ダーク・ファンタジー小説

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クライ喰らい
日時: 2023/08/07 18:38
名前: ぷりこ。 (ID: 7xmoQBau)

何故。
なんで。
どうして。
「なんで……?」
目の前にある、赤黒い塊。
それは愛しき両親だった。
何故こんなことに。
いや、わかってる。
何故なら彼は──彼等は見ていたから。
父と母が殺されるのを。
これは夢だ。悪夢なんだ。
そう自分に言い聞かせても、この光景は変わらない。
嗚呼──なんて嫌な夢。
早く覚めてほしい。
でも──
「これは現実だよ?」
どこからか聞こえた声に辺りを見渡すも、誰もいない。
だが、その声には聞き覚えがあった。
そうだ。
あれは──。
すると突然、白い光が彼等を包み込んだ。

-・-・-・-

ゆっくりと目を開くと、そこは見慣れた自室の天井だった。
そして、自分が泣いていることに気づく。
「(これは現実だよ、か……)」
枕元に置いてある時計を見ると、まだ起きる時間ではなかった。
再び寝ようと目を瞑るが、中々眠れない。
仕方がないと思い起き上がると、いつものように支度をして部屋を出る──とその前に。
「リオンお兄ちゃぁん、行くの?」
眠そうな声で自分を呼び止めた弟に、蒼い目で見つめ微笑みながら返事をする。
「うん、行ってきます」
彼は 春鍵はるかぎリオン。
最強の"イーター"である。
今から、イーターの任務に向かう。

-・-・-・-

任務の内容はこうだ。
"人喰いの森"と呼ばれる森の奥地に住み着いた怪物を討伐すること。
その怪物の名は、"クライ"というらしい。
クライは人を喰らう。だからそれを食い止める為に、イーターが派遣されたのだ。
しかし、今回の任務は一人ではない。
二人一組で行うものなのだ。
では誰と一緒に行くのかと言うと。
「おーい。リオン!!」
見慣れた洋風の街並みを歩いていると、後ろから男の声が聞こえていた。
その男は、黄色い瞳をキラキラさせながらこちらに向かってくる。
その姿を見て思わずフッと、笑ってしまった。
相変わらずの元気さだ。
「おはよう、カイリ」
カイリも同じくイーターで、その実力はリオンとトップを争う位である。
そんな彼を、リオンは好きだった。
その元気さに、何度救われたことか。
本当に、彼と組めて良かったと思う。
するとカイリが突然立ち止まり、不思議そうに首を傾げた。
ずっと喋らないことにどうしたんだと思わているのだろうか。
そしていきなり片手で肩を掴まれる。
「ほーら、早く行くぞ」
「あぁごめん、そうだな」
今日も、二人の冒険が始まる。
「はぁー、俺もイーターになりたいなぁ」
もう一人の少年の冒険も、始まろうとしていた。

クライ喰らい ( No.1 )
日時: 2023/08/07 18:41
名前: ぷりこ。 (ID: 7xmoQBau)

