ダーク・ファンタジー小説
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- オリ組殺し合いトーナメント
- 日時: 2023/03/13 21:10
- 名前: しらす (ID: iruYO3tg)
一戦目
曽根川vs川嶋
目を開けたら知らない天井が真っ先に目に入った。
ガバッと起き上がり隣を見ると川嶋の兄貴が寝ていた。
周りを見渡す限り出口はない、そして壁に大きく描かれた言葉に僕は絶句した。
[どちらかが死なない限りここからは出られない]
殺す?命の恩人を?
そんなこと誰だって無理に決まってる…
そう思ってその場にしゃがみ込むと後ろから声がした
「どうした曽根川」
振り向くと心配そうにこちらを見つめている川嶋の兄貴がいた。
僕は半泣きになりながらも兄貴に状況を説明した。
「身内同士の殺し合いか…」
説明を終えると兄貴は眉根に皺を寄せて机の上に乗っている''モノ''をみた
机の上にはチャカやドス、日本刀などが並んでいた。
僕は兄貴に泣きついた。兄貴が死ぬなんて嫌だって
子供みたいに泣いた。兄貴はそんな僕の頭を黙って撫でていた。
何十分かたって落ち着いた頃、兄貴は僕と過ごした時間のことを話し出してくれた。
僕を組に誘ったこと、一緒に焼肉に行ったこと、一緒にカチコミに行ったこと
振り返れば数えきれないほど沢山の思い出があったんだと思う。
兄貴が話を締めくくるとスッと立ち上がって思わぬ提案をしてきた。
「早打ち勝負で決めるか。」
というと、机の上のチャカを二丁とりそのうちの一丁を投げ渡してきた。
最初は納得がいかなかったが、兄貴の意図を理解した瞬間納得がいった。
僕は早打ち勝負で一度だけ兄貴に勝ったことがある。
だから兄貴は少しだけでも僕に勝機のある早打ちを選んでくれたのだ。
僕は立ち上がって兄貴の前に立ち、チャカを持つ。
兄貴はコインを取り出し、このコインが地面についた瞬間に撃てと説明してくれた。
お互いチャカを構える。
僕は兄貴にこういった
「僕が勝ったら焼肉でも奢ってくださいよ」
兄貴は「死んだら奢れねぇだろ?笑」と笑ってくれた。
これが兄貴との最後の会話だと考えると涙が止まらない。
そして兄貴がコインを投げた。
そのコインが地面についた瞬間、僕の鉛玉が兄貴の致命傷になる部分を捉えた。
だが僕は無傷だった、勝ってしまったんだ。
僕はチャカを捨てて兄貴に駆け寄った。
兄貴を抱き抱えて泣きじゃくる僕に兄貴は笑って「変わらねぇなお前は…」と言って事切れた
涙で視界が曖昧な中、僕の視界に兄貴の使っていたチャカが映った。
そのチャカは安全装置がかかっていた。
僕は泣いた。もっと泣いた。人生で一番泣いた。
兄貴は早打ち勝負なんてするつもりはなかったんだ。
そして僕は、一番尊敬している兄貴を失った__
勝者 曽根川 累