二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機 〜魔光石編〜 ( No.300 )
日時: 2011/06/08 18:07
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

7 強さ

夏未と雷門は円堂たちの話でものすごく盛り上がっていた。
廃部寸前のサッカー部の復興からたくさんの困難を乗り越えて、FF、エイリア学園騒動、そしてFFI。
夏未はその一つ一つの出来事を、胸を躍らせながら聞いていた。小さいころに絵本をよく聞かされていた時のドキドキと同じだった気がする。
秋は隣で本を読んでいるが、時々こちらを見て、話を聞いているようだ。

「本当は、二日後が決勝戦だったけど…」
「冬花が迷惑かけたね。しかも、戻れなくなっちゃうなんて、彼女自身も思っていなかったのよ。本当に守たちが心配だから…」
「でも、円堂くんはあの性格ですもの。絶対に迷惑なんて思っていないと思うわ。むしろ嬉しそう」

雷門が見つめる先には、円堂が豪炎寺たちに向かって「行け!」などと、応援を呼びかけるように叫んでいる。

「昔も守はあんな感じだったの…すこし泣き虫なところがあったけど、いつも笑ってた。特にサッカーをやっているときは、すごく楽しそうだった」
「でも、今は…」
「フッ、あんな感じ。反抗期かな?素直じゃないし、すぐ怒るし…でも、これでもすごく楽しいの。守たちがいなかったら、私は立ち直れなかったかもしれない。それに、根はものすごく優しいの、本人の前で言うと顔を真っ赤にして、剣を振ってくるけど」
「詳しいのね」
「私たち五人は兄弟みたいに育ってきたし。そういえば、もうすいぶんおそいよ?」
「そろそろ練習終了ね…あなたと話せて楽しかったわ」
「これからよ、よろしくね」
「えぇ」

雷門と夏未は軽く握手をした。

「あの、もう練習終了だから…」
「え〜、も〜う?」
「それ以上迷惑かけるな」
「あ、ありがとうございます、えっと〜」
「修也でいい」
「はい、修也さん」
「修也ってこんな感じの女の子が好みなの?」
「お前よりかはマシだ」
「何ですって!!」

春奈が修也に殴りかかろうとする。そこへ、秋が春奈を抑えてどうにか止めていた。夏未たちにとってはいつものことだが、円堂たちはそれを見て引いている。すぐに夏未が春奈の頭に軽く拳骨を落とした。春奈は痛そうに頭をさわり、顔を膨らませていた。睨んだ先には何事もなかったようにそっぽを向いていている修也がいた。

「修也も喧嘩をうるようなことは言わないの」
「言ってねェ、本当のことを言っただけだ」
「後でわら人形で呪ってやる……」
「春奈、修也、やめなさい」





騒ぎをしている夏未たちとは裏腹に、守は一人暗い夜空を飾る満月を見上げた。

「今日は満月か……」


「夏未はどっちの味方なの!?」
「どっちも違う!」


「ハハハッ……あれ?アイツはいいのか?」
「もう一人のお前の事か?」
「うん、なんか寂しそうっていうか、なんていうか…」
「気になるなら聞きいけばいいじゃないか」
「そうだよな!ありがとう、豪炎寺」
「礼を言われるほどでもない気がするが…」

円堂が守のところへ駆け寄り、豪炎寺は小さく呟いた。

「混ざらないのか?」
「混ざってどうする?」
「どうするって言われても…なんか寂しそうだからさ」
「………なぁ、一つ聞いていいか?」

守はいまだに満月を見ながらゆっくりとした口調で円堂に聞いた。

「?」
「お前は仲間がいるから強くなれるのか?」
「え?」
「俺はどうやったらもっと強くなれるのか分からない……」

円堂の瞳には守の憂鬱さが写っていた。とても寂しそうで悲しそうな暗い表情があった。
すると、円堂は守の隣で肩を並べ、同じく空の満月を見上げた。満月にすこし見惚れた後、円堂はそのまま話した。

