ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 魔界 ~アクマ~
- 日時: 2024/12/06 18:18
- 名前: 潮風リオン (ID: D2NnH/3T)
僕は、今凄い物を見てしまった!一体、どこに逃げれば良いのだろう、、、
僕の名前は、菊原 遼。学力も身体能力も普通の平凡な高校1年生。基本的にいつもは根暗で、眼鏡をかけているからか、周りの女子達からは陰キャ君なんて呼ばれてしまう。(T_T)まあ、気にする方が大人げないし??全く気にしていないけどね!…(嘘です。本当は気にしていr…)
でも、陰キャ君なんて呼ばれていても、部活でははバリバリのエースなんだ!何の部活に入っているか気になるだろう?それは…課題部!課題部っていうのは、家に帰ってダラダラしたい人向けの部活。活動内容は、週3で1-2の教室に行って、そこで課題を終わらせるだけ!僕は、家で早くダラダラしたいから、一番早く課題を終わらせて、教室を出るようにしているよ。だから、僕は部活のエースなんだ!
んで、僕はさっき凄い物を見た。ではその経緯を説明しよう。今日は、4時限だけだったので、僕は急いで家に帰ろうとした。だから、焦ってしまっていたのかもしれない。帰りの電車に乗る直前、僕の教室(1-5)に家の鍵を忘れてしまった事に気付いた。今日は、両親も仕事で外出中だ。このままだと、閉め出しを喰らう羽目になる。僕は、学校に戻るのがとても癪だったが、我慢して、猛ダッシュで学校まで向かった。
「よし、やっと教室だー!!」
僕が、1-5の教室のドアを開くと_
「この髪の毛、何に使おうかなー?」
なんと、まだ教室に生徒が居たのだ!その生徒は、恐らく同じ部活の同級生、佐竹 魔里(まり)。そして、最も驚いたのは…
「ひっ、人の髪の毛を握ってる!」
なんと、魔里の手には、美しい黒髪の束が握られていた。しかも、かなりロング。
「あーあ、バレちゃった♪」
魔里は、髪の毛をバサッと床に落とし、素早いスピードで、僕の目の前に来た。
「貴方、今とても怖い気持ちでしょ。私、そういうの分かるのよね。」
魔里は、僕の顔をよく見て、ふふふと笑う。僕は、その仕草のせいで余計に怖く感じた。そして、遂に駆け出してしまった。急いで玄関へ…もう、上履きでも構わない。早く、どこか、身を隠せる場所へ…
「ハァハァハァ…逃げ、きれたぁ…?」
僕は、学校からしばらくの距離にある、コンビニの前で一息ついた。背後を見ても、彼女が追ってきている気配は無い。僕は、ホッとしながら、コーヒーでも買おうとコンビニに入ろうとする。すると、、、
「きぃ~く~はらぁ~ りょーくん♪」
背後から声が聞こえた。振り返ると、そこには彼女がいた。
「うわぁぁぁーーっ!」
僕は、驚いた拍子に倒れてしまった…
目が覚めると、僕は自分の部屋のベッドで寝ていた。そして、その様子を魔里は面白そうに眺めていた。
「一体、どういうことなんだ…!?」
僕は、起き上がろうとしたが中々起き上がれなかった。魔里はその様子を見て、大笑いしながら
「貴方が私のことを怖がったからよ!ちょっとイラッてしたからこうやって金縛りに合わせているの。その代わりに、ちゃんと家まで送ってあげているんだから、我慢してよね。」
と冷蔵庫から勝手にコーラを取り出し、飲み始めた。
「君は…君は、一体、誰なんだ!」
僕は、金縛りに耐えながら、必死に質問した。
「あっ、正体?…私の正体は悪魔よ。だから、色んな魔法が使えるの。貴方を追いかけたのも瞬間移動の魔法を使ったから。」
魔里は、朗らかに笑い、僕の耳元でこう囁く。
「悪魔はね、魔界からやって来ているのよ。魔界がどこにあるかは企業秘密って奴だけど、私もそこからやって来た。魔界はね、人間界の秩序を守っている。そして、その魔界の住民で、悪魔である者に課せられた使命は、人々を幸福にすること。」
僕は、彼女の言い分に反論する。
「人を幸福に?悪魔って甘い誘惑で人を誘って、皆を不幸にするんじゃないのか!?」
僕の問いに彼女は、目を見開き少し顔をうつむかせた。
「そんなの、人間が勝手に思っていることよ。悪魔は、人間の欲望を叶える為に対価を頂くだけ。勿論、その対価は他の取り引きに使う。」
例えば…と彼女は考え、髪の毛を例えにした。
「さっきはね、2年生の女子が、親友の彼氏を奪いたいって泣きながらすがりついてきた。だから、私はその事を叶える為に、対価を頂いた。それが、さっきの髪の毛。あの髪の毛は質が良い。きっと、何かしらに役立つと思う。病気で髪の毛が無くなった人の髪の毛になったりとか…ね」
