ダーク・ファンタジー小説
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- アクマコスモ
- 日時: 2022/08/08 22:48
- 名前: 乙瀬 衣夜 (ID: hDVRZYXV)
乙瀬 衣夜(おつせ いよ)です!
この作品は意味不明です!
けれど頑張ります!
日本語が変です!
内容は読めば分かります。
考えないでください。
感じてください。
目次です。
一話『アクマ・ミーツ・トーストガール』>>01
二話『最速デジャブと運命フラグ』>>02
- Re: アクマコスモ ( No.1 )
- 日時: 2022/08/06 18:31
- 名前: 乙瀬 衣夜 (ID: hDVRZYXV)
夏、それは太陽が湿った熱を放つ季節。
柄杓の雨をかぶった若葉たちが汗をてんてんと、だらしなく垂らしている。
人間だって若葉と同じ。アスファルトから上る湯気にみな意識を朦朧とさせるのだ。
朝、それは若き少年少女が学校に向かう時間。
日本のどこかにある、かつどこにでもあるような都市、永留街の中心にそびえ立つは清紅学園。そこには数百の高校生たちがいっせいに集う。
彼らの制服は白。上も下も、さらにその下のくつ下も、みんなみんな白。
学ランだって白。スカートだって白。髪の色とて例外ではない。
清紅学園の華々しき校則五ヶ条の一つ、『清く正しく美しく、白くまっさらに人間らしく』をしっかり守って高校生たちは今日もいつも通り、普通に楽しく生きていく。
だがしかし、その美しき若者たちの中に醜い少年が一人。
「ひそひそ。彼、今日も黒いわね」
「ひそひそ。当たり前よ、だってアクマだもの」
「ひそひそ。しっ、聞こえるわよ」
少年、闇風 亜黒は黒かった。髪もくつ下も、おまけに制服も。唯一の例外はその透き通った他の誰よりも白く白く白い肌。
暗闇を身にまとった天使。それはまさしくアクマ。
亜黒は歯をきしませ、舌打ちをかますと、肩に下げた黒の鞄を大袈裟に揺らす。
「は~たるいたるい。聞こえないとでも思ってんのかよ。お前らみたいなうぜぇ天使の囁きはよく聞こえるこったこった。本当にたるいねぇ」
「こそこそ。まあ今日もこわい」
「こそこそ。アクマの轟きも大概よ」
「こそこそ。ほらっ、早く行きましょ」
白髪の少女たちは亜黒から離れ、小走りで学園へ駆けていった。
亜黒はまた大きく舌打ちをし、のろのろと道のど真ん中を歩んでいく。その光景を見ていた周りの生徒たちも彼に近付くまいと、体を道路わきへと傾けた。
誰にも邪魔されず歩を進められるのを爽快に感じたのか、亜黒はコンクリートのカーペットを鼻歌まじりに踏みつけていく。
「おっと、そろそろか」
彼は視界の右側に見えはじめた白い清紅学園を見て、陽気に口笛を吹く。
「相変わらずの漂白っぷりだねぇ。ヘドが出るぜ」
そのまま白い並木の十字路を右に曲がり、学園を視界のど真ん中に映す。
学園は彼を拒絶するように逆風を飛ばした。
漆黒の前髪を押さえつけながら、彼は一歩、また一歩と前に進む。
──そのときだった。
「きゃ~~。たいへんたいへ~ん。遅刻遅刻~!」
「……は?」
あまりにも古典的なセリフを吐く少女の声がどこからか聞こえ、亜黒は気になって辺りを見渡す。
そして、声の主の居場所は……。
「まさか……うし、ってうぉ!」
「きゃ!」
彼の後ろであった。
これがアクマとトースト少女の出逢いである。
- Re: アクマコスモ ( No.2 )
- 日時: 2022/08/08 22:44
- 名前: 乙瀬 衣夜 (ID: hDVRZYXV)
「いっってぇ……」
亜黒はコンクリートの熱で赤く腫れた鼻を押さえながら立ち上がると、後方を睨み付ける。
そこには手をあちこちに動かし、アワアワと半分涙目の少女がいた。
「だ、大丈夫かなぁ?」
少女は亜黒の蛇よりも鋭く尖った瞳に肩を震わせながら、彼に右手を恐る恐る差し伸べる。
「ったく、何すんだてめぇ」
亜黒は人に頼るのが嫌いだ。もちろん少女の手など振り払って自分の力で起き上がる、ように思えたが、彼は鼻に続き頬を紅潮させ、向けられた右手を優しく握った。
亜黒は可愛い女が好きだ。
少女は丸く水晶のように透き通る白眼を大きく開いて、彼を一心に見つめる。
そのままう~んと小鳥みたいないじらしい声で、亜黒の身体を持ち上げた。ただ、彼があえて地面の方に体重をかけていたのにだ。
「結構力あんだな」
「……あ、うん! 鍛えてるから!」
少女は右腕を直角に曲げて、自慢げに鼻息を鳴らした。そのまま嬉しそうに一回転してから、もう一度右腕を曲げる。そのとき揺れた絹のような白髪が日光に包まれ、天使の輪を作り上げていた。
「ったく、これからは気をつけろよ」
「うん! ありがとっ。それじゃ急いでるから」
少女は地面に落ちたトーストを拾うと、大きく両手を振りながら亜黒のもとを去った。
天真爛漫という言葉がぴったりと当てはまる可愛らしい少女の後ろ姿を見て、亜黒は緩んだ頬を隠そうともしなかった。
ちなみに彼は少女の名前を知っている。
佐倉 クララ、清紅学園のマドンナだ。
「今日は良い日になりそうだな」
亜黒は耳横の黒髪を指でつまんでニヒヒと笑う。
それがしばらく続いていたために、多くの生徒が恐怖をあらわにして彼の横を通っていた。
それに気づき、徐々に我に返ると、彼は大きな舌打ちをしてまた歩き出す。
そして、いい加減に学園に着かなければ。そう思っていたときである。
彼に最速のデジャブが訪れた。
「あーー……いけないいけないちこくちこくー」
「は?」
亜黒はついさっきのこともあり、すぐに後ろに振り返る。
そこには、案の定トースト少女二号が。そう感知したときには既に、彼の顔面は二号の蹴りを受けていた。
「ぶぐふぉ!??」
彼女の蹴りはかなり強く、鼻がねじ曲がった感覚が顔面のみならず、全身の神経を伝う。次第に鼻から赤い滴がポタポタと汗に混じって垂れてきた。
こんなことするのは一体どんな女だ。亜黒は二号の姿を目に焼きつけるべく、怒りで血走った瞳を彼女に向ける。
「……な」
亜黒は信じられない光景を目の当たりにする。
二号少女の異常さはここにいる誰もが一瞬で理解できただろう。
そこには確かに、全身桃色づくめの少女がいた。
「あらごめんなさい。あなた黒いから人間として認知できなかったわ。でも今あなたはトーストを加えた私とぶつかった。つまり、たった今、あなたと私は運命を共にすることになったわ。これからよろしく」
二号少女はひきつらせた微笑を亜黒に向けると、彼にまっすぐ手を差し伸べた。
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