ダーク・ファンタジー小説
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- 白くも、青くも
- 日時: 2023/01/18 21:32
- 名前: ぷれ (ID: 5R9KQYNH)
特殊能力っていいよね。
ちなみに僕は絶対音感を持っています。どうでもいいですね
投稿頻度いいの最初だけです
- Re: 白くも、青くも ( No.3 )
- 日時: 2023/01/21 14:36
- 名前: ぷれ (ID: 5R9KQYNH)
プロローグ
「なあ磨貴」
金色の髪の少年は言った。
「ん?」
「なんで俺らはこんな訳のわからねえ生き物と戦わなきゃいけねえんだ」
「さあ?」
黒髪の少女は答えた。
「なあ磨貴」
「ん?」
「なんで、みんな死んじまったんだろうな...」
涙を流した。
これが、この目の前の風景が現実なのに。
「...あたしらが弱かっただけだ。強くなるんだよ、とにかく」
あまりにも無慈悲で残酷な結末。
なんで、なんで。
「行くぞ。暁耶たちが待ってる」
どちらかが死に、どちらかが生きる。それが摂理だ。
少年と少女は歩き出す。帰るべき場所に。
- Re: 白くも、青くも ( No.4 )
- 日時: 2023/01/24 17:16
- 名前: ぷれ (ID: 5R9KQYNH)
第1章「歪んだ歯車」
1
「おい!起きろ!」
「...なんです?まだ6時じゃ...」
「もう6時だよ!今日は防衛省が視察に来るから準備しとけって言ったろ!」
銀髪の少女を叩き起こす金髪の少年。
「レンさんなんでもっと早く起こしてくれなかったんですか!」
「起こしたよ!何回起こしに行ったかもわかんねーわ!」
「磨貴さんと暁耶さんは!?」
「とっくに起きてるしなんなら寝れないつって3時に起きたぞ!」
「遠足前の小学生ですかあの人たちは!」
廊下を走る少年の名を雨宮レン。もう一人の少女をエレナ・グランセリカ。
今日は防衛省の視察があるので、この散らかりに散らかったPieceの本部内を大掃除している真っ最中だ。
「お!おはよーエレナさん。悪いけどそこの机どかしてもらっていい?」
「え!?はい、どうぞ...。ヒッ、G...」
「あらら、殺虫剤まかないとな。暁耶、殺虫剤ちょうだい」
栗色の髪の少年は船橋暁耶。黒髪の少女は海藤磨貴。
そして目の前に広がるゴキブリの集団。
まあ仕方のないことと言えば仕方ない。目黒区であるがゆえに避けては通れない道だろう。
「そういえば通訳さん来るつってたな。エレナ英語喋れたっけ。せっかく来てもらって仕事しないでっていうのもあれだし」
「ふぇ!?あ、あいきゃんすぴーくいんぐりっしゅ。ふぁっk」
「お待ちしておりました」
「どうしてそんな塩らしいんだろうかレンは」
「お偉いさんの前でいつもの口調で話したら即効解雇で、家事担当が居なくなるだろ」
心配するところが違うだろ。
スーツ姿の政府関係者は、本部施設に入っていった。
「雨宮所長、最近の被害報告を見てみると被害が最小限に抑えられていると。実に素晴らしいことです」
(なんで上から目線なんだよこちとら国民命がけで守ってんだぞ)
「...おい暁耶」
「へい」
「なんか、変な音しねえか...?」
磨貴の一言で、全員が聴こえたのだろう。
____平凡を演じていた者たちよ、この舞台から立ち去れ。
「一体どういう...」
「キシャァァァァァァ!!!」
甲高い鳴き声のような物が鳴り響く。
一発で確信した。
「フィクス...!」
異形の人形、フィクス。
その体は黒く、血管は煮えたぎっている。
正真正銘の化け物。
「くそったれ!なんてタイミングだよ!」
「レンはみんなを連れて逃げろ!俺らはこいつをなんとかする!」
「被害状況は?」
「はい、建造物破壊291件、死傷者12名、行方不明者2名です」
「...もはやPieceも使えんな」
黒服の男は呟き、パソコンに目をやる。
「雨宮レン、福音『無の章』...。やはり、こいつは使い物にならん」
「で、ですが過去には殲滅記録も」
男は、はぁとため息をついた。
「雨宮レンの能力は未知数がゆえに使えん。やつ自身、能力を使用できないことぐらい知っているであろう」
「研究データも無いに等しいですからね。何かあったんですかね」
「...さぁな」
