ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 小さな殺し屋さん
- 日時: 2022/08/07 14:40
- 名前: ねむねむ ◆ImDwVl1n2. (ID: HAhG.g1E)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13040
こんにちは(はじめまして)ねむねむです。
本作は必ず完結する作品(決定事項)なので、最後までお付き合いいただけると幸いです。
そんなに長くないと思います。
ですが、物足りないと思います。
まぁこういう、ミステリー系といいますか、そういうのはとても苦手とする面もあるので、優しい目で見守っていただけると嬉しいです。
また、少しばかりグロイ描写があります。
最終話で、予想できない結末をお届けすることをお約束します。(予想出来たらごめんなさい)
*2021年度夏季大会銀賞を受賞しました。身に余る光栄、ありがとうございました!
≪目次≫
第一話 小さな殺し屋さん >>4
第二話 驚きの事実 >>5
第三話 ブラックキャット >>6
第四話 5年前の事件 >>7
第五話 地獄絵図 >>8
第六話 ごめんなさいと、ありがとう。 >>9
最終話 TRUE END >>10
番外編予告 >>11 ※番外編を読もうと思われた方は必ずお読みください。
本編完結させることができました。
最後まで読んでくださった方々に、心から感謝申し上げます。
*総合掲示板に出入りすることが可能となりましたので、何らかの問題は解決したと判断し、一時公開停止としていたものを再投稿します。
- Re: 小さな殺し屋さん ( No.7 )
- 日時: 2022/08/07 14:23
- 名前: ねむねむ ◆282rmH.aak (ID: HAhG.g1E)
第四話 5年前の事件
ー翌日ー
午後10時。俺たちは、ブラックキャットの裏口など、出入りできるところで待ち伏せをしていた。
あとは人が出てくるのを待つだけだ。
しばらくして、何やら争う音が聞こえてきた。
そして、2分くらいで静かになる。
俺は、こっそり建物に侵入した。
「どういうこと?」
話し声が聞こえたので、そちらのほうに行き、物陰に身を潜ひそめながら耳をそばだてる。
なにやら剣呑というか不穏な雰囲気だ。
「だから、君の両親はもう死んでいるんだ。」
「は!?なんで!!」
「5年前の拷問の時に、出血量が多すぎてな。
拷問師の腕が悪かったらしい。」
「そんなのウソっ……!じゃあ、今まで何で私は殺し屋を……っ!」
「一応言っておくが、もう普通の生活には戻れないぞ?」
「……そんなの知ってる。でもなんで今、私に、親が死んでいることを話したの?」
「そんなの決まっているだろう。今から君にも同じところに行ってもらうからだ。」
「……なんですって?」
「【小さな殺し屋さん】はもういらない。
君は強くなりすぎた。ボクを超えられたら困る。ボクが最強じゃなくなってしまうからね。」
「ポーカー、あんた……っ!」
どうやら少女とポーカーが言い争っているようだ。
「さよなら、【小さな殺し屋さん】」
「絶対に許さない。」
そして、争う音が聞こえる。
血しぶきがあがって、俺が潜めている物陰にまで飛んできた。
そして、音が止んだ。
「死んでも許さないから。それにしても残念だったわね。
すでに最強なのはアンタじゃなくて私だったみたいよ。」
ドサッと人が倒れる音がした。
どうやら少女が勝ったようだ。
「あんたを殺しても、私は親と、もう会えない……」
泣いている。
そして、ポーカーの懐ふところをあさりはじめた。
「拷問師……拷問師……これね。
絶対に殺してやる。コイツと関わった人、全員殺してやる。」
そう言って少女は手に持った名刺を睨みつけている。
今、少女は復讐で燃えているし、狂乱状態だ。
俺が動いても返り討ちにされてしまうし、なりふり構わず誰でも殺すだろう。
外にいる警察官たちにも、無線で手を出さないようにと言っておいた。
「……一気に殺ったほうが早いか。」
少しして、少女が言った。そして、名刺を見ながら電話をかけ始めた。
どうやら、名刺の人全員を同じ場所に集めて殺す魂胆のようだ。
午後11時に宮崎倉庫で待ち合わせらしい。
止められない自分の弱さが歯がゆいが、今はまだじっと待つ時だ。
そして少女はすべてのところに電話をかけ終えたらしく、ブラックキャットから出て行った。
- Re: 小さな殺し屋さん ( No.8 )
- 日時: 2022/08/07 14:25
- 名前: ねむねむ ◆282rmH.aak (ID: HAhG.g1E)
第五話 地獄絵図
少女が去ったのを確認し、ポーカーと少女が争っていた部屋に入ると、ひどい光景が広がっていた。
