ダーク・ファンタジー小説
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- 天冥裂界#5
- 日時: 2025/09/02 17:44
- 名前: will (ID: gobBUkxM)
第九章:森のささやきと、小さな来訪者
深い緑に包まれた森の中、三人はゆっくりと歩いていた。
木漏れ日が地面に踊り、鳥のさえずりが時折「おはよー」と言っているように聞こえる。いや、聞こえなくもない。たぶん気のせいだ。
神谷 風雅は古ぼけた地図をじっと見つめている。
擦り切れた紙に書かれた文字は読みづらく、時々「あれ、俺こんな文字読めたっけ?」と首をかしげていた。
神谷 風雅:「この森は昔から“魔の森”って呼ばれてるらしいけど……正直、今はただの長い散歩コースだな」
神楽 悠真は草の匂いをクンクン嗅ぎつつ、ちょっと飽きてきた様子。
神楽 悠真:「魔物の気配は皆無だけど、俺の足がもう限界だわ。早くこの“楽しい散歩”終わらせてくれ」
月影 凛はふと空を見上げ、ぼんやり呟く。
月影 凛:「ねぇ、なんか……誰かいる気がするんだけど?」
神楽 悠真は「おいおいまたかよ」と苦笑い。
神楽 悠真:「お前ってば、幽霊とか妖怪とか好きだな。現実に戻れよ」
だが凛の目は真剣そのもの。
木陰の揺れる小さな光に向かってまっすぐに見据えていた。
月影 凛:「あそこ……光ってる」
三人はそっと近づく。
その光はまるで月のかけらを少しだけ溶かしたように、ふわりと宙に浮いていた。
そして、透き通った翅を持つ小さな妖精の姿が姿を現す。
まるで星屑をまとったようにキラキラ輝いている。
妖精:「こんにちは、旅の皆さん。私は瑞羽 月詠(みずは つくよ)です。この森の守り手の一人なんですよ」
凛はその名前を聞いて、なんだか胸がじんわり温かくなるのを感じた。
月影 凛:「瑞羽さん……素敵な名前ね。なんだか聞いたことあるような……?」
神谷 風雅は丁寧に頭を下げながらも、どこか疑問が浮かんだ。
神谷 風雅:「瑞羽 月詠殿、お会いできて光栄です。僕たちはこの森で道を探している旅人です」
瑞羽は優しく微笑み、翅をふわりと揺らす。
瑞羽 月詠:「この森もね、異界の歪みの影響がじわじわと広がっているんです。見た目は静かでも、中は結構ヤバいんですよ?」
神楽 悠真は腕を組み、少し退屈そうに。
神楽 悠真:「やっぱり面倒くさいのか……。俺たち、ほんとに仕事増やされてる気がする」
瑞羽はクスリと笑って、凛に視線を向けた。
瑞羽 月詠:「月影さん、あなたの血には古の光が流れていてね。その力は無駄遣いせずに、効率よく使うのが大事。って、私も完璧じゃないんだけどね(笑)」
凛は少し顔を赤らめ、そわそわとする。
月影 凛:「……わかった。ちゃんと向き合うわ、その力に」
瑞羽は軽やかに頷き、光の粒子を散らしながら、ふわりと森の奥へ消えていった。
彼女の翅の一枚が風に揺れ、まるで古い紋様が浮かび上がったかのように見えた。
三人はしばらくその場に立ち尽くし、お互いの表情を交わす。
神谷 風雅:「この旅はまだ始まったばかり。試練はこれから増えていくけど……」
神楽 悠真:「ま、俺たちの“楽しい冒険”はここからが本番だな。行くぞ!」
月影 凛:「うん、みんなで乗り越えよう」
――森のささやきが、ほんの少しだけ優しく、彼らの背中を押した。
瑞羽が消えてから、森の空気はどこか変わった気がした。
