ダーク・ファンタジー小説
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- 渇望の死察(デッドサーチ)
- 日時: 2021/08/20 02:31
- 名前: しいら! (ID: Z7zUYNgK)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13106
こんにちは、しいら!と申します。ここでは「渇望の死察」を書かせていただいています。至らぬ点はあると思いますが、何卒よろしくお願いします。
【注意!】
・この小説は素人が書いていますので、所々「ん?」と思うところがあると思いますが、温かく見てもらえるとありがたいです。
・かなり長い小説になると思うので、期待してみてもらえると助かります。
・非常に重いストーリー構成となっておりますので(ユーモアも入れてはいるのですが…)、自己責任で閲覧してもらうよう、ご協力お願いします。
【目次】
最新話 >>3
プロローグ&第1話 >>1
第2話 >>2
第3話 >>3
- Re: 渇望の死察(デッドサーチ) ( No.1 )
- 日時: 2021/08/18 02:25
- 名前: しいら! (ID: Z7zUYNgK)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13106
プロローグ
人に生命があるかぎり、人は死ぬ。ずっと、そう思っていた。だって、それが常識なのだから。人は命が尽き、魂が冥界へと昇る。そして「天国」と「地獄」に魂が分かれる。生命ある時に善を多く働いた者は「極楽」である「天国」、生命ある時に悪を多く働いた者は「極苦」である「地獄」
にそれぞれ向かう、と。ずっと前に父が教えてくれた。それで、納得していた。あの出来事で、僕の常識が覆される前までは…。
第1話 死ナキ世界
響く目覚まし時計。眩しい太陽。あぁ、いつもの朝だ。そう考えながら太陽の光を浴びて、服を着替え始める。何も変わらない、いつも通りの朝を迎えられた自分に安心した。
僕の名前は双真。来瀬双真。19歳の大学1年生だ。僕には何の取り柄もなく、ただただ平凡な人間。生まれて、小、中、高と順に学校を卒業していって、これまで何の大事もなく生きてきた。
だけど…。
僕には2つ、今まで生きてきて「引っ掛かること」があるのだ。1つは、僕が小学6年生の頃、僕の実家の向かいの家が火事にあった時だ。来瀬家と向かいの家は昔から仲が良く、ある日親が不在で向かいの家に泊めてもらった時、向かいのおばさんに、「赤く燃える炎」が薄く見えていたのだ。
その時は気にも留めていなかったが、その翌日に火事が起こり、向かいのおばさんは亡くなった。「気にしすぎじゃない?」と親には言われたが、やはりその記憶はいまでも引っ掛かる。夢にも出るほどだった。
もう1つの「引っ掛かること」は、親がやたらと「死」を自分に、叩きこむように教えることだった。「人は死んだら魂となって、天国か地獄に行く」とか、「人は死んだら身内が弔う」とか、当たり前の常識をやたらと教え込まれていた。何故あそこまで叩き込んでいたのか、今でも引っ掛かっていた。
そんなことを考えながら、来瀬は大学へと向かった。
時は経ち夜。来瀬は苦手な教科の課題を遅くまでやっていたため、疲れていた。
(早く帰って寝たい…)
そんなことをを思いながら、疲れた足を何とか動かして、帰路についていた。
そしてやっとの思いで家であるアパートにつき、扉の鍵を開けたようとした、
その時—。
ドゴォォォォォン!
突然そばで轟く様な爆発音が聞こえた。何が起こったと思い、振り向こうとした時、足がふわっと浮いた感覚がした。
アパート2階の足場が崩れていたのだ。
気づいた時にはもう遅く、来瀬は崩れた足場と共に1階へと落下してしまった。
(なっ、何が起こってるんだ…)
辺りをよく見てみると、アパートの向こう側が完全に焼落ちていた。焦りと恐怖を覚えつつも、何とか正気を保ち、
(早く消防署に連絡を…!)
という考えに至った。そしてスマホを出し、119番に連絡をしようとしたその時だった。
「見つけましたよ」
突如、声がした。
「死を秘める者…来瀬双真」
「…え?」
訳が分からなかった。何故この人達は燃えるアパートを目にして通報しないのか、そして、今の言葉…
(死を…秘める…?)
