ダーク・ファンタジー小説

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闇に潜む獣達
日時: 2025/08/16 14:43
名前: なちゅ (ID: ch1cm.nd)

プロローグ

街にサイレンの音が鳴り響く。
その音から逃げるように暗い路地裏に駆け込んだ。
赤く汚れた手袋と上着をたたみ、ビニール袋に押し込む。
今日は思っていたよりも汚してしまったと後悔しているとスマホがなった。
「もしもし?あぁ終わりましたよ。……え?ついでに甘いもの?もう、仕方ないですね…。買っていくのでおとなしく待っていてください。」
ため息をつき、電話を切る。
「やはり着替えを持ってくるべきでしたね…」
もう一度スマホを開き、近くのコンビニを探す。ついでにメモを開き、ずらっと並んだ文字をスクロールしていく。
「この任務は完了ですね…」
一番下にあった人の名前を削除した。

Re: 闇に潜む獣達 ( No.1 )
日時: 2025/11/10 18:58
名前: なちゅ (ID: 4YeKJkUh)

No.1
人には表があり、裏がある。
光の中で笑顔を作る者もいれば、闇の中で牙を剥く者もいる。
わたくしはーーーその両方で生きている。

表の顔は誰もが知る企業のトップ。
メディアにも出て、人当たりもよく、社員に慕われる若き社長。
だが、それは仮面にすぎない。
夜になれば仮面は落ちる
裏の顔ーー悪裁く者「殺し屋」だ。
今日は久しぶりにご依頼が入った。
私は一枚の封筒を手に取り、社長室を後にした。

煉瓦の壁と観葉植物に囲まれたそのカフェは都会の騒音から切り離されたような静けさがあった。
店内に流れるジャズが心地よく、テーブル席に
一人で座る私の姿もごく自然に見えるだろう。
だが、この場に来る理由はコーヒーでもリラックスでもない。
スマートフォンの画面が震えた。
表示されたコードは彼からの到着通知だった。
数分後、入り口のドアが静かに開き、一人の少年いや、青年が姿を現した。
制服にジャケットを羽織り、緩く結んだネクタイ、そして屈託のない笑顔。
コードネーム〝スペード〟高校生にして殺し屋。
私の部下にして、戦歴では先輩。
「お待たせしました社長。いやぁ、こういう場所、社長に似合いすぎて笑っちゃいます。」
「そんなことをいって、貴女もまんざらでもない顔していますが。」
スペードは席に着くなり、私が頼んでおいた生クリームたっぷりのプリンをほおばった。
「そりゃまあ。学校帰りにこんな場所で〝任務打ち合わせ〟ってテンション上がりますからね!」
私は苦笑しつつ、封筒を差し出す。
「今回の任務について詳しいことはこちらに。」
スペードは封筒を受けとりながら、口元だけで笑った。
「社長が現場に出るの久しぶりじゃないですか?」
「そうですね。今回は少し厄介なご依頼でしたから。」
スペードは小さく歓声をあげた。
「うれしいなぁー!社長と現場で一緒とか、楽しみすぎます!これは燃えるなぁ」
「はしゃぎすぎです。」
「でも僕と社長で動く任務なんて、失敗する気がしないですもん。
あー、早くやりたいな…あ、もちろん合法的にですよ?」
私は返答を避けるように、コーヒーを口に運んだ。
彼の合法という言葉ほど、信用できないものはない。それでもこの青年と現場に立てるのはーー悪くない。
軽薄に見えて、任務においては誰よりも冷静でそして正確だ。
「では、アジトに戻りましょうか
詳しいことはそちらで。」
店を出た瞬間、彼はポツリと呟いた。
「社長。任務終わったら久々に模擬戦でもどうです?ーーー手加減なしのやつ。」
「……貴女がそれを模擬というのはいささか不安ですが。」
スペードはクスクス笑いながら歩きだした。
彼を赤く染める夕日に目を細めながら、私も歩きだした。


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