ダーク・ファンタジー小説
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- 水中のファジーネーブル 1
- 日時: 2023/12/25 11:01
- 名前: 梓海瑠夏 (ID: 2d811rR1)
恋をした。言葉ではとても著せないような魅力に、惹かれた。
同時に、『恋に落ちる』という言葉がこの感覚をどれほど的確に表現するものかを実感した。
全身に力が入らなくなり、足元から崩れ落ちそうになる感覚。体は動揺しているのに対して、心はどこか冷静に『あ、今恋に落ちたんだ』と悟っていた。
「理香、どうしたの、あっちばっかり見て。今日、ちょっと変だよ。」
親友の真希が私の顔スレスレに手を振る。
「あ、ごめん。昨日夜更かししたからじゃないかな。一日中ウトウトしちゃってるの。」
「そうなの?もう、駄目だよ夜更かししたら。って、あそこにいるの北条じゃない?」
彼の苗字を聞いた途端、反射的に鼓動が早くなる。なるほど、これは本能だ。私、本能的に彼が好きなんだ。
「北条って頭はいいけど、なんかこう、性格が良くないって噂だよね。顔からしてそんなカンジだし。」
「何よ、顔からしてって。ただの噂でしょ。」
好きな人を悪く言われたからか、少し言い方がキツくなってしまった。が、真希は気にしていない様子だ。
というか私は何故彼のことが好きなのだろう。『どこが好きか』と聞かれても思いつかない。ただ、なんとなく、本能で、だ。
昔、ツインレイという言葉を聞いたことがある。前世での魂が分断され、二人になった。俗に言う『運命の人』であると。もしかしたら、北条君と私はそうなのかもしれない。
…なんて、ツインレイなんてただの迷信に過ぎない。幼い頃からスピリチュアルには興味があったが、興味を持ち出すのはいつも最終局面になったとき。最後にすがるものとしてだ。
「ねぇ。北条って誕生日はいつなの?」
ツインレイは誕生日が同じ、または近い日であることが多いらしい。私の誕生日は8月6日だ。
「え、なんで?まぁいいけど。北条の誕生日はね、8月の…」
続く