二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機 闇元月実、登場&魔法募集中 ( No.544 )
日時: 2011/09/03 19:13
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

40 風の裏切り者

「急ぎましょう!!早くしないと、円堂守は別の世界へ…」
「アルティスに支配された例の世界か…、それだけは阻止しないとね」

森の中を必死で疾走し、フェアリー王国へ向かうヒロトたち。月実は国へは帰還したが、彼女はアルティスの企みを知らない。しかし、ここからだと、早くても二日はかかり、移動の魔法を使ってしまえば、魔力の消費が激しく、動けなくなってしまうかもしれない。それに、移動の魔法は感知されやすく、敵に居場所を伝えていることと同じようなものであり、いざとなって魔力がなければ、殺されてしまう可能性だってある。
だから、ただひたすら走る事しかできなかった。

「ヒロト、変だと思わないか?私たちはどうしてあの基地を易々と抜けられた?」
「私たちが通ってきたルートには、トラップも兵士もいません」

何かを言おうと、ヒロトは口を開いたが、それよりも先に体が動き、先頭にいたロリーの肩に手を掛けた。振り返れば、ヒロトは表情を厳しいものへと変え、川の向こう岸、木々が一層生い茂っている場所を睨んでいる。
玲奈も彼の異変に気づき、足に急ブレーキをかける。

「ヒロト様!?」
「ちょっとね……おい、そこにいるんだろ?隠れてないで出て来いよ」

えっ、と小さく声をあげて、ロリーも慌てて木立に目を凝らすが、人影は見えない。緊迫した状況が数秒過ぎると、不意にカサカサッ、と木の葉たちが動いた。
玲奈も忍者刀を構えた。冷静になってみると、木陰の方から気配と魔力が感じられる。

「クスクスクスッ、わかっちゃうもんだよな〜」
「フェアリー王国、流星の討ち手、ヒロト。計画に邪魔やから、消えてもらうでぇ?」

声はするが一向に姿を現さない。少女が二人。属性は右にいる奴が雷、左が風。
しかし、少女にしては、魔力が奇妙だ。量の問題ではない。魔力そのものの質がおかしい。幻術使い……いや、違う。もっと特別な何かだ。

「アルティスの命令か?」
「そうだけど?ロリーも勇気あるね〜あたしらを裏切ったら、どうなるかぐらい解ってよ」
「無理に決まってるやろ?ロリーあんた、もしかして、惹かれたんちゃう?フェアリー王国の守に」
「……」

声しかない少女の問いに、ロリーは答えない。ただ、両手に力を入れ、木の方を睨んでいるだけだった。

「そんなことは後回しでいいかな?それより、ずっと隠れているなんて、卑怯じゃないのか?」
「卑怯?目的のためならあたし達は手段を選ばないよ」
「だったら、引きずりだしてやる」

Re: イナズマイレブン 異世界の危機 闇元月実、登場&魔法募集中 ( No.545 )
日時: 2011/09/03 19:13
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

指を器用に操り、トンファーを一回転させ、パシッと手に固定されると、両手をクロスさせ、地面を無造作に蹴り、木々の方へと突撃する。
一瞬、ヒロトの姿が掻き消えたかと思うと、ズバァン!!と木々がへし折れ倒れる音が響いた。一本や二本という少ない単位ではない。一気に十何本以上、原型がわからないほどバキバキにされている。
ロリーには何が起きたのかさっぱり解らなかった。今まで何百という数の剣士や魔術師を見てきたが、こんなにも速く動ける人は見たことなかった。
急いで、右の方へ首を振ると、今の場所から遥かに離れている場所で動きが止まった、と思った途端、また姿が消え、今度は空中でトンファーを構えなおす。

(早すぎる!!!これが最高ランクの実力!?)
「ヒロト!!相手の攻撃が来るぞ!!」
「あぁ…分かってる」

ブーメランの様な水色の刃が無数に飛んでくるのが、ヒロトの目にも映っている。光の魔力と風の魔力を統合させ、一気にトンファーへと流し込む。
すると、トンファーに蛇のように巻き付いている炎が見えた。白と黄緑色の炎—光と風が融合したその刃は、一閃でブーメランを消滅させる。
これでも、空中戦は苦手な方だと、ヒロト自身は言うが、それでも、華麗に空を舞う姿は流星のようだ。——流星の討ち手の二つ名は侮れない。