訳が分からないことだらけだったが、来瀬は困惑の他に、もう1つ、「恐怖」を覚えていた。
拳銃を突きつけられていたのだ。
今すぐここから逃げだしたかったが、さっきの落下の衝撃で足を痛めてしまっていたのだ。
「やっと、見つけましたよ。随分と探すのに時間がかかった…」
「大人しく、私たちと来てもらいましょうか」
男はにっこりと笑い、注射器のようなものをポケットから出し、来瀬の首に刺そうとした。
「これでやっと…”あの力”を…ッ!」
そう男は言い、注射器を来瀬の首直前にまで持ってきた。来瀬は恐怖と痛さで声が出ず、助けさえ求められなかった。
何をされるか分からない恐怖が来瀬を包み込み、もうだめだ、と思った瞬間だった。
「そこまでだ」
前から声がした。男も振り向くと、
「貴様ら…ユグドラシルかッ…!」
と憎む声で言った。
「来瀬双真は…俺らが”保護”する!」
そう言って、彼らは僕らに近づいた。
次回 第2話
- Re: 渇望の死察(デッドサーチ) ( No.2 )
- 日時: 2021/08/17 22:08
- 名前: しいら! (ID: Z7zUYNgK)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13106
第2話 死を秘める者達
「来瀬双真は…俺らが”保護”する!」
彼らはそう言うと、来瀬と男の元へ近づいていった。
「ユグドラシルの分際が…来瀬双真は絶対に渡さない!」
男はそう言うと、来瀬を肩に担ぎ、彼らから離れ、逃げようとした。しかし直後に男の足元に銃弾が放たれたので、反射的に立ち止まってしまった。
「くっ…」
「もう1度言う…来瀬双真は俺たちが保護する。お前達には何があっても絶対渡さないッ!」
彼らはそう言うと、腰辺りから何か筒状の物を手に取り、そして男の元へ投げつけた。
そしてその筒状の物が地面に落ちた瞬間—
キィィィィィィィィン!
と、まるで太陽を直に見ているかの様な眩しさと、皿とフォークを擦り付けた時の音の様な高音が来瀬達を襲った。
「ぐぅぅぅ…うぉぉぉぉっ」
その衝撃は男にも響いたのか、苦しそうな声を上げ、肩に担いでいた来瀬を地面に落としてしまった。
(痛ぁ!)
男が苦しそうに喚く中、もう1人の男が来瀬に近づいてきた。今までの状況が未だに分かっていない来瀬は、近づいてきた男に問いただした。
「い、一体なにがあったんですか?何故僕はこんなにも狙われてるんですか?貴方達は一体誰なんですか?」
分からないことを一気に説明したせいか、
「詳しい話は後で話す…今は取り敢えず、この場を振り切るぞ…!」
と男は返した。そして男は来瀬を肩に担いで一目散に走り出した。
(今日は担がれてばっかりだぁ…)
そんなことを思いながら、来瀬は大人しく男に担がれたままその場を後にした。
やがて彼らが乗ってきたと思われる車に到着した。その車は普通の車より少し大きく、また屋根が完全に空いていた。
「ったく、やっと来たか。車の準備は完璧だぜ」
車の側に立っていた男が言うと、
「私、機械学に関しては得意でございますので」
と、隣にいた凛々しい女が続けて言った。
「ありがとう。じゃあ早速逃げるぞ」
と来瀬を担いだ男が言うと、
「ねぇ…どーせあいつら、追ってくるんでしょ?何が対策、練ってるの?」
と彼らと共にいた女が言った。
「ああ…おそらく奴らはまだ俺らを追ってくるだろう」
やがて、1台の車が来瀬達の元に向かってきた。
「来たか…あいつらを振り切って逃げるぞ!」
と来瀬を担いだ男は言い、彼らも車に乗り込んだ。
やがて、走る車の外では激しい銃の撃ち合いが始まっていた。
「くっ、もう弾が尽きるぞ!」
「こっちもだ!」
どうやら苦戦しているらしいと思った来瀬は、
「あの…僕にも何かできることは…」
と聞いた。すると、
「だめだ。君に死んでもらっては困る」
と言われた。
「…はい」
と、来瀬も納得した。
しかし、彼らが未だ苦しいことに変わりはなかった。
「まずい、もう弾がねぇ!」
「おい出岡、もうあれを使うしか方法がないぞ!」
「だめだ…関係ない一般市民まで犠牲になってしまう」
「だけどよぉ…っ」
最大の危機に直面していた時、
「…見える」
と来瀬が言った。周りは一斉に静まり、来瀬が続けて、
「轟くような爆発…そして水底があの男達に…見えます」
と言った。その後も静寂が周り一体を包んだので、
「…来瀬くん、君には…」
と先程来瀬を担いだ男が言った。
「君には、もしかしてだけど…”あいつらの死期”が見えるんじゃないか?」
と来瀬に言った。そして来瀬は、脳裏に”あの時のこと”を思い出した。かつて小学6年生のとき…向かいのおばさんに見えた「燃える炎」…その翌日の火事でなくなったおばさん…おばさんは火事で亡くなった…炎…”焼死”?
