ダーク・ファンタジー小説

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君が隣にいなくなった日
日時: 2025/09/17 22:37
名前: しんちゃん (ID: U7zErvcm)

〜あらすじ〜
高校2年生の春、主人公の桜木 陽菜(はるな)は、幼馴染の藤井 律(りつ)とクラスが離れてしまう。律はクールで周囲に無関心だが、唯一心を許しているのは陽菜だけ。陽菜もまた、律に秘かな想いを寄せている。しかし、ある日、律がクラスの明るい人気者、佐倉 莉緒(りお)に好意を抱いていることを知ってしまう。陽菜は親友として律を応援するべきか、自分の気持ちを伝えるべきか葛藤する。

春の陽光が差し込む教室。桜木 陽菜は、窓際の席からぼんやりとグラウンドを眺めていた。新しいクラスになり、周りにはまだ知らない顔ばかり。教室の賑やかさから一歩引いた場所にいる自分に、少しだけ寂しさを感じていた。
「陽菜、どうした?」
後ろから声をかけられ、振り返ると、幼馴染の藤井 律が立っていた。相変わらずの無愛想な表情だが、その声色には優しい響きがあった。律は陽菜とは別のクラスになった。それが、何よりも不安だった。陽菜が困っているとき、いつも隣にいてくれたのは律だったから。
「ううん、なんでもないよ。律こそ、もう友達できた?」
陽菜がそう尋ねると、律はつまらなそうに首を振る。
「別に。興味ない」
律はそう言って、再び窓の外に視線を向けた。いつもの律だった。無愛想で、人付き合いが苦手。でも、陽菜にはわかる。律は心の奥底で、誰かと深く繋がることを恐れているのだ。だから、いつも陽菜と律、二人だけの世界に閉じこもっていた。
「ま、律は陽菜がいればいいもんな」
隣の席の男子がからかうように言った。律は何も言い返さず、陽菜は「もう、やめてよ」と笑いながらその場をやり過ごした。
その日、下校時に律と陽菜が歩いていると、別のクラスの女子たちが楽しそうに談笑しているのが見えた。その中心にいたのは、佐倉 莉緒。明るくて人気者で、笑顔が太陽みたいだと噂される女子だ。
莉緒は律の姿を見つけると、少し恥ずかしそうに、しかしきっぱりと声をかけてきた。
「藤井くん!今日の放課後、時間ある?」
律は少し驚いた表情を見せたが、すぐに無表情に戻る。
「ない」
一言で片付けられた莉緒は、少ししょんぼりして立ち去った。
「莉緒ちゃん、律のこと気になってるみたいだね」
陽菜は律に尋ねた。
「そうか?」
律は相変わらず無関心な様子だ。陽菜は内心、胸がちくりと痛んだ。でも、親友として律の幸せを願っている自分もいる。複雑な感情が混ざり合い、陽菜はただ微笑むことしかできなかった。
それから、律が莉緒と話す機会は増えていった。莉緒は諦めずに律に話しかけ続け、律も少しずつ心を開き始めたようだ。
ある日の昼休み、陽菜は一人、屋上で弁当を食べていた。いつもなら律と二人で食べている時間だ。律は莉緒に誘われ、クラスのグループに加わって楽しそうに話している。遠くからその姿を見ていると、律のいつもとは違う、少し楽しそうな笑顔が見えた。
(律、あんな風に笑うんだ)
陽菜は知っていた。律が笑うのは、いつも陽菜と二人きりの時だけだったから。
その夜、律からメッセージが届いた。
『ごめん、今日は莉緒たちと話してたから。陽菜、寂しかった?』
陽菜は思わず涙がこぼれそうになるのをこらえ、メッセージを返す。
『全然!律が楽しそうでよかった』
本当は、「寂しかった」と伝えたかった。律が莉緒と話している間、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちだった。でも、そんな自分を律に知られたくなかった。
翌日、陽菜は校舎の廊下で、律と莉緒が二人で話しているのを目撃する。莉緒は律の腕を少しだけ引っ張り、楽しそうに笑いかけている。律の表情は相変わらず無愛想だったが、その瞳はどこか嬉しそうだった。
陽菜は二人の姿を見て、自分がこの関係に踏み込むべきではないことを悟った。律の隣にいるべきは、もう自分ではないのかもしれない。
週末、陽菜は律といつもの公園で待ち合わせをした。しかし、そこに莉緒も現れた。
「藤井くんが、陽菜ちゃんと会うって言うから、私も一緒に来たんだ」
莉緒は屈託のない笑顔で言った。陽菜の心臓がどきりと鳴る。
三人は公園のベンチに座り、他愛のない話をする。莉緒は明るく話題を振り、律も少しだけだが相槌を打つ。陽菜は二人のやり取りを見ているだけで、自分がどんどん遠い存在になっていくような気がした。
「そういえば、文化祭の準備、もうそろそろだね。私たちのクラス、お化け屋敷やるんだ!」
