ダーク・ファンタジー小説

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カガミヨカガミ
日時: 2022/08/11 14:48
名前: みずま (ID: XLYzVf2W)

――これはナニかが狂った二つの世界線の地球ほしのおはなし。



一つは地位が「鏡に映る」美しさできまる地球。


もう一つは恋焦がれる相手すら選べない地球。

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>>1 >>2 >>3 >>4




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みずまといいます。初投稿、八月八日より投稿開始いたしました。

継続力と語彙力には自信がありません。ですが失踪だけは避けて、マイペースながらも投稿を続けることが目標です。

よろしくです。

Re: カガミヨカガミ(No.1) ( No.1 )
日時: 2022/08/08 04:05
名前: みずま (ID: XLYzVf2W)

一 鮮明な

 宿命論。世の中の出来事はあらかじめどうなるかなんて予め全て決まっていて、その運命を努力で変えることはできない、という考え方。
 それがこの世界線では適用されているのか。そんなの考えだしたらきりがないけど。

 そんなことなら「生まれ変わり」を十五にもなって信じて。いっそこの身を投げ出してしまおうか、なんて。馬鹿馬鹿しい。本当に…。













 『馬鹿馬鹿しい』……よな………





































 「馬鹿馬鹿しいこというなよ。」

Re: カガミヨカガミ(No.2) ( No.2 )
日時: 2022/08/08 05:25
名前: みずま (ID: XLYzVf2W)

二 濡れた無情


 「ん…。」

思わず声が漏れた。冬の日中。余地がないくらいに濡れて透けた制服。

 仰向けだった身体を起きあげ、座り込むと同時に、ここが海であるという記憶が蘇る。そして全身が感覚を取り戻す。思い出したかのように急にあり得ない寒さが肌を刺す。身体が痺れて動かないほどに。

 そうして思考が追いつく。


 死のうと…したんだっけ…。



 俺は最寄りのバス停まで行って、バスを待った。ど田舎じゃないのに茶色い錆が覆う、古びたバス停の標識。最早駅名なんて半分も見えないほどになっていて。

 そんな標識の下の青いプラスチックの椅子。それは無駄に綺麗で。

 そこに座り、真上を見ると、俺の気持ちなんて一切無視したような陽気な太陽、明るい水色の空。気温は五度前後だろうか。

 
 俺は終点の向こう側へ歩き、家からは遥か遠い海岸に着いた。

 今更何も感じなかった。ただ清々しくて。

 俺は浅瀬へ裸足で遅足で突っ立って。そのまま寝転んだ。



 髪が濡れて。足先が痛いくらいに冷たくて。

 その感覚も何故だが徐々になくなっていったのがわかった。鮮やかな水色が、俺の人生の幕引きを祝福しているとでも思っておこう。

 そのまま目を閉じて眠ろうとした。眠ったまま海に流されて知らない間に亡命したかった。


 ―神様は無情だ。
 
 こういうときは願いを受け入れてくれない。

 それか、神様もこんな『ひねくれた』やつの願いなんてどうでもいいのか…。


 でも、なんだかもう一度眠りにつく気にはなれなかった。ただ、




 恋焦がれる相手すら選べないこんな世界なら、消えてしまいたい




という思いが昇華して、俺の心にずっしりとのしかかって残ったままだ。

Re: カガミヨカガミ(No.3) ( No.3 )
日時: 2022/08/08 11:01
名前: みずま (ID: XLYzVf2W)

三 色褪せた


 朝。レースのカーテン越しに白い光が差すいつもの寝室。鳥が鳴いている。

 「おはようございます。坊ちゃん。」

 「……おはよう。」

 いつもの女性がベッドメイキングのために入ってくる。いわゆるメイドさん。

 今日も何気ない日常の一部に過ぎなかった。

 …はずだった。



 服に袖を通す。髪を整える。そして、薄い化粧。

 一応国民を代表した「美しい顔」として生きているから。身支度はしっかりしないとな。





 …………。






 …見た目に気を遣うのはとてもいいことだと俺も思う。ただ、生まれつきの顔が少しよかっただけで、地位が上になってこんなに生活が裕福になって。

 
 俺は日本の美しい顔上位十人のうちの一人。九位。

 
 だが、九位になった瞬間から親と引き離され、日本の「顔」として生きるべく常に美しくあることを強いられ。ずっと化粧をしているような状態。




 なんだか最近は、













 自分のもとの顔が思い出せない。

Re: カガミヨカガミ(No.4) ( No.4 )
日時: 2022/08/11 14:47
名前: みずま (ID: XLYzVf2W)

四 乾いた頬

 『連れて行かないで…!』

 あの時の母さんの涙でぐちゃぐちゃの表情。
忘れるにもこびりついて離れないくらいに焼き付いて忘れられない。

 _この世界の基準は美しさ。

 正直母さんも父さんも特別美しい訳ではないが。俺は俺自身もそこまで美しいとは思わないし。
 そもそもこの顔が美しい、美しくないだとかは誰が決めているのか。いろいろ腑に落ちない。

 でも、正直もうどうでもよかった。

 権力者でもなんでもない俺が、こんなこと疑問に思った地点で何も変わらないし。涙もでない。


 俺はなんとなく宮を出た。



 …また来てしまった。
 近くの海岸。最近やたら無性にここに来たくなってしまう。ここから水平線やら空やらを見るのが好き。
今日の空は澄んだ水色だ。「美人」とは違った美しさ。万国共通の。

 だが、そんな穏やかな時間はここで終わった。

 
 「…え?」
砂浜を見渡したとき、ひとりなのに思わず言葉がでてしまった。
 人が…倒れている…?
恐る恐る近づく。間違いない。男の子だ。

 駆け寄って目を閉じて倒れているその人に声をかけようとした。

 俺は止まった。

 目を閉じていたが、確かに感じた。その顔に懐かしさと安心感を。


 それは本当に、『俺の顔』にそっくりだった。

Re: カガミヨカガミ(No.5) ( No.5 )
日時: 2022/08/11 14:59
名前: みずま (ID: XLYzVf2W)

五 幸せですか

 何か気配を感じて今にも眠りにつきそうで重くなった瞼をこじ開ける。

 最初はすりガラスみたくぼやけていてわからなかった。目をこする。
 なんだ。何もいない。

 そう後ろを振り返ると、安心した顔をした少年が俺の顔をまじまじと見ていて。ブローチのついた綺麗な服だった。そしてつやつやな髪、肌も白くて透き通った感じ。
 
 顔も整ってて美少年、て感じだったけど、少し既視感をおぼえた。

 
 …そして、気まずい時間が流れた。沈黙。


 すると静寂を切り裂くように少年が口を開いた。

「大…丈夫ですか?」 

「…え、はい。どうも。」

 そして少年は言う。

「あの。初対面で変なこと聞いてしまって申し訳ないのですが…今、」



「幸せですか?」


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