ダーク・ファンタジー小説

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黒髪少女は前を向く
日時: 2022/01/08 11:16
名前: 楓 ◆eow58lDRDk (ID: 2AFy0iSl)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13196

父親を探す旅に出た主人公・エヴァ。彼女はこの旅で、どういう人に出会い、何を学び、どう成長するのか。

注意書き
※ファンタジー初心者です。至らぬ点が多数あると思います、すみません…
※明るいシーン、ほのぼのしているシーンを多く含みます。暗いのもちゃんとある…はずです…
※当作品は「魔王の子~呪われた黒髪の子~」のリメイク版です(元作品は削除済み 作者は本人です)

枯水暁さまがタイトルを命名してくださりました。ありがとうございました。

一話>>1

Re: 黒髪少女は前を向く ( No.1 )
日時: 2022/01/08 00:27
名前: 楓 ◆eow58lDRDk (ID: 2AFy0iSl)

第一話


 草原が眼前に広がっている。ただ、草原たちは鮮やかな緑ではなく、黒色に近い、禍々しい色を主張していた。道の両端には、大きな木の形をした魔物たちが森をかたどっている。

 人間が通ると、ザワザワ……と微かに奇妙な音がするのだが、今ルンルンと通り抜ける少女には、その音は魔物たちが喜んでいる音に聞こえていた。

 そして、その奥にあるダンジョンに入り、少女はまるでこのダンジョンのカラクリを全て理解しているかのように、レンガを押したり、地面を軽く踏んだりしてどんどん先に進んでいった。

 終着点にたどり着く。ツタのような枝のような黒い何かが、そこにそびえ立つドアに巻き付いていた。

「……ᛟᛈᛖᚾ」

 少女は合言葉を口に出した。

 大きなドアはギイィ……とゆっくり開く。

 黒髪の少女は満面の笑みで、大きな声で言う。

「エヴァ・アメシスト、ただいま帰りましたー! 今日はお肉だよ!」

 ふふふと微笑んで満足そうに目的の場所に進む。

 大きな階段を手すりに手をかけながら上る。少女――エヴァは、階段に、「今日もお疲れ様。いつもありがとうね」と話しかけた。それに応えるように、手すりが少しだけうねっと変形し、ピンク色に染まる。

 いつもの事なので特に気にせず、エヴァは長い階段を上り、上り終えるとまず一番手前のドアを開けた。

「ケイシャさん! ただいま! 今日はお肉を買ってきたの! みんなでパーティしましょ!」

 机に向かい合っていたケイシャ――ゴブリン――が振り返る。エヴァの満面の笑みに応えるようににこっと微笑んだ。

「おかえり、エヴァ。今日はお肉なのね。厨房の方たちに声を掛けてこなくちゃね」

 ケイシャはゴブリンだが、とても美しい容姿をしている。頭にピンク布のようなものをかけていて、それが余計ケイシャの魅力を引き立たせていた。

 椅子から立ち上がり、エヴァが「いこっか」と言い、二人で厨房まで向かった。

 厨房では、ガビールたちが料理をしていた。

「ただいま!」

「「「あ、ボス! おかえりなさい!」」」

 エヴァがむっと顔をしかめた。

「こら! わたしはボスではありません。ボスはお父様でしょ!」

「でも、お父様が不在の今、ボスはエヴァ様です!」

「いや、代表はケイシャさんって決めたでしょ! もう! 次からはエヴァって呼ぶこと!」

「「「え~……」」」

「はい、は?」

「「「はい…………」」」

 ガビールたちが落ち込んでいる隅で、ひとりのガビールが作り途中であろう食事を一口食べた。

 他のガビールたちは気づいていないみたいだが、エヴァは気づいた。

「こら! ヨーナス! わたしにも食べさせて!」

 そこでどっと笑いが起こる。一口だけ食べたあと、エヴァが、ガビールたちのリーダー的存在であるアーベルに声を掛ける。

「今日はお肉なんだけど、ご飯間に合いそう?」

 アーベルは相変わらずの無表情で応える。

「少し夜遅くになってしまいそうですが大丈夫ですか?」

「大丈夫。お酒も用意できる? きっと他の子たちが飲みたがるわ」

「もちろんでございます」

「よし! 楽しいパーティにしようね!」

 その後エヴァは収納魔法で保管していた大量の肉を出してから、ケイシャと厨房のガビールたちと別れ、自室に戻った。



『エヴァ、おかえり!』

 水色のプルプルした体を弾ませ、エヴァにそう伝える。

「ただいま、テオちゃん!」

 スライムをぎゅーっとする。

『違う! 僕はあの高貴なスライム、テオバルト様だ!』

 あはははとエヴァが笑う。

 だがその笑いはやがて薄くなっていく。片づけてどこか寂しそうな雰囲気をまとっている自室。ひとつのカバン。やがてエヴァはその場で座り込んでしまう。

 楽しい生活とは、しばらく離ればなれ。

『エヴァ?』

「……テオ、わたし明日、家を出るよ」

『え? 明日!? どうしてそんないきなり! かばんをまとめてたから、そろそろかなとは思っていたけどそんなに早く?』

「うん。もう、行かなきゃ。楽しいのは今日でおしまい。お父様が待ってる」

『だって、今日誕生日で、まだ十五歳なのに!』

「いや、もう、十五歳だよ。お父様が待ってる、わたしを。
 私はこんなに幸せなのに、お父様がいないなんて嫌だ。だから、探しに行くの」

 テオバルトはまたしても止めようとしたが、エヴァの真剣な瞳を見て、言葉が出なくなった。

 父に似た紫色――宝石アメシストを思い出させるような、何もかも見透かすような瞳。

 この子は一度決めたら曲げないから、と、賢いスライムテオバルトは諦めたような表情を見せた。


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