ダーク・ファンタジー小説

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天冥裂界#2
日時: 2025/09/02 15:32
名前: will (ID: gobBUkxM)

第2章神々の間
旅を続ける凛と悠真は、異界と繋がるという“光の門”の前に辿り着いた。

そこには、世界の理が溶けたような不思議な空気が漂っていた。
門はまるで宙に浮く水のように揺らめき、時折小さな稲光が走る。

神楽 悠真:「本当に……ここが異界への入口なのか?」

月影 凛:「なんか緊張してきたね。夢みたいな場所……でも、夢じゃない」

その時だった。
ふと、門の向こうから優しい雷のような音が響き、空気がふわりと震える。

霧を割って現れたのは、一人の男だった。
白い羽織に雷紋の飾りを纏い、髪は風のように揺れ、目元には柔らかな光を宿している。

神谷 風雅:「やあ、よく来たね。雷神、神谷風雅っていいます。って言っても、堅苦しいのは苦手だから“風雅”でいいよ」

思ったよりも軽い口調に、二人はやや拍子抜けする。

月影 凛:「あれ……もっとゴロゴロした人かと……」

神楽 悠真:「いやそれ、雷の音じゃん」

神谷 風雅:「よく言われる。でも、雷神って言ってもピンキリだからねぇ。ところでさ——」

風雅は、ふわりと笑いながら門の前に腰を下ろした。

神谷 風雅:「君たち、俺と一緒に世界を救いに行くんでしょ? じゃあ、ちょっとした試練……というか、“面接”しようか」

「面接」という予想外の単語に、凛と悠真の目が丸くなる。

神楽 悠真:「ちょ……え、なにそれ? 職業説明会?」

神谷 風雅:「違う違う。“君たちと一緒に戦う意味があるか”を、俺が見たいだけさ」

月影 凛:「うわ〜……一番苦手なやつ来た……」

けれど、風雅の目は本気だった。
それは軽やかな口調の奥に、神としての誇りと責任が宿っていたから。

神谷 風雅:「じゃあ質問。——君たちが、この旅で一番“守りたい”ものはなに?」

凛は少し考え込んでから、はっきりと言った。

月影 凛:「私は、“日常”かな。悠真と歩く時間とか、くだらない会話とか。そういうのが壊れてほしくない」

悠真はゆっくりうなずく。

神楽 悠真:「俺も……そうだな。友達とか家族とか、全部ひっくるめて“今”が好きなんだ。だから、それを壊すやつは、許せない」

風雅は小さく目を細めると、さらに問う。

神谷 風雅:「もし、“誰かを犠牲にしないと助けられない”場面が来たら?」

沈黙。
けれど、すぐに凛が答える。

月影 凛:「そんな選択肢、最初から選ばない。無茶でも、私が道を作る」

神楽 悠真:「同じく。誰かを捨てて進むなんて、俺にはできない。そんなの、強さじゃないだろ?」

——風雅は、満足げに笑った。

神谷 風雅:「……いいね。合格」

神楽 悠真:「え、早くない!?」

神谷 風雅:「いいんだよ。俺が見たかったのは、力じゃなくて“覚悟”。君たちなら、ちゃんと世界を見てくれると思ったから」

彼は手を差し出す。

神谷 風雅:「これからよろしく。雷神・神谷風雅、雷の力を、君たちに託そう」

その手を握った瞬間——
空気が変わった。
新たな風が吹き、空の奥から雷が優しく鳴る。

こうして雷神・神谷風雅は、凛と悠真の仲間となった。

これは、“三界の歪み”を修復するための第一歩。
まだ誰も知らない、神々と人との物語の、ほんの序章にすぎなかった。




第三章:雲の裂け目と歪んだ神

神谷風雅が仲間に加わったその翌日、
三人はオリンポスの中枢へと向かっていた。

道中、空は灰色に染まり、雲が音もなく裂けていく。
その裂け目からは、異様な気配とともに紫色の稲妻が走っていた。

神谷 風雅:「……あれは、放っておけないな。封印が、ゆるみかけてる」

月影 凛:「封印? まさか、“堕ちた神”ってやつ?」

神楽 悠真:「あーもう嫌な予感しかしないんだけど。風雅、まさかここがボス部屋とか言わないよな?」

神谷 風雅:「ご名答。ボス部屋、だね」

悠真:「なんでそういうのニッコリ言えるの!?」

◆裂け目の中へと入った瞬間、空間がねじれるような感覚に襲われた。

そこは、宙に浮く大地が砕けたような空間。
地面も空も区別がつかず、ただ紫と黒の混沌が渦巻いている。

そして、その中心にいたのは——

「カ……カ、ァァァ……」

人の形をしてはいるが、完全に“壊れて”いた。
鎧のような黒い皮膚に、無数の目が浮かび上がり、雷と瘴気を吐き出している。

神谷 風雅:「……あれは、元は“雨神・篝火(かがりび)”だった。だが歪みに飲まれて、もう理性はない」

月影 凛:「止めなきゃ……! 行くよ、悠真!」

神楽 悠真:「よっしゃ! 風雅、援護頼む!」

神谷 風雅:「了解。雷、通すよ!」



異形の神が咆哮を上げると、空間が震える。
凛はすぐに地を蹴り、宙を舞った。

月影 凛:「《火華ノ舞・三重》!!」

彼女の周囲に三つの火球が回転しながら浮かび上がり、
凛が指を弾くと、それらが直線的に異形の神へと飛ぶ。

ゴォォォ!!

だが、異形の神は腕を振るい、雷の壁でそれを弾いた。

神楽 悠真:「チッ、防御硬ぇな……だったら!」

悠真は剣を引き抜き、空を切るように構える。

神楽 悠真:「《裂空斬・迅雷》!」

その一撃は、風雅の雷を纏い、斜めに稲妻を引いて飛ぶ!
異形の肩口に直撃し、肉が裂け、瘴気が噴き出す。

「グオォォォ……!!」

神谷 風雅:「ナイスコンビ。じゃあ、こっちもお返しだ!」

風雅がゆっくりと手を掲げ、雷雲を呼ぶように呟く。

神谷 風雅:「《雷霊招来・八雷ノ環(やついかづちのわ)》」

空に雷の輪が八つ浮かび、そこから連続的に落雷が降り注ぐ!
異形の神がうめくように呻き、地面が爆ぜる。

だが——

瘴気が一気に凝縮し、異形の神の背から、巨大な雷の剣が出現する。

「カ……カガ……リ、ビ……コロ……ス……」

神楽 悠真:「まずい! 来るぞ!」

月影 凛:「まだこっちのターンよ!!」

凛が再び飛び上がり、両手を前に突き出す。

月影 凛:「《焔蓮結界・陽炎蓮華》!!」

彼女の周囲に炎の蓮が咲き乱れ、異形の神の視界を封じる!

その隙をついて、悠真が背後から突撃。

神楽 悠真:「今だぁぁぁあっ!!」

《雷閃・破断突》!!」

雷の刃が閃き、異形の神の背を斬り裂いた——!



雷鳴と共に、異形の神は叫び声をあげ、
瘴気が空中に霧散していく。

神谷 風雅:「……終わったか。完全じゃないけど、今は眠らせた」

神楽 悠真:「ふぅ……マジでボス戦だったな……」

月影 凛:「でも、ちゃんと三人で勝てたね」

神谷 風雅:「うん。雷も、炎も、剣も。全部が揃ってこその勝利だ」

空を見上げれば、雲が裂けるように陽光が差し込んでいた。

だが——その光の中に、ふと不穏な“影”が差し込んでいたのを、
このときの三人はまだ気づいていなかった。


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