その答えに、僕は、内心驚いた。まさか、悪魔が人を幸せにしようと本当に思っているなんて。
「でも、その女子高生の親友は、彼氏を奪われて可哀想じゃないの?」
僕は、そう尋ねてみる。すると、
「うーん…だから、親友の心が傷つかないように彼氏を奪うよ。でも、人間関係ってそう簡単に操作できないじゃない?難しいのよねぇ…」
と彼女は考え出した。そして、
「そうだ!貴方も手伝ってよ!」
と僕を指差した。
「人間の心が分かる貴方なら、きっと幸福への道が見つかるはず。」
彼女は、キラキラした目で僕を眺める。僕はしばらく考えた。
(うーん…悪魔の言葉って本当に信じて良いのかな?でも、一応興味あるし…)
僕は、ふぅと溜息をつき、
「分かった。協力する。」
と宣言した。すると魔里は指をヒュンと空中で、動かして僕の金縛りを解いた。
「オッケー。じゃあ、頑張ろうじゃない。」
僕は、彼女が差し伸べた手を握り返した。こうして僕たちの物語は始まった。
- Re: 魔界 ~アクマ~ ♯2 ( No.1 )
- 日時: 2024/12/20 21:08
- 名前: 潮風リオン (ID: D2NnH/3T)
奪いたい。奪いたい。奪いたい。奪いたい。
髪だってなんだって、くれてやる_
女子高生は高らかに笑うのだった。
駅のホームにある時計を見ながら、僕は溜息を吐く。昨日の出来事がまだ少し信じられない。魔里が、本物の悪魔だなんて…しかも、調子に乗って、悪魔の仕事を手伝うなんか言って…あぁー!!自分って調子に乗りやすいのが短所だな…
ともあれ、自分を責めているのはいいのだが、今、僕はある人を待っている。いや、人じゃないかもしれない。何故かって?それは、彼女は悪魔なのだから_
「おはよっ!待った??」
魔里は、僕の肩をチョンチョンと叩く。僕は、はぁーっと溜息を吐き、
「10分くらいね。早く学校行こう。」
とドライに接する。悪魔だって事を知らなければ、魔里はそこそこモテそうだ。もしも昨日のことがなければ、きっと憧れの女子だっただろう_
「じゃ~あ、今日から貴方に協力してもらって、願いを最善の形で解決するわよ!いい???」
魔里は、張り切って僕に宣言する。僕は、
「はいはい」
と頷いた。
魔里が登校中に教えてくれたこと。簡単にまとめるとこうなる。
『2-1 織本 睦月(おりもと むつき)。彼女は、同級生である田中 悟(たなか さとる)に恋をしていた。だが、悟は、ある少女と付き合っていた。その少女は、睦月の小学校からの親友である、2-3の幸中 巴(さちなか ともえ)。睦月と巴は、昔からとても仲が良く、一度も喧嘩をしたことがない。だが、悟と付き合っているということを睦月に打ち明けた瞬間、関係は崩れていった。やがて、悟のことが愛してやまない睦月は、悪魔に対し、自分の美しい髪を捧げるかわりに巴と悟を別れさせることをお願いした。』
僕は、恋愛なんか一度もしたことが無かったので、少し怖じ気づいてしまった。
「にっ、人間の恋愛ってドロドロだなぁ…」
僕は1時限目からずっと頭の中で、織本睦月とその周りの人物の相関図を思い描いていた。なんとも言えぬ三角関係。けれど、、、悪魔にまで頼るということは、よっぽど田中悟のことが好きなのだろうか。親友を裏切ってまで手に入れたい真理とは…僕は、訳が分からなくなってきてしまった。
昼休み、魔里が自席に座っている僕に話しかけてきた。
「授業中も相当悩んでいたみたいだね。貴方、やっぱり面白い。んで、何か気付いた?」
魔里は、僕の頭を激しく撫でながら耳元で囁く。僕は、その手を不思議と受け入れてしまっていた。(何故かは分からないけど)
「憶測は悪いと思うけど…織本睦月は、田中悟を本当に好きなのかな?」
僕の言葉に、魔里は、興味深そうにほぉと頷いた。
「なんで?」
「だって、親友を裏切ってまで悪魔に頼ったってことは、よっぽどな理由があったってことでしょ?もしかしたら織本睦月は田中悟を憎んでいて、復讐の為に何としても近づきたかったのかなーって。」
僕は、自分の推理を素直に教えた。それを聞いた魔里は、しばらく黙った後、フフフと不気味に笑い出した。
「何かおかしかった?」
僕がおそるおそる尋ねると、魔里は、大笑いしてこう言った。
「あー、面白っ!でも、残念。織本睦月はただ普通に田中悟が好きなのよ。そして、何としても手に入れたかった…親友である幸中巴を裏切って、悪魔に頼むほどに。貴方は分からないかもしれないけど、人間って恐ろしいのよね!心の中はいつでもドロッドロ!私たち魔界の住民よりずっとね!」
