二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.136 )
日時: 2010/08/28 18:41
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

 瞳子が手紙を読み終えると、白恋の生徒たちは不安げな面持ちで互いを見やり、ぎゃあぎゃあと騒ぎ始める。特に女子たちは、一斉に懇願(こんがん)するような目で吹雪を見つめた。

「白恋中学校が破壊されるって!」
「ふ、吹雪く〜ん! 白恋を救ってほしいっぺ!」

 女子に見つめられる吹雪を尻目に、アイリスはきっぱりと円堂と雷門イレブンを見渡しながら尋ねる。

「雷門イレブンのみなさん、どうするの?」
「もちろん勝負は受ける」

 円堂はぐっと拳を作り、力強く頷いた。
 もう雷門中学校のように破壊される学校を出してはいけない、とそう誓ってここまで来たのだ。今でもはっきりと思い出せる。壊れたがれきだらけの校舎、人々の泣き叫ぶ声。この世の終わりを見ているようだった。
 だからエイリア学園と戦ってきたのだ。前に進んだら今更後戻りなんてできるはずはない。オレ達は、進むんだと円堂は小声でつぶやいた。豪炎寺もきっと帰ってくるはずだ。だから進み続けるのだ。
 その決意が、円堂を動かし続ける。

「この白恋中学校を、雷門中のように破壊させたりはしない! オレたちの手であいつらを倒すんだ!」
「でも……豪炎寺さんなしで、勝てるんッスか?」

 それでも雷門イレブンはまだ不安半分、期待半分と言った感じだ。
 吹雪が加わることにより大幅な強化は望めるが、前回ジェミニストームにはぼろ負けだった。吹雪一人の力でジェミニストームと対等かそれ以上に戦えるかなど、誰も知らない。それに豪炎寺がいないショックからも、まだ抜け切れてはいなかった。

「大丈夫だ。明日には塔子と白鳥も帰ってくるし、今のおれたちには吹雪がついているじゃないか!」

 そう円堂がみんなを力づけるように言って、この場全員の視線がいっせいに吹雪へと向けられる。吹雪は頬を染めてはにかんだ。白恋の女子たちから、黄色い歓声があがる。その歓声から話を切り替えるように、風丸が咳払いをする。

「そうだな。吹雪のスピードなら、やつらに太刀打ち(たちうち)できるかもしれない」
「だろ? 吹雪はどうする?」
「もちろん協力するよ、円堂くん」

 にっこりと笑い吹雪は快諾してくれた。けど……と言葉を紡ぐ。

「けど、やりたいことがあるんだけれど、いいかな?」
「やりたいこと?」
「うん。実は——」

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.137 )
日時: 2010/10/20 13:13
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

 そして時は再び晩に戻る。
 月光が照らし出す暗い草原の上で涼野と蓮は、

「風介、行くぞ! おりゃあっ!」

 パス練習をしていた。月明かりはそこそこ明るく、やや薄暗いがお互いの姿やサッカーボールを確認することができる。
 蓮が軽くボールを蹴ると、涼野は転がってきたボールを左足で止めた。

「蓮、なかなかいいパスではないか。次はこちらの番だ!」
「それっ」

 止めていた左脚を引くと、力強い掛け声とともに涼野が蓮に向かってボールを蹴る。キック力があるのか、転がるスピードが速い。
 しかし蓮はお得意の反射神経でボールに素早く反応した。自分の前に転がってきたボールを片足で止めると、つま先ですくう。そして頭上に軽く上げ、ヘディングをしてから腕の中にキャッチした。
 蓮はボールを抱えながら、涼野の元へと歩み寄る。

「すごいキック力だなぁ……憧れるよ」
「キミこそ、DFとは思えないキック力だな。FWにも向いているのではないか?」

 そう涼野に尋ねられ、蓮は難しい顔をして首をひねる。

「う〜ん。どうだろう。どっちにしろ、スタミナ不足だからDFで精一杯だよ」
「スタミナ不足?」

 涼野に聞かれ、蓮はサッカーボールを見つめながら自分のサッカーの悩みを涼野に聞かせていいものか悩む。
 しかし、彼になら話してもいいかも……と妙な安心感から、淡々と涼野に自分のサッカーの弱点を、悩みを語り始める。蓮は自虐気味な表情を浮かべると、

「技を使うと、身体の力が吸収される気がするんだ。そのせいで僕はすぐに倒れてしまう。他のスポーツでは全然疲れないのに、サッカーだけは異常に疲れてしまうのさ。ほーんと、なんでこんなスタミナ不足の僕が、雷門にいるのかな」

 本当に仕方がない、くらいにしか聞こえない話し方。けれど最後に自分の本音が、ついポロリと漏れてしまった。
 雷門サッカー部にいるみんなは普通にフルタイム走っていられる。なのになぜ自分だけ走ることが出来ないのか。
 持久走には自信がある。テニスだって、炎天下で何時間も中一の頃は練習できていた。
 なのにサッカーだけはだめ。でも、周りが認める力はあるらしい。それを頼られて、入部させてもらったのに、役に立てない自分が嫌で嫌でしょうがない。
 蓮の悩みを察知したのか、涼野は澄んだ青緑の瞳を、まっすぐ蓮へと向ける。その瞳には友を心配をするような光が宿っている。表情は仏頂面だが、ところどころに彼の感情が滲み出ているのは新しい発見だった。

「悩んでいるのか?」
「……どうかな」

 蓮は瞳を陰らせると、長いため息を吐いた。
 そしてしっかりとした口調で話し始める。

「実はこの前さ、エイリア学園と戦ったときにさ、試合前に倒れちゃって。試合中も身体が重くて言うことを聞いてくれなかった」
「どうして倒れたのだ? 無茶をしたのか?」
「全然。ジェミニストームを見た瞬間、胸がギュッと掴まれたみたいに痛くなってさ……だんだん息も苦しくなって、立っていられなかった。不思議だけど、ジェミニストームがいなくなってからは、苦しさも急に消えた」

 実にジェミニストームを見た途端、急に胸が締め付けられた。アレルギーのように、身体が過剰なくらいに”何か”に反応しているようだった。やつらが持っている『気』のようなものに、身体が共鳴している——そんな感覚だった。向こうが叫ぶと、身体が叫ぶ。それが痛みとなって身体を襲ってくるのだ。

「それは不思議だな」

 涼野の疑問の言葉は蓮にとっても同じだった。
 この身体はやつらのなにに反応したのだろうか。

「チームのみんなには迷惑をかけてばかりだ。円堂君が、試合に出れる時間をだんだん長くしていけばいいって言ってたけど、もっと早くフルタイムで出られるようになりたいな。いつまでも、お荷物でいるのは嫌なんだ。この前の奈良だって前半はベンチで悔しかった。見ていることしか出来なくて嫌だった。確かに僕は非力だけど……僕にだって、雷門サッカー部の一員としてのプライドがある。僕はここにいる」

 わりかしら悲観的に言っていたが、最後の一言には蓮のはっきりとした意志が宿っていた。他の部分より強く、しっかりとした口調が、蓮の意志の強さを表しているようだった。
 黙って神妙な面持ちで話を聞いていた涼野は、蓮にふっと笑いかける。

「蓮」

 蓮が振り向くと、涼野は海へと目をやった。
 潮風が涼野の銀の髪を静かに揺らした。

「キミならできるはずだ。今日……キミとパス練習をしてそれを痛切に感じさせられた」
「どうしてさ?」
「わからない。ただ、そんな気がするだけだ。そう私が思うことに理由は必要か?」
「……いらない。理由なんて、ない方がいい」

 潮風がいっそう強く吹き、蓮の呟いた言葉をさらって行った。

 それから何時間もパス練習を続けるうちに、すっかり深夜となってしまった。星の位置が、だいぶ変わっている。寒さも増してきた。

「そろそろキミも寝る時間だろう」
「やっば。こんな時間なのか」

 蓮はサッカーボールを片手に、コテージの前まで一気に丘を下った。後に涼野も続く。
 コテージの中へと続く扉の前で、立ち止まり、二人は向き合った。

「風介本当にいいのか? よかったら送るのに」
「私は大丈夫だ。……会えたら会おうではないか」

 そう別れのあいさつをして、涼野が踵(きびす)を返す。
 あっと蓮は声を上げ、涼野を呼びとめる。

「あ、風介。ちょっと待って」

 完全に涼野が立ち止まったことを確認すると、蓮は鞄をあさりながら涼野へと近づく。
 鞄の中から引っ張り出した白い獣のキーホルダーを涼野に握らせた。それは白いオコジョをかたどったもの。上に、ビーズがついたチェーンが通されている。

「……これはなんだ?」
「北海道のオコジョのキーホルダー。塔子さんに二個ももらっちゃってさ、やり場に困っていたんだ」

 苦笑いを蓮がすると、涼野はキーホルダーをじっと観察するように上下にひっくり返したりしていた。
だがやがて止め、ポケットの中へと滑りこました。

「もらっておこう」
「それならよかった。じゃあ、おやすみ風介」
「おやすみ、蓮」

 互いに別れのあいさつをすると、蓮は涼野に片手を上げ、彼に背を向けコテージの中へと消えた。しばらくして二つ目の部屋から明かりがもれる。

「……私はどうすればいいのだ」

 明かりを目を細めて見つめながら、涼野は小さく呟やいた。天井を仰ぐ。
 たくさんの星たちが自分の存在を主張するように瞬いていた(またたいている)。

「キミはどちらを望む、蓮——」

〜つづく〜
なんかようやく蓮が出てきました。もうすぐ北海道編も終わりますかね〜^^;

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.138 )
日時: 2010/08/28 00:37
名前: パンドラ (ID: 5ZyVc2k3)

久しぶりに見ました。かなり進んでます。
ジェミニ戦さっき動画で見たばっかりなんですよ。(偶然ですよ!)ユニバーサルブラストかっこよかった(たんにレーゼとディアム好きの趣味の話です、身論佐久間のが好きだし)
更新超楽しみにしてます。
関係ないですけどアニメの瞳子監督とパンドラって声優一緒なんですかね?声超似てる(関係無い話を長々とすいません)

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.139 )
日時: 2010/08/28 15:46
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

 翌朝。今日も穏やかに波がさざめく音が聞こえる。朝日が窓から差し込む中、蓮はベッドの上で、腹に薄い掛け布団をかけ、丸くなるように上下ジャージ姿で寝ていた。時折、口から静かな息が漏れる。その姿は、眠りに落ちる猫などの小動物を連想させる。日光が顔に当たっても起きないのは、涼野とのパス練習ですっかり疲労がたまっていたのと、塔子に振り回された精神的疲労から来るものであった。

「大変だ! 白鳥!」

 そこへやはりジャージ姿の塔子が、乱暴に扉を開けて部屋に飛び込んできた。その手には女の子らしい明るいピンクの携帯が握られている。蓮はびくっとわずかに身体を震わせただけで、再び夢の世界に戻る。
 蓮の様子を見ていた塔子は苛立ちの表情を見せると、うつした行動は大変ストレートなものだった。ベッドのわきまでずかずかと大股で歩くと、携帯をベッドの上にある棚の上に置いた。そしてベッドの左はしに両膝で乗っかると、丸くなる蓮の肩を鷲掴み(わしづかみ)にした。

「お・き・ろ! お・き・ろ!」

 腹の底から大声で叫びながら、塔子は命令系をひたすら連呼する。掴んだ蓮の肩を関節脱臼を目論む(もくろむ)がごとく激しく揺らす。しばらくすると、蓮がかすかに眉をひそめて唸リ声を上げた。重そうに瞼を開き、目を半開きにして上半身だけを起こした。

「……なに塔子さん? 空から隕石が来た?」

 完全に寝ぼけているらしく、意味不明な問いかけが来た。
 塔子は盛大にため息をつき、棚の上の携帯をとった。そしてメールを呼び出し、蓮の半開きの瞼ぎりぎりに押しつけるように近づけた。
 
「そんなことあったら、あたしたちは死んでるよ! 白鳥も自分の携帯を見てみろ」
「携帯? なんことさ」

 欠伸を噛み殺しながら、ベッドから蓮は全身を起こした。ベッド下に置かれた自分の鞄から携帯を取り出すと、ベッド上にあぐらをかいて携帯をいじる。起動するなり、『新着メール1通』の文字が画面に表示。誰からだろう、と思いつつメールを開くと、差出人は円堂からであった。ボタンをクリックし、メールの本文を見たところで、

「え」

 蓮の眠気は一気に吹き飛んだ。目が驚きで完全に見らかれる。
 メールに、北海道で吹雪がすごいストライカーであることを確認した、と言うこととジェミニストームが雷門に勝負を挑んできたことが記されていたからだ。蓮は確かめるように視線を何度も上下させ、やがて塔子に向き直る。

「エイリア学園がこの北海道に攻めてくるだって!?」

 円堂からのメールを塔子に見せると、塔子は自分の携帯を蓮に手渡した。そこにはSPフィクサーズからのメール画面が映し出されており、北海道にエイリア学園が向かったと言う全く同じ内容が書かれていた。ただしこっちは、可愛らしい絵文字付きであるが。あちこちにハートマークとか顔文字とか。女子高生のメールの様だ。

「スミスたちからも連絡があった。エイリア学園が、この北海道に来ているらしいんだ」
「なんで僕たちの居場所が分かるんだろう」

 あくまで蓮は気になることを呟いただけだった。
 しかし塔子の面持ちが険しくなり、蓮は少しばかり不思議そうな顔をする。

「ん? 塔子さん、どうかした」

 塔子は腕組みをしながら、真剣な表情で答える。

「言われてみると、話が出来すぎていないか? あたしたちが北海道に向かっていることをエイリア学園は何故か知っていて、勝負を挑んできた。なんで知っているんだろ」
「確かに。偶然にしては、出来すぎているよな。どっかで情報が漏れたのかもしれないな」

 その時、ふっと頭に涼野が浮かんだ。
 エイリア学園がいた場所は奈良、そして北海道。どちらの近くにも涼野はいた。昨日会ったときは嬉しさのあまり大して気にも留めなかったが、深夜遅くに子供が一人でふらつくなどまずあり得ないことだ。親はどうした、所属するサッカークラブってまさかエイリア学園? 
 一度生まれた疑問は、やがて涼野を疑う疑念へと変わる。白恋にストライカーを探しに行くんだ、と昨晩彼に話した。そのせいで雷門の居場所がばれたのだろうか……?

「……風介。そういえば、エイリア学園がいる傍には、いつも風介が——」

 自分の内面世界にのめり込んでいる蓮は、塔子の話を全く聞いていなかった。
 漏れたってあたしたちが倒してやるよ! と言う返事のあたりからずっとだ。それでも塔子は蓮の返事も聞かず、独壇場のようにべらべらと話し続ける。

「だから早く宿を出て、みんなと合流するぞ……と言いたいけど」

 ようやく現実世界に戻ってきた蓮が、とりあえず話を合わせようと塔子に聞き返す。

「言いたいけど?」
「少し時間を調整するぞ。東京から白恋中学校まで、飛行機で行くなら半日はかかるんだ。だから昼過ぎくらいにつくように調整するよ」

 蓮は苦笑しながら、

「……塔子さん、ずるがしこいね」
「二人での観光旅行代、白鳥に請求するか?」
「ご勘弁」
「だろ?」

 得意げに塔子にふふんと笑われ、蓮はしてやられたりと言う気分になっていた。ベッドに思わず額をぶつけ、敗北感を紛らわせる。

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.140 )
日時: 2010/08/28 18:47
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
参照: 学校がもうすぐ始まるぞ!……いろいろと怖いのです

 午前十時過ぎまでコテージの外でパス練習をしたり、体力づくりとして走り回ったりしてから、再び迎えの車で二人は一路空港へと向かう。また飛行機で、白恋中学校の近くにある空港へ。またスミスが手配したと言う黒いリムジンで、二人は白恋中学校へ。
 初めてみる一面の雪景色に二人ははしゃぎ、しばらく雪合戦をしたりとじゃれ合っていた。やがて白恋中学校に足を踏み入れると、円堂たちが吹雪と共にこの雪原で特訓していると生徒に教えられた。詳しく場所を聞き、二人でその場所に向かって歩き出す。
 学校から5分ほどにある小高い丘。人工的に木は切られているのか、白い雪原と雪が積もった大岩の灰色だけしかない。もっこりとかまくらのように膨らんだ斜面に雷門イレブンはいた。ジャージの色が黄色や青であるため、白い雪原ではよく目立つ。
 みんな頭にヘルメットをし、足にはスキー板、手にはスキーの時に使うすべる棒が握られている。何故かスキーをしていた。
 そんなメンバーを見つけた蓮は微笑みながら、斜面へ塔子と共に近づく。

「なんかみんなずいぶん辺鄙な場所に——」

 発せられるはずの言葉は飲みこまれてしまった。
 嫌な視線を背中に感じる。刺すような、それでいて探るような、不快感に満ちた冷たい視線。蓮の足がすくむ。まるで背中に重い”何か”が乗っているかのように、身体全身が重い。それはたぶん威圧感のせいだろう。見ている何者かが発する禍々しい(まがまがしい)空気が、蓮の身体を潰そうと乗っかってくる。ちょうど肉食動物に睨まれる獲物の気分だ。とても怖い。体中の毛穴が開き、冷や汗がだらだらと流れていく。心臓の鼓動をいつもよりもはっきりと感じられる。顔が青ざめる。
 視線の主がニタァと不気味に笑った。ゆっくりと感じる視線の距離が短くなる。どんどん近づいてくる。蓮は自分を奮い立たせた。逃げない、こいつと戦わなきゃと無理に言い聞かせる。おそるおそる後ろを振り向くと、そこには——

「やあ、キミたちが白鳥くんに塔子さんかい?」

 吹雪がいた。白恋のジャージを身につけ、頭には青いヘルメット。片手で地面に刺した青字のスキー板を支えている。柔らかい笑みを口元に浮かべている。
 いつのまにか圧迫するような威圧感も、辺りを凍てつかせる視線もなくなっていた。こんな穏やかな人間がさっきの人物だとはとうてい思えない。

「白鳥どうした? 顔が青いぞ?」

 蓮の顔が青ざめていることに気づいた塔子が、蓮を心配そうに見つめた。蓮は顔に生気を取り戻しながら、

「今、誰かに見られていた気がする……」

 言いながら辺りを見渡す。
 聞こえるのは雷門イレブンがスキーで上げる歓声と悲鳴だけ。
 見えるのは雷門イレブンがスキーを行う姿と、白銀のこの広い世界だけ。
 塔子も同じように辺りを見るが、異変などないことに気づき笑い飛ばす。

「気のせいじゃないのか?」
「ん〜……」

 唸り声を上げると、蓮は腕組みをした。
 と気付いたように塔子が吹雪に話しかける。

「ところで、おまえは誰だ?」
「初めまして。ボクは吹雪 士郎」

 にこやかに自己紹介をした吹雪を、塔子と蓮は好奇と驚きが入り混じった瞳で見た。

「え! お前が吹雪なのか!」
「イメージと全然違うなぁ」
「やっぱり……噂に惑わされていたんだね」

 それから吹雪が噂は勝手に人が作ったものに尾ひれが付きすごく大げさになった事、自分はこれからジェミニストームと戦うために雷門イレブンを特訓していることを話してくれた。

「思うんだけど、雷門イレブンにはスピードが足りないと思うんだ。これを使えば、きっと早くなるよ」

 背後にあるスノーボードを見ながら吹雪は言った。蓮と塔子が互いを一度見合い、首をかしげる。

「スキーで早くなるのかな」
「ボクはこうやってスピードを上げて来たんだ。風と身体を一体化する感覚を覚えれば、もっと早くなると思うよ」
「モノは試しだ! 白鳥、やろうぜ!」

 はりきりだして蓮の袖を引っ張る塔子を見て、吹雪は丘の上を指差した。

「スキーの道具は上にあるから、とりあえず持ってきてもらえるかな。二人にはボクが一から教えるよ」
「よ〜し! あたしが一番乗りだぁ!」
「僕だって負けないぞ!」

 言うが早いか蓮と塔子は、はり合いながら丘の上にかけだし始めた。雷門イレブンに挨拶をしながら、必死に丘を走って登る。蹴りあげられた雪の切片が、日を反射してきらきらと輝く。
 そんな二人を笑顔で見ていた吹雪に、弱い冷風が吹きつけた。白いマフラーがはためく。みるみるうちに目がオレンジになり、髪の毛がツンと上に尖る。『吹雪』であった。『吹雪』は塔子に負けじと、歯を食いしばって丘の上にのぼる蓮に視線を向ける。口元を不気味にゆがませた。

「白鳥か……くく、おもしれえ野郎だぜ」

 
〜つづく〜
蓮が感じた視線の正体はアツヤです。何を考えているのかってこの小説は謎が多すぎですね^^;アツヤの方はわりかしら早く判明させるつもりです。
ところで蓮に絡むのは氷属性ばかりってことに、ここ最近気づきました。吹雪もガゼルも大好きですv

北海道は謎だらけにしたいんですb

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.141 )
日時: 2010/08/28 15:56
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

>>パンドラさん
はい〜^^;今年は受験で旅行がないので、小説を書いてむちゃくちゃストレスを発散しています。海とかマジで行きたいです。

ユニバーサルブラスト……?えっと”ユニバースブラスト”でいいんですよね。あの技って空間がねじれる場面がとっても面白くって好きですvでも、描写が難しそうだなぁ。書けるか微妙なところです^^;

イナイレって結構ダブルキャストが多いですよね。(佐久間と壁山とか、栗松とウルビダとか、ガゼルとリカとか。違っていたらすいません)だから案外同じかもしれません! 瞳子とディアムはかなり以外ですよね〜クールと言えばクールで似ているかも。

ではではコメントてんくすでしたb

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.142 )
日時: 2010/08/28 16:13
名前: パンドラ (ID: 5ZyVc2k3)

間違えました〜〜〜
好きな技の名前間違えるって何やってんでしょうね。
受験生だったんですか!?ってことは中3でいいんでしょうか?そうだったら先輩ですね、私は小6です。
遊びまくってます。宿題も少ないんで。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.143 )
日時: 2010/08/28 18:23
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

>>パンドラさん
おぉ、私の方が年上でしたか^^ はい、絶賛受験学年の中学三年生です。ツナミと同じ年なりv

宿題なくていいですね〜私はワークとか凄く出てます。予定立てるの下手なので、ついこの前やっと終わったところです。

私も技名をよく間違えます。
はまりたての頃はマジン・ザ・ハンドと正義の鉄拳をよく混同して友達に指摘されまくってました^^;

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.144 )
日時: 2010/08/28 18:43
名前: 空梨逢 ◆IiYNVS7nas (ID: ezxnwr3m)

おひさ!
宿題がなんか予想外にあってダメージ食らってる空梨逢です^^

というかね。なんというか。
面白すぎて続き楽しみすぎて学校始まるの余計辛いじゃねーk((殴
orz、すみませんでした。

アイリスが楽しみすぎるんだぜ。そして福岡の説得が楽しみすぎるんだz((早い早い ……そして風丸さんとの絡みも楽しみ。

更新乙!そしてがんばってね^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.145 )
日時: 2010/08/28 20:05
名前: 薔薇結晶 (ID: vAHEHJN2)
参照: http://oupo.github.com/tools/inazuma3-password.html

しずく様、甘いですね。
イナイレはダブルなんてレベルじゃないですよ!
だって、1人6役してる声優さんいるんですから!

影野=源田=武方努(緑の)=財前総理=ゼル(イプシロン)=マーク

ですから!他にも

マックス=マキュア=リュウジ=虎丸のお母さん

とかwwやばいっすよぅ!


しずくさん!
私新スレ作ったんだけどあんまりオリキャラ募集来なくって…。
しずくさんのオリキャラを頂けるとありがたいんですが…。「魔法の国!?伝説の魔法を探して」です。
おねがいします><

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.146 )
日時: 2010/09/03 15:33
名前: ふぁいん (ID: XHLJtWbQ)

お久しぶりです!相変わらずの神文ですね!これからもがんばってください!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.147 )
日時: 2010/09/08 16:46
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

 特訓を続けていたら、あっという間に空が夕日でオレンジに染まった。
 夕日は北ヶ峰の稜線(りょうせん)をはっきりと浮かび上がらせながら、山の向こうへと沈もうとしていた。夕日が差す雪原は、光が通る部分は道のようにピンク色に輝き、影の部分は青色になっていて、コントラストが美しい。
 夕暮れ時まで、蓮は吹雪とワン・ツーマンでスキーの特訓を受けていた。
 元々不器用なためか、スキーで滑ろうとしてすぐに蓮は顔から転んだ。ちなみに雷門のメンバーは昨日からの特訓でみんなそこそこ滑れるようになっていた。
一緒に練習を始めた塔子は、昔パパとやったとか言って、踊るようにきれいなスキーを見せた。つまり、滑れないのは蓮ただ一人。

「負けないぞ」

 そう悔しそうに呟くと、蓮は吹雪に頼んで昼食も忘れて熱心に練習した。何回も転んだ。木に衝突もした。それでも、みんなから遅れた分を取り戻そうと、必死に斜面を滑りつづけた。
 やがて吹雪の教え方がいいおかげか、日が傾くころにはそこそこスキーで進めるようになった。

「いいよ、白鳥くん! もう滑れるようになったね」

 斜面を下りきった蓮に、吹雪からねぎらいの言葉がかけられた。蓮はスキーを八の字の形にして止める。靴をスキー板の金具から外し、板を脱ぐと、頭に被っていたオレンジ色のニット帽を取り、愛嬌のある笑顔を吹雪に見せる。

「吹雪くんのおかげさ。教え方、とても上手いな」

 吹雪は蓮にほめられて小さく照れ笑いをすると、首を軽く横に振った。

「ううん。白鳥くんの努力の賜物(たまもの)だよ。キミって、とても負けず嫌いなんだね。ボクが教えたこの中で、一番熱心な子だと思う」
「みんなよりできないって恥ずかしいからさ……今日中にできるようになってよかったよ」

 蓮は頬を軽く朱に染めながら、頭を掻いた。

「うん。ところで、そろそろ夕食の時間だって。白恋中学校まで戻ろうよ」
「あ、ごめんな吹雪くん。遅くまでつきあわせて。でも、もう少し滑っていたいんだ」

 蓮は申し訳なそうな顔で吹雪に謝る。
 とっくに雷門メンバーは白恋中学校に引き上げたらしく、雪原は閑散(かんさん)としていた。風が起こす外れの音だけが、雪原を包んでいた。
 こんな場所で一人で滑るのは寂しいものがあるが、明るいうちは大丈夫だろう。早く雷門イレブンとしてサッカーをやるためにも、もっとスタミナをつけたい。だから蓮は、できるだけ身体を動かすことにしたのだ。
 それを聞いた吹雪は、みんなに伝えておくよ。と答え、スキー板を抱えながら小走りで、白恋中学校の方角へと駆けていってしまった。
 吹雪の背中が小さくなる頃、蓮はスキー板を脇にかかえると再び丘を登ろうとした。その時。

「どけええぇえええええっ!」

 大きな怒鳴り声が近づいてきた。
 びっくりして声の方角を見やると、スキー板に乗った染岡がまっすぐこちらへと下ってくるのが見えた。焦りの色を顔に浮かべ、両手をまっすぐに伸ばし、鳥のように上下にばたつかせている。びっくりするバランス感覚だ。もちろん人は飛ばない。
 すぐに蓮は染岡が、スキーを止められずにいることに気づく。何度か声をかけるが、染岡が下るスピードは加速する一方。どうやら止め方がわからないらしい。
 染岡が風を纏(まと)っているように思えるくらい、空気が染岡と共にうごめくのをはっきりと感じた。それだけ近いと言うことだ。染岡は叫ぶのを止め、ひたすら羽ばたこうとしている。蓮が何もできないまま、距離はじりじりと縮む。ついに染岡と蓮の距離は30cm程になり……

「うわぁっ!」

 素っ頓狂(すっとんきょう)な悲鳴を上げると、蓮はスキー板を抱えたまま地面に倒れ込んだ。冷たい雪が頬をなでて、ひんやりとする。
 蓮の額近くの空気が切られ、前髪が舞う。直後、どがっと派手な音が上がり、どさどさと雪が落ちる音がした。
 髪についた雪を払いながら起き上がると、木立の根元に大きな雪玉があった。青と黄色の鮮やかな袖から出た手が露になっている。
 
「そ、染岡くん大丈夫!?」

 それが染岡だと理解した蓮は、スキー板を近くに放り投げた。染岡の救助にかかる。
 手袋をした指を関節でしっかりと折って、猫の手にすると、そのまま手でひっかくように無我夢中で雪を掘った。上部分から掘り下げると、染岡の頭が出て来る。いかつい目と蓮の黒い目が合い、蓮は肉食獣を前にした草食獣のように凍りついてしまった。

「ありがとよ、白鳥!」

 にっと得意げに笑うと、染岡は木に手をついて、立ち上がる。雪が食器を割るように砕け、地面へと還る。ひどいめにあったぜ、と文句を言いながら、染岡は体中の雪を手ではたく。

「あ、あの大丈夫?」

 再起動がかかった蓮が、控えめに染岡に尋ねる。
 顔で人を判断してはいけないと言うが、どうも彼の強面(こわもて)な顔つきが苦手なのだ。いつ怒られるのかわからず、少々びくついてしまう。
 染岡は、ん? と不思議そうな顔をした後、笑い飛ばす。

「そう怖がんな。オレは白鳥のことを食ったりしないぞ?」
「あははは……そ、そうだよね」

 苦笑する蓮を前に、染岡は瞳を陰らせた。口を真一文字に結び、すぐにぐっと歯ぎしりをした。

「くっそ! なんで滑れねぇんだ……」

 そしてスキー板を脱いで持つと、頂上へ登り始める。蓮も後に続く。雪がさくさくと心地よい音をたてた。

「染岡くん、焦りすぎてるよ」

 頂上について二人はスキー板の金具に再び靴をはめる。
 蓮がまずお手本にと滑って見せる。傾斜のない斜面は、スケートをするみたいになめらかに進んだ。染岡は蓮の姿を食い入るように見つめる。
 少し下で止まると、蓮はここまで下りてきて! と両手を振りながら、染岡に向き直る。

「おら! 行くぞ!」

 つるーっとスキーは斜面を滑りだし、蓮の方へ。両腕でバランスを取ろうとするが上手くいかず、前に転びそうになりながら下って行く。
 このままだと転ぶ! と思った瞬間、下に待機済みだった蓮が両手で穏やかに身体を止めてくれる。染岡は、ほっと安堵の息を漏らした。

「僕が後ろで支えるから、頑張ってみようよ」

 蓮は一度染岡から手を離すと、軽くスケーティング。染岡の背後に回ると、脇の下に手を差し入れてくる。その体勢のまま、開いたスキーの間に染岡のスキーをまたいで重なるようにする。そしてスタート。二人のスキーはゆっくりと斜面を下りる。

「おお、なんか違う気がするぜ!」

 バランスはしっかりと保たれ、染岡も自然と前傾姿勢になる。風を切って、あまりなだらかでない斜面をスキーはいいリズムで進んでいく。

「スキーが重ならないように気をつけてな!」
「おう! なんか……気持ちいいな、白鳥!」
「うん。風になるのってすごく心地いい」

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.148 )
日時: 2010/09/04 18:37
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

 吹雪にさっきこうして教わったのだ。
 自分の体の脇に吹雪が手を入れてくれて、支えながらやってくれると、驚くくらいに上達のスピードが速くなった。だんだんハの字を重ねた形できれいに進めるようになり、バランスをとるのにも慣れた。初めて風と身体を一体化できた感動は、心にはっきりと残っている。

「よし、そろそろ手を離すぞ!」

 染岡がだいぶバランスをとるのに慣れて来たようなので、蓮は染岡の脇から手を離した。染岡はいきなりかよ! とたじろぎ、一人で下って行く。また、バランスが崩れ下半身がぎくしゃくし始める。

「染岡くん、風だ!」

 スキー板から足を外すと、蓮は吹雪に教わったことを反芻(はんすう)して、腹の底から叫んだ。
 ——いい? 白鳥くん。スキーでは、怖がっちゃだめだよ。風になるんだ。風と自分を一つにする。そうすれば、きっと上手く滑れるようになるんだ。さあ、風になろうよ!


「風ってあんだよ!」

 意味がわからないと言った調子で、染岡の声が下から流れて来た。スピードはさらに増し、今度は染岡がどんどん見えなくなっていく。目の前に木立が迫る。

「空気の流れに身を任せて! そのまま進むんだ! 風になれ!」

 心の底から叫びながら、蓮は息せき切りながら走る。見逃したくなかった。染岡は、自分より上達のスピードが速い。ただ怖がっているだけなのだ。
 その直後だった。染岡の身体に安定感が戻る。身体をしっかりと前傾させ、スキー板もハの字を描いている。目の前に差し迫った木を、体重を片足にかけて、きれいなカーブを描いて避けた。

「染岡くん、いい調子! いい調子!」

 蓮は転がりそうになりながら走り続け、応援の手拍子を合わせた歓声を送る。
 やがて染岡は自力で丘を下り切ると、蓮にガッツポーズをしながら止まった。
 蓮の心に熱いモノが生まれた。その衝動に駆られるがまま、染岡の元までたどり着くと、彼の身体に思い切り飛びつく。染岡は驚く素振りも見せず、両手を広げて蓮を受け止めると、お礼の意味も込めて蓮の髪がぐしゃぐしゃになる程、激しく擦った。

「これでようやく吹雪のスピードに追い付けそうだぜ」

 スキー板を立てながら、染岡は満足そうに言った。蓮が首をかしげる。

「え、吹雪くんに?」

 すると染岡は難しい顔をすると、蓮の顔をじっと覗き込んできた。その視線は強い敵愾心に燃えたもので、蓮は染岡を直視するのがやっとな程、とても強いものである。

「白鳥は、吹雪を認めるのか?」
「うん。えっと、まあ……」

 強く詰問(きつもん)され、蓮が語尾を濁らた。曖昧な返事をあうる。
 染岡は満足な同意が得られなかったせいか、ふんっと不機嫌そうに鼻息を吐くと、腕組みをして目を吊り上げる。

「俺はあいつを認めねぇ」
「どうして?」

 そう蓮が聞くと、染岡は怒りと悲しみとが混ざった複雑な表情を見せた。
 今日、染岡の様子がおかしいことに蓮は気付いていた。いつもむっとした顔で、一人で滑っていた。その視線の先は、そういえば自分と特訓していた吹雪。何故だろうか。
 しばし返答に困ったのかだんまりとしてた染岡だが、ポツリと呟く。

「あいつを認めたら」

 そして覚悟を決めたような顔をし、蓮をしっかりと見て語りだす。拳を作り、それを震わせながら。

「豪炎寺が帰ってこなくなっちまう気がするんだ。あいつはチームのエースなのに」
「豪炎寺くんは、チームをずっと支えて来たのか」
「初め、俺は豪炎寺を嫌っていた。でも、あいつはすごいストライカーだってことが、一緒に戦ってきてわかるようになった。だから俺は、豪炎寺の力を認め、共に戦うことを選んだ。そうしたらあいつ、本当にすげえんだ。でも、あいつ一人じゃできないこともたくさんあることにも気がついた。そうだからこそ、俺は二番手でもいい、豪炎寺と共に2TOPを組んでやってきた」

 そこまで言い切ると、染岡は長い溜息をつく。
 顔がみるみる曇り、寂しさを漂わせ始める。

「だけど吹雪は豪炎寺とは違う。確かに強い奴だが、あいつを認めると豪炎寺がいなくなる気がするんだ——チームのエースは豪炎寺なのに。円堂も『豪炎寺が帰って来た時がチームが完成する時だって』言ってたが、オレはどうすればいいのかわからねぇ」

 黙って聞いていた蓮が、何か思いついたような顔をした。優しい口調で、

「んっと、じゃあ染岡くんに聞くよ。例えばの話、僕とキミの二人は、小舟に乗って夜の大洋を航海していたとする。だけどうっかりして、明かりを海に落としてしまった。だけど、目の前には運よく漂流してきた明かりがある。……さあ、どうする?」

 染岡に質問を投げかける。
 しばらく考え込んだ後、染岡は逆に強い口調で問い返してきた。蓮にかなり詰め寄る。

「その明かりが強すぎたらどうすんだよ。俺たちは、そのまま水の泡になっちまう」

 蓮は怖がらなかった。まっすぐに染岡を見据えた。微笑をたたえると、地平線に沈もうとしている巨大な火の玉を見つめた。
 真っ赤に輝くそれは、確かに強すぎることもある。昔近づきすぎて翼を焼かれた人間がいたと学校の歌で習った。だが、無ければ生きていけないと言う事実も学校で習った。

「明かりがイカロスの翼を焼く灼熱だったらどうする? ってことか。でも、その光は僕たちを導いてくれる太陽かもしれないよ?」
「……確かに、な」

 盲点を突かれて驚いたのか、染岡は俯きながら、自分に言い聞かせるように呟いた。
 そして蓮はまだ太陽に視線を送りながら、話を続ける。

「答は使うまでわからないさ。どう思うかなんて、自分自身の問題だから。……とにかく試して体感してみなよ。それから、染岡くんが選べばいい。灼熱だと言って捨てるか、光だと受け入れて共存するかは、さ」
「吹雪の力を……感じろってのか」

 ゆっくりと染岡が顔を上げる。その顔には、怒りも悲しみもなくなっていた。
 蓮はにっこりと笑ってみせると、背伸びをする。そして軽くウィンクして見せる。

「食わず嫌いはよくない。食べてみると、あんがい上手かったりするもんだよ」
「へへ、そうだな。白鳥の言う通りだぜ。俺も昔はゴーヤがまずそうだから食ったことがなかったが、食ったら上手かったぜ」

 釣られたのか染岡も口元に笑みを浮かべると、懐かしそうに言う。くすっと思い出し笑いが時折漏れる。

「そうそう」

 試してみなきゃわからないのだ。
 吹雪の穏やかな人柄はスキーの特訓で理解した。蓮としてはいい人間だと思っている。後は、染岡がわだかまりを解き、直接理解してくれればいいのだが……

〜つづく〜
学校明けの初☆小説ですb学校では友とイナイレについて語りまくり、この数日は本当にヘブンズタイムです^^
にしても、いやあ、今日も暑かったですね。残暑? でしたっけ。酷暑とか炎暑とか……いろいろ聞くのでこんがらがってきました;;

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.149 )
日時: 2010/09/04 18:46
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

>> 空梨逢
面白すぎとかマジ横殴り攻撃ですよ〜
福岡はまだまだ先^^;今一生懸命セリフだけを練っているところ。感動的なシーンを狙いたいけど、俺の残念すぎる筆力じゃ無理すぎる気しかしねぇorz……福岡までこれからも頑張って行くし、ジェミニ戦ではアイリスも戦ってもらうぜ!

>>薔薇結晶様
あ〜お詳しい。そういえば、前にイナズマワールドブログに書いてありましたね。声優さんはちらっと見る程度で、知っている人はほんとに僅かです^^;。

知っているのはガゼル=岡村君(?)、バーン=シンジとかくらいです。

オリキャラですか……今日は時間がないので、また次回に必ずお邪魔させていただきます!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.150 )
日時: 2010/09/05 00:04
名前: 癒玖刃 ◆RkKLSqUPDc (ID: IsQerC0t)

(⌒▽⌒)/゜・*【ネ兄】*・゜\(⌒▽⌒)
小説☆カキコ2010年夏・小説大会優勝おめ!
流石!投票した会があるなぁ〜!うれしいよ!投票した人の作品が優勝するなんて!始めてです(生徒会役員決めとかの時投票する人が連敗だったがふっきれた!)本当におめ!
これからも頑張れ!応援してるよ!
O(≧▽≦)O ワーイ♪優勝おめ!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.151 )
日時: 2010/09/05 00:13
名前: 薔薇結晶 (ID: fYNkPhEq)

本当だわ!!(誰

しずくさんの作品が優勝してる!!
きゃ———!!
本当に投票してよかった!!(何気にしてたんです
おめでとうございます!!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.152 )
日時: 2010/09/05 00:19
名前: 癒玖刃 ◆RkKLSqUPDc (ID: IsQerC0t)

サイコーーーー!
今にでも家の窓からしずく様は神様だぁぁぁぁぁぁ!と、叫びたい!
でも、うれしい!
小説ユクハ「おめでとうございます!」
トワ(小説オリキャラ)「おめでとう……しずく」
呼び捨て!?酷いな〜神様になんて口調なんですか?
でも「おめでとうございます!しずく様!
これからも頑張って更新してくださいね!
気長に待ちますから!」

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.153 )
日時: 2010/09/18 18:38
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
参照: コメント返しはまた明日します!

えーっとしずくです。
薔薇結晶さんとユクハさんのコメントを読ませていただいて知ったのですが……なんとこの試練の戦いが夏の小説大会で、し、賞をじゅじゅ、受賞ですと!?信じられません><いや、本気で賞を取れる気なんて気はなかったもので。本格コメントは3章後に!

それで本日は思いつきでアンケートの一回目をとってみたいのですが、よろしいでしょうか?
(期限・作者の気が済むまで)

☆アンケート☆
①この小説で気にいっているシーンは? 3つまでOkです!理由もあるとなお嬉しいです♪

②続いてはセリフ。これもやはり3つまでどうぞ!

③これからの展開で気になる場所は?

ありがとうございました♪

あははこれだけです^^;ひまでしたら、お答えいただけると有難いです。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.154 )
日時: 2010/09/06 18:33
名前: レモンティー (ID: an.s4YRU)

レモンティーです!
凄いですね〜優勝おめでとうございます^^
おもしろいのでがんばってください!!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.155 )
日時: 2010/09/06 19:16
名前: パンドラ (ID: 5ZyVc2k3)

アンケート答えます
①この小説で気に入ってるシーンは?3つまで○Kです!理由もあるとなおうれしいです♪

ガゼルと白鳥がコンビニで出会う(再会?)するシーン(理由・ガゼルが出てきてうれしかったから)

白鳥がガゼルを一生懸命笑わそうとするシーン(理由・2人共可愛い)

②続いてはセリフ。これもやはり3つまでどうぞ!
北海道で白鳥とガゼルが会って分かれた後の
「……私はどうすればいいのだ。」
この切ない一言が私のオンリー1です!

③これからの展開で気になる場所は?
やはり白鳥の過去ですかね。

なんか答え方があいまいですいません。

受賞おめでとうございます。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.156 )
日時: 2010/09/06 19:19
名前: 癒玖刃 ◆RkKLSqUPDc (ID: IsQerC0t)

①この小説で気にいっているシーンは? 3つまでOkです!理由もあるとなお嬉しいです♪
宗谷岬んトコですねwwあの二人は可愛i(作者ストップ
曲がひぐなくだった時点で面白かった。でもあの二人は可愛i(作者〜二度も言わなくていいから
②続いてはセリフ。これもやはり3つまでどうぞ!
「僕は確かに”変わるかも”しれないけど、”基礎部分は残して”変わって行くと思う。『人間って忘れてしまう生き物』って言うだろ? 今日の日だって、細かいことは忘れるかも。けど、風介への思いは絶対変わらない。少なくとも、風介のことは絶対に忘れたりしない。この46億年間だっけ? 変わらない海と同じで」

③これからの展開で気になる場所は?

沖縄ですねww

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.157 )
日時: 2010/09/06 19:21
名前: パンドラ (ID: 5ZyVc2k3)

すいません③番間違えました。
真・帝国です。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.158 )
日時: 2010/09/11 16:52
名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 2lvkklET)

 日が完全に傾き、空には薄藍色が広がり始めた。昨日見た宗谷岬の空とは違い、見える星の位置はだいぶ異なっている。北海道と言っても、宗谷岬はもっと北。緯度が違うだけで、こんなにも星は違うものかと蓮は心の中で感心していた。
 星明りだけを頼りに、スキー板を抱えた染岡と蓮はゆっくりと白恋中学校へと足を進めていた。雪上の歩き方もなれ、歩くように進むことができる。
 闇色に染まった木が、時折さわさわと風で音をたて、ふくろうが鳴く声が夜のしじまを震わせる。一人でいたら完全に怖くて、足がすくむだろう。染岡が隣にいるのが心強い。改めてみると、彼のこわもてはどこか男の貫禄(かんろう)を感じさせる頼もしいものな気がしてくる。
 ますます冷え込みも激しくなり、ジャージだけでも身震いが起こる。蓮は手袋をこすり合わせた。雪が溶けた手袋もまた寒さの原因だろう。横では染岡が手袋をはずし、手に白い息を吹きかけていた。

「そっか。ジェミニストームの襲撃予告があったのは、昨日のお昼だったんだ」
「ああ」

 蓮は、染岡から自分と塔子が不在だった間の話を聞いた。
 遭難していた吹雪と出会い、成り行きで白恋中学校と試合をしたこと。吹雪はDFもFWも優れた稀有(けうな能力の持ち主であること。……そして、ジェミニストームから昼過ぎに襲撃予告があったこと。
 吹雪のことにも興味を持つべきなのだろうが、蓮はジェミニストームの襲撃予告を受けた時間が、昨日の昼だと聞いてほっとしていた。涼野は、風介は無関係だと信じられたからだ。だが一方で自分が、みんなはきちんとサッカーしていたのに、遊び倒してしまったと言う咎められるべき行為に対する、後悔の思いも生まれたが。

「……そっか」

 安堵と後悔が混ざった複雑な気持ちを、蓮は北海道の澄んだ空気に吐き出した。気持ちを切り替えるように、思い切り深呼吸をする。
 染岡も蓮のまねをして体を伸ばしながら深呼吸をし、

「ところで、白鳥は”あれ”どう思う?」
「今日見につけた”あれ”か。きっとジェミニストームにも太刀打ちできるよ」
「ああ」

 はっきりと頷いた蓮は、染岡とこぶしを軽く合わせた。
 そして、時は来る——

 約束の日——昼過ぎ。
 今日の空模様は悪い。一雨来そうな分厚いねずみ色の雲に覆われていた。空までもが宇宙人の襲来に脅えているとでもいうのだろうか。
 曇天の白恋中学校のグラウンドに、雷門イレブンは整列していた。フィールドの外では夏未たちが、不安げな表情で雷門イレブンを見守る。白恋の生徒たちは、危険だと言う理由で校舎内に待機させている。試合前だが、相手側のフィールドには誰もいない。
 瞳子が腕時計を見た。長針と短針が、”12”の位置で重なった。その時。

「うっ……」

 蓮が小さくうめいた。
 胸が異様なスピードで、鼓動を打つ。胸を誰かに鷲掴み(わしづかみ)にされた様な痛みが、身体に襲い掛かってくる。奈良の時と同じだ。
 痛みで、視界が霞んでいく(かすんでいく)。冷や汗がどっと体中から噴出し、雷門イレブンの姿が陽炎のように揺らめく。
 何か、空を切る音がする。でも、何が降っているのかは、ぼやけてよく見ることができなかった。息がつまり、呼吸ができず苦しい。蓮は、喘ぎ(あえぎ)ながら、自分の身体が地面へと投げ出されるのを感じていた。だが、地面に顔が着く前に逞しい腕——恐らく円堂だろうが、腕を支え、引っ張り上げてくれた。霞む視界に、円堂がはっきりと映りこむ。

「白鳥!」

 声はやはり円堂だった。円堂くん……と彼を頭で認識はする。だが痺れたように(しびれたように)脳は思考をとめてしまい、ぼーっとするだけであった。声が出てこない。

「大丈夫か!?」

 円堂は、焦点の定まらない目をした蓮を何度も、何度も激しく揺らす。蓮は浅い呼吸を繰り返しながら、虚ろな(うつろな)黒い瞳を、ただ円堂に向けるだけであった。

「ふん、愚かな地球人どもめ」

 そこに聞き覚えのある声が響いた。
 
〜つづく〜
はい、いよいよ北海道編ラストスパート!痛みの描写って難しいですね……

 

 

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.159 )
日時: 2010/09/07 17:02
名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: XHLJtWbQ)
参照: アンケートはまとめて♪涼野の人気にないた

コメント返し
>>ユクハさん
ええ、こんなダメダメ小説に投票してくださったんですか!?あくぁ嗚呼ああああ、ありがとうございます!いえいえ、神様はユクハさんのほうですよ。
これは、イナズマイレブンって言うすばらしい原作をだいなしにしているだけですって^^;神様なんかじゃありませんよ^^;

>>薔薇結晶さん
投票ありがとうございます!
私は自分の小説以外のイナズマイレブンには、たいてい投票して、その中の誰が一番になるかと思っていただけに、驚きが倍増です。いやこんな恋愛要素がない、だらけた文章はさぞかしつまらないだろう……っていうのが自分の感想です^^;カキコ見てると、恋愛がすごくうまい人とかいて、こういう人が優勝するんだろうな〜って思ってましたもん。ところで薔薇結晶さんも小説図書館に登録していましたよね?私、投票しましたよ(確か)^^薔薇結晶さんのほうがすばらしい作品だと思っています。

>>レモンティーさま
初めまして^^応援ありがとうございます!これからもがんばって行きたいと思います^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.160 )
日時: 2010/09/07 17:10
名前: パンドラ (ID: VWN9kw8v)

更新がんばってください。応援してます。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.161 )
日時: 2010/09/09 19:41
名前: ふぁいん (ID: LUfIn2Ky)

あげ!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.162 )
日時: 2010/09/13 20:14
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
参照: 飛べた頃の記憶は、すり傷の様には消えてくれない

「ジェミニストーム!」

 円堂が吠える。
 いつのまにか、誰もいなかったグラウンドにジェミニストームの姿があった。人数も11人、顔ぶれも前と同じ。変わらず余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)に前髪を掻きあげたり、欠伸をしたり。ひどいものは、試合前にもかかわらず、アニメの萌えキャラについて語り合っている者までいる。
 そこへレーゼが円堂の近くまで進み寄ってきた。

「逃げはしなかったか。称賛に値する行為だ」
「オレたちは逃げも隠れもしない!」

 つんと円堂は言い返した。
 それから蓮を地面に横たえると、夏未と春奈を呼んで、蓮をベンチに連れて行かせた。蓮は浅い呼吸を繰り返しながら、ぐったりとし、夏未と春奈に肩を預けている。

「強がりだな? 今度も我々の力にひれ伏すがいい」

 レーゼは蓮に視線を送りながら、挑発してくる。
 悔しくて円堂が言い返そうと前に出た時。白い手が円堂が前に出るのを制した。

「どうかな」

 吹雪はゆっくりとレーゼに歩み寄ると、にこやかに微笑みかける。

「この雷門イレブンは、特訓して強くなったんだ。キミたちにだって、負けないと思うよ」
「特訓だと。ふん、笑わせてくれるわ」

 鼻を鳴らし、レーゼは冷笑を浮かべた。

「人では、我ら宇宙人の力などに到底及ばぬわ。地球にはこんなことわざがあるだろう……高根の花」
「高根の花だって言うのは、とれない人の言い訳だ。とれる人だっているんだよ?」



 ボールが大きく跳躍し、ジェミニストームのゴール側に落ちる。ジェミニストームの選手は、とろうと走るが、風丸にボールを奪われた。
 雷門イレブンは、吹雪の言う通り大きくパワーアップできたのだ。ジェミニストームのスピードに追い付けているし、仲間内のパスもしっかりと通っている。
 朦朧(もうろう)とする意識の中、ベンチに座る蓮はしっかりと試合の成り行きを見据えていた。ぼうっとする黒い瞳に、空中に上がるサッカーボールが映り込む。
 胸の痛みこそ治まったが、今度は頭がくらくらする。熱でもあるかのように、脳から思考が奪われ、ただ見ることしかできない。それでも想いは、胸から絶えず込み上げてくる。
 ——僕も雷門イレブンなんだ。フィールドを駆け回って、みんなと一緒に戦いたい
 見ているだけなんて嫌なのだ。
 なんのために自分はキャラバンの旅に参加しているのか。そう、エイリア学園を倒すためだ。なのに自分一人だけベンチに座り、応援するだけになっているではないか。なにもできない悲しさが、蓮の心にのしかかってくる。
 戦いたい。早く痛みなんかなくなれ、と身体に命令してみるが、響くような痛みは断続的に脳を襲う。蓮は息を吐きながら、額を片手で押さえる。視界がまたうすぼんやりとし始めた。刹那、脳裏に鮮烈(せんれつ)な映像が浮かび上がってくる。まるで、映像だと忘れさせるような現実的なものだった。
 
 暑い、夏の日だった。
 目に痛いほど青い空。灼熱の太陽がアスファルトを温め、陽炎のように風景が揺れている。周囲には、蝉が狂ったように大合唱をしていて、耳に痛いほどだ。 どこかの住宅街だろうか。塀がどこまでも続き、多くの家が立ち並んでいる。
 
「うっ……いたいよぉ」

 幼い子供の情けない声が聞こえた。
 ふっと足元に視線をやると、サッカーボールを抱いた小さい蓮がアスファルトに、うつ伏せになって泣いていた。
 その顔はぐしゃぐしゃで、その目は涙ですっかり充血しきっている。青い短パンから覗く膝小僧が擦れていて、小さなすり傷になっていた。周りに砂利がくっついている。
 ああ、転んだのか……と”今”の蓮は思う。
 小学校4年生になるまで、自分は泣き虫だった。転べばなき、叩かれれば泣き、よく友にからかわれていた。本当に思い起こすと恥ずかしいくらいに気弱で、我ながら小学校時代は闇に葬り去りたい。でも、過去は確かにあったのだ。消し去ることなんてできない。
 蓮は呆然と幼い自分を見つめていた。
 と、幼い蓮がふっと顔を上げる。そこには塀があった。
 なんで塀に向かって顔を上げるんだ? と”今”の蓮はじげしげと幼い蓮を見る。
 それからあどけない笑顔を浮かべて、うんっと声を出す。声の方向には塀しかない。幼い蓮は、サッカーボールを横に押した。
 急に元気になった幼い自分は、手のひらを空に向けて立った。傍から見ると、誰かに向かって手を差し出し、その誰かに手を掴まれて立ったように見える。しかし、そこには誰もいない。
 立ち上がると、地面に落としたサッカーボールを両手で持ちながら、住宅街の奥にかけて行く。

「——! ——!」

 誰かの名を呼びながら。
 でも、よく聞き取れなかった。妙な雑音が混じり、幼い自分が呼ぶ人物の名がわからない。それでも、とても温かい気持ちになり、蓮は頬笑みを浮かべた。
 幼い蓮が遠ざかって行く中、風景が歪み始める。ぼんやりと幼い背中がかすんでいき、風景がチョコレートのように溶けていく。待ってと言っても、待ってくれない。
 やがて意識の片隅に甲高く長く尾を引く音がした。前半終了を告げる、ホイッスルの音。それが合図だったかのように、周りの風景が白恋中学校のグラウンドに戻った。

〜つづく〜
受験で更新ペースが落ちていて申し訳ありません;;
北海道編も終わりに近いのに、グダグダです……
なんか蓮の過去話で前半潰したのは、試合描写がめんどくさいからではりません!(実際それに近いんですがね^^;)

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.163 )
日時: 2010/09/11 18:09
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

>>パンドラさん
ああ、この前はアンケート出していただいたのにコメント返ししていなくてすいません;;時間がなくて急いでいて忘れていました;;本当にすいません!