二人が到着した頃には、既に他のペア達が来ており準備をしていた。
今回の任務のリーダーらしき人物に挨拶をしに行くと、とても優しそうな顔をしている青年がいた。
リーダーの名前は、サウス。
今回一緒に戦う仲間であり、先輩でもある。
なので失礼の無いようにしようと思いつつ自己紹介をしようとすると、向こうから先に口を開いた。
それも、かなり衝撃的なことを。
まさか、自分達と同じ年齢だとは思わなかったからだ。
そうして簡単な説明を受けた後、早速出発することになったのだが……。
リオンはふと思ったことがあった。
それは、先程まで隣にいたはずのカイリがいないということだ。
どこに行ったのかと思っていると、彼は少し離れた所でサウスと話していた。
何を話しているのだろうと気になりつつも、あまり詮索するのは良くないと思いそっとしておくことにした。
そして数分後に集合と言われていたので急いで向かった。
そこには、もう全員が集まっておりサウスの指示を待つばかりであった。
そして、ついにその時が来た。
サウスの合図により、皆一斉に森の中へと入っていく。
今回はクライを討伐するのが目的なので、なるべく奥地へ進んでいく必要がある。
だがいくら進んでも一向に見つからない。
これは相当なクライなのだろうと、カイリと揃って武者震いした。
それから更に進むこと数十分。
すると、急に目の前に大きな影が現れた。
その正体は紛れもなく、クライだった。
だが、普通のクライとは様子が違っていた。
なんと、腕が何本もあるのだ。しかも、足は八本のようだ。
「なっ……!?」
初めて見るその姿に、驚きを隠せなかった。
だが、こんなところで引き返す訳にはいかない。
他のイーターもいない。
二人で闘う。
──慣れている。
「いくぞ!! リオン!!」
「おう!!」
二人で武器を構える。
そして二人共、その目を輝かせた。
「「天眼てんがん!!」」
次の瞬間には、二人は既にクライの前に立っていた。
クライは一瞬の出来事に驚いたが、直ぐに戦闘態勢に入る。
まずはリオンが、召喚した刀で斬りかかった。
しかし、二本の腕によって受け止められてしまう。
その一本の腕から、鮮血が雨のように吹き出した。
もう片方の手で攻撃される前に距離をとると、今度はカイリが攻撃を仕掛ける。
カイリは、持っている大斧を軽々と振り回し、攻撃をしていく。
しかし、それも防がれてしまった。
この調子では勝てない。
ならば──とリオンは思った。
ここは、自分の出番ではないと。
するとカイリが何かに気付いたようで、リオンの方を見た。
その視線を辿ると、リオンは──泣いていた。
それも、笑いながら。
「……"血哭ちなき”!!」
そう、リオンは血の涙を流している。
たが、ただの血ではない。
その涙は赤く輝かやいていた。
そして、その血は地面を赤黒く濡らすと同時に、地面から業火が噴火の如く噴き上げた。
「これは、燃える血だ!!」
その光景を見て、クライは恐怖を覚えた。
まるで、自分が喰われてしまうような感覚に陥ったのだ。
クライは逃げようと試みるもその時には既に遅かった。
何故なら、その炎は体に巻き付き、クライを逃がさんとしていたのだ。
クライは逃げることが出来なかった。
「じゃ、やっちゃうか」
その声は、すぐ後ろから聞こえた。
恐る恐る振り返ると、そこにいたのはリオンではなく、カイリだった。
リオンは何処にいるのかと辺りを見渡すと、彼の姿はすぐに見つかった。
困惑していると、彼は地面と共に逆さになっていた。
まるで重力が反対になったかのように。
「……ア」
そして、クライの目に入ったのは、無惨に、逆さになって置かれている自分の体──首無しの胴体だった。
自分は、首を斬られた。
そう認識した時、視界が真っ暗になっていった。
「目を潰さないとな」
クライは目が弱点である。
その後、リオンが倒したという証拠として、その死骸を持って帰ることになった。
クライの体はかなり大きく、運ぶのも大変だったが、遭遇した他のイーター達と協力してなんとか持ち帰ることが出来た。
こうして、リオン達の任務は終わった

クライ喰らい ( No.2 )
日時: 2023/08/07 20:10
名前: ぷりこ。 (ID: 7xmoQBau)

リオンは真っ直ぐ家に帰った。
そして玄関を開けて最初に目に入ったのは弟の──ユウの姿だった。
「……」
大きな目を開けて、こちらをじっと見てくる。
「どうしたの? 任務は終わったよ」
するとユウは心配した声で。
「……血が、着いてるから……大丈夫?」
とユウはリオンの服に付着した血痕を指差す。
確かにリオンも汚れているとは思ったが、そこまで気にする程ではないと思っていたのだが……。
しかしユウにそう言われればけっこう気になるもので。
それによく見ると、自分の顔にも少しだけ返り血が付いているようであった。
そこでようやく思い出す。
自分が人を殺した事を。
クライは、元イーターなのだ。
慌てて洗面所へ行き、顔を水で濡らす。
鏡を見ると、そこにはいつも通りの無表情な顔をしたリオンがいた。
任務後はいつもこうだ。
何も感じない。
いや、何も感じたくなくなる。
ただ一つ思う事は。
「(あぁ……疲れたな)」
それだけであった。

