ダーク・ファンタジー小説
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- いつだって私達は。【完結】
- 日時: 2024/04/14 07:10
- 名前: のゆり (ID: 7NQZ9fev)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13818
20××年東京都、港区。とある高級マンションに、4人の成人女性が暮らしていた。…おそらく、20代程度なのだろう。
明鏡家4姉妹。
美女の多い港区でも、一目置かれる程のルックス。
長女・麗奈 白髪ロングにサファイアの様な瞳の持ち主。
次女・瑠璃歌 青髪ウルフの引きこもりゲーマー。
三女・百合菜 水色髪の三つ編みポニー、清楚な雰囲気である。
四女・結花 白と青髪のくりくりの目が印象的。
一件普通の美人姉妹に思えるが、彼女らには誰にも言えない秘密があった。
___風俗嬢、アイドル彼氏、サイコキラー、ネット依存。
それは誰にでもある隠し事。ただ、彼女達は別に隠していたい訳では無い。
「無いと心が満たされない、生きていけない」のだ。
つまらない日常の中で己の快感を探す彼女らには、どんな結末が待ち構えているのだろう。
「いつだって私達は。」始動___
第1章 「甘い月光」 >>2-4
第2章 「死神の呼び声」>>5-8
第3章 「夜に染まれ」 >>9-13
第4章 「哀の戯れ」 >>14-
一気に >>2-
2023.10.30 観覧者70人!
2023.11.3 観覧者100人!
2023.11.8 観覧者130人!
2023.11.10観覧者140人!
2023.11.12観覧者150人!
2023.11.19観覧者170人!
2023.11.22観覧者190人!
2023.11.23観覧者200人!
2023.12.1 観覧者250人!
2023.12.24 観覧者300人!
2024.02.17 観覧者450人!
2024.04.14 観覧者500人⁈
もうすぐ600ですって〜??
2023年冬の小説大会で当小説が銀賞を受賞しました!
投票してくださった方々、本っ当にありがとうございます!
- Re: いつだって私達は。 ( No.3 )
- 日時: 2023/10/11 07:03
- 名前: のゆり (ID: 7NQZ9fev)
1人目が終わって、シャワーを浴びた後すぐ、次の客の準備を始める。
髪は一瞬で乾かして、鏡を見ては営業スマイルをする。
「キモ。本当にこれあたし?」
朝はあんなに美人だなぁと思ったのに。しかも、自己肯定感がどうとか語ったのに。
あたしは、思った以上に汚いのかもしれないと思うと、わざわざあたしと差のありすぎる愛ちゃんを運営が推す理由が分かった気がした。
「あたし…もうダメなのかな」
そう呟いたすぐ呼び出され、次々に客と行為を重ね、すべて終えて帰宅した。
部屋に入ると結花は寝ていて、起こすと悪いので小さいランプを灯して夕食を作り、さっと食べて片付けて、お風呂に入る。
その後は退勤日誌に勤務時の業務内容を軽くまとめる。
スマホを顔に向けると2:00と表示される。今日も疲れた。おやすみなさい。
「麗奈ぁ~?あんまり調子に乗らないでよね♡」
「麗奈、目障りなのよ。ブス、ブス、ブス。死ね、消えろ…」
__ネットには、こうも書き込まれているとは、本人は知らない。
あぁ、今日も朝を迎えてしまった。
嫌だ、嫌だ、あんな事したくないのに。体が、言う事聞かないから…。
でも、しないと生きていけない。
スマホで時刻を確認しようとすると、『今日は休日』と通知が来ていた。そっか…休みだ。
ぽっかり空いた心の穴を埋めるために行為をしている、でも今日はそれが無い。
嬉しいと悲しいと、わくわくとムカムカが、ぐちゃぐちゃに絡んで気持ち悪い。
