ダーク・ファンタジー小説
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- やよいの過去屋
- 日時: 2024/03/15 16:16
- 名前: とーりょ (ID: kWgD5bK.)
- 参照: https://www.kakiko.info/bbs_talk/read.cgi?no=26431お知らせ用掲示板
[あらすじ]
ちょっぴり大阪弁のやよいは、戦争で死亡した幽霊のカラスが店長のお店『過去屋』で
バイトすることになった。
過去は消えない、戻れない、変えられない。
そんな過去があったから今があるって、誰もそんなことは思わない。
[登場人物]
■花倉 やよい(人間)
過去が見える少女。
■カラス/ノアール(幽霊)
戦争で死亡したカラス。
■山田(人間)
人を殺したことがある女性警察官。
【目次】
■「お客さんは警察官」#01 >>1-
Prologue.>>1
Episode.01「忘れたい過去」>>2-3
Episode.02「僕は幽霊」>>4
Episode.03「家族は優しい」>>5-6
Episode.04「あの事」>>7
Episode.05「素敵な理由」>>8-9
[掲示板も利用してます]
感想などお聞かせください!まだまだ半人前なのでよろしくお願い致します…
この掲示板では、ちょっとしたミニストーリー『やよいの日常屋』も投稿していますので
よければチェックをよろしくお願い致します…!※参照のURLからお願いします。
- Re: やよいの過去屋 ( No.1 )
- 日時: 2024/01/22 18:02
- 名前: とーりょ (ID: J0KoWDkF)
この町には、ある小さなお店が立っていた。
そのお店の名前は『過去屋』で店長は カラスである。
なぜ私が『過去屋』でバイトすることになったのか?
それは一匹のカラスのせいである──
その『ノアール』という名前のカラスは あたしの目の前に 突然あらわれた。
どうやら戦争で死亡したカラスで 幽霊らしいが あたしはまだ信じてない。
だって、幽霊ならあたしが見えるはずないからだ。
あたしが霊感など持っていないことは自分がよくわかっている。
そのカラスに「僕の過去を見てほしい」と言われた。
けれど、あたしは過去が見えるわけではなかった。
その事をカラスに話すと「『過去屋』でバイトしろ」と言われた。
お客さんの過去を見れば、過去を見ることに慣れるから。
そうして慣れたら僕の過去を見てほしいと。
あたしは逆らうことができなかった。
なぜなら、その目が少し悲しそうな目をしていたからだ。
それに、理由は分からないが助けてあげたいと思ったから。
「過去を知りたい」と言うことは、何か理由があるはずだから。
あたしが協力できることがあるなら……と、あたしは少しカラスに感情を奪われていた。
- Re: やよいの過去屋 ( No.2 )
- 日時: 2024/01/24 09:49
- 名前: とーりょ (ID: J0KoWDkF)
──そして今に至る。
今日からオープンする『過去屋』は、オンボロのお店で一人部屋くらいの狭さだった。
その部屋の真ん中に机と椅子を置いて、その椅子にあたしが座っている。
……以下にもあたしが店長みたいだった。
そのあたしの肩にカラスが座る。そしてあたしの相席にはお客さんが座るのだが…。
「お客さん、ほんまに来るん?」
肩に乗っかっているカラスをじーっと見た。
だがカラスはずっと入口の方を丸い目で見つめるだけだった。
あたしはゆっくりもとの姿勢にもどり、入口の方を見つめた。
すると、お店のドアノブが曲がった。
その瞬間あたしは あっ としてすぐに姿勢を整えた。
息を大きく吸って「おいでやす!!」とお客さんに言った。
そのお客さんはなんと、女性警察官だった。
あたしは慌てて肩にいるカラスの方を見た。
「警察来てもうたやん!!」と小さな声でカラスに言うと、その女性警察官は
豪快に笑っていた。
「違う違う!お客さんだよー!」
その女性の一言で、笑顔が本物だとわかった。
「ほんなら、契約書お願い致します!」
あたしは契約書を渡した。
その契約書には名前の記入欄と『過去、取り消しますか?』の一文だけだった。
するとその契約書を見た女性警察官はツバを飲み込んだ。
「…本当に取り消せるんですね。」
「いや、そんなわけ…、」
そうだった… 過去を消すのは『私』だった。
すると女性警察官は契約書の記入欄に『山田』とインクの薄いペンで描いた。
「では山田さん、あなたの消したい『過去』は──
なんですか?」