ポーカーの部下らしき人たちは心臓か喉を刺されて絶命している。ポーカーに至っては、喉と心臓、さらには腹を切られ、よく見れば臓器が見えている。床も壁も天井も、血だらけで真っ赤だ。部屋に足を踏み入れれば、ぴちゃりと血の音が鳴る。まるで水たまりに入ったような。
まさに地獄絵図。俺は今までの警察官としての人生の中で、これまでにひどい惨状は見たことがなかった。
一生トラウマになるような光景に絶句したが、我に返ると俺は無言でその場を立ち去ろうとした。
少女が言っていた場所に向かうためだ。もうすぐ午後11時になってしまう。
すると、坂本が言った。
「どこに行くつもりだ?目撃者なんだから、いなくならないでくれよ?」
俺は真剣な表情で返した。
「頼む。どうしても行かなきゃならないんだ。」
目をしっかり合わせて言うと、坂本は渋々といった様子で
「……なるべく早く帰って来いよ?あと、一応行き先を教えてくれ。
もし遅かったら迎えに行く。それまでに用事を終わらせとけよ。」
と言ってくれた。いい仲間である。
俺は、
「宮崎倉庫」
とだけ言ってかけだした。
- Re: 小さな殺し屋さん ( No.9 )
- 日時: 2022/08/07 14:33
- 名前: ねむねむ ◆282rmH.aak (ID: HAhG.g1E)
第六話 ごめんなさいと、ありがとう。
宮崎倉庫につくと、そこではすでに死闘が始まっていた。
少女1人VS屈強の大人50人近く。
しかし実力の差は明らかだった。
月明かりの下で返り血を全身に浴びながら戦う少女は、むしろ美しかった。
すぐに50人あまりの男たちは死体と化した。
その中にはきっと、拷問師もいたのだろう。
それでもなお、少女は泣いていた。
「こんなことしても意味はない……私のお母さんとお父さんは帰ってこない……」
俺は思わず言ってしまった。
「ああ、そうだな。」
「だれ!?」
少女が瞬く間に殺意をみなぎらせる。
俺は低い声で言った。
「俺は、お前に愛する人を殺されたんだよ。」
少女が息をのむ。涙をさらにあふれさせる。
俺はさらに言った。
「お前と一緒だ。お前と同じように愛する人を突然奪われた。
そして、もう二度と会えないんだ……!
家に帰ったら、血だまりができていた。驚いたよ。まさか、ってな。
悪い予感は的中した。血だまりの中に、俺の愛する人はいた。
その日は、婚姻届けを出す予定の日だったんだ。
お前のせいでっ!!俺の幸せな日になるはずの一日が、絶望の日に変わったんだ!!!」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
私は、はっとした。
今まで、「殺してごめんなさい」と、死んだ人に対してはたくさん謝ってきた。
でも、遺族の人のことは考えてなかった。
何も言い返せない。
ただ命じられたまま人を殺していた。
だから私は悪くないなんて、通用しないのは分かっている。
実際に手にかけたのは私なのだから。
私と同じ、だったのだ。
私が親を殺したポーカーを、そして拷問師を恨むように、この人たちも私を憎んでいた。
どんな理由がそこにあろうと、憎かったのだ。
しかし、しばらくして私の口から出た言葉は、謝罪ではなく、ひたすら願ってきた願望だった。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「……私は、普通の女の子になりたかった。
ハッキングの技術も、ナイフの使い方も知らない、普通の女の子になりたかった。
人殺しなんて、本当はしたくない。」
そう言って、少女は泣いた。
ずっと耐えてきた、少女の心の叫びだった。
「今着ているこのパーカーだって、もとは真っ白だった。
初めて野村輝樹さん、っていう人を殺した時もこれを着ていた。
すぐに真っ赤に染まった。この色が、ずっと嫌だった。
殺した人の名前はすべて覚えて、墓に行って花を供えて毎日謝った。
でもそれで罪悪感が消えるわけじゃないし、殺した人の命は戻ってこない。
それでもただ、謝るしかなかった。
ずっと、人を殺す前も、殺すときも、殺した後も、悲しくて苦しくて申し訳なくて。」
真っ赤に染まったパーカーを着て、返り血をポタポタと髪から垂らしながら、泣きじゃくっている。
「初めて人を殺す前に、髪を染めた。
金髪にした。
早く警察に捕まえてほしかったから、目立つ色がいいと思った。
警察官と鉢合わせて殺したのは、あの人がもともとターゲットだったから。
捕まりたくないわけじゃなかった。」
皆が恐れる、【小さな殺し屋さん】も子供だった。
「お父さんとお母さんに会いたい。
誰かに愛されてみたい。
お金じゃなくて、愛が欲しい。
【小さな殺し屋さん】じゃなくて、私を愛してほしい。
帰ったら「おかえり」って、お父さんとお母さんに言われたい。
いただきますも、ごちそうさまも、家族でっ………みんなで一緒にしたかったッ!!
