二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜魔法募集終了!〜 ( No.408 )
- 日時: 2011/06/22 21:42
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
- 参照: 明日から一か月PC禁止だZE☆
15 水晶の園
「あら?まだ終わってませんことよ?」
「アンタ、誰?」
夏未が睨むと、現れたのは派手なドレスに細い体躯を包み、腕の長さまである白い手袋、鍔の広い真っ白のリボン付きの帽子をかぶった少女だった。少女と言っても、夏未よりは少し年上に見える。金髪の綺麗なウェーブのかかったロングヘアが、彼女を一層お嬢様らしく見立て、その美麗な容貌は女さえも虜にするほどの美少女だった。
「私(わたくし)は『チェルト・フェイルス・テイル』、アルティス様の命に命じて、円堂守の捕獲に参りましたわ」
「アルティス…」
修也がつぶやくと、守や秋も手に力を入れた。
「さっそくですけど、この役立たずは回収させてもらいますわね。余計なことを話されてはこちらも困ってしまいますから」
チェルトと名乗る少女は白い手袋をした指をパチンと大きく鳴らした。
「チ、チェルト様!どうかお許しを!!」
兵士たちが必死になって頭を下げる。
「言ったでしょ?雑魚には用はございません。消えてくださいな」
チェルトがにっこりと微笑むと、兵士たちの周りに緑色に怪しく光る炎が包み込み、彼らを焼き尽くす。ジリジリそしてゆっくりと体を焼かれ、悲鳴が飛び交った。最後に地面に残ったのは灰だけ、元の形などなく、兵士たちは骨ごと焼き尽くされたようだ。
「なっ!?」
「驚くことはないはずなのでは?貴方がたもよくやることではありませんの?私も同じようにしただけですわ」
「アンタ、只者じゃあなさそうね…」
「オホホ…手合わせをしてみます?」
「俺が…「守は下がって、ここは私が行く」なんでだよ!!」
「さっきので結構体力消費したでしょ?それに力の分からない相手なら、私が行く」
納得のいかなさそうな守に夏未は微笑んだ。一度は舌打ちをしたものの、今回は夏未に勝負を譲ることにした。夏未の言うとおり、魔力が少ない。魔法を使った覚えはないのだが、少なくなっているのには変わりはない。
「紅蓮の剣士と手合わせできるなんて、光栄ですわ」
「ありがとう、その言葉は褒めているのよね?」
「当たり前ですわ。でも、貴女は私に勝てるのかしら?」
「そんなの分からないけど、円堂くん達に手を出すなら、生きては帰れないと思いなさい」
「オホホ、では無駄な人は観客席にまでご招待させていただきますわ」
もう一度指をパチンと鳴らした。
「次は何?」
「ですから、特別な観客席にご招待させると言ったでしょ?」
次の瞬間だった。背後にある大きな木々たちから黄緑色の太い蔓が、守や修也たちの体を縛り上げた。縛られた体は、そのまま木の方へ引きずられていく。
「何!?これ!?」
茜たちは必死に蔓から逃れようとするが、足掻けば足掻くほど、蔓はきつく体を縛りつける。
「何をするの!?」
「あら?私たちの戦場に邪魔者はいりませんわ。1対1の勝負の方が公平ではなくて?」
「こんなの俺の炎で燃やしてやる!」
修也が全身に炎を纏わせようたしたが、炎はすぐに力なく消滅した。守や晴矢たちも同じく、無効化されてしまった。
「何!?」
「言い忘れていましたけど、その蔓は炎で燃やすことはできませんわ。では、ごきげんよう」
「そうはさせない!」
夏未が大太刀を振り上げ、正面にいた秋の方へ向かう。しかし、振り上げる直前にその刀をチェルトは片手で受け止めた。彼女は夏未よりも遠くにいたはずなのに、一瞬にしてここまで来た。どうやら俊足の持ち主のようだ。だが、今はそんなことを考えている暇などない、一刻も早く守たちを助け出さなければ、取り返しのつかないことになりそうな気がしてならない。
「どけぇ!!」
「言葉遣いが悪いようですね。少し、お説教をしなければなりませんわ」
そうこうしている間にも、守たちはどんどん木の方へ向かっている。チェルトは軽そうに、夏未を刀ごと投げ飛ばした。外見からみただけでは、そんなに力が強そうには見えないただの少女だと思っていたが、どうやら見くびっていたらしい。
「守たちをどうするつもり!?」
「邪魔なので、この場から消えてもらうだけですわ」
「なっちゃん!!私たちに構わないで!!」
茜が叫んだ直後、彼女は真っ黒な空間に吸い込まれ、木もろとも跡形もなく姿を消した。次に晴矢、リュウジと次々に吸い込まれていき、とうとう最後に残った守までもが消えてしまった。
「皆!!」
「邪魔者はいなくなりましたわ。これで存分に暴れられますわね」
「お前!!」
夏未が血相を変えてチェルトを睨みつけた。
「オホホ、そんなに怒らないでくださいな。彼らは死んでなどいません、ただ別の空間へ移動しただけです。貴女がこの勝負に勝つことができれば、彼らは戻ってきます。しかし…貴女が負けてしまったら、彼らも貴方もあの兵士たちと同じ末路を辿ることになりますわよ?」
「勝てばいいのね?」
「えぇ」
「なら、簡単だ!!」
