ダーク・ファンタジー小説

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      二組の双子と、
日時: 2023/01/19 16:01
名前: 木皿 (ID: 3PvVMLZq)

【プロローグ】

大抵の物語は「いつも通り」が壊れることで始まる。それがものすごく気付きやすい時もあれば全く気づかない時もある。俺の場合は前者だ。
 まずは自己紹介でもしよう。俺の名前は五六暉仁。よく「名前なんて読むの?」と聞かれるから初めに言っておく。名字がフノボリで名前がテルトだ。俺には弟が三人いる。一人目の弟は俺と同じ学年だ。お互い早生まれと遅生まれだったから双子ではないが同じ学年になった。名前は五六照史。アキトと読む。あとの二人の弟たちは正真正銘本物の双子だ。一卵性双生児だから見た目もそっくり。流石にずっと家族をやっているから区別くらいつくが、パッと見ただけでは兄弟である俺でも間違えかねない。名前は五六邑と五六津だ。それぞれユウ、シンと読む。これだけ読むのに苦労しそうな名前ばかりつける親の名前は一と花だ。ご想像通りハジメとハナである。別にこの名前が嫌いではないがもっと読みやすい漢字もあっただろうにと思ってしまうことはどうか許してほしい。まだ年齢を紹介していなかったな。俺と照史は高校二年生。下二人は中学一年生だ。次が一番大事なことだが、俺ら兄弟には 『霊感がある 』。
 俺の場合、「霊感」というものを生まれながら持っていた、わけではない。それでも十七年生きてきた人生のうち半分以上の年月を霊感を持って過ごした。霊感に目覚めたのはいつだったか。小学生になるかならないかくらいの頃だったはず。それくらいしか覚えていない。夏だったような気もするし冬だったような気もする。でも霊感が出現した時のことではっきりと覚えていることがある。絶対に忘れることのできない、記憶。どんなに忘れようとしたってきっと忘れない。記憶喪失になってもすぐに思い出すんじゃないかなって思うような、そんな、記憶。俺が________。
 俺と違って、弟たちは生まれた時から霊感を持っていたらしい。ただ照史(あきと)の霊感は微弱で姿を見ることができてもかなり薄いらしい。霊感が薄いということは危険を察知しにくいということだ。今でもその霊感の少なさは変わらない。俺の霊感が出現する前は照史がしょっちゅう全く霊感のない俺に危ない場所を教えてくれていたが今は立場が逆になっている。別に残念ではない。むしろ頼ってもらえるというのは嬉しいことだ。
 双子は照史の逆でべらっぽうに霊感が強い。だからと言って安心はできない。むしろより危険かもしれない。幽霊であっても濃くはっきりと見えるため人間との区別がつかない時があるのだ。特にゆうは区別がものすごく下手な為、間違って取り憑かれかける、なんてことも結構ある。今のところ取り憑かれたことはないが。
 心配事は多いが、まあびっくりするくらいここまでは順調に何事もなく過ごしていたのだ。その日まで。

Re:       二組の双子と、第一話「壊れる音」 ( No.1 )
日時: 2023/01/20 14:09
名前: 木皿 (ID: 3PvVMLZq)

1話 「壊れる音」

その日は特に何かあるわけでもなく、普通に学校に行って、部活をして、ちょっと買い物して、帰ってきた。双子はもう先に帰っていたらしく玄関に靴が脱ぎっぱなしで転がっていた。一緒に帰ってきた照史が怒りながらそれを整える。そして気づいた。見知らぬ靴があることに。俺はただ、また友達連れてきてんのかなって思っただけだったけど、照史はそれが半透明であることに気づいた。俺と照史は折角整えた玄関の靴が散らばるのも気にせずに急いでリビングの扉を開ける。
「邑!津!」
「おかえり〜」
そこには呑気にアイスを食べてる邑と津がいた。ほっと胸を下ろそうとした俺の目に見覚えのある青年の姿がうつった。見覚えのある、というか、そいつは、
「俺?」
「え、暉仁分身できるの?」
照史が動揺して良くわからないことを言っている。
「ほらやっぱり本物の暉仁じゃなかったじゃん。」
津が邑に言っているが俺の頭には全く入ってこない。え?ドッペルゲンガー?あの、会ったら死ぬっていう?え、俺死ぬの?
「いやまだ洗濯物も取り込んでないし夕飯も作ってないから死ねないんだが。」
思わず俺も変なことを口走ってしまった。
「やっぱりこれってドッペルゲンガーかな?」
なんとものんびりしている双子である。自分事じゃないからって酷い奴らだな。
「…とりあえず洗濯物取り込もう。一応天気予報じゃそろそろ雨が降るらしいからな。」
俺よりも先に平常心を取り戻した照史がいい、みんなで洗濯物を取り込む取り込むことになった。そして俺のドッペルさんだがなんだが知らないが、そいつも一緒に洗濯物を取り込もうとして、洗濯物に触れないことに気づくとしょんぼりと大人しく椅子に腰掛けていた。さわれない事にあまり慣れてない様子からして成り立ての幽霊なのだろうか?だとしても俺の姿というのは意味がわからない。