- Re: やよいの過去屋 ( No.3 )
- 日時: 2025/01/19 07:55
- 名前: とーりょ (ID: Fjgqd/RD)
「7年前…、人を殺した。…私の過去を消してください。」
あたしはビックリしたが、決して表情には出さなかった。
なぜなら『絶対に感情を表情に出すな』とカラスに言われたからだ。
あたしはシンとした顔で言った。
「…ほな、山田さんの過去を見させていただきますね。」
あたしはゆっくり目をつぶった。
カラスの言われた通りにすればきっと……。
そしてゆっくり目を開けた。
すると見えたのは夢のようにぼやけた山田さんの『過去』だった。
その過去の山田さんはまだ中学生くらいの年齢だった。
山田さんのいる 部屋は酒のビン、タバコ、割れた食器などが散らかっていた。
「汚い」という言葉で終わらせられない景色だった。
山田さんはすみっこに体操座りで顔をうつぶせにしていた。
髪型はくしゃくしゃで、服もシャツ一枚だった。
そこに酒で酔っているであろう男が帰ってきた。
その男は山田さんがいる方を目を細めてじーっと見た。
「ぬぉーい!なんでバイト行ってねーんだぁ!?父ちゃん、悲しいぞぉ!?」
すると山田さんは顔をあげて、ゆっくり立ち上がった。
そして、その手にはナイフを持っていた。
男はビックリした顔で、一歩後ろに下がった。
「…おい、お前正気なのか。」
山田さんは男と目を逸らさず、ゆっくり男の方へと歩いた。
「ずーっと泣きたかった!!!!」
泣きじゃくった声でそう叫んだ。
そうしてナイフをゆっくり男の顔に突き刺した。
何度も。何度も。
人間の目玉が落ちた。
過去が現実のように見えた。
「私は、コイツと何のつながりもない…他人だ。」
「っぅうううああああ!!!うあああ!!」
あたしは自分のうなり声で目が覚めた。
すると目の前には男の子の子供がいた。
その男の子は、全く見覚えがなく、部屋の窓から夕日をずっと見ていた。
その目はどこかで見たことあるような目だった。
男の子は振り返って言った。
「君、もうバイトやめていいよ。」
その冷たさにあたしは少し腹が立った。
「なんでや!なんで子供に言われなあかんの!!」
その男の子は夕日が味方しているように夕日で照らされていた。
「わからないのか?これはお前のためでもあるんだぞ。」
その言葉で、なんとなくこの男の子が『ノアール』であることに気がついた。
- Re: やよいの過去屋 ( No.4 )
- 日時: 2024/02/10 09:04
- 名前: とーりょ (ID: J0KoWDkF)
「残念だけど、君はクビってわけだ。」
空気が冷たく、外からはカラスの鳴き声がカァカァと聞こえた。
「あたし、『過去』が見えたんやで…?なんでクビなん!!」
そう言うと、ノアールは少しビックリした顔であたしの顔を見てきた。
「君は、…続けたいのか?」
その質問にあたしはすぐに返事を返した。
「続けたい!…せめて山田さんの件を片付けてクビにしてください!」
あたしはノアールに土下座して頼んだ。
あたしはずっと頭を床にくっつけて土下座していると、ノアールの小さな手があたしの頭に
軽く乗っかった。
「……花倉は、僕のこと気持ち悪いって思わないのか?」
そのノアールの弱々しい声に、あたしは頭を上げた。
すると目の前にはノアールが座っていて、じーっとあたしの目を見つめていた。
ノアールは手をパーカーのポケットに突っ込んで、少し照れた顔で下を向いた。
「前も言ったけど、僕『幽霊』だからさ。」
あたしはなんとなく察した。
ノアールは何回かあたしのような人に声をかけては『気持ち悪い』と言われ続けたこと。
そう考えると、少しかわいそうに思えてきた。
「…じゃあ、なんであたしはノアールのこと見えるん?」
「僕が花倉には見えるように魔法のようなものを使っているだけ。」
あたしは自分の事を『花倉』と呼び捨てされていることが気にはなったが、
あたしは呼び捨てなどされたことがなかったので少し嬉しかった。
「けど、この人間の子供の姿になれば他の人間からも自動的に僕のことが見えるようになる。」
あたしはノアールの説明でちょっとだけ理解した。
そして、その時にはもう夕日が見えなくなっており、周りも真っ暗になっていることに気がついた。
あたしが夜になっていることに気付き外を見ていると、ノアールも後ろを向いて外を見た。
「…ほな、あたしそろそろ帰るからっ!」
リュックサックを背負って、帰る用意をしていると…
「待って。」
…ノアールに引き止められてしまった。
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