今は北海道を終わらせられるよう頑張ります^^
なんか試合描写って難しいですね。プロットを練ってますが、上手くいくか心配です^^;

>>ふぁいんさん
あげ感謝ですb
受験で来れない日が増加すると思うので、気長に待っていてくださいね♪

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.164 )
日時: 2010/09/11 18:10
名前: レモンティー (ID: an.s4YRU)

しずくさん来ましたよ^^
凄い!私に才能をください!!
頑張ってください☆

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.165 )
日時: 2010/09/14 19:07
名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 2lvkklET)
参照: 見えないトオイトオイ記憶

(ここ、白恋中学校だ)
 
 蓮はぐるりと辺りを見渡した。
 雷門イレブンがグラウンドに立っている。
 白く残った雪、倉庫のような木造家屋。ぼーっとする頭を覚ます切る様な冷たさ。間違いなく北海道だ。

(なんでだろう。なんかひどく懐かしい夢を見ていた気がする)

 蓮は目を細めて、ねずみ色の空を見上げた。
 あれは間違いなく幼いころの記憶だった。階段から落ちて失ったはずの暑い夏の日。何故いまさら思い出したのだろう。
 考えながらフィールドの右側に目をやると、青ざめているジェミニストームのメンバーたちがいた。全員が目を見開き、フィールド脇の一点に視線を据えている。
 蓮はジェミニストームメンバーの視線を追うと、そこにはスコアボードがあった。白く大きな文字で「雷門1:ジェミニ1」と書かれている。その文字を見た瞬間、蓮の心が躍った。
 身体はうまく言うことを聞かず、座ったまま蓮は思いっきり笑う。
 雷門イレブンは、ジェミニストームと互角(ごかく)になったのだ。眠っている間に行われたであろう、苛烈(かれつ)な試合が脳裏に浮かぶ。
 同時にフィールドに立ちたいと言う思いが心の奥底から湧き上がってきて、胸を締め付ける。

「白鳥」

 肩をたたかれていることに気づき、蓮ははっとして現実に戻る。後ろを振り向くと、円堂が瞳子と共に立っていた。

「あ、円堂くん」
「大丈夫か?」

 円堂が蓮の隣に腰掛け、心配そうに覗き込んでくる。

「うん。頭がぼうっとするけど、大丈夫」
「……そっか」

 心配させてはならないと、蓮は作り笑いをした。それでも顔は素直で、すぐに潤んだ目があらわになる。
 円堂は瞳を陰らせて、瞳子を見つめる。瞳子は円堂に何か目配せをし、蓮に視線をやる。
 しばらく円堂は黙って考え込んでいたが、やがて何か決め込んだような表情で、ちらっとグラウンドを見てから蓮に向き直った。

「栗松が……あんな状態なんだ。後半から試合に出てほしい。出れそうか?」

 グラウンドを見ると、足を引きずった栗松が壁山と塔子に肩を支えられて、こちらに歩いてくる途中だった。どこかぶつかったのか、しきりに顔をゆがめている。
 苦しむ栗松の姿を見て、何もできない自分の無力さに愕然(がくぜん)とする。こうして苦しむ仲間がいるのに、のんきに眠っていた自分が恥ずかしい。蓮は唇をぐっと引き結ぶと、立ち上がった。

「……僕で役に立てるなら」
「お前は十分強い! 自信を持てよ」

〜つづく〜
今回もかなり短文です!9月になると本格的に受験勉強を開始するので、更新は週に一回か二回になりそうです;;
短いですが、ちょくちょくがんばっていきます!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.166 )
日時: 2010/09/14 16:52
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: XHLJtWbQ)

>>レモンティーさん
いえいえ、私のような若輩者に才能なんて微塵もありませんよ^^;むしろ私のほうがレモンティーさんのような才能がほしいです。今日は行けませんが、今度必ずレモンティーさんの小説を見に行きますね^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.167 )
日時: 2010/09/15 18:45
名前: ふぁいん (ID: 2lvkklET)

こんばんはぁ!変わらず上手いですね!
蓮君ずいぶん苦しそうだけど大丈夫なんでしょうか!?更新楽しみにしております!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.168 )
日時: 2010/09/17 21:49
名前: 薔薇結晶 (ID: Pc9/eeea)

どうも☆お久です!

突然ですが、なんかオリ技考えたんで、見てください。(紅葉と蓮君です)


公孫樹吹雪(いちょうふぶき)

イメージ:2人が印を結んで、公孫樹の葉とボールを舞わせて、相手の視界を塞ぎながらボールを奪う技。

ブロック技です。いかがですか?

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.169 )
日時: 2010/09/21 18:02
名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 2lvkklET)
参照: 私が求めるものは何?ひぐらしより

「われらに敗北は許されない! 絶対に勝つのだ!」

 レーゼが士気を高めるように、ジェミニストームたちに掛け声をかける。
 ジェミニストームたちから、どこか余裕ぶっていた態度は消え去り、絶対負けられないという気迫が滲み出ている。
 口を真一文字に結び、きっと鋭い目つきで雷門イレブンをにらみつける態度は、後に引けない覚悟がそれをさせているのだろうか。だが、雷門イレブンもまた負けじと睨み返す。視線と視線がぶつかり合い、北海道の澄んだ空気を熱くしていく。
 やがて、後半開始の合図であるホイッスルが吹かれた。
 染岡が、後ろにいる鬼道へとボールを蹴る。途端、フィールドを黒い影が残像すら残さずに突進し、あっという間もなくボールを奪い去る。——レーゼである。

「くっそ」
「リーム!」

 悔しそうに舌打ちをする染岡を尻目に、レーゼは、雷門の陣地をかなりのスピードでかき乱していく。
 まず鬼道と風丸がとめようとして、フェイントをかけられる。一人で突進するように見せかけ、がら空きの右サイドにいつのまにか進んできていた、やや暗めの桃色の髪で片目を隠し、後ろ髪は風に舞い上がったかのような状態で固定されている選手——リームにパスをした。
 パスを受け取った直後、リームは再びレーゼに向かってボールを蹴る。恐ろしい位速い。MFの頭上をボールがむなしく通る。ボールをとろうとしたDFである壁山の頭上を、ボールが放物線を描きながら通り過ぎて、レーゼにとられた。DFもとうとう抜かれた。
 ——残るは、ゴール前にいる蓮と、大急ぎで下がってきた塔子のみ。
 どのような行動をするのかと構える二人の前で、

「レーゼ様!」

 レーゼは急にボールを頭上に蹴り上げ、ボールの後に続くように大きく跳びあがる。リームもまた、同じように跳んだ。
 とたんボールが静止する。だが直後、激しく回転を始め、回転するたびにどんどん緑のオーラをまとい、そのオーラはやがて木星をイメージさせるような形でとまる。
 ちょうど二人が静止したボールの高さにまで跳びあがるころ、ぶわっとオーラが弾け、黒い煙が広がる。
 すると煙が広がった部分にだけ、空に円形の穴が開いた。ボールの背後の穴の中では、藍色の空に、銀砂(ぎんしゃ)を零したような星たちがたくさん瞬く。その星に混じり、理科の教科書でみるような木星や、多くの惑星が輝く——奇妙な空間が広がっていた。力強く輝く星たちは美しく、そのままその世界に突入したくなる。
 綺麗……と蓮は半ば見とれかかっていた。

「<ユニバースブラスト>」

 高々と叫ばれたレーゼとリームの声で、それがシュートなのだと気づかされ、蓮は身構える。
 円形の穴部分の上空に到達した二人が、足の裏を思い切りボールにぶつける。
 美しいと思っていた空間が伸びる。丸いネットが伸びるように、宇宙空間は丸く伸びてくる。もはや宇宙の神々しさはそこになく、黒いエネルギー体を纏う(まとう)ボールが、空気を切り裂いて円堂へと襲い掛かろうとしてくる。
 冷たい空気が一段と冷え込み、半袖である雷門イレブンの体を容赦なく冷やす。多くの仲間たちは身震いし、しゃがみこむ。
 
「白鳥! 塔子!」

 だが最後の砦である二人は違った。
 塔子は勇敢にもボールに向かうと、手のひらを上空に向け、下まで下ろした。

「<ザ・タワー>!」

 茶色いレンガ造りの塔が、ボールの行く手を阻むように現れる。だが、黒いボールはあっけなく塔を粉々にした。塔が消え去り、塔子が地面に叩きつけられる。
 すると今度は、蓮がボールの前に立ちふさがる。

「<ブロック・スラッシュスノー>」

 間髪いれずに、足を振り子のように動かした。
 蓮が足を動かした跡に沿って、地面から多くの雪がぶわっと湧き出し、一枚の雪の壁を作り出す。青白く、体の芯まで凍えそうな冷気を放っている。
 ボールと雪がしばらくぶつかり合うが、やがてボールが雪のカーテンの中から飛び出てきた。蓮がひっくり返り、地面に体をぶつける。

「ふん。カットしようと、無駄な話だ」

 レーゼは地に横たわり、苦しそうに呻く二人を見下す。
 だが蓮はゆっくりと顔だけをあげると、円堂に微笑みかける。

「威力は弱まったはずだ。……円堂くん!」
「<ゴッドハンド>!」

 塔子と蓮の意図を察知した円堂は、黄金色の巨大な手を作り出し、鈍く輝くボールに当てる。
 <ゴッドハンド>が、ぱっと金色の円を描きながら光って消える。円堂の手のひらには——しっかりと、サッカーボールが握られていた。雷門イレブンから、大きな歓声が上がる。

「なに!? 我らの<ユニバースブラスト>が——」

 ずっと冷静でいたレーゼの表情に初めて、驚きの色が浮かんだ。
 円堂は仲間たちにガッツポーズをとると、ボールを持った手を大きく振り上げる。

「反撃だッ!」
「行かせるな。我等には勝利しか許されない!」

 同時にレーゼが焦ったように、慌てて指示を出す。
 MFたちを経由してボールを持って攻めあがっていた染岡は、見る見るうちにジェミニストームのメンバーに取り囲まれてしまう。
 
「くっそ! ごちゃごちゃとうぜぇな!」

 困ったように染岡は味方の姿を探す。
 近くにいるメンバーは、ジェミニストームに張り付かれ、ボールを回しても奪われそうな状況にあった。万事休すか……と染岡が諦め掛けた時。身震いがした。嫌いな虫がはいずるようなぞくぞくとした感触がし、視界の端っこで白いものが動いた。風にたなびく白いマフラー——吹雪。囲まれている自分の外側を、悠然と走り抜けている。
 ジェミニストームのメンバーは張り付いていない。
 染岡は、ぐっと唇を引き結ぶと、蹴ろうとわざと後方にいる鬼道の方に向き直り、足を引いた。
 ジェミニストームの選手が、パスをさせまいとパスコースを封じるように動く。

「……おらよ!」

 急に染岡はくるりと向きを変えると、走っている吹雪に向かってボールを思い切り、蹴りつけた。ジェミニストームの間をうまく突き破り、ボールは吹雪の元へと向かう。
 狙い通りといわんばかりに吹雪は口元に笑みを浮かべると、胸元で受け取り、ゴールへ向かって進む。

「染岡くん」

 ようやく円堂が願っていた行動をした。
 蓮は立ち上がると、ふっと笑う。周りをぱっと華やぐような明るい笑みだった。つられて円堂も笑っていた。

「何のつもりだ?」
「お前、いい動きしているじゃねぇか。食ってみれば意外とうまい、か。なるほどな」
「いみわかんねぇな。でも、ナイスパスだぜ、染岡」

 吹雪がそう言い、ゴールに向かって行く。
 並列して走っていた染岡は、小さくなる吹雪の背中を見つめながら口元に笑みを浮かべていた。

「後は任せな。<エターナルブリザード>」

〜つづく〜
一週間ぶりで〜す!スローですがこれからもがんばりますb本当ならここ、染岡と吹雪のボールを取り合うシーンを書きたかったのですが(ゲームのやつ)、都合上なくなくカット;;後、クリア様に考えていただいた技もやっと出せました〜おそばせながら、ありがとうございました^^

どうでもいいことですが、3章終わったらちょっとした企画やります。小説大会で投票して下さったみなさまへの恩返し的な意味で、短編リクエスト〜!

すいません、絵とか苦手で小説でしか返せそうになくて;;詳細は後日発表します♪

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.170 )
日時: 2010/09/21 17:53
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

>>ふぁいんさん

ううううう上手いだなんてとんでもない!><
若輩者の書くちょ〜腐った駄文ですよぉ^^

蓮の方は今のところは大丈夫ですbいつも書いていて彼を苦しめている自分に嫌悪感を覚えます;;

>>薔薇結晶さん
お久です^^
お〜始めてきましたね、蓮との連携技!
とっても嬉しいです!使うべき時が来たらきちんと使います♪まずは北海道を終わらせないと^^;

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.171 )
日時: 2010/09/28 16:49
名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: XHLJtWbQ)

 氷塊が回転しながら、ゴルレオに向かう。
 冷気が激しく波打ち、場の空気を一段と冷え込ませる。時折氷の破片が、花弁のように風にあおられる。暗雲の元で、キラキラと煌く。
 初めて見る<エターナルブリザード>は、<ファイアトルネード>を負けないほどの迫力がある。この子ならきっと雷門イレブンを支えてくれる——そんな思いが、心の底から湧き上がってきた。
 心なしかゴルレオの顔は青ざめ、膝がガタガタと震えているような気がする。だが気合を入れるように片手にこぶしを作り、掌(てのひら)にたたきつける。
 <技>は使わず、無謀にも片手でボールを押さえつけてきた。前回と違い、その顔から余裕は消えている。回転を続ける氷塊は、ますます勢いを増す。
 ゴルレオは、ぐっと踏ん張って見せるが、じりじりとボールに抑えられていた。
 やがてゴルレオは力負けしたらしく、ボールごとネットに体を叩きつけられた。ネットから零れ落ちたボールが、虚しくコロコロと転がり、やがて静止した。同時に甲高い音が一回鳴り響き、続いて長く響く音がフィールドを振るわせる。

「勝ったぞッ!」

 円堂が腹の底から大きな歓声を上げた。やがて水の波紋が広がるように、雷門イレブンは、次々と喜びの声をあげる。
 その時吹雪の髪が垂れ下がり、大人しめないつもの吹雪に戻っていたが、誰も気づかなかった。
 蓮もふらつく身体ながらも、懸命に拳を宙に突き上げ、横にいた風丸や円堂と肩を組む。だがふっと気が抜けてしまった。やっという安堵感に身体が支配され、必死に保っていたものが崩れる。蓮は軽く微笑むと、そのまま意識は深淵へと引きずり込まれた。長い間無理をして戦っていたが、もう限界。身体はだるさに覆いつくされ、眠気が再度込み上げてくる。今度ばかりは身体の衝動に身を委ねるしかない。 蓮は眠るように目を閉じ、身体が再び前に投げ出され——かけて、風丸と円堂がが慌てて蓮の身体を前から支える。二人で蓮の肩をそれぞれの肩に手を回す。

「白鳥にずいぶん無理させちまったな」

 風丸が、蓮を優しい眼差しで見つめながら言う。
 意識を失った蓮の寝顔は非常に穏やかで、満足そうな表情をしていた。

「ああ。白鳥のやつもとても頑張ってくれたよな」

 円堂は眠っている蓮に軽く微笑みかけ、労う(ねぎらう)ように頭を撫でる。風丸もまた穏やかな笑みを浮かべ、蓮の頭にそっと触れる。

 穏やかな空気が流れる雷門と違い、敗北したジェミニストームは慄然と雷門イレブンを見つめていた。顔から血の気は失せ、呆然と立ち尽くしている。足が小刻みに震える。
 誰かが弱弱しい声でレーゼ様、と呟く。とたんすがるような視線をジェミニストームがいっせいにレーゼへと向けた。レーゼはたじろいだ仕草をし、逃げるように一歩後進した。

「——どこへ逃げる気だ? レーゼ?」



「うっ……」
「白鳥?」

 しばらく穏やかに眠っていた蓮が突如呻いた。浅い呼吸を繰り返し、顔中に冷や汗が張り付いている。
 蓮の急変に気づいた風丸が円堂と共に、蓮の身体を激しく揺さぶる。すると蓮はうっすらと目を開けた。

「白鳥?」

 円堂が心配そうに蓮の顔を覗き込む。蓮は、魂を抜かれたように揺さぶっても反応しない。痛みを必死に堪えているのか、顔が時折苦痛によってゆがめられる。
 瞳子を呼ぼうと円堂と風丸が顔を上げると、フィールドからジェミニストームの姿がなくなっていた。まるで初めから存在しなかったかのように、気配すら残っていない。冷たい一陣の風がフィールドを吹きぬけた。風が声を運んでくる。

『ふん。ずいぶんと愚かな連中だな』

 とても低い中年のおじさんを思わせる渋い声。円堂はあたりを注意深く見渡すが、誰もいない。白い雪が積もるだけ。
 その声を聞いたとたん、蓮は苦しげに身をよじる。

「誰だ!」

 警戒心をあらわにしながら、円堂が声の主に吠える。声はふんっと鼻で笑う。

『私か? 私の名は『デザーム』。エイリア学園ファーストランクチーム『イプシロン』のキャプテンだ』
「イプシロンだって?」

 新しいチーム名が聞こえ、雷門イレブンに緊張と不安が走る。皆、強張った面持ちでせわしく辺りを見渡すが、声の主は見つからない。

『そう不安げな顔をするな』

 まるで見ているかのような発言に、雷門イレブンは雷に打たれたように呆然とする。

『だが我々に挑む気があるのならば、京都へと足を運ぶがよい。そこでわれらは貴様ら雷門イレブンをまとうではないか。ははははっ!』

 再び北風が吹きつけ、高笑いを持ち去っていく。風がやむころには、空気はしんと静まり返っていた。声はするはずもなく、何もかも風が持ち去ってしまったようであった。

〜三章完〜
よよよよよよようやく三章終わりました!
でも次章予告はまた明日だったり^^;

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.172 )
日時: 2010/09/28 18:23
名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 2lvkklET)
参照: 調子に乗って技募集も追加してみた

小説大会恩返し!短編リクエスト募集!用紙は↓

用紙
あなたの名前()

分類(小説のサイドストーリーorカップリング)

誰と誰の話?()

内容()

おまけ

蓮の技募集

技の分類(シュートorブロックorドリブル)

パートナー(いれば)()

技のイメージ()

しずく「このたびは皆様のおかげで賞受章!マジで感謝感謝……こんな若輩者に投票してもらえるなんて、涙で文字がdhvkfsdhvk」

雫「お礼言うのおせぇよ! 受賞からどんだけ後!?」

しずく「途中で小説断念するのは気持ち悪いので。でも本当にみなさんに恩返ししたくてしたくて!(滂沱)三章を早く完結させました!」

雫「でも、試合がちょっと物足りなかったな」

しずく「あ〜<アストロブレイク>とか<ブラックホール>出してないからね。別の章で全然違う人が使う予定。秘伝書サイコー」

雫「まあ、しずくの頭は超次元だからな……あえてつっこまないようにするぞ。ところで、今回はみなさんに感謝を込めてリクを募集するんだな? 内容を説明してくれ」

しずく「えっと今回は、小説のサイドストーリーorカップリングのリク募集です。種類は2つ。蓮とイナイレキャラたちのサイドストーリーか、よくあるカップリングのやつをできる限り頑張って書きます!例はこんな感じ
用紙
あなたの名前(しずく)

分類(小説のサイドストーリー)

誰と誰の話?(蓮とペンギン)

内容(蓮とペンギンがいちゃつく話。海で一緒に泳ぐ!)」

雫「いみわかんねぇ!ペンギンといちゃつくとかどんな話だ!?」

しずく「内容のとこにシュチュエーションは、簡単でいいので書いてください!買い物とか遊園地デートとか。お任せにするとたぶん駄文量産するので、できれば書いてください。とりあえずまずは二人分募集です。あ〜でもリクがくるか不安だ;;」

雫「ま、来る事を願うか」

しずく「願ってます。後、蓮の技も企画に入れます! 許されるなら氷のイメージか光のイメージのシュート技がほしい!」

雫「なんで技まで募集するの?」

しずく「面白ろそう。そして、私よりきっと面白い技が来るはずだから!」

雫「まあ企画としてはそんなもんだろ。ってか他の書き手さんの企画パロったな?」

しずく「どきぃ(←汗だらけ)。え、えっと……技募集って面白いかなって。おもって、さ。すいません。影響受けました。ごめんなさい」

雫「まあ……こっちも来るといいな」

しずく「まじです。こっちも切実に願ってます」

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.173 )
日時: 2010/09/28 17:51
名前: 空梨逢 ◆IiYNVS7nas (ID: .9bdtmDI)

用紙
あなたの名前(空梨逢クリア

分類(小説のサイドストーリー!)

主な相手(アイリス)

内容(風丸とアイリスの小学生時代の話を、イレブンで語り合ってる。その横で春奈が「お似合いです!」とか言ってたら良いな!←)


キャホォォ!
素敵用紙はっけーん、突撃!(

本編読んだけど、蓮のこれからの活躍がもっと楽しみになった!
あと技使ってくれて有り難う^^
頑張ってね!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.174 )
日時: 2010/10/12 16:49
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: XHLJtWbQ)
参照: 次回は南雲さんが出てきます!

第四章 予告

新しい暗雲が襲ってきた。それは、初めは曇りだった天気が、小雨となるように——曇り空より、もっともっと苦難に満ちたものであった。それでも彼は戦うことを止めない。必死に抗い、戦い続ける。

そんな彼の前に、再び邂逅(かいこう)が訪れる。思い出せない記憶。封じられたツナガリ……いったいそれはなんなのか


イナズマイレブン〜試練の戦い〜第四章「闇からの巣立ち」

雛鳥の行く先は……天国か。それとも地獄か。

おまけ イナズマイレブンCMパロディ劇場(元ネタ何年か前のいんりょうすいのCM)

♪燃焼系 燃焼系 イナズマ式! こんなサッカー…

円堂「ゴッドハンドX!」 豪炎寺「アトミックフレア」 吹雪「ノーザンインパクト!」

しなくても。燃焼系 燃焼系 アミノ式


はい。何がやりたかったのか意味不明。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.175 )
日時: 2010/09/30 15:38
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
参照: イナズマイレブンストライカーズ欲しいけど、wii持ってない

>>クリア
おお〜お久^^突撃大歓迎さ☆いやむしろしてくれてマジで感謝! リクなんて来ないかと思ってひやひやしてたからさ><

リクの件了解!多分4章が終わり次第(?)すぐにとっかかります。気合入れて書くぜよ〜頑張って風丸とアイリスをいちゃ(強制終了)。てへへ妄想すると鼻血が…。。。いかんいかん。


技も考えてくれてありがとうだよ^^あたしは発想力ないからねぇ……クリアの力が羨ましいv

ではでは、コメントありがとう^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.176 )
日時: 2010/09/30 05:39
名前: 薔薇結晶 (ID: hF19FRKd)

技募集しよぅ!!
…採用されるかは別として。


“グローウィングシャイン”

シュート技です。
ボールを上に蹴り上げると、(キーパーの角度から皆既日食に見える高さ)ボールが輝き出して、そこでオーバーヘッドキック!!!
…みたいな。

すっ、すみませんでした————————っっっ!!(逃

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.177 )
日時: 2010/10/09 14:50
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

第四章 闇からの巣立ち

「イプシロン……」

 デザームの声が消え去った後、円堂が呟いた。
 同時に蓮は身体が一気に軽くなるのを感じる。胸の痛みも、頭のぼうっとする感覚も全てが治まっていた。まるで熱が出た翌日に、一眠りするとだるい気分がなくなっているような——そんな状態がたった数時間で起ったのだ。
 何でだろう、と蓮は誰もいないフィールドを見つめながら思案する。ジェミニストーム、イプシロン。彼らに出会うと己の身体は、確実に痛み出す。彼らの、——デザームは声だけだがからは強い”何か”を、言葉では表現できないエネルギーを感じる。宇宙人だからか、感じたことのない禍々しく邪(よこしま)な力。そういえば同じエイリア学園でも、ライザーシルフからはその力はまったく感じられなかった。それは何故なのか。
 多くの疑問が泡のように浮かんでは消える中、風丸と円堂の肩に置かれた手を、蓮は自分の意思で下ろす。病人だった蓮が急激に回復したことに気づいた二人が、びっくりして見やってくる。

「白鳥! 身体はもう大丈夫なのか?」

 風丸が心配げにたずねてきて、蓮は半ば堂々巡り(どうどうめぐり)になりかかっていた思案をやめた。気分を切り替え、軽く跳ねてみせる。

「ほら! もう大丈夫だ」
「本当だ。すっかりよくなったみたいだな」

 蓮が元気そうにジャンプする光景を見て安心したのか、円堂と風丸の二人は安堵(あんど)の表情を浮かべる。が、風丸が腕組みをし、何かに気がついたような顔をする。

「いつも思うんだが、白鳥はどうしてエイリア学園が来ると苦しみだすんだ?」

 蓮は跳ねるのをやめると、頭の中でしばし考えをめぐらせ、つっかえつっかえに自分の考えを説明する。

「よくわからないけど……えっと、あいつらからは、なんというか……途方もなく強い”エネルギー”を感じるんだ」
「”エネルギー”?」
「その”エネルギー”に身体が反応して——とても強い痛みを感じるんだ」
「それってアレルギーじゃねぇか?」

 そこへひょこり染岡が吹雪を引き連れて、会話へ割り込んでくる。みんなは一斉に染岡と吹雪に視線を向け、蓮が続きを促す。

「染岡くん。アレルギーって?」

 ただ思いついただけなのか、染岡は少し戸惑いがちに頭を掻く。

「なんつーか食べ物アレルギーってあるよな? その食べ物食うと、身体に発疹(ほっしん)や痣が出るってテレビでやってたんだ。つまり、だ。白鳥の身体は、やつらの”エネルギー”に反応して痛むっつーことだろ」

 その仮説に風丸と蓮が同時に、なるほど、と納得する声を漏らした。
 確かにアレルギーという仮説は正しいかもしれない。やつらの邪悪なエネルギーに身体が反応し、痛みが襲い掛かってくるのなら合点が行く。

「やつらのエネルギー体に対するアレルギーか……染岡の言うとおりかもしれないな」

 風丸が言って、蓮がうなずく。だがその瞳は少し沈んでいた。

「でもそれじゃあ、エイリア学園との試合じゃ出番が限られてしまう。このアレルギー克服したいな。今のままじゃお荷物だ……」

 蓮は思わず内心を吐露(とろ)してしまい、慌てて口を両手でふさぐ。辺りをぐるっと見渡すと、やっぱり円堂たちが、驚いたような表情で見つめてきていた。
 チームメイトに、雷門イレブンのみんなに心配をかけたくなくてずっと黙っていた思いが、口をついてでてしまった。バカバカ、と蓮は自分を激しく責め立てる。今ここで心配をかけてしまったら、身体のことでさえ迷惑なのに、チームの負担がなおさら増えることになる。自分ひとりのために、チームに迷惑をかけるのはいやなのだ。蓮は作り笑顔で、

「な、なんでもない! 本当になんでもないって!」

 慌てて両手を振ってみるが無駄だった。
 円堂が、みんなが申し訳なさそうな表情で蓮を見据えてくる。蓮は悲しげな面持ちを浮かべ、円堂たちから逃げるように視線を下にそらした。むきだしのグラウンドの土がそこにあった。

(今の僕と同じだ。むき出しになった土は人に踏まれる。そう土足に踏まれていくんだ……)

「白鳥……おまえ、まだ自分のことをチームのお荷物だと思っていたのか」
「そう」

 円堂の低い問いかけに、もはやこれまでと観念した蓮は、自虐的に笑うと、沈痛な面持ちで仲間たちに順々に目をやる。そして感情が溢れるままに叫ぶ。

「後半しかフィールドに出られないプレイヤーなんて、聞いたことない。僕はいっつも後半しか出てない。たいしたプレイヤーじゃないってわかってる。そんな自分は荷物じゃなきゃなんだって言うんだよッ!」

 蓮の語勢が徐々に強まり、最後には誰もを押し黙らせる勢いがあった。その場に居合わせた四人は、立ち尽くすことしかできない。瞳を細め、各々(おのおの)は蓮に哀れむような視線を送っている。

 いつのまにか瞳が潤み始め、言葉を零すたびに、涙は頬を伝って空中で弾けていった。キラキラと煌く水滴はそれなりに美しかった。まるで自分の奥底に溜めていた気持ちが……水を入れすぎたコップから、水が零れるように、涙に姿を変えて消えていくようだった。現に泣くのに反比例し、気持ちだけはどんどん軽やかになっていくのだ。涙で息が詰まるのも、鼻水がつまって呼吸が困難になるのですら心地よいと感じるほどに。
 こんなに大泣きしたのは、ずいぶん久しぶりだ。心地よいと感じる一方で、泣いてる自分を女々しいと感じる客観的な自分もそこにはいた。
 と、そこに鈍い衝撃がきた。誰かに殴られたのだと気がついたのは、その後のことだった。
 身体が吹き飛ばされる。北海道の冷たい空気が、半袖のユニフォームに容赦なく吹き付けてくる。身体が地面にたたきつけられ、地面に激突した右腕に鋭い痛みが走る。そのまま蓮の身体は勢いで数回転する。空の青と地面の茶色が交互に見えた。やがて空の青が再び見えたところで、身体の回転は止まる。ちょうど右の辺りから、染岡やめろ! と円堂のなだめる声が聞こえる。が、すぐに染岡が、三白眼で自分を見下ろしている光景が目に飛び込んできた。

〜つづく〜
今回はつらい蓮のお話でした。雷門イレブンも悩んでいたように、いろいろと悩みもあると思うんです。週一更新(おもに)ですが見てくださる皆様に感謝ですv

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.178 )
日時: 2010/10/05 16:52
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: XHLJtWbQ)

薔薇結晶さん
了解です!いつもいつもありがとうございます^^
近いうちにってか京都で出します!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.179 )
日時: 2010/10/05 18:22
名前: 夢幻 ◆lWYtn5MZ2k (ID: FQaXdAFn)
参照: 俺の辞書には「反省」という言葉はナイツ!(古

あれ、この名前でよかったか…?
まぁいいや、灸さんを出したひとです!
あれ、灸さんだっけ←

用紙
あなたの名前(夢幻)

分類(小説のサイドストーリー)

誰と誰の話?(蓮君と灸さんとちゅーりっぷとアイス)

内容(なんかこう……遊園地でキャッキャ的な←
   灸さんと蓮が女子にナンパされてたらうれs←自主規制)

おまけ

蓮の技募集

技の分類(シュート)

パートナー(いれば)()

技のイメージ(ボールを空高く蹴り上げ、ジャンプする。
ちょうどボールのところにたどり着く時、氷の壁が3枚できている。
その壁を突き抜けるようにボールを打つ。一枚壊したらボールが下へ向かってしまうので、もう一回けり、もう一枚。それを繰り返し、全部割る。
すると、ボールが凍りつき、まばゆい光を反射する。
それで蹴ると、氷がわれ、氷の欠片4本が光とボールの軌道とともにゴールへ向かっていく(宇宙ペンギンみたいなあれ))

すみません、描写力なくてw
あと、技の名前を決められるなら【アイス・ブレイ4】的な感じが良いで(
いや、実際なんでもいいでs(

では!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.180 )
日時: 2010/10/05 18:31
名前: 李央 ◆TpifAK1n8E (ID: /..WfHud)

おひさし〜/シ
久しぶりに来たら・・・進んでる・・・
俺のほう全くやってないのに〜
受験勉強してるしずく様には到底及ばない勉強時間で毎日ギリギリ宿題を終わらせようとしているよ。(たいていが無理だけど
これからもがんばってください。たまに見に来るよ〜
それでは。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.181 )
日時: 2010/10/07 14:23
名前: ふぁいん (ID: 2lvkklET)

おひサです!とても進んでいますね!最後の蓮君の叫びに号泣しました。つらかったんですね。かわいそうです。
ところでリクします!

用紙
あなたの名前(ふぁいん)

分類(小説のサイドストーリー)

誰と誰の話?(蓮君、涼野、南雲)

内容(三人の幼いころの話!内容はお任せします!)

よろしくお願いします!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.182 )
日時: 2010/10/07 16:14
名前: 薔薇ペンギンG7 (ID: 9QYDPo7T)

初めてだっけ?
ども。薔薇結晶の弟「薔薇ペンギンです。」
よろしく。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.183 )
日時: 2010/10/09 16:46
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
参照: また長い!

(染岡くん……)

 蓮を覗き込む染岡の瞳には、怒気とも憐憫(れんびん)の情ともとれる奇妙な色を宿していた。
 その瞳と目が合うと、蓮はうっと小さく呻いた(うめいた)。殴られた左頬と地面に強打した右腕が針の先でつつかれたようにしくしくと痛み始めた。だが同時に、心もまた痛み始めた。自分はとんでもないことをしたと言う黒い思いが胸の底から湧き出る。わかってはいたが、感情が欲するままに叫び引き起こしてしまったこと。不思議と後悔の念はなかった。
 イライラした時にやけ食いをしたり、人に愚痴ったりするとすっきりするのと根本的に同じだ、と蓮は考えていた。ただ、今回はぶつけられる相手が……サッカーで例えるならGKが着用するグローブなしの選手に、強いシュートを打ちこむようなものだろう。普通そんなことをしたら、相手にもよるが怪我は免れない。きっと思いをぶつけた雷門メンバーは、ねんざの代わりに『嫌悪』と言うものを持つだろう。散々強いシュートを放っておいて、謝りもしないのだから。
 そんなことをうっすらと思案していると、やはり染岡の相貌(そうぼう)が厳しくなった。染岡の瞳にあったのは、怒りの色。嘲笑、侮蔑(ぶべつ)。頭に嫌な単語が駆け抜けて行く。ゆっくりと染岡の口が開いていく。どんな風に嘲笑われるかな、と蓮は自虐的に心の中で笑っていた。——しかし。

「……なんで」

 とても低い声。でもその声はとても震えていた。染岡は蓮から視線をそらし、拳を震わせている。だがすぐに蓮へ視線を戻すと、

「なんでオレたちに相談しなかったんだ!」

 腹の底から出す大きな怒声を、蓮に浴びせかける。あまりのでかさに風圧が生まれ、蓮の前髪が浮いた。
 予想とは違う言葉に蓮は一瞬戸惑うが、疼く(うずく)右腕を擦りながら起き上がった。見るとぶつけた部分には大きな赤紫の痣が現れ、周りには小さな切り傷がかなりあった。周りには小石や砂利が付着している。
 蓮は、不安げな面持ちで染岡を黙って見つめた。次の言葉を待つ。
 苛立ちの表情で染岡は蓮を見つめ返していた。腕組みをし、片方のスパイクの先で地面を叩いている。ややあって、染岡は足の先で地面を叩くのを止めた。

「白鳥。お前大事なことを忘れてるだろ」

 急に飛んできた言葉に蓮はわけがわからず困惑する。
 忘れていることと言っても、思いつくのは幼い頃の記憶がないことのみ。だが、それは今更すぎる。
 蓮は、遠慮がちに染岡に聞き返す。

「えっとな、何を?」

 すると染岡は、呆れたようにため息をついた。

「やっぱりわかってねぇんだな。いいかお前は、今ここで何をするために北海道に立っているんだ?」
「サッカーやるため。仲間を集めて……エイリア学園を倒すためだ」

 蓮の語気はだんだん尻すぼみになった。最後の方は、もはや囁きに近い。答えを聞いた染岡は頷き、さらに問いを重ねてくる。

「そうだな。そのサッカーをやる仲間はどこにいる?」

 何が言いたいのかと思いつつ、蓮は当然のように、

「”ここ”。この白恋中のグラウンド」

 答えた。すると染岡の顔が明るくなる。

「そう、それがお前が忘れているもんだ」

 ますます染岡の意図(いと)を見抜けず、蓮はとうとう頭を抱えて悶え始めた(もだえはじめた)。すると染岡がまあよく聞け、と前置きをした。

「はっきり言うぜ。白鳥は、自分の内に閉じこもっていて、”ここ”——つまり周りが見えなくなってんだよ。お前のこと誰も荷物なんて、思っちゃいねえ。一人で考えることも大事だけどな……お前のアレルギーの問題は、一人じゃ解決できないだろ? ま、円堂に代わるぜ。こーいうのは円堂が得意だからな」

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.184 )
日時: 2010/10/11 09:56
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

 突然の言葉に状況を飲み込むのに数秒を要した。
 染岡はおとなしく引き下がり、代りに円堂が蓮の前に立つ。円堂はしばらく食い入るように蓮を見つめていたが、急に頭を下げた。

「ごめん! 白鳥!」
「え、円堂くん?」

 それから数回平謝りされ、蓮はますます罪悪感が増していった。
 謝らなくちゃいけないのはこっちなのに、こんなに謝罪を入れられていいのだろうか。やっぱり自分はまだ円堂くんに迷惑をかけている——顔に出さないよう努めていたが、蓮の黒い瞳はますます暗さを増していた。そのことを円堂は察知したらしく、バッと顔を上げる。

「オレ……キャプテンなのに、お前の悩みに気付いてやれなくて本当にごめんな」
「いいよ。昔から悩み抱え込んじゃうのは、僕の悪い癖なんだ。僕こそ急に思いを爆発させたりしてごめん」

 蓮は悲しげに顔をほころばした。瞳は笑っているが、口元をぐっと噛んでいる。かなり強い力で噛んでいるらしく、唇の輪郭が赤く浮かび上がっていた。そんな蓮を、円堂は真剣な眼差しで見つめる。そして本当に心からの思いを蓮にぶつける。

「お前はチームの荷物じゃない。後半だけだって、参加していれば立派な選手だ。今回だって、レーゼの<ユニバースブラスト>を弱めてくれたじゃないか」

 蓮は首を横に振る。

「あれは、塔子さんもいたからさ。僕だけじゃ、とてもあそこまでは弱められなかった」
「塔子がいたとしても、お前が弱めてくれた事実に変わりはないだろ? もっと自信持てよ」

 蓮は首を横に振る。そして長い息を吐きながら、目線を円堂から下の地面にうつす。

「今回も前回も活躍できたからまだよかった。でも、もし本当に痛みが激しくて、僕が試合に出なかったら。それだって怖いくらいにあり得る話なんだ」
「それはオレだって同じだ、白鳥」

 その言葉に弾かれたように蓮が顔を上げ、円堂に目をやった。顔には、涙が流れた跡がまだ残っていた。

「なんで?」
「オレだって、次の試合の時には怪我をしているかもしれないし、ひょっとしたら熱で倒れているかもしれないんだ。試合に出れない可能性は、オレ達雷門サッカー部全員にある。だから白鳥が一回か二回出れないくたって、気にしない。それに……」

 円堂は一度言葉を切ると、風丸、染岡、吹雪を順番に見やった。三人ともこっくと小さく頷いた。
 少しじれったい気持ちになった蓮は、せかすように続きを促す。

「それに?」

 円堂は、にぃっと澄んで光を反射する水面の様な笑みを浮かべる。自分の胸をポンと手でたたいた。

「それに仲間がいるだろ? 倒れているときは、別の仲間が頑張ってくれる。次に出ればいいだろ?」
「……仲間」

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.185 )
日時: 2010/10/20 13:25
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

 蓮は感慨深げにポツリと呟いた。
 その時柔らかい視線をあちこちから感じた。周りを見渡すと、自分と円堂を中心にキャラバンに乗る仲間がぐるりと円状に立っていた。いつからいたのだろう。みんながみんな全員笑っていた。微笑んでいた。顔全体で笑っていれば、口元だけの子もいる。例えるなら子供が帰ってきた時の母のような。休み時間に、ふざけた友達が見せるような。表現はいくらでも思いつく、どこまでも純粋で優しい、暖かい笑み。見ていて幸せになる笑み。
 わがままを言った自分にどうしてこんな笑みを、みんは見せてくれるのだろう。こんな笑みを見せてくれる人は、自分を荷物だと思っていない——僅かな希望が確信に変わった時、蓮は全身が熱くなった。

「オレに鬼道」
 
 円堂は言いながら、歩き始める。円状に立つ仲間の前を時計回りに、ゆっくりと通って行く。仲間の前を通る時、その人物を手で示し、呼びながら。蓮の目線も、自然と円堂の動きを追っていた。黒い瞳にたくさんの人が映り込んでいく。

「風丸、吹雪、染岡、塔子、壁山、栗松、一之瀬、土門、目金、夏未、秋、春奈」

 仲間の名が呼ばれるたび、蓮の心は震えた。同時にその人物との思い出が脳裏に浮かぶ。
 円堂くんにはいつも励ましてもらってばっかり。鬼道くんは、とても戦術が上手い。自分の能力を見極め、色々と指導してくれたっけ。風丸くんは身体を支えてくれた。吹雪君はスキーを教えてくれた。染岡くんは一生懸命スキーをやり、<ワイバーンクラッシュ>と言う技を身に付けた。ジェミニストームとの試合の前半、つまりは自分が気絶していた時に決めたと聞いた。見てみたかった。塔子とは北海道旅行をした。みんなには言えないけど、楽しかった。壁山くんと栗松くんにはいつも笑わせてもらっている。一之瀬くんと土門くんは、アメリカの話をしたっけ。英語をしゃべって見せたら驚いていた。目金とは語った。いや、彼の知識はすごい。常人の域を超えている。秋に夏未に春奈。おにぎり、とてもおいしかった。
 本当にどうでもいい……道端の石のようにありふれた、変哲もない思い出だらけ。けれども。それら全てで自分の周りに雷門のみんながいることを思い出す。みんながいる——そう小さく言葉を漏らした時、再び鬼道の前に来た円堂が、蓮の正面に戻ってくる。

「それに今はいないけど豪炎寺だって——ここにいる雷門サッカー部は、みーんな白鳥の味方だ!」

 そこまで言いきり、円堂が思い出したように、

「それにオレ、旅立つ前に白鳥に言ったよな? お前が十分プレイできるようになるまで、チーム全員で支えるって」

 蓮は、改めて円状になっている仲間を全員見渡してみた。みんな蓮と目が合うと手を振ったり、笑いかけてくれたりする。誰も視線をそらしたり、睨んだりしなかった。ちゃんと蓮を見据え、ちゃんと笑みを見せてくれる。それが妙に嬉しくて。気付くとまた眦(まなじり)から涙が溢れていた。頬を伝って、グラウンドを濡らす。滂沱だが、今回は息苦しさが全くない。蛇口をひねると水が流れるように、無駄にだらだらと流れるのだ。蓮は男が簡単に泣くなど情けなくて、両手で顔を覆い俯いた。口だけは覆わなかった。

「……わがまま言ってごめんなさい」

 蓮は大きく、はっきりと涙声で謝罪した。そして顔を上げる。黒い瞳は少し充血し赤っぽい。涙の跡がまた増えている。けれどその表情に葛藤の類は見られず、変わりに強い意志が宿っていた。
 円状に並ぶ仲間たちを再度順々に見やり、最後に円堂と一対一で向き合う。

「どうか」

 蓮は息を吸い、一気に言葉を述べる。

「迷惑じゃなきゃ。どうか、これからもこの白鳥 蓮の面倒を見てやってください」

 一度だけ頭を下げ、再び蓮は顔を上げる。笑っていた。細められた瞼に残る涙が、キラキラと輝く。周りも花が咲いたように、一段と明るくなった。心から笑った、蓮の偽りのない笑顔。赤ん坊が見せる笑顔によく似ていた。
 その時、風が吹いた。空のねずみ色の雲を、円堂たちから見て東側に押し流していく。雲の切れ目から光が差し込むみ、グラウンドが、ところどころスポットライトで当てられたように明るくなる。やがて雲は完全になくなり、北海道の太陽が顔を出した。辺りが急に明るくなり、グラウンドのラインを、周りにある木々を徐々に浮かべあがらせていく。眩しくて、雷門イレブンは目を細めた。
 ただ円堂と蓮は、光の中で見つめ合ったままだった。互いの髪が風を孕んで(はらんで)、静かに揺れている。蓮の目からたくさんの煌きが零れ、風が持ち去って行く。小さな煌きは、集まって光のカーテンを形作る。
 カーテンは風に揺らされ、流れるように左から右へと光の粒となって消えていく。蛇行しながらどこへ消えていく。地上に天の川が生まれたようだった。

「堅苦しくなるなよ、白鳥。もちろんだ。なっ?」
「うん。これからもよろしく」

 蓮はもう一度だけ、太陽にも負けない笑顔を見せた。その時、不意に涼野が宗谷岬でかけてくれた言葉が耳の奥底にはっきりと蘇る。

『キミならできるはずだ』
(そうだな、風介)

 蓮は上を見上げる。どこまでも澄み渡る青い空に、力強く太陽が頭上にある。よく晴れていた。

(もっと頑張ってみるよ、風介)

 太陽はどこからでも見えるから、きっと届くだろうと信じて。蓮は太陽に心の中で語りかけた。
 
〜つづく〜
なんかきずいたら6000字オーバーになってました^^;そして何だこのシーン!?
涙がキラキラ流れるってとこ、何となく好きです。雲の隙間から光が差すシーンは、アニメ「獣の奏者エリン」から。アルが誕生する回のあたりです(知らない人はすいません;;)。綺麗だったので〜^^
恐ろしや恐ろしや。今回のこれ書いといてあれですが、かなり意味不明!意味身長(あ、漢字違うや)。円堂君たち雷門イレブンと蓮の絆を、感じていただければ幸いです。もともと友情アニメですしね^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.186 )
日時: 2010/10/09 18:09
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

コメント返し
>>夢幻さん
お久で—す!灸さんを出して下さったこと、ちゃんと覚えていますよbただいまプロットで構想練ってます。本当にちら見程度かもしれませんが、活躍できるように精進していきたいと思います♪

短編リクエストー!むちゃくちゃ待ってました!わお、ガゼバンと蓮と灸ちゃんの遊園地デート(と呼んでいいのでしょうか)。妄想しかふ(ピー)。お化け屋敷とかジェットコースターとか鼻血もんですよねぇ。ぐふふふ、あはははとか。行きたい場所の希望があればどうぞ☆

最近行ったのって千葉県某所にあるランドです。あんな調子でいろいろと妄想氏まくるぜやふー!(自重)

技までご丁寧に!いいえ描写は私の方が確実に下手です。上手く小説で使えるようにファイトします。コメントありがとうございました!うざさ100%のしずくでした!

>>李央
お久!そっちあんまり覗けなくてごめんね;;行っても結構コメントが短文になっちゃって、もっと叫びたいことあるのに時間が—って思う。私も中二の頃は宿題朝にやってた。当日は絶対やらない。寝過したら、最終究極奥義”友達”の力を求める。そんなこと繰り返してたよ^^;李央も頑張って!コメントありがとう!

>>ふぁいんさん
えええ!?こんな駄文に涙を……ああ私が涙です。
蓮の心情変化にはかなり気を使ったつもりで、伝わっていたら幸いです^^この小説で何か感じてくれたのなら、とても嬉しいです。

リク天クスです!ふ〜む。ガゼバンと蓮の幼少期。まだ明らかになっていませんが、頑張って書きたいと思いますbコメントありがとうございました!

>> 薔薇ペンギンG7さん
初めまして、とっても強そうなお名前ですね^^
薔薇結晶さんの弟さんと聞いて、きょうだいがいていいなと思いました。私は一人身です。いえ一人っ子ですから。コメントありがとうございました!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.187 )
日時: 2010/10/11 10:00
名前: ふぁいん (ID: 2lvkklET)

しずくさま天才ですか!?すっごく泣いてしまいました!感動です><こんな仲間がいる蓮君が羨ましい!更新ファイトです!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.188 )
日時: 2010/10/11 18:29
名前: 俺やで!! (ID: nmP/.Rbk)

文章が天才的です><


羨ましい限りでござるww

更新頑張って欲しいでござる。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.189 )
日時: 2010/10/12 16:52
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: XHLJtWbQ)
参照: ガゼバンの根付ほしーなー

「ようやく気づけたようね」

 円陣の向こうから瞳子の声がした。
 やがて鬼道と春奈が道を明けるように左右に割れ、その間をゆっくりと瞳子監督が進んでくる。

「瞳子監督」
「実はな。お前が悩んでいるって、瞳子監督が教えてくれたんだ」
「え? そうなんだ」

 蓮がびっくりしていると、蓮の目の前まで歩み寄ってきた瞳子に円堂は深々と頭を下げた。

「ありがとうございます、瞳子監督!」

 自分のことでお礼を述べているのかと思えば、円堂の口から出てきたのは思いがけない言葉だった。

「白鳥のことも、ジェミニストームのシュートを止められたのも、監督のおかげです!」
「どういうこと?」

 ジェミニストームのシュートを止められたのも、監督のおかげだという言葉がいまいちしっくりこなかった。
 そういえば奈良でボロボロなった後、円堂はあいつらのシュートが見えたといっていた。野菜をたくさん切ると、そのうちきれいに切ることができるように、相手のシュートの『数』をこなすことで、受けることができるようになったのだろう。そのことなら合点(がってん)がいくと蓮は思う。あの時、瞳子が円堂をベンチに下げたりしたら円堂は強くなれなかったかもしれない。

「オレさ、奈良であいつらのシュートを受けまくたっだろ? その時、シュートが見えるようになって、今回やっと止める事ができたんだ。これも監督のおかげだ!」

 円堂が自信満々に言い切った。監督を信じているんだな、と蓮は心の中でつぶやく。だからこそ、自分もこの監督を信じて仲間たちと進んでいくと改めて、心に誓う。流した涙で心は浄化され、すがすがしい青空のような気分だった。
 礼を言われた瞳子はどこ吹く風と言った顔つきで、黙って円堂の話を聞いている。

「本当はそんな意図があったんですね」

 何気なく瞳子に言ったが、瞳子はそうかしら? と素っ気無い対応をしてくれただけだ。でも、と蓮は目を細めて瞳子を見る。

(豪炎寺くんを外したのも、何か意味があるはずだ)

 夕香が言っていた『怖いおじさん』。これがもし、豪炎寺の離脱に関係があったとすれば。瞳子はその『おじさん』の正体を知り、あえて豪炎寺を逃がしたことになる。そういえばあの日の豪炎寺は顔はどこか浮かないものだったし、シュートをはずすという彼らしくない失態を犯していた。『おじさん』に狙われた豪炎寺は、仲間に火の粉がかからないようあえて、チームから離れたのではないだろうか。
 豪炎寺くんはどこですか? と無言の圧力で瞳子に問うが、彼女の目が揺れ動くことはなかった。ただただだんまりしたまま、静かに見つめ返してくる。

「吹雪」

 そこへアイリスの声がした。見ると、吹雪の後ろに白恋のユニフォームを着た白恋サッカー部のメンバーが立っている。アイリス一人を先頭に、他のメンバーたちはアイリスの後ろに並んでいる。いつのまにか吹雪の周りにいた雷門メンバーはあちこちに散っていて、吹雪の周りから少し距離を置いた場所にいる。

「あ、アイリスちゃん」
「監督から聞いたわ。そろそろ出発の時間なのね」

 アイリスが、名残惜しそうな顔で語りかけた。後ろにいるサッカー部のメンバーには、眦(まなじり)から涙を流しているものもいる。アイリスが泣いちゃだめよ、と白恋サッカー部をなだめ、みんなユニフォームの袖で目をごしごしと拭いた。

「でも僕がいなくなって大丈夫かな」

 吹雪は心配そうな表情で白恋メンバーを見据えながら言って、アイリスの後ろにいた紺子が前に出てくる。紺子はにっこりと笑いかけ、

「大丈夫だっぺ。私とアイリスちゃんたちで、しっかり白恋中学校は守っていくっぺ」
「そうよ。だからしっかり宇宙人を倒してきなさい」

 同時に背後の白恋メンバーがいってらっしゃい! 吹雪くんと声を揃えて大声を張り上げる。
 驚いたようにぐるりと白恋メンバーを、吹雪は見つめると、最後ににっこりと微笑みかける。

「……うん」
「それじゃあ、そろそろ白恋中学を出発するわよ」

 瞳子の声が合図で、雷門イレブンはぞろぞろと校門へあがる階段へと向かっていく。吹雪も別れが惜しいのかしばらく戸惑った表情で白恋メンバーを見つめていたが、円堂にポンと肩を叩かれると、踵を返し、蓮と円堂と一緒に階段へと走り去って行く。
 最後に、青いポニーテールを揺らしながら、階段の方角へ進もうとする風丸を見つけ、アイリスは駆け寄る。

「じゃあね、一郎太」
「ああ、またな」

 風丸はそれだけ言うと、早足で雷門イレブンを追いかけていってしまう。その瞳は陰り、少し俯いていた姿勢で歩いていた。

「無事でいてね」

 アイリスは両手を組んで、小さくつぶやいた。

〜つづく〜
いやはぁ!次にやっと南雲が出る予定。だめなら次々回です!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.190 )
日時: 2010/10/12 16:43
名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: XHLJtWbQ)

>>ふぁいんさん
いやいや天才なんかじゃありませんって;;本当にただのだめな人間ですw
仲間っていいですよね〜私も、こんな仲間がほしいなぁってイナ入れ見るたびに思います。

>>俺やで!!さん
お初です^^しゃべり方がとっても面白いですねw

お褒めいただき有難うございます!でもまだまだ若輩者です。私よりうまい人は、星の数ほどいますって。応援有難うございますvこれからも頑張って生きたいと思います^^コメてんくすでした♪

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.191 )
日時: 2010/10/12 19:23
名前: 俺やで!! (ID: nmP/.Rbk)

「ござる」はたまたまその時に
使っただけですよww
南雲君早く出て欲しいです><

更新頑張って下さい。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.192 )
日時: 2010/10/14 15:42
名前: ふぁいん (ID: 2lvkklET)

あげ!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.193 )
日時: 2010/10/14 18:57
名前: 薔薇結晶 (ID: vaXSOZHN)

そろそろ紅葉もでるかしら…?(誰だよ

楽しみにしてます!!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.194 )
日時: 2010/10/27 17:36
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
参照: ジ・オーガ欲しいのにお金ガッ!セーフじゃねぇ

 白恋中学校正門前には、既にイナズマキャラバンが止まっていた。雷門サッカー部のメンバーは、一番初めに来た瞳子を先頭に、ぞくぞくとキャラバン内に乗りこんでいく。風丸に先を譲り、風丸が先にキャラバン内へ入って行くのを見送っていると、視界に黒い物体が飛び込んできた。

「あ、ハト? それともカラス?」

 イナズマキャラバンの昇降口の上あたりに、一匹のハトが止まっていた。
 見た目こそ、神社や町中いたるところに出没するハトとなんら変わりはないが、その全身は黒。カラスと同じ色の体毛なのだ。しかも野生のハトにしては、その体毛は光沢があり、毛並みもいい。
 そのハトは、太陽を思わせる金色の双眸で、静かにこちらを見下ろしていた。ただのハトにしてはずいぶん存在感を感じさせる。

「ハト? こいつはカラスじゃないのか?」
「え〜でも、これはどう見てもハトだと思うなぁ」

 円堂が首をかしげ、蓮が腕を組んで、ハトと睨みあいをしていると、ハトはプイッと横を向いた。
 小さな翼を広げ、羽音を立てながらみるみるうちに大空へと消えていった。
 二人は呆気にとられてハトを眺めていたが、やがて既にキャラバンに乗っているメンバーが窓から顔を出して、こちらを見つめているのに気がついた。二人とも、バツが悪そうな表情で互いを見やり、

「ところで吹雪くん、キャラバンはどう?」
「イナズマキャラバンは、すごいだろ?」

 話題をそらすかのように、後ろにいた吹雪に話しかける。吹雪はにっこりとほほ笑むと、

「イナズマキャラバンって、思っていたよりも広いんだね。うん、これならみんなと楽しい旅ができそうだよ」

 感慨深くキャラバンを見た感想を述べた。そっか〜と言いながら、円堂がチームメイトの視線から逃げるように、そそくさと早足でキャラバンに滑りこんでいく。
 蓮は吹雪と苦笑いをしながら、後に続く。むっとした車独特の匂いが鼻をついたが、もう慣れた。キャラバン内は、外に比べるとほんの少しだけ暖かい。蓮は自分の席に座ると、ジャージ上下を身にまとった。吹雪は蓮の席から数えて二列後ろの染岡の隣に座り、楽しそうに染岡と話し込んでいる。