 ドッペルさん、ーーそう呼ぶことにしたーーはどことなくぼんやりとしているように見える。なるほど、ぼんやりしている時俺はこんな顔をしているのか。
「ドッペルさんはどこから連れて来たんだ?」
「…連れてきたって俺らが悪いみたいじゃん。今回は別に連れてきたわけじゃねえぞ。」
「そうだよ。勝手にドッペルさんがついてきたんだ。」
それを連れてきたっていうんだろうが。
「で?どこでドッペルさんに会ったんだよ」
双子の抗議は軽く無視して、話を進める。
「駅。いっつも暉仁と照史が使ってる。スーパーの近くの。」
ああ。あそこか。人気が少ないから幽霊にとっては過ごしやすいだろうな。ていうか幽霊なのか?うっすら透けてるし、物にも触れないから実体がないのはわかるんだけど。さっきからドッペルさんは喋ることができないのか口をぱくぱくさせている。俺らに声が届いてないことに気づくとペンを探してうろうろし出したがすぐにペンを見つけ、それで何か書こうとするもーーやはり持てなかった。何か伝えたいことでもあるのか?頷くことぐらいならできそうだ。
「ドッペルさんは幽霊なのか?」
こくこくとドッペルさんが頷く。それを見て双子もドッペルさんに質問を投げかける。
「なんで暉仁の姿なの?」
「バカ。喋れねーんだぞ。」
「あ、そっか。……暉仁のこと知ってた?」
ドッペルさんは少し考えた後ゆっくりと頷いた。
「俺らのことも知ってるのか?」
今度は照史も質問する。これにはドッペルさんは迷うことなく頷く。もしかして……いや、考えすぎか。俺と同じ姿だからといって同じ思考をしているわけではないし。頭に浮かんだ仮説をすぐに追い出す。が、やはり気になったので、聞いといて損はないし聞くことにした。
「お前は俺の幽霊か…?」
ドッペルさんはそれだよと言わんばかりに嬉々として頷いた。

Re:       二組の双子と、 第二話「××から来た」 ( No.2 )
日時: 2023/01/20 14:08
名前: 木皿 (ID: 3PvVMLZq)

 今、俺は俺の部屋でドッペルさんと向き合って座っている。ドッペルさんが俺の幽霊であると分かった後、みんなは頭の上にはてなマークを浮かべていたが、それを無視して連れてきた。これはあいつらには聞かせる必要のない話だろう。






「…あんたは未来の俺、で合ってるよな?」
俺の問いにドッペルさんは真剣な目でこちらを見た後コクリと深く頷いた。
 
 俺にはどうも普通の霊感以外に特殊な霊感(?)があるらしい。夢の中で過去に行ける、というものだ。今までもちょくちょく過去に行くという夢を見ていた。もっともその夢が実際に過去に、そして現在に影響を与えていると知ったのは最近だが。よっぽど大きな行動を起こさない限り簡単に過去は影響を受けないようになっているっぽいので仕方がない。ただ、今まで夢の中で過去に行ったうちのどの時でもドッペルさんのように物に触れない、喋れない、なんてことはなかった。確かに夢の中でも実体はあったはずなのだ。それなのにドッペルさんにはない。ということはドッペルさんは死んでいるのではないかーーー。しかし、俺は一度も過去の自分に会いにいったことがないし、会いに来られたのも今回が初めてであったから、もしかしたら過去の人間の前では喋れない、さわれないという条件があるのかもしれない、という説も捨てきれなかった。そんなこんなで、ドッペルさんに質問してみたら見事一個目の説が当たった、というわけだ。
 
未来の俺はどうやら死んでしまっているらしい。

 弟たちに知られたら面倒だから部屋に連れてきたのは正解だった。見た感じ年齢は今とそう変わらないように見える。服装からして死んだのは春か秋、というところだろうか。今は夏だから秋なのだとしたら結構すぐだ。
 死してなお、夢を見る。ありえなくもないが、ドッペルさんの身振り手振りや俺の質問に対する答えから考えるに死んだと思ったらこの時代(?)にいた、という感じだろう。「死ぬ」というのを「眠り」と捉えるのもまあ、かなり無理があるが一応可能だろう。

そうゆうわけで、その日俺らの前に、未来から来た「五六暉仁」の幽霊が現れたのだった。


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