し考える素振りをしつつそう言った。
忍「あぁ、それはね?君達の後ろをついて歩いてたから会話もバッチリ聞いてたんだ!だからだよ。」
忍はニッコリと笑ってそう言う。
心音「そ、そうだったんだ…。」
心音は納得した様に頷いた。
霊乃「ふ~ん、じゃあ私の名前も分かるの?」
私は腕を組みつつそう聞く。
忍「勿論分かるよ!美恵ちゃんでしょ?」
忍は私を見てそう言う。
霊乃「なっ…!ち、ちゃん付けしないで!」
私は顔を赤くして言う。
忍「え、なんで?僕は心音の真似して言っただけなのに。」
忍は首を傾げている。
霊乃「心音は良いけどあんたはダメ!」
私はそう言って怒る。
心音「それはちょっと理不尽だよ美恵ちゃん…。」
心音は私にそう言う。
霊乃「そんなことない!」
私はそう反論した。
忍「あははっ、二人は面白いね!僕二人のこと気に入ったよ。」
忍はクスクスと笑ってそう言う。
心音「そ、そう?面白いかな。」
心音は頬を掻いてそう言い、
霊乃「馬鹿にしてるでしょ。」
私はむっとした表情になる。
忍「あははっ♪」
…暫くそうして話した後、
忍「よ~し、じゃあ今度は僕が君達のことについて聞くね!」
忍が唐突にそんなことを言ってきた。
霊乃「え、なんでよ。」
私はきょとん、とした顔をする。
忍「だって、僕は君達の質問に沢山答えたんだから。僕だって君達に質問する権利があると思わない?じゃないとフェアじゃないよ。」
忍はそう言うと私達を見る。
心音「わ、分かった!私達が答えれることならなんでも聞いて!」
心音はそう言って忍を見た。
忍「ありがとう心音。…じゃあ先ず一つ目、君達が通ってる学校の名前は?」
忍はにこりと笑うとそう聞いてきた。
霊乃「学校名は『三途川学園』よ。」
私はそれに答える。
忍「『三途川学園』か、オッケー。じゃあ二人は何年生?」
忍は更に聞いてくる。
霊乃「やけに学校のことを聞きたがるのね。」
私は忍を見てそう言う。
忍「そうかな?そんなことないよ。」
忍はニッコリと笑ってそう言った。
霊乃「…なら良いけど。」
私は少し忍に疑う様な目を向けつつそう言った。
心音「えっと、私達は二年生でクラスは二人とも四組だよ!」
心音は学年とクラスを答えた。
霊乃「えっ、クラスまで教えなくて良いじゃない!」
私は目を丸くして心音を見る。
心音「良いじゃない、クラスくらい。」
心音はふっと笑ってそう言った。
忍「ふ~ん、二年四組か。教えてくれてありがと♪」
と、忍はお礼を言った。
心音「ううん、良いよ。」
心音は微笑んでそう言う。
忍「…じゃあ最後に、二人の入ってる部活は?」
忍は首を傾げて聞いてくる。
霊乃「私はミステリー部という部活に所属しているわ。」
私は腕を組んでそう言う。
忍「へぇ~、部員数は?」
忍は更に聞いてくる。
霊乃「え?えっと…ひ、一人…だけど。」
私は小声で答える。
忍「えっ、一人!?ってことは、心音はミステリー部じゃないの?」
すると忍は目を丸くして心音を見る。
心音「うん、私は吹奏楽部なんだ。」
心音はこくり、と頷いてそう答える。
忍「え、じゃあなんで美恵ちゃんに付き合ってるの?」
忍は純粋な疑問をぶつけてくる。
心音「それは…私がいつも美恵ちゃんにお世話になってるから。だから私も美恵ちゃんの役に立ちたくて付き合ってるんだ!」
心音はそう言うと微笑んだ。
霊乃「心音…!」
私は心音の言葉に感動した。
忍「ふ~ん、そっか。…二人は仲良しなんだね。」
忍は私達を見てそう言う。
心音「えへへ、そうかな?」
心音は少し照れた様に笑う。
霊乃「まぁ、他の子達よりは仲良いわよ。」
私はそっぽを向きつつそう言った。
すると、
忍「…双方の質問は終わった。これより、帰りの儀式を始める。」
突然忍がそう言い出した。
霊乃.心音「!?」
私達は忍の変わりように驚いていた。
