ダーク・ファンタジー小説
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- テンカトリ
- 日時: 2023/09/15 23:37
- 名前: ミートスパゲティ (ID: LQINEF0U)
- プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
"忍者"。
それは400年ほど前に活躍されていたと言われているスパイのようなものである。
忍者であるもの、常に隠れながら生活する必要がある。
故に、人とはあまり関わりを持たない。
"普通"ならば。
ここにも一人の忍者がいた。
その少年は忍者と言うにはあまりにも明るく、そして優しかった。
この物語はそんな少年が天下を取るまでの物語。
>>1 1話 始まり
>>2 2話 決意
>>3 3話 訓練
星竜星
木工村出身の忍者。誰にでも明るく優しい心の持ち主。
両親を幼い頃に失い、12歳まで今川薫に育ててもらう。
親代わりの薫を溶軍に殺され緑軍の忍者になることを決意する。
今川薫
今川家の三男。
緑国の剣術指南役であり、一流の忍者でもある。
幼い頃に両親を失った竜星を引き取り我が子のように育てる。
中田翔
緑国の中心都市、鉄鋼地区の町外れで生まれた少年。
かなりチャラい。
竜星と同い年で性格も似ていて明るい。
竜星と一緒にいるうちに意気投合する。
今川義政
緑国の将軍で、今川家の当主。
竜星を緑軍に入ること進める。
武内忠影
義政の側近。
政治の才能があり、緑国の政治を主に行っている。
葛飾又三郎(爺)
義政から爺と呼ばれている。
他人の戦能を確認できる能力を持っている。
この物語フィクションです。実際の人物、団体とは一切の関係はありません。
- Re: テンカトリ 1話 始まり ( No.1 )
- 日時: 2023/01/10 23:08
- 名前: ミートスパゲティ (ID: LQINEF0U)
- プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「おっちゃん。こうか?」
俺はおっちゃんこと今川薫にそう聞いた。
軽く手裏剣を握り、的を狙う。
だがなぜだかまた的のはるか上を超え、その先にあった木に刺さってしまった。
「だ、か、ら、!そうじゃないって何回も言ってるだろ!」
おっちゃんはすごい剣幕で俺に近寄ってきた。
「だってよぉ…。」
俺はおっちゃんの圧に負けて口をもごもごさせることしかできない。
「全く…。」
おっちゃんは腕を組み、呆れたようにため息をつく。
おっちゃんは名門、今川家の当主、今川義政の三男で今川家の剣術指南役を努めている。
"普段"は。
おっちゃんは一流の忍者でもあって、忍者の指南役も努めてた。
今川家は緑国を支配しており、日本有数の百万石を超える領地の持ち主であった。
俺がいるここは緑国の端の方の村、「木工村」だ。
木工村とは名前の通り、木などの資源が多く取れる自然豊かなところであった。
「そんなんじゃいつになっても日の丸一の忍者どころか、忍者にすらなれないぞ。」
おっちゃんは厳しい口調でそう言った。
そう。俺の夢は、日本一の忍者になることだった。
「ほら。もう一回やってみろ。」
おっちゃんはいつもの口調に戻り、俺にまた優しく手裏剣を渡してくれる。
普段は厳しくてもときには優しいところがある。
俺はおっちゃんのそういうところが好きだった。
「軽く握って横から投げるんだぞ。投げるときは最後まで的から目を離すな。」
「軽く握って横から投げる。的から目を離さない…。」
おっちゃんの言ったことを繰り返し、手裏剣を投げようとする。
ーードッカーン!ーー
突如大爆音が起こり地面が揺れる。
「何だ!?」
おっちゃんが刀を抜き周りを見渡す。
音のした方をよく見てみると、そこには「溶」と書かれた旗がいくつも立っていた。
「溶国が攻めてきたぞ!」
村の誰かが声を張り上げて言った。
溶国とは、緑国のすぐ隣にある国でそこもまた百万石を超える大大名であった。
溶国は、日本の国の中でも一二を争うほど大きな国で、今最も勢力があった。
「今川薫殿!お命頂戴いたす!」
溶国の敵兵がおっちゃんの首を狙って束になってかかってくる。
だが、おっちゃんはものとせず一瞬で全員切ってしまった。
「撃て!」
相手の足軽大将のような人物が声を上げる。
するとその声に応じ足軽がおっちゃんに向かって銃を向けた。
「竜星!伏せろ!」
俺は咄嗟に名前を呼ばれ、木の裏に隠れ伏せる。