「それで……瞳子監督。次はどこへ向かうんですか?」

 ジャージを身に付けた蓮の横で、円堂が前の座席に座る瞳子に尋ねる。瞳子は立ち上がると、キャラバン全体に響くような大声で、

「まずは京都に向かうわよ。今、SPフィクサーズに頼んで、京都でエイリア学園から襲撃予告があった学校を探してもらっているところ。場所がわかり次第、そちらへ向かいます」
「それじゃあ、まずは京都に向かうことになるんですね」
「そういうことになるわね」
「よし。それじゃあ出発するぞ!」

 古株の声が合図で、エンジンが唸り始め、同時に白恋中学校がどんどん遠くなり始めた。

(イプシロン……いったいどんな奴らだろう)


同時刻。

「”ジェネシス”の座は……”ガイア”のものです」
「わかりました。父さん」
「なっ! 父さん、何故オレたち”プロミネンス”ではないのですか!?」
「我々ダイヤモンドダストも何か……」
「ガゼル、バーン。聞こえませんでしたか? ジェネシスの座はガイアのものだと——」


〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.195 )
日時: 2010/10/27 18:06
名前: 空梨逢 ◆IiYNVS7nas (ID: KJrPtGNF)

オリキャラ
(コロナ(弧道 炉南/コミチ ロナ)
(14/♀)
(紫がかったピンク色の髪。前髪はパッツンで、耳の両脇に一筋髪を垂らしている。他の髪はまとめてサイドテール。瞳の色は真っ赤。背が低いチビ。)
(人をからかうのが好きで、恋愛に関しては凄い。イタズラはあまりしないがレアンとバーンをくっ付けようと他のチームメンバーとイタズラする事は有り。サッカーに関しては真剣で、実力は中の上といったところ。)
(エイリア学園・プロミネンス)
(MF)
(シュート技【コロナツインズ】(二人技・バーラと)
 ドリブル技【ヘルファイアロード】)
(同じチビ同士、バーラとは仲が良い。)

技募集

技名(コロナツインズ)
使用者(コロナ・バーラ)
使った時のイメージ(コロナがボールを蹴り上げ、バーラが飛び上がってゴールへボールを蹴る。その際に炎の波動?の様なものが広がり、最後にコロナが飛び上がって思い切り蹴る。)
技の分類(シュート)

技名(ヘルファイアロード)
使用者(コロナ)
技のイメージ(手を胸の前でクロスすると炎がコロナを包み、敵が突っ込んで来たところで手のクロスをほどく。そうするとまとっていた炎が敵を包み、その間に突破。)


プロミのオリキャラちゃん。
よろしくお願いします^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.196 )
日時: 2010/10/29 15:10
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

 昼過ぎに白恋中学を出たせいか、北海道を出る前に日が沈んでしまった。ちょうど、その頃イナズマキャラバンは山中を走っていたので、適当な場所で一晩を明かすこととなった。ちょうどよく、木がない広場の様な場所が見つかり、イナズマキャラバンはそこに止まっていた。
 その晩。やはり眠れない蓮は、一人キャラバンの屋場に乗り、物思いにふけっていた。ジャージをしっかり着て、体育座りになり、天を見上げていた。
 ふーっと息を吐くと、すぐさま白くなり、やがて空気の中に溶けていった。まだ北海道にいるせいか、空気は澄んでいて肌寒い。蓮はぶるっと身を震わせた。
 キャラバンの屋場には荷物を乗せるために、鉄製の柵で囲まれた小さなスペースがある。大人二人が楽々座れる程の広さはあり、キャラバンの後ろにかかっている鉄製の段から登ることが出来る。よくここに円堂や他のメンバーが座りに来るのだと言う。
 円堂に乗ってみろよ! 気持ちいいぞ! と前々から勧められてはいたが、機会がなく、蓮は今日こうして初めて乗ったのであった。上に乗っているせいか、辺りの風景が良く見える。
 キャラバンの前には女子メンバーが止まる、とんがり帽子の様な形をしたピンクのテント。辺りには針葉樹林が生え、空いっぱいに枝を伸ばしている。針葉樹林の下には短い雑草が惜しげっている。夜であるせいか、虫が鳴くどこか儚く(はかなく)弱弱しい音だけが聞こえてくる。嫌なくらいに静かである。

「星、綺麗だなぁ」

 蓮は呟いた。
 頭上を振り仰ぐと、枝と枝の間から、満天の星空が見える。冷たい風が吹き、ざわざわと葉を揺らす。その風情(ふぜい)がある光景に目を奪われていた蓮は、下から誰かの視線を感じた。
 誰かと思い、落ちないよう柵を掴みながら下を覗き込むと、吹雪がこちらを見上げていた。白いマフラーが風に弄ばれている(もてあそばれている)。

「ふ」

 吹雪の名を呼ぼうとして、蓮は言葉を飲み込む。

(あれ? なんだかいつもの吹雪くんじゃないみたいだ)

 妙な違和感を覚えた。確かにそこにいるのは吹雪だが、”何か”が違うと己の第六感が、蓮に囁きかけてくるのだ。何だろうと思い、蓮は吹雪の顔を凝視し、蓮の相貌が獲物を狙うハンターのごとく鋭くなった。
 集中してみると、吹雪の違いが驚くほどはっきりと見えて来た。雷門ジャージと風をはらんで揺れるタオルの様なマフラーだけは同じだが。
 まず髪の違いに目が言った。いつもより青白くなり、上に跳ねている。そして何よりその瞳。今の吹雪には好戦的な色が宿っているし、第一彼の瞳はオレンジではないはずだ。
 違和感の原因に気づいた蓮は顔をこわばらせ、

「……お前は誰だ?」

 威嚇するように低い声で『吹雪』に尋ねた。恐ろしさからか、柵をつかむ手が小刻みに揺れている。

「誰?」

 素っ頓狂(すっとんきょう)な返事がし、『吹雪』は高笑いをした。にいっと口元を不気味に歪ませ、蓮を見上げて嘲笑する。

「おいおい、白鳥。たった数日で、チームメイトのこと忘れちまったのかよ。オレは吹雪だ。吹雪 士郎」
「お前は、吹雪 士郎くんじゃない!」

 からかうように自分を指差し言った吹雪の言葉をいなし、蓮は言い放った。自分を奮い立たせ、攻撃的な口調で攻める。不気味な『吹雪』の視線を弾こうとするかのように、きっと『吹雪』を睨みつける。
 初めは驚いたように『吹雪』は目を丸くしていたが、再び含み笑いを浮かべ、くく……っと引くように笑った。

「くく……オレを『士郎』じゃないと見破ったのは、アイリス以外ではお前が初めてだ。雷門には、とんだやつがいたもんだぜ」

 そこまで言い切ると、『吹雪』は真顔に戻る。

「ああ。オレは吹雪 士郎じゃねぇ。オレの名は『アツヤ』だ。吹雪 アツヤ」
「……じゃあ吹雪くんは二重人格」

 頭の中に浮かんだ可能性を独り言のようにポツリと言うと、アツヤはあっさり首を縦に振った。

「そういうことだ。よく覚えておきな。ちなみに試合の時に、FWとして出てんのはオレ。DFとして出てんのは士郎の方だぜ」
「吹雪 アツヤ——それがお前の名前なのか。お前はアツヤって呼ぶ。士郎くんの方は、これからも吹雪くんと呼ばせてもらうよ」
「好きにしろよ」

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.197 )
日時: 2010/11/02 16:57
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
参照: きみどりポスター飾りたいけど、どこに飾ればいいのだろうか

 そうアツヤが言ったのを最後に、しばらく二人の間に沈黙が下りた。牽制(けんせい)しあうように睨みあい、そのまま固まっている。風が起こす葉擦れの音だけが、静寂の空間を切り裂いていく。

「……そっち行ってもいいか?」

 不意にアツヤが口を開き、蓮は顔の警戒の色を消さないまま頷いた。アツヤは蓮から視線を外すと、キャラバンの裏手に回る。鉄が叩かれる高い音がし、アツヤがキャラバンの屋場に上がってきた。蓮は占領していた中央部分から少しそれ、アツヤが座れるようにする。アツヤは無言で蓮の横に腰をおろした。

「様子を見る限り、主人格は吹雪くんのほうだね」

 沈黙が嫌で蓮はアツヤに話しかけた。アツヤは蓮の方を向くと、当たり前だろと言わんばかりの顔をする。

「白鳥の言う通り、士郎の方だ」
「じゃあさお前、何でわざわざ出て来たんだ」

 蓮は語勢を強めてアツヤに聞いた。するとアツヤは薄ら笑いを口元に浮かべ、

「白鳥と一回話してみたかったんだよ」

 急にアツヤが膝立ちになった。すっと人差し指を蓮のあごに当て、蓮の顔を無理やり上げさせる。とたんアツヤは蓮の瞳を覗き込もうとするかのように、顔を思い切り近づけた。二人の顔の距離は数十センチほどしかない。
 アツヤは蓮の目をじっと見つめる。蓮は恐怖のあまり目を見開いたまま、動かない。

「……黒い瞳か。随分便利なもの持ってんじゃねぇか」
「な、なんのことだよ」

 アツヤの冷たい眼光を真正面に受けながら、蓮は声を震わせて言った。
 そらせない。何故だか目をそらせない。そらすことを許さない威圧感がそこにはある。アツヤの視線が、自分の奥へ奥へと進んでくる。まるで心の内を探られているかのようだ。圧迫感が心の奥を無理やり引きずり出そうとしている。心臓が早鐘をうつように激しく脈打つ。早く終わってくれと心の中で祈る。それしかできない。
 
「黒ってのは便利な色だよなぁ? 混ぜればほとんどの色は黒に染まって行く。混ぜれば混ぜるほど、黒味は増して——やがては漆黒に染まる」

 ずぶずぶとアツヤの視線が、ますます心に突き刺さってくる。これがナイフなら血が出ているくらいに。
 アツヤは確実に自分の心を見透かしている——蓮はそのことを言葉の端端から感じ取っていた。

「お前、その瞳の奥で幾重(いくえ)黒を重ねてんだよ?」
「え」

 蓮は思いがけないことを聞かれ、一瞬目線を下げた。しかしアツヤは人差し指の力を強くし、容赦なく視線を合わせさせる。だが心を引きずりだそうとする嫌な感覚はなくなっていた。

「僕が、何か隠しているって言いたいのか」

 嫌々ながら答えると、アツヤは目を丸くした。

「ほう。馬鹿じゃねぇ様だな。オレが言いたいのは、その漆黒の奥に何を隠しているかってこと」

 蓮は目を瞬く。

「隠す? ひょっとして僕がチームのお荷物だとくよくよ悩んでいたことか? それならもう大丈夫だ。染岡くんに殴られて、円堂くんに励まされて……なんかふっきれた。みんな、僕のことを拒んだりしない。邪険に扱ったりしない。それどころか仲間として認めてくれている。だからこそ、僕は最後までエイリア学園と戦うつもりだ」

 力強く蓮が話すと、アツヤは首を横に振った。

「そっちじゃねぇよ」
「え? 違うのか?」
「一言で言うぜ。白鳥、お前——一部記憶喪失になってるだろ?」

 そこでアツヤが蓮のあごから人差し指を離した。
 解放された喜びよりも、蓮は記憶喪失だと言うことをアツヤに言い当てられた驚きが増しアツヤの方に、身を乗り出した。
 
「な、なんで僕が小学校3年生の頃より前の記憶がないこと知っているの?」

 興奮しているせいか早口になり、声が上ずった。
 アツヤは冷静に蓮をまっすぐ見据えて、

「瞳(め)でわかる。お前は、自分で自分の記憶を封じ込めてんだよ。意識的にじゃない。無意識に……な。士郎とある意味で同じだ」
「え? 吹雪くんと?」

 吹雪の名が出て蓮はきょとんとした。アツヤは腕を組み、なおも淡々と語りつづける。

「士郎は白鳥と逆だ。意識的に、自分の記憶を抑えつけようとしている。だけどな、無理して自分を抑えつけてんのはお前も士郎も同じだ。オレはな、お前の”月”になるつもりだ」
「つ、き……?」

 蓮が不思議そうに首をかしげると、アツヤは天を見上げる。蓮も上に視線をやると、ちかちかと輝く星の中でも、少しだけ優しい光の満月があった。アツヤはあんなに優しくない。

「お前の光はナイフだ。鈍く不気味に輝き、僕から全てを剥ぐ(はぐ)つもりなんだろ」

 蓮がアツヤに視線を戻しながら素っ気なく(そっけなく)言った。
 
「どうだろうな。お前の瞳は、例えるなら夜を移す水面(みなも)……オレはその真っ暗闇を照らしたいだけだ。お前が本当に嫌いなら、ここまでしねぇよ」

 アツヤが自虐的な笑みを浮かべ、蓮はそっぽを向いた。
 恐怖感こそ消えたが、アツヤには不信感を抱かざるを得ない。何を考えているのかわからないその不敵な顔に、蓮は憮然(ぶぜん)とした表情を一人浮かべた。

「じゃあ、オレはそろそろ帰るぜ」
「は?」

 一瞬理解に苦しみ、蓮は驚きの声を口から零してアツヤを見なおす。アツヤは左手で白いマフラーを触ろうとしている姿勢のまま、蓮を見ていた。

「言っておくが”アツヤ”のことは、士郎にも雷門イレブンにも話しても無駄だ。白い目で見られたくなかったら、黙っていることだな」
「ちょ……どういうことだよ!」

 蓮が吠えた瞬間、アツヤは目を閉じて白いマフラーに触れる。冷たい風が吹き付け、蓮の前髪と吹雪の白いマフラーを揺らした。
 アツヤが見る見るうちに戻って行く。上から押さえつけたかのように髪は下向きになり、色も元の濃さを取り戻した。やがて目をあけると、そこに濃い緑の瞳があった。——吹雪 士郎であった。

〜つづく〜
実に三週間ぶりでした^^;中間テストのためかけずにすいませんでしたー!これからも週一更新ですが、気長に待っていて下さると嬉しい限りです。

なんか今回の話はかなりひぐらしの〜の罪滅ぼしとかの影響を受けてます。梨花ちゃんが「あなたが初めて〜」と言ったシーン大好きですvでも描写下手なので、イメージが伝わってない可能性が高そうだ^^;
そして冒頭の言葉が、出会い~なのにまだ南雲に会ってません。よしまんゆうじは後回しに・・・・!

後最近家族にアフロディのカードを見せたら、どう見ても女。男だと言うのは無理があるって酷評(こくひょう)が来ました;;涙が溢れる……風丸は可愛いと言ってくれたのに。アフロディも素的なのに^^;

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.198 )
日時: 2010/10/29 15:02
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

コマンド返しが遅れてすいません!

雫(しどけ)「こまんどって何だよ!?」

>>俺やで!!さん
たまたまだったんですか!? それでも面白いですよb

期待させておいて、南雲が一フレーズしか出せませんでした;;吹雪のイベントは、次の5章にするか迷いましたが、結構早めに出しておきたかったので、今回出してしまいました^^;次は多分まんゆうじの前話を、勝手に作って南雲と蓮を合わせるつもりなので、後3回以内に南雲は確実に出てきます!

>>ふぁいんさん
あげ感謝ですb
今回は2週間くらい書かなくてすいませんでした;;

>>薔薇結晶さん
紅葉ちゃんも近々でますよー^^
応募していただいたキャラはきちんと出します。

何か私の小説って前ふりが長いので、ペースがすごいスローになちゃって;;躍起(やっき)になって書かないと。

>>空梨逢

おお、オリキャラ来たぁ!すごくかわいい子だねv
やだなにこれ///かあいいよ(レナ風)
大事に使わせてもらうね!本当にありがとう^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.199 )
日時: 2010/10/29 23:31
名前: 俺やで!! (ID: DcPYr5mR)

面白いと言われると嬉しいです(≧ω≦)b


南雲君で出てましたっけ?ww


Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.200 )
日時: 2010/10/30 18:11
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
参照: 甘いのってどう書けばいいんでしょう!?

番外編
またいこう〜memory is〜

 ジェミニストームとの戦いを控えた前夜、雷門サッカー部は白恋サッカー部のメンバーをキャラバンに招待し、ささやかな交流会を催していた。
 楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、時計は既に12時を指していて、白恋メンバーも雷門メンバーも座席にもたれかかるようにして、眠っている。
 だがまだ円堂、風丸にアイリス、春奈の4人だけは起きていた。円堂と春奈、風丸とアイリスがそれぞれ隣同士に座り、通路を挟んだ一列目を占領している。

「それで、風丸先輩とアイリスさんって長い付き合いなんですね」

 春奈が席の手すりから身を乗り出すようにして、風丸と春奈に尋ねた。その顔には強い好奇の光が輝き、手にはメモ用紙とシャーペンをしっかり握っている。まるで新聞記者のようだ。
 尋ねられた風丸は少し困ったような顔でアイリスを見て、
 
「ただの幼馴染だよ。なあ?」
「そ、そうよね。たぶん」

 アイリスは、頬を薄紅色に染めながら、軽く頷いた。
 その様子を見た春奈の目はいっそう強い輝きを放ち、春奈は思いっきり身を乗り出した。通路に落ちるか落ちないか、と言うかなりぎりぎりの部分まで身体を出している。
 
「でしたらでしたら! 二人の過去話を聞かせて下さいよ!」

 興奮しているのか、鼻息荒く言いながら春奈が上擦った声で言う。春奈の声はよく通るせいか、後ろで寝ている雷門イレブンと白恋メンバーの数人から唸る声が上がった。春奈は慌てて口をふさぐ。

「お、そりゃ面白そうだ」

 寝ているメンバーを起こさないよう少し声を小さくして、円堂が同意する。
 アイリスと風丸はお互いを見やり、思いだそうとするように遠くへと目をやった。

「一郎太とはよく二人で遊んだな」
「ああ。近くの公園で一緒に遊んだり、互いの家でカードゲームをしたり……そんなところか」

 おお〜と春奈が感嘆の声を漏らす中、アイリスがはっとした顔になり、風丸の肩を叩く。

「昔と言えば、二人で道に迷ったことがあったわね」
「ああ。虹を追いかけていていたら、隣町まで行ってしまったんだよな」

 アイリスはふっと笑う。

「あの時は怖かったわ。周りの雑踏(ざっとう)って、子供の頃は巨人が歩いているみたいに見えるんだもの」
「アイリスは泣いてたな」

 風丸が笑いながら言って、アイリスがむくれる。春奈の感嘆の声のトーンがますます高くなり、その双眸には好奇を超えた何かが宿っている。

「そりゃ怖かったし、泣くわよ」

 ふんっと窓の外に目をやったアイリスだが、急に下を向き少しはにかみながら、自分の両手を見つめる。
そして囁くように、

「けど、一郎太が手を握っててくれてすごく嬉しかった」

 風丸の顔がみるみるうちに上気した。瞬間湯沸かし器のごとく真っ赤になり、心なしか湯気までがあがっているように見える。春奈が黄色い歓声を上げ、アイリスは意地の悪い笑みを顔に張り付けた。風丸の頬を人さし指で突っつく。

「あら忘れたの? 一郎太、あたしの手を握って『だいじょうぶだよ、アイリスちゃん。ぼくがいる』ってずっと励ましてくれたじゃない」
「……そう、だったな」

 アイリスから視線を逸らしながら、風丸はしどろもどろに答える。やがて頬を小突かれていることに苛立って来たらしく、片手でアイリスの人差し指を軽く払いのけた。真っ赤になった顔を隠すためなのか、アイリスに背を向けてしまった。後ろで結われたポニーテールが静かに揺れる。

「そういえば、まだこのヘアゴムつけているの?」

 揺れる風丸のポニーテールを、アイリスはしみじみと眺める。アイリスの言葉がわからない円堂が口を挟んだ。

「風丸、このヘアゴムずっと大事にしているんだぞ。なんかアイリスとあったのか?」
「これね、あたしが北海道に引っ越すときに一郎太にあげたの」

 言いながらアイリスは風丸の赤いヘアゴムに手をかけると、風丸のポニーテールを片手で押え、ゆっくりと取り去った。支えを失った青い髪は、からまった糸がほどけるように、ふわっと風丸の背中を覆った。

「お、おい!」

 慌てながら風丸が振り向く。アイリスは風丸を無視し、手のひらに置いた赤いヘアゴムを円堂と春奈に見せる。

「本当は別のものを渡したかったけど、急な引っ越しで時間がなかったの。だから、しぶしぶ私が一番に身につけていたこのヘアゴムを上げたの」

 春奈が立ち上がり、今までにない甲高い声を張り上げた。円堂が驚いて目を丸くする。

「きゃ〜! やっぱりふたりはお似合いですよ! そうやって互いに優しくし合えるんですから!」

 二人は互いを見あったが、すぐに気まずそうにアイリスは天井を、風丸は通路の床をそれぞれ見つめた。
 数十秒の沈黙ののち、アイリスが少し遠慮がちに口を開いた。

「……ねえ一郎太、髪結んであげる」
「あ、私のくし貸しますね」

 風丸が小さく首を頷くのを確認した春奈が、ピンク色の小さなくしをアイリスに手渡した。風丸は大人しく後ろを向き、アイリスは口に赤いヘアゴムを加えた。そして、風丸の髪にゆっくりとくしを入れる。くしで梳かれた髪は、流れるようにくしとくしの間をすり抜けた。アイリスがすくたびに、その髪はきらめきを増していく。やがてアイリスは慣れた手つきで風丸の髪を、後頭部のてっぺん近くでまとめ、片手で押さえつけた。髪の付け根にヘアゴムを通すと、これまた素早く二回、三回とまきつけてしまう。女の子がやったからか、いつもよりもポニーテールはきれいに整っていた。

「今度また虹を探しに行こうよ」

 何気なくアイリスが零し、風丸が振り向く。

「どこまで見えるか、二人で探検するの」
「いいぜ」

 二人はパンとお互いの手を合わせた。

〜FIN〜
わあ、私の稚拙な文章力じゃ甘くもなんともないですね。いつもよりも下手すぎて泣けてきます。もっと修行せねば。くりあ、ごめんなさい。ちょっとふうじんのまいで成層圏まで飛ばされてこよう。
なんですかね〜風丸さんの髪をほどいてみたかった。ダークエンペラーズの洗脳から溶けたばかりの風丸さん可愛いです。下手だからきっと臨場感はないと思いますが、ほどいてみたかったの。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.201 )
日時: 2010/10/30 18:15
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

>>俺やで!!さん
はいたったワンフレーズですがいます。直接的な描写ないのでわかりずらいと思いますが、>>194です。最後の方。本物の南雲が出てくるのは次ですね〜上手く出せるように頑張って行きたいですb

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.202 )
日時: 2010/10/30 20:41
名前: 俺やで!! (ID: QB.PitpG)

>>194の最後の方に出てましたねww
南雲君が次出てくるので楽しみです^^

更新頑張って下さい^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.203 )
日時: 2010/10/30 21:19
名前: 空梨逢 ◆IiYNVS7nas (ID: pkkudMAq)

叫んで良いですか。画面の前でずっと2828282828してた俺が居まs(黙

よーしじゃあ私はザ・ハリケーンで宇宙に放り投げだされてくる←
風丸さんのDE解放直後が可愛すぎててらわろた自分が居るよ。あのふっ、て微笑んだ感じが最高すぎるよ。

あと「虹」ってシチュエーションが嬉しかった。アイリスって名前はギリシア神話の虹の名前から来てるから。


黒かぁ。私、黒が好きなんだよね。
そして私は月でありますね。友達が太陽で、照らされてるから。
照らされてる分私、幸せだけどね^^


ではでは、じゃーね。
更新乙、そしてこれからも頑張って!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.204 )
日時: 2010/11/02 18:45
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
参照: ボカロには神曲が多すぎです^^

アンケート返し
というか、おまけに近いのさ

雫「だから遅い。そして今日更新されてる〜! って本編期待してた人たちにどう謝る気だ」

しずく「すいません。金曜日まで待っていて下さい。今清水寺の描写にすっごく×10000戸惑い中」

雫「き、きよみずでらぁ!? なんでイナズマで清水寺が出てくんだよ」

しずく「えへへ。それはお楽しみに。ところで9月ごろに催したアンケートのコメント返し! パンドラさん、ゆくはさん答えてくれててんくすです!」

☆全体的に☆
雫「まず、読んでいてガゼルの人気の高さを知った」

しずく「いいよねぇガゼバン。涼野。そしてファイアードラゴン。マジで藍氏(イカ長いのでかっと)」

しずく「ところでさ、あのね、読んでいて蓮が”可愛い”って書いてあって私マジで泣きそうだったべ。滂沱だよ。床上浸水だよ。ほらさ〜迸る(ほとばしる)妄想に乗りながら書いたあのシーンが、可愛いって言ってくれて、すごく嬉しかったです!しゃしゃ!」

雫「そうだな、文章書く才能ないくせに、あの回は異常に気合が入っていたよな。何回も訂正していたし」

しずく「才能ないのは認めるが、私なりに気迫を込めて書いたぞ。ガゼル好き—ってにやにやしつつ」

雫「黙ろうか」

☆セリフのこと☆
雫「ランクインはガゼルの、「私はどうすればいい」と蓮の「僕は確かに”変わるかも”しれないけど、”基礎部分は残して”変わって行くと思う。『人間って忘れてしまう生き物』って言うだろ? 今日の日だって、細かいことは忘れるかも。けど、風介への思いは絶対変わらない。少なくとも、風介のことは絶対に忘れたりしない。この46億年間だっけ? 変わらない海と同じで」です。さあ、作者はどう思う?」

しずく「どっちも気に行っているぜ! 私のマイランキングは最後にこたえるよ。前者は、なんかガゼル—って、むしょうに叫びたくなる。切ない感じを出したくてあんな感じにしました。そろそろ蓮の過去の一部分を暴露するので、この言葉の意味はそこで感じ取ってもらえれば幸いですなう」

雫「キャラ崩壊乙。で、後者は?」

しずく「蓮の純粋さ、とか? いつまでも仲良くしていよう、そんな思いから来ています。前に入れた百人一首の歌と絡めてこんなセリフにして、意味わかんね〜と叫んだ覚えがある。今章でも百人一首は出てくるので、好きな方はお楽しみに!」

☆今後のこと☆

雫「真・帝国と沖縄」

しずく「あ〜どっちも大事! 特に沖縄はすっごく大事だよね。ゲーム知らない人のためにネタバレは控えますが、沖縄(8章)はかなり大きな転機ですよ〜」

雫「今、真・帝国学園のプロット練ってるけどどう?」

しずく「うげ〜大変です。まず謝っておきます。恐らく佐久間と源田のキャラが崩壊どころか、壊滅、陥落……するかも。あ、不動も少しレッドライン。書きなれていないので。でもストーリーは盛り上がらせられるように頑張ってみます!」

雫「沖縄は?」

しずく「まだ先だからか、まだ何とも。ただ漠然としたイメージだけはあって、それをどう形にしようか思考中」

雫「どんな感じだ?」

しずく「”敗北”」

雫「どこがどこに?」

しずく「それは書いてからの(いつになるか不明だが)お楽しみです! かっこいいあのシーンを私の筆力でかけるのかが不安要素」

雫「オレとしては蓮の過去かな。涼野との関係が気になる」

☆それぞれのアンケート返し

しずく「パンドラさん、お答えいただきありがとうございました! そして返信が遅くなってごめんなさい。あの蓮がガゼルを笑わせるシーンは、私も地味にお気に入りですwガゼルが笑う顔を何となく見てみてぇと言う漠然な妄想が、あの結果です。本当妄想って恐ろしいですよね。場所と時を選ばずできますしw

ゆくはさん、答えてくれてマジで感謝です。遅くなって申し訳ありませんでした;;可愛いって言葉は▼こうかはばつぐんだ、私にです。もう最高の褒め言葉です。ひぐなくは個人的趣味。神曲多いですよね〜。今度小説でyouも流してみようかと思っています」

最後 しずくに答えさせてみた
①この小説で気にいっているシーンは? 3つまでOkです!理由もあるとなお嬉しいです♪

最近ですと、アツヤと蓮の初対面シーン。
理由は……結構長く考えたので^^

前だと、塔子に振り回される蓮は書いていて楽しかったです。

②続いてはセリフ。

アツヤ「黒い瞳か。ずいぶん便利なものもってんじゃねぁか」

③これからの展開で考えているところ

蓮の地理嫌いがどうなるか。そして7章のよかと。


雫「③意味わかんねぇよ!」

しずく「あははは。>>153のアンケート、いつでも回と受付中です! 時間がある方はどうぞ!」

雫「宣伝!?」

しずく「だって、読んでいる人の反応ってすっごく気になるんですの。どこがどう思われてるかって、実はすごく気にしています」

雫「さよか。え〜まあ、みなさまひまでしたら答えてやってください。今回のようにこのダメダメが答えてくれます(ぺこり)」

しずく「ではでは、アンケートてんくすでしたぁ!」

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.205 )
日時: 2010/11/02 18:17
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

>>俺やで!!さん
すいません、今回は手抜きかつ全力で遊びました。
南雲はきちんと次回(多分金曜日?)に出します! 涼野も一緒に出てくるので、やっとガゼバンをk……

>>くりあ
あははは〜すっごく残念クオリティに仕上がってすまんと地面に頭突きしたくなる私が通りますよ→

だめだめ! くりあは成層圏まで行っちゃだめだ! 早く戻ってこい〜^^;

2828してもらえたなら、マジで幸い。本当に甘いの書いたの初めてだから、かなり駄作に仕上がってしまったと激しく自負。でもくりあの言葉で心がGOODキタ—!書いてよかった! と思う。やっぱり他の人のリクを受けて、書くのってすっごく楽しい。私と違う考え方、感じ方、発想。どれも本当に魅力的で、自分と違う世界に触れられてすっごく心が躍った。

「虹」のシチュは、小学校の頃のNHK番組の(タイトル忘れたけど)テーマソングで、「キミと二人、虹を追いかけ迷った帰り道。ちょっぴり怖くて無理に笑っていた」というフレーズからの引用。アイリスってギリシア神話のものなんだぁ。きれいな名前だね^^虹らしく人と人をつなぐって感じかな?

私はどっちかと言うとアメリカのマヤとかあっち方面の神話が好きだから、ギリシャはあまり詳しくない。

くりあと同じで私も月。友達は明るいから、それを反射しているって感じ。アツヤのセリフを月にしたのも、静かにお前を照らすっていう意味を込めたつもりです。

黒かぁ……私もそこそこ好きかな? ではではコメントてんくすでした!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.206 )
日時: 2010/11/05 19:41
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
参照: またまた番外編w多分かなり長くなります

番外編 遊園地でこんにちわ!〜学園キ●一部パロ〜

 ある日……ハードな練習が終わった後、バーンはいつも通り自室のベットでうつ伏せになって倒れていました。プロミネンスのユニフォーム姿のままです。部屋の描写はめんどいので割愛(かつあい)。ま、書く日が来たら書くことといたしましょう。と、そこへ。

「バーン様バーン様バーン様バーン様バーン様バーン様」

 どたばたと騒々しい足音とバーンの名を連呼する声がドアの外でしたかと思うと、灸がかなり乱暴にドアを開けてバーンの部屋に躍り込んできました。 開けたと言っても、下品にも足でドアをけっ飛ばしながら入ってきたのですから、ドアを『蹴破った』の表現がどうにもしっくり来ます。ドアは木製とはいえ、それなりに強度があるので痛いはずですが、灸の顔色は全く変わらず。すごいですね。
 
「……うっせえ。あんだよ灸」

 うるさそうに顔をしかめながら、バーンはゆっくりとベッドからだるそうに身を起こしました。
 ふあーっと欠伸をしながら灸の方を見やると、灸は何やらユニフォームのポケットから取り出しまし、バーンの顔に近づけます。それはチケットでした。二枚あります。青いチケットで、観覧車の写真が載せられています。

「『ウリミヨランド』御優待券……あんだ? これ?」

 チケットに書かれている文字を読み上げた後、バーンはしげしげとチケットを眺め、疑問の言葉をこぼします。
 どっからどう見ても遊園地のただ券です。上の方に「フリーパス」とか小さく印刷されていますし。
 それを何故灸は持って来たんだ、と内心疑問に思っていると、灸は自信に満ちた笑みで笑います。皇帝ペンギンのごとく胸も張って見せます。

「懸賞で当てたんです! オレの天才的くじ運にかかればらっくしょーですよ」
「そうか。で、これを俺にどうしろって言うんだよ」

 バーンは聞かずにはいられなかったことを、はっきりと尋ねました。
 すると灸はよくぞ聞いて下さいました! と言わんばかりに急に声がハイテンションになります。

「このウリミヨランドに行きましょう」

 その言葉でバーンはプロミネンスの仲間を思い出します。
 エイリアでの生活は、ひたすら練習に明け暮る日々。最後に休んだのはいつだったかわからなくなるくらいに、身をすり減らして練習を続けてきました。そろそろチームメイトにも疲労の色が見え始めた昨今(さっこん)。そろそろ休みの日を作ってやんねぇと、と逡巡(しゅんじゅん)していた時です。なんというグッドタイミングで舞い込んだ話でしょう。バーンはお、いいなと身を乗り出します。

「まあ、たまには休むのもいいかもしんねぇな。で、メンバーは?」
「ただいまオレとバーン様を入れて二人です」

 チケットは一枚で二人まで入場可能。それが二枚あるってことは、四人まで行けると言うことです。バーンはもう一枚のチケットを睨みながら、う〜んと唸ります。

「チケットもったいねぇし、後二人、プロミネンスの中から誘うか。ヒートとレアン——」
「待って下さい! オレ、ガゼル様と一緒がいいです」

 サイデンかバーラでもいいかなと言いかけた時、灸が大声でその言葉を遮りました。一緒に行きたい相手がプロミネンスメンバーならまだしも、大嫌いなダイヤモンドダスト、しかもキャプテンであるという嫌な二重構造の言葉にバーンが露骨に嫌な顔を作ります。困ったように額に手を当てながら、盛大なため息。

「なんでガゼルが出てくるんだよ」
「オレが行きたいからです」
 
 揺るぎない声で灸がはっきりと答えながら、バーンの横に腰かけます。じっと懇願(こんがん)するような瞳でバーンを見据えますが、バーンは静かに首を横に振るのです。

「ダメだ。許可できねぇ。プロミネンスメンバーの中らにしろ」

 要求を突っぱねられた灸は不満そうに口を尖らせました。だがすぐに何か思いついたような顔になり、ポンと手を叩きます。

「だったら蓮さんは?」

 蓮、とバーンは寂しげにつぶやくと俯きました。下を向いたまま体育座りになり、指でベッドのシーツをいじり始めます。なんか空しいです。空虚です。

「もっと無理だ。あいつは雷門イレブン。ウリミヨランドがある町より、ずっと遠くにいる可能性がたけーよ」

 まるで自分に無理だと言い聞かせるかのように、バーンは呟きます。その声には哀愁が漂っています。顔も何だか憂いを帯びちゃってます。ですが、悲しいですが事実です。
 蓮は雷門イレブン所属ですから南船北馬(なんせんほくば)、毎日のように日本中を旅しています。一つの町にいたかと思うと、もう別の町へ。まるで四季がすぐに移ってしまうかのように、蓮はすぐに別の町へと消えていきます。四季が移るのを待たないように、蓮もまた待ってはくれません。どんなに手を伸ばしても、するりと抜け遠くへ遠くへ去って行くのです。

「バーン様、諦めちゃだめです! 蓮さんにメールしてみたらどうですか?」

 落ち込んでいるバーンの気持ちを察したのか、灸が明るく言います。その言葉でバーンは指先でシーツを弄る(まさぐる)のを止め、顔を上げます。
 そこに、灸が思いっきり顔を近づけてきました。二人の鼻先が触れ合うほどまでに近づけてきました。まるで観察でもするかのようにバーンの金色の瞳を、見つめてくるのです。目には「さっさとメールしろ」オーラが嫌と言うほど漂っています。嫌と言うほど心に訴えかけてきます。
 しばらくは睨みかえし、にらめっこを続けていましたが、とうとう心にかかる重圧に耐えきられなくなったバーンは、

「わかった。わかった」

 白旗を上げました。実際は上げてませんけどね。
 ベッドから飛び下りると、机の上に放置してあった携帯電話を手にとります。ぱか。ふたを開けました。

「メールすりゃあいいんだろ」
「はい!」

 ベッドからちくちくした視線を投げかけられては、どうしようもありません。バーンはしぶしぶ携帯電話のボタンをタイプしていくのでした。ところでバーンって絵文字とか使うのでしょうか? 気になります。

〜つづく〜
 

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.207 )
日時: 2010/11/09 17:13
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

 ぶーぶー。しばらくしてベッドが小さく揺れます。音の震源はベッドに置かれたバーンの携帯電話です。
 ちょうどベッドに腰かけていたバーンは手を伸ばし、携帯電話を起動。横から灸が覗き込んできます。
 履歴を見ると「新着メール一通」の文字。震える手でバーンがメールのボタンを押すと、差出人はやはり蓮からでした。今の時間なら夕食でも取っているかと思えば、どうも時間があったようです。結構長く打ってくれていました。
 内容を要約すると、蓮は偶然にもウリミヨランドがある町の近くに来ているらしく、電車を一時間ほど乗りつけば来れるとのこと。なんなら瞳子監督に頼んでみて、許可がもし取れれば行ってもいい。こんな趣旨(しゅし)のものでした。なんか偶然にしては出来すぎていますが、この世は超次元だから気にしちゃいけない。
 メールを見た灸は嬉しさのあまり、座ったまま跳ねます。当然下はベッドなので灸の身体は深く沈み、それなりにベッドは揺れます。ベッドの縦揺れに身をまかせながら、バーンは嬉しさ半面苦さ反面と言う微妙な顔でメールを見ていました。
 
「決定ですね! よっしゃあ!」

 そう高らかに拳を宙に突き上げる灸に対し、

「待て。ガゼルのやつが行くと言うかわからねぇぞ」

 バーンはどこまでも現実的でした。

 それからバーンは嫌々ながら当事者である灸を引き連れ、ダイヤモンドダストの宿舎の廊下を歩いていました。
 すれ違うたび、ダイヤモンドダストの人々は睨んできたり、こそこそと小声でなにか言ってみたり、わざとらしく目を合わせ、すぐに逸らしてみたり。これでもかと言うくらい嫌がらせのオンパレードを食らわせてきました。バーンはその都度ぶんなぐろうとか黒い感情が頭を走りますが、大好きな蓮と出かけるためだと必死に自分を鼓舞し、素知らぬふりで歩いていたのでした。ちなみに灸はどこ吹く風で完全に無視していました。
 で、ガゼルの部屋を訪ねてみると、話すことはないと扉越しに会ってやらないぞ通知。その言葉にドアを<アトミックフレア>で蹴破ってやろうかと思ったバーンですが、平静を務め蓮のことで話があると言いました。すると静かにドアが開き、ガゼルが顔を出します。ダイヤモンドダストのユニフォーム姿なり。

「……入れ」

 ぶっきらぼうにガゼルが促し、バーンと灸はガゼルの部屋に足を踏み入れます。ガゼルは仏頂面で腕を組み、椅子に座っていました。机の上には飲みかけの紅茶が入ったマグカップが置かれ、ほんのりと立つ白い湯気が空気の中に消えていきます。

「で、何だ蓮のことで話があるとは?」

 バーンは、部屋のベッドに座りながら、かなり手短に遊園地のことを説明。
 どうせこの態度じゃ断わられることは目に見えていますが、灸の熱いまなざし(もとい希望の眼差し)に負けたバーンは、事務的にですが教えてやるのでした。
 話が終わると、ガゼルは眉根を寄せます。普段冷静なだけに表情の変化は乏しいですが、今回ははっきりとわかるほどに顔をしかめました。

「…………」

 ガゼルは黙っていました。バーンと灸も黙っていました。部屋は静けさに包まれ、風がガラスを揺らす音だけが響きます。

「……いいだろう」

 ややあって、ガゼルが口を開きます。腕組みを解きながら立ち上がると、バーンの横に腰かけます。ただし嫌らしく30cm程距離を置きましたが。

「蓮が行くと言うのならば、私も行くこととしようではないか」

 こうして計画はスタートしたのです……


〜つづく〜~
こんなもんでよければリクはいつでも受け付けます♪
ってか長編化していますね^^;

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.208 )
日時: 2010/11/11 20:28
名前: 夢幻 ◆lWYtn5MZ2k (ID: FQaXdAFn)
参照: 「ゆめにっきが書きたいです先生ェ……」

おおぉぉww灸さんパネェっすw
リク受けてくださってまじ感謝w

灸さんが思ったよりかわいくてびっくりです。ゲヘゲヘ(
本編も楽しみにしてます(`・ω・)
次は蓮さんと4人でイチャコラ……ふひひ(

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.209 )
日時: 2010/11/24 18:01
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: /fPzXfuw)

 主人格——吹雪は、何が起きたのかわからないといったようにせわしく首を動かし、辺りの様子を見渡していた。蓮も急に”アツヤ”が”士郎”に戻ったことに驚きを隠せず、口をあんぐりと明けて吹雪を見つめることしかできなかった。
 風が生み出す葉擦れの音が蓮と吹雪の間を駆け抜けて行った。身が震えるような冷たい風で蓮は一気に現実に引き戻される。きょろきょろとする吹雪を見つけ、蓮はおそるおそる吹雪に声をかけた。

「ふ、吹雪くん? 吹雪 士郎くんだよね?」

 すると、吹雪は蓮の存在に気づいたらしくはっとした顔で振り返った。濃い緑の瞳には不思議がる色が宿っていたが、すぐに吹雪は何事もなかったかのように温和な笑みを浮かべる。

「そうだよ。何かのギャグかな? 白鳥くんは面白い人だね」

 聞こえた声は澄んでいてよく通る、いつもの吹雪の声だった。さっきまでの”アツヤ”の声は、どすがきいたような低く恐ろしい声だったから、まるで別人のようだ。

(……さっきのこと覚えてないのか。やっぱり吹雪くんは二重人格なんだ)

 心の中で呟き、改めて吹雪をまじまじとみた瞬間——鼻が急にむずむずしはじめ、蓮はそのまま両手で口を覆い、くしゃみをした。同時に身体が小刻みに震え始める。今更ながら、手足の感覚が麻痺していることに気付いた。同時に寒いことに気づいた。
 長居をするつもりはなかったのだが、アツヤのせいですっかり身体が冷え切ってしまったらしい。さっきまで寒いことも気付かないほど、アツヤと対峙することに集中していたせいだろう、と蓮は考えた。そうかもしれないがアツヤにも責任はあるので、内心でアツヤに悪態をつき、鼻をすすった。吹雪が苦笑した。

「そろそろ寒くなってきたね。白鳥くん、長いこと北海道の夜の風に当たっちゃだめだよ。風邪をひいちゃうよ」

 吹雪に諭され、蓮は困ったように笑った。

「北海道をなめてたかな〜じゃ、中に戻ろうか」

 梯子を降りると、蓮は吹雪と共にキャラバンの中に戻った。少し肌寒いとはいえ、やはり車の中の方がだいぶ暖かい。蓮の体の震えが止まる。
 円堂たちは眠りに落ちているらしく、静かな寝息があちこちから漏れていた。が、壁山だけは大きないびきをかいていて、隣に眠る栗松が少し寝苦しそうな顔をしている。その光景を見た二人は思わず微笑みあう。

「吹雪くん! また壁山くんいびきかいてる」
「あははは。本当だね」

 チームメイトを起こさないよう、二人は小声で囁いた。だがすぐに吹雪の口から小さな欠伸が漏れた。吹雪の目がまどろみはじめ、今にも閉じてしまいそうだ。蓮は一番前の席にそっと入ると、

「吹雪くん、おやすみ」

 小声で言った。吹雪もまた欠伸を噛み殺しながら、

「おやすみ、白鳥くん」

 眠そうな声で答えると、自分の席に座った。
 様子が気になった蓮はそっと吹雪の席に近づいてみる。吹雪は、染岡に寄り掛かり、両の手を膝の上できちんと組んで寝ている。寄り掛かられた染岡は、明らかに顔をしかめて眠っていた。
 染岡を不憫(ふびん)に思った蓮は、吹雪の身体を横に引っ張って染岡から少し離すと、そのまま座席にもたれかからせた。吹雪は起きるどころか、能天気に穏やかな寝息を立てている。そのリスなんかの小動物を思わせる可愛い寝顔に、蓮はアツヤを思い出した。

(アツヤって誰なんだ——それに僕が、自分で自分の記憶を封じてるってどういう意味なんだよ)

「……アツヤ」

 蓮は独りごつ。しかし、吹雪は眠りに落ちているだけだった。

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.210 )
日時: 2010/11/24 20:13
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: /fPzXfuw)
参照: 新幹線は詳しくないのでよくわかんない

 蓮がバスの中で夢の世界に入り始めていた頃、新幹線は東京を出発し、博多へと進んでいた。深夜であるし、時期が時期なので車内はガラガラ。ところどころぽつぽつと座る人々も大人の風貌の人間が多い中——明らかに周りから浮いた人間が二人、隣同士に座っていた。一人はまた私服姿の涼野であったが、横には見慣れない少年がいた。
 年のころは涼野と同じくらいだろう。炎を思わせる横に跳ねた真っ赤な髪。頭の上では何やらチューリップのような形になっている。少しきつめな金色の瞳は自信に満ち溢れたような光を宿し、鋭い観光を宿している。服は両袖部分は白く地の部分は黒いジャンパーの様な上着に、緑がかかった黄色の短パン、藍色のスニーカーを履いている。今は足組みをし、頭の後ろで手を組みながら、不機嫌そうに涼野を見ている。

「涼野 風介、おまえ長い間どこに行ってたんだよ」

 窓に頬杖(ほおづえ)をついて外の景色をボーっと眺めていた涼野は、めんどくさそうに横にめをやった。めをやっただけであった。何事もなかったかのように、再び視線を窓の外に向ける。外は真っ暗で、時折見える街灯の光を除いては何も見えない。

「雷門イレブンを追っていただけだ、南雲 晴矢(なぐも はるや)」

 涼野はめんどくさそうに答えた。横に座る『南雲 晴矢』と呼ばれた人間は露骨に嫌そうな顔を作る。

「それだけのためには、ずいぶんとなげー外出だったよなぁ?」
「キミには関係のないことだ」

 ガラス越しに涼野が嘲笑う表情が見え、南雲の顔はますます強張った。涼野はまだ嘲笑うような表情を浮かべながら、南雲の方に身体を向けた。

「キミこそ、何故私の後をついてくるのだ」

 南雲は苛立ったのか舌打ちをすると、
 
「風介、てめーがオレを京都行きに誘ったから、し・か・た・な・く! 着いてきてやったんだ」

 ”仕方なく”の節々に力を込め、南雲は吐き捨てるような勢いで涼野に噛みついた。金色の瞳でぎっと涼野を睨む。猛獣が見つめるような恐ろしい視線だが、涼野はまったく物怖じしない。鼻で笑うと、冷笑を浮かべた。

「”仕方なく”? 冗談も休み休み言うことだね。キミも私も考えることは同じだろう。京都に行けば、確実に蓮に会える。彼に会いたいからこそ、私に着いてきたのだろう」

 正鵠を射る(せいこくをいる)ことを涼野にずばり指摘され、南雲はばつが悪そうに俯いた。そして悲しげに蓮の名を呟いた。

「……蓮」
「彼とは5年ぶりの邂逅(かいこう)だったが」

 涼野は口元にほほ笑みをつくると、再度窓の外を見やった。また南雲に背を向けた。

「印象はずいぶんと変わった。あれほど私とキミの背に隠れて泣いていた蓮はずいぶんと強くなったぞ。いや、今も泣いていたらおかしいな」

 自分に言い聞かせるかのように涼野は、南雲に語りかけ、自嘲めいた笑みを浮かべた。南雲は顔を上げ、席わきの窓ガラスが映す涼野の表情を黙って睨んでいる。と、急に涼野が少し顔を下げ、しゅんとなった。傍から見てもわかるほど寂しげな面持ち。南雲は目を瞬く。

「だが。あの……愛嬌(あいきょう)のある笑みは、昔と変わらないね」

 何か思うところがあるのだろう、涼野はそれっきり口をつぐんでしまう。憂いに満ちた瞳がガラスを通じて南雲の瞳に飛び込んでくる。正確には涼野は視線をげていて、南雲を見てはいなかったが、嫌でも窓ガラスを見ていれば涼野の瞳は見えてくる。
 南雲もまた口を閉ざしていた。退屈そうに席前の網に手を突っ込んでペットボトルを取り出すと、ごくごくと飲んだ。列車が線路を走る音だけが定期的に聞こえてくる。

「あいつ。なんでオレ達の前から姿を消した」

 ややあって南雲が恨みがましく口を開いた。ペットボトルにふたをし、乱暴に網の中につっこむ。涼野が振り向く。

「また蓮が私たちを裏切ったと言うのか」

 非難するような口調で涼野が尋ね、南雲は目を細め、苛立ち混じりの口調で答えた。

「いなくなるタイミングがよすぎるんだよ。お前が作り話してなきゃ、確かになんかあったのかもしんねーけどよ。……オレは自分の耳で蓮の言葉を聞かない限り、あいつを完全に信じることはできない。それにあいつは雷門イレブンなんだろ?」

「ああ」

「話は変わるが、風介こそ正体がばれたらどうする気なんだよ」

 涼野は考え込むように視線を数秒宙に彷徨わせ、南雲をしっかりと見据える。青緑の瞳に強い意志の様な光が宿っていた。

「そのことなら何度も考えた」

 瞳に宿る光同様、迷いのない声で涼野は続ける。

「正体が判明していまえば私と蓮は今のままではいられないだろう……だが」

 ためらうように涼野は一度言葉を切った。顔に戸惑いの色が出ている。

「だが?」

 南雲がせっつき、涼野は迷いを払った顔で南雲をまっすぐ見つめる。
 
「だがこのまま敵同士でいれば蓮とは必ず会える。それだけで私は幸せなのだ」

「…………」

「5年前のように行方知れずになることもなく、ずっと蓮と会い続けることが出来る。それがどれほど幸福なことかわかるか?」

「わかんねーよ」

 南雲は呆れたように返事をした。涼野がふっと笑う。

「なら、たとえ話をしようではないか。たまたまスーパーで何でもよい、私がある菓子を買うことをためらったとする。欲しい私は翌日再度買いに行く。すると、そのある菓子はスーパーの棚から既になくなっていた、つまりは入荷しなくなっていて、二度と買えなかった——そんな経験は一度や二度、キミにもあるはずだろう」

「……まーな」

「この話と同じだ。菓子を買わない……ためらっていては、私は菓子を二度と買うことが出来ない——つまりは蓮と二度と会うことが出来なくなってしまうと思うのだ。彼がどこに住んでいるかなど私は知らないし、この戦いが終わったら蓮がどこへ行くのかわからない。敵だからと躊躇(ちゅうちょ)していては、彼は名字の通り、渡り鳥のごとく、どこか遠くの地へ——行ってしまう。そんな気がするのだ」

〜つづく〜
お久です^^久々なせいか、愚作であり意味不明な言葉満載になってます。やっと南雲出せました〜ファンの方長いことお待たせしました!これからがんがん出てくるので、その辺はご安心を!

いやはや11月にもなると勉強という名の幻想が私を包む……といいますか、本当にいっぱいいっぱい+中間テストがありました。

こんな中で私はなんと短編を始めてしまいました(ご存知の方も多いと思いますが^^;)。興味のある方は、ぜひぜひ調べてみてください^^タイトルは「忘れな草」ですv向こうもそろそろ書かないと(汗)

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.211 )
日時: 2010/11/24 19:09
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: /fPzXfuw)

>>夢幻さん
可愛く書けていてよかったですv

いつものことですが、キャラが上手く使えるかかなり不安要素がありましたので、ほっとしました!

あ〜もちろん蓮はいちゃ(強制終了)。続きも頑張って書いていきます!リクマジで感謝です!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.212 )
日時: 2010/11/30 17:32
名前: ふぁいん (ID: /fPzXfuw)

お久です!
南雲が出てきてすごく嬉しいです!頑張ってください!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.213 )
日時: 2010/12/03 17:17
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: /fPzXfuw)

「バカじゃねーの」

 南雲は呆れたように言うと、だらしなく座席にもたれかかった。考え込むように数秒程視線を宙に彷徨わせてから、目だけを涼野に向ける。涼野は思いつめたような表情で過ぎていく窓の景色を追っていた。声をかけたが返事はなかった。ぼうっとただただ景色を見つめているのだ。
 真っ暗で、せいぜい山の稜線(りょうせん)がかろうじてわかる程度の景色を見て何が楽しいのか南雲には全くわからない。聞いていないだろうと思いつつも、南雲は背を向ける涼野に語りかける。

「蓮は”今”のオレたちにとっちゃ敵だ。敵に情けなんてかけてたら、ジェネシスの座をグランから奪い取れなくなるぞ」

 叱るような口調で南雲が言うと、涼野は僅かに顔を南雲の方へ向けた。悲しげな青緑の瞳で南雲を睨みつけてくる。悲しげな色がいつもの涼野らしい嘲笑のそれへと変わって行く。

「なら晴矢、今すぐプロミネンスを率いて雷門を潰してくるといい。果たしてキミに蓮を倒すことが出来るかな?」

 ふふと涼野が不敵な笑みを浮かべながら尋ねると、南雲はバネではじかれたように立ち上がった。焦りと戸惑いが混ぜったような表情になっている。

「れ、蓮がいようと! オレは……オレは……」

 言葉は尻すぼまりになり、南雲はとうとう口ごもってしまった。涼野はまた窓の向こうを見ていた。だがガラス越しに、やっぱりそうだと言わんばかりの得意げな笑みを浮かべているのが目に入り、

「くっそ!」

 何故だか馬鹿にされたような感覚を覚え腹立たしくなった。南雲は、乱暴にも前の座席を蹴りつけた。幸い前には誰も座っていなかったので、靴越しに空しく座席が揺れる振動が伝わってくるだけである。南雲は空虚感を覚え、独りでにため息を漏らした。

「……人の絆と言うものは」

 不意に涼野が口を開き、南雲は涼野に視線をやる。相変わらず自分に背を向けているが、南雲は黙って言葉の続きを待った。
 涼野はちらっと流し目に南雲見ると、ガラスに手を当てながら目を伏せた。

「実にやっかいなものだ。時にこうして我々の手枷(てかせ)、足枷(あしかせ)となるからな」

 蓮の存在がどれだけ涼野にとって大きいかが、言外に匂わす。どうして蓮にここまでこだわるのかわからない。確かに昔はとても仲の良い友人だった。幼い頃に共に遊んだ遠い記憶は南雲も鮮明に思い出せる。
 
 例えばある日住宅街で蓮と三人で走っていたら、蓮だけがずっこけて。男のくせに泣いて。仕方がないから自分と風介が立ち止まってかえるぞ、と言って手を伸ばすと、笑みを見せてくれる。見るものを和ませる不思議な笑み。そしてはるやー! ふうすけー! と自分の名前を呼びながら、嘘のように元気になった。立ちあがってこちらに駆けて来た。

 でも今は違うのだ。どんなに名前を呼んでも、蓮は来ない。いや、名前を呼ぶことすら本来なら許されないのだから。
 言うか言うまいか悩んだが、南雲は覚悟を決めて、

「風介、だったら今のうちにその”絆”を立ち切っちまえばどうだ? どうせいつかは正体ばれるんだ。早いうちの方がお前のためになるだろ?」

 多分涼野は激怒するだろう、と南雲は思っていた。自分が蓮が裏切ったと口にするたび不愉快そうな顔をするから、きっとそうだろうと考えていた。しかし、思った以上に涼野は冷静だった。
 ガラスから手を離し、伏せていた目を上げると、振り向いて南雲を見、静かに首を振る。

「断わるね。確かに、いつかは蓮に私の正体を知られる日が来るだろう。しかし、だ。私は彼とこうして仲良くすることを覚えてしまった。蓮は、”ジェネシス”の称号よりも遥かに価値のあるものだ。関係が崩れる日までせいぜい楽しませてもらうよ」

 涼野は力強く言い切った。語勢から、誰に何と言われようとも自分は蓮と付き合うことを止めないと言う意志の強さがしっかり伝わってくる。南雲はわかっていたとはいえ、言葉が出てこなかった。
 言葉事態は喉元まで迫上がってきているが、呆れの方が先行してなかなか口に出すことが出来なかったのだ。数秒無言の時間を要し、電車が線路を走る音だけがまた二人の間を通り抜けていく。
 ややあって、南雲は幽霊でも見たかのような面持ちでようやく言葉を発した。

「風介、一応聞いてやるが頭は大丈夫か?」

 呆れを通り越した戸惑いの声で南雲が尋ねると、涼野はふっと柔らかい笑みを見せた。

「私はいつもと変わらないつもりだ」
「……ビョーキだな、お前」

 南雲はうんざりしながら呟いた。

「ああ。私はビョーキだよ」

 涼野は自虐気味に呟いた。
 二人の間に静寂が戻り、南雲が欠伸をした。ぶっきらぼうにオレはもう寝る。おやすみと言った。涼野もそっけなくおやすみと返した。
 南雲は涼野に背を向けるように座席に寄り掛かると、身体を少し丸くし、そのまま目を閉じた。五秒後には彼の口から穏やかな寝息が洩れていた。心地よい電車の縦揺れが南雲の眠気を催したのだろう。
 穏やかな南雲の寝顔を見つめていた涼野は、顔をほころばせた。今までの悲しげなものではなく、優しく見守るような慈愛に満ちたものだった。

「……明日は早いぞ、晴矢」

 南雲の寝息が口から洩れる。答えはなかった。満足したように涼野は小さく笑い声を立てると、窓辺につっぷした。額に窓ガラスを当てると、ひんやりとした感触と電車の振動が伝わってくる。これでは眠れない。窓ガラスから少し手前につっぷすと、涼野もまた夢の世界に落ちて行った。
 

〜つづく〜
 週一更新再!ちなみに”絆”と言う言葉は元々、動物をつなぐ縄の意味だったらしいです。確かに人をある意味で縛るって感じで納得できます。
 絆っていいものですが、あえて悪い方向に使ってみました。縛られるが故に拘束される、見たいな。

 今回の南雲の回想シーンは>>162の二人サイド。>>162は伏線と言ってよかったのでしょうか^^;
 
 蓮は情けないほど弱気だった子。幼稚園時代にいた子をモデルにしています。私もその子と同じで気が弱く、ブランコを取られたりしていましたが^^; 
 今のとこは何とかやってけます。人間性格は変わるもんです!
 
