ダーク・ファンタジー小説

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喧嘩無双1話
日時: 2023/01/14 07:38
名前: ミートスパゲティ (ID: LQINEF0U)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

「行ってきまーす。」
誰もいない家に向かって俺は声をかけてから家を出た。
両親と妹は俺が小さな頃に暴走族に誘拐された。
家族は今も生きているのか、もう死んでしまったのかわからない。
6年前、俺の家に暴走族が入ってきた。
その時は異様なほど暴走族が多く、喧嘩を見るなんて日常茶飯事だった。
両親は俺と妹を守るため、暴走族の前に立ちはだかった。
だが、やられてしまい、妹までも誘拐された。
俺は暴走族から家族を取り戻そうと、必死で戦おうとした。
だが、相手にされず蹴り飛ばされて気絶していた。
気絶から覚めたときには家には誰もいなかった。
まだ、小さかったため何が起こっているのか理解できていなかった。
家の中を探したが、やはり見つからない。
そこで俺はようやくすべてを理解した。
ーーみんな誘拐されたんだーー
ただひたすら泣き続けた。
まだ、暴走族が家の中にいるかもしれない。
そう思うと怖くなり、急いで家の外に出た。
ただひたすら泣いている俺に気づいた人が近づいてきて、何があったのか聞いてきた。
俺は泣きじゃくりながら喋った。
昨日の夜、暴走族が家に来たこと。
家族がみんな誘拐されたことも。
その人はただただ頷いていただけだった。
俺が話し終わったらその人は「私の家に来ないかい?」と、聞いてきた。
俺は頷き、その人についていった。
その人は年齢が70代前後の紳士でとても年寄りには思えないほど元気だった。
その人の家はいかにも昔らしい和風の家だった。
「少し家で待ったてくれないか?」
俺は首を縦に振った。
するとその紳士はニコリとして家を出ていった。
はじめのうちは大人しく待っていた。
だが、時間が立つに連れ不安になってきた。
家族が暴走族に連れて行かれたため、警戒していたのだろう。
もしかしたらあの人もそう思いまた家を飛び出そうとした。
だが、玄関にちょうど紳士が帰ってきていた。
紳士はハンカチで俺の目元を拭いた。
泣いていたらしい。
紳士はそのまま俺のことを抱きしめてくれた。
その時、俺は後悔した。
なんで疑ってしまったのだろうと。
紳士は交番に行っていた。
俺のことを話すとそのような事件が他にも起きているらしい。
警察官は俺を預かると言ったようだが紳士がそれを許さなかったようだ。
それから俺は紳士と暮らした。
日が過ぎていくたびに家族のようにかよくなった。
小学校に入ったとき、同じように親が暴走族に連れて行かれたという子が何人もいた。
同じような子がいるということを俺はそこで初めて知った。
だが、去年、その紳士もこの世を去った。
がんを患っていたらしい。
お葬式のときに俺は泣きたかった。
だが、泣かなかった。
笑ったのだ。
なぜなら紳士との約束があったからだ。
生前、紳士はよく「拓海の笑ってる顔が好きだよ。」と、よく言ってくれた。
笑ったのは俺だけじゃなかった。他の人もみんな笑っていた。
皆、同じようなことを言われたのだろう。
だが、お葬式が終わったとき、俺は一人の男性に声をかけられた。
その男性は紳士の息子だった。
その人が言うには、紳士はがんでなくなったのではないと言った。
"暴走族"に殺されたらしい。
俺は怒った。
一度ならず二度までも俺の大切な人を奪った。
世界が許すならば殺してやりたかった。
だが、それも無理な話だった。
俺には力がなかった。
勝てないことくらいわかっていた。
ただただ恨むことしかできない自分を恨みたかった。
俺はまた一人になった。
だが、もう5年生なため、ある程度のことはできる。
俺は紳士死んだあと、前の家に戻った。
家具などは何も変わっていなかった。
そこからはいつも通り学校に行く。
そんな毎日を過ごしている。
今日も同じように学校に行こうとしていた。
「どーしたんだよ、そんな暗い顔して。」
急に後ろから声をかけられか振り向く。
そこには龍心がいた。
竜心も同じように幼い頃に両親を暴走族に誘拐された。
俺と違うところは両親が誘拐されてから親戚の元で育てられたということだ。
ほとんどの人はそうだった。
だが、拓海の祖父母はどちらも他界しており、紳士に面倒を見てもらった。
「いや。昔のことをちょっと思い出してたんだよ。」
「そんな嫌なこと、さっさと忘れちまわねぇと気が持たねーよ。」
「へっ。そーかい。」
俺だって忘れたかった。
だが、忘れれない。
いや、忘れれるはずがないといったほうが正しいかもしれない。
俺は死んでも奴らを恨む。
「また暴走族の喧嘩に巻き込まれて怪我したやつがいんだって。」
龍心がスマホを見ながらそう言った。
拓海たちが通っている扇小学校はスマホの持ち込みが許可されている。
誘拐されたとしても、位置情報が特定できるからだ。
(ま、親なんていねーけどな。)
「お前喧嘩売ってんのか?」
「あ?何だお前?やんのか!?」
「ハァ。また喧嘩だぜ?もう見飽きたぜ。」
「確かにな。」
声のする方を見てみる。だが、それは暴走族ではなかった。
普通の学生同士の喧嘩だった。
しかも一人と一人ではなく、5人と5人といったグループ同士の喧嘩だった。
「暴走族が増えてから物騒になったもんだな。」
思わずため息を付きたくなる。
暴走族だけではなく、皆このようになってしまうのだから。
「なぁ、拓海。あれうちの生徒じゃね?」
そう龍心が聞いてくる。
紺色のブレザーに灰色のズボン。
間違えない。扇小学校の生徒だった。
「ついにうちの生徒もかよ…。」
龍心はもううんざりといった様子である。
「え?あれって…。」
思わず目を凝らす扇町小学校は学年で名札の色が決まっておりその生徒達は6年生のオレンジ色の名札をしていた。
「おいおいまじかよ…。うちの学年の長澤たちじゃん。」
長澤たちは6年生の中でもたちが悪く、先生たちも手を負えないほどの問題児だった。
「もう行こうぜ。」
そう言い俺は龍心を連れて学校まで走ることに決めた。


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