ダーク・ファンタジー小説

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神人ーカミビトー
日時: 2024/03/24 13:26
名前: Nal (ID: JU/PNwY3)

人界ドリシュタとこの世界は呼ばれている。かつては地球と呼ばれた。
五万年前に今でも語られるほどの災害が起こった。何時までも無駄な
争いを続ける人へ神が出した答え。神すら呆れ破滅を望むほど
堕落してしまった人間。崩壊した後、残った人々が新たな世界を
作り出した。今の世界。天地再編と呼ばれる出来事。
この星が地球と呼ばれていた頃に信仰されていた神は偽神と
呼ばれ、今では架空…誰かが勝手に作り出した偶像であると信じられている。
人が神の力、神力は持てないのが原則だが例外がある。
その神力の固有名詞は偽神たちの名がつけられている。


物語は偽神を真の神にするために動く人の話。
もう一度、世界をやり直す話。

第一話「王に呼ばれて」>>01
第二話「掛けられた容疑」>>02
第三話「宰相プリムローズを探して」>>03
第四話「隻眼の老人」>>04
第五話「」>>05
第六話「」>>06
第七話「」>>07

Re: 神人ーカミビトー ( No.1 )
日時: 2024/03/20 21:02
名前: Nal (ID: JU/PNwY3)

白夜皇国、アートマン帝国、パラミティ王国、聖エンブリオ公国。
四大国と呼ばれ、ドリシュタを支配している。始まりは十年前。
白夜皇国の皇族に生まれた一人の少女は皇女と呼ばれるべき女性に
なるはずだった。ほとんど鎖国状態に近いこの国には黒い噂が
流れている。


「カノン」

祖国から追放された少女カノン・ラプラスはパラミティ王国の侯爵家である
ラプラス夫妻に養子として引き取られた。二人は中々子が出来ないことに
悩んでいた。海の上を彷徨っていた幼いカノンを見つけ、引き取った国の王は
長く自分を支えてくれた夫妻の恩返しの為に行き場の無いカノンを養子にしては
どうかと提案したらしい。

「今日は国王が貴方に会いたいと言っていました」
「どうして?」

マーガレット・ラプラス夫人、彼女はカノンを実の娘のように愛している。
カノンも彼女を本当の母親のように思っている。それはマーガレットの夫である
ニコラス・ラプラスも同じだ。彼の事もまた父親のように思っている。

「先代国王が逝去してから彼の息子であるヴィクトル・パラミティ様が即位
したの。彼はまだ貴方の事を知らないのよ」
「そうだっけ?」

立ち上がろうとしたマーガレットだったが不意に顔を歪ませる。

「ハァ…年は取りたくないよ」
「無理しないでください、お母さん。大丈夫。一人でも城まで
行けるから」
「そ、そうかい?気を付けるんだよ」

腰の痛みを堪えながら、マーガレットはカノンを見送った。用意された
青いワンピースの裾が大きく揺れる。揺れがピタリと止まると彼女は振り返り、
手を振った。
聞けば、城まで向かう馬車が既に決まった場所に待機しているらしい。
やはり侯爵家で長らく国王を支えて来た家の人間だからだろうか。

「城へ向かう馬車、ですよね?」
「あ、えぇ、そうですよ。さっさと乗ってください」

馬車の車夫はカノンに対して蔑みの眼を向けていた。態度にも出ているが仕事。
馬車が動き出した。中にも人がいた。女性だ。長い青緑色の髪の女性は城で働く
騎士らしい。

「お初にお目にかかります。パラミティ王国騎士、テレサ・レインウォーターと
申します」
「女性騎士、珍しいですね」
「えぇ。騎士団に属する騎士の多くが男性だから。私のような女性の騎士は凄く
少ないわ。車夫、少し態度が厳しかったでしょ?彼に代わって謝罪させて」

カノンに対する態度には理由がある。彼女が異国の、それも白夜皇国の人間だから
嫌っているらしい。先代国王が全て説明をして納得させたはずだが、内心では納得
出来ていない者も多かった。新たに王になったヴィクトルはカノンの出自に理解を
示しており、彼女がこの国に居座ることを許容している。

