ダーク・ファンタジー小説
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- 狩人
- 日時: 2022/06/27 16:07
- 名前: 長谷川まひる (ID: owBmHTcu)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/regist.cgi?mode=mente&f=13347
あらすじ
街を守る狩人を目指すユイカはひょんなことから、隣町の狩人ソーマと出会う。その剣技に魅せられたセーラは弟子入りをさせてほしいとお願いするが、ある目的のために剣技を磨くソーマはそれを受け入れない。前途多難な狩人見習いユイカは無事に狩人になれるのか。ソーマの目的は達成されるのか。
ユイカとソーマ。二人の人生を描く物語。
☆超長編(の予定)です!本編ご期待ください!
☆いい題名が思いついたら変えます(その時は新しいスレ作ります)
- Re: 狩人 ( No.1 )
- 日時: 2022/06/29 16:13
- 名前: 長谷川まひる (ID: owBmHTcu)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/regist.cgi?mode=mente&f=13347
第一章
第一話
「ハッ……ハッ……ハッ……」
木々の茂る深い森を駆けるのは、その手に剣を握った少女だ。
彼女の父親の道具箱から勝手に持ち出した狩猟服はすでにところどころに裂け目ができている。
少女は追われていた。
赤い目を持つ4匹の野犬に、だ。
昼、この森は彼らの庭である。
図体のでかい、凶暴な野獣どもはみな夢の中。
夜行性の野獣と入れ違うように、彼らは昼の森で獲物に目を光らせる、否、鼻を利かせる。
そして見つけた。
若い人間だ。
2本足で走る奴は、4本足で走る彼らよりも足が遅い。
絶好の獲物であった。
「ヲゥッ!!!」
取り囲め。
「「「ワゥッ!!!」」」
御意。
追え。逃すな。必ず仕留めるぞ。
弱らせろ。弱らせろ。弱らせろ…。
そして……
「ガウゥッ!!!」
跳びかかれ!!!
少女の足がもつれたと同時に野犬は一斉に跳びかかった。
その鋭い牙や爪が容赦なく少女の纏う、硬い革製の狩猟服にいくつもの裂け目を作る。
「キャーーーー!!!」
その華奢な腕に見合わない剣を振り回し、必死の抵抗を見せる少女だったが、とうとう観念した。
間違いだったんだ、私が狩人になろうなんて。
もう、なりたいなんて思わない。
もう、いいから。
もう、いいから。
この悪い夢から目を覚まさせて。
誰か、私を助けて。
だれか……!
「うぅ……!」
牙が、爪が少女の体を傷つけた。
もう、いい。
だれか……。
だれか……。
「だれかぁーーーー!」
その時、世界は止まった。
何かが少女の視界を遮った。
少女の身にまとわりついていた痛みが消えた。
え?
一転、そこから世界はめまぐるしく回った。
野犬は情けない声をあげながら、転げるように森の奥へと消えていったのだ。
何が。
少女は見ていた。
突然、少女の視界に現れた男が野犬たちを一度に相手取り、一瞬のうちに腰にあったナイフで数撃を見舞って弱らせ、有無を言わせずに撃退したその一部始終を。
少女の目に焼き付いたその光景は、少女の胸を高鳴らせた。
何……?
まさか。
この期に及んでまだ、私は……。
自分の目の前に立ちはだかる大きな背中を見上げた。
これが
「狩人……」
いいだろう。
後悔などは過去の話だ。
私はもう一度、目指すことにする。
私が見惚れたこの人のような
狩人になることを。
第一話 おしまい
- Re: 狩人 ( No.2 )
- 日時: 2022/09/09 11:45
- 名前: 長谷川まひる (ID: owBmHTcu)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13347
臨時はしがき
はじめは、きれいな文章を書くことが目標でしたが、当面は連載することに重きを置きたいので、ストーリーを進めることを優先に執筆していきます
第二話
「狩人……」
少女はつぶやいて、大きな影を見上げる。
狩猟服に身を包んだ男。
視線は鋭い。
黒い髪から察するにこのあたりの人間ではないのだろうか?