「正直、俺は仲間に頼り過ぎていると思うんだ。もし、皆がいなかったら俺はサッカー部を建ち直せなかったかもしれない」

守は瞳を閉じながら円堂の話を聞いていた。

「俺は仲間たちがいなかったらダメなんだよ。皆がいないと俺はずっと弱小だった。でもさ、仲間がいても悲しいことはあるんだ」

「一回さ、皆がバラバラになりかけたことがあったんだ。エイリア学園の時に仲間が一人ずつチームから離れて行って、その時俺はすごく落ち込んだ」
「そうには見えないけどな」
「ハハッ、それよく言われる。でも本当なんだ、もうダメかと思った。サッカーやってて初めて後悔した。でもさ…」

「やっぱ、そん時皆が俺を助けてくれた。諦めない心を教えてくれた、あいつ等は本当にいい仲間だよ!!」

円堂が満面の笑みで守に笑いかけた。守はそれを無表情で見つめる。

「……やっぱり、お前とは気が合わなさそうだ……」

守が暗く答え、重い足取りで坂を上った。夜の暗闇のせいか、守の表情は見ることはできなかった。

「…」
「円堂、どうかしたのか?」

浮かない表情を浮かべてる円堂を見た鬼道は、心配そうに声をかけた。しかし、次の言葉で、それが余計なことだったと気づく。

「いや、なんでもない。そろそろ寝ないと明日起きれなくなるもんなぁ〜」

円堂が大きくあくびをしながら、腕を伸ばした。

「あれ?守は?」
「この坂上ってった」
「帰ったんじゃない?もう遅いしぃ〜」
「秋も帰ったぞ?」
「私たちも帰りますか!じゃ、修也たちは先に帰ってて、私円堂くんたち送って行くから」

Re: イナズマイレブン 異世界の危機 〜魔光石編〜 ( No.301 )
日時: 2011/06/08 18:07
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

7 強さ

「円堂くん、こっちの守はどうだった?」

円堂たちは河川敷から戻るため、城への家路についていた。
何を話していたのか分からないが、夏未は円堂と守が会話しているのを見ていたのだ。

「う〜ん、突然変なこと聞いてきた」
「変なこと?」
「仲間がいたら強くなれるのか?とか、どうやったら強くなれるのか?とか…」
「ふ〜ん、そんなこと聞いたのか。でも気にしなくていいよ。あの子はそういう性格だから」
「キャプテンはどう答えたの?」
「俺は仲間がいてくれてよかったって。それでアイツが『お前とは気が合わなさそうだ』って言って、いなくなった」
「落ち込みやすいのよ。あぁ見えても」
「円堂とは正反対だな」

周りにいる豪炎寺たちがクスッと小さく笑った。円堂は顔を膨らませ、反論しようとしたが、言葉が見つからなかった。

「さぁ、城に着いたから、また明日ね。もし練習するなら、城下町の私たちの家まで来てね。木野さんたちなら知ってると思うから。よろしくね」
「あぁ、ありがとうな!!」

徐々に離れていく夏未に大きく手を振り、夏未はこちらを振り返り、胸の前で小さく手を振った。

「円堂くん、そろそろ入ろ?皆もうシャワーに行ってるよ」
「えぇ、皆早い!!」

ドタバタになりながらも、円堂と木野は城内に入って行った。














暗闇の中、一人の少女が隠れて、円堂たちが城内に入って行くのを確認すると、腕時計型の通信機に話しかけていた。彼女は城内のメイド服を着ている。それは裏切りを意味しているのも同然だった。

「円堂守たちに護衛が付きました。どうなさいますか?ご主人様」
「まだ目覚めるのは早いようです。もう少し監視を続けていてください」
「はい、了解しました、ご主人様」

通信を切ると、少女は嘲笑うかの様に城を睨みつけた。