今度は空中で一回転して、弾みをつけると、ダイブの姿勢で猛烈な勢いで急降下。さっきの攻撃が『彼女』たちの場所を知らせてくれた。その場所目掛けて無謀とも言える突進を敢行する。

「えッ!?危険です!」
「ロリー、アイツに任せておけ」

幼いころから、最も近くで彼の成長を見てきた玲奈にとって、この状況は当たり前の事。いつも口ではいろいろとヒロトを怒鳴りつけたりしているが、心中では彼をものすごく信頼している。だからこそ、今まで背中を任せることができ、目の前にいる敵を倒すことができた。

「ハァッ!!」
「チッ…回避!!!」

そのうちの一人の少女が、小さく舌打ちをして、どうにかヒロトの攻撃を避けようとした、が、顔を隠せるほどまでかぶっていたフードを斬られ、姿を彼ら見られてしまった。別に個人的に見られても構わないのだが、大国にバレてしまったら、アルティスの立場が不利になってしまう。

「君は…!?」

紅色の髪の毛が揺れ、頭には青色の帽子をかぶっている。予想は外れていない。女の子なのは確かだが、彼女がヒロトの知っている人物だとまでは、考え付かなかった。

「チッ…やっぱり覚えていたか、ここは一旦引くよ!!!」
「そんな、せっかくええ状況やったのに、しゃ〜ないな…」

一人だけ未だに顔を隠したままだったが、彼女とタッグを組む人など、あの娘しかいないだろう。
逃がすものか、ともう一度魔力を整えていた時には、二人の姿は霧に包まれ、消えてしまった。

見事に着地すると、玲奈とロリーが駆け足で近づいてきた。

「ヒロト、今の奴らは…」
「あぁ…あの二人、見たことがある。ウィンス国の者だ。ロリーさんは知ってた?あの二人の顔…」
「いいえ…声だけは聞いたことがありますが、いつも仮面をしていて…」

ヒロトの問いに、ロリーは俯いて申し訳なさそうに暗く答えた。彼女のせいだ、と責めてはいないが、この状況をみると、罪悪感が湧いてくる。

(言い方が…悪かったかな?)
「ヒロト、あの二人がウィンスの者だとすると…」
「一郎太に仕えている、いや仕えていたと言うべきかな?つまり、はぐれた者(ㇽㇾケイド)」

ルレケイド——裏切り者、という意味だ。彼女たちは恐らく、何らかの理由で母国を裏切り、アルティスの方についた。あるいは、アルティスに躍らされて、守たちのように操られているのかもしれない。どっちにしろ、国を裏切ったのは確かで、彼女たちは裏切り者、つまり《ルレケイド》の仲間入りだ。
もし、冬花が守たちのことを国の者に全てを明かしていたのであれば、たちまち、彼らはルレケイトとして国から追放され、ヒロトの権力でさえも手に負えなくなっていただろう。
それを分かっていて、冬花は皆に隠していた。いや、例え誰が大きな権力を持っていようが、持っていまいが、彼女は絶対に仲間を売るような真似はしない。それに、国の人々を安心させるため、という彼女の優しさがあったからこそ、フェアリー王国は大きな混乱を生まずに済んだ。

「あいつもいろいろと大変だろうな。冬花姫と同じ年齢でも、彼の立場は全く違うからな」
「そうだね。でも、まだ若いのに一つの国をまとめてるなんて、凄いね。もちろん、嵐王も若いけど」

元の柔らかい口調と表情に戻り、ヒロトは立ち上がった。

「ヒロト、無駄話はここまでにするぞ。早く国の戻らないと…」

言葉の代わりに、コクンと頷き、愛用であるトンファーを指で一回転させてから、腰に装着した。

「急ごう!!」

フェアリー王国を目指して、ヒロトたちはもう一度走り出した。
何としてでも、円堂たちがダークエンペラーズと戦ってしまうことを阻止しなければ——