ダーク・ファンタジー小説
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- イマジナリー・レコード(1)
- 日時: 2023/03/15 06:45
- 名前: ten (ID: zMOZw82G)
あるところに、生物実験を繰り返す不思議な施設があった。
「 Biological Laboratory ( 生 物 学 研 究 所 ) 、通称 『BLY』 」
この国の平和や秩序を守るために開設された研究所で、政府・司令部などからの命令で、政府の長官を護衛する程の戦闘力・守備力を持った犬を開発する、他国との戦争に兵士として戦場に向かう動物を開発するなど、その実績は確かなものであった。
しかしその一方で、非人道的な研究も行われており、犬の感情を消し去り、人間に逆らえないようにする薬の開発や、人間より優れた戦闘能力を持つ兵器として開発するため、人間の脳を改造して犬と意識が繋がるようにしたり、軍用犬の品種改良の研究など様々な非道な行いをしていた
この日誌は、そんな謎に包まれた研究施設での記録を記したものである。
*今回は短編となっています。
( ⚡ ) 奇数の巻は長編、偶数の巻は短編という構成になっています。
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【DATE1】〈 ある密林に埋まった財宝を採掘せよ 〉
「今回の任務は簡単そうやな。頑張るで!――どう?使い方合ってる?」
エセ関西弁を放つその男の名前は、イトカイ・ロムア。
しかし、誰からも返事は返ってこない。そう。男は、友達がいなかった。
「ふぅ、まぁやるか。任務。とりあえず、司令部から詳細が届くのを待つとするか。」
「やあ、研究員たちよ。任務の詳細を各端末に送った。確認頼む。」
司令部総監督からのメッセージ確認するか。っていうか、相変わらず喋る時間短いな。まぁ別にいいけど。
〈 財宝採掘任務について 〉
【
・財宝の場所は、当局から140km離れたアルビークン州の密林だ。移動手段等は、大佐以外の研究員たちは、各自に任せる。
・財宝周辺には、財宝の守護者が埋めたとされる地雷がおよそ400個埋まっている。近くには住宅地がある。多くの命を奪うようなことは絶対にあってはならない。気をつけてかかれ。
・財宝の中身は司令部総監督しか知らない。深入りはしないように。
・周囲、特に住宅地の住民たちにこの施設の詳細は知られないように行動しろ。少佐は中佐、大佐など上の階級の研究員たちの手伝いなどをしろ。
・作戦実行は今日から2ヶ月後、6月20日とする。
・森の入り口から23kmも離れた場所に1つ目の地雷があるらしいので、2ヶ月の間に地雷は爆発しないと思われる。
】
(地雷の数はおよそ400・・・?これは制御できる動物じゃないと地雷に突
っ込む可能性がある。しかも財宝付近に400となると、おそらく1つ爆発すると、連鎖して爆発していくよな。そうなると被害は住宅地全体に及ぶだろう。)
そう、常に不測の事態への対処法を考え、なるべく人の目につかずに司令部から与えられた任務をこなす。それが、研究員の鉄則なのだ。
男の担当は、使用する生物・薬物の決定を任されている「生物・薬物班」だった。生物・薬物班の人数は43人。6人が仮案を提示し、残りの37人の多数決でどれを実際に使用し、実験を進めていくのかを決めていくのだ。
「先輩、使えそうな動物のサンプル、あと動物に注射する注射薬をざっと保管庫から漁ってきました。不備あったら、また教えて下さい」
「おう、今日も仕事早いな。ありがとう。」
この異様なほどに仕事が早いこの男の名は、ロンシー・ササキ。入所してから約2ヶ月で大佐になり、早くもロムアの信頼されていた。
「犬。まぁ嗅覚が人間の一万倍の犬もいるしな。爆弾物探知機にも勝ると言われている。まぁ、これを改造したらさらに優秀なのは間違いない。」
「カラス。もともと飛べるのは強いな。チンパンジーと同等レベルの頭脳を持っているとも言われている。しかし制御が少し難しいな。脳を都合のいいように改造しようか。」
「猿。場所は密林だから木の上を渡るのも良さそうだ。いや、地雷が高性能で感知の技術が高ければどうだろう? 木の根元などが揺れて地雷が作動したら意味がないな。飛行できるように細工してもいいが、費用がかかるし、なら、もともと飛べるカラスに任せてもよさそうだ」
「猫。背骨がしなるしジャンプは体長の4倍飛べるのだから、優秀だ。
近くに湖もないだろうし、苦手とされるものがあるわけでもないが、得意なこともないんだよなぁ・・・」
(おぉ…次は注射薬のサンプルか……)
――――パラパララララッッ。
慣れた手付きで特定のページを開き、ページをめくり、の繰り返し。
「E-19。その生物の身体能力を最高レベルに活性化させることができる。3回以上服用させてしまうと、効き目はなくなるので注意。特に効き目があるのは哺乳類。お、カラス以外は哺乳類だなぁ。犬は嗅覚、猿はジャンプ力、猫もジャンプ。やっぱりこの薬は今回も使うよな。」
「B-21。その生物のIQを最高レベルに上昇させることができる。特に効き目があるのは爬虫類。ん〜、こんなかに爬虫類はいない。まぁ一応効くのは効くし、使うか。」
「T-20。その生物を人間の思ったとおりに操ることができる。欲にいう
