ダーク・ファンタジー小説
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- 死神は俺を救いたい 第一話
- 日時: 2023/05/04 13:32
- 名前: 夜宮雪 (ID: AzXYRK4N)
「よろしくお願いしますね、雨崎さん!」
俺は今、厄介な女に付き纏われている。
—————————
「…ん、朝?」
部屋の中央の布団に寝転がる青年。
その青年は雨崎佑。
中学3年生の男子。
「…あさごはん、食べなきゃ」
のっそりと起き上がり、鏡を見る。
やつれた表情。
「…ははっ、死にそうだなー俺」
乾いた笑い声を一人でに上げたが
青年の目は笑っていない。
「…早く行かなきゃ」
青年は独りで学校に向かい、教室に入る。
「、おはよう!」
『あっ、雨崎くんおはよう!』
青年は微笑みを返す。
彼は外面を取り繕うことで、自分を守るような人間だった。
『そういえば、今日は生徒会の会議があるって誰か言ってたよ』
「あぁ、分かった。教えてくれてありがとうね」
笑顔を返して教室を出る。
生徒会室に入ると、一人の女生徒がいた。
「あらぁ、雨崎さん。おはようございます!」
「…ははっ、おはよう。春原さん」
生徒会室の机の上で膝を抱えて座る少女は春原藍。
藍は取り繕った笑顔で挨拶をしてくる佑に頬を膨らます。
「何ですか、朝っぱらからそんなつまんない顔して。」
「え、そうかな?いつもこんな顔だと思うけど」
「いっつもそんなつまらない顔をしている、ということですよ」
佑も藍も笑顔だが、二人とも取り繕った笑顔。
佑は藍のことが苦手だった。
藍も同じ取り繕うような人間だったが、彼女はつかみどころがないような人間だった。
彼女は独特な雰囲気の女性だった。
彼は彼女のことが苦手だった。
1年生の頃、クラスが同じになり、学級長を二人でやった時から。
それからしばらく経って、容姿も表情も変わったお互いを見た時も。
俺は彼女のことが苦手だった。
「今日も疲れたな」
佑は帰り道でため息をつく。
部活帰りの時間帯になると、もう道は薄暗い。
ふと背後に人の気配がした。
振り返っても、誰もいない。
道は薄暗い。
気味が悪いとは思わないが、決して気分が良いものではない。
スッと視線を前に戻した時、
リーン
「っ!?」
「なんだ、防がれちゃうんですねえ」
目の前には鎌を持った藍が立っている。
いつもの彼女とは何か違う。
「春原、さん?」
「あーあ、別に偽名って必要だったんでしょうか?
そんなに重要じゃない気しますねえ」
「ぎ、偽名?」
「ええ、偽名です。[春原藍]は人間用の仮名ですから」
「私、死神なんですよ」
「…は?」
「えっ、思ったより驚いてなくないですか?」
「うん、まあ、なんか藍さんって異様な雰囲気はあったから」
「えー…」
彼女はドン引きと言わんばかりの冷たい視線をこちらに向けている。
「で、死神なら、俺の命が欲しいんじゃないの?」
「えっ、えっ」
「ほら」
「いやっ、ちょっと」
「そんな、別に吸血鬼みたいに肩から取るわけじゃないから!
肩見せないでー!」
「あ、そうなんだ」
藍は、初めての抵抗してこない人間を見て困惑している。
「あなたなかなかレアですね」
「そう?別に命に頓着がないだけだよ」
「あと、私別にあなたの命狙ってたわけじゃないですから」
「え?」
「あなたを観察するのが、今回の私の任務です」
「観察?」
「あなたは冥界より、観察対象として命じられています」
「……」
「えっ、なんで黙るんですか!?」
「いやー、反応に困るなあって」
「悲しんだりする場面ですよ!普通は!」
「まあそんなわけで、あなたの家にお邪魔させていただきますね!」
「はぁ?」
「いやぁ、いいじゃないですか。減るもんじゃないし」
「いやいや、何でだよ」
「観察対象のことは基本的に全部把握する決まりがあるんです。
なので朝から晩まで見ててあげますね♡」
「拒否権ねえのかよ」
「よろしくお願いしますね、雨崎さん!」
こうして俺と藍の生活は始まった。