ダーク・ファンタジー小説
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- 京染戦記
- 日時: 2023/09/10 06:07
- 名前: みきを (ID: 0K0i.3Zc)
どうも、みきを です。
小説書きたくなって、今に至ります
ここならみんな見てくれるのではないかと思いまして……
あらすじを簡潔に。
主人公が、幻の"色"を巡って戦う物語
です。
楽しんで読んでくださると冥福に尽きます。
-・-・-・-・-・-
俺は、炎を操る"色"を持っている。
-・-・-・-・-・-
彼は死にかけていた。
無限に広がる灼熱の砂漠の中。
体力の限界か、砂塵の影響か蜃気楼のように、目の前に何やらゆらゆらと蠢く影があった。
「人……水溜まりでもいいな……」
非現実的な妄想。
そんな事はあり得ないと分かっているはずなのに。
いや、意識を保つには幸せな事を考えるしか無かったのかもしれない。
怪色士として染霊を狩り続けてきたが、もしアレ(・・)が染霊なら、抵抗する間もなく殺されるだろう。
……考えたくない。
「やめてくれよ……それだけは…」
まあ、何処から出現するのか不明な──神出鬼没の染霊ならあり得なく無いが。
だがアレは少し挙動が違った。
近付いて来る。
「ゴクリ」
固唾を飲み、意味の無い警戒をする少年。
アレは──人のようだった。
「よかったぁ」
安心も束の間。
「ガァァァアアアァ!!」
染霊だった。
奇声を上げて突撃してくるのを、彼は呆然と見ていた。もう、何もすることがなくて。
染霊は何度、絶望を見せてくれるのか。
「終わったな……俺」
もう潔く殺されよう。
猿夢の手が触れる瞬間、目の前に紅の炎が舞った。
「いやぁ、あんま同族狩り(・・・・)はしたくないんだよな」
焦げて悶絶する猿夢に止め(刀)を刺し、汚い茶色の血を払った。
そしてこちらを見る。
(助けてくれるのかな?)
ワンチャンあると思った。
しかし目の前の少年から出た言葉は──
「斬り足りねぇよなぁ……」
完全に彼を獲物と捉えていた。
「もう勘弁してください!! もう斬り足りてます!! どうか命だけはぁぁぁ!!」
情けないにも程があるのも承知で、彼は命を乞う。
それを見た少年は、長いため息を着いた後、頭を掻きながら淡々と言った。
「分ーったよ、殺さないからとっとと失せろ」
「食料も!! 恵んでください!!」
自分で言ってて、恥ずかしい。
余りにも、醜すぎて。
だが、そんな事はどうでも良い。
今が良ければ全て良しだ。
彼は、プライドを捨てた土下座をしながら食料を乞うた。
そんな彼を哀れな目で一瞥して、少年は袋を彼の前に放り投げる。
その意図が分からずに困惑していると、苛ついたように少年は言った。
「そん中に、色々あるからよ」
彼の行動が余りに、見るに絶えなかったのだろう。
彼は、袋を手に取ると、無我夢中で中にあった食料を食べた。
恐らく、数日ぶりに食べたまともな食事。
涙が止まらなくなった。
「うめェ……!! 今までで、一番!!」
この男、何処か懐かしい雰囲気がある。
彼は──どこかで会ったことがあるのか。
まあ、死にかけの奴はよく見たが──
「おい……お前怪色士だろ?」
そんな彼が落ち着いたのを見計らって、少年は声を掛けた。
怪色士という単語を聞いて、彼はビクリと体を震わせる。
「分かってるだろうが──先にも言ったが、俺は染霊だ。"人を襲わない"、な」
彼は黙って頷く。
すると少年は、少し考えた後こう言ったのだ。
「俺と一緒に……"神宝色"を探さないか? 俺は、それを狙ってる」
──と。
神宝色とは、の全ての染霊と怪色士達が狙っている、幻の怪傑色のことだ。どんな夢も、実現できる能力を持っているらしい。
だが、怪色士の彼は、染霊と共に行動するなど当然禁止──罰されるべきだ。
だから、この誘いは断るべきなのだろう。
だが──彼は、この時思ってしまったのだ。
彼が、彼さえいれば、他に頼る人間はもう要らないのではないか?と。
食べ物をもらった。
命を助けてもらった。
もう、『敵』では無いだろう。
彼に、応えるべきだ。
「ああ、よろしく頼む。
俺の名前は刻丸凛太。お前は?」
「俺は通婢弦。よろしくな」
こうして、小年は──弦は刀を戻して、凛太と固い握手をかわしたのだった。