風俗を始める前の休日は、より自分を高めるためにデパコスとかを買いに行ってたっけ。
今も美しさには拘るけど、昔ほど流行とかを気にしなくなった。
やる事が、無い。
そして夜になれば劣等感に襲われるだろうし、精神が不安定になるだろう。
久しぶりの休みとはいえ、これからの自分がどうなるかが手に取るように分かる。
思考を止めないと、いつまでも想像して吐きそうだ。
「朝ごはん」
ふらふらと鏡も見ずにキッチンヘ向かう。
お腹は空いてないけど、結花は食べると思うから。
いつもなら自分で「妹思いなあたし、美人~」って褒めてただろうけど、こんな仕事してるからそのお詫び、と思うと別に当然の事だなぁとも思う。
カタコトと小さく音を立てて料理をする。結花が起きない様に。
シュガートーストとカフェラテ。
甘いにおいが鼻を棘激して、心臓にもったりと埋めつけて行く。
いつもはこの勢いで結花を起こして、この甘さを毎日摂取していたのだけど。
今日は余力が無くて、またベッドに潜り込んでしまった。
しばらく経って、結花が起きた。それと共にあたしもベッドから出て、スマホを手に取るとついこんな事を考えた。
「みんなに迷惑かけるのなら.あたしは何のために生きているのだろう?」
誰かに体を売るため?でもあたしが落ち付かないからだし。
妹達を養うため?いや、妹に言われてやってる訳じゃない。
あたしの生きる意味____
あたしははっとして、結花を置いて外に出た。
続く
- Re: いつだって私達は。 ( No.4 )
- 日時: 2023/10/12 06:43
- 名前: のゆり (ID: 7NQZ9fev)
ほんの少しの頭痛を抑えながら、あたし達の住むマンションを駆け上がる。
風はいつもより爽やかで、空の色も綺麗な青。
「風も空も、最近は見てなかったな」
気付くとそこは屋上で、人が見えない、自然との触れ合いになっている。
目を閉じて、よく考える。
もう、風俗を続けるのは無理だろう。
年齢が年齢だし、運営ももうあたしを手放すつもりだったんだと思う。
そうすると、あたしが上手く生きていくのも無理だろう。
心が空っぽのまま、いつも通りの生活何て出来る筈ない。
そして、妹を養う事も出来無くなるだろう。
収入が悪くなって、精心的にも続けていくのは無理だ。
美しさを保つ事が出来るかでさえ不安なのだ。
ゆっくりと、目を開ける。
もう、この社会においてあたしは必要とされてない。
そして、あたしもこの生活が、自分の体が嫌いだ。
無理だよ、こんな気持ちになるまで頑張るのが。
自分の、葛藤が自分をぐちゃぐちゃに壊していく。
嫌だ、歳を取って若くなくなる自分が居るのが辛い。
___もうあたしなんて、死んじゃえ。
屋上入口から突っ走って、フェンスを避けてマンションの㟨っこに歩み寄る。
朝の白くて小さな月が、まだ視界の隅に残っている。
その月目指して軽く飛ぶ。
グシャ
「速報です。東京都港区の高級マンションに、女性の遺体が発見されました。警察は、遺体の身元を確認するとともに、くわしい死因を調べています」
_____________
甘い月光が差す夜、彼女…明鏡麗奈の勤務先の風俗店では、利益が大幅に下がり、誹謗中傷コメン卜をした可能性がある、「愛」こと木槌山愛子が店を解雇。
麗奈の遺族は葬式で、「美人で頼れるお姉ちゃんだった」と告白。
部屋にはまだ麗奈の私物が残っていて、まだ麗奈が生きている様だった。
___ちなみに、麗奈が風俗嬢だった事を、警察は妹達には言わなかった。
第1章「甘い月光」end
第2章「死神の呼び声」順次更新
明日から旅行に行くので3日間は投稿しません。すみません。
- Re: いつだって私達は。 ( No.5 )
- 日時: 2023/10/18 06:31
- 名前: のゆり (ID: 7NQZ9fev)
