ダーク・ファンタジー小説
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- 天冥裂界#3
- 日時: 2025/09/02 15:31
- 名前: will (ID: gobBUkxM)
第四章:影、雲間より落ちる
異形の神「篝火」を鎮めたあと、
凛、悠真、風雅の三人は、一度雲の中の神域へ戻っていた。
神谷 風雅:「君たち、ほんとに強くなったね。篝火を抑え込めるとは正直思ってなかったよ。いや〜、嬉しい誤算」
神楽 悠真:「いや、正直こっちはギリギリだったんだけど!? つか、もうちょい本気出してくれてもよかったんじゃない?」
神谷 風雅:「んー、それもそうだけど、成長って“瀬戸際”でしか起きないでしょ?」
月影 凛:「名言っぽく言ってごまかすのやめて」
笑い合う三人の頭上に、突如として空が鳴いた。
ズォォォォン……
風雅が一瞬で表情を引き締める。
神谷 風雅:「……違う。これは篝火の気配じゃない」
月影 凛:「え? 新手?」
神楽 悠真:「こっちは休憩入ったばっかなんですけど!?」
空が裂ける。
雲が逆流し、雷と光の帯がうねりながら渦を巻いた。
その中から、静かに落ちてきたのは――
黒と白、二色の羽を持つ“影”。
人の形をしていながら、重力を無視するように浮遊し、
その周囲の空間だけが、音を失っていた。
???:「……雷神、そして人間の選ばれし者たちよ」
凛と悠真はその姿に見覚えはなかったが、風雅はすぐに反応した。
神谷 風雅:「……まさか、お前が動くとは。『白羽の封神(びゃくうのふうじん)』……イツキ」
悠真:「誰?」
月影 凛:「神様側の人……だよね? 味方?」
神谷 風雅:「いや、“元”味方だよ。……こいつは、神界の裁定者。《バランスを守るためなら何でも切り捨てる》男だ」
白羽のイツキ――
その顔立ちは静かで美しく、瞳には一切の感情がない。
イツキ:「異界の歪みが広がる原因、それは人間界にある。——神々の会議は、“人の関与を断つ”と決定した」
月影 凛:「断つって……それって、排除ってこと?」
神谷 風雅:「……つまり、君たちの命を消すってことさ」
神楽 悠真:「は!? ちょ、なんでいきなりそんな話になる!?」
イツキ:「これ以上、異界に人の意思が介入すれば、三界の均衡は完全に崩壊する。……神谷風雅。貴殿の行動もまた、規律違反と見なす」
神谷 風雅:「あーあ、やっぱりそっち来たか」
風雅は小さく肩をすくめると、二人の前に立った。
神谷 風雅:「凛、悠真。悪いけど、今回はガチの戦いになるよ。手加減は……こっちが死ぬからしないでね」
神楽 悠真:「了解……! 覚悟はできてる!」
月影 凛:「正面から神とぶつかるの、これが初めてかも……燃えるじゃん!」
イツキは静かに右手を掲げた。
空が凍るように冷え、雷とは違う“白い光”が収束していく。
イツキ:「——《白翼・斬天断界》」
その刹那、空間ごと断ち割るような斬撃が三人へと迫った!
神谷 風雅:「避けろ! 凛、カバーお願い!」
月影 凛:「任せて! 《火壁・紅蓮防壁》!!」
凛の炎が展開し、白い斬撃と正面衝突!
だが火は霧のように削られ、悠真の肩をかすめて血が滲む。
神楽 悠真:「クッ……速すぎる!」
神谷 風雅:「このままじゃジリ貧だ。悠真、俺の雷、貸すよ!」
風雅の雷が悠真の剣に伝う。
神谷 風雅:「《雷翔付与・蒼電刃》!」
神楽 悠真:「サンキュ! じゃあ一発、返させてもらうぜ!!」
《雷閃連牙・双雷斬(そうらいざん)》!!
悠真の体ごと加速した斬撃が、イツキの懐へと飛び込む!
だが——
イツキは、まるで時間が止まったかのような動きでその一撃を“かわす”。
イツキ:「——足りない。君たちには、“運命を越えるだけの力”が、まだ」
そして次の瞬間、凛の背後に現れる。
神谷 風雅:「凛!!」
イツキ:「《白羽・極光連撃》」
斬撃が降る直前——
神谷 風雅:「《雷鎖・遮護陣》!!」
風雅が放った雷の鎖が絡みつき、イツキの動きを寸前で止めた!
イツキ:「……ほう。反応速度、やはり伊達ではない」
神谷 風雅:「当然でしょ。雷神なめんな」
空気が、激しく震える。
——戦いは、まだ序盤にすぎない。
三界の均衡を保つための“神vs神と人”の戦いが、今、静かに幕を開ける。