ダーク・ファンタジー小説
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- 春の夜月
- 日時: 2025/07/03 12:05
- 名前: 聖 華月 (ID: gobBUkxM)
一話【光日和】
フェアリー家。
時代は確かではないが、長年受け継がれてきた、魔力の家系。
この物語は、そんな家で育った女の子と.....
「この役立たず!!!」
….生きる意味を失った、男の子の物語。
「どうしてこんなこともできないの!!」
なんども、なんども、頬に激痛が走る。
父は、俺が殴られているのに、見て見ぬふりし、テレビを見ている。
俺は、殴られ、倒れ込む。
どうしてこんなに殴られてるかって言うと.....
数分前。
「お手伝いさん....?」
俺は思わず聞き返した
「そうなのよ〜。フェリー家がお手伝いを募集しているらしくてね?給料も高くって〜♪それにいってほしいのよ」
「....」
「あ。もちろん給料は全部家にね?あんたなんかを育ててやってるんだから」
(.....誰が育ててって言ったんだよ)
ただ.....その言葉がなくても、俺は内心、断りたかった。
もうすぐテストも近いし....最近ろくに飯ももらってないから、力も出ない。
「ね?」
母は、圧をかけてくる。
体がビクッとするが
「あの...母さん。俺、あんまり動く系のことはしたくないんだ....」
「は?」
「バイトならするし....だから....」
母は俺の話なんて最後まで聞かなかった
ドガッ
あごに一発食らった
「かはっ....」
「あんた、ふざけてんの!?そんなこともできないわけ!!??」
…..という感じで今に至るわけだ。
母は、俺のことをさんざん殴ったとき
「おい〜テレビが聞こえねえよ〜」
という、父の声を聞き、母は、焦る。
父は本当は暴君だ。だから、母は、父に怯えている。
この家は.....怯えが溜まっている場所。
母は、俺の手を引っ張り、歩かせると、
倉庫のドアを開け、俺を押した
「!!」
「はぁ.....ちょっとはここで反省しなさい!あぁそうだ。どうせやることもないんだし、これでもみときなさいよ」
と、フェリー家についての新聞を被せるように、俺に投げる。
そして、思いっきり、ドアを締めた。
バンっっっ
「.....」
涙も出ない。何も感じない。
きっともう....だいぶ前から。
俺は新聞に目をやった
『フェリー家第一子誕生!』
『まさかの、第一子は、強力な魔力の持ち主!!三歳で魔力発動!!』
『有力な跡継ぎ候補を、なくさないため、身の回りのことや体調管理をしてくれる、お手伝いさんを募集』
写真の中のそのこは、本当に楽しそうに笑っている。
(.....住む世界が違う)
絶対こういうにんげんは、高飛車で、俺を下に見るタイプだ。
「...はぁ」
今すぐ逃げ出したい。
「うわ....」
俺は、気を失いそうになった。
バカでかい白。俺の家の10万倍はある。
近くには池がある。魚は泳いでいない。
ただ、蓮の花が浮かんでいた。
俺は、そこにしゃがんだ。
きれいな水。きっとこの花は、さぞかし気持ちいいだろう・
池の音と、鳥の声を聞いていると落ち着いてくる
(このまま....さぼったら、バレるよなー.....)
どうやったら、お手伝いから逃れられるか考え始めていたとき
「あなたがハルくんねっ!」
「!?」
いきなり、後ろから首に向かって抱きつかれた。
俺はいきなりのことにバランスを崩し
二人とも川へ
バッシャーン
「....ぷはっ」
びしょびしょ。終わった。こんなんで、フェリー家に入るとか無理だろ。
俺はぶつかった女を睨んだ。
(....ん?)
この女...ロングの金髪.....朱色の目.....くりくりの大きい目に、小さい口。透き通るように白い肌。
「ルナ.....さん?」
「!うん!名前知っててくれたんだ!」
うそだろ!?この子が....?お嬢っていうか....
子どもに近いような....
「ごめんね!驚かせちゃって!嬉しくて。やっと、友達ができるんだって!」
「!?」
と、友達...!?