もう、お父さんとお母さんに抱きしめてもらえることだってない。
誰かの「行ってきます」も、「ただいま」も聞くことはできない。
愛してるよ、大好きだよ、って言ってもらえることもない。
喧嘩もできないし、仲直りだってできない!!!!」
あの拷問事件から5年経って、少女は中学生くらいの年になったはずだ。
それでも、心は、愛されたいという気持ちは、あの頃のまま止まっているのだ。
「たくさん人を殺してごめんなさい。
その分たくさん謝るし、お金も払うから、お願い。
私のお母さんとお父さんを、返して……!!!」
お金も払う、というその言葉で、少女がどんなに治安の悪いところで過ごしていたのかが伝わり、痛々しさを増す。
お金がすべての世界で過ごしてきた少女。
大人としては、「よく耐えたね。」と言ってあげたいような気もする。
でも遺族としては、どんな理由があってもなお、許せなかった。
でも、同じ悲しみを少女も味わっていることを知り、心が揺れる。
大人の俺でもこんなにつらいのに。少女にとって、どんなにつらい悲しみだったか知れない。
それでも、一つだけ少女は間違っている。
「あんたを愛しているかは知らないが、【小さな殺し屋さん】じゃなくて、あんたを見てくれていた人は
いたよ。
それに気づかなかったのは、あんただ。
その人は、墓に花を供えて泣いているあんたを見て、同じように悲しんでくれていた。
あんたのことを、【小さな殺し屋さん】と呼ばず、「あの子」って、まるで我が子を呼ぶかのように呼んで
いたよ。」
少女が目を見開く。パーカーに涙がしみていく。
赤色じゃないモノが、悲しい色をしたそれが、パーカーに染みていく。
「お願い、します。」
しゃくりあげながら、少女は言った。
「あなたが、持っているその、銃で、私を、こ、殺して、ください。」
俺は、静かに見返すだけだった。拳銃は構えない。
「お父さんとお母さんに会わせて……罪を償わせて……!
殺してっ……殺してッ!じゃなきゃ殺す!」
ナイフを持った手に力を込め、泣きながら少女は叫んだ。
「それは」
「早くっ!!!!」
俺の言葉を遮り、ナイフを握りしめ、一直線に走ってきた。
俺が狙いを定めやすいようにだろう。重心を少しも傾けずに。
バン!!!!!