僕は、大笑いした魔里がとても恐ろしかった。けれど、それと同時に、魔里が僕の方を悲しそうな瞳で見つめているような気がした。
「でも…人間の中にも貴方のような、愛しく思える人はいるのよね。」
魔里はそう言うと、その場を後にした。僕は、その背中を静かに見送ることしか出来なかった。
(何か人間に対するトラウマでもあるのかな…あんな取り乱すなんて…)
僕は、魔里の事を思いながら窓の景色を眺めた。不思議と、魔里が気掛かりでならなかった。
- Re: 魔界 ~アクマ~ ♯3 ( No.2 )
- 日時: 2025/04/05 20:59
- 名前: 潮風リオン (ID: .9kWSKnJ)
少女は、階段の隅で密かに泣いていた_
それは、愛しい人を思う心なのか。それとも、届かない光を諦めようとしているのか。悪魔である限り、どちらを追い求めたって意味が無いというのに。
魔里の取り乱し方は異常だった。
僕は、6限の数学が終わるまで、彼女のことしか考えられなかった。
「どうしちゃったのかな…」
「何か言ったかー?」
筋肉モリモリの熱血漢の数学教師が黒板に文字を書く音を止め、此方を伺う。僕はしまった!声に出しちゃった!と冷や汗を流し始めた。
「いえ、何でもありません。」
慌てて手を振って、大丈夫ですアピールを教師に見せる。それに対して、教師の方は、太陽のようにニカッと笑う。
「そうか!てっきり、最近のお前、数学の小テストの点数下がってきているから、次の定期テストを心配していたのかと思ったぞ!」
なに人の成績さらしとるんじゃ。ふざけんな、この熱血漢め。大体、お前は数学より体育教師になった方が良かったんじゃないか?
「ま、大丈夫だ!皆のために、明日の数学は小テスト二枚だ!存分に実力を試し、己の力を知るんだなっ!ガハハ!」
周りの人々は、顔を一気に青ざめさせた。そりゃ、そうだ。今日初めて言われたんだから。
(許せん…)
瞳を細め、僕は教師に向けて殺意を放つのだった。
なんとか今日も終わり、僕は魔里と駅のホームで話していた。先程とは違い、魔里は元気はつらつとした様子で、僕に対し小悪魔的な笑みを見せていた。
「へぇ~。貴方、数学のテストの点数、下がってきてるのね~。なんか意外だわ。」
「あんの、数学教師…!クラスの全員に、僕の苦手教科バラしやがって…!」
「大丈夫よ。それ聴いて、興味持つの多分私だけだから。」
大丈夫、大丈夫!と肩をバシバシ叩いてくる魔里を退ける。まさか昨日の今日で、こんなに仲良くなるとは…
「ところで、ドロドロ愛憎劇の件、どうするか決めたの?」
話題を変えようと、僕はあの件について話を切り出す。
「あー、アレねぇ…一応、契約は結んじゃったしィ。面倒くさいけど、やるしかないのよねぇ」
魔里は、面倒くさそうなオーラを放ちながら、顎を触る。
「もし今の状態で別れさせたら、幸中巴は不幸の一途を辿ると思う。けどそれはアウトなのよねぇ」
「え、幸中巴がその後どうなろうが関係ないんじゃないの?」
「そんな訳ないでしょ。私は、織本睦月のみと契約を結んだのよ。それ以外の人間の運命を変えることは決して許されない。」
色々面倒くさいルールがあるらしく、魔里は溜息を吐いた。
「悪魔の役割は、人々を幸福にすること。人々の中には織本睦月も入っているし幸中巴も入っている。そして貴方もね。」
人差し指を此方に向けながら、妖しい光を放つ瞳を向けてくる。
「この件が終わったとき、織本睦月は勿論、田中悟も幸中巴も何かしらの形で幸せになっていないといけない。」
“要するに、全員ハッピーエンドを迎えられないといえないの。”
「へぇ~、面倒くさそうだね。なんか首突っ込むの嫌になってきた」
僕は腕を組んで、魔里の瞳から目を逸らす。何故か引き寄せられる瞳を見ていると、段々自分が何かに惹かれていくような感じがした。魔里はそれを知ってか知らずか、どうしたの?と魔性の声を出してきやがる。
「ま、面倒臭がってももう無駄よ。だって、約束してくれたでしょ?幸福の道を見つけてくれるって」
「ま、まぁね」
言葉を詰まらせながら、僕はそう答えた。もう限界だ。魔里の行動一つ一つに胸が高鳴ってしまう。
「じゃあ、また明日っ!」
僕は、ホームに着いた電車の扉が開いたと同時に、中に突っ込んだ。ちなみに、その電車は僕の家の方向とは真反対の電車だった事をまだ僕は知らなかった。
Page:1