 今回は少しガゼバンも狙ってみました。はい私が逆に自爆しました! 喧嘩ばっかり。ガゼバンって喧嘩はするけど、ときどき中イイ的なツンデレイメージがあるんです。結局は可愛いって何!? 萌えって何!? 求ム私の萌えの伝道師様。詳しい方は私にれ……

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.214 )
日時: 2010/12/11 13:57
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 9GT/oPaY)

 北海道を発った雷門中学校サッカー部一同は、再度南下を始めた。
 途中瞳子はSPフィクサーズに京都のどこの学校が襲撃予告を受けたのか調べるよう塔子経由で尋ねた。いくらチームに総理大臣の娘がいるとはいえ、公共の機関をただで使うのはどうかと思われるが、塔子に言わせると大丈夫だそうだ。蓮は、前の秘密の北海道旅行という弱みを握られているので口出しすることはできなかった。

 休憩しながら高速道路を南下し、イナズマキャラバンはいよいよ京都の街に入る。わずか数百年前の首都まで首都だった街。大きな路線の駅前はビルが並びかつての面影(おもかげ)は見られない。だが、一度駅前を離れると寺やTVで見るような昔ながらの街並みが広がり雷門サッカー部はおおいにはしゃいだ。壁山が土産を買いたいと叫んで、みなの失笑を買っていた。
北海道に比べると温度は心地よいもので、外でサッカー練習などもやりそうである。

 イナズマキャラバンは京都駅から一時間ほど走った、郊外のような場所で止まった。街から少し離れた、畑と田んぼが織りなす緑が永遠と広がる殺風景な場所だ。瞳子に言われるがままイナズマキャラバンを降り、10分程歩くとこじんまりとした丘が見えてくる。丘にはなぜか竹林があった。空に向かいまっすぐのびる竹の長さは数メートル程。まめに手入れされているのか長さは均一だった。
建物の一部と思わしき赤い壁面と石造りの屋根が竹林の間から顔をのぞかせている。。


「あれが漫遊寺中学校? なんだか中国のショウリンなんとかに出てきそう」

 蓮が竹林の間に見える建物らしきものを指さしながら言った。すると先頭を歩く瞳子が後ろを振り返り、

「ええ。SPフィクサーズからの情報によるとあそこで間違いないそうよ。漫遊寺は、“裏の優勝校”とも呼ばれる実力があるそうだから、それで狙われたのかもしれないわね」

 その話を聞いていた鬼道が腕を組む。

「聞いたことがある。表のフットボールフロンティア優勝校が帝国学園(ていこくがくえん)だとすると、裏の優勝校は漫遊寺中学校だと」

 思いもかけない話に雷門サッカー部は素直に感嘆の声を漏らす。世の中はまだまだ知らない未知のことだらけだ、と蓮は考えていた。
 
 それから漫遊寺中学校の内容をとりとめもなく話していると、あっという間に丘のふもとについた。
 竹林が日の光を遮り、辺りは薄暗い。そして少し肌寒い。竹林の足元には緑の藻(も)が多く張り付いていて、京都と言う土地柄のせいかどこか歴史を感じさせる。
 そんな竹林の間が、ある縦のラインだけ不自然になくなっていた。漫遊寺中学校へと続く石段があるからだ。横幅は大人四人は楽々通れそうなほど余裕はあるが、段数はかなり多い。ゴール地点の段は灰色の点のように見える。
 あまりの長さに雷門サッカー部は絶句しながら、一段目へと近づく。光が差さないせいだろう。灰色の石のあちこちにコケが生えている。

「んじゃあ行くぞ!」

 円堂が張り切りながら拳を天に突き上げ、意気揚々と階段をのぼりはじめた。

「おー」

 他の部員たちはやる気がなそうな声を出しながら、弱々しく拳を上げた。
 調子よく階段を進んでいく円堂と対照的に、いかにもだるそうな感じでゆっくりと階段を上り始める。手すりと言うものはないので、自分の力で上るしかないのだ。
 円堂はわくわくしているのだろうか。階段を一段や二段飛ばしながらどんどん進んでいく。

「白鳥! 早く来いよ!」
「ま、待てよ! 円堂くん!」

 初めから円堂の横にいた蓮は不幸にも、円堂と同じペースで進まなければならなくなっていた。慌てて階段を一段、二段とまたぎながらぐいぐい上って行く。

「ほら、もうついただろ?」

 円堂に追いつくことだけで必死だった蓮は、大した疲れも感じないうちに学校前についた。
 漫遊中は本当に中国にありそうな学校だ。校門は日本にある寺の入り口のようだ。違うのは寺は屋根部分などは黒などが多いが、こちらは赤いと言うこと。校門の向こうはグラウンドらしく、サッカーゴールとプレイしている選手の姿が視界に飛び込んでくる。
 蓮がぼーっと漫遊寺中学校を見ていると、円堂は一人校門の中に駆けこんでいった。蓮は我に返り、円堂の後に続いて、

「どわあっ」
「わっ」

 二人分の悲鳴が上がった。砂煙が派手に上がる。グラウンドで練習する選手たちは誰も見向きもしなかった。
 煙が止むと、深さ二mほどの穴の底に円堂と蓮が倒れているのが見えた。円堂がうつ伏せで穴の底に倒れ、その背中に蓮がやはりうつ伏せで乗っかっている。二人とも苦しそうに呻いていた。
 円堂は落ちる時に、とっさに蓮のジャージの袖を引っ張ってしまった。そのせいで蓮はまき沿いをくらって、共に落ちてしまったのだ。

「なんで落とし穴があるんだよ」

 蓮は円堂の背中から起き上がりながら、憎々しげに上を見上げる。すると上からこちらを見ている一人の少年と目があった。
 ベージュの道着をまとっているから、この学校の生徒なのだろう。悪魔の角を思わせるように、左右で二対ずつ跳ねている藍色の髪。小さな顔からすると結構大きめな山吹色の瞳。見上げているので何とも言えないが、かなり小柄な体格のように思える。
 初めこそ不思議がるようにこちらを見下ろしていたが、蓮と視線がぶつかった瞬間、口元が歪んだ。嘲笑するような顔つきになり、馬鹿にするような視線を投げかけて来た。

「うっしっし〜ひっかかったなぁ」

 少年は拳を口元に当て、実に楽しそうに笑った。蓮は目つきを細め、上にいる少年に尋ねる。

「この落とし穴作ったのキミだね?」
「そうだよ。オレが作ったんだ。うっしっし」

 少年は明らかに蓮を小馬鹿にする態度で答え、愉快そうにニヤリと笑った。蓮は呆れたようにため息をつくと、腕を組んで少年を睨みつける。

「ずいぶんとひどいじゃないか」

 睨みつけられた少年はわずかにびくついたが、べ〜と舌を出して見せる。

「ひっかかるほうが悪いんだよ」

 
 さすがにイライラが募ってきた蓮は、目つきを鋭くした。怖い、と言うか迫力のあるもので、少年は蛇に睨まれた蛙のように硬直した。顔から一気に血の気がうせ、青ざめていく。逃げ出そうとそろそろと穴から離れようとする。逃げられる前に叱り飛ばそうと、蓮は大きく息を吸い、怒鳴ろうと思った瞬間、

「こら! 木暮(こぐれ)!」

 耳の鼓膜が破れるかと思うくらい大きな怒鳴り声が聞こえた。蓮は怒鳴るのを止め、反射的に耳を両手で塞いだ。同時に少年が青ざめた顔のままどこか遠くへ走って行くのが目に入ってきていた。

〜つづく〜
やっと定期テストが終わりましたぁ!受験が終わるまで週一更新ですが、よろしくお願いいたします。

気付いたら参照が3700!
このような愚作を見てくださってありがとうございます!

木暮をやっと出せましたv落とし穴を作ったりとやんちゃな子ですが、好きですよ〜!最近はいたずらがめっきり減って悲しい限りです;;
 

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.215 )
日時: 2010/12/11 14:07
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 9GT/oPaY)
参照: 南雲が好きになったのはじつはごく最近さ〜

>>ふぁいん様
ご返答が遅くなって申し訳ありません;;

やっと南雲が出てきましたねv(他人事ww)
この小説を書き始めたのが三月で涼野はそのくらいには出てんのに、南雲は十二月ってどういうことー!?と南雲ファンの方々には確実に思われていると思います。

一気に二人も出してしまうと、事態が思いもよらない方向に行きそうだって言うのと、いい意味で涼野と対照的に描きたかったんです。蓮を信じる、信じないみたいな感じで。結局表現できていないと思いますが;;

これからこの二人は毎章出てくるのでお楽しみに!

ではではコメントさんクスでした^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.216 )
日時: 2010/12/15 11:14
名前: ふぁいん (ID: 9GT/oPaY)

ガゼバン可愛い28282828。これからもファイトです!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.217 )
日時: 2011/02/08 18:26
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

 木暮が見えなくなると、代わりに縦に細長い楕円形の顔を持ち、オレンジのバンダナを頭に巻いた人間が焦った顔つきで、穴の中を覗き込んできた。見えている衣装は木暮と同じもので、漫遊寺の生徒らしい。その少年に続いて、雷門サッカー部のメンバーも心配そうに穴の中を見てくる。

「お、お二人とも大丈夫ですか!?」

 少年が呼びかけてきて、蓮と円堂は安全だと言うことを示すために手を振って答えた。


 雷門サッカー部のメンバーが総出で蓮と円堂を穴の底から引っ張り上げ、穴の底から救出された二人はジャージに着いた砂埃を手で払っていた。払っても後は消えるわけではないので、青と黄色のジャージにはところどころ茶色い斑点がこびりついてしまっている。蓮は円堂の上に落ちたので、痛みはない。しかし蓮の下敷きとなった円堂は背中が痛むらしく、しきりにさすっている。埃(ほこり)を擦ったせいで喉はからからに乾き、いがらっぽい。二人とも長い間咳き込んでいた。

「ぷはぁ……喉がカラカラだ」

 円堂の声は少し擦れていた。蓮も喉がかゆいような感覚が残っていて、時折喉を指でさすっている。

「ひどいめにあったね、円堂くん」

「我がサッカー部の部員、木暮がご迷惑をおかけして。本当にみなさまには、謝っても謝り切れません」

 少年こと漫遊寺サッカー部のキャプテン——垣田(かきた)は、深々と頭を下げた。
 垣田のすぐ後ろのグラウンドでは、木暮が一人でグラウンド整備をやらされている。今は雑巾でゴールのポストを拭いていた。クロスバーの上に乗っかり、嫌そうな顔で黙々と拭き掃除を続けている。

「あの子は、いつもあんな感じなんですか?」

 木暮を軽く一瞥した春奈が、垣田に尋ねる。すると垣田は顔を上げ、呆れたようにため息をついた。

「はい。木暮はあんな風に毎日いたずらばかりですよ……周りをすべて敵だと思い込んでいまして、あやつからすると復讐のつもりなのでしょう。ですから、サッカーをやらせるよりも、精神を一から鍛えるべきだと思い、あのように修行をさせているのですが」

 垣田は振り向き、背後で掃除をしているはずの木暮の姿を探した。しかしいつの間にか木暮の姿はなくなっている。クロスバーの上に雑巾だけがかかっていて、当の本人がお寺の様な漫遊寺校舎の中へと走り込んで行く後ろ姿があった。
 垣田が再度大きな声で怒り、雷門サッカー部は一斉に両手で耳を塞ぐ。木暮はわざとらしく立ち止まると、ニヤリと性根が悪い笑みを作りながら振り返る。そして、何事もなかったかのように、校舎の中へと駆けこんでいった。顔をしかめ頭を抱えた垣田が、

「……徒(いたずら)に終わってしまいます」

「もう! どうして人にいたずらばかりするのかしら」

 苛立った様子を見せる春奈に蓮がなだめるように声をかける。

「木暮くんって、寂しがり屋なのかも」
「寂しがりにしてはやりすぎだわ」
「でも、どうしてそんな性格になったのかしら」

 何気なく秋が呟き、垣田の顔が少し暗くなった。話すのを逡巡(しゅんじゅん)しているのか、視線が宙をさまよっている。やがて覚悟を決めたように雷門サッカー部をぐるりと見渡し、キャプテンである円堂をしっかりと見据える。

「それは恐らく木暮の過去のせいだと思います」
「過去?」

 続きをためらうように垣田は視線を少し下げ、

「……あやつは幼い頃、母親に捨てられたのです」

 重い口調で口を開いた。

「……捨てられた」

 春奈と鬼道がわずかに眉根を寄せる。蓮が無表情で氷のように冷たい声で言ったが、誰も気にしなかった。垣田は憐れむような悲しげな表情で話を続ける。

「母親と一緒に出かけていたところ、駅に置き去りにされたようでして……それ以来、人を信じることが出来なくなり、あんなひねくれた性格になってしまったのです」
「……バカ」

 蓮が低い声で呟いたが、誰も気にしなかった。

「立ち話は何ですから、中にご案内しましょう。どうぞこちらへ」

 垣田の先導で、重苦しい空気の雷門サッカー部はゆっくりと校舎の中へと歩みを進めていく。その時、蓮は春奈がひとりでみんなとは逆方向——先ほど木暮が姿を消した方向に進んでいくのが目にとまった。

「あれ、春奈さんどこに行くんだろ」

 蓮はそっと気付かれないように列から抜けると、春奈の後を尾行し始めた。

〜つづく〜
久々に書いたせいで小説の腕が落ちた気が……!
あ、次回は蓮の過去がちょーっこし判明いたします。薔薇結晶さんに応募していただいたオリキャラも出します!

ここで少し残念なお知らせがあります。小説打ち切り!……嘘です^^;一月下旬までお休みさせていただきます。

 いよいよ受験が間近に迫り、能天気に小説を書いている時間がなくなってきてしまいました;;試験自体は一月下旬で、終わってしまえばあとは面接だけなので書きたい放題かけると思います。
 短編リクなんかも一月以降に消化します。書きかけで止めてしまっている、夢幻さんにはとくに謝りたいです。

あ、後。年末なので人気投票をやってみたいと思います!期間は私が次に小説を書きに来る一月の下旬までです^^票が来るか不安だ^^;

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.218 )
日時: 2010/12/28 16:34
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 9GT/oPaY)
参照: 参照が4000間近!てんくすです^^

企画第何代だろね〜試練の戦い人気投票!

雫「お〜人気投票ですか」
しずく「はい! よろしくお願いします!理由は適当でいいですよ。愛を語ってくれても、むしろ語ってください! ぎぶみーらぶ!」
雫「2、3、4は作者の趣味だろww4は何!?お前、カリュウ〜はどうした?」
しずく「考え中。今、改めて蓮をイナズマジャパンにすべきかファイアードラゴンにするべきかの瀬戸際に・・・。あ、人気のある組み合わせは小説内で多分(←ここ重要)増えます」

①小説内で好きなキャラランキングベスト3(オリキャラもオッケー!)

1位【】 理由【】

2位【】 理由【】

3位【】 理由【】

②なんか蓮って色々絡んじゃってますが……誰との絡みが好き?(3つまでおっけー。二人以上もおっけーです。例えばガゼルとバーンとか)

【】 理由【】

【】 理由【】

【】 理由【】

③再度降臨、好きなセリフ!(3つまで!前回は理由がなかったので、追加です^)

【】 理由【】

【】 理由【】

【】 理由【】

④まだ終わってないけど、次回作のお話。半分も来ると考えたいです。
蓮は……どっちがいいでしょう!?

【イナズマジャパンorファイアードラゴン】

理由【】

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.219 )
日時: 2010/12/28 12:09
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 9GT/oPaY)

>>ふぁいんさん
が、ガゼバンが可愛い……だとっ!?
すごく嬉しいお言葉です><やっぱりこの二人は素敵ですよね〜仲間がいてとても嬉しいです^^

しばらくお休みですが、よければアンケートの方……お答えいただけると嬉しいです^^票が来ないのがちょっと不安でw

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜! 人気投票ご協力願います! ( No.220 )
日時: 2010/12/28 18:16
名前: ふぁいん (ID: 9GT/oPaY)

アンケート答えます!

①小説内で好きなキャラランキングベスト3(オリキャラもオッケー!)

1位【ガゼル様】 理由【可愛いから!北海道編は可愛すぎ!】

2位【バーン様】 理由【かっこいいから】

3位【吹雪】 理由【森のアツヤと蓮のシーンが印象に残ったから】

②なんか蓮って色々絡んじゃってますが……誰との絡みが好き?(3つまでおっけー。二人以上もおっけーです。例えばガゼルとバーンとか)

【ガゼル様】 理由【二人とも可愛いから】

【バーン様】 理由【まだだけど、楽しみだから】

【】 理由【】

③再度降臨、好きなセリフ!(3つまで!前回は理由がなかったので、追加です^)

【ガゼル様の「実にやっかいなものだ。時にこうして我々の手枷(てかせ)、足枷(あしかせ)となるからな」】 理由【何となく】

【】 理由【】

【】 理由【】

④まだ終わってないけど、次回作のお話。半分も来ると考えたいです。
蓮は……どっちがいいでしょう!?

【ファイアードラゴン】

理由【てるみんもいるし、ガゼル様もバーン様もいるから】

なんかてきとーですが、よろしくお願いいたします!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜! 人気投票ご協力願います! ( No.221 )
日時: 2010/12/30 14:26
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 蓮アフ、涼南的な年越しで学園〜長を少し変えた

 12月31日、午後11時の遅く。もう早いもので、いよいよ新年を迎える時間となった。新年を迎える時間は誰にでも平等にあるように、ファイアードラゴンのメンバーにもそれはある。
 シベリア気団がもたらした寒さは夜になるといっそう強くなる。だからかアフロディ、南雲、涼野、蓮の4人は暖房がよく効いているアフロディの部屋に集まっていた。何故か四人ともファイアードラゴンのユニフォーム姿だった。
 南雲と涼野はベッドに座り、コンビニで買ってきたお菓子を食いあさっている。二人が袋をいじる乾いた音と、お菓子を噛み砕く音が交互に聞こえる。10分ほど前からずっと食べているので、ベッドの上は茶色や黄色のお菓子のかすだらけで、一種の模様のように見える。かすだらけなのはベッドだらけではなく、南雲と涼野もだ。口の周りにチョコレートやらポテトチップスの青ノリがついている。
「もうすぐ年明けだね、アフロディ」
 部屋の窓枠にもたれかかっていた蓮が、すぐ右横の壁に寄り掛かっているアフロディに声をかける。アフロディはタバコをぽいすてした人をとがめるような視線を、お菓子にありつく二名に送っていたが、蓮に向き直ると柔らかい微笑を浮かべる。いわゆる神の頬笑み(ゴッドスマイル)である。なんかかっこいい気がしなくもないが、深い意味はない。
「ふふ、そうだね。蓮。キミたちと年越しできるなんて、去年は思ってもみなかったよ」
「僕もだよ」
 笑い返した蓮は急に目を細め、ベッドに座る二名を蔑すんだ眼で見やる。
「……年越し前に菓子食ってる鈍(なまくら)な人間が二人もいるなんて、思ってもみなかったな」
 心底呆れた声で蓮が言う。額をこめかみに当て、ため息をつく。
「晴矢、風介。どんだけ食えば気が済むんだよ」
 非難された二名のうち、南雲は顔を上げて蓮を一瞥し、自分たちがやっていることは当然だと言わんばかりの顔で、蓮と同じく呆れかえったような顔をしているアフロディに、
「こんな夜中まで起きてると腹減るんだよ。なあ、風……」
 同意を求めようと涼野の方を振り向いた南雲は、風介と呼ぶことを止めてしまった。自分が食べようと思って買ったお菓子——コイケヤのポテトチップス(青のり味)の袋を、涼野がさっさと開けて、一人で食べ始めていたからである。南雲の金色の瞳にみるみるうちに怒りの色が宿り、南雲は涼野に向かって吠える。
「おい! それはオレのもんだ!」
 まるで南雲が眼中にないかのように、一人でせっせとポテトチップスを食べていた涼野が、うるさそうに視線を上げる。口にポテトチップスを持っていき、がりっと噛み砕く音が聞こえた。
「仕方がない。少し分けてやろう」
「やろうって偉そうに言うな」
 上から見下すような態度に南雲は腹が立ったらしい。腕を組んで、涼野を睨みつける。しかし涼野はあっさりと南雲から視線を逸らし、蓮とアフロディにポテトチップスの袋を持った手を伸ばす。
「蓮とアフロディもどうだ?」
「あ、じゃあいただきま〜す」
「少しだけいただくよ」
 壁際に立っていたアフロディが涼野からポテトチップスの袋を受け取ると、窓際に座る蓮の横に腰をおろし、二人で意気揚々と分けあい始める。その間、もちろん南雲は無視されていた。
 南雲の金の瞳に紅蓮の炎にも似た輝きがやどり、どんどん強くなっていくのにさほど時間は要さなかった。南雲は両手で涼野の顔を掴むと、無理やり自分の方を向くように動かす。
「オレを無視するな」
 獣の威嚇音にも聞こえる低い声で南雲が注意すると、涼野ははっきりとわかるほど顔をしかめた。
「うるさいぞ晴矢。キミに渡す分はもうない」
「あんだと!?」
 怒号を発した南雲は、涼野の顔から手を離すと、猛獣のように歯を見せ、罵詈雑言(ばりぞうごん)を涼野に浴びせた。言われた涼野もカチンと来たらしく、顔に深い皺をよせ、珍しく吠える。目には目をと言わんばかりに似たような言葉を並べ、言い返す。低レベルな悶着がまた始まってしまった。
 南雲と涼野のにらみ合いが怖しく、アフロディは後ずさる様に部屋の隅に行く。だが、蓮は違った。
 一触即発漂う空気の二人に無言でゆっくりと近づき、途中ベッドに置かれている枕を持ち上げた。巻かれていた白いタオルを近くに捨てる。おもむろに腕を振り上げ、直後持っていた枕で二人の頭を次々と殴って行く。枕の中身が擦れ合う音がした。叩かれた南雲と涼野は少しつんのめり倒れかけた。
 不意打ちを食らった南雲と涼野は、ほとんど同時に立ちあがり、殴った人間に向かって牙をむく。全くいいコンビである。
「何をするのだ蓮!」
「痛いじゃねーか!」
 蓮がとった行為は火に油を注ぐ行為で、怒りを何十倍にも膨らませた南雲と涼野が蓮に詰め寄る結果となってしまった。怒り心頭の二人は、顔がほのかに上気するほど頬を真っ赤にし、今にも蓮に躍りかかろうとじりじりと距離を近づける。しかし、
「ごちゃごちゃうるさい!」
 二人の剣幕をはるかに凌駕する迫力で、蓮が南雲と涼野を叱り飛ばした。南雲と涼野はびくっと身を震わせる。アフロディが部屋の隅から、引きつった笑みで蓮を眺めていた。
「年明け前に喧嘩するな! 喧嘩するなら外で年を越してこい!」
 立場は逆転、烈火のごとく激怒する蓮を前に南雲と涼野は身をすくめることしかできない。怒られる子供のようにしゅんとし、頭を下げている。
「分かったら返事をしろ」
 逆らったら殺される……と思わせるオーラを放つ蓮が、笑顔で命令をする。何故か手に持っていたまくらを両手で軽く握ると、まくらがきしむ嫌な音がした。
 南雲と涼野は決まりが悪そうにお互いを見やると、蓮に土下座をする形で頭を下げる。いつもと立場が逆転している。
「……わかったよ」
「……わかった」
「と、年明けと言えばボクは今年の最後に言いたい言葉があるんだよ」
 アフロディが恐怖一色に染まった空気を払しょくするように口を開き、蓮がいつもの穏やかなオーラを発し始めた。南雲と涼野は、圧迫感から解放されて安堵のため息をつく。
 アフロディの隣に再度腰かけた蓮は、
「『っふ、ボクは神だから来年も美しくあるよ』」
 アフロディの声音を真似しながら、後ろ髪を払って見せた。アフロディは、小さく笑い声を上げ首を振る。
「違うよ。ボクが言いたい言葉は」
 隣に座る蓮をしっかりと見据え、
「ボクのベストパートナーはキミだよ、蓮」
「いつお前のベストパートナーになった!?」
 蓮は速攻で訂正に入る。その時だった。
 ごーんと鐘を撃つ鈍い音が窓の向こうから微かに聞こえた。一度始まった音は夜の闇を裂きながら断続的になり、新年を迎えたことを知らせていく。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜! 人気投票ご協力願います! ( No.222 )
日時: 2011/01/07 12:08
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

「ふふ。今年の初めての言葉にできて嬉しかったよ」
「ろ、ろくでもない言葉が今年の第一声になったぁ」
 アフロディが満足そうに蓮に笑いかける中、蓮は対照的にしゅんとし、がっくりと頭を垂れた。あけましておめでとう! と言いたかったのに、アフロディのせいで見事にろくでもない年越しをしてしまったものだ。間違いなく図っていた。きれいにだまされた自分に苛立ちを覚える。
「あ、あけましておめでとう、だな。アフロディ、風介、蓮」
 南雲は新年を迎えたことに気づくと、立ちあがって、部屋内にいる三人に新年のあいさつをした。すると横にいる涼野も立ち上がり、
「メリークリスマス。アフロディ、晴矢、蓮」
 真顔で一週間ほど前に終わった行事のあいさつをした。
「クリスマスはもう終わっただろ」
 南雲が突っ込むと、涼野は不思議そうに首を傾げる。
「だが、韓国では年を越したらまずこう挨拶をするとアフロディが言っていたぞ」
 絶句した南雲であったが、切り替えるように咳払いをし、視線を宙に彷徨わせながらつっかえつっかえに、
「な、なあお前ら。き、聞いてほしいことがあ、あんだけど」
「なんだよ?」
「何?」
 三人が一斉に南雲を注目する。南雲は俯き、ばつが悪そうに頭を掻いていた。ややあって、断言する。
「こ、今年もしっかりサッカーやろうな」
 何を改まって……と蓮がポツリとこぼし、涼野とアフロディが頷く。南雲は数秒固待ったのち、自分の手を伸ばした。
「だ、だからよ! 景気づけにみんなで手を合わせようぜ。ほら、オレの手の上に手を置け」
 座っていた蓮とアフロディが立ち上がり、涼野の横に並ぶ。
「じゃあ風介から」
 蓮が涼野の手を掴んで、南雲の手の上に運んだ。自分の手の甲と南雲の手の甲が触れた瞬間、涼野は嫌そうに顔をしかめる。
「何故晴矢の上に置かなければならないのだ」
「ファイアードラゴンのベストパートナーなんだしな」
 涼野の不平を蓮はウィンクをして軽くいなし、涼野の手の上に自分の手を重ねた。
「じゃあ最後はボクだ」
 その上にアフロディの白くほっそりとした腕が載る。こうして四人の手が重なると、
「お、少し重いな。行くぜ! ファイアードラゴン!」
 南雲が掛け声を発し、
「えい、えい、おー!」
 ノリの言い蓮が続きの掛け声。おーで四人は手を上から下に勢いよく振った。


 それから約一時間後、宿舎階下の食堂。
「ふぅ」
 深夜の静寂にファイアードラゴン主将——チャンスゥのため息が溶けていく。深夜に食堂にいると言うのもおかしいが、チャンスゥは何故か割烹着(かっぽうぎ)を着ていた。頭に白い三角布を巻き、白いかっぽう着と言うどこぞの古き時代の母を思わせる姿だ。韓国とかツッコミはなし。ここ超次元だし。
「これで正月を迎える準備はできました」
 チャンスゥは満足そうに机に置かれたものを見る。
 机の上にはきれいなおせちがあった。三段重ねの重箱の中に、こんぶやえびやだしまきたまご、くりきんとき……様々な縁起物が、色鮮やかに並べられている。チャンスゥが一日かけて一人で作り上げたもので、彼には称賛の言葉しか送れない。
「そういえばアフロディ達が急に静かになりましたね」
 重箱を重ねてふたをし、冷蔵庫にしまいながら、チャンスゥは何気なく天井を見やった。先ほどまでばたばた言っていた階上は、何事もなかったのように静けさを取り戻している。


「おやおや」
 アフロディの部屋に入ろうとしたチャンスゥは足を止める。
 部屋の中では四人が雑魚寝していた。アフロディのものであるはずのベッドは涼野が一人で占領し、掛け布団に潜り込んでいる。素足が布団からはみ出している。
 そのベッドの下で南雲がベッドにもたれかかるように膝を抱えている。首を斜めにして、目を閉じている。横では、蓮が南雲の肩に寄り掛かり、アフロディは蓮の肩に身体を預けて寝ている。三人で、一枚の毛布に潜っていた。たいして長さがないが、毛布はひざかけのようにしかならない。
 涼野は心地よさそうな寝顔だが、ベッドに入れない三人は小刻みに震えていた。寝苦しそうに、顔に皺を寄せている。ジャージで寝ているとはいえ、寒さはかなりこたえるはずだ。
「風邪をひきますよ」
 足音を立てないように入ったチャンスゥは、微笑みながら、部屋のエアコンのスイッチを入れてやった。


 翌日。白いカーテン越しに朝の柔らかい陽光が差し込み、南雲は目を覚ました。昨日は冷えていたのに、部屋は生暖かい。
 ふっと目を横にやると、蓮の顔がすぐそばに来ていて驚く。だがその体勢のまま、南雲は独りごちる。
「なあアフロディ、風介、蓮」
「聞いているか? 本当はオレ、別のことを言いたかったんだぜ?」
 返事はない。
「……3人とも、去年はいてくれてありがとな。一緒にサッカーが出来て嬉しかったぜ」
 南雲は恥ずかしげに囁く。
 本当は昨日、新年最初の挨拶にと意気込んでいたのだが、結局言えずじまいであった。恥ずかしさが言おうとする気持ちを上回ってしまったからだ。まあ手を合わせられたあれはあれでよかったのだが。
「アフロディ、今年はカオスブレイクをもっと強化しようぜ」
「蓮、今年はもっと話そうな。今までの分も、な」
 眠っている二人に話しかけ、後ろでベッドを占領するにっくき敵を見る。蓮を身体からずりおろさないように注意しながら、限界まで身体をひねった。
「風介は」
 数秒考えたが、
「……今年も仲良くしてやるから感謝しろ」
 そんな言葉しか出てこなかった。
〜おわり〜
 休みとか言っていましたが、新年のあいさつを忘れていたので調子に乗って掻いていしまいました^^;やっぱりカオスブレイク組と蓮の話はどうも筆が進みますv
 ちなみに韓国の新年のあいさつは「カムサハムニダ」(新年の福を沢山もらってください=新年明けましておめでとうございます。)とネットにありました。ハングルは読めないので何とも言えませぬ。

 涼野はアフロディにおもちゃにされている設定,
チャンスゥはみんなのおかんだ! と友達が言うのでそんな雰囲気で書いてました。本当、イナズマジャパンとファイアードラゴン、蓮はどっちに所属すべきか決めかねます……アンケートでご意見を聞かせてださい!

 一日過ぎたらアンケートが一通来ていました!一票も来ないかと不安だったので嬉しいです!ふぁいんさんにマジで感謝!
 読者様が少ないのに、こんなことするのが無謀なことはよ〜く承知していますが……やっぱりやってみたくなります><長いのでダリ~って方は、一番だけでも。来ないと悲しいんですよ^^;
 と言っても仕方ないので、今後の予定をちょっこし。2月、早くて一月の下旬には真・帝国偏行きます。オリキャラが多いので(帝国人気すごい!)頑張って行きます!

 最後に。それではみなさま、よいお年をお迎えくださいb(本題v)
次は一月終わりにお目にかかります!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆人気投票開催中! ( No.223 )
日時: 2011/01/01 16:43
名前: 転寝 ◆9rCVbbrUvc (ID: Ua50T30Q)

お、面白いですね・・・この小説。
コメントないのおかしいと思いm
おはつです、転寝と申すもんです。前々からひそかに呼んでました。
アンケートやっていると聞いてとんで参りました←
普段はコメしてなくてマジサーセンwww

①小説内で好きなキャラランキングベスト3(オリキャラもオッケー!)

1位【効果音】 理由【チューリップは俺の嫁w】

2位【蓮君】 理由【年明け短編のかっこよさに惚れましたvガゼバンをびびらせるとはつえなw】

3位【風○】 理由【俺が好きなだけですw】

②なんか蓮って色々絡んじゃってますが……誰との絡みが好き?(3つまでおっけー。二人以上もおっけーです。例えばガゼルとバーンとか)

【凍てつく闇】 理由【あの二人の絡みは面白い。北海道編は燃えまくってorz】

【】 理由【】

【】 理由【】

③再度降臨、好きなセリフ!(3つまで!前回は理由がなかったので、追加です^)

【「ごちゃごちゃうるさい!」】 理由【蓮君ステキすぎwww】

【「メリークリスマス、以下略(サーセンww)」】 理由【凍てつく闇が天然過ぎてワロタww】

【】 理由【】

④まだ終わってないけど、次回作のお話。半分も来ると考えたいです。
蓮は……どっちがいいでしょう!?(これってどっち所属かってことでよろしいでおまんがな?)

【イナズマジャパン】

理由【ジャパンに入り、ファイアードラゴンを倒してくださいw】

以上!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆人気投票開催中! ( No.224 )
日時: 2011/01/04 20:24
名前: 李央 ◆TpifAK1n8E (ID: G2fsKg0M)

①小説内で好きなキャラランキングベスト3(オリキャラもオッケー!)

1位【蓮】 理由【男の俺でさえかわいいと思った(まさか俺BLか!?】

2位【アフロディ】 理由【神だからww】

3位【喜多海(出てたっけ!?)・・・じゃあアツヤ】 理由【かっけぇ】

②なんか蓮って色々絡んじゃってますが……誰との絡みが好き?(3つまでおっけー。二人以上もおっけーです。例えばガゼルとバーンとか)

【風介】 理由【宗谷岬の時が良かった。てか北海道最高!!】

【ヒロトと晴矢】 理由【今後に期待する。】

【染岡】 理由【例え話とか色々よかったと思う・・・うん。】

③再度降臨、好きなセリフ!(3つまで!前回は理由がなかったので、追加です^)

【おさーむの「ふん。ずいぶんと愚かな連中だな」】 理由【えっ?ただ単に好き】

【ふーすけの「キミならできるはずだ」】 理由【あれは俺が勇気をもらえた。】

【敦也の「黒ってのは便利な色だよなぁ? 混ぜればほとんどの色は黒に染まって行く。混ぜれば混ぜるほど、黒味は増して——やがては漆黒に染まる。」「お前、その瞳の奥で幾重(いくえ)黒を重ねてんだよ?」】 
理由【漆黒、黒=闇、罪的な俺が大好きな言葉に置き換えられるんだ!!俺の目茶だから羨ましい。】

④まだ終わってないけど、次回作のお話。半分も来ると考えたいです。
蓮は……どっちがいいでしょう!?

【ファイアードラゴン】

理由【いや、風介と晴矢がいるから・・・その時の話を期待するぞ。】


しずくさん
俺なんかよりしずくさんのほうが何百倍も凄いっす。
なんか適当に書いちゃったけど・・・本心っす。
おさーむの言葉「ふん。ずいぶんと愚かな連中だな」あれは俺が俺の周りにいる生き物に対していっつも思っていますww
ふーすけの「キミならできるはずだ」あれはリスカしようか迷ってた時に本気でやろうとした言葉ww
(戒魔が部屋に勝手に入ってきて止められましたけどね・・・

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆人気投票開催中! ( No.225 )
日時: 2011/01/04 20:50
名前: 癒玖刃 ◆RkKLSqUPDc (ID: R4l9RSpR)
参照: 静電気は敵!髪がw

①小説内で好きなキャラランキングベスト3(オリキャラもオッケー!)

1位【風様!】 理由【小説内でかなり名台詞言ってるので(作者の好きなイナイレキャラ3位に入ってくるし)】

2位【蓮】 理由【主人公だし、かっこいい】

3位【晴矢】 理由【とりあえず大事な奴だからですw】

+α例外【てるみん】 理由【今後期待】

②なんか蓮って色々絡んじゃってますが……誰との絡みが好き?(3つまでおっけー。二人以上もおっけーです。例えばガゼルとバーンとか)

【蓮風】 理由【毎度のこと2人の会話のときだけ作者の読み方がすごく集中する】

【晴風】 理由【今後が気になるし、やっぱりコレでしょw】

【アツ蓮】 理由【最強にすごい。会話すごい。神】

③再度降臨、好きなセリフ!(3つまで!前回は理由がなかったので、追加です^)

【「わからない。ただ、そんな気がするだけだ。そう私が思うことに理由は必要か?」】 理由【理由?それはですね……ちょっとこのせりふと同じですw】

【「僕は確かに”変わるかも”しれないけど、”基礎部分は残して”変わって行くと思う。『人間って忘れてしまう生き物』って言うだろ? 今日の日だって、細かいことは忘れるかも。けど、風介への思いは絶対変わらない。少なくとも、風介のことは絶対に忘れたりしない。この46億年間だっけ? 変わらない海と同じで」】 理由【前回のアンケートから引き続きw
この台詞の蓮神〜!】

【「黒ってのは便利な色だよなぁ? 混ぜればほとんどの色は黒に染まって行く。混ぜれば混ぜるほど、黒味は増して——やがては漆黒に染まる。」】 理由【アツヤかっけ〜!。台詞がかっけ〜から】

④まだ終わってないけど、次回作のお話。半分も来ると考えたいです。
蓮は……どっちがいいでしょう!?

【ファイアードラゴン】

理由【え?風様いるし、効果音と神様いるし。好きだからやねw】


では、今後かな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜り期待してます!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆人気投票開催中! ( No.226 )
日時: 2011/01/12 21:15
名前: 林檎 ◆g4BVQuXJmc (ID: tdVIpBZU)

はじめまして。林檎です。
今月頭にこのサイトに来た新人です。
すっごく面白いです!!続き、楽しみにしてます!!
\(゜ロ\)(/ロ゜)/フレー!フレー!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆人気投票開催中! ( No.227 )
日時: 2011/01/14 20:16
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

お久しぶりです^^遅いですが、新年明けましておめでとうございますb今年も、このへっぽこ小説をよろしくお願い致します^^

終わりまでこれないとかのたまっていましたが、一次試験が何とか終ったので、親に頼み込んで少しだけパソコンをやっている次第です。
許可時間が30分なので更新はちょっと無理ですので、過去話や短編を読んでお待ち下さいv
多分次に書くのは、南雲&涼野と蓮による幼少期の頃の話だと思われます(まだ未定w)まいにちかあさん見ていて閃光のように閃きました。南雲&涼野を可愛く書けるか画作中。

時間はありませんが、自分でもアンケートに答えてみます。まだ受け付けておりますので、お時間がある方はぜひお答え下さい!

①小説内で好きなキャラランキングベスト3(オリキャラもオッケー!)

1位【涼野】 理由【クールで冷静な性格が好きだから。かっこいいし(以下自主規制)アニメ再登場希望】

2位【南雲】 理由【気づいたら好きになってました。紅蓮の炎〜と言うせりふはかっこよくて気に入っていますv】

3位【蓮】 理由【自分で書いているためか思い入れはあります。え、理由? 自分に似た面と憧れる性格を混ぜたなりたい自分だから、ですv】

②なんか蓮って色々絡んじゃってますが……誰との絡みが好き?(3つまでおっけー。二人以上もおっけーです。例えばガゼルとバーンとか)

【涼野】 理由【ただ単に涼野が好きだから!それ以外に理由はない】

【南雲】 理由【まだ詳しくは書いていませんが、絡めていて非常に楽しいです(続き書いていて)】

【染岡】 理由【染岡さんは、頼れる兄貴なのでv】

③再度降臨、好きなセリフ!(3つまで!前回は理由がなかったので、追加です^)

【アツヤの「黒ってのは便利な色だよなぁ? 混ぜればほとんどの色は黒に染まって行く。混ぜれば混ぜるほど、黒味は増して——やがては漆黒に染まる」】 理由【ひぐらしを読んでいてポーンと思いついた台詞ですが、結構考えるのに苦労したので。】

以上です^^;コメント返しはまた次回行います!(じ、時間が!)アンケートを答えてくれた方や新しいお客様、もうしばしお待ち下さい!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆人気投票開催中! ( No.228 )
日時: 2011/01/16 21:39
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

時間があるので少し・・・・・・

>>林檎さん
おお、久々の初めてのお客様です^^嬉しいです!
面白い・・・・・・貴重なお言葉有り難うございます。小説の励みになりますv(まだ続き書くのはちと無理ですが^^; 早く受験終って欲しい。)

林檎さんは、今月初めに来られたばかりなんですか? 何か分からないことがあったら聞いてくださいね。答えられる範囲で答えます♪

ところで、小説の方は書かれていますか? タイトルを教えてくだされば、飛んでいきます!

私はもうすぐ1年になります。まだまだひよっこです^^

よければアンケート(>>218)にも御協力いただけると嬉しいです! あ、いきなり頼んでしまいすいません><お時間があったら、で大丈夫です。では、コメント有り難うございました!

>>アンケートをお答えくださったみなさん
アンケートご協力有り難うございました! な、なんか蓮がファイドラに行くべし!と言う意見が多くてびっくりしました。やっぱり悩むorz。ファイドラは、どうもイナズマジャパンの敵なせいか、悪人集団のイメージがあるんですよね〜その中に蓮を放り込むか否か悩むところです・・・・・

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆人気投票開催中! ( No.229 )
日時: 2011/01/18 15:52
名前: ふぁいん (ID: Ua50T30Q)

お久です!次は幼少期の話ですね!期待しています!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆人気投票開催中! ( No.230 )
日時: 2011/01/18 21:42
名前: 林檎 ◆g4BVQuXJmc (ID: /v7BfUQP)

しずくさん>>あの、じゃぁ質問させていただきます。
 よく文中で青い文字で>>0みたいに書いてありますが、それはどうやったら出来るんですか?

小説書いてます!【イナイレ♪夢小説♪】という題名です!

受験でお忙しい中、ありがとうございますd(_ _)b
アンケートはまた後日に…

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆人気投票開催中! ( No.231 )
日時: 2011/01/25 16:18
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 時系列は秘密。幼少ガゼバンが書きたくなった。幼少蓮も出てくるよ

番外編(タイトルは後ほど決めます。幼少ガゼバン+蓮)

「な……なんで……」

 蓮は自分の目の前に広がる光景が信じられず、愕然(がくぜん)とした。
 今、蓮は公園の中にいる。住宅街の一角によくある狭いもので、ブランコと滑り台、砂場くらいしかない。しかし風景は日常的によくあるもので、目を疑う様なものではない。問題なのは、自分を見上げる子供二名。
 その二人は、幼稚園ほどだろうか。背丈は蓮の膝までしかない。彼らは名前を知らない通りすがりの子供などではなく、

「なんで晴矢と風介がこんなに小さいんだよぉッ!」

 嘆いた蓮の言葉通り、目の前にいるのは——幼い南雲と涼野だった。



 そもそもの始まりは、目金が都市伝説を調査する、と言ったことだ。
 目金によると、最近、ネット上で”ある”都市伝説がまことしやかに囁かれているらしい。その”ある”都市伝説と言うのが、”過去に行ける”—−つまりタイムスリップが可能になるとか、非常にウソ臭いものだった。
 これを雷門サッカー部一丸となって調査しましょう! と入会式で宣誓を行うスポーツ選手のごとく目金は元気に宣誓したわけだが、誰も取り合わなかった。用事があるとか、塾があるとか適当な理由をつけて、みなはさっさと退散した。
 もちろん蓮もさっさと抜け出した。が、後々、一人残された目金が何だかかわいそうと余計な憐憫(れんびん)の情を持ってしまい、協力させられる羽目になってしまう。

 目金に連れられ、蓮は雷門中から少し離れた場所にある小さな公園に来た。
 まだ早い時間なせいか、数人の子供を親を除いて人の姿は全く見えない。雷門ジャージ姿の中学生男子二人がいるのは、明らかに場違いだ。

「うわぁ……懐かしいなぁ」
 
 公園に入るなり、蓮は懐かしむように目を細めた。

「なんで懐かしんです?」

 しゃがみ込み、小枝を手に何かを地面に描きながら目金が尋ねる。

「お日様園にいた頃、よく晴矢と風介とここに来てたんだ」

 瞼を閉じると、その光景が黒い世界の中に蘇ってくる。
 幼い南雲がサッカーボールをむちゃくちゃな方向に蹴っていたり、幼い涼野が自分にリフティングを教えてくれたり。あげくの果てには、すっころんで二人に手を差し伸べてもらって起き上がったりした、情けない思い出も思いだしてしまい、蓮は内心苦笑した。
 
「へえ。バーンやガゼルとここに……ですか」

 目金は小枝を動かす手を止めないまま、興味なさそうに呟いた。目金の前には大きめにイナズママークが描かれ、今はそれを丸で囲っている。
 退屈になった蓮は、すぐ近くのベンチに座ると、前かがみになり、目金が地面に生み出していく図形をじっと見つめた。丸で囲まれたイナズママークの周囲は、見たことがない文字や四角や三角で覆われ意味がわからない。
 蓮は、数学的知識から必死に意味をつかもうとするが、意味がわからず、最後には図形から目を逸らした。
 その時、蓮は何か思いだした様な顔になり、

「”Need not to know”」

 と、滑らかな発音で英語をこぼし、目金が手を止めて顔を上げる。

「”Need not to know”? なんですかそれ?」
「この公園で、一回きりだけど、かなりサッカーが上手い男の人に会ったことがあるんだ。その時に、その男の人に言われた言葉」

 十年前のこの時期に、南雲や涼野と共に、蓮はサッカーが上手い男に会った。彼と何をしたのかはほとんど記憶の闇に葬られてしまったが、男は別れる時に”Need not to know”と言ったことだけは覚えている。本当はこの言葉の後に別の言葉をつづけていたが、何と言ったかまでは覚えていない。

「なら」

 すっと目金は立ち上がり、手に持っていた小枝を捨てた。そして蓮に向き直り、耳を疑う様な質問をした。

「その言葉をもう一度聞きに行きたいと思いませんか?」
「無理だろ」

 間髪いれずに蓮は笑い飛ばす。

「時間は流れるだけ。ただただまっすぐに進み続けるだけだ」

 甘いですね、と目金が偉そうに言った。彼がかけている、黒縁のメガネのレンズが一瞬だが光った。目金はくくっと引くように笑い、人差し指でメガネを軽く持ち上げ、反対の手で、自分が描いた謎の図形を指し示す。

「それが。このマークがあれば行けるんですよ」
「ま、魔法陣ってやつか? これ?」

 描かれた図形をベンチから覗き込み、蓮は首を傾げた。
 完成した図形は幾何学模様がいくつも連なる、まさに魔法陣のようなものだった。ゲーム等と違い、中央にイナズママークがあるのが目金のオリジナルらしさを表している。

「これは、都市伝説実証実験の下準備ですよ。この陣を描き、願をかけると過去に行けるそうですよ」

 どうやらこれがネットで流布(るふ)しているものらしい。
 いかにもどっかのファンタジー漫画やアニメに出てくる魔法陣を組み合わせたもの。過去になど行けるはずがない——蓮はわずか数秒で結論づけた。

「ネコ型ロボットのタイムマシーンじゃないんだし、無理だろ」

「無理ではありませんよ。成功確率は『1%』です」

「……まあ、やってみる価値はあるかも。やり方は?」

 はっきりと断言した目金の言葉に絶句しかかったが、目金にやり方を問う。すると、目金は魔法陣(?)の前に立ち、左ひざを地面に着け、身体を蓮の方に向けた。

「このように……魔法陣にボクと白鳥くんが向かい合うようにたち、左膝を地面に着き、手を組みながら、目を閉じて俯くのです」

「なんか、れーはいとかで見られそうだな」

 正直な感想を述べつつ、蓮は目金の真正面に立った。ゆっくりと左膝を地面につけ、砂利が生む痛みを感じながら、両手を組む。それから目を閉じ、顔を少し下げた。

「次は?」
「心の中で祈るのです。行きたい時間に連れてってくれ、と」

 目金に言われるがまま、蓮は心の中で十年前のあの日に連れてってくれと述べた。
 その時、魔法陣(?)の中央にあるイナズママークが淡い黄色に輝き始めた。一定のテンポで明滅を繰り返していた光は膨張を始める。小さなドーム型の光はゆっくりとその規模を増し——やがて二人は飲みこまれた。


〜つづく〜
イナズマにえすえふ要素が加わったような話になってしまいました。
きっと最近涼宮ハルヒシリーズにハマった影響だと思います。ハルヒの中では長門が気に行ってますv

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆人気投票開催中! ( No.232 )
日時: 2011/01/19 16:51
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

>>ふぁいんさん
幼少期編書いちゃいましたv
いや、まいにちかあさん見てたら……何か書きたくなりました。あの回見ているのなら、オチガ予測できると思います^^
幼少ガゼルとバーンをかわいく書けるかがこれからの山場です。
本当、二人ってどんな子供だったのでしょうか。気になりますv

>>林檎さん
お、小説書かれているんですね^^後で顔を出してきますb

文中で見るやつとは、>>0のことでしょうか?
私もここに来たばかりのころは、全くわかりませんでした;;えっと……キーボードにくをひっくり返したようなもの(>←これです)がありますよね?

これを半角(>←これです)にして、二つ続けてください。(>>←こうなります)全角だったり、半角が一つ、三つ以上だと反映されないようです><

ここまで来たらあとは出したいレスの番号を、半角で打ちこんでください。(例えば243を出したければ、>>243


なんか説明不足ですねorz……わかりずらければ再度、質問をお願いします。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆人気投票開催中! ( No.233 )
日時: 2011/01/19 19:13
名前: 林檎 ◆g4BVQuXJmc (ID: /v7BfUQP)

>>232
こうですか?なってなかったらスミマセン…

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆人気投票開催中! ( No.234 )
日時: 2011/01/22 18:32
名前: 林檎 ◆g4BVQuXJmc (ID: /v7BfUQP)

アンケート、やらせていただきます!
————————————————————————————————
①小説内の好きなキャラランキングベスト3!

1位【白鳥 蓮】 理由【主人公だし、人気高いし☆】
2位【涼野 風介】理由【蓮と幼馴染っぽいし、今後の行動が楽しみ☆】
3位【財前 塔子】理由【蓮といい感じ!だし、元気いっぱいなのがいい!】

②誰との絡みが好き?
1位【涼野 風介】理由【会う回数が多いし…想像しやすい…?】
2位【南雲 晴矢】理由【うーん…何となく?】←説明になってない…
3位【 】    理由【   】

③好きな台詞
1位【僕は確かに”変わるかもしれない”けど”基礎部分は残して”変わって行くと思う。『人間って忘れてしまう生き物』て言うだろ?今日の日だって、細かい事は忘れるかも。でも、風介への思いは絶対変わらない。少なくとも、風介のことは絶対忘れたりしない。この46億年だっけ?変わらない海と同じで】

理由【何か心の広さを感じさせられる言葉だなって思いました。この物語で、1番心に残ってる言葉です】

2位【黒ってのは便利な色だよなぁ?混ぜればほとんどの色は黒に染まっていく。混ぜれば混ぜるほど、黒味は増して——やがては漆黒に染まる】

理由【色を混ぜれば確かにほとんどの色は黒になりますね…。その黒を蓮の瞳に重ね合わせた敦也の気持が少し分った気がします!】

3位【それに仲間が居るだろ?倒れてる時は、別の仲間が頑張ってくれる。次に出ればいいだろ?】

理由【1人じゃないって実感させられる言葉だなって思います。ある意味1番心に来た言葉です】

④蓮はどっちがいいでしょう
【ファイアードラゴン!!】
理由【風介と晴矢が居るし…話が上手く進みそう!!】

以上です。しずくさん!私の小説にコメントありがとうございました!
続き、楽しみにしてます!!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆人気投票開催中! ( No.235 )
日時: 2011/02/02 16:45
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 今、人気投票で壁山が熱かったことに驚愕

 蓮がまず目を開いて見えた光景は、抜けるような青い空だった。
 ずっと目を閉じていても何も感じないし、何も聞こえなかったので、とうとうしびれを切らした。目金に許可を取らず、勝手に目を開けると、白い綿あめみたいな雲が数個浮いている空が飛び込んできた。
 なんだ何も変わらないじゃないか、と蓮は安心半分、残念半分の息をふっと吐き出し、視線を下げながら立ち上がる。目金はいなかった。辺りに視線を彷徨わせるものの、目金の姿はどこにもない。が、蓮は目金の代わりに妙な感覚を発見した。公園の遊具がやけに真新しいのだ。
 蓮が幼いころから存在していたこの公園の遊具のほとんどは、塗装がはげ、鉄の茶色が露になっていたはずなのに、今いる公園の遊具は塗装がほとんどはげていなかった。今日、目金と来た時ははげていたはずなのに、目を閉じたたった数分の間で誰かが塗ったとでも言うのだろうか。疑問を覚えたが、目金が心配だった蓮は、目金のことを探そうとすぐさま頭を切り替え、この考えを脳の隅に追いやった。
 携帯をジャージのズボンのポケットから取り出し、目金の番号にかけるが、電波の届かない場所にいます、と無機質な声が電話の向こう側から聞こえ、蓮はため息をついて、携帯をズボンのポケットに戻した。
 それなら誰かに尋ねようと辺りを見渡すと、ちょうどブランコに小さい男の子がいるのを見つけた。誰かを待っているのか、俯きながら、地面に両足をつけて、退屈そうにブランコを小さく揺らしている。その少年に話を聞こうと、蓮は、ブランコの柵前まで駆け寄った。小さな男の子は何かが考え事でもしているのか、蓮が近づいても顔を上げない。
 話していいものか、と少し蓮は逡巡(しゅんじゅん)したが、思い切って小さい男の子に話しかける。

「キミ、この辺りで、眼鏡をかけたお兄さんを見なかった?」

 話しかけられた男の子はびくっと肩を震わせ、ブランコを揺らすのを止めた。驚いたように顔を上げた。 その顔を見た蓮は、我が目を疑い、思わず柵から軽く身体を乗り出してしまう。

(ふ、風介!?)