- Re: 白くも、青くも ( No.5 )
- 日時: 2023/01/25 17:03
- 名前: 緋彗 (ID: 5R9KQYNH)
2
福音の観測史上で最も強いとされてきたのは「禊の章」である。
「禊の章」が最初に観測されたのは300年ほど前に、日本の有力な大名と文献には残っているが、詳細なことはほとんどが闇に葬られている。
「禊の章」は、自他の回復や穢れた者を殺す力がある。
「磨貴、必要な書類のコピー終わったぞ」
「ん、さんきゅ」
前日のフィクスの襲撃により、本部は半壊状態。
現在は防衛省の地下を使って生活している。
「レンさん休憩しましょうよー...」
「エレナさんに賛成~。もう7時間ぶっ通しだよ?流石に俺も限界」
「あともうちょいだから、我慢しろ」
____平凡を演じていた者たちよ、この舞台から立ち去れ。
その声が聞こえたと同時に、レンの頭に激痛が走った。
「っ...!」
「大丈夫か?」
どうやら他のみんなには聞こえていない様子だった。
鈍器で殴られるような激痛に耐えながら必死で立とうとするも、体が言うことを聞かない。
『非常事態宣言が発令されました。住民の皆さまは直ちに避難してください。繰り返します____』
「フィクスか...っておい、レンどこ行くんだよ」
「...」
呼び掛けに応答せず、レンは安定しない歩き方で屋外に出ようとした。
「...ゴア・シュバルツ」
その瞬間、フィクスめがけて無数の黒い槍が降ってくる。
フィクスは咆哮を上げながら、必死で動こうとするも、穴だらけになった体は動かない。
「っは!?レンが、これを?」
「ゴア・シュバルツ...?禁忌術式ですよ!レンさんが使えるはず...」
「...まずいことになったな」
磨貴の呟きに暁耶が反応する。
「磨貴さん、どういうことだよ」
「無の章の覚醒で、フィクスがレンを取り込もうとしたか」
「磨貴さん、取り込むって」
「...もしも、この文献が間違っていなければ、だぞ?無の章は本来存在しないはずだ。氷の章や光の章、禊の章は先祖の遺伝子を受け継いでいる。だが無の章は観測されたことはない。そもそもこいつの能力を無の章というのも間違っているかもしれない」
「つまり?」
「レンは、禁忌の存在かもしれない」
- Re: 白くも、青くも ( No.6 )
- 日時: 2023/01/29 15:34
- 名前: 緋彗 (ID: 5R9KQYNH)
3
「は?」
「だから、禁忌術式使えんのかって」
昨日のこともあって、レンは色々尋問紛いのことをされていた。
レンは術式がほぼ使えない。それゆえに司令塔のような役割を担ってきた。
「いや、そもそも俺4級術式すら使えないんだけど」
「はぁ...ゴア・シュバルツなんてもん、あたしらですら使えないのに、レンが使えるなんて何かありそうな気もするが」
いきなりそんなこと言われたって、使えないものは使えないで割りきりたい。
未だフィクスによる襲撃が絶えないなか、謎の声にレンの禁忌術式。ますます事態が混乱してきた。
「おーい、お前らー」
「なんだよ」
「今日から本部の位置が京都に移ったぞー」
暁耶の報告により、またしても混乱が増えてしまった。
「京都ですか!?やったー!」
「旅行じゃないからな。お偉いさんからの命令」
「ぶー。京都なら八ツ橋食べ放題だと思ったのに...」
「お前アホだろ」
『わりいなお前ら、仕事だ』
「んだよ人が京都楽しんでるってのによー」
フィクスの出現が確認されたため、仕事が来てしまった。
「フローゼンブラスト」
暁耶が言った瞬間、冷気をまとった光線がフィクスめがけて飛ばされた。
しかしフィクスはびくともせず、こちらに猛スピードで降下してくる。
「バカ野郎全然効いてねえじゃねえか!」
「当たり前でしょこの程度の術式じゃ効くわけないでしょ!!」
ギリギリのところで回避し、なんとかなった。
「ライトニングバースト」
エレナを中心に、黄金の光をまとって爆発した。
が、それも効いておらず。
「ねえ、もう無理じゃね?」
「何いってんだ、磨貴頼んだぞ」
「レン、覚えとけよ」
ニコニコの笑顔だったが、あとでボコボコにされるパターンだと、レンは悟った。
「ったく、あいつ今度前線立たせて囮にしてやろ。...プロヴィデンスショット」
体が青い炎で包まれ、猛スピードで突進した。