すると次の瞬間、物凄い銃声がする。
おっちゃんはそれをすべて避け全員に手裏剣投げつけた。
それは見事全て当たり、バタバタと倒れる。
「やった!」
俺は思わず声を出す。
すると俺に気づいた一人の足軽が寄ってくる。
「た…助けて…。」
俺は恐怖のあまり腰が抜けて逃げようにも逃げれずその場で助けを求める。
その足軽はニヤリと笑い俺に向かって銃を向けた。
「死ね!」
(ヤバい、死ぬ…。)
俺は思わず目を瞑る。
だがいつまで経っても銃声はしなかった。
目の前にはさっきの足軽が倒れていた。
死んでいたのだ。
「ったく…。」
そこにはおっちゃんがいた。
「おっちゃん、あの、俺…。」
また怒られると思い下を向く。
「説教はこいつらをやってからだ。」
おっちゃんがそう俺に微笑んだ。
「ほら、早く立て。」
おっちゃんが俺に手を差し伸べる。
俺はその手を掴み立ち上がった。
パラ
俺の肩の上に何が落ちてきた。それはただの木屑だった。
パラパラパラパラ
次々と木屑が落ちてくる。
俺は上を見上げる。
するとさっきの砲撃で木が燃えていた。
「おっちゃん!上!」
俺はそう叫んだが一足遅かった。
おっちゃんが振り向くと同時に木が倒れる。
「おっちゃん!」
俺は急いでおっちゃんに駆け寄る。
やはりおっちゃんは木の下敷きになっていた。
「今助けるから…。」
俺は木を持ち上げようとする。
だが相当な重さでびくともしない。
「竜星…。」
おっちゃんはかすれた声でそう言った。
相当弱っているみたいで、声が出ていない。
「俺はもう無理だ…。俺を置いて逃げろ…。」
「そんな終わりみたいなこと言うなよ…。」
俺の頬筋に涙が滴る。
「早く…!」
おっちゃんが最後の気力を振り絞って喋っているようだった。
「俺はおっちゃんを置いて逃げれない!」
俺はただひたすら木を持ち上げようとする。
「ありがとう…。」
そう言うとおっちゃんは静かに目を閉じた。
「おっちゃん?なぁ、返事してくれよ。怒ってくれよ!説教するんだろ!?なぁ!いつもみたいに俺を叱ってくれよ!!」
俺はただ泣きながら喋り続ける。
自分の弱さを恨んだ。
「お前だけでも…生き延びろ……。」
そうおっちゃんが喋った。
「おっちゃ…。」
その瞬間すごい風が吹く。
俺はその風に掴まれるように遠くに飛ばされる。
「おっちゃーーーん!!」
俺の声は虚しく、おっちゃんに届くことはなくそのまま風に消えた。
- Re: テンカトリ 2話 決意 ( No.2 )
- 日時: 2023/01/11 22:43
- 名前: ミートスパゲティ (ID: LQINEF0U)
- プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
俺が再び目を覚ましたのは布団の上だった。
先程までのことを思い出そうとするが、頭がまだぼんやりしている。
「おお!目を覚ましたか!」
そう一人の中年ほどの男が近寄ってくる。
「あなたは…?」
そう起き上がり尋ねる。
「申し遅れた。我は将軍義政様の側近、武内忠影である。」
その忠影と名乗った男は丁寧に自己紹介をしてくれた。
「義政様って…。」
「左様。今川義政様のことである。」
「は?」
今川義政というのはこの緑国の将軍である。
将軍自ら大田舎の木工村に来るとは考えられない。
「あの…ここは…。」
「忠影!少年が目を覚ましたとは本当か!?」
質問しようとしたが大きな声にかき消される。
「殿!本当でございます!この者がその例の者です。」
「そうか!」
そう言い俺の顔をまじまじと見つめる。
「えーと…なんか変なもんでも…。」
義政は想像より背が高く身体もがっしりしていていかにも将軍らしい見た目だった。
「お主、薫を知っているか。」
急におっちゃんの名前を呼ばれドキリとする。
すると全てを思い出した。
「おっちゃんは…おっちゃんは無事なのか!?」
思わず立ち上がりそう聞く。
俺は将軍にそう聞いたか将軍は残念そうにただ首を横に振るだけだった。
「そんな…。」
俺はその場に崩れ落ちた。
夢であってほしかった。だが、それも叶わぬ夢。
いつものおっちゃんを思い出すと涙が勝手に溢れ出てくる。
「そう泣くな。まだ希望はある。」
そう義政は言った。
「希望?」
「そうだ。」
義政は大きく首を振りそう言う。
「願石というものを知っているか?」
聞き覚えのない単語を言われ首を横に振る。
「願石というのはその名の通り願いを叶える夢のような道具だ。」
「それを見つければおっちゃんは助かるのか?」