 顔を上げた少年の相貌は——涼野風介にあまりにも似すぎていた。が、似ていると言っても、背丈は蓮が知っている涼野より2,3回りは小さい。それに、顔つきも落ち着いた印象の中にどこか幼さが残っている。しかし、髪形は今とほとんと同じだし、綺麗な青緑の瞳に宿る輝きは、まぎれもなく涼野風介のものだった。青地のフード付き長袖シャツに紺のジーンズ姿でも、その印象は変わらない。
 いきなり涼野似の少年に出会った蓮は、何と言葉をつづけてよいかわからずに固まったまま、その少年と頭の中に思い浮かべた記憶の中の幼い涼野風介と”見比べる”。記憶の中の涼野も、今目の前にいる涼野の様な感じがする。いや、全く同じ人間だった。

「しらない」

 幼い涼野が短く否定し、蓮は現実に引き戻された。

「そ、そっか」

 過去に来たと言う事実に困惑したまま、蓮は取りあえず笑った。すると、幼い涼野は悲しそうに視線を下げ、また地面に足をつけたままブランコをこぎ始める。甲高い音が虚しく辺りに響いた。
 幼い涼野がいるなら幼い南雲と幼い自分もどこかにいるはずだと、蓮は二人の姿を求めたが、いなかった。
 この頃の涼野は、南雲と蓮と三人でいたはずなのだが、今日は何かあったらしく、一人でいるようだ。
 幼い涼野が悲しげにブランコを揺らす姿をしばらく蓮は心配そうに眺めていたが、やがて柵を乗り越え、幼い涼野の左隣の空いたブランコに近づく。ブランコの板の上に、両足を乗せ、そのまま膝を前に突き出し、力を入れた。初めはゆっくりだったブランコもだんだんスピードが出て、ブランコは忙しく前後に動く。その勢いで、蓮の前髪が風をはらんで持ち上がる。蓮は、心から楽しんでいるらしく、楽しそうな笑みを浮かべていた。
 ブランコが何回か往復するうちに、顔を下げていた幼い涼野が蓮の方向へと顔を向けた。興味深そうな顔で、青緑の瞳で蓮の動きをしばらく追って、

「おにいちゃんは、たちこぎがすきなのか?」

 と落ち着いた声音で問うた。蓮はブランコをこいだまま幼い涼野を一瞥し、今は遠ざかる空へと視線を投げかけながらふっと笑った。

「そうだね」
「なぜだ」
「何故って……そりゃあ、空に飛べる気がするからだよ。一番高いところまで行ったら、鳥のように飛べる気がするだろう?」

 今度は近づく空を見ながら蓮は無邪気に幼い涼野に語りかける。
 今もそうだが、蓮はブランコが空に向かってとびあがるあの瞬間が好きだった。思いっきり後ろに下がって、陸上で言う助走をつけて、空に跳び上がる。陸上でハードルを跳ぶのが快感であるように、ブランコが宙に上がる瞬間、何だか空に近づける気がして楽しいのだ。僅かな時間だが、鳥になれるようで面白い。
 と、ここで蓮は涼野が幼いことを思い出した。幼い涼野がもし真似をしたりすると危険だと、蓮はブランコに座り、急いでブランコを止めて、涼野の方を向きながら慌てて注意しておく。

「あ、でも本当にやっちゃいけないよ。危ないからね」
「そんなことはしっている。キミも、やってはいけないぞ」

 普通の子供ならはーい! と元気に答えそうなものだが、幼い涼野は随分素っ気ない返事をし、逆に蓮をたしなめた。中学生である蓮より、年下の、それも幼稚園程の涼野の方がしっかりしているように見える。

「そ、そっか」

 正鵠を射るその言葉に蓮はそれ以上答えられなかった。と、幼い涼野はまた顔を下げ、沈痛な面持ちでブランコを揺らし始めた。その様子が気になった蓮は、ブランコから降りると、幼い涼野の真正面に立ち、視線を合わせるように屈んだ。

「……キミ、元気ないね」

 蓮が幼い涼野に心配そうに話しかけると、幼い涼野はゆっくりと顔を上げ、蓮を見つめた。その瞳は、いつもとは違った意味で綺麗な色に透き通っていた。悲しみの色で満たされていた。何か言おうと迷っているのか、口が開きかかっている。

「どうしたの?」

 優しい口調で蓮が聞くと、幼い涼野は安心したらしい。悲しみの色で満ちていた瞳に、助けを求めるような必死な光が宿り、蚊が鳴くような声で呟く。

「はるやとれんとけんかした」

 その瞬間、蓮の脳裏にあることが思い出された。あのサッカーが上手い男の人と会った時、自分は涼野や南雲と大喧嘩をしていた。自分がいる時間(いま)はきっとその日なのかもしれない。涼野と、南雲と。大喧嘩をしたあの日なのかも——

〜つづく〜
お久です^^今週中からは落ち着いて書けそうなので、何とかこのふぁいん様リクの短編を仕上げていきたいと思います。人気投票は、一月の末まで行いますv

最近イナズマ映画の公式サイトを見たら、人気投票第二弾が開催!されていると言うことを初めて知りました^^;。嫌な予感がしつつ、試しに風丸に投票してみたところ、壁山が他のキャラたちを押しのけて断トツトップ! ……五条祭り&コイル祭りが頭に再来。これは壁山祭り? と言うのでしょうか。
眼鏡が目金って誤字がありましたね;;ややこしい

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆アンケート中! ( No.236 )
日時: 2011/01/25 11:50
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

>>林檎さん
おお、上手く出来てますね^^(>>のやつ)良かったですb

アンケートもご協力ありがとうございます!アンケート、読んでて楽しかったですb蓮は主人公ですからね〜なんかイナイレにいそうなキャラになってるのかな〜ってよく不安になります^^;

そういっていただけると、とても嬉しいですv作者本人は涼野が大好きです。おかげでどの章にもだいたいいる。。。セリフまで……昔の駄文の数々を見ていただけたようで……感謝です><

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆アンケート中! ( No.237 )
日時: 2011/01/25 16:57
名前: ふぁいん (ID: Ua50T30Q)

ちょ子供の涼野様可愛すぎ!もう鼻血でまくりです!頑張ってです!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆アンケート中! ( No.238 )
日時: 2011/01/25 17:35
名前: 林檎 ◆g4BVQuXJmc (ID: /v7BfUQP)

昔大喧嘩したんだ…3人…
上手く仲直り出来るといいですね!
続き楽しみに待ってまーす!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆アンケート中! ( No.239 )
日時: 2011/01/29 11:01
名前: 転寝 ◆Pz14VcQHLI (ID: Ua50T30Q)

どもwな、こ、子供の涼野だとっ!?かわええなぁ癒されるwwwww。蓮を振り回すあたりしっかりしていると見せかけ、不安げな瞳で見上げるとか俺得!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆アンケート中! ( No.240 )
日時: 2011/01/29 12:16
名前: 癒玖刃 ◆GdYtMY4AZo (ID: QJSI9r3P)

ツンツン……
オーナーwオーナー癒玖刃?
すっごく回りが赤いよw海になってるよ
どうするの?

「ペットのネコのクセに生意気ですねww
まぁ、赤いの事実ですけど……萌える。ミニ風介に萌えてる最中です!
喧嘩だと!?全員本当に可愛いですねw
その文才分けてくださいwww」

オーナー間違えなくほかの2人でも海になるよね?
特に蓮君だともっと広がるよね?
どんどん広がるよね??

「分かりません
でも、海が広くなるのは事実ですねwww
はてさて、これからも応援しています!!」

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆アンケート中! ( No.241 )
日時: 2011/02/01 16:51
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

 三人の喧嘩のきっかけは些細なことだった。好きな食べ物を食われた恨み——いわゆる食べ物の恨みと言う、なんとも単純なものである。
 ことの顛末(てんまつ)は蓮が覚えている限りこうだ。
 その日、お日様園では昼ごはんのデザートにいちごが三つあった。その一つを、晴矢が左隣の蓮の皿から奪ってしまった。晴矢はそれだけでは飽き足らず、なんと風介の皿からも一つだけ拝借してしまったのだ。当然風介は烈火のごとく怒り、普段は大人しい蓮も珍しく食ってかかった。……風介の背中に隠れ、少し頭を出すという非常に情けない体勢で。
 他の子供の反応は覚えていないが、怜南ことウルビダにれんって女の子見たい! とからかわれたような覚えだけはある。

『わたしのものをたべるな!』
『はるや! ぼくのいちごかえしてよ〜!』
『やだな』

 そう言ったのに、晴矢はべーと舌を出し、ぷいっとそっぽを向いただけだった。それで腹が立ったのか、風介は蓮の皿から残っていたいちごを全てかっさらい、口に放り込む。多分、晴矢のものを食べようとして、謝って蓮のものを食べたのだろう。
 だが幼い自分は目の前の事実しか見ていなかった。風介の背中にいた蓮は、目を水で満たしながら風介に向かって叫ぶ。

『はるやとふうすけのバカーっ!』

 今の蓮からすると、こんな行動をとったのか甚だ(はなはだ)迷惑なことなのだが——当時の自分は、やっきになり、晴矢と風介の皿からいちごを全部持ち去って、しかも食べると言う暴挙に出てしまったのだ。

 当然、晴矢も風介も自分が大好きなものを奪われたことで、三人のごたごたはますます加速する。しばらくもめにもめて、最後には、

『おまえらなんか、もうともだちじゃねぇ!』と晴矢は憤り、

『ふん』と風介は鼻を鳴らし、

『はるやもふうすけもだいっきらい!』と蓮は目から大粒の涙をこぼしながら——三人はお日様園を飛び出してしまった。もちろんバラバラの方向に……

 当時のことを回想しながら、蓮は自分のうかつさを自省していた。しかし、幼い涼野が懇願する瞳で見上げてくるのに気付き、再度幼い涼野と同じ目線になるようしゃがむ。
 
「風介……くんは、晴矢……くんと蓮……くんとけんかしたの?」

 涼野と南雲を『くん』づけであまり呼んだことがない蓮は、随分言いづらそうに幼い涼野に尋ねて——固まった。幼い涼野に名前も聞いていないのに、名前を呼んでしまったからだ。案の定、幼い涼野の目が険しくなり、首を傾げた。

「なぜ、わたしのなまえをしっているのだ?」

 やっぱりこの子は昔の風介なんだと妙に納得しつつ、蓮は答えに詰まった。未来から来た、などと普通ではありえないことを言えない。幼い涼野を騙そうと必死に脳を絞り出す蓮をよそに、幼い涼野の目は、不審者を見るそれになっていく。

「おにいちゃんは『ふしんしゃ』だろう」
「む、難しい言葉知ってるね。でも、僕は『不審者』じゃないよ」
「じゃあなんだ」
「えっとね……ああーっと……その……」

 幼い涼野の対策に困窮していた蓮は、しどろもどろになりながら、体中に汗を張りつかせていた。視線を宙に彷徨わせること数十秒。突然、ある考えが頭の神経の回廊を駆け巡ってきた。蓮は不審な目で見つめてくる幼い涼野に向かってでまかせを言う。

「僕は宇宙人ロトス! 宇宙人は何でも知ってる!」

 棒読みの見本になりそうな棒読みで蓮は名乗って、さらに悪人らしく腰に両手を当て、そっくり返って見せる。非常にぎこちない動きだった。演技だと言うことがバレバレである。
 そのせいだろうか、幼い涼野は視線をますます厳しくし、手厳しい指摘をした。
 
「へただな。わるいひとはもっとかっこいいぞ」

 今の涼野を思わせる冷たい反応に蓮は言葉を失った。困り果てた蓮は、愛想笑いを浮かべながら、初めに思いついた切り札とも言える嘘をつく。

「じ、じつはね瞳子か……さんの友達なんだ」

 蓮は途中『瞳子監督』と言いかけ、慌てて『さん』づけをしたせいで何だか変に聞こえる。ただ、そのことを除けばうそをついているとは思えない口ぶりだ。
 お日様園では姉のように慕われている瞳子の名前を出せばどうにかなるだろう、と踏んだのだが、正しかったらしい。幼い涼野は疑う視線で蓮を見据えるのを止め、驚いたように目を見開く。変な言葉尻(ことばじり)のことは、気にしていないらしい。

「ねえさんのともだちか。なら、はじめからそういえばいい」
「……だよね」

 完全に幼い涼野のペースに乗せられている蓮は、引きつった笑みを浮かべながら答えた。だが話題を変えるように軽く咳ばらいをし、改めて幼い涼野と対等な目線になるよう、前かがみになる。

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆アンケート中! ( No.242 )
日時: 2011/02/01 18:28
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

「それでね、瞳子さんにキミたち3人の仲直りを手伝ってほしいって頼まれたんだ」

 もちろんこれも嘘だが、喧嘩をしている人間を見ると、どうしても手を出したくなってしまうのが蓮の性(さが)である。それに幼い涼野についていけば、自分があったサッカーが上手い男の人に会える様な気がするのだ。謎を解きに過去に来たのだから、解くまでは帰れない。目金も見つかりそうにないし、幼い涼野と一緒にいても大丈夫だろう。
 優しく語りかけた蓮の言葉を聞いた途端、幼い涼野の瞳(め)が輝いた。

「ほんとうか?」

 幼い涼野が嬉しそうに聞いて、蓮は幼い涼野を愛でる(めでる)ように目を細めながら頷いた。そして幼い涼野に、すっと片手を差し出す。

「さあ、風介くん。いっしょに仲直りしにいこう」

 優しく微笑みながら蓮が言う。
 差し出された蓮の手を、幼い涼野はしばらく不思議そうに眺めていた。が、おもむろにブランコから片手を離すと、差し出された蓮の手を取る。その時、幼い涼野の顔がわずかに動く。

 
「れん?」
「え」

 幼い涼野が自分の名前を零し、蓮は思わず調子外れな声を出してしまった。
 幼い涼野は蓮の手を掴んだままブランコから降り、蓮の隣に並び、澄んだ青緑の瞳を蓮に向けて来た。こうして並んでみると、幼い涼野は蓮の腰ほどの背丈しかない。

「おにいちゃんのては、れんのてみたいだ」

 蓮の手の暖かさを感じようとするかのように、幼い涼野は掴んだ蓮の手の甲を自分の頬に当てた。子供らしい柔らかな感触が手の甲をくすぐった。くすっぐたさを感じた蓮は少し噴き出してから、目を細めて、慈愛に満ちた視線で涼野を見下ろす。

「そうかな」
「そうだ」

 短く答えると、幼い涼野は自分の頬を蓮の手から話し、一層強く握ってくる。まるで、離れないでほしいとでも言うように。冷たい感覚が手のひらに広がった。
 その瞬間、蓮は幼い涼野が不安がっていることを悟る。幼い晴矢や幼い蓮と喧嘩し、謝りに行けないから、ここで一人でブランコをこいでいたのだろう。現に見上げてくる青緑の瞳には、嬉しさと恐怖が綯い交ぜになっているし、何より助けを求める瞳だった。

「だいじょうぶ」

 蓮は、幼い風介をしっかり見て、言い聞かせるように呟く。

「風介くんは一人じゃないよ。僕も一緒にいるから」

 答えるように、蓮は幼い涼野の手を優しく握った。その手は、蓮の手ですっぽりと覆えてしまう程小さいものだった。小さいが、どこか懐かしい感じを蓮は覚える。

「……あったかい」

 幼い涼野は、甘えるように言った。

〜つづく〜
今日は学校が休みなのでこんな時間にやっております。

また幼い涼野が主体ですが、幼い南雲と幼い蓮も少し書いてみたり。
ちなみにいちごを食ったという話は実体験が元話です。幼稚園時代の三大恥ずかしい思い出の一つです^^;

ちなみに、蓮が偽名に使っていた『ロトス』は、ボツにした蓮のエイリア名。蓮は本来蓮(はす)と読み、それを英語にしただけですv

……タイトルどうしよう

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.243 )
日時: 2011/02/01 13:50
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 3人の幼少期の絵を書こうとして失敗。絵心がほしーなー

>>ふぁいんさん
は、鼻血……はい、ていっしゅどうぞw
書いているこっちも時折、何度か可愛いとニヤニヤしてましたよ〜^^;家族に見られたら、きもいとか吐き捨てられそうで怖いです^^;
コメントありがとうございました!

>>林檎さん
はい、そうです!喧嘩とかを乗り越えた方が仲良くなるかなと実体験的に思うので、こんな話しにしてみました。
仲直り……そこらへんの過程を上手く書けるようにしたいです^^
コメントてんくすです!

>>転寝さん
お久しぶりです^^
癒されましたか?そんな感じを狙って書いていたので、今回癒されると鼻血はすごくいい褒め言葉になって嬉しいです♪
蓮は、どこまでも二人に振り回される運命にありますvそれが小さくとも、現在だろうと関係なし。次は南雲との掛け合いをお楽しみに^^(宣伝w)では、コメントありがとうございました!

>>ユクハさん
またまたお久しぶりです!
文才?むしろ欲しい!きっとユクハさんの方がお上手ですよ^^

ユクハさんの周りが赤い海だとっ!?あわわわ、テイッシュ再配りです。ミニ風介が可愛かったですか?やっぱり幼少期は萌えますよねw書いている本人も、パソコンの画面を見ながら2828してました。個人的にはミニ風介が蓮に注意しているところが一番好きです。

晴矢も可愛く書けるかなぁ。どんな感じかはお楽しみにv蓮は本編の過去話通り、男のくせに気が弱い風になります。

よし、ユクハさんの海……広げられるように頑張ります(おい)
コメントてんくすでした!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.244 )
日時: 2011/02/02 16:43
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 幼少の三人の服のセンスは微妙ですv

 その後、蓮は幼い涼野の手を引きながら、住宅街の中を歩いていた。この近辺にいる(多分小さい)南雲を探すためである。
 この日、幼い南雲がどこにいたかは、蓮は知らない。だが、幼い涼野に話を聞き、蓮は自分なりに推測した。
 まず、南雲はサッカーボールを持ったまま外に飛び出て行ったらしい。と、言うことはボールがけれる場所にいる確率が高いと言うことになる。
 この頃の南雲の年齢を考慮し、そう遠くへは行っていないと仮定すると、南雲が行きそうな場所は三つに絞られる。幼い涼野と出会った公園、お日さま園、涼野と出会った公園から少し離れた公園だ。一番目は、南雲の姿はなかったのでだめ。二番目は自分の記憶から消去できる。蓮も一度は外に出たが、どうしてよいのかわからず、お日さま園に戻ったのだ。この時、南雲を見た覚えはない。あくまで自分の記憶が正しければ、の話だが、今は自分の記憶を信じることにし、残った公園へと歩みを進めている。
 ゆっくりと歩きながら、蓮は幼い涼野と歩く時間を満喫していた。子供の手を引いて歩くなど、小学校六年生の時、下級生の面倒を見させられた時以来であるが、楽しいものだ。大人しくついてくる、幼い涼野を見ていると、何故だか心が楽しい。時折幼い涼野が自分を見上げる視線を感じると、自分が兄にでもなったような気分。幼い涼野が可愛く見えてくる。だが、それは今の涼野が蓮に従順だからだろう。生意気を言って振り回すような子供だったら、可愛いなどとは思えない。
 小さい風介は可愛いなぁと、蓮が幼い涼野を可愛がるように目を細めていると、

「はるやと、なかなおりできるか?」

 幼い涼野が不安げに尋ねて来た。同時に幼い涼野の歩くペースが落ちた。
 ふっと前を見ると、公園のフェンスが見え始めていた。どうやら、晴矢と仲直りできるか不安で仕方ないようだ。蓮は幼い涼野の歩調に合わせると、優しく微笑みかける。

「……できるよ、風介くん」

 蓮の周りを明るくするような笑みに安心したのか、幼い涼野は微かに微笑を浮かべ、小さく頷いた。
 
 蓮たちがやってきた公園は、住宅街の一角にある小さなものだった。辺りは緑のフェンスで囲まれ、小さな木が少しある。ただ、遊具は砂場を除いて全くない。代わりに、大きなコンクリートの壁が、公園の入り口からだいぶ離れた場所に立っていた。高さは二m程。横の長さは、公園の横の長さをほとんど占拠するほど長い。テニスなどのボール当ての目印になるのか、黄色に塗りつぶされた円があちこちに描かれている。
 その円の一つに向かって、勢いがついたボールが跳んできた。しかし、サッカーボールは円の中央には当たらず、上の方に当たって、跳ねかえる。跳ねかえってきたボールに少年は駆けより、止めないまま、思いっきり蹴った。紅蓮のごとく赤い髪が忙しく舞い上がる。蓮と幼い涼野は、公園の入り口からその少年の後ろ姿を眺めていた。
 赤い髪に、スポーツメーカーのロゴが入ったオレンジの半袖のシャツ、茶色い短パン姿の少年。ずっとサッカーボールを追い続けているが、円には全く命中していない。
 こまねずみのようにサッカーボールを蹴りつづける少年の後ろ姿に、蓮は見覚えがあった。手をつないでいる幼い涼野も顔を強張らせ、じっとその少年の後ろ姿を眺めていた。つないでいる小さな手が震える。

「あれがはるやだ」

 幼い涼野が言って、蓮は幼い涼野に公園へ入るよ、と目配せをする。
 蓮が公園に足を踏み入れると、幼い涼野も黙って一歩を踏み出した。幼い南雲の元へ近づくたび、壁に跳ね返ったボールが出す軽い音が、どんどん大きくなっていく。幼い南雲はボールを追うのに夢中で、ちっとも振り向いてくれない。ただ、夢中と言うより、ボールにやつあたりをしている印象を蓮は受けた。その証拠に、幼い南雲が蹴ったボールはむちゃくちゃな方向に跳びまくっているし、跳ねかえるスピードもかなり強い。蓮もイライラしている時に、ボールを蹴ると、全く同じようになるのでよくわかる。そして、話しかけると怒ってくるであろうこともよくわかる。
 どう話しかけるか、と迷っていた時、運がいいことに幼い南雲がボールを蹴り損ねてくれた。跳ねかえったボールを蹴ろうとしたが、狙う位置を外したらしい。ボールは、幼い南雲の脇をすり抜け、蓮のもとにまっすぐ転がってくる。
 蓮はボールが足元に来るのを待つと、右足の裏でボールを踏みつけ、ボールの動きを止めた。そしてつま先でボールを前に出すと、つま先でひょいっとボールを持ち上げ、軽く上げ、幼い涼野の手を握っているのとは反対の手のひらの上に乗せる。その光景を幼い風介は、食い入るように見つめていた。と、そこへボールの持ち主が走ってきた。

(やっぱり晴矢だ)

 幼い南雲を蓮はしげしげと眺めた。やはり、南雲晴矢その人だった。背丈は幼い涼野とほとんど一緒で、蓮の腰ほど。髪型なんかも蓮が知る南雲と変わらない。ただ、顔つきは少々生意気そうだ。切れ長の金の瞳は、強い意志の様なものを感じさせる。顔つきを生意気にし、そのまま南雲を小さくした、という表現がどうにもしっくりくる。
 幼い南雲は蓮の手のひらの上にあるボールに目をやっていたが、幼い涼野を見つけた途端、露骨に顔をしかめた。
 
〜つづく〜
んだー親が何故か急に帰ってくる言うので続きが〜!こっから南雲のターンなのに^^;
ちなみに、蓮は探偵(?)の才能がある設定がここで初披露^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.245 )
日時: 2011/02/02 17:33
名前: ふぁいん (ID: Ua50T30Q)

うはぁ!なななんというか三人とも可愛すぎです!あ、もちろん今の蓮君もかっこいいです。涼野様に優しいし。意外と頭がいいことにはびっくりしました!本当にコナ○にも負けない名探偵ですね!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.246 )
日時: 2011/02/04 08:45
名前: 転寝 ◆tr.t4dJfuU (ID: Ua50T30Q)
参照: トリップ変えたぜぇ

も、文句なしに可愛いwww

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.247 )
日時: 2011/02/07 17:04
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

「ふうすけ、なにしにきたんだよ」

 幼い南雲は幼い涼野を発見した途端、どがどがと詰め寄ってくる。今の晴矢も、蓮を問い詰めるときはこんな風に近寄ってくる癖があるのだが、それは幼い頃からの癖だったようだ。ついでに言うと、喧嘩を売るような眼差しで見つめてくる点も似通っている。
 近寄られた幼い涼野は、幼い南雲を前に固まっていた。凛とした表情で南雲と向かい合っているものの、握られた小さな手は小刻みに震えているのが手を通して伝わってくる。時折かすかに口が動くものの、言の葉にはならない。ぼそっと『ご』と言う単語は発するのだが、それ以上は言えないらしい。しまいには、幼い南雲にようがないなら、さっさとかえれ! と吐き捨てるように言われてしまい、幼い風介は助けを求めるような眼差しで、蓮を見上げた。大丈夫、と言うように蓮は幼い涼野に優しく微笑みかけると、震える小さな手をそっと、掴んだ。謝るように、と目配せをすると、幼い涼野の顔付きが変わった。不安げな色が消え、前に進もうという強い意志の表れとなる。

「はるや、ごめんなさい」

 蓮がいて気持ちを強くもてたのだろう、幼い涼野は本当に申し訳なさそうな顔で頭を下げた。その行動に蓮は目を見張った。今の——いや、成長した涼野が多分やりそうにない行動だからである。蓮相手ですら、なかなか頭を下げないというのに、ましてや相手が南雲となるともっと下げない。それが、幼い頃はこうもあっさり謝ってしまうのである。このまま成長すればよかったのに、と蓮は心の中で幼い涼野に語りかけた。
 一方、幼い南雲の態度はあまりよくなかった。頬を膨らませ、むすっとした顔で幼い涼野を睨み付けている。

「あやまったって、おれはゆるさないぞ」

 幼い涼野の謝罪を、幼い南雲は簡単に突っ撥ねた(つっぱねた)。幼い涼野の青緑の瞳が、衝撃を受けたように見開かれる。みるみるうちに陰り、幼い涼野はしゅんとしてしまった。出会った時に逆戻りしてしまったようだ。見かねた蓮は、晴矢に向き直ると、優しく注意する。
 
「晴矢くん、風介くんが謝っているんだから、許してあげなよ」

 すると幼い南雲は睨む対象を幼い涼野から蓮に変え、生意気にも言い返してきた。

「おまえには、かんけいないだろ!」
「……おまえ?」

 蓮の声が震える。子供に、正しくは幼い南雲におまえ呼ばわりされ、蓮はかちんときた。手に持っていたサッカーボールを半ば強引に幼い涼野に押し付け、掴んでいた手も離すと、両手を腰に当て前かがみになり、幼い南雲を思いっきり見下す(みくだす)態度を取った。

「ちょっとキミ! 年上に向かって、”おまえ”はないだろ!」

 本当ならもっと怒ってやりたいところだが、相手は子供。蓮はできる限り優しい言葉で注意するよう心がけた。しかし、幼い南雲はイライラしているせいもあるのだろう。金色の瞳を吊り上げながら、噛み付いてきた。

「おまえを、おまえっていって、なにがわるいんだよっ!」

 その言葉を聞いた蓮の行動は実にストレートだった。
 不敵な笑みを浮かべると、幼い南雲を両腕で抱き上げた。あまり体重がないらしく、簡単に持ち上げられた。不意に抱き上げられた幼い南雲は、じたばたして暴れるが、蓮は離さない。続いて蓮は、片腕で暴れる幼いい南雲の身体を自分の身体にしっかりと固定させ、反対の手で拳を作る。実に楽しそうな表情を浮かべると、拳を幼い南雲のこめかみに押し当て、小刻みに動かし始めた。

「いてて! はなせ!」

 かなり痛みはあるらしく、泣き叫ぶ幼い南雲の目にはうっすらと涙が浮かんでいる。拘束と痛みから逃れようと手や足を激しく動かして抵抗を試みるが、蓮は攻撃の手を緩めない。それどころか、こめかみに入れる力がますます強くなっていき、南雲の叫ぶ声が掠れ始める。

「年上はきちんと敬え」

 にっこりと笑った蓮が、凄みを利かせていった。同時に、拳をこめかみから離す。解放された幼い南雲は、背後から迫る刺すような視線を避ける様に顔を左に向けた。
 蓮は幼い南雲を一度地面に降ろすと、無理やり自分の方を向かせ、幼い南雲の肩の下に手を滑り込ませ、幼い南雲の瞳が自分の目線としっかりあう位置まで持ち上げる。蓮は幼い南雲を見据えるが、幼い南雲の方は間近にある睨み顔から目をそらしている。近くでは幼い涼野が、あっけに取られたように口をあんぐりと開けていた。

「いいか? 僕のことは、お・に・い・ち・ゃ・んって呼べ」

 節々に力を入れ、『お兄ちゃん』と呼ぶように蓮が強要すると、幼い南雲は蓮を見つめてきた。ようやく話が通じたかなと蓮が淡い期待を抱いた瞬間、

「やーだな」

 べーと舌を出し、幼い南雲は肯定する様子も見せずに右横を向いた。蓮はまたにこりと笑うと、実力行使に出た。幼い南雲の身体を自分の手が上がる限界まであげると、ニッコリ笑顔で一言、

「落ちたい?」

 幼い南雲の顔に焦りの色が走った。いくら子供といえども、自分の置かれてる状況が読めたようだ。檻に入ってから自分が捕まっていることに気づいた動物のごとく、手や足を激しく動かし、必死に叫ぶ。顔も恐怖を感じるそれになっていて、今の南雲がまず見せないものだ。

「おちたくない! わあーったよ! おにいちゃん!」
「よし」

 その言葉を聞いた蓮は満足そうに頷き、ゆっくりと幼い南雲の身体を地面に下ろし、足が地面についたところで手を肩の下から外した。足が地面に触れた途端、幼い南雲は安堵のため息を漏らしていた。

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.248 )
日時: 2011/02/05 13:20
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 終わったらどっちがかわいかったかアンケート取ろうかな?

 直後、幼い南雲はしょんぼりしている幼い涼野を見た。何か言いたげな瞳で幼い涼野を眺めているが、それ以上は何もしない。じっと幼い涼野を睨むように見ているだけだ。幼い涼野はずっとボールに視線を落としたまま、顔をあげようともしない。互いに話しかけづらい空気が、二人の間には完全にできあがっていた。
 第三者が介入しないとぶち壊れないだろう重い空気を壊すため、蓮は幼い南雲に呆れたように話しかけてみる。

「キミさぁ、少し素直になったら?」

 そもそも小さい南雲が意地を張ったりするから、話が一向に進まないのだ。時折謝りたがる素振りは見せるものの、なにかと駄々をこねて、自分は悪くないと主張している南雲のせいで、仲直りが進まない。
 蓮が話しかけると、事体の根源は、うるさそうに顔を上げた。

「おれは、ふうすけもれんもゆるさない」
「あのねえ……」

 まだ意地っ張りを続ける幼い南雲に蓮は絶句した。こいつに言葉は通じないと早くも悟り、蓮は幼い南雲の手を軽くつねった。いてっと、幼い南雲が声を張り上げ、幼い涼野が反射的に顔を上げる。

「晴矢くん、痛いでしょ?」

 蓮は哀れむような悲しげな表情で幼い南雲に聞いた。同時に、幼い南雲の手から指を離す。

「こんな風に人が嫌がることをしていいのかな? 人のものを勝手に食べたりしていいの?」

 その言葉を聞いたとき、幼い南雲ははっとした表情になった。つねられていた箇所をさすりながら、目を丸くしている幼い涼野を見やる。おれが……としたことを後悔するような声色で、幼い涼野に何か言おうとしたが、決まりが悪そうに横を向いてしまった。蓮はアンニュイにため息をつくと、幼い南雲に優しく声をかける。

「晴矢くんもさ」

 声をかけられた瞬間、幼い南雲は警戒気味に身構える。どうやら、蓮が再度何かするものだと思っているらしい。その様子が何だかおかしくて、蓮は小さく笑いながら、幼い南雲の頭に手を伸ばした。ぶたれるとでも思ったのか、幼い南雲はびっくと身体を震わせ、目を閉じる。すぐに目を開けた。
 蓮はぶつのではなく、幼い南雲の頭にそっと手を置いた。ただし、頭のチューリップは壊さないよう気を使い、額の上辺りに置いたが。そして静かに幼い南雲の頭をなで始めながら、年上らしい、穏やかな口調で蓮は、語りかける。

「食べられて嫌だったから喧嘩しちゃったんだよね。僕だって、好きなもの横取りされたら怒りたくなるし・・・・・・その気持ちはわかる。でも、”嫌だ”っていう気持ちは風介くんや蓮くんも同じだよ。同じだから、晴矢くんと同じように怒っちゃったんだよ」
「…………」

 静かに頭をなでられている幼い南雲は、目を細め、黙って俯いていた。静かになでられていた。何か思うことがあるのか、難しい顔をし、地面とにらめっこしている。

「はるや」

 その時、幼い涼野が幼い南雲に呼びかけ、幼い南雲は顔を上げた。蓮も幼い南雲の頭から手を離し、二人の成り行きを見守る。

「わたしも、おこってわるかった。こんど、おひるがいちごだったら、わたしのぶんをぜんぶはるやとれんにわたす」

 小さい自分のことも忘れない涼野の言葉に感激しながら、蓮は幼い南雲の顔色を伺う。幼い南雲は下を向いていた。赤い髪が表情を隠している。

「ほら、風介くんもこう言っているんだし」

 まだ怒っているのかと思った蓮が弁明を入れると、俯いていた南雲が声を発した。

「わかったよ」

 口元が笑った。そのまま顔を上げると、白い歯を見せて笑った。この年頃だと抜けるものなのか、前歯が何本かなかった。幼い南雲は幼い涼野に近寄ると、わざとらしく首を振る。

「しかたないな、とくべつにこのはるやさまがゆるしてやるぜ」

 偉そうな口調で、幼い南雲は胸を張る。すると、今まで強張っていた幼い涼野の顔が綻んだ。
 いかにも晴矢らしいなぁと内心苦笑しつつ、蓮は幼い涼野の元に歩み寄る。

「よかったね、風介くん」

 蓮が声をかけると、幼い涼野は蓮を見上げた。その顔にもはや陰りは泣く、晴れ晴れとしたっものだった。そして、綺麗な青緑の瞳からは、きれいな光の雫がこぼれていた。太陽の光をそのうちに宿し、儚く光りながら、幼い涼野の頬を伝っていく。

「ありがとう、おにいちゃん」

 幼い涼野が光がはじけるように笑みを見せる。

「おにいちゃんがいなかったら、なかなおりできなかった」

 幼い涼野は蓮の足元に駆け寄ると、蓮のジャージの裾を引っ張り
甘えるような瞳で蓮を見つめた。蓮は黙って幼い涼野の頭に手を置き、優しく撫で、そして褒める。

「一番頑張ったのは風介くんだよ。えらいえらい」

 褒められたことが嬉しいのか、幼い涼野は、頬を赤らめながら、照れ笑いをした。

〜つづく〜
参照4500突破!いやあ、マジで感謝としか言いようがないですvこんな妄想のかたまりーよをこれからもよろしくお願いいたします^^

と言うことでガゼルとバーンの仲直り回でした。そして、幼少南雲と蓮が初めて会う回でもありました。本当に幼少期ぱろは書いていて飽きないですv実は幼少アフロディも混入しようかと思ったのですが、それはまたの機会に^^;

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.249 )
日時: 2011/02/05 13:28
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

>>ふぁいんさん
蓮の頭の良さは前々から考えはあったのですが、見せるタイミングをずらしてしまったんです;;蓮は、地理ダメだし、バカだと思われていたでしょうねv三期沿いになったら、頭の良さをもっと出したいと思います。
かわいいとかかっこいいって言葉で私と言う存在が嬉しすぎて消えそう。コメテンクスでした^^

>>転寝さん
やっぱり幼少期パロは楽しいもんですv書いていて何回か自分がかわいいと思っているところもありますv今回の私的にぐっと来たシーンは、偉そうな口調の晴矢。なんか子供らしくていいと思うんです!
コメント有難うございました^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.250 )
日時: 2011/02/05 16:21
名前: ふぁいん (ID: Ua50T30Q)

まずいいですか!萌えポイント今回も多すぎです!今回も神文です!特にちっこい南雲が胸キュン♪蓮君に対する生意気な態度もよかったですが、蓮君に力で負けたときもかわゆす〜!後は涼野様!なんか素直すぎて素敵です。最後にやたら攻撃的な蓮君。キレルと怖いですね!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.251 )
日時: 2011/02/08 15:29
名前: ふぁいん (ID: Ua50T30Q)

続き待ってます!あげ!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.252 )
日時: 2011/02/08 19:13
名前: しずく ◆rbfwpZl7v6 (ID: Ua50T30Q)

「ところでおにいちゃんのなまえはなんだよ?」

 その時、幼い南雲が蓮に尋ねた。そういえば、まだ幼い南雲と涼野に、自己紹介をしていなかったことを今更ながら思い知らされる。あんまり黙っていると先ほどみたいに不審者と勘違いされる恐れもあるため、蓮は即興で偽名を口走った。

「山田 太郎って言うんだ」

 男らしい貫禄に満ちた名前など、とっさに思いつけるわけなく——蓮はよくある名前の代表格ともいえるものを挙げた。
 その名前を聞いた幼い南雲と涼野は顔を合わせ、幼い南雲は笑いながら一言、

「だっせーなまえだな」
「うるさいな」

 幼いとはいえ、南雲にからかわれるとなにやら腹立たしい。蓮は向きになって反論した。晴矢くんこそ……と口から出掛かったのを、蓮は慌てて飲み込んだ。今は幼い南雲とじゃれあっている場合ではない。ふと現実に戻ると、幼い涼野が何かを訴えるように蓮を上目遣いで見ていた。彼が何を望んでいるのかは言われなくても蓮はわかっていた。

「後は蓮くんと仲直りしないとね」

 そう、幼い自分と仲直りすること。思ったとおり、幼い涼野はこっくりと頷いた。そして幼い南雲の方に向き直る。

「はるや、れんにきちんとあやまってくれ」
「おまえもな」
「でも、れんはどこに?」
「しらねーよ」
「知ってるよ」

 答えに窮した幼い南雲の上から、蓮の声が降って来た。幼い二人は同時に目を見開き、蓮に注目した。蓮は抜けるような青い空を、焦点が定まらない目でぼんやりと見上げている。

「僕は蓮くんの居場所を知ってるよ」

 蓮は独り言のように言った。それから、不思議そうに見上げてくる幼い二人の視線を感じながら、二人には聞こえないほど小さな声で、だって僕は未来から来たからねと付け加えておいた。

 蓮は幼い二人を引き連れ、初めに幼い涼野がいた公園に戻ってきた。 案の定公園のベンチにその目的となる人物はいた。ブランコ近くにあるベンチに座り、嗚咽(おえつ)を漏らしながら、人目を憚らずに涙を流していた。その光景を見た幼い南雲と涼野は蓮の手から離れると、その泣いている人間の元へと駆けていく。一方の蓮は、半分引き気味にその泣いている少年を見ていた。その顔は何やら呆れたとも嫌そうなともとれる微妙なものであるが、こうなることには理由がある。
 幼い南雲と涼野が駆け寄った人間は、二人に気づくと、ばっと顔をあげる。ばねにはじかれたようにベンチから下り、二人の前に立った。

「はるやぁ! ふうすけぇ!」

 黒曜石のような漆黒の瞳を潤ませ泣き叫ぶこの少年こそ——幼い白鳥 蓮その人だった。背丈は幼い南雲と涼野より少し小さく、黒い髪は、今の蓮よりだいぶ長い。それと頼りなさそうな顔付きのおかげで、傍から見ると女の子のように見える。不幸なことに、今日の服装もお日様園の職員がふざけたのか、オレンジ色のTシャツに黄色いキュロットを着ている。どっからどう見ても少女だが、実際の蓮は男である。
 その服装と見ていて情けない言動の数々は、成長した蓮の心を軽くえぐり、立ちくらみに近いものを起こさせていた。蓮は立つことに意識を集中させ、現実から半分逃避していた。それもそのはず、蓮は小さい頃の気弱な自分が大嫌いなのだ。何度も忘れようと努力したこともある。が、目をそらしても、忘れたい過去は容赦なく記憶を蘇らせてくれる。 最終的な逃避行動として、自分はこんなに弱くかった、と蓮が自分に言い訳。それでも現実は甘くない。目の前の小さな蓮は、成長した蓮に精神的なダメージを与え続ける。

「ごめんなさい! いちごたべちゃったぼくがわるかったよぉ。だってぼくがおいしいとおもってたべたけど、はるやもふうすけも、だいすきだよね。こんどぼくのぜんぶあげる。だから、だから……」

 幼い蓮は鼻をすすりながら、まだ涙を流しながら、幼い南雲と涼野に何回も頭を下げた。必死に謝っているせいか、言っている内容も支離滅裂だし、声も涙声で掠れている。最後には語尾も弱弱しくなり、ついに消えた。幼い南雲と涼野の顔を、不安げに眺めた。二人は、硬い表情で蓮を見つめていた。

〜つづく〜
なんか蓮が逃避行動してますが、みなさまにも忘れたい過去はあると思います。かくいう私も色々あります^^;
どうでもいいですが、バレンタインデーの短編書きたくなってきた。多分ファイアードラゴンによるカオスストーリーになると思いますww

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.253 )
日時: 2011/02/08 18:01
名前: しずく ◆rbfwpZl7v6 (ID: Ua50T30Q)

>>ふぁいんさん
これは悪文ですよww今回は萌をかなり意識しているので可愛ければそれでオッケーって感じですねぇv
南雲は生意気なイメージがあったので、こんな風に生意気にしてみました。で、蓮は女の子みたいなかんじ。当の本人は思い出したくないって言う設定になっています^^;

ではではコメント&あげてんくすでしたb

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.254 )
日時: 2011/02/08 22:10
名前: ふぁいん (ID: Ua50T30Q)

幼少蓮君も可愛いです!鼻血もんです!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.255 )
日時: 2011/02/08 22:42
名前: 癒玖刃 ◆GdYtMY4AZo (ID: QJSI9r3P)

や、ヤバイ……!
半径30メートルが海にっ!
「拭かないと」
蓮萌えるよ、いや……勿論二人も……!
昔から変わらないものですね……ww流石にチューr(黙
の形はwwプチ蓮可愛すぎるだろ……!それだけで半径10mは広がったかもしれません!
これからも応援しています

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.256 )
日時: 2011/02/14 15:27
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: もうすぐ本編再開します

 しかし矢庭に、幼い南雲と涼野は、顔を綻ばせた。それを見た幼い蓮は、黒い瞳をまだ涙で濡らしながら、柔らかい笑みを浮かべる二人を、戸惑いがちに見る。
 怯える小動物のように身体を少し丸め、身体を少し震わせている様子は、完全に気弱な性質の哀れだった。
 そもそも幼い蓮が泣きじゃくっているのも、南雲と涼野と喧嘩したのもあるが、本来の理由は瞳子にこっぴどく叱られたからである。
 お日様園に戻った蓮は、すぐさま瞳子に捕まり、相当長い時間お説教された。悪いのは蓮だけではないが、瞳子はとりあえず蓮を怒ったのだろう。
 当時の瞳子は、お日様園の子供にとって頼れる姉であると同時に、恐怖の魔王のような存在だった。魔王に叱られれば、抵抗できないほど蓮は気が弱い。つまりは一方的に瞳子が怒鳴り、幼い蓮は頭を下げる一方と言う構図に必然的になるわけだ。最後には、晴矢と風介に謝ってきなさい、と命令され、泣く泣く外に二人を探しに出た。
 ものの、二人は見つからず途方に暮れ、ああして大泣きしていたと言う事実があった。
 あまりにも小さな自分が情けなさすぎて、恐ろしい現実を拒みたくて、蓮はすさまじいレベルの精神的ダメージを受けていた。
 思考の回路は完全にシャットダウンされ、口をあんぐりと開けたまま、彫像のように凍りついている。何も感じず、何も聞こえていないようだ。目の前で三人の仲直りが進んでいると言うのに、声もかけない。

「なくな、れん」

 怯える幼い蓮の肩に、幼い涼野が小さな手を置き、見据えた。
 その顔に悲しみや怒りの色はなく、いつものような無表情。しかし、口角が僅かに上がっている。
 幼い涼野の横では、幼い南雲が白い歯を見せて笑い、

「おとこがなくなんて、なさけないぞ」

 茶化すように言って、ひとさし指で幼い蓮の頬をつっついた。二人の穏やかな態度に、幼い蓮は若干困ったような顔を作る。
 が、すぐに幼い蓮は服の袖で涙を拭うと、ぷーっと左右の頬を膨らませ、不機嫌そうな声で幼い南雲に言い返す。

「ないてないもん」

 すると幼い南雲は意地の悪い笑みを作り、幼い蓮を指差して、嘲笑う。

「ほんとおまえって、おんなのこみたいだな!」
「ぼくはおとこだもんっ!」

 幼い蓮は、怒って両腕を上げながら、高い声で叫ぶ。その声音に恐怖を与えられるような凄みはなく、むしろ可愛く思える——子犬が大型犬に吠えるようなものだった。
 その態度を幼い南雲は楽しんでいるらしい。幼い蓮を挑発するような台詞を吐いて逃げ出した。負けず嫌いな幼い蓮はすぐさま挑発に乗り、幼い南雲の後を追いかける。固まっている蓮の回りを時計回りで走り回り、追いかけっこをする。
 その様子を幼い涼野は、冷ややかな視線で見送っていた。

「はるやー! まてー!」
「やーだな!」

 幼い蓮が待てと愛くるしい声を張り上げながら追いかけ、幼い南雲は楽しそうに振り向きながら、べーと舌を出す。悔しがる幼い蓮が一層大きな声を出す。
 小さい二人の間で飛び交うはしゃぎ声や笑いあう声は、先ほどまでの喧嘩が嘘のように思わせるものだ。
 それを傍観していて、追いかけっこに参加したくなったのだろう。今までぼうと突っ立っていた、幼い涼野が急に走り出す。
 幼い南雲の前に立ち塞がり、進路をふさいだ。進路を塞がれた幼い南雲は立ち尽くし、後ろから追いかけてきた幼い蓮が彼の背中を叩いた。

「やったー! ぼくのかちだぁ!」

 幼い蓮は嬉しそうにぴょんぴょんとジャンプする。馬鹿にされたことが悔しくて追いかけていたはずなのに、いつのまにか鬼ごっこになっていたらしい。
 勝者の幼い蓮ははしゃいで幼い涼野に駆け寄り、敗者の幼い南雲は嫌そうな顔で幼い涼野に噛み付く。

「ふうすけ! おまえのせいでれんにまけたじゃねーか!」
「きみが、れんをからかうからいけないのだ」

 幼い涼野は小馬鹿にするように鼻を鳴らした。すると幼い三人はますますうるさくなる。笑い声や怒鳴り声がどんどん大きくなる。

「ん」
「れん、ずるいぞ!」
「はるやがわるいんだよ!」

 三人がはしゃぐ声で、蓮はようやく我に返った。
 何が起こったのかわからないらしく、目を瞬かせる。意識に再起動がかかった頃、幼い自分が、幼い南雲と軽くもめている光景を目の当たりにし、仲直りしたらしいことを悟る。

「あ、仲直りできたんだ」

 蓮がポツリと言葉を漏らすと、幼い三人は一斉に顔を上げる。
 今まで蓮がいることに気づかなかったらしい幼い蓮は、強張った顔で成長した蓮を見上げた。
 この頃の蓮は人見知りが激しく、初対面の人間には警戒気味な態度を取る。慣れれば嘘のように傍若無人に振舞うのだが。
 見上げた自分の弱気な態度にすっかりなれてしまった蓮は、“流す”と言う技術を身につけた。目眩を起こすことなく、幼い三人の目線に合わせるようかがむ。
 幼い南雲がサッカーボールを捨てたらしく、足元にサッカーボールが転がっているのに気づき、拾った。
 
「よかった。ついてきた甲斐(かい)があったよ」

 蓮が微笑むと、幼い南雲は胸を張り、幼い涼野と幼い蓮の肩に親しげに腕を回し、抱き込むように自分の近くに引き寄せる。幼い涼野も幼い蓮も驚いたように瞠目し、幼い南雲にされるがままになっていた。

「あったりめーだろ! ふうすけとれんがいないとサッカーたのしくないんだよ」

 幼い南雲が断言し、幼い涼野が得意げな顔をした。

「わたしたちはさいきょうなのだ」
「はるやもふうすけもだいすき!」

 幼い蓮が嬉々とした表情で言う。それから不思議そうな目で蓮を見やる。

「ところで、おにいちゃんだぁれ?」
「やまだ たろうおにいちゃん。うちゅうじんらしいぞ」

 蓮が改めて自己紹介しようとする前に、幼い涼野が紹介してくれた。が、余計な一言がくっついている。 それを聞いた幼い蓮は、うちゅうじん!? と幽霊でも見たかのような顔で、また身体をわなわなと震わせながら蓮を見上げる。どうも本気にしているようだ。

「は、はるやとふうすけ、たべちゃだめだよ!」
「いやね、僕は瞳子さんの友達だよ。生物学的にも人間だから」

 蓮が苦笑いを零しながら話すと、幼い蓮は安心したように笑顔を見せる。

「そっか! たろうおにいちゃんは、ねえさんのおともだちなんだね!」
「う、うん」

 蓮は戸惑いがちに頷いた。
 “太郎”と呼ばれるのは何やら複雑で、せっかくなら“蓮”お兄さんと呼ばれたかったなぁと内心後悔する。と、その時蓮はあることが気になった。

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.257 )
日時: 2011/02/14 15:18
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

「ねえ三人とも、一つ聞いていいかな?」
「あんだよ」
「なんだ?」
「なあに?」
「将来の夢ってある?」

 考えてみると、幼い頃の南雲や涼野、自分の夢は覚えていない。思い出したいが無理だ。
 幼稚園の文集は、義父母が謝って古紙回収に出してしまったせいで、もう手元には残っていないからだ。 南雲や涼野は持っていそうだが、こいつらはよく蓮の恥ずかしい過去をほじくりかえしては、からかうのが好きなので、蓮は聞きたくないのだった。
 この質問をする主な理由に、実は半分はからかってくる南雲や涼野への復讐の意図もある。こんなこと言ってたよなぁ、とたまにはあの二人を馬鹿にしたいものなのだ。蓮は二人が子供らしいへんなことを言うのを期待していた。
 幼い南雲は、二人から腕をはずした。三人は互いに顔を見合うと、まずは幼い南雲が口を開いた。自身満々に蓮に話す。

「おれはふうすけとれんといっしょにサッカーやるんだ!」
「おお、仲がいいんだね」

 褒めるような口先だが、内心では幼い南雲がしごくまっとうなことを言ったのを残念に思っていた。
 続いて蓮が幼い涼野に目配せすると、幼い涼野はしばし考えるように視線を宙に送ってから、蓮を見上げる。

「わたしか? わたしはやきゅうせんしゅになる」
「なんで?」
 
 蓮は涼野をからかうネタが出来たと喜びながら、一応尋ねる。
 すると幼い涼野は刺すような視線を、幼い南雲と蓮へ順々に送って、不平そうな顔で蓮に目を合わせる。

「はるやとれんにまねされるのがいやなのだ。わたしだって、サッカーせんしゅがいい」

 どうやら三人と同じになるのが嫌で無理して夢をねじ曲げているらしい。無理に意地を張っている涼野が可愛いく思えて、蓮は優しく声をかける。

「無理する必要はないよ。三人でサッカー選手になればいいだろ?」
「…………」

 幼い涼野が冷たい表情で——目を少し吊り上げながら、蓮を睨む。
 蓮は小さく笑い声を立て、さっきの南雲のように幼い涼野の頬を人差し指でつっついた。ぷにぷにしていて柔らかい感触がする。幼い涼野は嫌そうに顔をしかめるが大人しくしている。

「いじっぱりだね〜風介くん」
「うるさい」
 
 茶化すように蓮が人差し指で何度か頬をつっつくと、幼い涼野は機嫌が悪そうな低い声を出した。
 これ以上いたずらをするとどんなことになるのかわからない覇気を纏っているので、蓮は残念そうに幼い涼野をつつくのを止め、幼い自分の方に顔を向ける。 こうして中学生になり、小さい自分と会うのは、何だか懐かしい。蓮は懐かしむように自然と目元を緩くした。一方幼い自分は無邪気に、

「たろうおにいちゃん! ぼくはね〜、はるやとふうすけにまもってもらえる、りっぱなおとこになるんだ!」
「は?」

 耳を疑うような言葉を実に嬉しそうに話してくれた。蓮は間の抜けた声を出し、手の力が自然に抜けた。サッカーボールを独りでに落としてしまった。サッカーボールが地面で数回虚しい音を立てて跳ねる。 ボールへの反応が早いのだろう——幼い蓮はすぐにボールの方へ走り、ボールを両手で抱え、蓮に差し出した。

「おにいちゃん! ボールおとしたよ!」
「あ、ありがとう……」

 蓮はどうにか言葉を吐き出しながら、立ち上がり、幼い蓮からボールを受け取った。
 それから改めて幼い蓮と同じ目線までしゃがみ、必死に平静を装いながら尋ねる。

「あ、あのね蓮くん……ど、どうしてそんな夢があるのかな?」

 幼い蓮は小首をかしげ、さも当然そうに、

「だって、まえにひとみこねえさんいってたよ! れんはよわいから、ふたりにまもってもらいなさいって!」
「……そっか」

 蓮は目眩を起こしそうにながらも、ふらふらと立ち上がった。
 恐らく瞳子がふざけて言ったのをまともに受けているのだろう。子供だから仕方ないと説得する考えが浮かぶと同時に少しは疑えよ、と思う相反する気持ちが心の中で衝突しあう。どちらが自分の本当の思いなのか、蓮にはわからなかった。

「そ、そろそろ帰ろうかな」

 もうこれ以上いると精神がどうにかなりそうなので、蓮は現実から逃避するように幼い南雲たちに背を向けた。
 すぐにえー! と三人は非難の声を上げる。

「たろうおにいちゃん、もうかえるのか?」と、名残惜しそうな目で幼い涼野が、
「もっとあそぼーぜ!」と、遊び足りない様子の幼い南雲が、
「なにかごようじなの?」と、必死そうな目で幼い蓮が、それぞれ今の蓮の背中に声をかける。しかし蓮は、残念そうに振り向きながら片手を挙げる。

「これから用事があるしさ、かえ……ああっ」

 “帰る”と言いかけ、蓮は絶望的な声を出す。

「僕……どうやって帰ればいいんだ!?」

 蓮は真っ青な顔になり、頭を抱える。目金に過去に来る方法は聞いていても、未来、正しくは蓮が今現在生きている時間にどう帰ればいいかは、全く聞いていなかったからだ。
 帰れない、突きつけられた現実が蓮の頭の中で何度もぐるぐるしていた。

〜つづく〜
「僕は晴矢と風介に守ってもらえる立派な男になる」と言う幼少蓮の台詞が前々から書きたかったのですが、ようやく書くことが出来ましたww
普通逆!「二人を守る立派な男になる」って言うのならマシなのに、その逆にしたら面白いかなぁとふっと思ったのがきっかけですbどこまでも蓮は女々しいのであったちゃ(

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.258 )
日時: 2011/02/09 17:25
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 最近お客さんが少ないのでコメントに狂喜乱舞

>>ふぁいんさん
鼻血もんですかぁwwそういって頂けると嬉しいです!これからもふぁいんさんを萌えさせまくります^^コメントてんくすでした!