驚く俺をみて
「だって、これから毎日会うんだよ?もう友達じゃん」
「??」
「....私ね。貴族だから、狙われやすいから、学校とかいかせてもらえなくて。友達もいなかったの。でも、この前、『友達つくらせてもらえないなら、もう跡継ぎにはならないから!』って言ったら、『じゃぁ、お手伝いを雇うから、その人と友だちになりなさい』って」
….適当すぎでしょ
「だからめっちゃうれしい!よろしくね」
「あ。あぁ」
俺は、手を出してきたルナの手を、渋々握る。
その瞬間。風が思い切りふき、庭に咲いていた花たちが、舞った。
それはまるで.....二人の出会いを祝福しているようだった.....
「この部屋だよ!」
ここは、おそらくルナの部屋。そこは、もう、THE豪邸って感じで(語彙力限界突破)
俺は、だいたい見て回っていたとき、
「あれ?これなに?」
そこにあったのは、1枚の白い紙。
そこにはこう書かれていた
『守護決定 神楽なつき ミルフィー ???』
「守護,,,?」
「あ。守護っていうのは、ボディーガードみたいなもんだよ。」
「誰でもなれんの?」
それだったら、ルナを狙ったきたやつも入ってくるんじゃ...
「ううん。訓練をいきぬいたひとだけだよ。基本的に三人なんだけど....」
???のところに目をやる。
「この人....亡くなったんだ」
「!?」
家事だって。遺体も見つからなかったらしいの。」
(家を焼けた.....遺体はない....)
遺体が短時間で、消えることなんてない。ありえない。
まして骨まで....
この時。俺は薄々わかってたんだ。
そいつは....死んでなんかないって。
でも、確証もないのにそんな事言うのは失礼って思ったから
言わなかったんだ。
微妙な気持ちになっていたとき
「君がハルくんだね」
「わ!」
いきなりの後ろからの声に、思わずビクリとしてしまう。
振り向くと
「あ...」
金髪の女性と男性。
面影もルナにそっくりだ。
「は、はじめまして。これからお手伝いをさせていただきます。ハルです」
「よろしくね〜。私はマリンよ。でも......お手伝いさせるのは考えさせてくれる?」
「え?」
「君はたしか普通の家の子だよね?何も習っていない。それじゃだめなんだ。」
「?」
「部屋にいるときに、誰かが、狙ってくるかもしれない。そんなとき、お手伝いさんも戦えたほうがいいでしょ?」
「だから....普通の市民の子には任せられないかな。」
ムカッ
な、なんかトゲがあるいい方.....
なんかうさんくせぇし、感じ悪い。
もう、「断られた」って、帰って...
「なんで!?ハル君すごいいい子だから!!」
そう、隣から声が
「優しいし、かっこいいし!」
なんで....初対面だろ....?
「それに....名前覚えててくれたから」
え...?
「ルナ〜....」
「本気だよ!お母様、お父様!」
「...わかったよ。でも、君。条件がある。君にはこれから一週間、戦闘訓練を受けてもらう。そして、その後のテストに受かったら、お手伝いに雇ってあげよう」
….やだよ
めんどくさい。そんな命がけですることじゃない
….って、思ってるはずなのに....
『なんで!?ハル君すごいいい子だよ!!』
「...」
初めてだった。
いい子...なんて。優しいなんて言ってくれたのは。
ちょろいかもしれないけど....
この人ともう少し話してみたいって思ったんだ
「わかりました。....やります」
生き残ってやるよ。こいつらみたいに平民を馬鹿にしたやつを、見返してやる。
「わかった。詳細は後で伝えるね」」
と、半ばめんどくさそうに二人は出ていった。
するとそれと同時に
「ごめんっ!!」
「!?」
ルナが目の前で、手を合わせ、頭を下げた
「わたしがあんなこと言ったから、受けなくちゃいけない空気になっちゃって....」
「いや....別に。それより...名前覚えててくれたって......?」
「.....」
ルナは、少し俯くと
「...うちの家は、魔力で有名な家でしょ?」
「うん」
たしか、世界で一、二を争うくらい、魔力が優れている家系。
「.....だから、わたしが生まれた時は大騒ぎだったんだって。もちろん、注目されたし、話しかけてくれる人が増えた。...でも.....みんな私のこと、”ルナ”って呼ばないの」
え?