「大丈夫よ。彼がいる限り、手を出されたりはしない。私も、貴方の事を信じてる。
一目見れば分かるわ。貴方はとても優しい人だってね」
「私も同じです。テレサさんは素敵な女性だと思います」
「褒めても何も出ないわよ、カノンちゃん」

城まで向かう道中、人が多い街道を抜けるまで長いようで短かった。
何も起こらないだろうか。テレサと共に城の中へ入った。謁見の間に揃って
案内された。そこに待ち構えていた青年こそがヴィクトル・パラミティ。
雷のような金色の髪の青年。隻眼は王でありながら戦場を駆けた証だろう。

「そう畏まるな、お前たち。改めて名乗ろう。俺がパラミティ王国の王
ヴィクトル・パラミティ。初めましてだな、カノン・ラプラス。俺の事は
ヴィクトルと呼べ」
「えぇ!?そんな…呼べません」
「なら、これは命令だ。俺とお前は対等な友、俺もお前をカノンと呼ぶ。だから
お前も俺をヴィクトルと呼べ」

型破りな王だ。威厳があるのだろうか。テレサは姉、母のような立場で二人のやり取りを
そっと見守っていた。

Re: 神人ーカミビトー ( No.2 )
日時: 2024/03/22 22:19
名前: Nal (ID: JU/PNwY3)

神を信じて来たパラミティ王国が神への反逆をする。
理由は何だろうか。神の力、神力は血筋や才能に左右され誰でも手に入れることが
出来る代物ではないというのが一般常識。誰が最初に定義したのだろうか。
間違いに気付いた王は語り継ぐ。我々が信じる神こそが偽神であり、彼らによって
我々大地に住む人は生まれてから死ぬまで支配されている…と。

「お前を保護した理由は簡単。お前はもう持ってるよ、だけど白夜皇国はその原石を
捨てたってだけ」

その日は妙に静かだった。三人だけしか部屋にいないからかもしれないが、それ以上の
何かがある気がしてならない。カノンはその大きな期待に応えられるとは到底思えない。

「テレサ」
「はい?」

ヴィクトル・パラミティはテレサ・レインウォーターに鍵を投げ渡す。先ほどまで二人の
やり取りを、姉、母のような気持ちで聞いていたので驚いた。銀色、狼を模したような
紋章がある。王の部屋への鍵を渡されたのだ。

「もうすぐ俺が仕事でね。お前に渡したい物がある。青い箱だ」

彼は必死に二人を謁見の間から追い払う。その必死さに困惑しつつ、それだけ王として
重要な仕事が控えているのだろうと自分たちを納得させ部屋に向かった。その後、再び
カノンたちが謁見の間に来るまで誰も王の前に姿を現さなかった。密室での完全犯罪は
いとも簡単に成し得るのだ。
ヴィクトルの部屋、王の自室にしては質素な場所だった。

「そう言う人よ。私も、誰も彼の本心なんて分からないわ。でも彼は王に相応しい人だから」
「人の趣味嗜好に、文句はない」

趣味嗜好は人それぞれである事さえ理解できればいいだろう。鍵を開け、中に入る。
扉も質素なら部屋も質素だった。誰もが想像する豪華なベッドもシャンデリアも無い。
小ぶりな机と椅子、そしてシングルベッド。机の上に置かれている青い箱。持ってみると
大きく、重量のあるものでは無いらしい。軽く振っても音がしない。

「梱包材で包まれているのかも。開けてみましょう」

リボンを丁寧に解く。白いリボンを外し、箱を開く。音がしないわけだ。梱包材で包まれた
二丁拳銃。

「なんで?」

プレゼントに武器なんて聞いたことがない。

「貰っておけば良いんじゃないかしら。文句は、王様に…ね?」
「そうですね。よし、文句言いに行くぞー!」

二丁拳銃には名前が刻まれていた。輝銃ディオスクロイ、左手にカストロ、右手にポルクス、
地球と言われていた時代に語られていた双神の名前を持つ…神器と呼べる代物。
左は青に金、右は青に銀。