>>ユクハさん
よし、ユクハさんの血の海を広げられてよかったよ(こら

蓮は一番子供らしい(?)。他の二人はユクハさんのおっしゃる通り、今とイメージを変わらせないように書いてますwwでも、子供なので今のガゼルとバーンと全く同じようにしないように気をつけてますwwあ、そういえばチューリップは幼少期から健在設定ww蓮が壊さないように気をつけている描写は、一応こだわってみましたww

プチ蓮は相当ダメージでかかったですかww萌って言われると本当に嬉しいです!ユクハさんマジてるみん!コメありがとうございましたでした^^これからも萌えロードうひゃっほ(静かにしようか

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.259 )
日時: 2011/02/09 17:31
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

初めまして!!
すごく人気だね♪
あたしも頑張らないとなぁ・・・・・
頑張ってねぇヽ(○´3`)´3`)ノ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.260 )
日時: 2011/02/10 08:12
名前: ふぁいん (ID: Ua50T30Q)

蓮君昔はバーン様とガゼル様に守ってもらおうなんて言ってたんですね!可愛すぎです!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.261 )
日時: 2011/02/12 21:57
名前: ふぁいん (ID: Ua50T30Q)

あげ!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.262 )
日時: 2011/02/14 14:54
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 合唱祭で早かった。優勝は別クラスだったぜorz

>>(●A●) さん
おお、久しぶりのお客様でとっても嬉しいですv

人気なんて全然ないですよ^^;
そう言って頂けると嬉しいのですが、(●A●) さんのようなてるみんさまはとっても少ないです。
なので、こうしてコメントを頂けると、すごく励みになりますb

(●A●) さんも小説を書かれているんですか? よろしければタイトルを教えてください^^今度読みに行きます♪

はい、応援有難うございます!
嬉しすぎます><精一杯更新頑張ります♪
>>ふぁいんさん
蓮たちの子供の頃の笑い話の一つにこんな話があったのです!

書いていて自分も突っ込みたくなるような話ですねww
女の子ならまだしも、蓮は完全に少年。普通守るとか言うべきなのに、守ってもらうってどういうことだよって友達にも言われました。
可愛いとるか情けないととるか……
ふぁいんさんは可愛いと感じてくださったようですが、私は微妙です。

ではではコメントてんくすでした^^

お知らせ的な
お久しぶりです!ここ数日の3連休は田舎に拉致されていたしずくですw
今日はバレンタイン!
ってなわけで(なにがてなわけか知らんが)、行事があるたびに短編書きたくなる馬鹿がしずくです。。。
ファイアードラゴンによるバレンタインネタ書きたいので、今の幼少短編の後に時期ずれなバレンタイン短編が来ます。
またもや学園キ○の書き方をパロってやってみたいと思いますww
あるキャラが料理下手設定など私的な設定が多々ありますので、期待しないで下さい!←独り言。
旅行中にちょくちょく書いていたら、なんだかカオスなできになってしまいorz
さっさと本編書けよ、と突っ込まれそうです。うん、本末転倒になっています。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.263 )
日時: 2011/02/15 17:43
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

「おにいちゃん、いまかえれないっていったよな!」

 蓮の大きな声で言った独り言を聞いた幼い南雲が声を弾ませる。その横では、何やら嬉しそうな顔で笑っている幼い蓮とよく見ると楽しそうな顔をしている幼い涼野が、立ち止まっている蓮の背中に目をやっていた。
 蓮は、子供たちの楽しそうな声と期待するような眼差しを背中に感じながら、油が切れ掛かったブリキのおもちゃのように振り向く。その顔にはとっさに作った笑顔が貼り付けられていた。

「いや、そんなことは言ってないよ」

 とりあえず否定はしてみるものの、内心、幼い南雲たちに独り言を聞かれたことが焦っている。自然と声音にも出てしまい、うそをついていることはバレバレだった。
 幼い南雲は意地の悪い笑みを作ると、横にいる幼い涼野と幼い蓮に確認するように問う。

「ふうすけとれんもきこえただろ?」
「そうだな」
「うん」

 二人が頷くのを確認すると、幼い南雲はほら見ろ、と言わんばかりに挑戦的な笑いを顔に浮かべる。

「ほらな!」
「…………」

 何にも言い返せない蓮はばつが悪そうに視線を宙に彷徨わせる(さまよわせる)。子供に流されているが、下手な言い訳なら考えようと思えばできたはずだ。なのに、言い返せないのはこの頃から続く不思議な縁(えにし)のせいだろう。一芝居をうつのが得意な蓮ではあるが、南雲や涼野にはどうにもそれができない。芝居を打ってもなぜか見破られるからだ。今の二人は確かに子供だけれど、きっとばれるだろうな——と思い、蓮は口をつぐんでいるのだ。

「ぼくね、もっとたろうおにいちゃんとおはなししたい! もっといっしょにいて!」

 そんな時、幼い蓮が珍しく自己主張をした。声に気づいて蓮が幼い自分の方を見ると、もっと一緒にいて欲しいと、強く訴えるような顔をしている。横では、幼い涼野が、不安げな目で蓮を見上げている。

「だめなのか?」

 自分のせいで蓮がいなくなるとでも思っているのか、蓮にそう尋ねると、申し訳なさそうに俯いてしまう。蓮の良心が潮騒のように騒ぐ。傍から見れば年上である蓮が、幼い涼野をいじめて下を向かせているように見える。
 そんな幼い涼野の様子を見ていた、幼い南雲は幼い蓮に何やら目配せをする。途端、幼い蓮は急に瞳を潤ませ始める。鼻をすすり、わざとらしく目尻から水をこぼし始める。その様子を見ていた蓮は、心の中で舌打ちをする。間違いなく嘘泣きだからである。
 よく見ると、瞳は潤んでいるが、目元は笑っている。ただ、よほど注意深く見ないとわからない泣き顔で、大抵の大人はだませるだろう。

「おにいちゃんがいじめたー!」

 迫真の演技とも言える泣き声。しかもわざとらしく大きな声で泣き叫んだ。すぐさま、公園の外を通りかかっていた大人たち数名が足を止め、蓮に非難の視線を浴びせる。
 ずぶずぶと刺さるような視線をまともに受けながら、蓮は誤解であることを示そうと、愛想笑いを浮かべながら、両手を振り、足を一歩下げる。
 しかし、幼い蓮は嘘泣きをまだ続けているし、調子に乗った幼い南雲は嫌らしくこのひとがいじめた! と、蓮を指差しながら嘘を吹聴(ふいちょう)して歩く。大人たちの視線がますます厳しくなる。
 とうとう耐えられなくなった蓮は、おもむろに幼い涼野の手を取ると、どかどかと公園の出口に向かって歩き始めた。それを見ていた幼い蓮は泣くのを、幼い南雲は声を張り上げるのを止め、二人の後を追いかけ始める。

「……わかったよ」

 ボールを小脇に抱えながら、蓮は不機嫌な声を出した。そして立ち止まる。

「もう少しだけ一緒にいてあげる」

 悔しそうな顔で、蓮は後から歩いてくる幼い南雲と幼い蓮に向かって言った。その瞬間、幼い二人は憎らしいほどにほくそ笑んだ。してやられた……と蓮は敗北感を味わいながら公園の地面を睨みつける。

〜つづく〜
振り回される蓮もいいかな〜と思いまして。
ところで昨日は雪が積もりましたね!私の家の周りもかなり積もりました。
ところで『蓮が』を変換しようとして煉瓦(れんが)になったのに吹きましたww蓮と連携技とか言いづらいですよね。連携技。まだ出してませんが、いくつか案はあります。もちろん私の好みのことばかり……なぜかアフロディとの案もあったりします。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.264 )
日時: 2011/02/15 17:41
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

しずく
初めまして!すごく分かりやすくていいね!!
こーしんガンバ!!
応援してる!タメいいかな?って言ってももうタメだけどwww
あたしの小説にも来れたら来て!!
「イナズマイレブン【ギャグ小説】パート2」だよ!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.265 )
日時: 2011/02/16 17:36
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

 それから数十分後の住宅街には、

「おれがいちばんのりだぜ!」
「まってよー! はるやー!」
「ふたりとも、まて!」

 ぎゃあぎゃあと嬌声を上げながら先陣を走る子供三名と、

「こら! 走るな! まて!」

 その子供たちより、だいぶ離れた場所で、命令形を連呼しながら、必死に子供たちを追いかける、サッカーボールを抱えた中学生がいた。

 公園を出た直後、幼い涼野がおなかがすいた、と蓮のジャージの裾を掴み、空腹を訴えてきた。
 蓮を見上げる幼い涼野の青緑の瞳は、子供らしいあどけないもので、蓮の父性(?)本能をくすぐるものだった。それにつられた蓮は、顔を綻ばせながら、つい、いいよなんて首肯してしまったのだ。

「はらへった。なんかくわせろ」

 幼い涼野が嬉しそうに少し微笑む横で、幼い南雲が偉そうな口調で要求する。幼い南雲に年上を敬う気持ちはあまりないらしい。蓮は“年上”として、幼い南雲の額に自分の額をくっつけ、少し目つきを厳しくしながら、叱るように言う。

「年上に命令するな」
「おれはたいやきがいいぜ! なあ、たろうおにいちゃん、たいやきたべようぜ!」

 幼い南雲はするりと蓮の額から自分の額を離し、叱られてもけろりとしている。そして、聞いてもいないのに自分が食べたいものを元気に提案した。えぇ…・・・と蓮は嫌そうな声を出した。が、その横で幼い涼野は、幼い蓮に近づくと、

「たいやきか。うまそうだな」
「ぼく、たいやきだいすき!」

 蓮が不平そうな顔をする下で、勝手に話を進め、二人で盛り上がり始めた。
 ここでたいやきはなしと言えば、またさっきのように幼い自分が空涙(そらなみだ)を流すに違いない。さっきの大人たちのナイフで刺すような鋭い視線は、もう浴びたくない。    
 独りでにため息を漏らしながら、蓮はジャージのポケットから財布を出す。黒い皮で出来た財布である。お札が入る前ポケットを指で広げるが、札はない。すぐ下にあるポケットのような小銭入れを開き、財布をひっくりかえす。掌に乗ったのは、日光を反射して輝く500円玉が一枚のみ。掌に乗った500円玉を力強く握ると、拳を振るわせる。蓮は悔しそうな表情で、

(くっそぉ)

 心内で悪態をついた。
 それというのも、昨日蓮が知っている南雲と涼野とちょっとした賭けを思い出したせいである。
 内容はじゃんけんをし、負けたものが二人にジュースとお菓子をおごると言うよくある趣旨のもの。そして、蓮は見事に二人に敗北し、少ない小遣いが炎のように燃やされ、氷のように溶かされたわけである。蓮は二日続けて、南雲と涼野におごらされる羽目となったのだ。

 息せき切りながら走っていた蓮も、とうとう息が苦しくなり、ふらふらと近くの電柱にもたれかかる。
ちなみにやんちゃ坊主たちは、住居をそのまま店舗として利用しているたい焼き屋の前で、既に品定めに入っている。自分たちの背より高い場所に置かれた、たいやきを、小さい身体を一生懸命伸ばしながら、食い入るように見つめている。

「ぼく、何食べたいのかな?」

 エプロンを着たお姉さんが優しく話しかけ、三人は声をそろえて、

「あんこあじをください!」
「ぼ、僕も……」

 息を整えながら、蓮も片手を挙げて遠慮がちに頼んだ。

「おいしい!」
「そうだな、れん」

たいやきを頭からかじった幼い蓮が歓声をあげ、左横にいる幼い涼野が微笑を浮かべた。 たいやきを購入後、蓮たちは、蓮が幼い涼野とであった公園に戻り、ベンチに座ってたいやきを食べていた。
幼い蓮と幼い涼野は、頭からゆっくりと食べるが、幼い南雲はわざわざ尻尾から食べている。かなりの勢いでばくついており、たいやきは、もう頭くらいしか残っていない。

(晴矢だけ尻尾派か。そういや、今も尻尾から食べてたな)

 そんな何気ない違いを見ながら、蓮は成長した南雲を思い出した。前に三人でたいやきを食べたとき、南雲だけ尻尾から食べていた。涼野が、南雲だけ違うのを言いことにからかってい、南雲はこんなことを言っていた。

『頭の方があんこがつまってるだろ? 俺はお前らと違って、最後までじっくり味わいたいんだよ』

挑発的な南雲の声が脳裏に蘇り、蓮は同い年の二人に無性に会いたくなった。自然と袋を握り締る手に力が入り、袋が乾いた音を立てた。たいやきは、少し冷めかかっていて、袋の上から持っていても、熱くはない。

「たろうおにいちゃん、くわないならおれがたべるぞ?」

 蓮が全く食べないことにめざとく気づいた幼い南雲が、蓮の手からたいやきを取ろうとする。蓮はたいやきを守るように身体を丸め、横目でじろりと幼い南雲を睨みつける。

「今から食べるところだ」

 少し怒りながら、口を大きく開けると、蓮は南雲の真似をして尻尾から噛む。さっくと口の中で衣が砕け、欠片が少しジャージの上に零れる。同時にほろ苦いあんこの味が舌の上に広がった。横目で幼い涼野と蓮を見ると、二人とも口の周りがあんこのつぶだらけになていた。

「ところで晴矢くんは尻尾から食べるんだね?」

 半分ほど食べたところで、蓮は退屈そうに足を揺らしていた幼い南雲に話しかける。幼い南雲は足を揺らすのを止め、蓮に顔を向ける。

「だって、さいごまでうまいほうがいいだろ?」

 幼い南雲は、今の南雲と変わらない、明るい笑顔を見せてくれた。それを見た蓮は懐旧の思いとともに、目金を激しく求める気持ちも湧き上がってきた。
 ——いつになったら、帰れるのかな。言の葉にならない程の小さな声量で、蓮はそっと公園の空気の中に思いを吐き出した。

〜つづく〜
ただ、たい焼き食う話でしたwww長かった妄想短編も次回で終わりますwww

私は頭から食べる派ですね、たいやき。電車で数駅行った場所に、おいしいたいやき屋さんがあり、たま〜に食べます。蓮たちのようにあんこがすきかと問われれば、否。私の好みはクリーム味なりwあんこも好きですが、断然クリーム派ですwあまっぽさの加減がちょうどいい!
って、サッカー小説でなんでたいやきの話になるんだろう^^;サッカーボールの扱いもぞんざいにww

次々回は時期ずれバレンタイン短編♪なぜかホ・チナン(ファイアードラゴンの控えGK)が出てきますが、相当キャラ作っていますw後どこまで削れるか、画面と勝負してます……

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.266 )
日時: 2011/02/16 17:19
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 小説をクリックしてくださるみなさんはマジてるみんだ〜!

>>(●A●)
タメ大丈夫だよ^^
わかりやすいって言ってくれてすっごく嬉しい^^あ、実は(●A●) の小説影ながら読んでました(何故敬語ww)。今からコメントしてくるねb
よかったら、また来てね^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.267 )
日時: 2011/02/18 16:33
名前: ふぁいん (ID: Ua50T30Q)

へぇバーン様だけ尻尾派!私もです!バレンタイン短編、チナンが出てくるとのことで楽しみにしています!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.268 )
日時: 2011/02/18 22:18
名前: ミティア(元転寝) ◆a5QxxPCyHs (ID: Ua50T30Q)

しばらく来ないうちに進みましたなぁwwwバレンタイン短編だと!?蓮君と韓国3TOPがいちゃいちゃすればいいと思い間s(((

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.269 )
日時: 2011/02/19 10:57
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: バレンタインも書くので長くなりますなう

 たいやきを食べ終り、手持ち無沙汰(てもちぶさた)となった蓮は、何気なく自分の足元に視線を落とした。そこには、サッカーボールが置いてある。サッカーボールを見た途端、蓮は何も考えずに立ち上がっていた。たいやきが入っていた紙袋をベンチに置くと、サッカーボールを持ち上げ、軽く放り投げた。頭で小さくボールを突き、ひざ上に落とすと、そのままリフティングを始める。なかなかきれいな姿勢で、軸がぶれていないリフティングだった。単調なリズムで。サッカーボールは軽やかな音を立てながら、流れるように宙に舞う。リフテイングに夢中になっている蓮は気づいていないが、蓮の後ろでは、幼い南雲たちが口をあんぐりと開けている。食い入るように、蓮のリフテイングを見つめていた。

「おっと」

 幼い南雲たちの視線に気づき、集中力をわずかに切らした瞬間。蓮は、ボールを蹴り損ねた。サッカーボールは蓮の膝から少し離れた地点に落下し、バウンドして転がり、止まった。すぐさま三人はベンチから降りると、ボールを拾っている蓮の足元に駆け寄った。幼い蓮は、尊敬の眼差しで蓮を見上げ、幼い南雲と涼野は、意外そうな顔で蓮を見る。

「たろうおにいちゃんサッカーじょうずだね!」
「おにいちゃんはすごい」
「おまえ、いがいとサッカーうまいんだな」

 幼い蓮と涼野は、素直に感嘆しているものの、幼い南雲は余計な一言が付加されていた。どうも上から見られているような言い方に不快感を覚える蓮であったが、相手が子供あることも考慮して、笑顔で答える。

「これでもサッカー部員だからね」
「じゃあこれからサッカーやろうぜっ!」
 
 幼い南雲が高らかに宣言し、4人は一斉に拳を宙に突き上げた。
 
 サッカーの技量はあきらかに蓮が一番優れていた。幼い三人はまだサッカーを始めたばかりらしく、リフティングもままならないし、シュートも、GKでもない蓮がとれる弱いものである。ついでに言うと、パスも蓮があっさりカットできるもの——とはいえ、蓮はパスカットは得意分野である上、10年近くやっていてカットできない方がおかしいのだが。蓮にボールをとられるたび、幼い三人は最初は悔しそうな声を上げ、地団太を踏んだ。しかし、次第にサッカーが楽しくなってきたのかひっきりなしに笑い声を上げるようになる。前に円堂がサッカーが好きな奴に悪い奴はいない、と言ったのを蓮は思い出した。確かに、サッカーに熱中する幼い三人はとても楽しそうで、蓮もまた心地よい高揚感(こうようかん)を感じていた。サッカーを通じて、幼い3人の内面を垣間見えた気もした。
蓮が幼い三人を抜くドリブルを披露したとき、公園にある人物が入ってきた。その人物を見るなり、蓮は駆け出し、一方的にまくし立てた。

「目金くん! 今までどこ行ってたんだ!」
「す、すみません」

 目金は平謝りし、手に掴んでいた箱を見せる。それを見た瞬間、蓮が眉根を寄せる。
箱の中身は、ちょうどこの頃流行っていたあるアニメのキャラクターのフィギュアだった。金髪のツインテールにセーラー服のような服。赤いブーツ。非常に精巧な造りで、アニメからポンと飛び出てきたかのようだ。

「この美少女フィギュアを買いたかったんですよ〜」

 頬を染め、恍惚(こうこつ)の表情を浮かべる目金の声は上擦っていた。鼻からも、赤い水が垂れていた。蓮は珍しく蔑むような視線を目金に送っていたが、矢庭(やにわ)に笑顔を作る。ただし幼い南雲たちに見せた優しいものではなく、血管が浮かんでいるものだが。

「そのために僕を利用したわけか」

 顔は笑っていても、声のトーンは恐ろしく沈み、怒気を孕んでいた。殺気すら感じさせる、ひどく恐ろしい声だった。目金はひーっと半泣きになりながら震え上がり、怖い笑みを浮かべながら、間を詰めてくる蓮からじりじりと後ずさる。顔に汗がどんどん張り付く中、愛想笑いを浮かべ、蓮の興味を他へと移そうと話題を切り替える。

「と、ところで白鳥くん。あなたもサッカーが上手い男には会えましたか?」

 その言葉を聞いた途端、蓮の足が止まった。今思い出したような顔つきになり、自虐的な笑みを浮かべ、寂しげに首を振る。

「僕の勘違いだったみたい」

「さあ、帰りますか!」

 元の世界に帰りたい一心の蓮は、元気よく声を張り上げ、怯えて身をすくませる目金の肩を叩いた。なに怯えてんの? と目金をちゃかす辺り、自分が怯えさせたことを全く感じ取っていないらしい。蓮がくるりと三人に背を向けると、幼い蓮は、え〜っと非難の声を上げた。

「たろうおにいちゃん、もうかえっちゃうの?」
「れん、わたしたちもかえらないとねえさんにおこられるぞ」

 幼い蓮が残念そうな顔で聞いて、幼い涼野がなだめるように言った。『たろうおにいちゃん』と聞いて目金が噴出しかけるのを、蓮は横目で睨んで黙らせた。それから、幼い三人の前へと歩み寄り、同じ目線になるようしゃがむ。

「そう悲しい顔しないでよ」

 優しく微笑みながら、蓮は幼い三人の頭を順番に頭をさすった。最後に撫でられた幼い涼野が顔を上げ、まっすぐに蓮の瞳を見つめてきた。

「またあえるか?」
「Need not to know」

 反射的に蓮の唇が動き、英語を紡ぐ。その瞬間、蓮の脳裏に今日のワンシーンが鮮やかに再構築された。最後、自分を見た男は、黒髪のショートに黒曜石のような黒目。青と黄が鮮やかなジャージを着ていた——そう、求めていたのは今の己自身だった。そのことに気づいた瞬間、蓮はくすっと笑い、立ち上がった。そして周りを明るくする笑みを見せ、幼い3人に呼びかける。

「何年かすればまた会えるからさ!」

 英語がわからないのか幼い三人はポカンとした表情で立ち尽くしていた。別れることにぎゅっと胸を締め付けられるような寂しさを覚えたが、それを振り払うように蓮は、幼い3人に背を向けて大またで公園の出口に歩き出した。未来に、今の南雲と涼野の元へ帰るために。

「帰り方教えて」

 戸惑いながら並んで歩いてくる目金に、蓮は落ち着いた声音で問うた。すると目金は立ち止まり、眼鏡のつるを持ち上げ、

「白鳥くん、立ち止まって目を閉じて下さい」

 目金より数歩先、公園の出口がある車止めの前辺りで、蓮は言われたとおりに止まる。直後、世界が無音となった。風の音、人の話し声、全てが聞こえなくなった。目を開けようとしても、目に何かに押さえつけられたように開かなかった。ふわふわと無重力の宇宙に放り出されたように、身体が持ち上がっていく奇妙な感覚に襲われる。と、身体が持ち上がるような感覚が消え、不意に冷たい感触が頬に当たった。


〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.270 )
日時: 2011/02/19 11:37
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

しずく
……;;;;コメント長いね!
コメントありがと!!
タメでいいよ!
この絵文字、よかったらみてね!

    |┃≡
    |┃≡
 ガラッ.|┃∧∧    
.______|┃´・ω・)  <しずくの小説見に来たZE☆
    | と   l,)
______.|┃ノーJ_

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.271 )
日時: 2011/02/19 12:22
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)


「わっ」

 小さな悲鳴を上げながら、蓮は目を開けた。
いつのまにか太陽の位置が、真上からずいぶん右の方に傾いていた。色づいた木の葉の間から零れる木漏れ日(こもれび)が眩しく、蓮は思わず目を細める。どうやらどこかに横になっているらしい。ここがどこか確かめようと、辺りに視線を彷徨わせた時、蓮の黒い瞳に覗き込んでくる涼野の顔が映りこんだ。

「ふ、風介!?」

 涼野の名を呼びながら、蓮は弾かれたように起き上がり——自分がベンチで横になっていたことを悟る。
辺りを見渡すと、塗装のはげた遊具の数々。公園の外では、帰宅途中の小学生が元気に走っている。最後に自分の脇に座る涼野を見た。今の自分がよく知る見慣れた涼野風介だった。今日もまた、見慣れた私服に身を包み、買ってきたらしいアイスのビニール袋を向いている。今感じた冷たい感触はこのアイスだろう。

「蓮。キミは風邪を引きたいのか?」

 棒つきのチョコレートバーを口に加えながら、涼野が聞いた。まだ状況を整理し切れていない蓮は、ますます困惑するばかりだ。

「ふえ?」

 当惑する蓮の顔を見て、涼野はアイスを口から離し、呆れたようにため息をこぼした。

「こんな寒い時期にベンチに眠るなど……自殺行為もいいところだ。風邪を引いたらどうする」

 冷たい口調だが蓮を気遣う内容である涼野の言葉を聞き、蓮はようやく頭が回り始める。アイス食べているキミの方が自殺行為だよ、と心内で抗議しておき、そ知らぬふりを装って、涼野に尋ねる。

「風介、僕、何してた?」
「私がこの公園に来たときは、蓮は既にこのベンチで眠っていたぞ」

 涼野がアイスを口の中で溶かしていくのを見ながら、どうやら『現在』に戻ってきたらしいことを蓮は悟る。その証拠にベンチの側には、消えかかった魔方陣がある。戻れたことに嬉しさを覚えながらも、同時に様々な雑念が脳内を占拠し始める。

「あれ、目金くんと都市伝説が本当か実験して……どうやって戻ってきたんだ。それに目金くんはどこに——もう、なんで美少女フィギュアなんか……」

 思考が迷走し、ぶつぶつと独りごつ蓮の横で、涼野は涼しい顔でアイスを食べ終える。アイスの棒を破ったビニールに戻し、すぐ脇にあるゴミ箱に捨てた。そして難しい顔をする蓮に、淡い笑みを向けた。

「その顔だと、成功したようだな」
「色々あったけど楽しかったよ。でも、やっぱり今が一番だ」

 蓮は苦笑し、断言する。

「こうして“今”の風介や晴矢と話している時間が一番楽しいから、さ」
「ところでキミは、ブランコは立って漕ぐのが好きらしいな」
「空に飛べる気がするからだよ。一番高いところまで行ったら、鳥のように飛べる気がするから!」

 蓮がそう言って、涼野は予想していた通りと言わんばかりに唇の両端を持ちあげ、ポツリと納得したように呟く。その顔は、晴れ晴れとしたものだった。

「……やはりそうか」

 “今”の涼野もまた、蓮と同じくサッカーが上手い男を心の中で求めていたのだろう。そして蓮と同じようにわかった。そのことを頭で理解しつつも、蓮はわざと問い返してみた。

「なんで?」
「キミに教える義務はない」

 からかうように涼野に返され、蓮はあっそう……と笑った。その時、公園の入り口から南雲がこちらに歩いてくるのが見えた。涼野と同じく、蓮が知る南雲晴矢その人。今日もまたジャージの上のような上着に黄色みがかかった黄緑の短パン。二人とも私服なのに、一人だけ雷門のジャージを着ているのが恥ずかしいと蓮が思っていると、南雲は蓮の右隣に腰掛けた。
「おう、蓮。あほ面こいて寝ていやがったが、ようやく起きたか」

 にっといたずらめいた笑みを浮かべる南雲に対し、蓮はすぐさま反論する。

「あ、あほ面とはなんだ!」
「なあ、蓮」

 南雲は蓮の反応を無視し、語りかける。

「昔、この公園で会った男を覚えているか?」
「ああ、ちょうどこのくらいの時期だったね」
「このくらいの時期になると、いつもそいつを思い出すんだ。でよ、最後にあいつ『何年かすれば会える』とか言ってただろ?」
「うん」
「それって今年のことだったんだな。しかもあいつの所属は雷門だ」
「会えたんだ」
「まあな」

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.272 )
日時: 2011/02/19 12:27
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

 蓮と南雲が微笑み——そよ風が辺りを吹きぬけた。
 木々がざわざわと音を立て、彼の長い金髪が揺らされて波打つように踊る。陽光をすかして輝く透明感のある金の髪。女めいているようでどこか美しい。そんな不思議な妖しさを持つ。風の中、彼は葉擦れの音を従えながら、ゆっくりと静かに前を見据えながら歩いてきた。彼が歩を進めるたび、その足音が聞こえてくるような気がする。彼の存在に気づいた蓮たちが彼の方を見て、南雲と涼野はわずかに微笑む。蓮だけは対照的に、ぽかんと口を開けている。蓮たちの前で彼は立ち止まり、向き合う三人と彼の間に風が音を立てて通り、四人の髪を揺らした。

「やあ、南雲、涼野」

 風がやむと、アフロディは外見と違わない澄んだ声で挨拶をした。今日は珍しく私服を着ていた。紫のシャツに茶色いダッフルコート。下は肌色に近いジーパン。色合いが大人っぽく、非常にしゃれていると蓮は思った。しかも首には銀のタグと鳥の羽を象ったシルバーアクセサリーもしていて、ますますセンスの良さを窺わせる。私服組がますます増え、蓮は居心地が悪そうにアフロディから視線をそらした。

「おや? 蓮も一緒だったのか」

 めざとく蓮を見つけたアフロディが声をかけると、蓮は引きつった笑みを浮かべて片手を挙げる。
「やあ、アフロディ」
「アフロディ、あの話受けてやるぜ」
「私たち3人で世界と戦えると言うのなら、なおさら受ける気になった」


 蓮の横に座っていた南雲がすくっと立ち上がり、涼野もまた立ち、次々とそんなことを言った。アフロディがにこりと笑い、快諾した。いっぺん、何の会話かわからないが、勘の鋭い蓮はFFIのことだとすぐに理解。同時に嫌な予感を感じ、自分でその可能性をこじつけで否定していた。脳内では一人論争が繰り広げられている。

「そうだね。飼いならすのが難しいキミたちと飼いならしやすいけど一癖ある彼。面白い組み合わせだ」

 アフロディが手を口に当てながら悠然と言ってのけ、南雲と涼野、そして——蓮を見て微笑んだ。嫌な予感がますます現実味を帯びる。そういえば母さんが韓国に行きなさいとか言ってたけど嘘だよな。嘘、嘘。

「なんの話?」

 蓮は聞いていないように——実際アフロディには聞いていないので、とぼける。すると南雲と涼野は、アフロディに次々と非難の声をぶつける。

「おい、アフロディ。蓮も誘うって約束しただろ」
「話が違うぞ」

 思ったとおり、勝手にことは進んでいたらしい。蓮は憤りを覚えながら、なお夢でありますようにと抵抗を続けていた。僕はそんなに強い選手じゃない。そうそう韓国に引き抜かれる価値なんてない。と自己解釈論を繰り広げていた。そんなことを全く知らないアフロディは詫びを入れてから、蓮に向き直る。

「すまないね。蓮にはまだ話していなかった。どうだい蓮、ボクたちと共に世界の頂(いただき)に立ってみる気はあるかい?」

 南雲と涼野が歓迎の意を示すように微笑み、蓮は困ったように棒読みで返答する。

「僕弱いし」

 間髪いれずにアフロディが、

「その優れた俊敏性と頭脳を持ち合わせて何を言うんだい? キミは日本にいるのはもったいない人材だ」

 どうやら逃げられそうにないらしい。蓮はただただ黙秘権を行使していた。

〜END〜
ふー随分かかりましたorz
なぜかアフロディがいるのは彼の私服を小説で書きたかったからです!カレンダーにあるイラストを見て(買ってないけどw)、すぐにでも書こうと思い書きましたwイメージがつかめない方はピクシブ等で検索すればすぐに出てきますよ^^すごくハイセンスです♪
そして蓮はファイアードラゴンに誘われるわけです。断る理由は、雷門を裏切るのが嫌だから。イナズマジャパンとするかいまだに迷いますorz
最後に迷走しておいてあれですがふぁいんさんリクてんくすでしたb悪文の連なりで申し訳ないです;;

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.273 )
日時: 2011/02/19 12:29
名前: 癒玖刃 ◆RkKLSqUPDc (ID: R4l9RSpR)
参照: 静電気は敵!髪がw

し、尻尾から食べるのか……ww
私は頭でも尻尾でもないです。腹から食べますww
人の趣味ってわかりませんね(食べ方の)

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.274 )
日時: 2011/02/19 13:03
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 完成は遅い!

番外 To elf from elf(時期ずれバレンタインです)

「なーなー白鳥」
「なに、チナン」
「2月14日にさ、ホ・チナンになってくれないか?」
「……は?」



 時間は少しさかのぼる。

「白鳥! 2月14日はあれだよな!?」

 チナンがわざとらしくベッドに座る蓮に聞いた。
 その日、ハードな練習を終え、夕食を食べた後。自由時間に、蓮は仲がよい控えGKのホ・チナンの部屋に遊びに来ていた。ホ・チナンは、緑のニット帽を愛用している少年。蓮より少し薄い黒髪に、少しつり目な黒い目を持つ。体格はやや細身で小柄な印象を与える。ついでに言うと、異常なほど寒がりで異常なほどアルパカを愛する謎の男でもある。
 
「グラハムベルが電話の特許を出願した日だね」

 盛大に間違った答えを蓮は披露し、チナンは口を開ける。求めていた答えは、一般人に行けば正答率100%を誇るかもしれないものなのだが。勘違いしているのだと悟りつつ、チナンはヒントを出す。

「もっと規模がでかい! そして”一般的”だ!」

 チナンは特に”一般的”を強調した。すると蓮はすぐに閃いたのか、実に嬉しそうな笑みを見せながら、

「箱根駅伝大会が初めて開かれた日だね」

 見事にチナンを転ばせた。チナンはベッドに背中からダイブし、ベッドは軋んだ音を立てながらしばらく縦に揺れていた。どうやら蓮は自信があったらしく、顔をしかめながら顎に手を当てて考え込んでいた。

「そうだな。アルカ・ポネが敵を……」
「まず歴史から外れろ! 常識と言う歴史を学んで来い!」

 歴史に造詣があるチナンにはわかる。今までの出来事は確かに2月14日に会ったこと。だがこれ以上蓮に考えさせると、とても正解に近づけそうにないので、大声で止めさせる。蓮は怒られた子供のように少ししゅんとした。正解がいえないのが悔しかったらしい。

「おまえ、バレンタインって知ってるか?」
「知らない」

 チナンは頭の中にあった最悪な仮説を持ち出した。思ったとおり蓮は素直に首を横に振り、チナンを呆然とさせる。言葉を失いそうになりながらも、チナンはバレンタインの説明をする。

「世界史に詳しいならヴァレンティヌス司祭は知っているな」
「ああ。3世紀ごろにローマ辺りで2月14日に撲殺された人だね」

 なんでそういうマニアックな知識を持っているんだよ、と突っ込みつつ、チナンは続ける。

「その人への畏敬なのか? 当時な、ローマ皇帝クラウディウス2世は戦士の士気の低下をおそれて兵士たちの結婚を禁止してた。けど、ウァレンティヌスはこの禁令に背いて恋人たちの結婚式を執り行ったために捕らえられ処刑された(出典wikiより)と。これが元なのか、現代は一般的に女の子が好きな男の子にチョコレートを送る日なんだぜ! あ、でも今は友チョコって言って、同性でもお菓子交換したりするんだ」
「そういえばアフロディと晴矢と風介が14日のあれ、よろしく頼むよって言ってたっけ」
 
 蓮が妙に納得したような声を出し、このまま知らなかったら、白鳥はどうするつもりだったのか? と内心突っ込みを入れつつ、話を進める。

「て、ことで2月14には俺になれ! 白鳥!」

 今度は蓮が呆れる瞬間だった。

〜つづく
と言うことでバレンタインは蓮とチナンの入れ替わりネタになります。こうご期待!と言ってみたりする。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.275 )
日時: 2011/02/19 13:18
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 長く書いて思考れろれろなんで変なコメントになってたらすいません

>>ふぁいんさん
私は頭がぶり派。で、よく火傷しかかってますww
猫舌で熱いものとか苦手です;;

チナンだして見ましたww

設定ですが、明るく気さくでアルパカ大好き(←なにこれww)人間。友達にもキャラが濃いとか言われた相当ぶっとんだキャラに仕上がっておりますww

イメージ悪くなったらすいません;;

>>ミティアさん
はい、だいぶ進みましたb

いちゃいちゃかぁ^^;ん〜、単なる友情短編を予定しています。
それに3人は蓮を振り回すイメージなので、いちゃいちゃはかなり離れた世界観ですねwこんなイメージです。

南雲「蓮、腹減ったからなんか食わせろ!」
涼野「では、私の分も頼むぞ」
アフロディ「ボクも蓮の料理楽しみにしているよ♪」

蓮「誰もやるっていってないだろ!?」

>>マリン
こ、コメント長かったか!?
マリンに感謝の気持ちを長々と述べてしまったしでorz
よし、これからは短くするよ^^;
絵文字可愛い♪ ありがとう! これからマリンのとこに突撃してくる!

>>ユクハさん
お〜ユクハさんはお腹から食べるんですか!

某友人はたいやきをいったん半分にしてから食べているので、ユクハさんに近いかも(?)ですね♪

ところで、その後、ユクハさんの血の海が広がったか気になるところですwよければ、聞かせてくださいww

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.276 )
日時: 2011/02/19 13:18
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

しずく
ある意味おもしろい!!
あたしも最新してる途中だよ!
できたら言うからね!

‾‾‾‾‾\(‾‾‾‾‾

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Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.277 )
日時: 2011/02/19 13:20
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

しずく
短くしなくてていいって!
むしろ長いほうがいいな!
そうかな?ありがとう!可愛くないよ!
これも見て!
    _人人人人人_
    > グングニル!<
    ‾^Y^Y^^Y^Y^

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Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.278 )
日時: 2011/02/19 13:24
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

更新待ってるよb

お〜デザーム様の必殺技グングニルだww
どこから撃っているんだろww

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.279 )
日時: 2011/02/19 13:31
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

しずく
オサームの必殺技だよ!
これは??
       /\
      /   \
    / \○/ \ トライアングルZッ!!
   \○ ∧|  ○/
  / | \ |/|  \
/   へ      へ   \
‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.280 )
日時: 2011/02/21 18:30
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

あ〜なんかネオジャパンの人たちが使ってた技(?)だね♪
元ネタは木戸川だったかな? なんちゃら三兄弟w(忘れたww)
昼飯なのでオチ;;

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.281 )
日時: 2011/02/19 13:37
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

しずく
そうそうそれそれ!!
武方三兄弟だった気がするww
これは??
♪ ∧,_∧  ♪
   ( ´・ω・) ))
 (( ( つ ヽ、   ♪
   〉 とノ )))
  (__ノ^(_)

♪ ∧,_∧  ♪
   ( ´・ω・) ))
 (( ( つ ヽ、   ♪
   〉 とノ )))
  (__ノ^(_)

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.282 )
日時: 2011/02/21 18:30
名前: ふぁいん (ID: Ua50T30Q)

長々と有難うございました!アフロディの私服描写上手すぎです!それにしても蓮君は何故ファイアードラゴンに入るのを嫌がるのでしょうか?

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.283 )
日時: 2011/02/21 18:31
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

「なんで?」

 唐突過ぎるチナンの申し出に蓮は言葉を失いかかりながらも、何とか当惑顔で言葉を吐き出す。バレンタインの話が、どうやったら入れ替わって欲しいと言う方向に脱線できるのか。チナンの意図を把握しきれないまま、蓮はチナンを困ったように見つめていた。
 一方のチナンは、やたら芝居がかった口調で、

「俺なあ『ホ・チナン』でいることに疲れた。一日くらい別の自分に生まれ変わりたいんだ」
「気分変えたいのなら、ユニフォームで変えれば? チナンはGKだし、フィールドプレイヤーのユニフォームでも着たら、気分変わるんじゃないかな?」

 蓮はそんな提案をしたが、今まで蓮の横に座っていたチナンはいきなりバッとベットから飛び降り、駄々をこねる。

「無理だ! 俺は白鳥になると決めた! 俺の信念は決して揺るがないぜ!」
「でも僕たち双子じゃないんだし……すぐバレると思うよ」
「大丈夫、大丈夫! アフロディが実は女って言っても驚かないだろ? それに、ファイアードラゴンに観察眼のある奴はそういない。変装なんてそうばれるもんじゃないさ」

 何としても自分と入れ替わるつもりであるチナンを説得するのは困難極まりない——蓮は早くもそれを悟り、チナンにはどんな言葉も通じないことに愕然としていた。てこでも動かないとはまさにこのことで、チナンを仮に炎や水の中に放り込んだとしても、そのまま頼んできそうな。そんな憎憎しい程強い覚悟を持っているようだ。蓮は抗うことを止め、呆れたような目つきでめんどくさそうに口を開く。

「……で、一応聞いておくけど、ばれちゃだめなの?」
「おう。南雲と涼野とアフロディに知られなきゃいい」

 チナンはニッコリと笑う。そして顔が見る見るうちに緩み、恍惚の表情を浮かべた。
 幼馴染二人とその他一名と言う蓮が最も仲がいいであろう三人の名前が挙がり、蓮は疑問を覚えた。全員にばれない様にとなら話はわかる。しかし特定の人間にばれなければいい、と言うのはいまいち筋が通らない。チナンの表情から何かあると踏んだ蓮は、一瞬僅かだが口元を歪め、

「その3人だと一番見破られる確立が高い!」
 
 わざと困ったような声を出して、一芝居打つ。蓮にしてはオーバーな表現だが、素直なチナンは疑わなかった。蓮に詰め寄ると、両手で胸倉を掴み、蓮の身体を激しく揺さぶる。蓮の身体はひっきりなしに前へ後ろへ倒され、頭もつられて前後に忙しく持っていかれる。

「だー! 何とかしろ! 俺の“バイト代”がパーになる!」

 そこまで言ってチナンは、蓮を揺らす手を止めた。その顔には後悔の色が濃く出ていて、うっかり口を滑らせたことを懺悔しているようだ。蓮の胸から手を離すと、チナンは愛想笑いを浮かべながら、上目遣いに蓮を見据え、そのまま固まっていた。顔からは大量の冷や汗が流れていた。
 ベットの上からチナンを見下ろす蓮は、仏のような実に慈悲深い笑みを顔に作っていた。ただし口元は怒りの形を作っていて、背後からは禍々しく威圧感を備えた——色があるとしたら、毒々しい紫の——オーラを放っていた。
 その笑顔はライオンのような力を秘めていた。見たものをすくみあがらせ、恐怖で精神を支配する恐ろしいもの。見つめられたチナンの身体は凍りつき、がたがたと身体を小刻みに震わせていた。龍に睨まれた人間とはこのことだろう。
 
「“バイト代”ってなにかなぁ?」

 蓮が楽しそうに聞いた。チナンは引きつった笑みを浮かべながら、恐怖一色の頭から何とか言葉を生み出す。

「じ、実はな白鳥。俺、とある人物にお前と入れ替わるよう命令されたんだ」

〜つづく〜
ついにバレンタインから一週間ww完成はなるべく早めに行いたい対と思います;;

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.284 )
日時: 2011/02/21 18:59
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 卒業式予行やりました。……泣けるかな?

>>マリン
踊ってる猫可愛いね^^
マリンはアスキーアート(っだけ?)すごく上手だねb

>>ふぁいんさん
私服描写下手すぎだと思いますww私の駄文生産能力は優れていますから、相当イメージしずらいものと思われます。
蓮が嫌がる理由は他にもあります。↓

蓮「だいたい韓国にはピラニアやアマゾン川とか凶暴なもの多すぎ。熱いの苦手だから断るよ」

てるみん「……どこと勘違いしているんだい?」 

涼野「それは南米ではないのか……?」

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.285 )
日時: 2011/02/21 19:09
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

しずく
上手なわけないってwww
だいたい無い無いwww
アフロディできたよ!!
   _,,,,v-'"゜           _,,r‐'''“^    : ゛”゜゜¬x,,、                        ,,r'"                         .,,,-‐'’
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    ,iレ',レワ~''y,|‾゛゛'な .]-_ 、 .,,,,,,,,テ _,,l′ ,ル;。、  : .、.ヽ .゛'〟     |             :,  `'ミ,''''''''''''''''''"゛~`
    ,,ン/.,トlツ"lケ'''''',i[ザ',゛゛゛l,゛ヽ,,,,,y-'"゛.|  ,ソ_/"'ヘ、,'、.'、′  ゛゛''・→・',il"           ゛l,_   `'ー、_
  ,,!'゛r'"  .:lヤ,W,iご゛゜レ’,,}l',,゜'=_゛″゛l,,ナ  ._| : .|ノ`   ゛l、ヽ     ,,r'°     ヽ,.、    .で'-i、_   `''ー-,,,,、
 ,i,レ゜    ゛《,,"''" ケ㍉|y,lニヘ `  .゛l,,,,,,,,|゛~、.l .|l゛     :l、 :  ,ト ,,r・°           `リlッ,,    ゛l-,,、~''—--、,,,,,,,,,,,¬ー-、,,,,,_
.,i广     │`],,,!#,,,。 ,/,l'',s    .゛l`ド,i´L ,!.レ     .l゛l、 .,/レ′      .i、      `'゛li,,  ゛l、゛"-,,、     : `゛゛゛''''''""゛’
°     │ ,X/ ,アri径'".゛l、   _|《,l゛! |,゛l,.゛l,゛l,ri、,r,ッ,r,‐,コt"″        `゛''hッ---rli,!'''~ヽ、 ゛lx,,_ `'ヽ、
      │ ,/゛,l゛ .,,i´ .《` ,! ゜'-,,-''゜,,r゜゛!川゛゛l父:゛゜'f,_il,,.ll,,ド ,l゛゛ヽ、    、  .ヽ、  ヽ、  \、 ゛ヽ ゛l, .~''ヽ,_`'i、
      l゛ 丿,i´ .,i´  ゛L │、 `'t,″  .゛'lll゛{゛わ,. ゛'てフ'リ'リ、 ゜'l,、.i, │   ゛l`''x,_ ヽ    ゜!l,, ゛ヽ ゛l、  `゛'=,,,'┐

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.286 )
日時: 2011/02/22 14:23
名前: ふぁいん (ID: Ua50T30Q)

バレンタインで入れ替わりネタとか発想が面白すぎです!バイト代ってなんでしょう?

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.287 )
日時: 2011/02/22 18:14
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: バレンタイン前編で〜す


「誰?」

 鬼のような笑顔を浮かべながら、蓮はチナンを問いただす。対するチナンは今までと違い、落ち着き払って蓮の問いに答える。

「それは言えないぜ。褒美の、那須アルパカ牧場にご在住の、アルパカ先生の生プロマイド&アルパカ先生のレアグッズがもらえなくちっまう」

 その言葉を聞いた蓮はむっつりと押し黙る。
“アルパカ”と言う弱点を攻められれば、よくも悪くも暴走するのがチナンと言う男だ。どうやら犯人はそのことをよく知るファイアードラゴン内の誰かだ、と予想を蓮は立てていた。
チナンからもう少し情報を引き出せないかと、蓮は欲張ってチナンに鎌をかけるが、それ以上は何も引き出せなかった。

「おまえアルパカのために安請け合いしたのか」

 蓮は予想以上に口が堅いチナンを苛立ち気味に睨みながら言った。するとチナンはいきり立ち、一方的にまくしたてる。

「アルパカではない! アルパカ“先生”だ! 言ってみろ!」
「……アルパカ先生」

 だいたいアルパカに“先生”なんて敬称つけんのお前くらいだろ、と苦々しく思いながら、蓮は顔をしかめてチナンの言う通りにした。それを見たチナンは、満足そうに頷く。

「よし、いいぞ。話戻すけど、頼むから入れ替わってくれ! 明日の練習はジンソン監督に頼んで、俺たち二人とも休みにしてあるし、俺は『白鳥』として、那須アルパカ牧場に出かけるから、見比べられる心配はない」
「わかったよ」

 必死に懇願してくるチナンに蓮はとうとう折れた。

「そこまで言うなら、受けてやる」
「お〜マジか!」
「なんかよくわからないけど、僕がチナンのふりをすればいいんだね?」
「おう!」

 幸運を祈るとでも言うようにチナンはぐっと親指を立てた。

 そして迎えた2月14日。その日の朝、蓮は約束どおりチナンに扮していた。チナンに扮すると言っても、チナン愛用の緑のニット帽を頭に被っただけ。朝はジャージ姿。ジャージはみんな同じだから変える必要がない、とチナンが言い張るため、蓮は自分のジャージを着たままチナンのニット帽を頭に被っていた。蓮とチナンの髪の長さがほぼ同じであるため、後姿は非常に酷似している。が、正面から見ればチナンの格好をした蓮であることは誰が見てもわかってしまうような、とても似たとはいえないものだった。
 
そんなチナンに扮した蓮は、廊下の突き当たりの窓の前に立っていた。窓からグランドを覗こうと思ったのだが、今日は雪が降っていて窓には水滴がびっちりと張り付いている。ジャージを着込んでいても少し肌寒い。
チナン(蓮)は手で窓についた水滴を払うと、窓に映った自分の姿を見た。自分でも笑ってしまうくらいチナンに似ていない。窓の中の『チナン』も苦笑いしていた。

——アフロディたちにばれるだろうなぁ

ぼんやりとそんなことを考えていたとき、チナン(蓮)は自分の肩が叩かれるのを感じた。びっくりして顧みると、ばれてはいけない人物の一人——南雲がそこに立っていた。

「や、よぉ! はる……南雲!」

 不意打ちにどぎまぎしたチナン(蓮)は、やぁ晴矢と言いかけるのを必死に訂正して、何とかチナンのふりをした。かなりおかしい言動だったが、南雲は気にする素振りも見せずに、チナン(蓮)の隣の壁に寄りかかり、適当な挨拶をする。

「よぉ、チナン」
「今日は、バレンタインだね……だぜ! 僕は……俺はチロルチョコを用意したけど、南雲は?」

 南雲の態度に安堵の息を漏らしたチナン(蓮)は、親しげなチナンになりきり、明るい口調で南雲に話しかける。まだなりきれていないのか、時折『蓮』の口調に戻りかかっている。

「お前には安いチョコで十分だろ。ほらよ!」

 よほど鈍いのか、南雲は本物のチナンと思い込んでいるらしい。ポケットから何かを取り出すと、チナン(蓮)に向けて放り投げた。きれいな放物線を描いてとんできたそれを、チナン(蓮)は片手で掴んだ。拳を広げてみると、『ブラックサンダー』と、中には、印刷された袋。
 
「少しは高いチョコレートを買って来いよ」
「う〜ん、チナンは安いもので済ませるのが好きだからね」

 チナン(蓮)がうっかり地に戻ってしまい、南雲が目を瞬かせる。何やら不審げな空気が二人の間に漂い、チナン(蓮)は適当なごまかしを言って場を取り繕う。

「あ、いや! こっちの話だぜ!」
「そうか」

 南雲は大して気にも留めなかったようだ。
 平静を装いつつも、心内でチナン(蓮)は大きなため息をついていた。

「でもな、ジンソン監督にはきちんとしたの渡せよ」
「ジンソン監督にはチョコボールをやったぜ!」

 南雲に注意され、チナン(蓮)は自信満々に言った。
 ちなみにこれは本当のことで、チナンは昨晩ジンソン監督にチョコボールをプレゼントしたらしい。チナン本人の自己申告によると、相当受けはよかったらしい。

「監督にも容赦ねえなぁ」
「何言ってんだ! 金のエンゼルつきなんだ……ぞ! そこらの菓子より高級だぞ!」
「マジかよ。でも、手作りの方が高いんじゃねーのか?」

 驚きと呆れが混ざり合ったような表情で、南雲がぽつりと呟く。
 そんな言葉を聞き、チナン(蓮)はわずかににやりと笑い、無邪気を装って尋ねる。

「ところでよ、南雲は手作りとかしないのか?」

 その問いの後、僅かだが南雲の顔に動揺が走る。明らかに慌てながら、チナン(蓮)に向かって、つんけんな口調で返す。


「う、うっせぇ!」
「あ〜その顔はしたんだね……だな!」

 意地悪い笑みを浮かべながら、チナン(蓮)はからかうように言い切った。南雲は顔をしかめて無愛想に黙っていたが、好奇心で輝くチナン(蓮)の瞳に観念したらしく、

「ああ、作ったよ」

 ため息と共に言葉を吐き出した。すぐにチナン(蓮)は、納得したように首を何度も縦に振りながら、

「そうか愛する涼野に作ったのか」
「ちげーよ」

 南雲は間髪いれずに否定した。しっかりとチナン(蓮)の瞳を見つめ、

「いいかチナン! オレが渡す相手は……相手は……」

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.288 )
日時: 2011/02/28 09:02
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 2ぺーじめ。三点リーダーだらけ。

 しかし南雲の語尾は初めこそ勢いがあったものの、だんだん弱まり、ついには消えてしまった。
 南雲がこういう態度を取る辺り、比較的仲がいい人間に渡すつもりのようだ。
 涼野しか思いつかないのだが、わざと嘘をついていて相手は涼野かもしれない。
 チナン(蓮)は遠まわしに聞いてみることにした。

「じゃあヒントをくれ。そいつのことどう思ってるんだ?」
「そいつは、オレにとっちゃ兄弟みたいな奴で、からかってると面白い奴。でも、ライバルだ。一度は、あいつを土下座させたいと思っているんだぜ? ま〜でも、一人で放っておくと危ないから、オレが保護者にならなきゃいけない。しっかりしてるくせにどっかうっかりしてんだよな。迷惑な奴だぜ」

 窓の外を見ながら、南雲は困ったように語った。うっかりしていると迷惑そうなことを言いつつも、その瞳は嬉しそうに細められて。表情も明るく、話しているときの南雲は、とても楽しそうに見えた。

「へ〜南雲にとって大切な人間なんだな」
「ち、ちげーよ! ただの幼馴染だ!」

 チナン(蓮)が素直に感想を漏らすと、南雲はむきになって言い返してくる。そんな南雲を見てチナン(蓮)は一言。

「そうかそんなに厚石 茂人(あついし しげと)のことが好きか」

 あくまでチナンになりきり、にやりと笑いつつ、的外れな答えを述べておく。
 厚石 茂人は南雲の幼馴染。ただし、今はネオジャパンとか言う、イナズマジャパンの代わりに日本代表の座を狙うチームに所属しているようだが。

「おまえの単細胞頭じゃ無理だったか」

 チナン(蓮)の答えに南雲は噴出し、馬鹿にするような瞳で見つめてきた。なにをー! とチナン(蓮)を演じる蓮は、両腕を上げながら叫んだ……時。
 コントを演じる二人の背後から冷や水のような声がかけられた。

