ダーク・ファンタジー小説
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- 右足⑴(①〜④まとめ)
- 日時: 2023/12/24 14:21
- 名前: 螺旋兎−lasemu− (ID: 0spZueGu)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13874
『右足が「長く」て、鼻が「短く」、首が「右に傾いて」いて、「上下逆さま」な象。』
これを聞いて、
あなたはどんな象を想像しますか?
明日、話そ?泣きながら僕は彼氏にそう言われた。「明日、私が全てを話すから。」
「…何でだよ。君の秘密は全て合わせて一つしかない。だから明日でも今日でもなくて、一昨日話せばいいよ。」
「じゃあ、3日前に話せばよかったんだね?」
…そういうことじゃない。しかも2日前だし。
「…いい加減泣いたらどうだ?」
どうにもこうにも、今、彼は泣いているのだが、僕の口からはそんな言葉が出た。
「うるさいよ」
隣にいた雨野から苦情がきた。
僕は今、彼氏の机の前にいる。放課後で、生徒のほとんどはもう帰っている。
今いるのは、僕…時金由那(ときがねゆな)と、
彼氏の鯖宮航(さばみやわたる)、
そして友人でガリ勉の雨野千鶴(あまのちづる)だけだ。
雨野が怒った口調で、目線はノートにあるまま言った。
「…俺は早く帰りたいのだが?お前らバカップルの痴話喧嘩に付き合ってる暇などないワ。」
微かに動いた綺麗な瞳が冷ややかに僕たちを見つめる。
それに彼…航が応えた。
「そうだよね…ごめんねぇ?でも私は〝今〟話を終わらせたいの。」
何を言ってるのか。さっき僕には『明日話す』と言ったくせに。
それでも雨野は引かず、結局、各自家に帰った。
*************
家に帰ると、妹が生きていた。
兄がまだいた頃、弟もいたはずだが、今は何故かいない。…というか弟の姿を滅多に見ない。
僕はまだ、航の言葉について考えていた。
『私は〝今〟話を終わらせたいの。』
そんな大事な話じゃない。
まだこの星ができてから20年しか生きてないが、まだ大学はできていない。
静かな世界の中、オゾン層だけは至って平和だ。
翌日、僕は雨野のところへ走った。
航から連絡がきて、雨野の家で遊んでいたら、雨野が突然倒れたそうだ。
どうしよう
…このまま…
走って走って走り続けた僕は、へとへとだった。
やっと雨野の家に辿り着いたその時、僕は目を見開いた。倒れていたのは雨野ではなくて、航だった。
その横に雨野が果物ナイフを持っていた。
くだらない話だが、この星では果物ナイフで人は殺せない。
航も、血を流しているわけでもなく、ただ倒れているだけだった。
生きろ。
何かがそう航に言いかけた。言いかけたとこで、やめた。
航の声がした。「私は」
「私は…ワ゛ダジは…ッ!」
でも、航の声がしたのは雨野からだった。
雨野が、千鶴が、涙を流して僕に訴えていた。
周りのラクガキが全て雨野の仕業に見えた。
「大丈夫。僕が今、楽にしてあげるから。」
そう言って僕は航の体を、背負って、雨野の手を引っ張って、病院へと向かった。
どうしようか…とりあえず「ワタル」は精神科で…「チヅル」は皮膚科か…?
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これが当たり前になっていた。
「アシタ」も、「アサッテ」も、ずっと同じことが続いた。
でも毎日、朝になると航も雨野も元気で僕を待っているのだ。〝ベランダ〟から。