「あのフェアリー家の娘だっ!とか、第一子だ!って」
「....」
「だから。君が覚えててくれて、嬉しかった。....親以外に名前で呼ばれたの、久しぶりだった。ありがとう」
そういい微笑んだ。
そんなことで信用するなんて、ちょろすぎじゃない?
って正直思った。
でもそんなちょろい言葉で、喜んでしまっているもっとちょろい自分がいたんだ。
「!あ。そーだ!ね!初日から訓練することもないしさ、ちょっと付き合ってくれない?」
「え。」
ルナは、俺の手を掴むと、
「こっち!」
と、無邪気に笑った。
その笑顔につられて、俺も何年かぶりに、心から笑った
「ここ!」
「え。ここって....」
「いこっ!」
ルナが中に入る。
すると
「ルナだ〜!」
「待ってたよ〜❗️おそいよ〜」
子どもたちが出てくる。
そう。ここの看板には、「孤児院」と、書かれていたのだ
「ごめんね〜昨日頼んだもの完成した?」
「うん!持ってくるからちょっとまっててね!」
???
「あ。説明まだだったね。ここは、雪見孤児院。親に捨てられた子どもたちがたくさんいて。たまに遊びに来るの。で、ここの先生が昔趣味でアクセサリーを作ってたんだよね。だから、よく先生、子どもたちに作り方教えてて。」
「う、うん」
「それで子どもたちに、あるものを頼んでたんだ!」
「?」
「「持ってきたよルナ姉ちゃん〜!」」
あるものとはなにか聞こうとした矢先、子どもたちが来る。
「はい!」
「わ!!すっご〜!!ありがとー!」
「あと、もう一つは、このかっこいいお兄ちゃん?」
「うん!」
「え。おれに?」
俺の手に置かれたのは、一つのピアス。
黒と白の布が編み込まれているものがついていたり,,,,,
そして....
「これ...」
「これはね、絆玉っていう宝石。これを持ってる2人は、いつまでも一緒にいれるって言われてるの」
どうして...それをオレに?
「ハルくんは、一番の友だちだから!その証みたいな感じで」
「....」
1番の.... 証....
「かっこいいね〜このお兄ちゃん、ルナねえのボーイフレンド?」
「ばっ、ち、ちがうよ!////」
ルナが真っ赤になりながら言う。
俺は、ピアスを見つめていた。
プレゼントなんて....いつぶりだろう
「あ。そうだ」
ルナは何か思い出したように、俺のピアスを取り、自分のピアスを俺の手においた
「?」
「絆玉はね。人の『気』をためることができるの」
「気?」
「うん。そのひとの魂の欠片...?みたいな。ほんとは、この儀式は、守護としかやらないけど、ハルくんもそれくらい大事だから。
やり方はね。ピアスを握りしめて、相手に伝えたいことを強く願うの。そうしたら、その人がピンチのとき、その声が聞こえるんだって。」
(伝えたい....こと)
「じゃ、いくね」
ルナは目をつぶり、気をため始めた
俺もピアスを握りしめた。
言いたいことはたくさんある。でも.....
俺は.....
「ねぇ、ハルくん!ピアスになにためたの?」
「それいったら意味ないだろ」
「えー?」
俺達は、夕焼けの中、二人で帰っていた。
お互いの気が入ったピアスを身に着けながら。
この日。俺の中で何かが始まったのを感じた
2話【君のために】
「はぁ〜...しんど」
あれから3日。俺は毎日死ぬほどしごかれている
訓練6時間。休憩三十分。
おまけに、まだ信用できないからと、ルナには会わせてくれない
こうして、地獄の日々が過ぎていってるわけだ。
そして1番嫌なのは....