俺は興奮気味に聞く。
「そう慌てるな。」
義政は俺を止めるように手のひらを俺に向けた。
「願石には種類がある。「溶」「煌」「闇」「水」そして「緑」だ。」
義政は指を折り曲げながらそう言う。
「皆その願石を取り合い争っている。それで我は戦のない平和の世を作り、 戦で死んでいったものを蘇らせる。それが我の目的だ。」
そう義政は言った。
「だけど、それで悪人とかが蘇っちまったらどうすんだよ!また同じことだぞ!」
いい考えだとは思ったがもう目の前で大切な人を失いたくない。
「無論。その可能性もないとは言えない。たが、その者達も蘇らせ、更生させる。それが我の夢だ。」
「どうだ?我が緑軍に入るか?」
そう聞いてくる。
「おっちゃんが助かるのなら、俺は何だってする。」
俺がそう言うと義政はニコリと笑う。
「それでこそ薫の弟子だ。」
義政はそう嬉しそうに言った。
「故にお主、戦能はなんだ?」
「戦能?」
またしても聞き覚えのない単語だ。
「なんと。薫から教わっていなかったのか。」
義政はそう驚いたように言った。
「爺はいるか?」
義政はそう大きな声で聞く。
「お呼びでしょうか。」
そう爺と呼ばれた人物らしき人がでてきた。
その人は背が極端に低く、竜星よりも低いくらいだった。
「この者の戦能を調べてくれんか?」
そう俺を指差す。
「お安い御用で。」
そう頭を下げる。
「若者よ。こちらに来なさい。」
そう俺を呼んだ。俺はその爺さんについて行く。
「ここに立ちなさい。」
少し歩くと神殿のようなところについた。
そこの真ん中には謎の印が彫られていてそこに立てと言われた。
とにかく今はこの爺さんの言う通りにする。
俺がそこに立つと爺さんは何やら呪文らしきものを唱え始める。
少し経つと爺さんは呪文をやめ俺に手招きをする。
俺は爺さんのもとに行ってみる。
「お前さんの戦能は「吸血鬼」じゃ。」
「まず、戦能って何のことなんだ。」
俺はその爺さんに聞いてみた。
「戦能というのは誰もが生まれ持った戦うための能力じゃ。だが、その能力は一人一人違い多種多様なものじゃ。」
そう説明してくれる。
「さて、義政様に報告しに行くかのう。」
そう言い爺さんはまたゆっくりと歩き出した。
- テンカトリ 3話 訓練 ( No.3 )
- 日時: 2023/09/15 23:36
- 名前: ミートスパゲティ (ID: LQINEF0U)
- プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
さっそく義政様に戦能を報告しに行く。
「おぉ!吸血鬼か!我も始めた見たぞ!」
幼い子のようにはしゃいでいる。
全く一国の主とは思えない素振りだ。
「さぁ、これからはお主にもじゃんじゃん戦ってもらうのだからさっそく訓練せねばな。」
忠影様がそう言ってくる。
「さぁ、後は忠影。頼んだぞ。」
そう義政様は忠影様に向かってそう言った。
忠影様は無言で頷き俺についてくるように合図する。
そのままついていくと俺は訓練所のような所に連れてこられた。
「さっそくお主の戦能を使ってみるぞ。」
そう忠影様は俺に言う。
「使うって具体的に…」
戦能について先程知った俺が使い方なんか知るはずがない。
「まずはこのような戦法陣を描く。」
そう忠影様は地面の砂に紋章のようなものを刻みだす。
「この戦法陣に自分の戦力を注ぎ込めば使えるようになる。
そう忠影様が戦法陣に手をかざすと、戦方陣の前から槍のような尖った岩が縦に並び複数出てくる。
忠影様の戦能は恐らく岩なのだろう。
「だけどいちいち描くのは不便じゃ…?」
俺はそう質問する。
敵の前でいちいちこんなことをしている暇はない。
「そんな時に使えるのがこれだ。」
そう一つの本を取り出す。
(どっかで見たことあるんだよな…。)
俺はそう思い記憶を探る。
「あ!それさっきの爺さんと行ったところにも!」
俺は思わず声を上げる。
「そうだ。この本には予め戦方陣が描かれておる。」
そう忠勝が影様は言う。
「だが、お主の戦能は特殊でな。今それに合う本がないので至急又三郎に作ってもらっている。」
ちなみに又三郎というのは爺さんのことらしい。
「だから、それまで少しゆっくりしておいてくれ。」
そう忠影様が俺に言う。
ここに連れてきた理由は何なんだ、と思いつつも声には出さない。
俺は大人しく椅子に座って待っておくことした。
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