ダーク・ファンタジー小説
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- 雛烏
- 日時: 2024/02/20 00:57
- 名前: りゅりゅ🎠 (ID: YF6AES9Y)
雛烏それは、黒くて美しい鳥。真っ黒な体を持ち、一度覚えたことは忘れない知能を持つ烏。東北の一部の地域では雛烏のように芯を持った美しい子にに成長して欲しい。という両親の願いを込めて藍、霞等の名前をつけることが多いと言われている。
「藍はどう思う?」
「……そうね、私の親もそんなこと考えていたのかしら」
「え? それってどういう……」
意味深な言葉を口にした藍に紫苑はその言葉の真意を尋ねた。すると、藍は面倒くさそうにその事について説明を始めた。
「私は親の顔を知らないわ。生まれてすぐ捨てられたみたいね」
「……そう……だったのね」
「別に気にしていないわ。物心ついたときからひとりぼっちだったし。」
そう答える藍乃横顔はいつもより少し雲っていた
「えっと……藍の両親は?」
「さあ、今どこにいるかもわからないわ」
「そうなんだ。でも、いろんな事を乗り越えてきたから藍はこんなに素晴らしい人になったんだね」
「……はっ?何言っているのよ」
「いや、本当にそう思ったんだよ。僕は今まで色んな人と出会ってきたけれど、君みたいな素晴らしい人に会ったのは初めてだよ」
「……おめでたい頭ね」
「あはは……」
紫苑が笑いながらそう答えると、二人は揃って立ち止まった。どうやら、話し込んでる間に目的地に着いていたようだ。
雨上がりの空は絵の具を混ぜたように美しく、藍の髪はしっとりと濡れていた。僕がリュックサックからタオルを取り出すと藍は無言で受け取った。「ありがとう…」さっきまでとは違い、小さな声で俯きながら話す藍はこれからの未来を考えて不安になっているのだろうか。
理不尽な世間や大人に反抗するため僕たちは今、踰の窮屈な町を体ひとつで抜けだし、そう、まるで雛烏が孵化するときのように大きく羽ばたこうとしている。