ダーク・ファンタジー小説

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寒帯の勇者 第四〜五話
日時: 2023/12/26 13:08
名前: 緑柳零 (ID: F5XSuO4B)

第五話 ミナッシュ嬢

「どこに連れて行くんです?」
ジャーファは,手を引いた女性に問い詰められた。
(大暴れした男から助けただけなのになぁ・・・・・・。)
ジャーファは、現実は厳しいんだと実感する。
「もしかして,お父様から逃がそうとしたのですか?」
「・・・・・・はい。」
ジャーファは,返事をするも,女性の言葉の意味を考え,理解した後に,
「へ?」
とつぶやいた。
「もしかして,あそこで暴れてたのって・・・・・・。」
「お父様よ。」
「・・・・・・。」
改めて,現実は厳しいんだと実感する。
「なんであんなに暴れてたんでしょうか?」
「さぁ。でも,お父様は,密入国しようとしている人間の撲殺,と言っておられました。」
その言葉に,ジャーファは一瞬ドキッとする。
「・・・・・・それって,ほんとですか?」
「ええ。」
彼の現実逃避は,一瞬にして破られた。
「そういえば,あなたは見ない顔ですね。他国から来られたのですか?通行手形はありますか?ないのなら・・・・・・。」
(ヤバい。)
ジャーファは,駆け足で逃げる。
逃げたつもりだった。
しかし,一瞬で捉えられた。
「逃しませんよ。密入国者。」
「・・・・・・何者ですか?」
首を片手で縛られた状態で,ジャーファは聞く。
すると,女性は不思議そうに,
「今までの会話で悟れなかったあなたの感に驚きますわ。」
と言った。
「龍の國密入国者取り締まり組組長キズルの長女,ミナッシュ・バラレル。」

[閑話休題]
龍の國は,灼熱の地と寒帯を戦場へと導いたとされる、龍族が築きあげた王国である。
先祖は龍虎族と呼ばれる白黒族の次に神に近かった存在だったと謳われる。
その一族は,「断龍術」と呼ばれる魔術を使い,目標を木っ端微塵にするまで物が切れる龍を体に巻き付かせる。
そのことから,恐れをなした人々は,その一族を「首切りの竜の使い手」と呼んだ。

第五話 氷と龍

小さな繁華街に爆音が響いたのは,黄昏へと迫る時間であった。
「ギリシャ火薬ね。水分で発火する火薬だけれども,威力はまあまあて感じね。」
袋を持ったジャーファに,ミナッシュは笑いながら言った。
「くそ。」
ジャーファが呟く。
「そもそも,あなたが住んでいた国を戦場へと陥れた一族をそんな軽い目で見ないでくれる?それとも・・・・・・。」
今のミナッシュに,今までの礼儀正しい面影はない。
今まで漆黒だった髪の毛は緑色に変色し,赤かった瞳は黄色くギラギラと光っている。
「私を楽しませてくれるの?」
ジャーファは,彼女に向かって布製の小袋を投げる。
すると,小袋は一瞬で大きく膨れ上がり,破裂するように爆発した。
街は一瞬で焼け野原と化し、飛ばされた人々は訳もわからず混乱している。
「かなり強い液体火薬ね。でも・・・・・・」
彼女の手から大きな鎌が出る。
「私の攻撃に耐えれるかしら?」
その鎌は、たちまち緑色に変化する。
飾りだと思っていた金色の蛇は,うねうねと動き出す。
「緑龍魔術・首切り。」
鎌の刃が分裂し、ジャーファに向かって勢いよく襲いかかる。
ジャーファは,咄嗟に盾を出し、攻撃を全て受け止めた。

「ねえ、おじいちゃん。」
ジャーファが小さかった時の話だ。彼は,祖父が以前話していた緑龍族の話に疑問を覚え,直接聞いたことがある。
「その一族って,強いの?」
ずっと思っていたことだった。
ジャーファは,てっきり、
「そりゃもちろん強いとも。」
と答えるかと思っていた。
しかし,その答えはまさに彼の予想とは相対的であった。
「いや。」
「へ?」
「奴らは弱かった。弱かったから、あっちとこっちが戦になったんだ。」
そうだけ言うと,祖父は立ち上がり,自室へと歩いて行った。

「・・・・・・そう言うことか。」
ジャーファは呟いた。
「何がだ?そんなに余裕があるのか!」
「ああ。」
ジャーファは立ち上がり,強気な笑顔で答えた。
「僕の勝ちだ、ミナッシュ嬢。」

【To Be Continued】

次回,龍の國編 最終回 
第六話 『覚醒』


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