莉緒が楽しそうに言う。
「うちのクラスは、劇だよ。律も出るんだよね?」
陽菜が律に尋ねると、律は少し恥ずかしそうに頷いた。
「裏方だけどな」
その時、莉緒が律に近づき、耳元で何かを囁いた。律は驚いたように目を見開き、そして顔を赤くした。
(何を話してるんだろう)
陽菜の胸に、鈍い痛みが走る。もう、律は自分だけの親友じゃない。律の世界は、少しずつ陽菜から離れていっている。
陽菜は、二人の間に引かれた見えない境界線を、はっきりと感じていた。それでも、まだ律の隣にいたいと願う自分と、もうこの関係を終わらせるべきだと考える自分がいた。
続きは、文化祭の準備が進むにつれ、陽菜が律への想いを募らせていく、文化祭当日、陽菜は劇の衣装を着て、客席の隅に座っていた。律は裏方としてステージ袖にいる。いつものように二人で話す時間はもうなかった。陽菜の心は、ずっとモヤモヤとした曇り空のままだった。
その日の午後、陽菜は体育館の裏で、莉緒が律に告白しているのを目撃する。
「藤井くん、私、ずっと藤井くんのことが好きでした」
莉緒は律の目をまっすぐに見つめ、はっきりと想いを伝えていた。律は驚いたように目を見開いていたが、すぐにいつもの無表情に戻ってしまう。しかし、その瞳にはどこか迷いが宿っているように見えた。
陽菜は、これ以上見ていられなかった。そっとその場を離れ、屋上へと向かう。屋上には誰もいなかった。見慣れた景色なのに、涙が溢れて止まらなかった。
「……陽菜」
後ろから、律の声が聞こえる。
「なんで、泣いてるんだよ」
律は陽菜の隣に立ち、ぎこちない手つきで頭を撫でてきた。いつもの、優しい律だった。
「ごめん、律。私、もう律の隣にはいられない」
陽菜は顔を伏せたまま、震える声で言った。
「莉緒ちゃんのこと、知ってるんだよね。もう、律の隣にいるのは、私じゃない」
律は何も言わない。陽菜は、律の隣にいることが一番幸せだった。しかし、その幸せが、いつしか自分を苦しめていることに気づいてしまった。
「陽菜、ごめん」
律は、そう呟いた。その声は、泣き出しそうなほど震えていた。その言葉に、陽菜は律の心が揺れ動いていることを悟った。しかし、もう手遅れだった。友情という名の境界線は、すでに壊れ始めていたのだ。
翌日、陽菜は律といつもの公園で会う約束をした。
「律、私ね、律のこと、好きだよ」
ベンチに座る律の横で、陽菜は小さくつぶやいた。律は驚いたように陽菜を見つめる。
「でも、律が莉緒ちゃんのこと、気になっているのもわかる。だから、私は、律の幸せを一番に考えてる」
「陽菜……」
「律が誰を好きになっても、私は律の親友だよ。それは、変わらないから」
陽菜は精一杯の笑顔を作って言った。律は何も答えなかったが、その目には涙が浮かんでいた。
その日を境に、律は莉緒と付き合い始めた。陽菜は二人の幸せを願いつつも、心が引き裂かれるような痛みを感じていた。でも、後悔はしていなかった。律に自分の気持ちを伝えられたこと、そして律の幸せを願えるようになったこと。それが、陽菜が律に抱いていた、友情を超えた想いの証だった。
陽菜は、一人になった放課後、窓際の席から空を見上げていた。律はもう、別の場所で、別の誰かと笑っている。でも、陽菜の心は不思議と穏やかだった。
(いつか、私の隣にも、別の誰かが座ってくれるかな)
陽菜は、そっと窓の外に広がる、夕焼けの空に目を向けた。
親友としての律との時間は、もう二度と戻らない。でも、陽菜は知っている。この痛みも、いつか甘酸っぱい思い出に変わることを。そして、この経験が、未来の誰かとの出会いに繋がることを。
物語は、陽菜が前向きに未来へと歩き出す姿で幕を閉じる。友情と恋の間で揺れ動いた高校時代の経験は、彼女の人生にとって、かけがえのない宝物となるのだ。

Re: 君が隣にいなくなった日 ( No.1 )
日時: 2025/09/17 22:44
名前: 悠斗 (ID: 7TF3cvVX)

 めっちゃすごいぃ 受験勉強の合間にも読みます

Re: 君が隣にいなくなった日 ( No.2 )
日時: 2025/09/18 22:00
名前: 悠斗 (ID: 7TF3cvVX)

 
 なんか少し切ないようなかんじもした  「律が誰を好きになっても、私は律の親友だよ。それは、変わらないから」 すき

Re: 君が隣にいなくなった日 ( No.3 )
日時: 2025/09/19 21:26
名前: おもち (ID: PGRsk35G)

正直2人は結ばれてほしかった、、僕だったらもう不登校なるよ、、


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