すると、フィクスの腹部には大きな風穴が空いていた。
「...マジ、疲れるからやめろ」
「磨貴!誉めて使わすぞ!」
「殺す」
- Re: 白くも、青くも ( No.7 )
- 日時: 2023/01/30 16:42
- 名前: 緋彗 (ID: 5R9KQYNH)
4
フィクスの爆発的な出現があり、人類は恐怖に駆られていた。
「くそ!殺しても殺してもキリねえぞ!」
「マップ攻撃は出来ないですし、これ以上は術式の使用が!きゃっ!!」
エレナがフィクスの斬撃を避けきれず、まともにくらってしまう。
「ちっ!おいレン!禁忌術式もっかい使えるだろ!」
「は!?だから使えねーっつてんだろ!磨貴の方が使えんだろ!」
攻撃をかわしつつ、大声で喋る。
「あたしだって使えねーよ!マップ攻撃出来ねえんだからもうこれ夜までかかるぞ!」
「しゃーない。許可取るか」
マップ範囲の術式は、建造物破壊などの被害が大きいため、政府に許可が下りなければ使えない。
「おっけ!許可下りた!」
「やっとかよ...じゃ、やるか」
磨貴がふうっと浮くと、術式の展開がされた。
「...エクリプスレイン」
空が黒くなった瞬間、フィクスめがけて赤く煙を上げている光の槍が降ってくる。
「キャァァァァァァァ!!!!!」
甲高い悲鳴にも近い方向を上げて、たちまち黒い液体となって形を失った。
ようやく戦闘が終わり、安堵の雰囲気に包まれていた。
「うし、とっととずらかるぞ。...おい、レン?」
「...」
レンはその場に立ち尽くし、下を向いていた。
「レンさん...?」
「...この舞台から、立ち去れ」
静かに、けれど力強く発した声とともに衝撃波が辺り一面に広がった。
前を向いたレンの目は赤く、光が宿っていなかった。
「なんだよ、あれ...」
レンの周辺には、真っ黒な背景が続いていた。
「こここここのぶた、ぶたたたたたたいから立ち去れ」
レンは壊れたゲームのように喋り、あり得ない角度に首を回した。
「おいレン!目を覚ませ!!」
「くっ...!アトラスブレード!」
エレナの手から、青色の光が剣の形になる。
今彼の目を覚ますのに最適でなおかつ近道は、攻撃すること。
「はぁぁぁぁ!!!」
「よせ!エレナさん!」
暁耶の制止を無視し、勢いのまま突っ込んでいった。
「ははははは破壊対象を捕捉。アポロバスター」
赤く発光した光の球体が、残像が見えるほどのスピードでエレナに向かって飛翔する。
「ごほっ!?かはっ!」
赤く光るそれは、エレナの腹部に当たり血液が辺りに飛び散った。
攻撃は止むことなく、そのまま続く。
「かはっ!?...スーパー、ノヴァ...!」
「なっ!?よせ!!」
レンを巻き込み、エレナは自爆した。
爆煙が二人を包み、一方は上半身だけ。もう一方は無傷。
「なっ...!?」
「...ミラージュフォート」
暁耶の周りに、氷の結晶ができ、それが次第にレンの周辺で花形になった。
ミラージュフォート、ハイリスクである特級術式で、一度使えばもう生きた者として戻ってくることは不可能。
「暁耶!お前まで死ぬぞ!?」
「いいよ、これで。もう、これ以外に方法が思いつかない」
パキパキと音を鳴らしながら、氷に包まれていく。
「殺、してくれ...!俺は、もうダメだから!!」
「!レン!!今助けてやるから!!」
「もう、無理だよ。俺、禁忌術式のせいで、体が変形し始めてる」
彼の足下を見てみると、膝の部分から腕が生えていたりと異形をしていた。
「お前はまだ助かる!!俺がこれで終わらせるから!!」
どちらも限界。レンが助かったとして、暁耶が助かる可能性はない。
「くっ...!ゴア・ヴァルキリー」
青い炎がたちまち、巨人となりレンに襲いかかった。
磨貴が唯一使える禁忌術式、ゴア・ヴァルキリー。魂と引き替えに、聖炎で構成された巨人を召喚することができる。巨人が倒されれば、使用者も消えてなくなる。
「お望み通り、お前を殺してやる...!」
涙が溢れだし、磨貴の腕は既に焦げてなくなっていた。
暁耶も、全身の半分が凍りつき、もはや死に際も同然だった。
「これで...」
「「終わりだぁぁぁぁぁぁ!!!」」
地面に重いものが落ちる音が鳴り響いた。
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