「立て」
低い声がした。
「へ?」
「立て」
惚けていた少女は我に返り、急いで立ち上がる。
「ついてこい」
男は不愛想にそういうと、迷いのない足取りでさっさと森の中を進む。
小さくなる背中に、少女は傷だらけの体に鞭打って何とか追いつく。
「あ、あの!」
「…ん」
「助けてくれてありがとうございます。
私、ユイカといいます。
その、あなたは___」
「口より足を動かせ。
元気ならスピード上げるぞ。」
「へ?」
ぐっと男の背中が遠くなる。
「そ、そんな!
ちょ、待ってください!」
ユイカが踏み出した時、ふわっと地面がなくなった。
「!?」
違った。
地面がなくなったのではなく、足に力が入らなくなったのだ。
「はれ?」
そのまま土の上にうつぶせに倒れこむ。
「うっ!」
そして気づく。
足だけでなく、体にも力が入らない。
そして、視界が濁る。
あれ、これ、しぬ?
「___!」
遠くから声が聞こえる。
「おいって!
ったく、毒か、これ?」
駆け戻ってきた男の声だった。
どく?
これ、しぬやつじゃ…?
ユイカの意識が闇に沈む___。
第二話 おしまい
- Re: 狩人 ( No.3 )
- 日時: 2022/09/16 17:14
- 名前: 長谷川まひる (ID: owBmHTcu)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13347
第三話
ユイカは目覚めた。
早朝、窓の外では鳥が歌っている。
平和な朝だ。
いつもの、平和な____
「っじゃない!」
ってか、ここどこ?!
心穏やかでいられるわけがない。
ユイカは飛び起きる。
毒のせい(狩人がそう言っていたのが耳に残っている)で、森でぶっ倒れ、目覚めると知らない部屋のだれのものかわからないベッドで横になっている。
窓の外には案の定、知らない町並みが広がっている。
冷静でいられるわけがない。
え?
これ、夢?
というか、天国?
私、毒で死んで___
狩人になる夢は?
「っはよー!
おしおし、起きてんね!」
木の扉を元気な挨拶とともに勢い良く開けて入ってきたのは見知らぬ女性だった。
「初めまして、お嬢さん。
私はマイ、薬師兼医者だ。」
「は、じめまして。ユイカ、です。
えっと、ここは___」
「よーし、じゃあ___退院で!」
「はい?」
「ん?どした?
退院だよ、さあ、どうぞ。
退院おめでとー」
と言いながら、女性はにこにこ笑顔で扉へ導く。
「はーい、お世話になりました___
っじゃなくてっ!毒は?!」
「ん、ああ。
大丈夫大丈夫ぅー」
「大丈夫じゃない時の対応っ?!」
「いやいや、本当に大丈夫だから。」
「そ、その根拠は___?」
うっかり扉の外へ追い出されそうになるのをぐっと踏みとどまる。
「お嬢さん__じゃなくて、ユイカちゃん。
“赤目のミチビキ”に噛まれたんでしょ?」
「み、ちびき___」
「ワンちゃんっていえばわかる?」
「はい」
「だから、ただの神経毒。」
「シンケードク?!いやな響きっ!
や、やっぱり私、死んでるんですか?!
まだ、狩人にもなってないのにっ!」
「どうどう、落ち着け」
泣きすがるユイカを薬師兼医者の女性、マイはなだめる。
「ただの催眠系の毒だよ。
寝て起きたのなら完治同然。
ノープロブレムだよ。」
さ、行った行った。
と、マイはユイカを追い立てる。
「っと、待てよ。
嬢ちゃん、狩人って言った?」
マイと押し合いへし合いしていたユイカは急に力を抜かれた反動でぶっ倒れる。
「ブヘッ?!
___そうですけど___」
”赤目のミチビキ”とやらに噛まれた擦り傷が鋭く痛む。
「へぇ___」
マイは突然真剣な目つきになって、倒れ込んだユイカを見つめる。
その冷たいまなざしにユイカの背筋は固くなる。
そして、マイはおもむろに口を開いた。
「ねえ、ユイカは___」
「よ___っす!」
突然、元気な声が部屋とは反対の方向から聞こえた。
あの狩人ではないようだ。
「おっと、お客さんだ。」
マイは何事もなかったかのようにいつもの優しい顔に戻る。
「はーい、こっちだよ。」
「やっほー、マイちゃん。
元気してた?