「随分な挨拶だな、目的は何かな」
「分かり切っているだろう、ゼウス。貴様が保護する者を貰いに来た」

ヴィクトルは臨戦態勢をとることもなく、玉座にて足を組み見下ろす。その目は慈愛に満ちる
優しい王の眼では無い。冷酷に、敵を見下す目。

「民を愛するのが王ならば、民の為に死ぬことも厭わない…違うか?」
「お前が王を語るとはな―」

誰も証明できない。証言できない。そして政治家たちの中には白夜皇国の人間を受け入れたことに
今も反対する者がいる。彼らが高らかに他へ告げた。

「奴らは狡猾にも皇女を利用し、我が王の暗殺を実行した。やはり白夜皇国の人間を
信頼することは出来ない。彼女を処刑するべきだ」

彼らの話は当人にも知れ渡っている。テレサも懸命に彼女の無実を証言するも
一介の騎士では彼らの権力に太刀打ちできなかった。断罪されることが決定しているが
形だけでもと言うことで弁明の機会が与えられた。そこでテレサの繰り言にはなったが
その時の事を説明した。

「口だけは達者だ。そうしてラプラス夫妻をも騙していたんだな?お前は魔女だ。
お前を野放しにしておけば、国が亡ぶ」
「―待て」

カイ・セルダ、王国騎士団総団長を務める男。彼も強い発言力を有している。だから
全員が口を閉じた。

「カノン・ラプラス。俺から条件を出させて貰う。一年だ」
「一年?」
「一年で犯人を見つけ、ここに連れて来い。生死は問わないが、必ず証拠を持って来い。
期間中、お前を大罪人として国に晒すことはしない。どうだ?お前が潔白であることを
証明する方法はこれだけだろう」

冷たい碧眼はカノンに何を感じているのだろうか。腹の底が見えない。ヴィクトルよりも
読み取りにくい。だが彼は今回の事件に半信半疑。現場には血だまりと首を吊ったであろう
痕跡があった。天井からぶら下がる綱。死体は無い。意味深に残された血塗れの剣と現場。
そして、白夜皇国のシンボルともいえる太陽が何者かの血液で生々しく床に描かれていた。
まるで誰もがカノンを怪しむように仕向けるかの如く。誰も話がうますぎると考えない。
兎に角、手柄が欲しい。自分の地位を確固たるものにする材料を欲している。そんな政治家に
よる国の支配を憂えている。

「分かりました。一年間、その間に必ず犯人を見つけて連れて来ましょう」
「貴公らも同意して貰うぞ。一年は我慢することだ」

カイは政治家たちに釘を刺した。監視役と言う形でテレサは彼女に同行することになった。
騎士団長の指示らしい。彼から話を聞いている。彼はあの場では冷徹な男、その役割を
演じていたが先ほどの条件から遠回しにカノンが助かる方法を提示していた。

「暴走するのは目に見えていたからね。気が楽になったと思わない?僅かだけど、
生きる方法があるのだから」
「…勿論。私は私が潔白だと信じてる。事実だから。それを真実にするだけ。そもそも
死体が見つかって無いのに死んだと断定するのは間違いだと思う。戦闘が起こって出来た
血だまりの可能性も否定できない。暗殺ではなく、誘拐を目的にしていたかもしれないし…」
「可能性は山ほどある?なら簡単ね。全て立証するわよ、カノン」


Re: 神人ーカミビトー ( No.3 )
日時: 2024/03/23 15:10
名前: Nal (ID: JU/PNwY3)

目撃者のいない完全密室、完全犯罪。そこに果たして犯人への糸口は残っているのだろうか。

「その犯人に私が仕立て上げられている…たまたま私が直前まで王様と会話をしていたから?」
「だとしたら、私も充分犯行が可能よ。床に描かれた太陽。太陽は白夜皇国の国旗にも
使われるほど神聖視されているわ。つまり犯行は白夜皇国の人間であると推測できる。
犯人を姿を誰も見ていない以上、例の国に関係していて、尚且つ城に足を運んでいた
カノン」