***

それから数年程経ち__
リオンは19才に。
ユウは15才になっていた。
ユウは憧れのイーターになるため、養成所に通っており、リオンの弟として──馬鹿にされていた。
『こんなのがリオンさんの弟とか……』
『恥さらしは兄の後ろに隠れとけよ』
なんて声はよく耳に入ってくる。
だからと言って、何かをする訳でもない。
リオンは、そんな扱いを受けている弟に親身になって手を尽くしてくれるから。
そんな声は気にしない。
でも、一つ変わったことがある。
リオンの任務は、もう一人で行っているらしい。カイリとは、バディを組むのを辞めたそうだ。
ユウとカイリは、リオンとの関係もあってか仲が良く、昔は良く遊びに来てくれていた。
でも、もう数年来ていない。
「…………」
ユウは何となく、寂しかった。
何日か経ったある日。
久しぶりにリオンが帰ってきた。
久しぶりの再会だが、会話はあまり弾まない。
話があるからと言われ、リビングで話すことにした。
「ごめんね、急に呼び出したりして」
「ううん、大丈夫……それより用件って?」
「うん……その事なんだけれどね……これを、ユウに渡したくて」
渡されたのは小さな紙だった。
字が書いてある。
内容は──
春鍵ユウ様 貴方はイーター採用試験を受ける権利を得ました。
試験日はこれが届いた三日後。
尚、拒否権はないものとする。
と書かれている。
これはつまり──
兄と同じ道を歩むこと──イーターになれるということだろうか。
いや、なれるチャンスを与えられたというべきか。
「……やったぁ!! ありがとう兄さん!!」
「フフフ、頑張ってね」
「うん!」
嬉しくて思わず抱きついてしまう。
でも、リオンは何も言わずに優しく頭を撫でてくれた。
「じゃあ今日は、お祝いしないとね!! ご飯作るよ!」
「いいの? 楽しみにしてる」
そう言って二人は笑いあった。

クライ喰らい ( No.3 )
日時: 2023/08/07 21:03
名前: ぷりこ。 (ID: 7xmoQBau)

その朝は、いつもより早く目がさめた。
ベッドのなかで目ざめているときから、もうすでに頭が痛く、気分がわるい。吐き気までしてきた。
初の試験──それも、憧れの夢が懸かっている試験を前にして、緊張しているのだろう。
でも、こんな気持ち、体調じゃ試験なんて受けられない。
「大丈夫だユウ。お前は出来る」
と自分の頬を叩き、ベッドから勢いよく降りた。
顔を洗うと、自然と気分が良くなっていき、体調も良くなっていった。
昨日残った料理を食べながら、ふとリオンの席を見る。
そこにはリオンの姿は無かった。
「もう行っちゃったのかな? いや」
そんなことを考えている余裕は無い。
今日は試験だ。
集中しなければいけない。
パンをかじり、牛乳で流し込む。
部屋に戻って服を着替える。
身だしなみを整えて、忘れ物が無いかどうか確認する。
「よし! 行くぞ!!」
ユウは家を出て駆け足で試験所であるスタジアムに向かった。