「朝からキミたちは暇人だな」

 南雲は露骨に顔をしかめ、チナン(蓮)は少しむっとしながら振り向くと、蔑むような視線をこちらに向けている涼野と、少し金髪が乱れ気味のアフロディ。 二人とも、既にジャージに着替えている。

「お、ふう……涼野にアフロディ! おはよーさん!」

 知られてはいけない人間がこうも簡単に揃ってしまったことに戸惑いを感じながらも、チナン(蓮)は明るく挨拶をした。演じることに慣れてきたのか、違和感はない。見た目以外。
 また風介と呼びかかったが、涼野は別段反応しなかった。アフロディだけは、チナンと呼び方が同じなので助かる。
 涼野は形式的に無感情な声でおはようと返し、アフロディは微笑みながら返した。

「そういや。風介もオレが渡すつもりのを相手に作ったんだぜ」

 南雲は嫌らしく口角を上げながら涼野を指差し、涼野が目を少し見開いて固まる。チナン(蓮)は、それを見逃さず、すぐさま問いを突きつける。

「涼野はそいつのことどう思っている?」
「どう、と言われてもな」

 涼野は考え込むように手を顎に当て、下を向く。

「そう聞かれても表現に困る。上手い言葉が思いつかない」

 しばし沈黙が流れ、涼野は柔らかい笑みを浮かべながら顔を上げた。

「そうだな。私にとっての彼は、色々と頼りがいのある親友だ。側にいると不思議と落ち着く。それでいて危なっかしい——私や晴矢がいなければどうなることか」

 訥々(とつとつ)と語る涼野の横顔は、どこか嬉しそうで楽しそうに、蓮には思えた。しかし、そこまで語った後、涼野は言葉を切った。急に声を荒げる。

「チナン、キミは私に何を話させているのだ!」

 急に声を荒げた涼野を、南雲と涼野は目を丸くして見やる。チナン(蓮)だけは、落ち着き払って涼野に目をやっていた。涼野は、勢いよく言いすぎたのか、ぜえぜえと荒い息を吐いている。頬が僅かに上気していた。

「そうか大切な人間なんだな」
「違うと言っているだろう!」
 
 チナン(蓮)が今度はからかう様に言うと、涼野はむきになって強い口調で否定してきた。頬がますます赤くなっている。

「今の言葉は流せ。聞かなかったことにしろ。そうでなければ、キミはいてつく闇の冷たさを知ることになるだろう」

 そして、チナン(蓮)を憎憎しげに睨みつけながら、涼野は捨て台詞を吐く。チナン(蓮)に背を向けると、かなり早足でその場から離れ始めた。

「おい、アフロディ行こうぜ。風介、待てよ!」
「涼野!」

 その光景を見ていた南雲はアフロディに声をかけると、アフロディと共に駆け出す。涼野の名前を呼びながら、南雲と涼野の姿は遠ざかっていく。遠くなる背中を見ながら、チナン(蓮)はグリーンのニット帽を取った。
 再度凝結し始めた窓から手で水滴を拭うと、窓にニッコリと笑いかける。

「晴矢と風介、僕のことそんな風に思ってたんだ」

 身体がほんのりと温まり、頬までもなぜか熱い。現に蓮は頬を桃色に染め、恥ずかしそうに双眸を緩めていた。
 南雲や涼野にあの言葉を言われたとき、身体の奥底から何か熱いものが湧き上がった。
 抑える事に必死だったが、もう平気だ。まだほのかに温かい体温を感じながら、蓮は窓に映った自分の像をしっかりと見据える。

「晴矢、風介。キミたちは最高の親友。一緒に世界を目指そうね」

 あたたかい声で囁いた。

 こんなことは本人たちにはもちろん言えない。言った途端、気を失える自信がある。ただ何となく思いだけは吐き出したかった。
 それから約一名を忘れていたことに気づき、慌てて付け加える。

「あ、アフロディ! キミはあれだ。チームのよしみだ! 勘違いするな……で、でもアフロディってかっこいいよね。スタイルも抜群だし、プレーも華麗で……って僕は何を言っているんだ」

 どうもアフロディにはうまい言葉が思いつかない。蓮は傍から見ればひかれそうな独り言を小声で吐きまくっていた。その時、近くのドアが開く音がし、蓮は急いでニット帽を被りなおす。
 音の方を見ると、蓮から見て右手の部屋から、チャンスゥが顔を出していた。

「おや、チナン。おはようございます」
「おはよう! チャ……キャプテン!」

 独り言が聞かれなかったことに安堵しつつも、チナン(蓮)はチャンスゥに手を振る。ジャージ姿のチャンスゥは部屋のドアを閉めてから、チナン(蓮)に向かって、

「今日はあなたにとっていい一日になるはずですよ」
 
 意味不明な言葉を向けた。チナン(蓮)がわからずにぼうっとしていると、チャンスゥは敵に見せるような不敵な笑みを顔に作った。

「わたしの完全なる戦術の中に……あなたは既に囚われているのですから」

 びゅおっと強い北風が吹きつけ、窓枠を揺らした。

〜つづく〜
オーバーが怖いので、コメントは追記です。
バレンタインですから、幼馴染コンビが蓮をどう思っているのか言ってもらいました。
蓮がどう思っているかはそのうち書きますww
大好きだとか言うと、腐向けになりかねないので自重。
それと蓮がアフロディに微妙な態度をとっているし、アフロディはなぜか蓮を呼び捨ての謎。
前挫折した小説とは違う設定があります。披露できるとしたら、本編が沖縄戦の後まで行かんと。
あ、そういえば雷門とイナズマジャパンの短編を全く書いてない((

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.289 )
日時: 2011/02/22 18:26
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 最悪ホワイトデーもやりかねないかも

>>まりん
お〜てるみん^^ゴットノウズ中? 改めると、アフロディはぜうすユニフォームが一番似合う気がするなぁ。韓国もいいけど、ゼウスの方が気品あふれる気がするw

>>ふぁいんさん
これ元ネタありますよwwとあるPSPゲームですww

バイト代はアルパカのグッズですwwアルパカが大好きなチナンを、ほいほいつることができる魔法のグッズ。
なんかこうしてみると、チナンがかなりぶっとんだキャラになってますね;;

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.290 )
日時: 2011/02/22 18:28
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

しずく
もしかしてアフロディ好き??
あたしは好きだよ!
しずく!銀魂好き??
あたしこれにちょうせーん!したよ!
                _ .. -‐    ‐- .. _
                ,  ´           `ヽ、
          /                      \
            ,    /                ヽ
        // .::' /   ,  /      ,       ゛,
          /ィ .:.: /   .:ィ   / :/    l .       !
        ':.:/  .:: .:/ l  / :/.::// l .:l   :.   l
         l/|: l .:://_゛ヽ!:./! /:.:/: ィ:  !.:ハ  : ::. : |
         レ:l:.//fンミ、l/:.l/:.:メl/、!:|l/  !:. :.l::.:.: :. !
         /小l/´‐='゛ i:./!:./ィァミl:. ||.: !: :.:!::|::. :i::l
        /-‐1    _ノl/ l/´_!ソハ::.|:.l .::.:.!: ::.l::.!::./l/
       ' / へj、_ __{ _     `"ーV:/:/:/l::.l::.:.::.!:' ′
     /: 〈: :ゝrf´f   `iヽ       /´lルf゛)j::.|::.:|:.l:|
.     ': : : ヽ:/! ソーr‐ヘ 〉      _〃ノl:ハ:.l小、_
     l: : : ヘゝY 廴∧ 「}     ///イ/:i八ハl:》 : : `丶、
     |: : :|「`\¬三ラ_ンz—     // /'}/: : : 〃:\: : : : : 丶、
     |: : : ぃ: : :ぃ〃: { 〃 l\   //: : : : : : :// : 、: \__: : : : :\
     ': : : : }} : : 〉{{: :||/‾∨アj {: : : : : : ://、: : :\, -、\: : : : \
     \ : {{ /^}}、: :V  / /〈〈j {ミ、: : : :// : \ : 弋_ソ: : >——ヽ
       ト: ‾: : :{{ぃ:|  l l  〉l l: :い: 。:l l : : : : \: : : / : : : : : : :l
       {: ヽ∧: :}}:||: ハ j l  7/: : `、、 l l : : : : : : : y: : : : : : : : : :!
        \:{: :「\!! { ’! | rl l; : : : :ヽソ: : : : : : : /: : : : : : : : : : : ヽ
         ヽ: \ 》 |  :、 ! !j |L__: : : : : : : : :/: : : : : : : : : : : : :
          }: : 〃い  丶 ! !j |[‾‾] : : : : : : :': : : : : : : : : : : : : :
  r─—…==ヘ: 〃: :\\ `丶|j 「二二ン: : : : : : : :{: : : : : : : : : : : : : :
  |^ヽ  〈__Ⅳ: : : : : \\__ノノ{: : : : : : : : : : : : :! : : : : : : : : : : : : :
  { {^、ヽ      }ハ: : : : : : :` 幵、} L___: : : : : : : : : :、 : : : : : : : : : : : :
.   いム V    /: : : :、: : : \: :l l(V/‾‾]: : : : : : : : : :\ : : : : : : : : : :
.   vヘム∨  ‘: : : : : \: : : ヽ!{ ,.ニニニン: : : : : : : : : : : : : - 、: : : : : : :
.   VヘムV  l: : : : : : : : >、: : !{{: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\: : : : :
.    }_八ムl |: : : : : : : :>、: 〃!l___: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :〉、: : :
     ‾‾「‾! : : : : : : : { : `{{: |「‾‾|: : : : : : : : : : : : : : : : : : ∧ 「‾
       ヒ.ム: : : : : : :∧ : jj: j == ': : : : : : : : : : : : : : : : : :!:ハl: : :

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.291 )
日時: 2011/02/22 19:57
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

>>マリン
アフロディはなかなか好き^^見た目が綺麗だから^^

銀魂も私の好物漫画の一つだよ♪
それは新八? 神楽ちゃん? な、なんだろう……

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜さ、参照が5000だと!? ( No.292 )
日時: 2011/02/23 16:33
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

しずく
なかなか…;;;見た目かい!!
そっかそっか^^
あ!それは総語だよ!沖田総語!
         / ./ |  |  //i |    |   |ヽ  | | | | |ヽ.|
         |  |  |  | /,rr—|lヽ  l、 、 .|´t-r-、l | | |,.| |
         |  |  |  | l/ |l  `、ヽ l ヽヽ | ヾiヽ, l .| |/,l|
         |  |  i  |,'l ノr=-、 ヽ ヽヽヽヽト=-|、 l|| | ト, l|
         |  |  |、 | / r'//i    `   r'//、ヽ| .l | |}.l l|
         |  |  .|ヽ.|   { `-'l        ト-.'l}  .| ! リ,' lヽ、
          | |  l |、{ 弋_リ       弋_リ  .| ,'  r' |l|ヽ
          |ヽ l  ヾ.|  ,,,,,      '    ,,,,,  .| l | |l.|
          リヽ l  ヽlゝ      、 _ __ ,     ,./ / /|l | リ
          |  ヽヽ ヽ `ヽ 、_        ,. - ' ,/ イ/ ! ,リ
            ヾiヽ r、 i  _,> 、 __ - '´|_r4 / i/ !'´
               ヽ ヾ |ヾf==ヽ、___, ,___ t==.}
                ヽ、 ,り     ,l|l    ,.[
           ,r‐ -- '_´ノ-'‾‾ヽ、__,l|l_,r,///,,`ーr=r- 、___
         /   l  |///////////,|///L,-///////`ヽ    ヽ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜さ、参照が5000だと!? ( No.293 )
日時: 2011/02/26 09:40
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 涼野&アフロディは料理下手設定なり。

「せっかくの楽しいバレンタインに、戦術は不釣合いだよ……ぜ」

 チナン(蓮)は唇の端を持ち上げ、挑発するような顔付きでチャンスゥを見る。不敵に笑うチャンスゥと挑発するように笑うチナン(蓮)。二人は互いに一歩も引かず、にらみ合ったまま長いこと見つめ合っていた。長いこと均衡が保たれていたが、それを破るようにチャンスゥがふうっと長い息を吐く。

「今にわかりますよ」

 今までは違い口元に柔らかい笑みを浮かべるチャンスゥ。今までとは態度が打って変わり、何を考えているのかわからない。チナン(蓮)は警戒するように身構える。その動きを見たチャンスゥは——何も言わずにチナン(蓮)に背を向け、チナン(蓮)から遠ざかっていった。

 こうして——日がたつのは早く、夜。暗くなっても、まだ雪は降り続いていた。
 結局のところ、この日、蓮がチナンに扮していることを見破った人間は誰もいなかった。蓮に化けたチナンは、本当にジンソン監督とどこかに外出していたし、他のファイアードラゴンメンバーも今日はみんな蓮のことを“チナン”として扱った。
 あまりにもみんなが“チナン”として扱うため、蓮は一日中高いノリで生きなければならなかった。チナンは元々明るい性格でかなりノリもいい。彼になりきった蓮は、無理にハイテンションで一日を過ごし——夕食後にはすっかり気疲れしていた。夕食をさっさと切り上げ、チナンの部屋のベッドに仰向けで寝転んでいた。邪魔なので、ニット帽は外して、枕の脇に置いてある。
 蓮がベットで何をするわけでもなく天井とにらみ合いをしていると、突如扉が壊さんばかりの勢いで開けられ、どたどたと大きな足音がする。
 何事かと、蓮はだるそうに頭だけを動かして、扉の方を見ると、南雲が部屋に入ってきていた。片手を背中の後ろに隠し、焦っているのか動作がいつもより慌しい。
 
「おい、チナン。い……」

 南雲はチナンを呼びながら部屋に一歩足を踏み入れて、ぼんやりとした黒い瞳をこちらに向ける蓮と目が合う。そのまま言葉を続けられなくなった。大きく目を見開くと一歩後退する。

「れ、れれ……れれれ」

 驚愕の表情で固まり、ろれつが回らなくなっている南雲に、蓮は呆れた視線を送る。

「何、そんな幽霊でも見たような顔して」

 蓮が冷静な声音で言うと、南雲は我に帰ったように数回瞬きをした。それからかなり大またで蓮に近づくと、蓮から視線をそらしながら、背中に隠していた手を突き出した。見ると、手には小さな紙袋が提げられていた。
 腹筋を使って上半身を起こすと、蓮は静かに紙袋を受け取る。途端、南雲は逃げるようにドアへと向かい、ドアノブに手をかける。その時、一度だけ振り返り、

「明日までに食わなかったら、<カオスブレイク>喰らわせるからな!」

 何やら目つきを厳しくしながら吐き捨てるように言い残し、ドアを乱暴に開け、そして閉めた。一人残された蓮は紙袋の中に手を突っ込む。紙袋がかさりと乾いた音を立てた。
 手探りで紙袋の中を探ると、ビニールのようなざらざらした手ごたえがあった。それを掴んで持ち上げると、針金で雑に口が閉められたビニールの子袋が一つ。改めて袋の中を覗くと、輪ゴムで口が止められた子袋が後2つ入っていた。
 子袋の中には、いい色合いに焼けたたまごボーロが、袋いっぱいに収められている。焼けた色合いはいいのだが、大きさはまちまちで、大きいものから小さいものまで鎮座している。雑な性格の晴矢らしいたまごボーロである。
 蓮は、大きさがばらばらの卵ボーロたちを見つめると、袋を開き、そのうちのいくつかを口に放り込んだ。見た目はバラバラでも、味は一律。ほどよい甘さが口に広がった。



「あれ、風介?」

 しばらくしてチナンが戻ってきたので、自分の部屋に戻ろうとした蓮は、自分の部屋へと続くドアの前に涼野がいるのを発見した。腕組みをしながら、ドアに寄りかかり、瞑想でもするように目を閉じている。
 蓮の声に気づいたのか、涼野は目を開けて、身体を蓮の方に向ける。

「キミは来るのがいつも遅い」
「え? あ、ご、ごめん」

 涼野の真正面に立った蓮は、心底不機嫌そうな涼野の声で怒られ、反射的に頭を下げた。
 すると涼野は、蓮の左腕にある紙袋に視線を移し、悔しそうな顔付きで、苛立ちを込めた舌打ちをする。

「……晴矢に先を越されたか」
「へ?」
「まあ、いい」

 涼野は真顔に戻ると、蓮の部屋と続く扉を開き、中に入った。数秒位して、片手に近くのコンビニの店名が入ったビニール袋を提げて戻ってきた。涼野はそれをおずおずと蓮に差し出す。

「……これをキミに渡したかったのだ」
「ありがとう風介」

 蓮はにっこりと笑って紙袋をもらうと、中に入っているものを出した。小さい袋の中には、形が歪(いびつ)なクッキーが数枚ある。形は歪だが、クッキー自体はこんがりと狐色に焼けていて、とてもおいしそうに見える。
 もらったはいいが、涼野は料理において、塩と砂糖を間違えて入れたり、米を洗剤で洗うような人間。蓮はせっかくの手作りでありながら喜べずにいた。クッキーと長い時間、にらみ合いを続けている。
 自分が料理下手であることを涼野は十分理解しているらしく、

「私としてはこれ以上になく上手くいったほうだ」

 小さな声で弱弱しく呟いた。それがさらに不安を煽り、蓮は引きつった笑みで風介を見る。そんな蓮の顔を見た涼野の瞳が、暗い陰を落とし始めた。

「は、晴矢を実験台にしたんだろ? 大丈夫だよ」

 蓮が思いついたことを言うと、涼野はむっとした面を上げる


「晴矢もアフロディも私に毒見をさせたからおあいこだ」

 涼野が愚痴をこぼす横で、蓮はもらった子袋を止めていたリボンを解き、クッキーを一枚思い切って口に入れていた。蓮の黒い瞳が驚きで揺れる。

「あっ」

 小さく声を漏らし、

「おいしい。おいしいよ、風介!」

 蓮は目を輝かせながら涼野を褒めた。二枚目も口に運ぶ。
 クッキーは口に入れるとボロボロと崩れたが、バターの風味が舌の上に広がった。甘さもほどよい甘さで、しつこくない。
 涼野にしては上手い味に蓮は、おいしいと連呼しながらあっという間に一袋食べ切った。その光景を涼野は、いつもの無表情——でも、口角はわずかにあげて、見つめていた。

「蓮、口の周りがクッキーだらけだぞ」

 珍しく涼野が小さく笑い声を立てながら、勝ち誇った顔で蓮に指摘する。蓮の口の周りには、クッキーのかすが唇や周りに張り付いている。蓮はジャージのポケットからハンカチを取り出すと、急いで口の周りを拭い始めた。

「しっかし、よく手作りしようなんて思ったな。買えばいいのに」

 ハンカチで口の汚れを取りながら思ったことをそのまま伝えると、涼野はふんっと鼻で笑う。口元に柔らかい笑みを浮かべた。

「なら聞こう。キミは私にチョコを渡すとしたらどうする?」
「手作りするかな。だって他ならぬ風介にあげるんだし」

 蓮はにっこりと笑いながら言った。涼野はドアを閉め、またもたれかかる。憂いに満ちた瞳を天井にさ迷わせ、長いため息を吐く。

「私は何故か……キミに手作りしようと思ってしまった。作り物を渡すだけでは、自分の気がすまなかった」
「そういえば僕も晴矢や風介に安っぽいチョコはやだなぁ」

 蓮も涼野の真似をして壁に寄りかかり、視線を天井に向ける。黒ずんだ天井に、木の木目が広がってる。
蓮は、やっぱり涼野の真似をして、長く息を吐く。冷たい空気が肺の奥へと流れていった。そして大きく深呼吸する。

「それはなんでだろ。風介はわかるか?」

 慈しむような笑みをつくり、涼野の答えを待つ。

「……そうだな」

 涼野は視線を少し下げ、前をまっすぐ見つめる。

「キミも私も似たような人間だということだろう」

 涼野が言って、

「”Birds of a feather flock together“、かな」

 蓮が英語で呟いた。



〜つづく〜
「”Birds of a feather flock together“」は、英語で「類は友を呼ぶ」って諺ですbなんで英語かは。。かっこいいから(←これって中二ですか?)

今回は見せ場(?)の二人がバレンタインのものを渡すシーンww
南雲はツンデレ、涼野はわりかし控えめに。読者の皆さんは、どっちの渡し方にぐっとくるんでしょう? よければコメント求m(( 
あ、しずくの描写下手くそでぐっと来ない。うん、その選択肢が一番多そうw
南雲&アフロディはアフターフォローあります。三人均等にエピソードを作りたいなぁ^^

ところで





気づいたら参照が……とてつもなく法外な数値を記録していました。5,5000? アフロディがヘブンズタイムしてないよね? ガゼルがノーザンインパクトうってないよね? バーンがファイアトルネード打ってないよね? 

な、なんか感謝の気持ちがでかすぎて何にも言えねっ! くっりくしてくださる人はみんなてるみん。コメントなくてもてるみん。
これからもこの小説をよろしくお願いいたします♪

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜さ、参照が5000だと!? ( No.294 )
日時: 2011/02/23 17:25
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: あと一回さ〜

>>マリン
うん、見た目wwアフロディは”そこそこ”好きで、一番は風丸と涼野と南雲。
あ、沖田か!言われてみるとそうだなぁ。うちはマヨラー副長が好き^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜参照が5000突破です ( No.295 )
日時: 2011/02/23 19:15
名前: ふぁいん (ID: Ua50T30Q)

5000おめでとうございます!すごいです!そしてやっぱり蓮君×ガゼル様は最強すぎる。また鼻血で辺り一面紅い空が広がってます!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜参照が5000突破です ( No.296 )
日時: 2011/02/24 21:21
名前: ミティア ◆a5QxxPCyHs (ID: Ua50T30Q)
参照: この前は吹雪が可愛すぎたぜwwwwwwww

五千突破おめでたさんwwwオレが祝いのt〜マジすごいっす。オレと結婚((。オレとしては南雲に萌えた。ツンデレはるたんとか俺得ですwwサーセンwww^B^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜参照が5000突破です ( No.297 )
日時: 2011/03/04 17:30
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)

 それから、涼野はかなり上機嫌で自分の部屋へと戻っていった。蓮も二人にもらった袋を大事そうに抱えながら、嬉々として部屋に戻った。そしてもらった袋は机の上に置き、蓮はベッドに腰掛けて、サッカー雑誌を読み始める。
 サッカー雑誌を読み始めて一時間が経過した頃、不意に小さくだがコンコンと言う音がした。蓮はサッカー雑誌を傍らに置き、音がした方向——窓に目をやる。
 夜なうえ雪も降っているので、窓は締め切ってあり、カーテンも引かれている。だが、その向こうから、音が、はっきりと聞こえてくる。窓が何かで叩かれる音がし、半拍ほど遅れて窓枠がきしむ音がする。
 どうやら誰かが部屋の外から窓を叩いているらしい。でも、普通の人間ならそれは無理なはず——と蓮は考えた。なぜなら蓮の窓の向こうに足場はないからだ。窓の下は窓から垂直にコンクリートの壁が広がるだけで、足場にはできない。しかも落ちたら、アスファルトで舗装された道に激突する羽目になる。大怪我は免れない。
 つまり空でも飛べない限り、蓮の部屋の窓を外から叩くなど不可能なのだ。蓮は、窓の外にいる人物をおおまかに予想しながら、大急ぎで窓に駆け寄り、カーテンを右に引いた。水滴まみれの窓をジャージのポケットから出したハンドタオルで大急ぎで拭く。すると、

「あ、アフロディ!?」

 ガラス一枚を隔てた向こうに、ほたるのように、儚く光る金色の一対の翼を背に生やしたアフロディが浮いていた。ジャージ姿でスパイクは履いていない。
 背中の羽の輝きが<ゴッドブレイク>を撃つときよりも弱い気がするのは気のせいだろうか。今日に限っては蛍光灯程の目に優しい輝きだった。
 アフロディは雪が降っている中に長いこといたのか、頭や肩の辺りにはうっすらと雪が積もり、身体が小刻みに震えていた。俯いているため長い金色の髪が目元を隠し、表情を窺い知ることは出来ない。しかし、背中の羽の光が、震えながらも言葉を紡ぐ唇を浮かび上がらせていた。蓮はそのことに気づくと、アフロディの唇に全神経を集中させる。 『さ』・む』・『い』と唇が動いた辺りで、蓮は窓の鍵を開けた。ガラスを開け、網戸も開けると、夜風が肌を刺すような冷気と共に部屋に進入してきた。
 あまりの寒さに蓮は身震いしたが、すぐに部屋の真ん中まで下がると、手を振りながら、大声でアフロディに呼びかける。

「ほら、入って来い!」

 その声にアフロディの身体が自動操縦の機械の如く動く。立ち上がって浮いたままの体制で蓮へと近づく。それでも顔は俯いたままで意識があるのかすらも判別できない。
 途中、窓から部屋に入るときだけは、身体を地面と水平にしたものの、部屋の中に入ると、地面と垂直になる。暖かい室内に入り、アフロディの体中に積もっていた雪が解け始める。体中から水滴を垂らしながら、アフロディは蓮に近づいてくる。フローリングには、アフロディが通った後に一本の水の線ができていた。
 アフロディは蓮の目の前まで進み出ると、ゆっくりと下降し始める。つま先がフローリングに触れた途端、背中の羽が霧散し、同時にアフロディの身体が支えを失い、前に倒れこんでくる。蓮は反射的にアフロディの身体を抱きしめるように受け止めた。アフロディの頭が力なく垂れ、額が蓮の右肩に当たる。髪やジャージから垂れる水滴が蓮の肌やジャージを濡らした。

「いったいいつから外にいたんだろう?」

 アフロディの濡れたジャージの袖に触れながら、ポツリと蓮は呟いた。
 外で見たときとは気づかなかったが、アフロディの全身はびしょぬれだった。顔色は青白く、氷のように冷たい。
 長い金髪はすっかり湿っていて、目から鼻の上にかけて張り付いてしまっている。指先で髪を左右に払うと、長い睫に覆われた瞳が閉じられていた。どうやら気を失っているらしい。ジャージも水を吸い込んで重くなり、アフロディの肌にすっかりまとわりついている。寒いのか、身体はまだ震えている。

「おーい白鳥」

 そんな時、部屋のドアが開いた。チナンが蓮の部屋に入ろうとして——立ち止まる。

「おまえ、アフロディとそんな関係だったのか!」
「バカ! ちげーよ!」

 チナンが上擦った声でとんちんかんな事を言って、蓮は即否定する。しかし、『アフロディが外にいた』と言う事実を知らずに部屋に入ったのなら、勘違いを起こしても無理はないだろう。蓮が一方的にアフロディに抱きついているように見えなくもない。

「南雲と涼野と言う幼馴染がいながら、アフロディと言う新参者(しんざんもの)に手を出すとは。なかなかやるな」

 からかう調子のチナンの言動は無視し、蓮はアフロディの身体を一度床に横たえる。両わきの下から腕を滑り込ませ、少し上半身を持ち上げる。頭がまた下がる。引きづって、ベッドの側面に背中が当たるようたてかけた。ついでに両手をひざの上で重ねる。アフロディは、背中をベッドに預けながら、両足を伸ばし、ひざの上で手を重ねて眠っていた。
 蓮はそれからガラス戸を閉め、窓の鍵をかけ、カーテンを閉める。

「そ〜いや雪の日にミッカイってよくやるな」
「どう勘違いしたら話がそっちに行くんだよ!」

 どこまでも話を脱線させるチナンに怒鳴った。それからチナンの誤解を解くまで15分ほど要した。


「……ありがとう。蓮」

 ベッドの上に体育座りで震えるアフロディに、蓮から湯気が立った紅茶入りのマグカップが差し出される。アフロディは礼を言った。
 
 自分を抱くように身体に回していた手を離し、マグカップを受け取ろうと手を伸ばした瞬間——アフロディの身体に巻かれていた毛布がはらりと落ちる。
 それをすかさず蓮は拾い上げると、両手で広げ、再度アフロディの背中に優しくかけなおしてやる。

「寒い?」

 蓮が心配するように聞いて、アフロディが静かに首を振る。長い金髪も静かに揺れた。

 今のアフロディは、彼自身のものである青い無地のパジャマを着て、蓮の部屋にある毛布を上着のように羽織っていた。顔色はすっかりよくなり、頬には赤みがさしている。
 部屋のタンスの前には、ハンガーにつるされたファイアードラゴンのジャージとハンガーに洗濯ばさみで止められたトレーニングパンツがつるされている。量が少なくなったとはいえ、まだ水滴が一定感覚で落ちてきていた。
 アフロディの髪は、さっきドライヤーで乾かしたためすっかり乾ききっているが、そのせいでいつもより髪が乱れている。

 アフロディが目を覚ます前に、蓮は大急ぎでアフロディの部屋に行ってパジャマ、続けて風呂場へ直行しドライヤーを拝借した。それから濡れているアフロディの濡れている衣服を全部脱がせ(下着はさほど濡れていないので放置)、パジャマに着替えさせ、髪をドライヤーで乾かしてやったと言うわけだ。
 幸い着替えさせた間は目を覚まさなかったので、特に問題はなかった。ただ蓮の一連行動を書くと相当やばいことになりそうなので割愛させていただく。

 アフロディは毛布を身体から落とさないよう注意しながら、両手を伸ばして蓮からマグカップを受け取る。マグカップの取っ手を掴み、反対の掌の裏を皿代わりにするようにカップの底をのせた。
 そのまま自分の口の近くまで運んでくると、ふーと紅茶に息を吹きかける。数回繰り返した後、マグカップを傾け、一口飲んだ。

「あつっ」

 くすぐったいような表情で苦笑しながら、アフロディは言葉をこぼした。

「アフロディって意外と猫舌なんだ」

 蓮はアフロディの足元に置かれた、足が折りたためる小さな机の上にあるティーカップに紅茶を注ぎながら意外そうに呟く。アフロディは、紅茶を少し飲んでから、表情を緩めた。

「いつもなら平気だよ。身体が冷えていたせいかな」

 紅茶を自分のマグカップ——羽を象ったレリーフが浮き上がるように彫られたものが側面にある、に紅茶を注ぎ終えると、取っ手を掴んで持ち、アフロディの横に腰掛ける。

〜つづく〜

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜参照が5000突破です ( No.298 )
日時: 2011/02/28 15:01
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: http://blogs.yahoo.co.jp/rmnjr654/28801245.html

「ところで、なんで雪の中、外に出たりしたの?」

 蓮が紅茶を啜ってから、呆れたように尋ねると、アフロディはマグカップを机に置いてにこりと微笑む。顔色もよく、身体は震えなくなっていた。

「キミの様子が気になったからだよ。ところで、ボクが隠したもの……見つけてくれたかい?」
「すぐに見つかった。ジャージのポケットに入っていれば、誰だってわかるよ」

 当然そうに答えながら、蓮は脳裏に昨晩の夕食のときを思い出す。
 その日の夕食時、妙にアフロディの機嫌がよかった。鼻歌でも出てきそうなほどニコニコと笑い、しきりに時計を気にしていた。
 しばらくして、チャンスゥに呼び出された蓮は、ジャージを椅子に引っ掛けて出て行った。そして帰ってきたら、ジャージがかなり重くなっていた。

「それで」

 アフロディが楽しそうに口を開く。

「なに?」
「ボクが、美しさを追求して作り上げた作品の感想を聞きたいな」

 その言葉を聞いた途端、蓮の顔が強張った。南雲と涼野に渡された紙袋が置かれた机に近づくと、その上にあった洒落た紙で包装された箱を取り上げる。

「……まだ、その。食べてない、かな」

 蓮が遠慮がちに言って、アフロディは目を丸くする。

「バレンタインまで待ってくれていたのか」

 蓮は首を横に振る。

「いや、キミのポイズンクッキングが怖いだけだ。チナンが、前にキミの料理を食べて3日間生死をさ迷ったことがあるだろう」
「あれはボクの料理が素晴らしすぎて、気を失ってしまったんだよ」

 アフロディが後ろ髪を払って断言した。これは本人の勘違いである。
 何週間ほど前か、チナンがアフロデのが作った料理を食べて、3日ほど寝込んだことがある。蓮がチナンを見舞いに行った時、『あれは……人がくえるもんじゃねぇ』と息も絶え絶えに言っていたのをはっきりと覚えている。そう、だからこそ食べれないのだ。

「蓮」

 アフロディは蓮に呼びかけると、両手で毛布の端を掴む。体育座りの上から毛布を引っ張り、全身を毛布ですっぽりと覆うと、身体を少し丸めた。

「確かに、ボクの料理が素晴らしいから、気絶するのが怖いのはわかる。けれど、食べないのは、失礼な行為だと思わないかい?」

 少しずれているが、アフロディの言いたいことが蓮はよくわかった。いくら料理下手でも、アフロディだって一生懸命作ったのだろう。それを食べずに捨てられてしまう行為は、相手を嫌いだと言うようなものだ。
 黙って箱と睨みあっている蓮を見て、アフロディは悲しげに目を伏せる。

「ボクは蓮が作った料理を食べなかったことはないのに、キミはボクの料理を食べてくれないんだね」

 アフロディが寂しそうに語るのを聞き、蓮は申し訳なそうな顔をして、アフロディを見た。するとアフロディは急に柔らかい笑みを浮かべる。

「蓮はギリシア神話が好きかい?」
「ケルト神話とかなら好きだけど」
「ギリシア神話によると、白鳥はアフロディーテの聖なる動物なんだ」
「つまり、なに」
「ボクの命令は絶対なんだよ」

 蓮はしばらく考え込むように俯いた後、唐突に英語を発音した。

「TO APHRODITE(アフロディーテ様)」

 その言葉にアフロディは瞠目したが、蓮は気にせずに流暢(りゅうちょう)な英語でアフロディに語り続ける。アフロディは何も言わずに黙って聞いていた。

「Goddess revered, to thee I pray:My soul-subduing griefs allay(崇拝する女神様、あなたへ私は祈ります。私の心を覆いつくす苦悩を鎮めてください)」

 長い言葉を一度切ると、アフロディに微笑みかける。そして息を吸い、ゆっくりと一音一音がアフロディに聞こえるよう、はっきりと丁寧に発音する。

「In the smile of you(あなたのその微笑みで)」

 蓮が言い切ったとき、アフロディは笑って見せた。神の微笑とも表現したくなる、美しくも静かな笑み。蓮は唇の口角をわずかにあげ、

「そこまでやられちゃ仕方ないなぁ」

 母国語に戻して、困ったように笑う。持っていた箱の包み紙を破くと、中に入っていた箱のふたを開ける。中にはきれいな正方形にきられた生チョコが並んでいた。ココアがうまい具合にチョコに降りかかっていて、おいしそうに見える。しかし、アフロディの料理の恐ろしいところは、見た目だけは美味しそうである事なのだ。
 蓮はあの世に行く覚悟をしながら、近くにあるプラシチックでできた楊枝(ようじ)に生チョコをさすと、目を閉じながら口に入れた。直後襲ってきたのは、卒倒するような味でもなく意識を失うようなひどいものでもなく。蓮は目を開け、信じられないと言わんばかりに言葉を漏らす。

「え、嘘」

 生クリームとチョコレートが生み出す、何ともいえないうまさのものだった。そこにココアのパウダーが絡まることで甘さは増し、風味のよい甘さが舌の上に広がる。

「…………」

 アフロディが人並みに上手いチョコを作ったことが信じられず、蓮は呆然としていた。その顔を眺めていたアフロディは、満足そうな笑みを顔に作る。

「その顔、おいしいって言っているんだね」

 蓮がアフロディに顔を向け、口を開こうとすると、アフロディは首を横に振る。

「ふふ。何も言わなくてもいい。キミのその顔だけでボクは満足だよ」
(僕を喜ばせたかったんだ。ありがとう)

 蓮は心の中でアフロディに短く礼を述べた。
 
「ところで蓮、今日はキミの部屋に泊まらせてもらうよ」
「は?」

 急な申し出に蓮が問い返すように聞いたとき、アフロディはベッドから降り、身体に巻いていた毛布を広げ、ベッドの上にきれいに伸ばしていた。そして毛布をきれいに伸ばし終えると、毛布の中に潜っていった。そして頭だけを出して寝転がりながら、蓮を見上げる。

「自分の部屋に戻るのがめんどくさいんだ。じゃあ、おやすみ」

 手短に挨拶を済ませると、アフロディはくるりと身体の向きを変え、蓮に背中を向けてしまった。長い金髪がベットの上で広がる。言うまでもなく、泊まる気まんまんのようである。

「僕はどこで寝ればいいんだよ」

 蓮は悪態をつくと、ベットに腰掛けた。アフロディはそうとう右にずれて寝ているので、身体を踏んだりはしなかった。
 蓮は再度生チョコレートをプラシチックの楊枝で、口まで運んだ。口をもぐもぐさせると、ゆっくりと飲み込む。蓮の喉元が少し膨らんだ。そして振り返って、アフロディの背中に目を落とし、

「なぜ“神”は僕に“作物”を与えたの?」

 わざと遠まわしに聞いてみた。本当はどうして僕に作ったのだと聞いた。アフロディはその意図を理解しているのか、僅かに笑い声を立てた。

「……キミに喜んでほしかったからだよ。“神”もまた人間なのさ」

 アフロディは蓮に背を向ける体制のまま、当然そうな口調で言った。
 蓮はまた生チョコを忙しく口に運びはじめた。

「白鳥、いますか?」

 アフロディが蓮のベッドを占領したまま眠りに落ちた頃、ドアが控えめにノックされ、ジャージ姿のチャンスゥが蓮の部屋の中に入ってきた。手には、キャンディ缶のようなものを持っている。

「あ、チャンスゥ」

 蓮は窓の縁に座り、ぼうっと外を眺めていたが、チャンスゥに気づくと立ち上がり、彼の近くまで駆け寄った。チャンスゥはドアを静かに閉めながらゆっくりと部屋に入ると、こちらに背を向けて眠っているアフロディを見た。

「おや、アフロディ?」

 蓮は、アフロディがここに来た経緯を必死にチャンスゥに説明する。どうやらアフロディはチョコ自分が食べているか気になったため、寒い中わざわざ外に飛び立ち、蓮の部屋の様子を伺っていたこと。そして戻ろうとしたら部屋が締め切られてしまい、寒い中、自分に助けを求めに来たこと。
 それらをチャンスゥは黙って聞いていたが、思い当たる節でもあるのか、だんだん顔が強張ってきた。蓮が話し終えると、腕を組んで、

「……実はアフロディを締め出したのはわたしです」

 と心底申し訳なそうな声で白状した。普段はしっかりしているチャンスゥがアフロディを締め出したのは意外だったので蓮が瞬きをしていると、チャンスゥは決まりが悪そうな顔で話を続ける。

「明日の練習についてアフロディの部屋を訪ねたところ、部屋の鍵が開けっ放しだったもので、何も考えずに閉めてしまいました」
「かわいそうなことにアフロディ、凍死寸前だったよ」
「……面目ないです」

 氷のように冷たかったアフロディの肌を思い出しながら蓮が呟くと、チャンスゥは沈んだ声で眠っているアフロディの方に身体をむけ、深々と頭を下げた。しかし当のアフロディは夢の世界へ行っているので、返事はない。沈黙が場を支配し、気まずい空気が漂う。
 雰囲気が重くなっていくのが嫌で、蓮はそれを払拭するようにチャンスゥに明るい声をかける。

「それはさておき、明日の練習のことかな?」

 その声に頭を切り替えたのか、チャンスゥは口元に柔らかい笑みを浮かべた。今まで手に持っていた缶を持って蓮に近づき、そのまま差し出した。

「ハッピーバレンタイン、ですよ」
「あ、ありがとう!」

 蓮は、はしゃぎながら受け取る。チャンスゥから渡された缶は、ドーム型の蓋を持つキャンディ缶だった。何故か赤い龍をかなり可愛くデフォルメしたものが描かれ、蓋を開くと一つ一つ梱包されたチョコとクッキーが入っている。蓋を閉めると、蓮は笑顔でチャンスゥに頭を下げ、窓の脇に置かれた机の上に缶を置いた。机の上は、チョコレートだらけだった。包み紙に包まれた箱や、ポッキーや、コアラのマーチの箱が机の底が見えなくなるほどに乱雑に並べられている。

「ずいぶんもらいましたね」

 蓮を目で追っていたチャンスゥが素直な感想を漏らすと、蓮は苦笑しながら振り返ってチャンスゥに顔を向ける。

「えっと。部屋から帰ってきたら、こんなことに」

 控えめに言い訳を言って、恥ずかしそうに顔を伏せた。
 南雲や涼野にお菓子をもらってから部屋に帰ると、机の上にはチョコレートとメモがたくさん置かれていた。それらはアフロディ・南雲・涼野・チャンスゥを除いたファイアードラゴンの仲間たちからのもので、決まって「お返し楽しみにしているぜ」と書かれていたのだった。

「そういえばアフロディたちからチョコはもらいましたか」

 チャンスゥは窓辺まで歩くと、蓮に顔を向けながら聞いた。蓮は顔を上げ、慈しむように目を細めながら小さく頷いた。

「言葉では表現できないおいしさだった、かな」
「そうですか」

 チャンスゥが満足げに頷き、蓮はニッコリと笑う。その時、ベットの上のアフロディがもぞもぞと動く。二人から顔は見えていないため気づいていないが、赤い瞳を片目だけ開け、布団にもぐりこむようなしぐさをしながら聞き耳を立てている。

「3人に作り方を教えたら嬉しくなるよね」

 チャンスゥは虚を衝かれたような顔つきになったが、すぐににやっと笑った。

「さすが白鳥。気が付いていましたか。ほぼ完璧ですが、あなたは一つだけ間違えている」
「ん?」

 蓮が意外そうに目をわずかに見開くと、チャンスゥは窓辺に腰掛けた。そして墨のような黒に塗りつぶされた空に視線を投げかける。

「一週間ほど前のことです。南雲と涼野が、いつにもなく真剣な顔でわたしの元を訪ねてきてこう言ったのです。『バレンタインに手作りのお菓子を渡したいやつがいる。しかし、自分たちだけでは作れないので、チャンスゥに手伝って欲しい』とね。まあ、渡したい相手があなたであることは、すぐに察しがつきましたがね」
「手作りにこだわらなくても、気持ちだけでも十分なのにな」

 必死そうな顔でチャンスゥに頼み込む南雲と涼野を脳裏に思い浮かべながら、蓮は足を揃えてチャンスゥの横に座る。チャンスゥは蓮に視線を向けず、まだ空を見つめている。蓮も空に目をやる。もう雪は止んでおり、グラウンドの向こうには、街明かりが瞬いている。今日は、あそこで何人の恋人が過ごしているんだろうと蓮がぼんやり考えていると、チャンスゥが口を開く。

「白鳥は優しいから無理して手製にこだわる必要はない、とわたしも答えましたよ。しかし彼らは首を縦には振りませんでした。普段、あなたはよく南雲や涼野に手料理を振舞っているでしょう? 二人とも、たまには自分たちが逆の立場に立って蓮を喜ばせたい……と言ってましたよ」

 蓮は面映い(おもはゆい)のか、照れ隠しするように頭をかいた。それを見ていたチャンスゥの笑みがますます深くなり、優しい口調で話を続ける。

「作った当日の二人はとても一生懸命でした。本とにらみ合いながら、慣れない手つきながらも材料を混ぜたり、オーブンレンジを何度も何度もしつこく念入りに確認する姿は、あなたに見せてあげたかったくらいです」

 チャンスゥが蓮の顔色を伺うように横を向くと、蓮は窓にもたれかかり、長い息を吐いていた。
 蓮は身体の底から熱いものを感じていた。嬉しさ、照れといった感情が綯い交ぜになり、身体のうちを焦がすような熱となって、全身をほてらせていた。
蓮は、身体から湧き上がる熱に身をゆだねながら、ぼうっとした顔をチャンスゥに向ける。

「そういえばアフロディにも教えたよね?」

 その言葉にアフロディははっとした顔で毛布を掴んで固まる。だが起き上がると怪しいと思わったのか、起き上がらずに耳をそばだてていた。

「アフロディも彼ら同様、わたしに泣きついてきたのです。ただ南雲や涼野と一緒に見るのは難しそうなので、彼らより後で一人で見守ることにしました。アフロディは、少しでも目を離すとあなたが3日は寝込むような料理を作ろうとするので苦労しました」

 チャンスゥが淡々と言って、蓮は苦笑する。アフロディは顔をしかめながら、毛布を握っていた。

「あなたに倒れられては困りますからね……アフロディからすると一生懸命なのでしょうが、こちらが逆に大変でした」
「おつかれさま。アフロディたちが作ったものは全部うまかった。今日はおいしいものだらけで幸せだった」

 蓮がチャンスゥをねぎらって、チャンスゥが安堵の笑みを浮かべた。彼らの後ろでは、アフロディが満足げな顔で目を閉じている。

「でも不思議だなぁ」

 ポツリと蓮が呟き、アフロディは目を開ける。

「どうしてあんなにおいしかったのかな」
「それは彼らが、あなたを大切に思って作ったからでしょう。誰かを大切に思いながら作られた料理は、必ず美味しいはずです」

 チャンスゥが蓮を諭すように語りかけ、蓮の黒い瞳が揺れる。振り向き、机の上に置かれたアフロディたちのお菓子を双眸を緩めて見つめる。

「あなたにはあなたを大切に思ってくれる仲間がいる。素晴らしいことですね」

 その言葉を聞くと、蓮はがっくりと頭を垂れる。

「……ああ。これを気づかせるための作戦だったのか」

 敗北感に満ちた声で悔しそうに言って、チャンスゥは勝ち誇った笑みを向け、得意げに語る。

「ふふ。南雲や涼野が、あなたのことをどう思っているのか気になりましてね。あなたとチナンに本日は入れ替わっていただきました。偶然とは言え、聞けて嬉しいでしょう?」
「じゃあ、朝言ってた“完全なる戦術”は……」
「南雲と涼野があなたへの本音を出し、そして手作りのお菓子を渡すと言うわたしが作り上げた完全な2月14日のストーリーです」
「パーフェクト・ストーリーかな。でもずいぶん分の悪い賭けだ」

 蓮がにっと口元をゆがめ、チャンスゥはふふと小さく笑い声を上げた。

「話が出なかったら、わたしが話をその方向へ持っていくつもりだったのですが、その必要はなかったようですね」
「筋書き通りでも、今日は我が人生で最高なバレンタインだったよ。ありがとう」

 周りを明るくする笑みを見せながら、蓮は礼を言った。
 脚本家のチャンスゥと、そこに寝ているアフロディ、南雲と涼野に。たぬき寝入り中のアフロディは口角を持ち上げると、毛布を頭の上まで引っ張って潜り込んでしまった。チャンスゥは静かに笑うと、蓮の肩にそっと手を置く。

「ですがわたしがしたのはここまで。続きの脚本はあなた自身で描くのです」
「あ、そっか。アフロディと晴矢と風介に渡さないと」

 蓮は毛布に潜ったアフロディを見て、

「あの三人は僕の——」

 口を閉じた。静かに首を振り、楽しそうに、

「いや。彼らはエルフ、かな」



 そして2月15日未明——蓮は赤い包装紙で包んだ箱を片手に持ちながら、ある人物の部屋の前に立っていた。ドアノブを掴むと、音をできるだけ立てないよう注意しながら、そっとドアを開けて部屋の中に入る。
 
 中は一面の黒だったが、だんだん目が暗順応し、中の様子がわかってくる。床には、乱暴にユニフォームとハーフパンツが脱ぎ散らかされ、薄闇の中にぼんやりと黒く浮かび上がっていた。ユニフォームを丁寧に扱う蓮はすぐに近づいてしゃがむと、箱を傍らに下ろし、ハーフパンツを丁寧にたたんで床に置く。続いて、ユニフォームを拾うと、ひっくり返す。エース番号である『10』の文字。これは試合上のエース番号ではなく、“ユニフォームを雑に扱うエース番号”にしか思えない。それなら納得できる。蓮はユニフォームもきちんと折りたたむと、ハーフパンツの上に重ねて置いてやった。
 
 下ろした箱を掴みなおすと、そっとベッドへと近づく。目的の人物——南雲は、ジャージ姿のまま、大の字になって眠っていた。毛布は蹴飛ばされ、足元でぐちゃぐちゃになっている。呼吸をするたびに、腹が動いている。
 蓮は抜き足差し足で南雲に近づくと、枕元にそっと箱を置いた。それから、帰ろうと南雲に背を向けた途端、右手首が鷲づかみにされた。
 反射的に身を震わせ、蓮はおそるおそる振り向くと、蓮の手首を掴み、ニタニタと得意げに笑う南雲の顔があった。暗闇の中で、金色の目が楽しげに輝いている。

「よい子は寝てないとプレゼントもらえないんだよ?」

 からかう調子で蓮が言うと、南雲は蓮の手首から手を離し、上半身を起こしながら、へっと鼻を鳴らす。

「あいにくだけど、オレはいい子じゃねえ。けどプレゼントは欲しいな」
「ちぇ、起きてたのか」

 悔しそうな顔で蓮が唇を尖らせると、南雲は挑発するような顔で蓮を見上げた。

「ったく、人が寝てるときに渡そうなんて趣味が悪いぜ」

 蓮はむっつりと押し黙ったが、南雲の枕元に置いた箱を取り上げると、そのまま南雲に差し出した。南雲は歯を見せて明るく笑うと、ぶんどるように蓮の手から箱を奪う。

「言われなくてももらってやるぜ」

 南雲はそのまま包み紙をはがしにかかり、蓮はそれをぼうっと眺めていた。だが、しばらくして南雲を呼びかける。

「ねー晴矢」
「あん?」
「……あのたまごポーロ、人生で食べた中で一番おいしかった」

 独り言のようにぼそっと零し、蓮は遠慮がちに下を向いた。
 しばらくして顔を上げると、南雲が底意地の悪い笑みを浮かべて自分を見ていることに気づき、ついむきになって蓮は怒鳴る。

「って、こら! なにまじまじと見つめてんだよ! だいたい晴矢はいつも……」

 その後、蓮が調子に乗って色々言い募る中、南雲は包み紙を破り終えた。中には茶色い箱があり、名詞ほどの大きさのカードがセロテープで止められていた。南雲はそれを雑に剥がすと、自分の前に持ってきた。
 カードには綺麗な筆記体で、『To  elf From elf』の文字。

「ん? To elf From elf? あんだこれ?」

 いぶかしむ南雲の声を聞きながら、蓮は内心ほくそ笑んだ。
 自分が仕掛けたなぞなぞ、きっと晴矢たちはわからないだろう。
 “elf”は英語でいたずらっ子の意味。普段自分に散々いたずらをしかける悪ガキと言う軽い皮肉と、自分を感動させる可愛い“いたずら”をしたと言う感謝を込めての『To elf(エルフへ)』。最後の『From elf』は複雑だ。一個だけ激辛のお菓子を入れたと言ういたずらの警告と、こっちもキミたちを感動させるような“いたずら”をするんだというダブルの意味がある。恐らく、誰もわからないだろう。蓮は心の中で、アフロディたちを思い浮かべながら呟いた。

(いたずらなお菓子を作ったキミたちに、とっておきのいたずらを返すよ)


〜終り〜
今回は完全にアフロディのターンでしたねww蓮がまた英語をのたまってますが、あれはアフロディーテ祷歌の一文から引用してきました。上に参考にしたサイト様があるので、興味のある方はどうぞw

追記
ようやく完成、そして意味不明デスヨねww
最後のは、蓮が自分を唸らせる料理を作ったことを、わざと「いたずら」と表現しています。
だからお前らを唸らせてやる料理を作る! と宣言しているのが「from elf」の意味です♪

もうすぐ本編も進めますが、話題がかなり暗いです。蓮の過去話、ですが本当に暗くなることをお約束します;;

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜参照が5000突破です ( No.299 )
日時: 2011/02/26 14:22
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 早くバレンタイン終わらせなきゃ^^;

>>ふぁいんさん
蓮と涼野は、一応かなり私が力を入れている組み合わせですからねww鼻血が広がったなんてなんと言う褒め言葉でしょう、って感じですww

気づいたら5000突破していましたね^^;
受験でローペースな上、本編じゃなくて短編ばかり連ねているのに、読んでくださる方が多くて恐縮です。

また来てくださいねbコメント有難うございました^^

>>ミティアさん
ありがとうございますwwこの調子でしずくは、参照が一万に届くまで書き続けますww

ミティアさんはバーン派ですね♪なんかろくなイベントがないのに、アフロディはなんかムード盛り上げちゃってるし。
3TOP→蓮なんて自分得すぎるバレンタインを繰り広げていますが、もう少しで終わるのでww

コメント有難うございました^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜参照が5000突破です ( No.300 )
日時: 2011/02/26 14:26
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

しずく
風丸か!!よし!
あ!300突破!!おめでとォおおおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉ!!!!!
                      / : 二ニ、ヽ}/ : : : .\:\\
                / : : : : : : : : 7 : : : : : : : :ヽ ヽヽ
              / : : : : : : ィ :/ l : l    、. :ヽ : ヽ
               / : /: // /  |: l : : : : : :ヽ: : l: .l l
               l/: .ィ: ./ / 、   l : l : : : : : : : l: :l: .l l
            _ ⊥∠/ :/ :厶ニ\ ヽ: ヽ : : : : : : l: |: .l l
           /       V: :Λ |:::l:]ヽ ヽ: ヽ: : : : : .l l : |: l
            /        l : l ´' ` ´   } \: \: : : /: Λ :\
            l       l ハ        __ ,\: \/: /: :ヽ: : \ __
       __ - :|      | |>ヘ   ‾     \/: Λ: : : :\ー- 二 _ー - 、
     /: : . ィ‾|         ハ V:/ >、        , ィ/: :/ : ヽ、: : : ` ー- 、 \:ヽ : \
    /: / : / l: : : .l      Λ:V:/.rニL ー- ' ´L:/: :Λ : : ヽ`ー- _ : : : ヽ  ヽ ヽ: :ヽ
    /: イ: : l |: : : :ハ        |⊥Ll/:`ー、\ /,ニ/: :/: .ト、\:`ー 、   ヽ: : : ヽ } : l : :|
    l: l | : .レ┴、: : .ヘ      ト  >、:.:.:.ヽ V/.:.厶イL: |  \\ : :ヽ   l : : |: .l|: j/
   └ヘl /     |      l / : ヽ:.:.:.:└イ .:.:.:. /:\ ` ー 」._ノ: l: .|   | : l l: .|└'´
   __/      ノ、      Λ : : : :ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.: /: : : :\   Λ:/: /  /: //: /
   l    、     l ヽ _ - / ヽ: : : : ヽ:.:.:.:.:.:.: /: : : : : : :\l : l: :/  /: 厶/
  /     ヽ    \   / /  \: : :ヽ:.:.:.:. / : : : : : : : /7: l Y  └ '


Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜参照が5000突破です ( No.301 )
日時: 2011/02/26 14:33
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

>>マリン
気づいたら300言ってたww
こんなに人気のない小説にも奇跡ってあるんだねぇって、一人でファンタグレープ飲んでつくづく思ったぜww

うわぁ、やみまるさんだぁ。も、そんな顔で指差されたらドキ☆ってする。マリンはAAが本当に芸術的ですごいなぁ^^

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜参照が5000突破です ( No.302 )
日時: 2011/02/26 14:37
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

しずく
おめでとう!!
人気あるからだよ!
あたしだけじゃないよ!
あたしのAAなんか凄くないってww
キモく見えないよね??
キモかったら言って!すぐ消すから;;;

                      , −‐、_
                    /// /⌒ヽ、
              ,厶‐=≠ニ、 、 \
          , -—<// /     \\ヽi
           /   __`Y  {    \i、i
.          /  /   _」   '.   ヘ   ヽヽ
       ,′/ /  八 〈 V   ヽ い i
       ! /, / / /_〉. 、 、   ,  リ、
        i// // ィ汽云ミヽ 、 丶   ! ! ト、丶
       !/ / ! 八 Vソ   \\ \ | || 八 \
       V ∧ ! ! ''    l} 丶   l , ,'´ '   !      しずくの水着姿…楽しみだな♪
         乂 ヘ  !〉、   ャ  ァ `ア/ /〔 丿 丿
            `ヽ い.个 .   ‾   ィ7/ /ノ/ /
              乂、 マ__≧r- < // /〉‐=≦_
           /^ ミ、/ V    幺_//二二二ヽ
         _r'⌒ 廴 / ヘ ! _ ニ=‐  ‾‾`  ゛i
       ,∠ニ=一zニ=‐ ¨             ノ
      Y   >‘´        __  --—=:チ┐
      八r‐      , -‐  ‾  ___ -‐一ァ 〉、ノ
       ノ ! l l !__∠ニ二三 ‾   _ 二てィ_ノノ!
        `┴t‐ヘ_!¬…─-  二 _ — _`Tf┘
.         \\ !              —┬ ノ
              `ー〉               //
                 !               ,'´
             ;               ;
                j    .:i       i

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜参照が5000突破です ( No.303 )
日時: 2011/02/26 14:53
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: みぃ

>>マリン
面白いからおっけーww
水着はまだまだ先だよb海に言ったら、凡☆殺☆ポーズをとるよww

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜参照が5000突破です ( No.304 )
日時: 2011/02/26 14:59
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

しずく
これがキモくないとは…!!!!!!!!!!!!!!!!!
すごすぎる!!!
何か「殺」が怖すぐる…w
                             ,、,、,||
                            ;'`,゛、.||'、
                            '; 、' /´;`'.,
                             ´' .; ' ; '、'.
                               '; 、 ' ,'
        _ ,, ‐----‐ ,,___          .  '; 、 ' ,'
       /|    ,,-: :´: : :--‐、`ヽ          '.,´; '
        / |  //|`\/\|ヽ: |`          l !j
     /  | /: /|ヾ|    ○ \\         /ルゝ
      /  ∨: : : | ○     、、 ヽ:`.-.、
     ` - ,|: :ヽN、、、 _ ,,.-:´ `、  )) ヽ:ヽ
        |: : \\  {: : : : : : :j /ミ}\|: '-.、
        / : : : |: :|  ヽ: : : :///: : \ニフ:ヽ_
      /:/::/:と|: :|` ーt─ イヾ/:|\: :|~ヽ/: :ト
     |: :|{: : {:/ヽ|: :|`\| `\| `、:|  ー,`i \/
     j: :jヾ::ヽ._|: :|\ \    ~`-<: : >
     |: 「 〈 r-'::r─'`L`∠___ノ◎ソ
    /:_:フ 'ー'ー`    /◎_◎_◎/
               `7-,──-t´|
                し′   'ー'

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜参照が5000突破です ( No.305 )
日時: 2011/02/26 17:56
名前: ふぁいん (ID: Ua50T30Q)

アフロディの料理下手設定おもしろいです!なんか蓮君とアフロディがいい感じになってていいです!と、いうかアフロディ外で何やってんだと突っ込みたくなります!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜参照が5000突破です ( No.306 )
日時: 2011/02/28 16:15
名前: ふぁいん (ID: ZgrHCz15)

更新待ってました!今回もネ申!チャンスゥすごく頭いいですね。今回のバレンタインは蓮君×てるみんが最高だったと思います。二人とも可愛い!蓮君に向かって倒れこんでくるとか、手当てしてあげるなどなど蓮君が優しいし、妄想が止まりませんでした。後、会話の内容が不思議です!!!アフディーテ様と呼んだところも激しく気になりました。後、ほんぺんすっごく楽しみにしているので、頑張ってください!応援しています!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜参照が5000突破♪ ( No.307 )
日時: 2011/02/28 17:43
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 今日、実は更新してます。>>298を見てください♪

>>まりん
いつも有難う♪まりんが来てくれて嬉しいv
いやうちの友達にもっと恐ろしいのがいるから、慣れてるww
さつの字怖かった? イナズマイレブンの必殺技並みの威力があったら嬉しいなぁ。しずくのプリマドンナてきなww(無理かww)

>>ふぁいんさん
いつもいつも有難うございますv神は紙の空耳ですねv
紙のようにうっすぺらな文才の持ち主ですb

アフロディは蓮の様子を見に外へ行ったら、締め出されたんです。ちなみに宿の入り口は夜は閉められている設定になっています;;
そのせいで凍えかけて……と言うなんとも私得な話になってますww
アフロディが外から蓮の部屋に入り、倒れるまでの描写は、相当気合入れましたww(3章の涼野と蓮の対話以降の本気ww)
アフロディーテ様、と呼びかけたのは冗談です。
英語だとかっこいいって言う、作者の趣味がよく出ていますwwなんか知的に見えません?

