ダーク・ファンタジー小説
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- リバイバーズ
- 日時: 2022/07/11 00:02
- 名前: 咲兎 まいまい (ID: hDVRZYXV)
たとえば、突然死んでしまったとして。
たとえば、天使が現れたとして。
たとえば、生き返らせられたとして。
あなたは何者になりたいですか?
何事にも恐れない勇者ですか?
はたまた奇跡を信じる夢追い人とか?
それとも──いつも通りのあなた?
もちろん、どれもこれもあなたの自由!
一度死んだのだから、自分に正直になって生きてください!
応援してます信じてます。あなたが開く新たな世界を!
さあさ、これはそんな奇跡の物語。
輝くキラキラが躍り踊って舞い散り続ける。
涙溢れるフィナーレ待ったなし!
それでは夢の舞台の始まり始まり~。
──────
初めまして。作品閲覧感謝です。
まず始めに、この作品は若干のグロを含むので注意です。
物語の展開が明確に決まっているわけではないですが、頑張って執筆していくので、よろしくお願いします。
- Re: リバイバーズ ( No.1 )
- 日時: 2022/07/10 23:55
- 名前: 咲兎 まいまい (ID: hDVRZYXV)
【1話 僕と君だけの世界】
──とある住宅街の路地裏
「いや、いやぁあ! 誰か……誰かぁああぁあ!」
生々しいゴミの腐敗臭が立ち込める夜の裏通り。あちこちに建ち並ぶ家々に月光は遮られ、よりいっそう深い闇が隙間なく詰め込まれている。
そこを一人の女が走り抜けようとしていた。
仕事の残業帰りだろうか。シンプルな白いブラウスに膝下まで伸びたグレーのスカートを身にまとい、きつめの黒いヒール靴を無理矢理両足に履かせている。
一見普通に見える彼女に異常性を与えていたのはその緊迫した顔つきだ。
額から汗が何度も何度も垂れ続け、青白い肌を伝っていく。それらを服の袖で拭うこともなく、ただ不規則に吐息を漏らしては奇声に近い叫び声を上げていた。
「あぁ、ああああ……助けてえぇええ! 殺される! 殺されちゃう!」
開っきぱなしの瞳孔には涙が溜まり溢れていく。
空を飛ぶ涙の光も闇夜に喰われて消える。それはまるで、助けを求めても救いなど来ない彼女の残酷な運命を表しているようだった。
彼女の姿を捕らえているのはただ一人──捕食者だけだ。
「待ってくれよぉ。逃げなくたっていいじゃないかあぁ」
暗闇から現れた一人の男。黒とは対をなす白衣を全身にまとったその姿は、一粒の光もなしに彼の存在を目立たせていた。
女は不気味に響く声に思わず振り向いてしまい、男の左手に握られたものを見て、また声を上げる。
「いやぁああああ!!」
「あぁ、素敵な歌声だねマイハニー。ますます君が欲しくなってしまうよぉ」
男は左手で冷めた輝きを放つナイフを、指揮棒のようにゆらゆらと振りながら女の後を追う。それも女と同じ歩幅、同じスピードで。どれだけ走ろうと、二人の距離は離れもしないし縮まりもしない。あえて女の走り方に合わせ、二人の足音が奏でるハーモニーを聴きながら、男は恍惚とした表情で女を追いかけていた。
だが、突然にして男に別の考えが浮かぶ。
「あぁ、どうして逃げてしまうんだい。いや? そうか! 僕と追いかけっこがしたかったんだねぇマイハニー。それなら、頑張って追いかけて上げるねぇぇえ!!」
「いや、いやいや。いやいや! 誰か、ねえ!」
男の靴音が次第に速まっていくのが女にさらなる恐怖を与えていく。唯一の希望は目の前に見えた一筋の光。
向こうはこの街の中でも比較的人が多い大通りだ。きっと誰かいる。そう信じてひたすら逃げるしかなかった。
「待っててマイハニー。絶対捕まえて上げるから!! えへ、えへへ。エヘハハハハハヘへ」
「あぁ、あ、ああ、あ」
あと少し。たったの五歩程度で通りに出られる。足の痺れていくのも耐えて、また一歩足を前に出す。
残り四歩
残り三歩
残り二歩
残り一歩
「つーかまーえ──」
残り、ゼロ。
「誰か、助けてえええええ! お願い、誰か! 誰か!」
通りに出たと同時に今まで以上に声を張り上げた。足を地に蹴らせながら、必死に乾いた喉から叫び続ける。
だが、女の目の前に広がっていた光景は、彼女を絶望に突き落とすためだけに存在した。
「え……どうして……」
──どうして誰もいないの?
光溢れる月夜のスポットライトは女を映し出し、ただ嘲笑うだけだった。
そして刹那──
「つーかまえたあああああああ」
「イャああァアアアあアあ」
白衣の男は女を押し倒し、ナイフを向けた。
頬を赤く染めて、自身の唇を女の目元まで近づける。
「あは。あははは。やっと一つになれるねぇマイハニー。どうして君はそんなにも綺麗なんだ。ああああああ!! 君の内蔵を生で食べてみたい君のさらさらな血を浴びてみたい君の舌をアメみたいに舐めてみたい君のからだをぐちゃぐちゃにして飲んでみたいぃいいいい!!」
男は女の額あたりを舌でなぞり始めた。
「君の汗、ほんとうに美味しいよ! おかわり、おかわりしていいかい?」
「あああああああぁああぁああ」
女はただ泣き叫ぶしかなかった。こんなにも残酷で悲しい運命を、呪うことしかできなかった。
ドロドロとした液体が顔中を流れ始める。見れば男が犬のようにだらしなく舌を伸ばしては何度も息を吐いていた。
「もうだめだ! 我慢できないよ。君を、君を僕に殺させてくレェエェ一生のお願いだああ!」
男は大きくナイフを振り上げ、そのまま女の胸を貫いた。
「ア……」
女の生は一瞬にして途絶えた。
だが、男はナイフをすぐに抜きとり今度は頭、首、口元、とあらゆる部位を刺していく。白衣が赤く染まっていくのを見て、また頬をゆるめる。
「見てよマイハニー。僕の服に君の血が滲んでいる! くんくん。ああ、なんていい香りなんだ。えへ、後でまた『使わせて』もらうよ」
男は白衣を脱ぐと、後ろに背負った黒いリュックサックにしまった。そして左腕に巻いたデジタル式の腕時計を見ると、残念そうにため息をつきながら息もしていない亡骸に向かって話を続けた。
「追いかけっこ楽しかったねマイハニー。ここは僕と君だけの世界。だけどもうお別れだ。大丈夫、君のことは永遠に忘れないからね。それじゃ」
左手でひらひらと女に手を振り、男は路地裏に消えていった。
──とある街の大通り
「お、おい。なんだなんだ。うひゃあっ!」
「きゃああああなによこれ!」
「誰か、誰か警察!」
夜の九時頃、女の無残な赤い死体が街の大通りで多くの人々に発見された。
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