___っと?」
顔を出したのはすらっとした体系の、長身の男性。
あの狩人とはかなり、その身にまとう雰囲気を異にする。
あの狩人がオオカミだとすれば、目の前に立つ彼は陽気なサルだろうか。
その見てくれから察するに、彼も狩人なのだろうか。
腰のあたりには鎖鎌が下がっているが、鎌使いの狩人とは珍しい。
その人はユイカを見て「んん__?」と目を凝らすような仕草をした。
が、彼の眼もとには太いバンダナが巻かれているうえ、長い前髪がバンダナを覆っているのでユイカのことが見えているかは不明だ。
「なんだい、マイちゃん。
僕に永遠の愛を誓ったのに不倫かい、こんなかわいいお嬢ちゃんを連れて。
やあ、初めまして。この街で狩人一筋7年目、タロック=タンペットゥ(嵐)=マグルムだよ。」
「あんたにそんなもの誓った覚えはないよ。マイちゃんはみんなのマイちゃんなの。
__でも、ちょうどいいわね。」
そういうと、マイは立ち上がろうとするユイカを指していった。
「狩人志望のユイカちゃんよ。誰か、先生になってくれそうな人、紹介してくれない?」
「ん?先生募集中なの?」
そういうとタロックはドンっと自らの胸をたたいてこういった。
「俺に任せろッ!最高の狩人にしてあげようッ!」
ん?
待てよ。
私はあの狩人さんに教えてほしいのだけど。
話の方向が___変わってきた。
ってか、ここどこよッッッ!!!
第三話 おしまい
- Re: 狩人 ( No.4 )
- 日時: 2022/09/30 09:57
- 名前: 長谷川まひる (ID: owBmHTcu)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13347
第四話
「え?話、飛びすぎ?」
「そうですよっ!」
早朝、知らない街に響いた悲鳴はユイカのものだ。
「勝手に先生も決めちゃって!
ってか、ここどこですか?!」
「病院だけど、私の。」
「ッじゃなくて、この街はどこですか?!」
「バルト」
「バ・・・ルト、知らない街…」
血の気が引いた。
森をさまよっている間に、聞いたこともない街に来てしまったらしい。
___まあ、しょうがない。
「まあ、しょうがないよ。」
ユイカの心の声を聴いたかのようにマイが言う。
「森の中にある小さな街だからね。」
狩人が多いことで有名っていえば、そうなんだろうけど、それ以外何にもない街だからね。
と、マイは独り言ちる。
「で?ボク、先生でいいの?」
「だ、ダメです!」
「え?ダメなの?」
「やーい、フラれてるー」
「マイちゃん?!」
私の目指す狩人は森であったあの人なのだ。
これだけは譲れない。
「で、ユイカ。おうち帰らないの?」
「か、帰りません!」
「ご両親は___?」
「とにかく!私は一人前の狩人になるまで帰りません!」
「あらあら、何年後になるのやら___」
「絶対になりますっっっ!!!」
ユイカの言い切りにたじろぐマイとタロック。
「で?師匠はだれにするの?」
「森で私を助けてくれた人に教えてほしいんです。
名前は__わからないですけど__。
なんか、ウォって迫力のある人で!
身長はこ__んなんで、ナイフさばきがもう、うわってすっごいんです!」
「おうおう___ユイカちゃんの語彙力がすっごいですね___」
「__わからないですか?」
「いや、わかるけど。ねえ、タロック。」
「ええ、ソーマだね。」
二人の顔色は険しかった。
「い_やぁ、弟子とるかな、彼。」
「とらんでしょ。狩人なら他をあたったほうがいい。」
「そ、そんな___」
「じゃあ、一縷の望みにかけてみる?」
夕方くらいにきっと来るから、とマイは言った。
「すんません」
夕方、医務室で薬品の扱いを教わっていると、廊下からあの低い声が聞こえた。
「はいは__い」
いつもの陽気な声で返事をし、声のほうへと歩いていくマイに倣ってユイカもついていく。
そこにいたのはやはり迫力のある、あの男狩人だった。
「__さあ。」
ユイカはマイの促すままに頭を下げていった。
「狩人を目指しているユイカといいます!
ソーマさんの剣技を見て感動しました!
弟子にしてください!」
「___」
一息に思いを吐き出すユイカ。
長い沈黙の後、ソーマという狩人は口を開いた。
「いや__ですけど。」
第四話 おしまい
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