ダーク・ファンタジー小説
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- 2度目の人生は後悔しない!
- 日時: 2023/04/28 21:41
- 名前: 夜宮雪 (ID: ErSo6VVm)
「____お嬢様、お嬢様!」
ハッと目が覚める。
「全く、寝過ぎですよ!授業中だって居眠りなさるんでしょう?」
メイドがせかせかした様子でカーテンを開ける。
「しょうがないじゃない、人間には睡眠欲と言うものがあるんだもの。」
私は布団にくるまりながら、不服そうに言った。
「相変わらずの減らず口ですね、というか今日は朝一で掃除があるのでは?」
「…それガチ?」
「ええ、カレンダーに書いてありますが。」
「…詰んだわね」
飛び起きて全力ダッシュを始めたところで失礼しますけれども。
私の名前はサアディア=オルデンブルク、公爵家の一人娘。
ガチダッシュを決めてご飯をかっ食らい、
母に説教されながらもやっと家を出た私は川沿いの道に飛び出す。
今思えばあの時周りを顧みなかったのがいけなかったのよね。
「もうっ、こんな日に限って湿気が多い気候だこと。」
あと少しで校門にゴールイン、かと思いきや
「あら?」
まさかの馬が数頭こちらに向かって突進中。
うん、詰んだわね。
「なんでこのタイミングでこっちに跳んで来るのよー」
まあ避けることは出来ないだろうしここは素直にぶち当たって、
その後のことはその後に考えましょう、うん。
サアディアは、後先考えず行動に移すタイプだった。
「さあ、来なさい!馬ども!」
馬たちは速度を緩めることなく私に走って向かってくる。
ドゴッ
「……?」
どうも滞空時間が長いと思ったら、私は道の横に流れる川に放り出されていることに気付く。
うん、死の危機が迫っているわ。
物分かりがいい私はもはや遺言を考え始める。
そうね、うん、もっと人に優しくすればよかったなーなんて。
やっと15歳になる第一歩だわーと夢を見ればこの有様。
神様、私は何かしましたか?
あんなに寝坊助だったのがいけないのですか?
そろそろ死ぬタイミングかしら?
まあね、もし、これで私が死ぬなら、
「__つまんない人生だったわね」
「…おや、目が覚めたかい?」
まるで漫画で言う仙人的な爺さんの声が響く。
「ここは何処なのよ、そこのジジイ」
「もうちょっと穏やかな言葉を選んでくれないだろうか?」
「あら、失礼致しましたわ。そこに立っていらっしゃるクソジジイ様。」
「根本的な問題が何一つ解決していない口調だね。」
困り眉になるジジイに厳しい目線を投げかける。
「こっちは被害者なのよ?手短に!状況を説明しなさいよ。」
「まあまあ、落ち着くんだお嬢さん。」
すっかり呑気そうに落ち着いた仙人ジジイは座布団に腰掛ける。
サアディアは天界らしき場所に居座るのも何だと思い、立ったまま冷めた目でジジイを睨む。
「で、まずは、なんで私あんなしょぼい死に方した訳?」
「ほっほっほ、それはな、まあヒューマンエラーというか何というかゴフッ」
「なぁんですってぇ?私言い訳は嫌いよぉ?」
「すみませんわしのミスです、申し訳ありません」
サアディアは舌打ちをするとため息をついた。
「まあ起きてしまったことだし、もういいわ」
「安心するがよい、わしは被害者に何の施しもしてやらないほど悪人ではないぞ。」
「ふーん、何してくれるのよ?」
「もう一回、お前の人生を歩ませてくれようぞ。」
「リスタートってこと?」
「そうじゃ。赤子に戻って、やりたいことをやってくればいいさ。」
「なるほどねー、分かったわ。」
サアディアは満足した様子で大きく頷いた。
「じゃあ早速赤子に戻してくれるかしら、そこのジジイ」
「相変わらず恩を知らない娘だ、まあいいだろう」
「さあ、行ってこい」
__________
これで私、サアディアはもう一度、この世界を満喫することになった。
とまあ、いくらリスタートを切った人間でも幼児期健忘はある。
私が物心ついた瞬間は、小学校1年生になるのだった。
これからはまた、後悔しないような日々を過ごしてやる!
と、決意を込めて拳を握り締めた。