第2章・明鏡瑠璃歌「死神の呼び声」
出来ない、出来ない、出来ない。
どう足掻いたって、努力したって、人と関る事なんて出来ない。
暗い部屋の中で髪をぐしゃぐしゃにしながら、その瞳に涙を滲ませ、顔を覆っている。
「私もう無理、誰かと会話がしたい、笑いながら手を取り合いたい…」
視界は涙で潤んで風景がはっきりとしない。目を閉じてゆっくりと開ける。
ピコ、という通知音がしたのでスマホを手に取り、わざわざアプリを開いて既読を付ける。
『瑠璃歌お姉ちゃん、朝ごはん出来たけど、食べる?』
どうしようかと考えてる内に、
『もちろん買ってきたやつだよ!』
と追記した。
『なら』
とだけ応答して、潔癖症みたいだなぁと呟く。
_____私はサイコキラー、所謂サイコパスなのだ。
症状も結構な重症で、私は人の顔も声も音もすべて駄目で、見たり聞いたりするとすぐに体が興奮しておかしくなる。
だから百合菜もスマホから会話をしているのだ。
だって、自分の命が無くなると困るから。
でも、私だって人を殺したい訳じゃない。
だから部屋に引き篭もって人と関わらない事を選んだ。
それでもやっぱり、サイコキラーが発覚する前の、仲良く4人で遊んでいた頃に戻りたい。
うじうじ、またもやもやスマホを置いて椅子に座る。
いつまで引き篭もってんのよ、とか麗奈には言われるんだろうな。
会いたいよ麗奈ぁ。
百合菜も、私の為にいろいろ考えてくれてるんだよね。
百合菜ありがとう。
しばらく結花も会ってないな、またお買い物しよう?
「みんなぁ…」
やっぱり私、弱いんだなぁ。
でも、でもね。人と関わりたいのに関われない人の気持ちなんて、わからないでしょ。
「わかってくれたら…嫌、わかっても変わらないか」
無理だ、と思った矢先、私にはとある思考が脳裏を過った。
誰かに助けてもらうのでは無く、私からサイコキラーを克服できるようにすれば良い。
今すぐ外に出よう。麗奈にデパコスと、百合菜にマカロン、結花にワンピースを買って来よう。
なるべく人は見ないようにして、克服したって報告したい。
また、あの日の様に……!
この日の外出がどれだけ大変だったか何て、今の私には知る術もない。
続く
<解説>
違う世界観なので伝説の風俗嬢、麗奈は生きてます。
それと、朝ごはんを運んで来たのは次のヒロインであり三女の百合菜です。
瑠璃歌は麗奈ほど強いメンタルを持ってないので人によっては苦手かもです…。
- Re: いつだって私達は。 ( No.6 )
- 日時: 2023/10/20 07:15
- 名前: のゆり (ID: 7NQZ9fev)
同居している百合菜は今、仕事中なので居ない。
でも連絡するのも面倒なので、黙って出掛ける事にした。
ずっと着てなかった去年の誕プレのワンピースを身にまとうと、百合菜のメイク道具を借りて無理矢理色を押しつける。
「似合わないなぁ」
私は夏だけど百合菜は春だっけ、と昔の会話を内容だけ思い出す。
立ち上がって玄関まで歩み寄る。自分の靴なんて10年位前の靴だから勿論残って無い。
なので百合菜の靴を借りて外に飛び出す。
「わぁ」
久しぶりに見た街の風景に、胸が踊る。何もかもが新鮮で、大きくて広い。
エレベーターで下に降りて、近くのデパートまで行く事にした。
人の声が聞こえると思って無音という音楽をイヤホンに再生させて移動した。
人を見ないでスマホの地図アプリだけを見つめて、長い長いデパートへの旅が終わった。
1階は化粧品売り場。
アイシャドウがたくさん並んでる所が空いていたから見てみる。
麗奈の目って確か青くてめちゃ綺麗なんだよな…。
青系の色がたくさん入ってるのを手に取る。
「レジって、人がいるんだっけ」
今更思い出す。わたくし瑠璃歌、もうピンチです。
覚悟して上を向くと、〔セルフレジは→〕と書いた看板を見つけた。