-・-・-・-

スタジアム──というよりコロシアムと言ったほうが良かったかもしれない。
「で、デケェ……!!」
その迫力に、思わず固唾を飲んだ。
試験内容は、一対一の対人戦。
どんな人が相手なのだろうか。
受付に行き、受験票を渡す。
すると係員が番号が書かれた、虎をあしらったバッジを渡してくれた。
このバッジが各受験者に与えられるようだ。
ユウの番号は9番だった。
他の受験生達は、既に闘技場に入っており、その景色が上から見える。
小さくだが、受験生の声が聞こえる。
自分を鼓舞する声。
相手を威嚇する声。
様々な声が入り混じっていた。
「(皆、俺と同じなんだ)」
他の者も緊張している。
そう思うと少し気が楽になった。
深呼吸をして心を落ち着かせる。
そしてユウも闘技場内に入った。
中に入ると更に大きいと感じた。
観客席には、大勢の観客がいる。
歓声が上がり、地響きのように響いている。
まるで祭りのような熱気だ。
「これが試験……?」
これが試験の空気なのだろうか。
ユウは、闘技場の真ん中にあるリングに立つ。
周りを見ると、対戦相手と思われる人物がいた。
相手も同じ受験生だろうか。
見た目からは強そうな感じではない。
どちらかと言うと弱々しい印象を受けた。
でも油断はできない。
何があるのかわからないのだ。
すると、アナウンスが流れてきた。
ユウはその声に聞き覚えがある。
いや、覚えがあるなんてものではなく──
《皆さんこんにちわ!! 試験官の春鍵リオンです!!》
スピーカー越しなので多少音割れしているが、間違えなくリオンの声だった。
「えっ!? 兄さん!?」
何故ここにいるのか。
いや、スピーカー越しなのでこのスタジアムにいるかどうかは定かではない。
《今からルール説明を行います!! まず一つ目、相手を殺すのは禁止。これだけ!! それ以外は何でもやってくれ!!》
どう考えても、テンションがいつものリオンでは無い。
「(あぁ……恥ずかしい)」
これは試験ではなくただのお祭り騒ぎだと確信した。
《さぁ、試験開始!! 頑張ってね、ユウ!!》
最後にユウの名前を言った。
するとたちまち──
「あのユウ!?」
「は!?」
ユウの名前を聞いた途端、周りの視線が変わった。
先程とは考えられない程の冷やかな視線をぶつけてくる。
「おい……あいつ……」
「まさかユウだとはな……!」
「ぶっ潰せーッ!!」
完全に敵視されている。
しかも一人だけならまだしも、全員だ。
こんなことがあっていいものなのか。
しかし、ここで怖じけづいてしまっては試験を受ける意味がない。
しかもそれは観客だ。
気にしなければいい。
いつも通り。
ユウは刀を構えた。
目の前の少年も同じように武器──槍を構える。
そして── 試合開始の合図が鳴った。

クライ喰らい ( No.4 )
日時: 2023/08/10 12:10
名前: ぷりこ。 (ID: 6nOD4vjp)