自然と犯人と思しき人間が見えて来る。もしかして城にいる人間全てが容疑者なのではないか?
テレサも同じ考えに至った。国の関係者でありながら、城に全く姿を見せない者がいる。
先代の王、カノンをこの国に迎え入れると決めた人物を一番近くで支えていた側近。
宰相プリムローズ、宰相でありながら国王の執事でもあった人物。

「その前に、マーガレットさんたちに長く家を空けることを伝えておきたい」
「そうね。分かりました、待っていますね」

一度家に戻り、事情を説明しておかなければ二人を心配させてしまう。血の繋がりは無くても
二人は実の両親と変わらない愛を注いでくれた人だ。家に戻ってくるとその騒ぎを何処かから
聞いていたらしい。

「…分かったわ。私たちはずっと待ってるから、必ず無事に帰って来なさい。忘れないで、
私たちはこれまでもこれからも貴方の親よ」
「ありがとう」

困惑することなく、二人はこの事実を受け止め、彼女のこれからの事も快く受け入れる。
家を出て行くまで僅か五分だけ。カノンが家を離れた後、一匹の烏がマーガレットたちの
もとへやって来た。

「貴方も苦労するわね。これから頼むわよ」

語りかけても烏は人の言葉を話さない。


宰相プリムローズの隠居先をなんと現騎士団長カイ・セルダが知っていた。彼はプリムローズと
顔見知り、実際に手合わせまでしたことがあるという。その実力は非常に高い。先代王より
前から国に忠誠を誓っていたという噂があるが彼の容姿は若者だったという。外見年齢に関して
聞いても彼は軽く受け流したり、はぐらかしたりして真相は分からない。でも忘れてはならない。
ドリシュタ、人の世界。人とは人間だけではなく大地に住む亜人をも包括する。全ての種族は
平等であるという意味だ。

「もしかしたら長寿な種族か、その混血かもしれないね」
「私も思ったわ。出会ったら、真相を聞いてみましょう。彼が隠居しているのは王国でも
特殊な地域、温かな太陽の光が巨木によって遮られた夜に包まれる街ニュクステラ」

そこには不思議な言い伝えがある。曰く樹齢千年の木があるらしい。その根元に眠る魂が
ニュクステラを夜空の街にしている、祝福を与えているのだとか。幻想的で、そして恐ろしい
言い伝えだ。


王冠、栄光、基礎、勝利、理解、美、慈愛、知恵、峻厳、王国。
その名を持つ者が主戦力として属している組織があるらしい。あくまで噂のまま
留まっている。彼らの動向は不明。今の神へ叛逆する者を確実に消すために、そして神が
望む大地にするために手足となって動く。彼らは必ずカノンたちと敵対する。

「これはこれは、勝利様。お早い御帰りです事」

美を担当する女は淫らにも彼にすり寄る。ティファレト、彼女はネツァクの名を持つ男の
身体に指を添わせる。

「あぁ、やはり貴方に適う者がいるはずもございません。魔を使わずとも貴方は完全無敵だと
言うのに神は貴方に力を授けたのです。何人たりとも貴方と対等になるなど不可能」
「そう悲しい事を言うな。いるだろう、対等な人間が」

ある意味で危険な男だ。ネツァクなどと言う名前は本名では無い。だが彼も間違いなくカノンの
前に立ちはだかるだろう。別の部屋からは怒号が轟いた。

「逃げられただと!?」
「あの男…ヴィクトルは狡猾な男でした。使者が全員返り討ちにされたんです」
「そんなことはどうでも良い!どんな手を使ってでも行方を探せ!私が致命傷を与えた、
遠くに逃げたり、動き回ったり出来ないはずだ」

迂闊だった。見誤った。だが彼らの狙い通りに一部、事が進んでいる。だが誤算が幾つもある。
白夜皇国から追放された娘は処刑されることなく、とある人間の提案が通ったことで
一年は誰からも手出しされない状態。
彼らの苛立ちをネツァクは聞き耳を立てていた。
十人のうち一人がパラミティ王国で、国王殺害未遂を起こした張本人だ。未遂、国では
死んだと信じる輩がいるものの、実行者としては未遂で終わってしまった。