セルフレジがあるのか、良かった。
私はセルフレジヘ向かい、無事に麗奈へのプレゼントを買う事ができた。
次にエレベーターに乗って地下の食べ物売り場に来た。
匂いでスイーツのお店を探す。
野生的だって?何でも良いじゃないか。
すると、はちみつの甘~い匂いが鼻に入った。
顔を上げると、はちみつレモンケーキというケーキが2、3個ホールケーキのまま売っていた。
めちゃくちゃ美味しそうだけど、マカロンを買いに来たのでスルー。
何歩か進むと、色とりどりのマカロンが陳列されているケースを見つけた。
私はその中の、抹茶と苺とチョコの3種類を買う事にした。
スマホのメモを開いてお店の人に読ませ、ちゃんと買う事ができた。
次は5階の服売り場へ。
無人で防犯カメラがあるお店に入って、ワンピースを選ぶ。
結花は青と白か、その間の色が似合う筈。
ちょっと裾が広い方が可愛いかなぁ、とぐるぐる思考を巡らせる。
いろんな服を見て、1周して結花に1番似合いそうな青いふんわりしたワンピースを無人レジで買った。
これでみんな分の買い物を終えた。
よし、何も問題は無かったし、サイコキラーを克服できたって事で良いのかな。
ニコニコで帰る私に、人がぶつかった感触がした。
- Re: いつだって私達は。 ( No.7 )
- 日時: 2023/10/22 10:09
- 名前: のゆり (ID: 7NQZ9fev)
ドンッ
その音と共に、私の防音イヤホンは外れ、一瞬で人の声が流れ込んで行く。
慌てて耳を塞ごうとするが、もう遅い。
ぶつかった人が、私があまりにも動揺しているから、
「大丈夫ですか」
と目を合わせて声を放った。
プツン
死神の呼ぶ声が、聞こえた気がした。
心配する若い男性に向かって、勝手に手が伸びる。
首にグッと爪を立て、皮膚を破っていく。血が流れる。
血を見てさらに興奮してしまい、男性の頬を掴んで右にまわす。
大きく目を見開いて、あちこちから血を流す彼を、どうしても殺したい。
___やっぱり私は、サイコキラーを克服できなかった。
目から涙が溢れる。紙袋に血が付く。
「ごめん、私…もう抑えきれないや」
その言葉を放ってからは、何一つ覚えていない。
気が付くと、辺りは血だらけになっていた。
原型が無いぐらいぐちゃぐちゃで、眼球はちゃんと2つずつ転がっている。
私に意識が向かい、自分の姿を確認すると、手には血が。足には包丁が。
あぁ、私、殺っちゃったんだ。
お土産の紙袋にも血が付着していて、中身を確認すると、まだ無事だった。
持って帰るか。
でも、服や靴の血が気になる。足も痛い。
無人レジ___デパートの人を全滅させたから、全部無人だけど。
服と靴を適当に買って、ちゃんとお金を置いて、着る事にした。
付着した血を取りたいのでトイレに行き、ワンピースと百合菜の靴を水で洗った。
だいたい取れたので袋に入れて、緊急時用の梯子でデパートを出る。
防犯カメラなんて付いてない。それぞれの店内にしか付けてない、頭の悪いデパートで良かった。
だから、私が犯人だという確信には至らない。
証言者も居ない、原型が無いから指紋採取もできない。
靴の跡だけじゃ特定できないし、私物はお持ち帰り済みだ。
本当、サイコキラーには良いデパートだったな。
音の無い音楽を、イヤホンで再生する。
下を向いて、点字ブロックを足で辿る。何て事無い、サイコキラーの日常。
今日、人を殺して無くともこう帰っていたのだろう。
エレベーターに乗って、住んでいる部屋まで歩く。
百合菜に手紙を書いて、冷蔵庫にマカロンを入れておく。
隣の麗奈と結花の部屋にワンピースとアイシャドウ、私の手紙を置いて帰った。
きっと今日の事はニュースになるんだろうな。
別に、証拠隠滅した訳じゃないんだけど、サイコキラーが悪いから、私は悪くない。
そう思うからこそ、私は人を殺したくない。
続く