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜魔法募集終了!〜 ( No.409 )
- 日時: 2011/06/22 21:43
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
- 参照: 明日から一か月PC禁止だZE☆
刀に炎が燃え盛り、辺りに火の粉をまき散らす。
「そうそう、一応言っておきますわ。先日、貴女がたの通っている場所、『試練の間』の主は生け捕りにしたあと、国の情報を吐かせようかと思いましたけど、全然言うことを聞かないものですから、処分させていただきましたわ。さっさと吐けば無駄な犠牲は増やさなかったのに…」
チェルトがわざとらしく、右手を自分の頬にあてた。可愛げのある仕草だが、どうも気に食わない。
「クッ!!」
もう一度炎の刀を振り上げ、チェルトに襲い掛かった。彼女のその余裕そうな表情と、守たちを助けることのできなかった何とも言えぬ悔しさが、夏未を怒りで震え上がらせた。
「そんな攻撃、効きませんわよ?」
確かに切り付けた感触はあった、しかし、チェルトの体には傷一つ付いていない。戸惑う余裕なんてない、隙があれば斬る、それだけだった。
次も、またその次も切った感触はあるはずなのに、なぜかチェルトには傷がつかない。それに、彼女の動作はまるで、自分から斬りつけられにいくようなものだった。
「何がしたいの?どうして避けようとしないの?」
「フフフ、どうやらとんだお馬鹿さんのようですわね」
「え?」
「貴女はこの勝負が始まってから、私の魔術にかかっていますのよ?」
「……ハッ!春奈!!聞こえる!?」
何度話しかけても応答がない。どうやら通信が切れてしまったようだ。これでは、春奈たちが無事かどうかわからない。
「それにこの空間いる限り私は無敵です、何をしても無駄ですわよ?」
そう。夏未たちには見えてはいなかったが、彼女たちがこの場に入った瞬間から、チェルトの魔法は発動していたのだ。最初から通信が切れてしまえば、怪しまれ相手が何かを打ってくると考えたチェルトは、まずは部下の兵士たちに攻撃を命令したのだ。夏未たちが兵士を倒すまでは分かっていた。その後、夏未にはばれないように通信を強制的に切り離し、自分の空間を作り上げた。
「私の幻術空間—水晶の園(クリスタル・ガーデン)へようこそ、お馬鹿な炎の剣士さん」
「水晶の園(クリスタル・ガーデン)?」
「この空間は貴女の技を無効化できる、それに対して私の魔法はすべて強化されますわ。分かりませんか?自分の魔力が少なくなっていることに」
どうりでおかしいと思った。さっきから魔法を使ってもいないはずなのに、魔力の消費が激しいのだ。——これですべてが繋がった。
「それのその魔力の分だけ、私の魔法は強くなりますわ」
「…ちなみに聞くけど、この空間は壊せるのかな?」
「そんなこと教えてさし上げると思って?」
「簡単には教えてくれそうにないようね…」
「当たり前ですわ。誰が自分から不利になるようなことをしますの?」
今度の問いかけに、夏未は答えることはなかった。口調は穏やかでも、心の中に焦りが生まれてくる、守たちは大丈夫なのか、円堂たちは無事なのか、そればかりが脳を駆け巡っている。魔力も刻一刻と少なくなっている。
(魔力がなくなるまで、決着をつけなくちゃ!!)
「火炎ノ一撃(フレイムインパクト)!!」
夏未は足裏に炎を爆発させ、地面を勢いよく蹴とばし、跳んだ。弾丸のようなスピードに刀に灼熱の炎を纏わせ、同時に振り上げる。—やはり、チェルトは軽く右手で受け止めた。
「チッ!!」
「あら、私だけを見ていて構いませんの?」
刀をつかまれ、身動きできない夏未の背後から、あの黄緑色の蔓が忍び寄る。
「!」
蔓に気が付き、とっさに刀を大きく振り上げ、その場からの脱出を試みた。背中に炎の翼をつけ、天空に向かって高く飛んでいく。そして、追いかけっこの鬼のように、夏未を捕えようとする蔓を再び刀を振り、真っ二つにした。——はずだった。
「やばい!」
斬られたはずの蔓は枯れたようにしなれたが、もう一度一つに合体し、一瞬の隙を見せた夏未の左手に巻き付いた。
「ッ!!」
「あらあら、お馬鹿でせっかちな方なのね、貴女は」
そのまま、刀を持っている右手にも巻き付き、夏未を天空から、振り落とした。地面に亀裂が入るほどの威力で投げられ、体の骨が折れそうになる。立ち上がろうとも、全身の痛みと蔓が邪魔をしてどうにも立てそうにない。
「もう終わりですの?早すぎますわよ?」
両手首に巻きついた蔓はまだ夏未をきつく縛り離さない。地面から夏未を引き上げ、チェルトの傍まで連れてこられた。
「結構きれいなお顔をしていらっしゃるのね。あの『呪われた子供』とは思えません」
「なんで知っているの!?」
「あら、まだ話す力がありますのね。いいですわ、教えてさし上げましょう。どうせ、この状態では動くことはできませんものね」
チェルトは左手で夏未の頬をそっと触る。悔しさからだろうか、唇を噛み、夏未は彼女を鋭い眼差しで睨みつけている。チェルトはその歪んだ表情をとても楽しんでいる。
—次のチェルトの言葉は夏未にとって、衝撃が大きかった。
「十四年前…貴女を呪われた子供として、でっちあげたのは私ですわ」