「よっ、レグルス」

レグルスと呼ばれた青年はネツァクとは異なり小柄で童顔だ。だがネツァクとは双子である。
似ていないが…。性格も似ていない。

「カイさんには感謝しなくては。彼がいなければ、そのまま彼女は問答無用で処刑されていました。
真犯人を探すために行動を開始したようです」
「そうかい。元々アイツは気に入らねえ。もっと引っ掻き回してやろうかな」
「それは、どちらを」

分かり切っているがレグルスは敢えて尋ねた。獣のようだ、と誰もがネツァクに対して評価する。
レグルスはその評価を肯定する。彼は獣だ、果たして彼を飼い慣らす獣遣いはいるのだろうか。

「あ、でも全部を流すなよ」
「分かっていますよ。兄さん」


Re: 神人ーカミビトー ( No.5 )
日時: 2024/03/24 10:10
名前: Nal (ID: JU/PNwY3)

王都から離れ、ニュクステラを目指して歩き出したカノンとテレサ。
そこまで幾つかの町村を通り抜ける。白夜皇国の皇族は白髪に赤色のメッシュがある。
カノンは黒髪に青色のインナーカラー。髪色など人によって異なるのだから変では無い。
遺伝もあるが、突然変異なのだろう。

「勿体ないわ。こんなに綺麗な青色の髪がインナーカラーだなんて」
「そう?」

テレサは柔らかいウェーブのある青緑色の髪だ。深海の髪。

「あぁ~…!誰か、助けてくれー!」

ゴロゴロと転がって来るのは何だ。林檎や玉ねぎ、蜜柑が転がる。慌てて、拾い集めた。
カノンたちがいたのは坂のすぐ下だ。拾い損ねることは無かった。全て拾ってから坂の
上で立ち往生している老人が持つ籠に敷き詰めた。

「お嬢さんたち、ありがとう」
「気にしないでください、おじいさん」

長い口髭と隻眼。その目は若い頃に怪我をしてしまったらしい。

「ほほぅ、ニュクステラへ向かうのかい。大変じゃなぁ、遠いじゃろ」
「そうですね。幾つも街を抜ける必要があります。一日では辿り着けないのは
明白ですので、途中で何度か宿を取りながら進むことになるでしょう」

老人は自分の髭を撫でながら、何かを深く考え込む。彼は二人を近くに呼び寄せ、地図を
広げる。今いる場所を指さして、そしてスライドさせる。

「この道を真っ直ぐ進んだ後、分かれ道がある。左に進むともっと近くなるんじゃよ。
人も多い場所じゃ」
「初めて知った。知ってた?」
「いいえ、私も知らなかった」

カノンとテレサのやり取りを聞いて、老人は笑った。

「この辺りに住んでおらんならば知らなくても当然じゃよ。じゃが、一つ
条件がある」

老人は指を立てる。

「最近、盗賊がいて困っておるんじゃ。彼らがその道を違法に塞いでおってな」
「その盗賊をどうにかしろ、と?」

テレサが確認した。盗賊団で困っているなら、騎士団に頼めば良いのではないかと聞くが
騎士団を動かすには政治家たちを納得させなければならない。果ては王が許諾する必要がある。
その王が今は不在、自分の地位のみに興味を持つ貴族たちには有象無象の困りごとは
興味無いらしい。

「実は儂も大事なものを盗まれちまったんじゃ…金色のペンダントを見つけたら、持ってきてくれ」
「分かりました」

二人の背中をジッと老人は見つめる。彼に接触して来た人間がいる。

「その姿の時はビレイグ、でしたっけ。相変わらず知略に長けていますね」
「ふぉっふぉっふぉっ、本当に困っておっただけじゃよ」
「僕としては心が痛むのですが…」
「刺激を与えてやらなきゃ、才能は花開くことは無い。良い機会だろ?遠慮はいらねえ」

老人らしからぬ口調で青年と話す老人ビレイグ。ビレイグに対して青年は敬語を使う。



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