すると辺りの空気が急に凍える程冷たくなり、何処からともなくお化け達が現れ始めた。
霊乃「急になんなの!?それに、お化けが…見える?」
私は混乱していた。
心音「し、忍くん!どういうこと!?説明してよ!」
心音も動揺しながら忍を見る。
忍「…帰りの儀式のルールは単純。この家の『裏口』から外へ出るだけ。他の出入口は全て閉鎖されている。頑張ってこの屋敷から脱出したまえ。」
しかし忍はこちらの話を聞いてる様で聞いていない。
自分の言いたいことをペラペラと喋っている。
しかも口調が違う。
霊乃「ちょっと、忍はどうしたの…!?」
私は心音に聞く。
心音「わ、分かんない。」
心音はオロオロしている。
霊乃「…兎に角此処から脱出すれば良いんでしょ!?裏口でもなんでも見付けてとっとと出てやるわよ!」
私はそう意気込むとさっさと階段を下りた。
心音「あっ、美恵ちゃん待ってよ!」
心音は慌てて私を追いかけようとする。
すると、
忍「裏口の…お化け、気を付け、ろ…。」
忍がそんなことを途切れ途切れの声で伝えてきた。
心音「…え?」
心音はその言葉に首を傾げる。
が、私が既に下にいるのを思い出しさっさと階段を下りた。
【一階】
心音「えっと、この一階の何処かに裏口があるんだよね?」
一階に降りてきた心音が私に聞いてくる。
霊乃「え、えぇ。その筈よ。」
私はこくり、と頷く。
心音「よし、じゃあ取り敢えず探してみよう…!」
心音はそう言って歩き出した。
すると…
ドンッ…!
何かにぶつかった音がした。
心音「イタタタ…。なに?」
心音は思わず尻餅をついてしまう。
霊乃「ちょっと大丈夫!?」
私は慌てて心音に駆け寄る。
心音「う、うん…。大丈夫。」
心音はそう言いながら立ち上がり自分がぶつかったものを見る。
と、
霊乃「こ、これは…。」
心音「扉?」
そう、そこにはなんと大きな扉があったのだ。
霊乃「ねぇ、入ってみない?もしかしたらこれが裏口かもしれないわ!」
私はそう言って心音を見る。
心音「…。」
しかし心音は不安そうな顔をするだけだった。
霊乃「心音?どうしたのよ。」
私は首を傾げる。
心音「あ、何でもないよ!」
心音は慌てて首を横に振った。
霊乃「じゃあ開けるわよ!」
私はそう言うとその扉を開けた。
すると、
お化け「キキキ…キキャ~!!」
扉を開けた途端中から大量のお化けが飛び出してきた!
心音「き、きゃ~!出た~!!」
心音は恐怖のあまり叫び散らす。
お化け「ヒソヒソ…?ケケケ…。」
するとその叫び声に反応してお化け達が寄ってくる。
霊乃「ち、ちょっと心音!お化け達が来てるわ!?早く扉から逃げましょうよ!これがきっと裏口だから!」
私は慌てて心音をせかす。
心音「む、無理無理!怖いよぉ!」
しかし心音は泣きそうな顔で拒否する。
霊乃「今の状況の方がよっぽど怖いわ!早く行くわよ!!」
私は無理やり心音の腕を掴んで引っ張っていく。
心音「いや~!!」
心音は怖がって泣き叫びながら私と共に扉の中へと入っていった…。
ヒュー…ヒュー…。
冷たい風に吹かれて目を開ける。
霊乃「きゃっ、冷たい!って、ここ外!?やったわ心音!脱出成功よ!」
私は歓喜して心音を見る。
心音「じ、じゃあさっきのがやっぱり裏口…?」
心音は目をぱちくりとさせている。
霊乃「えぇ、きっとそうよ!あぁ良かった…。」
私は安堵の息をついた。
心音「…美恵ちゃん、早く帰ろ!?私怖い!」
心音は青ざめた顔でそう言う。
霊乃「もう、怖がりね。分かったわ、行きましょ。」
私はそう言うと、二人で冬の様に寒い夜の町を駆けていった…。
忍「…ふふ、次は僕の番だね。」
一方その頃、忍があの屋敷の中でそんなことを呟いていたなんて…私達は知るよしもない。
【第2話、終わり】
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