風は優しく揺れているのに、木々のざわめきがまるで何かを隠しているかのようにざわついている。
神谷 風雅は、ふと立ち止まり地面に落ちている一枚の葉を見つめた。
それは普通の葉とは違い、薄く青白く輝いていた。
神谷 風雅:「これは……異界の影響か?」
神楽 悠真はその葉を手に取り、眉をひそめながらも口調は相変わらず軽い。
神楽 悠真:「おい、風雅。こんな変な葉っぱ拾ってどうするんだよ。俺は食い物の方がいいぜ」
月影 凛はそんな二人に軽く呆れながらも、ふと遠くから聞こえる不気味な低い唸り声に耳を傾けた。
月影 凛:「……なんだか、近くに魔物がいるみたい」
三人は無言で武器を構え、周囲に目を凝らした。
やがて、藪の向こうから巨大な影がゆっくりと姿を現す。
その魔物は異形の姿をしており、黒い鱗が全身を覆い、深紅の瞳がギラリと光っていた。
神谷 風雅:「いよいよ来たな……これが異界の歪みから出てきた魔物か」
神楽 悠真:「やれやれ、面倒くせぇけど、やるしかねぇか」
月影 凛:「火はまだ使わないわ。今は私たちの連携を見せる時よ」
三人の呼吸がピタリと合い、静かな戦闘の幕が上がる。
神楽 悠真:「いくぞ!『閃光斬り』!」
悠真の剣が空気を切り裂き、閃光の軌跡を残して魔物に向かっていく。
月影 凛:「私が援護する。結界の『火の輪』!」
凛の指先からゆらりと炎が揺れ、魔物の動きを一瞬封じる結界が張られた。
神谷 風雅:「僕は後方から支援だ。『風華の矢』、行け!」
風雅の手のひらから放たれた風の矢が魔物の隙をついた。
魔物は苦しげに咆哮しながらも、猛烈な反撃を開始する。
戦いは激しさを増し、森の静けさは破られていった。
第十一章:月影の秘術と闇夜の斬撃
神楽 悠真の閃光斬りが魔物の一瞬の隙を作ったその時、月影 凛の瞳が鋭く光り輝いた。
彼女は静かに手を組み、指先から銀色の光の糸がふわりと立ち上がる。
月影 凛:「……見てなさい、これが私の新しい結界術、『月華織(げっかおり)』よ」
周囲の空気が凛の手の動きに呼応し、まるで満月の光が地面から天へと昇るかのように、透き通った銀の結界が織り成される。
結界の糸は細やかな網目模様を描き、薄い光のヴェールとなって魔物の動きを絡め取る。
魔物は突然動きを封じられ、まるで目に見えない糸に縛られたかのように身動きが取れなくなった。
神谷 風雅:「すげぇ……!まるで月の光が魔物を縛ってるみたいだ」
神楽 悠真:「おい、凛、それやべぇ!まじで俺の剣が輝いて見えるわ!」
月影 凛:「『月華織』は光と影の織り成す結界。敵の力を封じるだけじゃなく、こちらの動きを加速する効果もあるの」
凛の動きが一気に滑らかになり、まるで月光の精霊が舞うかのように軽やかに前へ進む。
神楽 悠真:「じゃあ、俺が畳み掛ける!『烈火斬り』!」
悠真の剣に炎がまとわりつき、強烈な斬撃が魔物の胸を切り裂く。
その瞬間、神谷 風雅も勢いを増し、「風華の矢」を連射。
森の中に風の音が響き渡る。
魔物は轟音とともに倒れ込み、静寂が戻った。
三人は深呼吸しながら、互いに顔を見合わせる。
月影 凛:「これで、少しは戦えるかしらね」
神楽 悠真:「凛の結界術、最高だよ。俺も負けてらんねぇな」
神谷 風雅:「この調子なら、これからの旅もなんとかなるだろう」
その時、風がざわめき、森の奥から小さな光がまた一つ、二つと現れ始めた。
瑞羽 月詠の声が遠くから囁くように聞こえた。
瑞羽 月詠(声):「試練はまだ続くわ……でも、あなたたちなら乗り越えられる」