ダーク・ファンタジー小説
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- ガラスの靴が割れるまで。
- 日時: 2024/08/03 19:44
- 名前: みずたまり。 (ID: Q8dIWKcE)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
古代エジプトに生きていた魔女・ルルーシェが履いていたガラスの靴は、ガラスであるにもかかわらず、何をしても割れない。
そのガラスの靴は、現代にも残っているという。
これは、そんなガラスの靴をめぐった物語。
- Re: ガラスの靴が割れるまで。 ( No.1 )
- 日時: 2024/08/03 19:56
- 名前: みずたまり。 (ID: Q8dIWKcE)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「……は?」
朝起きると、そこは見知らぬベッドの上だった。
見たことのない本棚に机。
壁には、きっちりとした変な服がかけられている。
「しずくー?早く起きなさーい」
ドアの外から聞こえてくる、女の声。それは、どこか安心するような声だ。
……ここ、どこだ?
知らない。私はこんな場所、見たことがない。
窓から見える風景にも見覚えがないし、ドアの形状、イスの形、かざられているポスターも、まるで知らないモノだった。
「しずくー?」
部屋のドアが開いた。
そこには、赤いチェック柄のエプロンを着た知らない女が立っていた。
「……お前、誰だ?」
「お母さんに向かってお前って……。失礼ね!しずく、どうしちゃったの?いつもはそんな感じじゃないのに……」
そもそもしずくって誰だよ!
私はエジプトの光神とも呼ばれた伝説の魔女・ルルーシェだぞ!
- Re: ガラスの靴が割れるまで。 ( No.2 )
- 日時: 2024/08/03 20:06
- 名前: みずたまり。 (ID: Q8dIWKcE)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「はぁ……」
なんでこんなことになったんだ……!
私は今、どこかも知らない道を、変な服を着て歩いている。
これもそれも、全部あいつのせいだ……!
「しずく、今日なんか変よ?おかしな夢でも見たのかしら……。今日は学校休む?」
「が、ガッコウ?なんだそれは……?」
ガッコウ。聞いたことのない単語に、私は首をかしげる。
「学校のことも忘れちゃったの?しずく、あんたほんとに大丈夫?」
「……あっ!靴は?ガラスの靴!!」
「は?ガラスの靴?そんなシンデレラみたいなモノ、あるわけないでしょ」
しんでれら……?なんだそれは。
ガラスの靴は私のモノなのに、いつの間にかしんでれらのモノになっていたのか……?
「まぁいいわ。早く学校に行く準備をしなさい」
「準備って何をするんだ?」
「はぁ?……顔を洗って、朝ご飯を食べて、それからあの制服を着て家を出ることよ」
「な、なるほど……?」
それから顔を洗って朝ご飯を食べて、あの変な服を着てガッコウとやらに向かっている。
知るはずもない道のに、なぜか足が勝手に動くんだ。
どうやら、脳が勝手に記憶しているらしい。
- Re: ガラスの靴が割れるまで。 ( No.3 )
- 日時: 2024/08/06 23:13
- 名前: みずたまり。 (ID: Q8dIWKcE)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
私は記憶もないのにてくてくとどこか知らない道を歩く。
洋風造りの家は、和風造りの家は点々と並べられている。
田中、吉田、鈴木……。
見たことも聞いたこともない名前らしきモノが玄関の前に張り出されている。
自分の名前を軽々と張り出すとは……、私の生きていた時代とは大違いだな。
私の生きていたころは、名前なんか知られたら呪い殺されてしまうような、そんな過酷な時代だった。
現代は平和だ。
…………いや、待てよ。
なぜ今は現代であるとわかるんだ?
だって、私が生きていたあのころも、私にとっては現代だったし、というかここはなんなんだ?
私が生きていた時代というのも、どうして私が死んだみたいな感じになってるんだ。
あと、ガラスの靴はどこなんだっ!
あれは私の命より大切なモノなのに……。
どんっ
「あっ。すみません!大丈夫ですか?」
塀の曲がり角。
どうやら私は、ぶつかってしまったらしい。
こんな道ばたで考え事とは迂闊だったな。
ぶつかってしまったらしい男は、私に手を差し伸べる。
……しかし、いつまでたっても私が手を取る気配がなかったのか、男は私の手を少し強引に握り、私を立たせようとした。
「離せっ!その汚らわしい手で私を触るなっ!」
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