が辿る。それはまさに紅き閃光の如く。
その速さは光の速度にも匹敵する。
ユウは一気に距離を詰めると、再び斬りかかった。
「"一番怪いちばんかい"、飢斬灯きざんとう!!」
これは天眼を発動させることで使える「怪」の中でも、最初の技にして汎用的な技である。
自分の天眼によって、技の名称や効果は異なるのだ。
今度は防がれることなく、相手に命中した。
しかし── 相手は倒れなかった。
それどころか、何事もなかったかのように平然としている。
そして、槍の先端をこちらに向けてきた。
「終わりだ!!」
まさかと思い、咄嵯に身をかわす。
すると、さっきまで自分のいた場所に大きな穴ができていた。
もしあの時反応が遅れていれば……
ゾクリとした。
そして、ひどい頭痛がユウを襲う。
「(今になって副作用が……!!
……というより)」
どうやら先程までの攻撃は手を抜かれていたようだ。
ユウはその事実を受け入れつつ、次の一手を考える。
「(おそらく今の俺じゃあコイツには勝てない)」
ユウは自分の実力をよく理解していた。
だからと言って諦めるという選択肢はない。
ここで負ければ、一生後悔することになるだろうから。
ならば、どうするか。
「ここはとりあえず……天眼解除!」
まずは能力を下げることでリスクを減らすことにした。
それからもう一度哭を発動させ、今度こそ仕留めるために全力を出す。
「いくぞ!!」
再度突撃するユウ。
だが、相手もそれをただ見ているだけではない。
「ゴリ押しは通じないよ」
俊敏な動きで槍を突き刺してきた。
革製の鞘を着けているため、体を貫通することはないが、ただ──痛い。
後ろに吹っ飛ばされても、足に万力を込めて飛び出す。
相手は槍を構えた。
次の攻撃で勝負を決める気なのだろう。
「甘いんだよ!!」
なんと、ユウは避けずに真っ向勝負に出たのだ。
当然のように突き刺される。
だが──
「なに!?」
驚きの声を上げたのは槍を持っていた少年の方だった。
ユウを貫こうとしていた槍が途中で止まっていたのだ。
炎の壁がユウの胸に渦を巻いて、槍を受け流しているようだ。
二番怪にばんかい陽廻ひまわり……!!」
そして、刀を横腹に打ち込む。
刀を振り抜くと、相手は後ろに吹き飛んでいった。
その威力でヒビが入った壁の下には、相手がうつ伏せになって気絶していた。
次の瞬間、闘技場内に試合終了のコールが騒々しく鳴り響いた。
そしてゆっくりと爆発的な喜びがユウの全身を侵していった。
しかも、観客席をふと見ると
『なかなかやるじゃねェか』
『面白かったぞ!!』
観客にも認めてもらえたようだった。
「よっしゃー!!」
そう叫んだ直後──ピキィッ!!!! 音が鳴った。
その音は何かが割れるような音にも聞こえる。
直後、目の前の景色が変わった。
いや、目の前の空間が硝子の破片のように飛び散り、そこだけ空いたのだ。
空は赤く染まり、所々に大きな雲が見える。
そして、なにより驚いたことは──そこに立っている人がいたからだ。何故か、少し見覚えがあった。
誰かはゆっくりとこちらに歩いてくる。
『いや、まさか勝つとはな』
『すごかった!!』
『イーターとして頑張れよ!!』
観客達は、未だ湧いていた。
「(彼等には見えていない!?)」
そのことから、ユウはこの近付いてくる人物が普通の人間でないことがわかった。
すると、突然声をかけられた。
後ろから。
「えっ?」
「俺に任せろ」
それは、真剣な顔をしたリオンだった。

クライ喰らい ( No.5 )
日時: 2023/08/10 12:35
名前: ぷりこ。 (ID: 6nOD4vjp)

彼は、右手を横に出すと、そこに一本の刀が現れる。
そのまま、勢いよく振り下ろすと、そこから炎が放たれて、異次元を消し去った。
しかし──
「あっ……!!」
奴の姿を捉え、思わず声を漏らす。
ユウの横にふわりと浮いていたのだ。
その、空中に浮かび、目も口も鼻も髪も無い姿は、とても現実のものとは思えない。
「これは現実ダヨ?」
そう言って、蒼白い手でユウの首を掴み、軽々と持ち上げる。
苦しさで抵抗するが、全く効かない。
そこで、リオンは叫んだ。
「俺の弟に手を出すな!!」
ボウッ、とリオンは奴の腕を掴み、腕を焼き落とした。
「キィヤャャヤヤァァアアア!!!!」
悲鳴をあげながら落下する奴に向けて、今度は炎の弾丸を作り出し、それを飛ばす。
奴はそれをかわして、地面に着地し、こちらを見据えた。
後ろで呻くユウはまだ苦しそうだ。
すると、奴は上空へと飛び去った。
腹を抱えて、大声で笑いながら。
その姿が見えなくなると同時に、ユウは意識を失ったのか、その場に倒れ込んだ。
「(逃げてくれたなら有難いな)」
観客席は、呆然となっている。
だが、そんなことより今は……
リオンはユウの元に駆け寄り、抱き起こす。
まだ息はあるが、危険な状態だ。
すぐにでも医者に見せないと。
リオンはそう考え、ユウとユウの対戦相手を抱きかかえて立ち上がった。
「皆さん、今日の試験は中止です。なるべく早く家にお戻り下さい」
リオンはそう言い残し、会場を出た。
その後ろ姿をただ見ているしか無かった受験生達。
やがて、一人の少年が呟いた。
その言葉を皮切りに、皆が次々と口にする。
先程の奴は。
あれは。
みかどが……戻ってきた……!!』


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