ガチャ
「あら?おかえり?今日こそ給料もらえた?」
「...」
今は訓練を受けているだけだから、もちろん、給料なんてもらえてない
でも、断られたなんて言ったら、すぐ訓練をやめさせられて、違う仕事をさせられそうだ。
「えっと...まだらしい」
「いつもらえるの?」
「き、きくのわすれてた」
そういったと同時に、腹に蹴りをくらわせられる
「かはっ....」
「あんた...毎日同じ事言うつもり!?ふざけんのも大概にしなさい!!」
と、倒れた俺を踏みつける
痛みが走る。息ができない
「とにかく!!あしたお金をもらえなかったら、違う仕事をしてもらうから!!」
あぁ...俺、何してんだろ。
何が悲しくて、こんな人生送ってんだろ
フェアリー家についた。
もちろん金なんてもらえるはずない。
だから、今日は金の交渉に来たんじゃなくて....
ルナにおわかれをいいにきたんだ
ルナの両親がいないか、注意しながら、ルナの部屋に向かう。
ガチャッ
「ルナ..」
俺は、一瞬後ずさった
そこには、見知らぬ2人が
「ハルくん...!」
ルナが駆け寄ってくる
「久しぶり!」
「う、うん。この人たちは?」
「あ。紹介するね。なつきくんと、ミルフィー!今日から私の新しい友達!」
ズキン
その時、胸が傷んだ気がした。
なつき。ミルフィー。この前「守護リスト」にのってたふたりだ
友達....そっか。ルナには他にも友だちがいる。
…..きっと....ほんとは何処かで期待してた。
ルナなら、訓練辞めるの、止めてくれるんじゃないかって。
でも、そんなの夢だった。ルナには他に仲間がいる。
きっと....すぐに俺のことなんか忘れちゃう
「ハルくん...?立ってないで、こっち来て!一緒にお菓子...」
「....ごめん」
俺は、掴んできたルナの手をはらうと
「...さよなら」
そういい、猛スピードで走り出した
「!ハルくん!」
ルナが追いかけてきてるのがわかる。
でも、俺はひたすら走った。
情けなかった。訓練もやめて....嫉妬してる、情けない顔をみられたくなかった
ガチャッ
「あら?早いじゃない」
「...断ってきたから」
「あら。そう?じゃぁあしたから、◯✕銀行と、セブン、パックンカフェで、バイトしてね?」
「....うん」
「ふふ。そう。言うこと聞いてればいいのよ」
と、母は、勝ち誇った顔をした。
「まだ時間あるし、この3つの場所把握してきなさいよ?」
と、いわれ、家を出される。
ただただ、下を向きながら歩く
ルナへ別れを告げたのを、早々に公開している自分がいた。
その時、走ってる音が聞こえた。
顔を上げた
(あの人....たしか、ミルフィーって人...?)
ミルフィーはこちらに気づくと
「あ!さっきの男の子!ルナちゃんは!?」
「え?知らないけど....何か...?」
「....ルナちゃん、君のこと追いかけたまま、帰ってこないの」
え?
その後、複数人のボディーガードみたいな人達が来た
「大変です!ルナ様が...」
ボディーガードがミルフィーに何か紙を見せながら、情報を伝える
ミルフィーの顔が、青ざめるのがわかった。
「?あの...」
「ル、ルナちゃんが.....ルナちゃん............かいされたって」
「え?」
「ゆ、ゆう、...誘拐されたって.....!」
ミルフィーは震える手で、紙を見せてくる
『ルナ・フェアリーを返してほしければ、100000円の金を用意しろ。場所は、◯体育館。金を持ってくるものは一人でこい。警察がいるとわかった場合、その場で、人質を殺す』
俺は、何もいわず、振り向くと、ひたすら
「はぁ...はぁ.....」
ああ。また帰ったら殴られるな。
なんで、バイト先みてこいっていったでしょ!?って。
それに、最近ごはん食べてないから、正直....しんどい。息が苦しい。
でも、どうでもいいと思った。
プライドも、すべてを捨てても....この気持ちはかわらないんだ
….ルナが好きだ。
『1番の友達の証!』
君はそう言ってくれたのに。
すねてごめん。
俺は、走りながらピアスを取り、握りしめた。
君には....届いたかな?
俺が込めた『気』の言葉
『君を....守りたい』