二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機 闇元月実、登場&魔法募集中 ( No.530 )
日時: 2011/08/27 19:08
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

38  少女の裏切りと少年の目覚め

「どういうつもりだ?」
「玲奈様、ヒロト様、落ち着いて私の話を聞いてください」

表情を変えてアルティスの手下らしき人を睨んだのは、彼女の行動を疑ったからだ。
数秒前—彼女はヒロトと玲奈を閉じ込めていた檻を魔法で溶かしたのだ。そして、二人に出て来い、とでも言うかのように、彼女は一歩後ろへ下がった。
助けられたとはいえ、囚人を逃すような行為は、とても敵とは思えない。

「私の名前はロリー、アルティス様に仕えている者です。そして、守様から『一時的』に記憶を消した者です」
「話には聞いている。だが、一時的に…というのは、どういう意味だ?」
「私は記憶抹消魔法を使ったのではありません。ただ、一時的に記憶に障害がでる操作魔法を使ったのです…フェアリー王国を、そして、この魔法界を救うために」

未だに彼女—ロリーが言っていることが分からない。アルティスの手下であれば、どうしてフェアリー王国を救おうとするのだろうか。少なくても彼女のボスはこの世界を壊そうと企んでいるはずだ。

「君は何を企んでいる?」
「私はただご主人様いえ、アルティスのやっていることが認められないのです」

彼女の漆黒の瞳は、嘘を言っている者ではなかった。とても強くそして勇ましい覚悟の炎が灯った目だ。

「君を信じていいんだね?」
「…はい。それでも信じられないというなら…」

ロリーは背中にある袋から何かを取り出した。それはヒロトのトンファー、それと玲奈の忍者刀だった。

「これを」

ヒロトと玲奈に投げつけた。おそらく、彼女がどこからか盗んできたのだろう。

「礼をいうよ。ロリーさん…でいいかな?」
「本当にいいんですか?今までの話が嘘で、実はあなた方を殺すためにやったことかもしれませんよ?」
「信じれるか分からないけど、アルティスのやっていることが気に食わないのは本当だと思う」
「…」

ヒロトの表情がいつもの頼りなさそうな雰囲気に戻った。ニコッとまるで小さな男の子が、飴をもらって喜んでいるようだ。玲奈はまだ少し疑っているみたいだが、彼女が助けてくれたのは変わりない。ひとまず、彼女を受け入れることにしよう、と納得した。

「出口まで私が案内します」
「頼むよ」





「そういうことだったのか…」

玉座に座り、嵐は大きなため息をついた。もちろん理由は、ヒロトと玲奈のことだ。
今さっき、美麗と鈴と一緒に帰還し、すぐにここまで来たのだ。
魔物の件は、研究班に任せることになり、二人は今ここにはいない。

「…すみません、助けられなかったのは私のせいです」
「いいや、情報をくれただけでもありがたい。それに無理に助けに行こうとして、命を落とさずにすんでよかった」
「……」
「闇元、ご苦労だった。休んでくれ。後は俺がどうにかする」

嵐の言葉には反論できなかった。
立ち上がり、一礼をして王宮の間から出た。それでも、心は晴れそうにない。

「この世界はお前のいいようにはさせないぞ……アルティス」
「嵐…」

悠也が悲しそうに呟いた。

Re: イナズマイレブン 異世界の危機 闇元月実、登場&魔法募集中 ( No.531 )
日時: 2011/08/27 19:08
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

「裏切られちゃったね〜アルティス〜」

明かりはスクリーンのものしかなく、監視室はとても暗い。アルティスが見ているのは、ヒロトと玲奈、そして彼を裏切った少女ロリーが脱走している映像だ。
その場には二人。一人は大きな椅子に座っているアルティス。そして、もう一人がお菓子を両手、口へ頬張りながら、あぐらをかいている少女。

「フフッ、全て計算内ですよ。それより、ナタク達はどうしました?」
「それが、まだ目が覚めないんだよね〜」
「あの時、春奈さんの目を欺いたのはすごいですね」
「ん、あの人が馬鹿なだけじゃない?死んだふりは下手な方なんだけどね〜」

少女は小さな丸いチョコレートを一気に五個くらい口に詰め込み、それを一瞬にして、腹の中へと飲み込んだ。

「私としては、結構いい演技だと思いましたがね…『シェルーさん』」
「まぁ、頑張った方だと思うよ。それでさ、あのメイド殺しちゃう?それでも生け捕りの方がいい?」

オレンジ色の短い髪の毛を揺らし、シェルーは立ち上がった。
彼女はナタクが率いるチーム、チーム・レイヤーの一員として、イナズマジャパンに戦いを挑んだ。途中で冬花が乱入し、試合は中断され、その数日後に、春奈に殺される『演技』をしたのだ。
つまり、春奈がナタク達を殺したというのは、偽りである。彼女自身は知らないだろうが、春奈はナタク達を殺してはいない。ただ、殺した、と勘違いされたのだ。もちろん、アルティスの計画のために。

「放っておきましょう。円堂守は必ずあの世界へ行く。それは確かです」
「未来を予知する力だよね。いいなぁ〜私もそういうのがあればいいのにぃ〜」
「まぁ、リスクがないわけではありませんからね…だから、円堂守の力が必要なんですよ」
「ふ〜ん、よく分んないけど、まだ仕事がないなら私は寝るね〜それじゃ」

軽く伸びをして、小さな体のシェルーは、あくびをしながら部屋を出て行った。本当に眠いようだ。

「ロリー、あなたの能力など私の前ではゴミも同然。どうあがいても、この運命は避けられないのですよ」

スクリーンにはちょうど脱出を成功したヒロトたちが写っていた。どうやら、手下には誰一人会わずに、出られたようだ。未だに武器は構えているが、基地内にいるときよりは、警戒心は薄くなっている。

その直後のことだった。シェルーと入れ替わるように一人の人物が入ってきた。全身がびしょ濡れだ。水にでも浸かっていたのだろうか。足には何も履いていない。ペタペタと足音を立て、近づいてくるのがわかる。

「おや?もうお目覚めですか?」
「…」

その人物はアルティスの問いには答えない。ただ黙って足を組んで座っているアルティスの背後を見つめていた。赤い瞳にはわずかな活気でさえも感じられない。とても冷たく暗い表情だ。まるで機械のように感情がない。
アルティスは立ち上がり、その人物の方へと振り向いた。

「体は八年前と変わりがないんですね」
「……何を、すればいい?」

その声は少年のものだった。幼くはない、とても勇ましく立派だ。しかし、やはり冷たい。その様子にアルティスは心から喜んだ、口角をあげ、左手を彼の頭にかざした。

「記憶はないようだな。だが、魔力はそのまま……フフフッ、ハハハッ。完璧だ!!貴様にはあの女を殺してもらう。伝説の竜、水星神竜を秘めし少女だ。分かるだろ?昔はお前の——だったのだからな!!」
「……」

何を言っているのか分からない。それはそうだ、今は自分が何者であるのかも分からないし、昔の記憶さえない。
だから、彼が最後に言ったあの言葉。気になりもしないが、胸のあたりが痛むのが感じられた。この痛みは何なのだろう。
その答えがわかる日は来るのだろうか。
しかし、今はただ、目の前にいる人の命令を聞けばいい。そのほかは何も考えない。今の自分に存在価値などあるとしたら、彼の命令を聞く、それだけだ。