たった今、来瀬が長年に渡って引っ掛かっていたことを理解した様な気がした。
「は、はい!多分、そうです!」
「やはりそうか…来瀬くん、君には対象の
“死期”が見えるんだ!」
「君のその能力…今からその能力を死察と呼ぶことにしよう」
来瀬には言っている意味が分からなかったが、心にずっと引っ掛かっていたことが今ようやく分かって、なんとも言えない感情が来瀬に込み上げた。
「水底…恐らくこの先の湖のことだろう…そうか、分かったぞ!」
「みんな、近くの湖まで持ち堪えるんだ!」
と男が言った。
やがて、湖の近くまで近づいた時、
「あいつらの死期はここだ…あいつらはここで仕留められる!」
と言うと、続けて、
「死術…
死射!」
と言った。その直後、男の手からどす黒い色の光線が放たれた。そのビームは瞬く間に追手の車を貫通し、車は爆発、男たちは湖の方へ吹っ飛ばされた。
全て、来瀬が予知した死期通りだった。
そして静寂が訪れたあと…
「やった…振り切ったぞー!」
と男が言うと、歓声が聞こえた。来瀬も声を出し、その後溜まった疲れがきたのか、その場で眠ってしまった。
これからどんなことが起こるのか、彼らが誰なのか、何も分からなかったが、今は逃げ切れたことに安心して、来瀬は眠った。
次回 第3話
- Re: 渇望の死察(デッドサーチ) ( No.3 )
- 日時: 2021/08/20 23:40
- 名前: しいら! (ID: Z7zUYNgK)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13106
第3話 your Destiny(君の運命)
…昨日。
僕の当たり前の日常は、「とある人達」によって一変した。運命的な出会いでは無いと思う。だけどその人達のおかげで、僕は知ることができた。今まで分かったつもりでいた自分自身の正体を、そして昨日僕をさらった「彼ら」の正体、僕をさらったその理由、そして、
これからの僕の運命…
全ては、1時間に遡る…
【1時間前】
「…うぅ」
激しい頭痛と共に少年は目を覚ました。彼の名前は来瀬双真。大学に通っている、ごく普通の19歳だった。
昨日までは…。
来瀬は激しい頭痛を堪えながら、なんとかベッドから起き上がった。すると、
「…目が覚めたか?」
右から男の声が聞こえた。振り向くと、そこには椅子に座った男がいた。
「昨日は長時間に渡って常にうるさかったから…頭痛がするのも、無理はない」
「現に俺も頭痛がする…」
急に起きたためか、いまいち状況が掴めてい来瀬に対し、
「コーヒー、飲むかい?眠気覚ましには、いいと思うのだが」
と、男が来瀬に対しコーヒーを差し出した。それを受け取った来瀬は、両手でカップを持ちコーヒーを飲んだ。
「うまいだろ?坂枝が入れたコーヒーだ。流石、喫茶店の娘だよな…」
「…美味しいです」
「…で、起きて早々悪いんだが、「下」に集まってもらえないか?」
「俺達の拠点はここの下にあるんだ…もちろん、急げとは言わない。ゆっくりでもいいから来てくれ」
と言い残し、「彼」は立ち去ってしまった。これから何が始まるのか、来瀬はそれとなく見当がついていた。
やがて、来瀬は彼の拠点である「下」に辿り着いた。
「来たね。そこに座ってくれ」
そこには、4人ほど男女が座っていた。そこには昨日出会した彼の仲間もいた。そして来瀬は言われた通りにその場にあった椅子に座った。”不安”を感じながら。
「…改めて」
「ようこそ。”死望体保護及び死霊体対策組織”ユグドラシルへ」
「…え?」
来瀬は余りにも長すぎる名前とよく分からない名前の意味に困惑して声を漏らしてしまった。
「はは、無理はない。こんな長い名前、最初に聞いたら困惑するのも当然だ」
「…昨日のこと。本当に申し訳なく思っている。何も話さずに君を引き連れてしまった」
