ダーク・ファンタジー小説
- Re: 神が導く学園生活 ( No.10 )
- 日時: 2022/02/06 02:23
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: kJLdBB9S)
《クロ》
真っ暗な深海の中。もがいてももがいても出られない何か。それがもどかしくてイラついてしまう。
ーもう疲れた。
このまま大量の魔素に身を任してもいいのではないだろうか?
そう思った瞬間。
俺の身が炎に包まれ、絡まっていた何かが燃えて消え去っていく。そうして無防備になった俺に差し出される白くて艶やかな手。俺は無意識にその手を掴んでしまった。
すると今までの苦労はなんだったんだと笑えるほどズルズルと上へ引きづられていく。
この手は…この感触は…ラナ?
次の瞬間俺は目が覚めた。すると目の前にラナの顔がドアップで表示され、頭には柔らかい感触、額にはひんやりとした手が乗っている。
え?え?!なんだこれ?!
俺は照れと驚きですぐさまそこをどいた。
見るとラナは無表情で俺を見つめる。
ーもう少しあのままで居ても良かったかもな
と、少し後悔をする。
「アンロウさん。目が覚めましたか。」
赤髪にきっちりとしたスーツ。俺たちの担任の先生が近づいてくる。
「アンロウさん。貴方は獣化して暴れてていた所をガベーラさんとセキマさんとローズさんに助けられたんですよ。」
「助けました!」
先生が話すと後ろにいたタミが空気をぶち壊すかのように元気に返事する。タミって気魔法使いなのに空気は読めないんだな。
「まぁ…なんだ。クロ。お前も大変だったんだな。」
コウが気まづそうに俺に話しかける。なんでそんな罰の悪そうな言い方なんだ?
「クロが幻影草に捕まってる間…私達にクロのトラウマが流れ込んできた。」
ラナが淡々と告げる。あぁ。幻影草の効果なのか。ってことは、俺が牙狼族のハーフであることもバレた上に幼少期の思い出もバレたのか。なんか恥ずかしいな。それよりも…
「先生。獣化って何ですか?」
俺は今までこのように暴れることは無かった。それに暴れていたであろう記憶が曖昧だし…
「獣化というのは牙狼族特有の能力です。何らかのきっかけでリミッターが外れると外の魔素で溢れかえり、強靭な肉体を手に入れることが出来ます。しかし、獣化に慣れていないと理性が失われるんです。」
獣化…俺の牙狼族の能力なのか。俺は自分の両手を見る。
俺に入っている母さんの血。きっとその力だろう。この力は唯一母さんを感じられる力。俺は自分の手を胸に当てた。
ーーーーーーーーーーー
ー放課後ー
学園生活初めての放課後。家の学園は寮制の上に学園都市があるため教室に入り浸ってる人が多かった。
そして俺達4人は集まって居た。
「でさっ、皆のランクは?」
特に何も話さなかった俺たち4人。その中沈黙を破ったのはタミだった。
「俺はFランクの黄梅だった。」
コウが呟く。Fランクは妥当として、黄梅は凄いと思う。下から2番目のランク。基本入学したてだと白梅が多いが、その上ということはコウは優秀ということなのか。まぁ…
「俺もコウと同じ。Fランクの黄梅だ。」
俺はリミッターを外すと大量の魔素や筋力が得られるからこの高いランクになったんだな。
「私もFランクの黄梅だよっ!」
タミは大量の魔素が体内にある上に上級の雷系統魔法使えるからな。納得だ。
黄梅である俺、タミ、コウはリボンとネクタイが黄色になっている。
「私はFランクの白梅」
ラナはボソッとつぶやく。比較的一般的なランクだな。でも、納得が行かない。リミッターを外した俺を一撃で倒した筈なのになんで一般的なランクなんだ!俺よりもランクが上であるべきだろう!
「よし先生に抗議しよう。」
俺はすぐさま職員室に行こうとする。
「まてまてまてまて!何故そうなる!」
コウが俺を止める。いや、当たり前だろう。ラナのランクが白梅なんだから。
「クロ…もしかしてラナのランクのこと気にしてる?」
タミは無駄に勘が言い様で俺が思ってたことをすぐさま察する。
「いや、私は大丈夫だから。辞めて。」
「分かった。辞める。」
俺はラナのやめてという言葉にすぐさま反応しラナの隣に座る。なんかどんどん牙狼族みたいになってきてるが…いいよな!俺牙狼族のハーフだし!
「クロがなんか開き直ってる気がする…」
「タミお前本当勘いいな」
コウも俺と同じことを思ったらしい。タミはふふんと鼻を鳴らした。
「クロ。そういうのやめて」
ラナが困ったような顔をする。あぁ…困った顔も美しい。これは国が守るべきの顔じゃないのか?ラナが笑ったらどれほど美しくなるのだろう。
「なんか、私の下僕というかペットになっちゃってるから」
「俺は全然構わないのだが?」
俺はラナの問いかけに即答する。逆に下僕の方が嬉しいしラナのサンドバッグに成り下がっても良い。逆に嬉しいぐらいだ。
「ねぇねぇコウ。クロが気持ち悪いんだけど」
「タミ奇遇だな俺も思った。」
ちょ、なんだよタミ、コウ!失礼だぞ!
別に気持ち悪くないよな?ラナ?
という意を込めてラナの方を見る。
「…気持ち悪いから辞めて」
俺はその言葉に衝撃を受けた。俺が…気持ち悪い…?
嘘だろ…そんなわけない。コレが普通だろう!
「いや、あの、同じ目線でいて欲しいというか…」
「分かった。」
俺はまたもやラナの要求に即答する。ラナの要求ならなんだって叶えてやる。同じ目線でいて欲しいならそうするか。
「この中で常識人って私だけなのかも…」
タミが呟く。
「「いや、タミは変人に入るだろ」」
俺とコウの声が重なる。タミはええっ!というポーズをとり口をあんぐりと開けている。
うんそういう所だな。
「はぁ…この先の学園生活が不安。」
ラナが呟いた。俺はラナが居る学園生活なんて舞い上がりそうだけどな。
そんなオーラを3人は感じたのか苦笑いをした。
そ、そんな目で俺を見るなよ!おい!おーい!
入学式編 ~完~