拳銃の発砲音がした。
少女が、ゆっくりと倒れる。
「あり、が、とう……ごめ、んな、さい……」
と言って一滴ひとしずくの涙と笑みを浮かべ……それが少女の最後の言葉だった。
後ろを振り向くと、坂本がいた。
彼が拳銃を握っていることから、彼が撃ったのだろう。
肩で息をしている。今、到着したばかりで、俺が殺されそうになっていたように見えたに違いない。
少女は、俺を殺す気などなかった。
人殺しなどしたくないと言っていた人が、自分の意思で人を殺すとは思えない。おそらく、もし撃ってもらえなければ、俺から拳銃を奪って自決するつもりだったのだろう。
坂本が言った。
「あの男、ついさっき死んだらしい。」
少女を見守っていた男のことだろう。
「何か悟ったような顔をして、悲しそうに笑みを浮かべ、服毒自殺したそうだ。」
……少女が死んだことが、伝わったのだろうか。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
私は倒れながら見た。
自分の両親の姿を。
『私もやっと、そっちに行けるんだね。』
涙を流し、私は最後の言葉をつぶやいた。
「あり、が、とう……ごめ、んな、さい……」
両親にだけでなく、目の前の警察官にも、遺族の人にも、そして何より殺した人全員に向けて。
死ぬ前に、言わなければならないと思う言葉を言い終えることができた。
そんな私を、両親は暖かく見守ってくれていて、そして。
「あなたは天国には行けない。だから、『一緒に』地獄に行きましょう。」
「……なんでお母さんたちまで……?」
「ごめんね。お母さんたちが殺し屋だったから、あなたをつらい目にあわせてしまった。
本当に、本当にごめんね。」
強くかぶりを振る。新たな涙があふれてくる。
「一緒に地獄に行こう。
死んでも、あなたは私たちの大切な娘よ。
ずっとずっと、愛してる。」
私は、ずっと言われたかった言葉を聞けて、泣いた。
たくさん、たくさん、泣いた。
この温もりを、忘れない。もうこの手を離さない。
今から地獄に行くというのに、私は幸せだった。
「私のことも忘れないでください。」
「……あなたはッ!お墓に行くとき、送り迎えしてくれた……!」
「私だって、あなたのことを見ていました。
あなたに罪があるのなら、私も一緒に背負いますよ。」
「ごめんなさいっ……気づけなくて、ごめんなさいッ……!!」
「もう、いいのです。さぁ、行きましょう。私も一緒に、行きますから。」
「ありがとう。ごめんなさい。ありがとうっ……!!!」
幸せだった。ただただ、幸せだった。
もう、何もいらない。
ありがとう……………。
少女たちは、闇に消えていった。
- Re: 小さな殺し屋さん ( No.10 )
- 日時: 2022/08/07 14:35
- 名前: ねむねむ ◆282rmH.aak (ID: HAhG.g1E)
最終話 TRUE END
「良いゲームだった……」
俺は感動して泣いていた。なんて素晴らしいゲームだろう。
少女は死んだが、幸せになったのだ。
お母さんとも、お父さんとも出会えて。
地獄に一緒に行った。
なんて良いゲームだろう。
これ以上に素晴らしいゲームを、俺は見たことがなかった。
俺がこのゲームを始めたのは、このゲームを作った人が自身のブログで言った言葉が気になったからだ。
「絶対にTRUE ENDを迎えてはならないゲーム」
と言っていた。
最後に映し出された、『TRUE END』という文字も、血文字で不気味だったし……なぜだ?
そのとき、だった。
カタ、と後ろで音がした。
1人暮らしの俺の家に、誰か、いる……?
おそるおそる後ろを見ると、『まだ』真っ白なパーカーを着た、ショートカットでくりくりした目の愛らしい少女が立っていた。
必死に泣かないようにしていて、悲しそうに苦しそうにしていて……。
左手に、ナイフを持っていた。
う、嘘だろ……どういうことだ……
俺は、ハッとした。
TRUE ENDを迎えてはならない理由、血文字で映し出された文字、ゲームで最初の被害者の名前の部分にプレイヤー自身の本名を入力させた理由―――――。
全部、全部つながる答えが、ひとつだけある。
―――――ッ、まさか……!
あたりに鮮血が飛び散った。
少女のパーカーが、真っ赤に染まる。
「……ごめんなさい……」
本当に、あのゲームが、現実になってしまったというのか……
視界が、闇に包まれていく。
少女の顔が目に映る。
パーカーのフードをおろした少女の髪は、綺麗な金髪だった。
ここからが、本当の話。
きっかけは、たったひとつのゲーム。
【小さな殺し屋さん】の、悲劇の開幕である――――――
- Re: 小さな殺し屋さん ( No.11 )
- 日時: 2022/08/07 14:37
- 名前: ねむねむ ◆282rmH.aak (ID: HAhG.g1E)
ー番外編予告ー
"ふふふ、と男は不気味に嗤った。
TRUE ENDを迎えたか――――――――――――"
本編よりは綺麗に収まらないかもしれないので、小さな殺し屋さんを綺麗な作品のまま記憶にとどめておきたい方は読まないほうがいいかもしれません。
本編でぼかされていた真相が今、明らかに……
あなたは隠された驚愕な事実に気づけますか……?
お楽しみに。