ダーク・ファンタジー小説
- Re: 神が導く学園生活 ( No.9 )
- 日時: 2022/02/06 04:27
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: kJLdBB9S)
「くっ、クロ?クロだよね!」
タミがクロ...と思われる獣に声をかける。しかし、
「グァァッ!」
獣が黒い5本の爪を立ててタミを襲う。タミは瞬時にそれを察知し、バックステップするが、顔に傷が着いている。どれだけその爪は切れ味が良いんだよ。
それに...
「大量の魔素で溢れかえってる...」
ラナが呟く。そうなのだ。獣が高濃度の魔素で溢れかえっており、苦しく、近づけない。
「ねぇ、これってどうするの?!どうしたらいいの?!」
タミが慌てている。そうだな...
「逃げた方がいいかもしれねぇ。これは俺たちの手には負えない。」
俺はなるべく冷静に言う。逃げて先生達に抑えてもらうのが今のところ1番最善だ。
「そうね。」
ラナも賛同し、俺とラナは獣から離れる...が、ここに逃げないバカが1人。
「壱・電流っ!」
その瞬間ラナの半径3m程の範囲の魔素が複数の細長い電気になり、獣に攻撃する。
壱・電流は...雷系統の電魔法だな、やはりタミは雷系統使いだったようだ。
て、解説してる場合じゃねぇ!何やってるんだタミ!
「おい!何やってるんだ!逃げるぞ!」
俺は焦って大声でタミに忠告する。タミは俺の忠告を無視し、次は気魔法を連続で打ちまくっている。
「逃げれるわけないじゃない!友達が酷い姿になってるのに!クロが気絶するまで私はここをどかない!参・気斬!」
タミは気魔法の最上級の魔法を連続で出しながら攻撃する。しかしクロには全く効いていない。
クソ、このまま逃げたらタミが倒れちまう...
仕方がない
「ラナ!俺達も参戦しよう!」
ラナは顰めた顔をするが、
「...」
ラナが手をかざすとクロの体の所々に氷が生成され、クロにぶつかる。ドゥ・グラソンか。氷魔法の中で中ぐらいの威力の魔法だが、敵単体を攻撃するのに長けている。
よし、俺もやるか。クロを気絶させるためには高火力の魔法を出すしかないか。
「ロゥワ・ブレイズっ!」
俺は頭の中で炎がクロを包み込むイメージをして、手をかざす。しかし、その魔法は手の中でボッと小さい爆発がするだけだった。
な、何でだ?!
「空気中の魔素は魔素を貯められる器が多い生物順に取り込まれる!クロは今私たちの中で1番大きな器を持ってるから空気中の魔素がクロに取り込まれてるのよ!だから体内の魔素で何とかしなくちゃならないのよっ!」
なるほど、だからタミは今最底辺魔法の気魔法しか使えないのか。ラナも同じで、アン、ドゥ、ロゥワ魔法しか使えていない。
嘘だろ...?俺の体内には魔素が一切ない。要するに外の魔素頼りで魔法を打っているのだ。俺は体術で戦うしかないか。と言っても俺は体術なんて出来っ子しない。となれば...
俺はそこら辺の石を取って、獣の後ろに回る。そして、その石を投げる。すると獣は俺の方へ突進し、攻撃を仕掛けてくる。
魔法が、使えない。そうなるとヘイトを買ってなるべく2人の邪魔にならないようにするしかない。
俺は死ぬ気で獣の攻撃を交わしていく。大きな爪で襲ってきた時はしゃがみ、拳で上から潰してこようとする時は左右に転がり避けていく。
「気斬!気斬!気斬!気斬!」
タミが空気を操り複数の半月形の空気の攻撃を仕掛ける。ラナも同じくロゥワ・グラソンを打ちまくっている。
タミは天使の派生のエルフだから、生まれつきの体内の魔素が大量のため、いくら攻撃しても大丈夫なのは分かるが、人類(?)であるラナは大丈夫なのだろうか?天使や、エルフほどでは無いが人類も体内にある程度の魔素があるのは知ってるが本当にほんの少しだ。それが無くなると死んでしまう。
これ以上ラナが魔法を使うとラナが危ない...!
「気斬!...あれ?気斬!」
タミがさっきの俺と同じ魔法が使えない状態になる。多分体内の魔素を使い切ってしまったのだろう。となると...攻撃出来るのはラナだけになってしまった。
「ラナ!逃げろ!死ぬぞ!」
俺はクロの攻撃を避けながらシンプルな言葉で忠告する。しかし、ラナは動かない。
ー逃げろって言ってるだろ!
そう苛立ちを覚えてきたら...
「グァォォァァァ!」
獣の拳が俺に向かってくる。あ、これは不味い。
俺は自分が潰れてぺちゃんこになってしまうグロテスクな光景が浮かんだ。
折角...折角人間の街に来れたって言うのに...
「...やるしかない。」
すると俺の目の前にラナが立ちはだかる。
俺は驚きと同様で溢れていく。
「なっ、何やってんだラナ!人類はどうしようもないぞ!」
ラナは両手を広げ俺の方を向く。
「コウも''人類''なんでしょ?」
ラナはそう言って表情を変えない。変えてないはずだが、何故かその顔に怒りが滲み出ている気がする。
するとラナの体に変化がおこる。
肩までの髪は腰までのストレートな髪になり、髪先は青色から赤色に変わる。
白銀の髪がキラキラと、輝いてクロにまとわりついていた魔素が一気にラナへと向かっていくのが分かる。
嘘だろ?いまのラナは獣以上の器を持ってるってのか?
「...」
ラナが手をかざすと獣の地面から炎が渦巻いて天に登っていく。俺もまだ使えない炎魔法。弐・炎天だ。しかもかなり魔素が濃い魔法だ。
魔法は魔素が濃ければ濃いほど威力が上がる。
この濃さは国家のエリート魔法使いの集まり、国家宮廷魔道士程の威力がある。
それに、人類は1つの魔法系統しか使えないはずだ。なんでラナは水系統と炎系統の魔法が使えるんだ?新種の生物なのか?
俺は分からないことだらけで混乱している間に獣は倒れ、ドスン!と大きな音を立てる。
そして、シューと、魔素が獣から抜けていく音が聞こえる。そこに居たのは...
黒い耳とふさふさのしっぽが生えたクロだった。
もしかして、クロはあの絶滅危惧種の牙狼族だったのか...?
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