ダーク・ファンタジー小説
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- 星空スケッチブック
- 日時: 2024/05/23 01:51
- 名前: みやぎあすか (ID: GbhM/jTP)
夜空を見ながら、子供のような無邪気な笑顔で彼女は言う。
「────。」
何と言ったのだろうか。言葉はひどく曖昧で、夜空の星々たちに吸い込まれていくように無くなっていく。続いて私が口を開き、言葉を発する。
「──────。」
自分の声だというのに聞こえない、認識はできるというのに。
砂の入ったバケツをひっくり返したような、満点の星空。そこに私たち2人は佇んでいる。
一方は星空を、もう一方は彼女の横顔を。
私たちは見ている。
….私たちという言葉に違和感を覚える。言葉としての意味ではない、明確に違うのだ。
私の視点では彼女の横顔を見ていなければならないはずだ。一人称視点で視界を捉えていないといけないはずだ。
なのに、私の視界は三人称視点で世界を捉えている。
なぜ、そんなことができているのだろうか?
──その疑問を持った瞬間、ゆっくりと、ゆっくりと、私の視界は薄れ、暗く、黒くなってゆく。
そして、私の世界は暗転した。
───────────────────────
暗転し、変わる。視界が、世界が、視点が。
三人称から一人称の視点へ、変わる。
──そして、明転。
次に私の視界に映ったのは、満点の星空を見ている2人ではなく、
にっこりと笑う星のように美しい、銀髪の彼女の姿である。そして彼女は開口一番
「寝不足?ぐっすり寝てたわよ?」
そう、私は別の世界に完全に入り込んでいたのだ。
要するに夢の世界だ。私は大学の講義中だと言うのに別の世界に入り込んでしまったいたのだ。
先ほど彼女が発した言葉はハッキリと聞こえるのに頭に入ってこないのは、まだ頭があまり動いていないからなのだろうか。
数秒立ってからその言葉をやっと認識し、頭が働き始める。
「あまりに可愛い顔で寝てたから起こそうか迷ったわよ」
小さな声で広角を上げ、冗談を言う彼女に私は「あなたの寝顔のほうがよっぽど可愛い」と半ば冗談半ば本当の事を言おうとしたが、やめておいた。
やっと私の耳元に教授が講義をしている声が聞こえてきたからだ。雑談などをして後々教授に叱られたら面倒くさいので、私は彼女にこの言葉だけを伝える。
「起こしてくれたの?ありがとう。」
「どういたしまして。」
彼女は広角をあげ笑う。そして、私たちは引き続き講義を受ける。
数十分経ち講義が終わり、私たちは外に出てベンチに腰掛ける。
空には昊天を感じさせるような夏雲、積乱雲。そして空には科学の増進を思わせるような、飛行船。
飛行船には基本的最新のニュースが映し出される。
「○○光年先に新たな未知の惑星発見」
技術の進歩、科学の発展。
人間のの力で解明されていく未知。
失われてゆく、証明不可能なもの。
スピリチュアルなものでさえも、科学によって否定される。
科学じゃ解明できない未知でも、科学で無理矢理矛盾した答えを創る、そんなつまらない世界。
私は、横にいる彼女にしか聞こえないような声で、それでも、同じような考えで、この世界に飽き飽きしている人たちに共感して、賛同してほしいという微かな思いを乗せ、私は言った。
「もうこれ以上、科学なんか発展しなければいいのに。」と。