「…大丈夫です」
「俺の名前は出岡風人。ユグドラシルの一員だ。一応、リーダーとしてみんなを引っ張っている身だ」
「…俺の口から、話そう。何故、俺らが君を保護したか。そして、君の正体を…」
「え…?」
「まず初めに…単刀直入に言おう。君は”普通の人間ではない”」
「そして、それが君を保護した理由だ…」
「どういう…ことですか?」
「…ここにいるみんなも、君と同じく、普通の人間ではないのだ。もちろん、俺も」
「来瀬…君は昨日、俺が放つ光線を見たよね?」
「…はあ、あのどす黒い光線ですよね?」
「死術、死射…対象に黒い光線を放ち、対象を死に近づける…死術…この能力こそが、君の”正体”なんだよ」
「あの…”死期が見える”やつですか?」
「死察…対象を”よく見る”ことで、死期を見定めることができる…このような、対象を死に近づけるような技を持つものを死望体と呼ぶ。君も、その1人なんだ」
「そして、もう一つ。君は、とある”特殊体質”を持ち合わせている。”異種体”と呼ばれるものだ」
「異種体…?」
「…来瀬。君はこれまでに、命に関わるような体験をしたことはあるかい?」
急に聞かれたので、少し黙り込んで考えたあと、
「…いえ、無いと思います。なにせ、平凡な暮らしをしていたので…」
と答えた。
「来瀬。君は”死ににくい体質”なんだ」
「死ににくい…体質?」
「人は病気や怪我などを患って、それが致命傷であった場合、死に至る。もちろん、来瀬もそうだ」
「だけど、来瀬…君はその体質の影響で、死を遠ざける力を持つらしい。俺達は、そんな体質は持ち合わせていない」
「来瀬が狙われるのも…きっとその体質のせいだと思うんだ。死望体と異種体、2つの力を持つものなど、ほぼいないからな」
ここで、やっと昨日の”あの男”が言った言葉を理解したような気がした。
「死を秘める者…来瀬双真」
「このまま君を放っといたままだと、いずれあいつらに捕らえられ、何されるか分からない。だから、保護したんだ」
(そうだったのか…)
「…来瀬」
「…はい」
「…言いづらいが、このまま来瀬は普通の人間として生きることはできない。君は追われ身だからな。だから…」
「ユグドラシルの一員として、俺達の仲間になってくれないか?」
(…やっぱり…言われると思ったんだ…)
覚悟はしていた。だって自分を仲間にしないならば、僕を保護する必要はない。だけど…僕はやっぱり…
「……信じている」
「…え?」
「俺らは来瀬を信じている。だから、来瀬は俺らを信じてくれないか?」
「絶対に来瀬は死なせないし…俺達も来瀬を死なせるつもりはない」
「…信じてくれないか?」
…信じることは、良いことなのだろうか。裏切られたり、しないのだろうか?でも…
(この、出岡さんの真っ直ぐ僕を見つめる目…そこに偽りはない…)
「分かりました。僕も皆さんを…信じます!」
「ありがとう…来瀬」
「よーし!そうと決まったら早速自己紹介じゃない?」
急に、後ろの女が喋りかけてきた。
「坂枝立花よ。よろしくね」
「湯上雄我だ…よろしくな」
「某、重木惣流である」
「その妹の、重木舞華ですの」
「改めて、出岡風人だ。これから、よろしくな」
「…はい!よろしくお願いします!」
「…さて。そろそろ合流するか」
「何かあるんですか?」
「ユグドラシルは、これで全員ではないんだ。他にももっといるのだが、とある任務で、席を外してるんだ」
「…来瀬。お前としては、初任務だな」
「…え?初任務?」
「詳しいことは、追々話す…行くぞ、死霊体狩りへ!」
こうして、僕の新たな人生が、幕を開けた。でも、僕は、まだ知らなかった。やがて、この力が、この世界を大きく左右することになるなんて…。
次回 第4話
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