ダーク・ファンタジー小説
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- 青い夏の日と神様へ
- 日時: 2023/01/26 20:46
- 名前: しゅからま (ID: jJ.GwC2w)
以前書き出した青い夏の日と神様の内容と始めはほとんど同じです。
ちょくちょく投稿していこうかなと思います。
- Re: 青い夏の日と神様へ ( No.1 )
- 日時: 2023/01/26 20:48
- 名前: しゅからま (ID: jJ.GwC2w)
あの青い夏の日に
蝉時雨が五月蝿く響いた日に
きっと貴方の声すら掻き消すのだろう
「渚!!」
耳元で名前を叫ばれ私はびっくりしながら反射的に声をあげてしまった。
周りに人がいなくて良かったと安心しながら、声の主に文句を言った。
「ちょっと瑠夏、大きな声出さないでよ。びっくりしたじゃんか」
彼女は、瑠夏は私の唯一の親友だ。パッチリとした瞳が特徴的で、クラスの中では可愛い方だと思っている。
「うん、聞いてるよ」
「本当?それでさ、」
瑠夏は話を続けた。一体どこからそんな話題が出てくるんだ、と言うほどに話が尽きない。そこが面白くもあり、急に話が変わることもあるから半ば聞き流す程度で話を聞いていた。
「どう、面白くない?」
興奮気味に話す瑠夏に相槌をうつ。
大きな瞳の中がギラギラと光っている。余程に面白い話なのか初夏の暑さのせいなのか、瑠夏の頬が紅潮していた。
「うん、確かに」
瑠夏はだよねー、と楽しそうに笑うと何かを思い出したように声を出した
「あ!今日部活だった!じゃあ、またね。渚」
忙しなくパンパンになったスクバを手に取って、手を振りながら教室を出た
私も手を振り返したが多分気付いてない
明るく大胆な瑠夏のそばにいると少し呆れることもあるが、退屈ではない。
寧ろ毎日が明るくなって楽しい、本人には決して言わないけれど
ガランとした教室を見渡した。
いつもの騒がしい教室とは違う雰囲気に飲まれそうになる。
「わ」
鼻をくすぐる微風が窓から流れた。初夏の暑さには気持ちよく感じる。
ぼんやりと静かな教室で窓からの景色を眺めていた。
景色で感動することなど滅多にないが、ここから眺める景色はまるで絵に描かれているようだと思う。
都会のような立派な高層ビルはないけれど、私はこの田舎で充分だ。
そう思いながらしばらくぼんやりとしているとポケットが振動した。
携帯を取り出すと姉からの電話だ。
「お姉ちゃんなに?わざわざ電話して」
「あーあー、渚。早く帰ってきた方がいいよ。お母さんが怒っているから」
「え!?なんで?」
何かしてしまったのか、と思い返しても思い出せなかった。
焦りながら問い詰める私とは対照的に姉はケラケラと笑っていた
「動揺しすぎだって。部屋汚いからってさ」
その言葉にギクりとなり、慌てて弁解しようとした。確かに自分でも汚いとは思っていたが、後で片付けようと放置していたことを思い出した。
「いや、期末試験で忙しくて…」
苦し紛れの言葉に姉ははいはい、流しながら早くしてよと言う言葉と共に電話を切った。
母にはなんて言い訳しようと考えながらスクバを取り教室を後にした。
誰もいない廊下を小走りで校門に向かう。
体育館から声が漏れていた。元気の良い返事が聞こえる。
ああ、こんな暑い日にも頑張ってるんだと思わず感心してしまった。
自転車置き場で自分の自転車を見つけた。
手をかけるとずっと熱の吸収していたのか、すごく熱い。
我慢しながらサドルに跨り、力強くペダルをこいだ。
「はぁ、気持ちい」
思わず声を漏らした、それほどに火照った体を冷ましてくれる風が心地よかった。
通学路のガードレールの奥に広がる海が目に入った。波の音が微かに聞こえる。
交互に聞こえる音はまさに会話でもしているようで、何かの曲で聞いた海の声はまさにこれだろう。
自転車のこぐ足を早めた。家では怒った母がいる、とっと帰って叱れたほうがいい。
どんどん道を突っ切り、家に着く
そういえば言い訳を考え忘れていたが、まぁいいかと扉を開けた。
「随分な怒られっぷりだね」
怒られた私を茶化しに姉がわざわざやってきた。
自分の普段のだらしなさが原因だとわかっているから特に言い返せない。
部屋はきちんと片付けるべきだ。チリも積もれば山となる、これを身をもって実感した。
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