ダーク・ファンタジー小説
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- プレリュード
- 日時: 2023/10/05 12:06
- 名前: t (ID: 6tYZcn74)
こんにちは。相楽です。
私は学校で教師をしております。
次第に私が「鬼」へと変貌する様子をご覧下さい。
では、気楽にどうぞ。
- Re: プレリュード ( No.1 )
- 日時: 2023/10/05 12:19
- 名前: t (ID: 6tYZcn74)
1
晴天が広がる。唯一の朝の楽しみはイヤホンから流れる音楽を聴くことだが、車道から流れる走行音に邪魔されることがある。
学校では音楽を教えている。だが、乗り切ではない。音楽とは「芸術」だ。芸術を他人に教えるなど私は意に反していた。芸術に点数をつけるなど間違っていると思う。人それぞれの作品に対して目上だからといって生徒に評価するなど、もっての他だと思う。
だが、仕事だ。割りきらないと。
今日もやりきった。計5時間。音楽の授業をやり終えた。歌を歌せ、楽器を演奏させ、音楽の知識を覚えさせる。まさに、鬼畜の所業だ。
人間のやることじゃない。
放課後は朝と同様にイヤホンから流れる音楽を聴く。バスに乗り、買い物へ。食材を買うと帰路へつく。
誰もいない道。住宅が私を囲う。夜7時。暗闇が私を包んだ。
どこからか、バイオリンの音がする。いつも通っている道だが初めて聴いた。誰かが家で弾いているのか。しかし、バイオリンとは高級で誰もが手に入れることはできない。金に余裕があり、尚且つ芸術センスに優れた者しか興味を持たない。それがバイオリンだ。それを手にしている人間は、きっと恵まれた人間だ。
バイオリンの音が止まった。私は歩き続けたが、今度は女性の悲鳴が聞こえた。
足を止めた。
- Re: プレリュード ( No.2 )
- 日時: 2023/10/07 21:35
- 名前: t (ID: pC40PoP0)
2
周りを見渡す。暗闇が徐々に視界を悪くする中、一つの家から一人の人間が出てきて、走り去って行くのが見えた。私は軽い気持ちでその家に近づき、入り口の前に立った。ドアは開け放しだ。出てきた人間が走って行った方向を見たが、既に姿はない。
私は、何故か吸い寄せられるようにその家に足を踏み入れた。女性の悲鳴がしたであろう、その家に。電気はついていない。二階建ての一戸建てだ。廊下の向こうにはキッチンが見える。私は「大丈夫ですか?」とやや大きな声で問いかけた。何も反応はない。
持っていたカバン、スーパーの袋を廊下の隅に置くと、左右を確認しながら電気を点けた。
すると、目の前には女性が横たわっていた。
翌日。昨日の晴天とは真逆の曇天になっていた。雨が降りそうだ。
私は警察署にいた。見晴らしのいい窓から少し離れた椅子に座って、目の前にテーブルを挟んで座っている刑事の目を見ている。だが、心境は至って平常だった。刑事が話しかける。
「悲鳴がした家に行くと、中で女性が倒れていた。すぐに警察へ電話した。しかし、おかしいですよね」
刑事は50代くらいの、名前を中田という。見た感じはかなり熟練された刑事、といった印象だ。
「どこがですか?」
私が問う。
「変ですよ。悲鳴がしてすぐにその女性のいる家を特定しています。何故、たくさんの家がある中で、その家だと?」
「先ほども言ったように、人が出てきたんですよ。灰色のフードをかぶった人間が。なので、その家だとわかったんです」
「しかし、家にはその女性以外の痕跡はありません。指紋も出ていないです」
刑事がそう言うと、私はやれやれ、と思った。
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