ダーク・ファンタジー小説

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怪異動乱物語
日時: 2022/06/15 22:27
名前: どん (ID: Oui0uBDf)

...それは濃霧に包まれた、冬の銀座から始まった。
突如、四足歩行をする異形生物が現れ、霧が晴れたと思えば次々に銀座を行く人々を喰らう、
混乱する現場、無抵抗に殺される人々。予測不可能で悪夢のような現実。

 そして、魑魅魍魎が跋扈している東京にとどまらず、日本国民はこの動乱に巻き込まれていく。
恐怖はまだ、始まったばかりなのだから。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
登場人物
栄田義人さかえだよしと 41歳
警視庁採用ノンキャリアの警察官、階級は警部。
40代に警部というのは、ノンキャリア組では最速に近い出世街道であるが、その有能さは時に同僚から疎まれる。それ故か、性格は時に腹黒い一面を見せる。
猿田勇気さるたゆうき 22歳
警察庁採用キャリアの警察官、階級は警部補。
新人のキャリア組として、警視庁へ出向するという異例の人事に充てられた。キャリア組としての将来が確約されている中、まだまだ青い新人としての純粋さを見せる。
この度の事件で栄田警部と組むこととなる。
逢坂友幸おおさかともゆき 40歳
保守国民党の世襲二世の議員で、作中の村上義之むらかみよしゆき内閣で政務担当の内閣官房副長官に就任する。常に日本の未来を考える中、その使命感から先輩議員や大臣からは「世襲の若者」と揶揄されている。
栄田とは出身大学の先輩後輩の関係で、マメに連絡を取り合う仲だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
~目次~
第零話「銀座において」 >>1

第壱話「本部にて」 >>2

Re: 怪異動乱物語 ( No.1 )
日時: 2022/06/09 19:54
名前: どん (ID: Oui0uBDf)

第零話 銀座において

「...至急、至急。築地52から警視庁。」

「至急、至急。築地52、どうぞ。」

「了解。銀座中央通り二丁目において、4頭の害獣が通行人を襲撃。またうち1頭が近くのPBに突撃。PMが一名負傷。応援車両願います。」

「....はい?」

 銀座にせめぎ合う悲鳴や苦痛の叫び声の中、築地52の警ら車両から無線が飛び込んだ。
車内にいる二名の警官は状況に混乱しつつも、冷静に本庁へ連絡したがこれ以上に言葉が出ない。
気づけば交差点には人々が食いちぎられ、四肢のはがされた死体が転がっているという非現実な状況にあった。

警視庁の通信指令室においても同様に混乱している。

「何を言っているんだこのPCは?」

 それは11月20日午後5時の事であった。

Re: 怪異動乱物語 ( No.2 )
日時: 2022/06/11 23:08
名前: どん (ID: Oui0uBDf)

第壱話 本部にて

 先の事件から丸三日経った。『銀座獣害』と呼称されるこの事件は、猟友会の手には負えず、銃器対策部隊の投入に加え練馬の第一普通科連隊も出動した。過去にトドの駆除に駆り出されたことのあるもので、前例主義の役所は自衛隊の災派における銃器使用に躊躇いは及ばなかったのだ。
 これら首都圏の主力を投入してもなお、害獣2頭を逃す結果に終わり、事件発生翌朝、報道各社の朝刊には「警察・自衛隊の投入も、捕獲は失敗。」とバッシングを受けた。

 東京都庁 獣害対策本部

 都庁ビルの防災センターに獣害対策本部が設置された。センター内には都知事、副知事や警視総監。環境省や各大学の専門家も集まり常に騒々しい。
 
 「はぁ、何故まぁ本店が動物探しを...」

 センター右側には捜索班のテーブルと座席が置いてあり、白いテーブルには東京都の地図や該当生物の姿の写る写真などが山積されている。
 テーブルに並べられた椅子につき、溜息をついている初老の男は、この度設置された本部の捜索班長である。名前は栄田義人さかえだよしとという刑事である。

 「仕方ないっスよ、これも公務員の仕事っス。でもどんなやつか今一わかんないっスね。」

 その向かい、一見気楽そうな若者の捜索員は猿田勇気さるたゆうき
栄田はまたも大きな溜息をつき、猿田の頭を粗くなでる。

 「あのなぁ猿田ァ、俺たちは警視庁の刑事なんだよな?こういうのは所轄がやるんじゃねぇのかよ、おい。」

 「ヤバいヤマみたいなもんでワクワクするじゃないスか!」

 と、騒いでいるもの束の間、本部長より指示が発せられた。

 「捜索命令、本部捜索班および機捜隊は機動隊の指示の下、担当地域の捜索に迎え。また不意の接触に備え、帯銃を許可する。」

 指示を聞いたのち、二人はセダンの捜査車両に乗り込んだ。

 首相官邸 危機管理センター

 ここ首相官邸にも都庁との連携や情報集約を目的に獣災害対策本部を設置され、村上義之むらかみよしゆき首相と戸田孝二とだこうじ危機管理監をはじめ、閣僚や各省の官僚が肩をなら並べながら険しい顔を浮かべている。現場の指揮系統の崩壊、100名を超える国民の死傷者を出していることもあり、均等に並べられた蛍光灯の青白い光で部屋の薄暗い中、異様な空気に包まれている。
 本部長である村上はモニターに映し出されている害獣の航空写真を眺め、太い眉をつりあげて言った。

 「どうしたものか、ヤケに獰猛そうで大柄な格好じゃないか。あれは熊か、狼か?」

 「なんとも言えません。有識者に問い合わせても新種の生物でどの科目に属するかわからない、と。とにかく危険だと言っております。」

 環境省の官僚がそう答える。また逢坂おおさか官房副長官は食い気味に話しかける。

 「総理、このような都市圏においてそう簡単に姿を隠せる所はありません。海中に身をひそめる可能性も検討されます。」

 それはないだろう、と市山いちやま環境相は軽く笑いながら応酬する。

 「君は何を言っているんだね、あれにはエラがあったのか。到底海中で生きるには難しい、いや不可能だ。」

 出席している各大臣もそうだろう、と静かに頷きながら流している。
こんな言い争いをしている場合か、と村上は独り言ち、腕を組み席に深く座りなおした。

 「とにかくだ、次の被害を出す前に対応手段を決定しないと野党や国民からは総叩きだ。またこれ以上都庁の活躍を許しては政府のメンツにも関わる。」

 村上の横に座る戸田危機管理監が提案した。

 「ですが方針としては実にシンプルです。捕獲駆除および追放のいずれかでケース分けされます。総理、ここは捕獲と駆除を目的に他県への脱出を防ぐ形で進めてみるのはどうでしょうか。」

 「...そうだな、捜索範囲を狭めればより捜索が容易になるのは当然のことだ。首都圏の県警を動員しようか...」

 こうして、危機管理センターの会議の結果、都から追い出すのではなく都内に留まらせることで大きな捕獲網の構築に乗り出す方針を決定した。
実際、この決定は事態安定化と混乱の終息を目的としているため、何か違和感を覚えざるを得ないが、本来都民への被害を抑えるべきであるのに、これ以上の都庁の活躍を防ぎたいという派閥主義的な思考が働いたのだ。


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