『 操り人形 』みたいなもん。だいたいの生物に効き目は薄い。だが、哺乳類には、結構な効き目がある。」
「 Y-72。その生物の視覚を最高レベルに活性化させることができる。これは正直、T20薬とは、セットがいいかもな。 」
「U-31。ある特製の機械に乗せてから2つの生物にこの薬をかけると、2匹の長所を合成して一つの生物にすることができる。E-19、Y-72、B-21とかと上手く組み合わせて服用させるべきだな。」
「F-154。付属している舌を生物につけて、人間が特定のマイクから喋ると、生物の舌が連動して声を発する。住民とかに見られると言い訳も面倒くさいし、これは正直あまり使いたくない。まぁ、使わなくてもいいし、一応持っていくとするか…」
(動物の鳴き声というものは消せない。現場で犬などの鳴き声が何度も聞こえてきたら、住民たちは不思議に感じるだろう。少しの気がかりな印象ですら住民に残さないよう、用心せねば。)
「先輩。当日作戦実行する際の生物類と薬物類決まりましたか?」
「おう。端末に詳細とまとめて送っといたから確認よろしく。」
「はい。生物・薬物班に提出してきますね。では。」
(よし、俺は確認終わったし、自分の作業に戻るとしよう。)
―――― ヴゥーッ ヴゥーーッ。
メッセージが届いたのか、端末が振動した。
「 わっ!この振動音いつまで経っても慣れねえんだよな…。真面目な話、音変更してほしい。 」
と、苦笑いするロムア。そう、男は、ビビりだった。研究員は、常に冷静でなければいけない。少しの破裂音などで驚いていたら、実験失敗が日常茶飯事のこの研究施設では生きていけないのだった。だが、男は、結構ビビりだった。
〈 ニワトリの鳥インフルエンザ感染の影響について 〉
【
・研究所で飼育しているニワトリ792羽のうち、第2棟のニワトリ11羽の鳥インフルエンザへの感染が確認された。
・第2棟の養鶏場内の全てのニワトリ(357匹)を殺処分することになった。残りのニワトリは、第1棟で172羽、第2棟で263羽、計436羽となった。
】
(今回はニワトリを使う案もおそらく出ないだろうし、あまり心配はいらないな。しかし、次の任務まで2ヶ月か。次の任務が大量のニワトリを用いる任務だったらどうだろう。まぁ、とりあえず今回の任務に集中しよう・・・)
――キーンコーンカーンコーン。
小学校の頃を思い出させるようなこのチャイム。
(懐かしいなぁ。ってかなんでこの音なんだ……?)
「伝達用の音楽と音声が故障したので、しばらくこの音楽と、音声です。22時です。用の済んだ研究員は、帰宅してください。中将以上の研究員たちは、班ごとの会議、そして終了後に全体での会議があるので、各自移動をよろしくお願いします。えぇ、繰り返します。22時です。用の済んだ研究員は、帰宅してください。中将以上の研究員たちは、班ごとの会議、そして終了後に全体での会議があるので、各自移動をよろしくお願いします。」
もうこんな時間か、とため息をつき時計を確認する。
「よし、後輩達待たせちゃアレだし行くか。」
速歩きで、会議室まで向かう。
「失礼。ロムアです。動物・薬物班の会議場はここですね。よろしくお願いします。」
「OK。これで班は全員揃ったな。只今より、会議を始める。」
揃うの早ッ。これは精鋭エリート達の集まりなのでは?
「まず、ロムア大佐。草案の提示を。」
「はい。まず、今回は、地雷が400程度ある森でのMISSION。連鎖して爆発していけば、住宅地にも被害が出てしまう最悪の事態を招くと思われる。そのため、安全で制御がある程度可能な生物を提示する。まずは、動物。犬・カラス・猫、この3匹。理由については、動物・薬物班の全員の専用端末に送信してあるので、確認頼む。続いて、薬物。E-19・B-21・T-20・Y-72・U-31、この5本。理由は、先に同じく端末に送信してある。」
いつもに比べて、内容が薄かった。薬物も、全て使用するとなると、金額は何百万レベルに膨らんでいくはず。司令部も、ある程度は政府からの援助金が出ているが、予算に収まらない気もする。思い返すと不安しかない案。
まぁ、何にせよ、一番良い案に決まるのだから、俺の草案じゃなくてもいいよな。
いろいろな案が出て、今回の班での提案会議は終了した。
次は、全体での会議か。忙しいが、これも政府の重要ミッション。成功すれば、結構な収入が支給される。ブラックだが、給料面で特に不自由はない。
次の会議では、まさかの発表があったのだ。
「ふぅ。これで、とりあえず今日の会議は終わりですね」
「あとは、今回のミッションを無事にクリアした場合の話だが…」
その言葉を聞くなり、会議室中の空気が変わった。全員が、期待を込めた眼差しを司令部に向けている。
「今回に限り、各班で活躍した2人ずつに100万円ずつ。以上だ!」
議場がざわめく。
「なんだよ、ぜってぇ俺の取り分少ねぇじゃねーかよ!」
「俺もだよ!わざわざ研究員なんてならなきゃよかったよ!」
「活躍すればいいだけだろ。まぁ、最初から馬鹿らしいこと言ってるお前らには、到底たどり着けんレベルだろうがな。」
司令部のエリートの言葉に会場がどよめく。
まぁ、色々あったが、とにかく会議は終わった。しかも活躍すれば100万。徐々に、重要なミッションで、政府も力を入れているということが理解できる機会が多くなってきた。
よし、ミッション成功に向けて頑張ろう。
〜 E N D 〜