本編もうすぐ再開します。ちょっとシリアスになりますが……頑張ります♪

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜番外終了♪ ( No.308 )
日時: 2011/03/01 12:55
名前: みー (ID: ZgrHCz15)

お初!とても面白かったよ。頑張れ!

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜番外終了♪ ( No.309 )
日時: 2011/03/02 08:01
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)

 春奈の後をつけていた蓮だが、途中で春奈に気づかれたらしく、上手いこと逃げられてしまった。かと言って、雷門の仲間の元に戻ろうとしたが、どの場所に案内されたのか全くわからない。蓮は一人でグラウンドをとぼとぼと歩き、石造りの屋根をぼんやりと眺めていると、

「木暮くん! わたしの話を聞いて!」

 春奈の悲鳴のような抗議する声が聞こえ、続けて木暮が怒鳴り返す声が聞こえた。そのままひと悶着が起きているのか、春奈と木暮が互いに罵り合う声がする。声は、塀の裏側、つまり校舎の外から聞こえる。蓮は校門を潜り抜けると、すぐに塀よりの竹林の中に、春奈と木暮を発見した。春奈が蓮に背を向ける形で立ち、その向かいに腕を組んで嫌そうな顔で春奈を見つめる木暮の姿。

「さっきから、おまえはうるさいんだよ! おまえは親に置き去りにされたのか?」

 木暮がむっとしながら春奈に尋ね、春奈は首を振り、必死に木暮に語りかける。蓮は、ゆっくりと春奈と木暮に歩み寄る。

「違うわ。でも、わたしの親も飛行機事故で死んだのよ。木暮くんと同じで、親はいないの、だから……」

 それ以上、春奈は言葉が出ないのか口を閉じてしまった。
木暮は春奈の言葉尻を捕らえ、反論してきた。

「事故? それなら、違うじゃんか!」

 言葉が続かず、答えに窮する春奈の横に蓮がやってきた。何か言いたげな表情で、黒い瞳をだまって木暮に向ける。木暮は警戒するように目を細め、蓮を睨みつけた。しかし、蓮は何もせず何も語らず木暮を見つめ続ける。風が吹き、蓮の黒い前髪と春奈の青いボブカットが静かに揺れる。そうやって、二人は長いこと木暮と対峙していた。

「……白鳥先輩?」

 蓮の考えが読み取れない春奈は、蓮の顔を覗き込みながら尋ねるように声をかけた。いつもなら怒ったり笑ったりと、表情を映すはずの黒い瞳。今日は何も訴えかけては来ない。どうやら蓮自身が感情を押し殺しているようだ。まるで感情を木暮に悟られたくないかのように。

「おまえも何のようだよ!」

 しびれを切らした木暮が声を荒げて尋ね、蓮は静かに問う。

「聞いたよ。キミ、親に置き去りにされたんだって?」
「それがなんだよ」
「キミは馬鹿だ。どうして親への恨みの八つ当たりを周りの人にするんだ」

 蓮が木暮をあざ笑うように言って、木暮は反論できずに俯き、春奈は目を見開いた。どかどかと春奈は蓮に近づき、胸倉を掴みそうな勢いで蓮に食って掛かる。

「先輩! そういう言い方はないですよ!」

 怒りで鼻息を荒くする春奈と対照的に蓮は平静だった。春奈に怒鳴られても顔色一つ変えず、ただ怒鳴られるがままになっている。それから、春奈は木暮の境遇がどんなに不憫であるか述べ、それから蓮の無神経さをひたすらなじった。蓮は無表情のまま、口をつぐんでいた。ただ、先輩はお父さんとお母さんが死んでいないから、木暮くんの気持ちがわからないんですよ! と、春奈が勢いのまま言ったとき、蓮の瞳がわずかに見開かれた。           そのことに気づいた春奈は、言葉を失った。今の言葉を言った直後から、明らかに蓮の表情は変っていた。無表情だった顔に動揺の色が見えている。

「おまえにオレの気持ちがわかるか」
「……わかるよ。悲しい、かな」

 木暮がポツリと呟き、蓮が悲しげに零した。
 春奈と木暮が同時に蓮を見るが、蓮は沈痛な面持ちで自分の過去を思い出すように話を続ける。

「親に置き去りにされるってさ、悲しいよね。置き去りにされたら、言いようのない孤独と不安感だけが身を支配して、泣く事しかできなかった」
「え、おまえも親に置き去りにされたのか?」

 蓮は首を振る。そして自分に言い聞かせるように言った。

「木暮くんとは違うんだ。でも置き去りにされたのは事実。遠い昔、たった一人で置き去りにされた」

 春奈は暗い表情で話し続ける蓮を見て、尋ねるか迷ったが、思い切って聞いてみることにした。

「白鳥先輩、何があったんです?」

 蓮は言いたくないかのように視線を下に向けた。話すか話すまいか迷っているのか、時折視線をちらちらと春奈に向けている。
春奈は、蓮の過去に何かあったことをここまでの態度で悟っていた。しかし、暗い過去と言うものはなかなか話したくないものだ。自分だって、つらい思い出を思い出してしまうから、話したくない気持ちはわかる。

「……へんなこと聞いてすいません。実はわたし、おとうさんとおかあさんが飛行機事故で死んでいるんです」

 蓮が話しやすいように、と春奈は自分の過去を蓮に打ち明けた。蓮は驚いたように目を見開き、話して、と目で合図して来る。春奈は、淡々と語り続ける。

「“音無”は今の引き取ってくれた両親の苗字なんです。その頃、事故で親が死んだことは頭でわかっていても、当時のわたしは、頭の中で裏切られたような気持ちになっていました。お兄ちゃんがいなかったら、木暮くんのようになっていたと思うんです」

 そこまで言うと、蓮は悲しそうな顔をした。何か言おうとしているのか、口が陸に上がった魚のようにパクパクと動いている。

「……僕は」

 そこまで言うと、蓮は言葉を切った。木暮のほうへとゆっくり歩み寄り、木暮から少し離れた場所で立ち止まる。そして、重々しい口を開く。

「僕の生みの両親は、自分で海に身を投げたんだ」

 長いため息と共にゆっくりと言葉を吐き出した。

〜つづく〜
はい、久々の本編なのに暗くて申し訳ありません;;
これから一気に5章へ加速しますので、頑張りますb

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜番外終了♪ ( No.310 )
日時: 2011/03/01 19:19
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

しずく
ちょくちょくしか来れなくてゴメンッ!!
また絵文字作るからねッッ!!
うーん…何作ろうか……w
                                 ______
                          .. . :´, . -‐- : : : `: .、
                           /. :_/. : : : : : : `丶: : 丶、
                        _/ :/. : ;、: : : : : : : : : : .\‐-ヽ__
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Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜久々本編☆ ( No.311 )
日時: 2011/03/01 19:21
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)

>>みーさん
お初です^^

わあ、とっても嬉しいお言葉です><

応援有難うございます♪はい、これからも頑張っていきますので、よろしくお願いいたします♪

コメントてんくすでした☆

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜久々本編☆ ( No.312 )
日時: 2011/03/01 19:28
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: アンジェロもかわいい。オルフェウスの短編も書きたくなる罠。

>>マリン
来てくれただけで嬉しいよww
顔文字か〜何がいいかな……アンジェロ(オルフェウスのMF)とかw

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜久々本編☆ ( No.313 )
日時: 2011/03/04 15:43
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)

「え。じ、じぶんで……?」
「ま、まじかよ」

 蓮の壮絶な過去を聞いた春奈と木暮は、驚愕と戸惑いでそれ以上のことは言えなかった。木暮は黙って俯き、春奈は言葉を選ぶようにえっとを何度も繰り返している。蓮は急にこんなこと言ってごめん、と申し訳なさそうに謝った。

「話は続けない方がいいかな」
「先輩、つらいとは思いますけど、話してください」

 自虐的な笑みを浮かべ話をやめようとする蓮に、春奈は話を続けるよう懇願する。すると、蓮は覚悟を決めたような顔になり、回想するように竹林へと目を向けながら、淡々と切り出した。

「今の両親から聞いた話だから、ほとんど覚えていないんだけど」

 春奈と木暮が、話しを聞こうと身を乗り出す。

「元々僕の生みの両親は仕事運に恵まれない人で、僕を生んだときから既に生活は貧しかった。でも、しばらくはなんとか貧しいながらも生活はやっていけた。けれどある時……金融会社の一つとトラブルを起こして、両親は幼い僕を連れて、夜逃げ同然に家を飛び出した」

 記憶喪失になっても、蓮は両親が海に身を投げる当日のことはうっすらとだが覚えている。
 当日、両親はお金がないはずなのに、ファミレスに連れていってくれた。そして、好きなものを何でも食べていいと言っていたことを覚えている。元々物欲があまりない自分は困った。どうして、と尋ねると、両親は寂しげに笑いながら、自分の頭を撫でた。その、寂しげな笑みがいまだに脳裏にこびりついて離れない。大きくなって、『最後の晩餐』と言う言葉を知った。両親の一連の言葉は、幼い自分が、この世に未練を残さないために、と言う彼らなりの優しさだったと思う。この時までは、両親は自分をまき沿いにするつもりだったのだ。

「それで海に……」

 悲しげに春奈が零した。そして両手で顔を覆い、さめざめと泣き始める。

「先輩……わたし、先輩のこと何も知らずにあんなことをいってごめんなさい」

 消え入りそうな涙声で春奈が頭を下げ、蓮は彼女の肩に両手を置いて、気にしてないよとにっこりと笑いかける。
 木暮は考え込むように下を向いていたが顔を上げ、話に口を挟む。

「でも、普通そういうやつって『むりなんとか』って、小さい子供もよく巻き込まれてるだろ」

 蓮は首を振り、再度自虐的に笑った。

「ところが、僕の生みの両親は何を思ったのか……僕を近くの店に置き去りにして、二人だけで海に飛び込んだ。その時ね『すぐに帰ってくるから』って言ってたんだ。でも、母さんはさ、最後に僕を抱きしめてこう言ってたかな。『蓮、せめてあなただけは幸せになって』って。考えるとおかしいことだらけだ」

 両親の気が変わった理由は今もわからない。途中まで、母は自分を抱いたまま、父と共に崖下にある海を見つめていた。海は早くおいでとでも言うように、崖下で音を立てていた。
 両親は長いこと海を見つめていたが、急に海に背を向け、しばし歩いた。近くの土産物屋で自分を下ろした。交互に自分を抱きしめ、すぐに帰ってくるから待っているのよ、と母は言って幼い自分は、無邪気に頷いた。そして大きな背中はどんどん遠くなり——二度と帰ってくることはなかった。

 蓮は難しい顔になって恨みがましく呟いた。そして、苦痛を耐えるような顔になり、ぐっと唇をかむ。

「記憶喪失になっても、両親が自分から遠ざかっていくところまでは覚えているんだ。忘れられるのなら、その場面も忘れたかった」

 感情を抑えた声で蓮は言ったが、無意識に作った拳は震えてた。声も心なしか震えていた。その様子を、木暮は複雑な顔で眺めていた。
 今まで泣いていた春奈は、袖で涙を拭うと、控えめに蓮に話しかける。

「先輩は」

 話しかけて、後悔するようにはっとした表情になった。しかし蓮をしっかりと見据え、話を続ける。

「先輩は自分だけが生き残ったこと、どう思っているんですか?」

 春奈の声に迷いはなかった。
 蓮は静かに首を振り、複雑な顔で木暮と春奈を交互に見やる。

「わからない。あの時、親と一緒に海の藻屑(もくず)になればよかったのか、生きててよかったのか……答えはまだ見つからない。でも、生きててよかったと思いたい。だって、雷門のみんなに会えたから。だからさ、今はそう断言できる」

 初めは沈んだ声音だったものの、最後はだんだん明るい調子になった。
 生きているから、雷門サッカー部の仲間に会えた。風介に会えた。はっきりとはわからないが、仲間と会えた嬉しさに感謝しながら、蓮は自信を持って断言する。その言葉を聞いた春奈が安心したように微笑み、木暮は悲しげに目を伏せた。

「……お前はオレと違って、幸せなのか」

 木暮が羨むような嫉妬するような声で呟き、蓮はすぐに否定した。

「そんなことないよ。木暮くんだって、キミを大切に思ってくれる人がいるだろ?」

 言って、蓮は春奈に目配せする。
 春奈は、はっとしたような顔つきになり、木暮に詰め寄る。

「ねえ、木暮くん。悔しくないの?」
「え?」

 予想外の質問をされたのか、木暮は瞬きをする。春奈は早口でまくし立てた。

「毎日毎日、やりたくもない修行をやらされるのよ! 悔しくないの!?」
「た、確かにフィールドにも立たせてもらえないし、悔しいけどな」

 春奈の勢いに気おされたのか、木暮はとりあえずと言った感じに春奈に話をあわせる。すると、春奈は満足そうに頷いて、溌剌(はつらつ)と宣言した。

「じゃあ、わたしと白鳥先輩と一緒に特訓するのよ!」
「勝手に決めるな!」
「ちょ、なんで僕まで数に入ってるの?」
「いいの、いいの! 人数は多いほうがいいでしょ?」

 何故か自分も含まれていることに驚いた蓮が、木暮と共に抗議の声を上げる。しかし、春奈はどこふく風で、先輩である蓮に敬語も使わずに軽くいなした。二人の意見を無視して勝手に話を進める。
以前、鬼道が春奈は一度言い出したら聞かないのだ、と苦々しく呟いていたのを蓮は思い出し、心内で苦笑いをした。

「木暮くん、ポジションは?」
「し、しらねぇよ。オレ、ベンチ(控え)だからな」

 木暮の話によると、仲間にいたずらをする罰として、自分自身、試合に出せてもらえないのだという。しかし話を進めると、過去には出させてもらっていたが、自分勝手なプレーをするため、あっけなくベンチ入りとなったらしい。
 因果応報とは彼のためにある言葉だろうな……と蓮は口に出さずに思いながらも、どこのポジションとして練習させるか悩む春奈に」助言をする。

「修行で鍛えられた身軽さを見ると、DFに向いていると思うよ」
「あ、そうね。DFならいのじゃないかしら!」

 春奈は手を叩いて喜び、木暮が憤る。

「二人で勝手に決めんな!」
「まあまあ」

 蓮は木暮をなだめるように優しくにっこりと笑いかけた。周りを明るくする、笑み。それを見た木暮は少し目を見開いた。

「ね、こんなふうにキミを気にしている人はいるんだよ。春奈さんみたいな人。そのことに気づけないキミは、馬鹿だって言ったんだよ」
「あ、さっきの馬鹿ってそういう意味だったんですか」

 誤解が解けたのか春奈が神妙な顔付きで頷く。
 木暮は唇を尖らせたが、その顔に怒りや警戒の色は泣く、もうすっかり春奈や蓮と打ち解けたようすだった。

「うるせーよお前も忘れんな。ところで、一つ聞いていいか? お前はどうやって立ち直ったんだ?」
「ね、木暮くん。キミはサッカーって好きかな?」

 蓮は優しい顔で木暮に尋ねる。初めて自分から人に過去を話したが、心は自然と落ち着き始めた。

「罰としてやらされるから、微妙だな」
「僕はすごく好きだ」

 言いながら、蓮はリフティングの真似事をする。ボールがある“つもり”で、両膝を交互に動かした。その間、蓮は楽しそうに笑っていた。しばらくすると足を下ろして、足に履いた雷門のスパイクを見つめながら、感慨深げに語り始めた。

「立ち直れたのも、サッカーのおかげなんだ。生みの両親が死んでから、連れて行かれた施設で、サッカーが得意な子たちと仲良くなってさ、その二人のおかげで立ち直れたんだ。ボールを蹴るのに夢中になると、だんだん悲しみが和らいでいった。それに、その二人も、僕を明るく励ましてくれたおかげたんだ。サッカーとその二人のおかげで、両親がいなくても、前に進める勇気が生まれてきたんだ」

 サッカーとの思い出を話す蓮は、今までと違いとても嬉々とした表情で、力強く、明るい声で話してくれた。話を聞く春奈や木暮も穏やかな表情で聞いていた。
 でも、と蓮はきゅうにしおらしくなり、悲しげに目を伏せ、木暮と春奈は、心配そうに蓮を見つめた。

「ど、どうしたんだよ」
「でも、その二人の顔も記憶と共に忘れてしまった。僕を立ちなおさせてくれた命の恩人で、とても仲のよい二人だったのに。二人は、今、どこで何をしているんだろう」

 サッカーを始めたきっかけは人それぞれだ。
 蓮はボールを追いかけていると、ふっと自分がサッカーを始めるきっかけは何だったのだろう、と思うことが小学生の頃からよくあった。
 周りの子は父の影響とかテレビでと言うが、蓮の場合仲がいい友達であることは確かだった。それは覚えている。が、その彼らの顔と名前を全く思い出せない。記憶喪失になったのは小学校3年生。
 その頃には、サッカーを始めていたから、始めたのはもっと前だ。そういえば、ぶっとんでいる記憶のほとんどは、施設で過ごした頃の記憶。意識が回復した同時に別の学校に転入させられたため、友達関係に困ることはなかった。
 過ごした施設に彼らはいたのか。そういえば妙に懐かしい雰囲気がする涼野は、その仲がよかった人間の一人なのかもしれない。


 頬に冷たい感覚がし、涼野はぱっと目を開けた。見ると、片手にコンビニ袋を提げた南雲が、自分の頬にアイスクリームを当てているのが目に飛び込んできた。
 
 涼野と南雲は清水寺に来ていた。今いるのは、かの有名な清水の舞台。遠くには緑の山が見え、その裾野に張り付くように京都の町が広がる。
 辺りには老若男女問わず様々な人間がいるが、私服の中学生二人はその中から見るとかなり浮いているように見える。

「ああ、晴矢か」
「なにぼうっとしてんだよ。凍てつく闇はどうした? ガゼルさんよぉ」

 涼野は不機嫌そうに南雲の名を呼びながらアイスをぶんどり、嫌味を言う南雲をきっと睨みつけながら、手すりに背を預ける。南雲は、退屈そうに手すりに両肘をつき、手の上に頬を乗せている。

「蓮がおひさま園に来たのは、この位の時期だったと思っていただけだ」

 むっとしながら涼野が答えると、南雲は変らずに頬杖をつきながらも、話に乗ってきた。

「覚えてるぜ。あいつ、父さんの元に来たときはずっと泣いていたよな」
「両親は蓮を置き去りにして、海に身を投げたのだ。あの頃の蓮には、何もわからなかったのだろう」

 涼野は連を擁護するように言った。

 おひさま園に長いこといた涼野はさまざまな子供を見てきた。
 おひさま園は孤児を保護する目的で立てられたものだから、当然ここに来る子供たちは、何らかの理由で親を失った。事故、病気……上げればきりがないが、初めは誰も彼も慣れずに不安そうな目をしているものだ。
 もちろん泣いているものもいたが、蓮はかなり特殊だった。まず3日間ずっと泣き通し。どっからそんなに涙が出ているのだと思うくらい、父と母の名前を呼んで泣いていた。幼い涼野は、泣き虫なこの少年が何故か気になっていた。

「それから泣き止むと、ずっと木の下で塞ぎこんでたな」

 南雲が哀れむように呟き、涼野は同調する。

「ああ。魂が抜かれたような生気のない顔色で、焦点の定まらない目で、ぼんやりと地面を見ていたのは今も忘れられない」

 それから親がいないことを悟ったのか、ずっと一人で幼い蓮は外にいた。子供でもよじ登れる程の木の下で体育座りになって塞ぎこんでいた。
 肌から血の気はうせ、土色になっていたし、瞳は光を宿していなかった。生きる気力を失った、焦点が定まらないぼんやりとした瞳。誰かが声をかけても反応しない、生きる人形と化していた。
 当時の蓮は、今の明るい表情を見せる蓮からは想像がつかない程ひどく落ち込んでいたのだ。

「んで、お前は何を思ったのか、蓮が塞ぎこんでいるのを、蓮が寄りかかる木に登ってみていて……あいつの上に落ちた」

 南雲がからかうように言って、涼野は無言で俯いた。
 
 幼い涼野は蓮が気になり、蓮が落ち込んでいる様子を、太い枝に座って見下ろしていた。すぐ下では、幼い蓮がずっと地面を見ている。時々声はかけたが反応はない。何をしようとしたのか幼い涼野は、枝の上に立ち——うっかり足を滑らせて、木から落下した。
 さほど高さはなかったから、もしそのまま落ちても怪我はなかっただろう。しかし、ちょうど幼い涼野の落下点にいた幼い蓮は、哀れにも下敷きに。砂埃が軽く立った。小さく呻き、大の字でうつ伏せになった。ちなみに落下した幼い涼野は、幼い蓮の背中の上で正座をする体制で着地していた。

『だいじょうぶか?』

 幼い涼野は正座をしたまま、幼い蓮に話しかけた。幼い蓮は瞳を潤ませながら、顔だけを動かして振り向き、幼い涼野に向かって頷いた。始めてみる、人間らしい顔付き。
 幼い涼野は蓮の背から立ち上がると、幼い蓮の前に回りこみ、手を差し出した。

『わたしはふうすけ。キミは?』
『れんだよ。ぼくは、れん』

 幼い蓮は差し出された手を掴み、ゆっくりと立ち上がった。

 今思うと、この出会いがすべての始まりだった。
 
「それからキミと私、蓮の3人で遊ぶようになったのだろう」

 少し話してからと言うもの、幼い蓮はしきりに幼い涼野に懐いてきた。やがて南雲も含めた三人で遊ぶようになり、よくサッカーをした。すると、幼い蓮は表情も日に日に明るくなった。笑顔が非常に愛嬌があるものだとこの頃からわかり始めたのもこの頃だったはずだ。

「んなの、昔の話じゃねぇか」
「そうだな」

 南雲が呟き、涼野は自嘲気味に笑った。
 ところで、と南雲が続ける。

「ところで、そろそろイプシロンが漫遊寺を攻める時間じゃねぇのか?」

〜つづく〜
蓮の過去話編はなんともいえません;;書いていて切ないです><
蓮とガゼル&バーンとの関係の源、みたいなものを書いてみたかったんです。

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜久々本編☆ ( No.314 )
日時: 2011/03/04 08:07
名前: ふぁいん (ID: ZgrHCz15)

ひゃあ・・・蓮君にはこんなつらい過去があったんですね(泣)それでも泣いてくれる音無さんや木暮君はいい仲間だと思います

Re: 〜試練の戦い〜【イナズマイレブン】久々本編☆ ( No.315 )
日時: 2011/03/04 17:12
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: カオスブレイクのカードが200円で売られていたww

>>ふぁいんさん
今回は非常に暗い話でした><
前々から設定はあったのですが、これでおひさまえんにいた、と言う過去設定をやっと明らかにできました。これで南雲と涼野、蓮は幼馴染確定です。

私もこんな仲間が欲しいですv
コメント有難うございました^^

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜久々本編☆ ( No.316 )
日時: 2011/03/05 12:47
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: ちなみに3月は蓮の誕生月。日にちは未定。下旬くらい

 南雲が何気なく呟いたのと同時刻。漫遊寺に黒い流星が近づいていた。いや、流星ではない。よく見ると、本来白い部分が黒く塗られ、黒い部分は赤く塗られたサッカーボール。かなりのスピードで落下しているために、空中で熱を帯び、黒い尾を引く姿が流星のように見えるのだ。黒い流星は狙いを違わず——漫遊寺の校舎の一角に激突した。くぐもった爆発音が辺りに響き渡り、煙がもうもうと立ち込める。グラウンドは騒然となり、漫遊寺の生徒はただ逃げることしかできなかった。

「な、なんだ?」

 その時、蓮は木暮や春奈と共に学校の裏手にある竹林の中にまだいた。何が起こったのかわからず、三人ともおろおろと不安げに辺りを見渡していたが、やがて思考が回復してきた蓮が脳内に思い浮かんだ嫌な仮説を唱える。

「まさかエイリア学園……!?」

 春奈と木暮がまさか、と笑い飛ばそうとする前に一人の少女が蓮たちの元に走りこんできた。
 フワフワとウェーブがかかったゆるやかな髪をポニーテールにした少女。赤茶色の瞳は芯のありそうな強い瞳で真面目そうな印象を与える。漫遊寺のユニフォームを着ているが、漫遊寺の生徒ではないらしい。木暮が始めて見たような顔つきで少女を見つめている。

「あなたたちが雷門中サッカー部の方たちですか?」

 焦った声音で尋ねられ、蓮と春奈はゆっくりと頷く。少女が慌しい仕草をしているのが蓮は気になったが、春奈は気にならないようだ。のんびりとした口調で、親しげに話しかける。

「あなたは霧隠 紅葉(きりがくれ もみじ)さんですね!」
「ど、どちらさま?」

 彼女を知っているらしい春奈と違い、わからない蓮は戸惑いながら少女を見つめた。すると紅葉は恭しく一礼し、丁寧な口調で自己紹介をする。

「我は戦国伊賀島(せんごくいがじま)中、霧隠才次の妹です」
「戦国伊賀島中ってフットボールフロンティアに出て、雷門中と戦った学校だよね」
「すっごい死闘だったんですよ」

 学校が爆発したことなどすっかり忘れた蓮と春奈は、数分ほど楽しい雑談に夢中に。
雷門VS戦国伊賀島島中との試合を、春奈は身振り手振りを交えて熱く語った。それを蓮は目を輝かせながら聞き入り、その脇では紅葉と木暮があっけに取られたように見ていたが、とうとうしびれを切らした紅葉が蓮と春奈の雑談に口を挟んだ。

「今は雑談をしている場合ではありません! エイリア学園が攻めてきたのです。さあ、早くフィールドへ参りましょう」

 漫遊寺のグラウンドへとかけて行く紅葉の背中を見て、蓮と春奈は現実に戻った。
 そうだ。おそらくだが、“イプシロン”がこの漫遊寺に攻めてきたのだろう。蓮は自身のうかつさを攻めながら振り向き、春奈と木暮にグラウンドへ行くよう声を投げかける。

「木暮くん、春奈さん、行こう!」

 木暮と春奈は同時に頷き、木暮は蓮の後を大急ぎで追いかけ始めた。蓮は意外とスピードがあるらしい。姿がもう校舎の中に入っていた。木暮とは距離が広がる一方である。その姿を見ながら、春奈は脳裏に一つの疑問を覚える。

(白鳥先輩、今日はどうして倒れていないのかしら?)

 そうエイリア学園が現れると決まって倒れていた蓮が何故、倒れないのかという疑問。

「さあ、勝負だ! イプシロン!」

 漫遊寺のグラウンドでは、既に雷門中サッカー部とイプシロンが睨み合っていた。
 イプシロンは11人。控えはいないらしい。宇宙服を思わせる赤い地に黒のラインが入ったユニフォーム。見ていて痛々しくなるのは気のせいだろうか。

「おや、お仲間も到着したようだな」

 蓮と春奈、木暮が走ってくるのを見ると一際背の高い男——イプシロンのキャプテン、デザームが唇をゆがめる。
 デザームはひょろっと長い顔にかあんり吊り上った赤い目、と言う爬虫類を思わせる顔付き。ぼさぼさに乱れた髪の一部は首元で何十にも巻かれ、マフラーのようになっている。
 デザームとイプシロンが投げかける侮蔑の視線を蓮は丁寧に睨み返しながら、歩く。怖いのか木暮は、蓮の足元にぴったりとくっつきながら、おずおずとイプシロンの顔を眺めていた。蓮が円堂の真後ろに立つと、円堂は振り向き、心配そうな顔で口を開いた。

「白鳥、今日は身体の方は大丈夫なのか?」

 仲間たちも蓮を気遣うような視線を送り、蓮はみなの優しさに心が震えた。不思議なことに今日の体調は優れているから、力が出せそうだ。蓮は自信に満ちた表情で、はっきりとした声で答え、好戦的な光を目に宿してイプシロンを見やる。

「うん。これはいつもより戦いやすそうだ」
「でも無理すんなよ。つらかったら、いつでも言ってくれていいんだからな?」
「大丈夫」

 蓮が力強く断言すると、聞き覚えのある含み笑いが聞こえた。声の方を振り向くと、あざ笑うような顔をした吹雪——いや瞳がオレンジになっているからアツヤ、がいた。アツヤを発見した途端、蓮の顔が強張る。柔らかい笑みがみるみるうちに蓮らしくない、警戒心に満ち溢れたものへと変貌する。蓮の態度に雷門サッカー部に小さなどよめきが駆け抜けた。

「よお、白鳥。倒れてお荷物になるなよ」
「余計なお世話だ。おまえは攻めることだけに集中しろ」

 からかうようにアツヤが言って、蓮は口調を荒くしながらアツヤに鋭い視線を送った。吹雪(アツヤ)と蓮の間にピリピリとした空気が流れていることに、雷門サッカー部の面々は、ただただ疑問符を浮かべることしかできなかった。隣り合ったもの同士でどうしたんだ? と耳打ちをしあっても、誰も何もわからなかった。そのうち円堂が二人をなだめようと近づき、

「みんな、作戦を伝えるから集まって」

 瞳子に集合の指示を出され、アツヤは挑発するように蓮に笑いかけ、蓮はすました顔をしてアツヤに背を向けて通り過ぎた。イライラしたように大またかつ早足で歩く蓮に染岡が近づき、小声で話しかける。

「おまえ、吹雪のこと嫌いなのか?」
「FWの吹雪は嫌いだ。でもDFの吹雪は好きだ」

 蓮はアツヤを睨みながら小声で答える。
 仲間たちは”士郎”と”アツヤ”の区別がついていない。相談しても無駄だろう。
 何故か自分だけにあのような態度をとるアツヤ。瞳を覗き込んだときの恐怖感は今も忘れられない。あいつだけは理解できない。あいつだけは信じられないんだ。
 
 蓮と春奈は今までのいきさつを聞いた。
 
 イプシロンは急にグラウンドに現れ、漫遊寺サッカー部に勝負を挑んだのだと言う。
 しかし漫遊寺サッカー部は、『サッカーはあくまで修行。勝負は受けかねない』と自身らの信条で断った。だがイプシロンは『断るのなら、敗北宣言をしたのも同然だ』と学校破壊を始めた。蓮たちが一番初めに聞いたのはその音だったのだ。
 そして当然の流れで、円堂たちが漫遊寺に変わり試合を受ける羽目になった。
 
 漫遊寺の生徒は、遠巻きに校舎の影から雷門イレブンを見やっていた。その視線には応援する気持ちが込められたものと、勝てるかどうか半信半疑、と言った物が混ざっている。
 学校を破壊するような地球外生命体に一般人が勝てるか、と言う疑問を覚えても無理はないだろう。

 瞳子の指示で雷門イレブンはそれぞれのポジションに着く。蓮は瞳子の指示で、右サイドのMFの役職に置かれた。そのわけは木暮。

 春奈が必死に懇願し、晴れて木暮は雷門のDFとして試合に出られたというわけだ。雷門のユニフォームを身にまとう木暮はなにやら緊張の面持ちでいまいち頼りない。そして足が小さく震えていた。
 対するイプシロンは余裕綽々だった。前線に立つ青い髪を扇風機のようなおだんごにした少女——マキュアは振り向いて、ゴールに立つデザームに甘ったるい声で質問を投げかける。

「ねぇデザーム様。あたしたち“エネルギー”0だけど、“チャージ”なしで大丈夫かなぁ?」
「マキュア。無駄口を叩くな」

 デザームに叱られたマキュアは、はぁ〜いと間の抜けた返事をして前を向いた。
 今の会話を鬼道は、はっきりと聞いていた。ゴーグルの奥にある切れ長の赤い瞳が細められ、『天才ゲームメイカー』と呼ばれる優れた頭脳がわずかな言葉に疑問を呈する。

(“エネルギー”だと?)

 だが考えを邪魔するように試合開始のホイッスルが鳴らされた。染岡がセンターラインに置かれたボールをタッチし、アツヤに。
 次の瞬間、アツヤはドリブルの体制に入る。そのまま持ち前のスピードでイプシロンのMF,DFを一気に抜きさった。いや抜きさる、は違うか。
 イプシロンのMF・DFはアツヤに邪魔しようと近づく素振りは見せるものの、何もしない。
 アツヤがゴール前へと進んでいくのを黙って見送っているのだ。
 
 ——確実に実力を測っている。そのことに気が付いた蓮は前に進みながら、舌をかんだ。そんな中でも時間は流れる。
 アツヤはデザームと一対一と言うまたとないチャンスを作り出していた。円堂がゴール前から大きな声で声援を送る。デザームが不適に笑い、アツヤは地面に手をつけて両足を広げる。とたん寒気がしてきた。空気が渦を巻き、風が低く唸る音が聞こえる。

「吹き荒れろ! <エターナル・ブリザード>!」

 アツヤの雄たけびと共に、冷気を纏った氷塊がデザームに襲い掛かる。氷塊が日の光を受けてきらめく中、デザームは嘲笑を浮かべた。飛んできた氷塊に向かい、すっと片手を差し出す。まるで普通のシュートを止めるかのように。

「なっ」

 小さくアツヤが驚きの声を上げる中、デザームの掌と凍りついたボールがぶつかり合う。氷のボールはデザームの掌に収まった途端、姿を一瞬で水に変えた。しゅーっとスチームに似た音が立ち、白い煙と共に水滴がデザームのスパイクを濡らした。
 
 雷門イレブンの誰もが、愕然とした。この光景を信じられなかった。

「……<エターナル・ブリザード>が片手で止められた」

 蓮が呆然と呟く中、デザームは大きく目を見開くアツヤに笑いかける。

「これが雷門最強の必殺技か。笑わせる」
「なんだと!」
「イプシロンの戦士たちよ! 反撃だ!」

 デザームは大きく振りかぶり、目の前にいたDFへとボールを出す。しかし、そのボールはDFに届くことはなかった。

「そうはさせないよ!」

 近くにいた蓮がすぐさまDFの前に立ち、すばやくボールを奪い取ったからだ。すぐさま辺りを見た渡すが、染岡にもアツヤにもイプシロンの選手が張り付いていて、パスを出せない。

 無理をするなと言われたがやるしかないようだ。倒れる覚悟を決めると、蓮は右足を後方に振り上げて、シュート体制に入る。

「久々にシュートをうってやるよ! <ホーリー・ウィング>!」

 蓮がボールを蹴った瞬間、ボールの周りに多くの発行する白い羽が現れた。白い羽はまるで自分の意思を持つかのように軸をデザームのほうへと向け、ボールと共に矢のように降り注ぐ。身体の力が一気に抜け、視界が揺らぐ。
 大した威力がないことをデザームはわかっているのか、不敵な笑みを浮かべた。

「ならばこの一撃でゲームは終了だ」
「え?」

 デザームが言い放った刹那。
 気づくと蓮は、身体を吹き飛ばされ、地面に叩きつけられていた。痛む身体を擦りながら上半身を起こすと、雷門サッカー部の面々が悲鳴を上げて宙に身体を持ち上げられている光景が視界に飛び込んできた。その原因は、赤いオーラを纏ったボール。
 槍か何かか。先端を尖らせ、槍のような形になったボールが地面をえぐりながら、円堂の元へと近づく。    
 
 止めたいが、この位置では間に合わない。とうとう壁山が吹っ飛び、残るは木暮一人。しかし、彼は逃げていた。ボールが進むのと同方向、つまりは円堂の元に。必死に走っているようだが、とうとうこけてしまい、赤いオーラを纏ったボールに追いつかれた。
 蓮は無意識に木暮の名を叫び——固まった。
 こけて逆立ちになった木暮が両足でボールをはさみ、その体制のままこまのように回り始めたのだ。
 吹き飛ばされることもなく、むしろボールの方が木暮の回転と共に赤い光を弱まらせていく。やがて木暮が力尽きたように、回転をやめて足から地面に倒れた。木暮の足から零れた、ただのサッカーボールが、地面に落ちて何回か跳ねて止まる。そして辺りを見渡すと、

「イプシロンが、消えた?」

 イプシロンの姿は忽然と消えていた。



〜つづく〜
なんか無理やりww
薔薇結晶さん遅れてすいませんでした!次章でも出しますので活躍はもう少しお待ちを^^;

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜久々本編☆ ( No.317 )
日時: 2011/03/05 15:26
名前: ふぁいん (ID: ZgrHCz15)

今回はちょー進みましたね!蓮君が意外と強いことにびっくりしました!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜久々本編☆ ( No.318 )
日時: 2011/03/05 22:30
名前: ふぁいん (ID: ZgrHCz15)

あ、あと追記します!
蓮君の誕生日はいつ?
できれば教えてください!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜久々本編☆ ( No.319 )
日時: 2011/03/08 18:30
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: コメント返しもまた後で♪

「い、いなくなったね」

 蓮は肩で息をしながら、無人のゴールを憎々しげに見つめた。まるで空気と同化したかのように、イプシロンの姿はどこにもない。ジェミニストームと同じで、宇宙人だから魔法の呪文でも唱えたと言うのか。雷門中の面々は注意深く首を左右に動かすが、イプシロンがいなくなりほっとしている漫遊寺の学生らしか見えない。
 
やがて漫遊寺の生徒は校舎に戻り始め、一部だが壊された校舎の残骸を拾ったり、無事に宇宙人が姿を消したことに手を取り合って喜んでいる。

「オレの技を見てびっくりして逃げたんだろ!」
 
 うっしし〜と得意げに笑う木暮だったが、雷門中サッカー部の空気はどこか重い。みな、顔が笑っていない。
 そのことに気がついた木暮は、決まりが悪そうな顔で雷門中サッカー部の面子の顔を眺めた時、蓮がポツリと呟いた。

「これでエイリア学園の出掛かりはゼロだね」

 その言葉に鬼道が顔を上げ、首を振る。

「いや。そうでもない」

 どういうことだ、と問うように、みなの視線が鬼道に集中する。鬼道は、瞳子を軽く一瞥してから、雷門中サッカー部のメンバーに向き直った。

「一つだけだがわかったことがある。それは、奴らが言っていたエネルギー”と“チャージ”」
「つまり、エイリア学園はドーピングしているってこと?」

 蓮が間髪いれずに鬼道の言葉を継ぎ、円堂たちから小さな驚きの声が漏れる。予想外の言葉なのか、円堂たちは戸惑う顔になり、続きを待つように鬼道を見つめた。

「やつらの強力な運動能力は、“特別な”エネルギー体による可能性が今時点では高い」
「エイリア学園は宇宙人じゃなくて、たんなるドーピング集団ってことかよ」

 染岡が口を挟み、鬼道は腕を組んで小さく首を横に振った。

「やつらの話から察するに、だ。まだ断言はできない」
「じゃあ白鳥先輩が倒れなかったのは、その“エネルギー”がなかったから、なんですね」

 春奈が何気なく呟き、蓮は疑問を呈する。
 
 自分が倒れる理由は、エイリア学園が使う“エネルギー”体にあるようだが、何故そんな身体になってしまったのだろう。染岡が言うとおり『アレルギー』なのかもしれないが、実際には何かあったのではないか。
 
 考えてみると、記憶が一部とは言え欠落しているのはおかしい。しかも欠落した部分は、施設で過ごしていた年月全て。偶然にしては出来過ぎている。今の両親も、施設のこととなると、決まって口を閉ざす。

「私はこれからエイリアの行方を捜しに行きます。今日一日、あなたたちの好きにしていていいわ」

 蓮がふと我に返ると、瞳子が事実上の休日宣言を出していた。今までの真剣な空気はどこかへふっとび、雷門中サッカー部は浮かれ出した。自然と仲のいい人間同士が集まり、わいわいと騒ぎ出す。

「もしかして京都観光してもいいでヤンすか!?」
「じゃあオレはおいしい八橋(やつはし)のお店にいくっす〜!」

 観光地に行くと言ったり、食べ物を食べるといったり。誰もサッカーをやろうとは言わない。蓮はたまたま隣にいた塔子と話し込んでいる。

「なあ、白鳥はどこに行くんだ?」
「疲れたけど、ちょっと遠出しようかな」
「遠出? どこに行くんだい?」
「ちょっと清水の方に」

 塔子を連れ立って清水まで来たものの、塔子はいつのまにかいなくなっていた。
 
 パパに土産物を買うからあたしは好きなところを見てくるよ、待ち合わせはここ〜と早口で言い残し、塔子は土産物屋街の中に消えていった。

 困った蓮は、人の流れに乗り、いつのまにか教科書でもよく見る清水の舞台に来ていた。平日ながらも人はたくさんいて、写真撮ったり、遠くの景色を眺めている人がいるその中に、

「あ」

 見知った顔がいて蓮は小さく声を上げた。涼野だ。見慣れた私服に身を包んでいる。手すりの上で腕を組み、ぼうっと視線を前に投げかけている。その横に、見知らぬ少年が手すりにもたれかかり、腕を組んで目を閉じていた。

 刹那。蓮の頭は、熱でもあるかのように熱くなり始めた。記憶がざわめき、脳内にぼんやりとしたイメージが浮かぶ。楽しげな音……それは聞きなれたサッカーボールの音だ。辺りではきゃあきゃあと歓声が聞こえる。自分の声。いくよー! と高めな明るい声がし、続いて変な雑音。誰かの名前を呼んでいるのに、聞こえない。なんて名前? 誰だっけ? 暗転。

 今度は鈍い光の反射。何かはわからない——が、まっすぐ自分の元へ振り下ろされる。ナイフのように煌くそれは自分の腕にどんどん近づいてくる。身をよじっても逃げられない。距離が縮まる。そして……。

「蓮?」

 肩に手が置かれる感覚がして、蓮は我に帰る。
 目の前には相変わらずの無表情で——でも心配しているような顔付きの涼野が、蓮の黒い瞳に映る。涼野の横では、赤い髪の見慣れない少年が蓮を見定めようとするかのようにじろじろ見つめてきた。

「風介。また会えたね」
「ああ」

 蓮がにこりと笑って涼野との再会を喜ぶと、涼野もつられたのか、口元に柔らかい笑みを浮かべた。それから互いの近況を一言二言交し合ったが、蓮の心の中は暖かい懐かしさに包まれていた。
 それは涼野の横にいる赤い髪の少年のせいであろう。脳細胞がこの少年も涼野と同じく知っている、と告げてくるものの名前も顔も思い出せない。ただ懐かしいという感情が込み上げて来るのみ。

「あれ、今日は友達も」

 じろじろ眺めてくる少年に蓮は怖気づき言葉を切ったが、思い切って続ける。

「友達もいっしょなんだね。邪魔しちゃ悪いから退散するよ」

 くるりと踵を返そうとすると、涼野が蓮のジャージの袖を掴んだ。安心させるようにわずかに笑って見せると、手を離し、赤い髪の少年のほうを向いた。非難するような鋭い目つきを伴った顔。蓮に見せていた穏やかな表情とはだいぶ異なる。

「晴矢、そう蓮をじろじろ見るな。困っているだろう」
「あ〜わりぃわりぃ」

 少年は軽く謝ると、涼野の脇を通り抜け、蓮の前に立った。
 
 何度見ても、自信に満ちた金色の瞳は記憶の片隅をつつく。脳内の記憶と言う記憶がざわざわと騒ぎ、心は温かくなっていく。蓮は懐かしむように目を細めていた。横では、涼野が複雑な表情で蓮の顔を横目で見ていた。

「オレは南雲 晴矢だ。よろしくな」

 南雲が自己紹介をした。
 その名前もどこか聞き覚えのあるものだった。思い出せないもどかしさを胸に抱えながら、蓮も明るく努めて自己紹介をする。

「僕は、白鳥 蓮」

「おまえが蓮か。風介から話は聞いているぜ」

「どんな話?」

「階段から落ちて記憶喪失になったドジなやつだってな」

「風介。なんてこと言いふらしているんだ!」

 南雲が茶化すように言って、蓮は涼野を怒鳴った。ただ、どうも(本気を出さない限り)怒っても蓮は大して怖く見えない。
 涼野は子犬に吠えられた大型犬のように悠然と構えている。
 蓮は取り直すように笑顔を作り、知り合ったばかりの南雲に声をかける。

「ね、キミのこと晴矢って呼んでもいいかな?」

「べつにいいぜ」

「じゃあ、よろしくな。晴矢」

 本人が許可してくれたので、蓮は南雲を晴矢と呼んだ。
 その時、耳の奥から声が突き上げてきた。晴矢、風介! と嬉しそうに叫ぶ自分の声。声の高さから言って、もっと幼い頃——忘れてしまった頃なのかもしれない。
 蓮は、思い出した勢いそのままに、まくしたてた。

「晴矢、風介! 僕たち小さい頃にどこかで会ったことない!?」

 南雲と涼野の瞳に一瞬、同様の色が走った。蓮はわずかな顔付きの変化を見逃さなかった。
 問いただそうとするが、南雲と涼野はすぐに何でもないような顔を作り、

「ないな。キミと始めて出会ったのは、大阪のパーキングエリアだろう」

「オレもだ。今日始めてお前と会ったんだぜ? 気のせいだろ」

 しっかりとした声音で言った。二人とも身体の後ろに回された手で、服をしっかりと握っていた。
 初めの顔の変化は何だったのだろう、と心内疑いながらも、二人がそう言うのだから間違いないだろう、と考え、蓮は追求しなかった。

「なにかあった?」

 南雲と涼野が暗い顔で俯いていることに気がついた蓮は、心配そうな声で話しかける。

 すると涼野は自虐めいた笑みを浮かべて顔を上げた。手すりに寄りかかり、景色を見ながら息と共に言葉を吐き出す。

「以前、キミに私はとあるサッカーチームに所属していると言っただろう」

「ああ。地域のって言ってたっけ」

 蓮は涼野の脇で軽くてすりに身体を預け、涼野の横顔を窺う。だいぶ涼野の表情が見分けられるようになってきた蓮は、涼野が難しい顔をしていることに気づいた。
 
「そこでは、どう表現すればいいのかわからないが……いわゆる、ランク付けのようなものがあるのだ」

 涼野は真っ直ぐに景色を見据えながら、前髪を書き上げながら、説明しづらそうに言った。

「やるきを出すためだとしても、あまり僕は感心しないな」

「オレたちの監督の意向だ。仕方ねえだろ」

 南雲が諦める様に呟き、蓮の横で手すりに背中を預け、そのままそっくりかえる。てすりを超えてオチやしないかと蓮は心配になったものの、南雲はすぐに体勢を戻し、手すりに寄りかかる。

「それで、二人とも一番になれなかった?」

 南雲と涼野は同時に目を見開き、涼野はふんっと鼻を鳴らす。

「ふん。キミは恐ろしいほど鋭いな」

「風介と前に少しパス練習したからわかるさ。風介はとてもサッカーが上手いし、なにより自分のプレーに自信を持っていた」

 北海道でのパス練習、あれで涼野の性格を蓮は少し悟っていた。
 
力強いパス。そして自分の力量を見定めるかのように輝いていた青緑の瞳。それらは、涼野の自信に満ち溢れた態度の表れだった。自信があるからあれ程強いパスが出せ、パス練習にも応じてくれたのだろう。自分のプレーに自信を持ち、フィールドで力強く輝く。蓮があこがれるプレイヤーの理想図そのままだった。

自分なら見慣れない人間に弱みを見せるのがいやで、どうしても知らない人間とのパス練習は渋ってしまう。ただ涼野なら弱みを見せても大丈夫と言う、自分勝手な自信でパス練習を頼んだのだった。

「落ち込むなんて、認められなかったとしか思えないんだ」
「少しのパス練習でそこまで見抜かれるとは」

 再度自分をあざ笑うような笑みを見せると、涼野は景色に目をやりながら、

「ああ。そうだな。監督に認められずに2位どまりだ。所詮(しょせん)その程度の実力と言うことか」

 自分を笑うように言った。横にいる南雲に目をやると、悔しそうに地面の板を睨んでいる。蓮は二人の悔しそうな顔を眺め、その“監督”に強い憤りを覚えた。
 景色に視線を向けると、怒った声で監督を非難する。

「そんなことない。風介や晴矢を認めないなんて、おかしい監督だ」
「オレもか」

 自分が含まれていることに驚いたのか、南雲が目を瞬かせる。
 蓮はニコリと明るい笑みで南雲と涼野に交互に笑いかけ、言い切った。

「晴矢も風介もすごいプレイヤーだ。僕が言うんだから間違いないよ!」
「……ははっ! そういうことは、この南雲晴矢さまのプレーを見てから言うんだな」

 南雲が楽しそうに笑い、涼野はくすぐったいような顔で小さく笑っていた。が、すぐに沈痛な面持ちに逆戻りし、重々しく口を開いた。

「それで……ひとつ問題があるのだ」
「え?」

 蓮が強い調子で聞き返し、涼野はしまったという顔をして蓮から目線をそらした。
 蓮の横にいる南雲も、何やら視線で涼野に非難するようなとげとげしい視線を投げかけている。   
 
 聞いてはいけないことを聞いたような気がして、蓮は話題を変えようと頭をひねって、

「そういえば八橋食べた?」

「私たちが一番になるには、“大切なもの”を壊す必要がある」

「お、おい! 風介!」

 涼野は抗議する南雲を無視して話を続けた。


〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜久々本編☆ ( No.320 )
日時: 2011/03/12 10:44
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 研崎=私にとっては羽崎なのだよ

「壊す必要があるって、北海道で言っていた“大切なもの”のこと?」

「ああ、そうだ」

 涼野が首肯し、蓮はなおも問いを重ねる。

「せっかく取り戻しかかっているのに、壊す必要があるの?」

「ああ、そうだ」

「風介はどっちが大切なの?」

「……わからない」

 答えると、涼野は口ごもる。本当に葛藤している様子が傍目に取れて、蓮は心を痛めた。——その原因を知らずに。

「一位になりたいのは事実だな。だが、“大切なもの”を壊すのも怖いのだ」

「オレは……別に」

 南雲は脇で言葉を濁していた。二人にとって大切な友人でもいるのかなと蓮は考え、

「その“大切なもの”、壊したらどうなるの?」

 恐る恐る蓮が聞くと、涼野はしっかりと蓮を見つめ、落ち着いた声音で答える。

「恐らく、二度と元には戻らないだろう。永久(とわ)に戻ることはない。一位になるのはいつでも可能だろう。しかし、こちらは失ってしまえば永遠に帰ってこない」

 蓮は頭の中で次にどんな言葉を紡げばよいか悩んでいた。
 単なる人生相談ではないのだ。決定しだいでは涼野と南雲が大きく後悔するかもしれない。そう思うと、尚更(なおさら)下手なことは言いたくない。

「キミならどうする?」

「……え?」

 いきなり話を振られた蓮はびっくりして現実に戻った。
 涼野が青緑の瞳で蓮を見据えている。
 その瞳にからかいや冗談といった類(たぐい)のものはなく、真剣な瞳そのものだ。そして瞳同様真剣な声で、

「目の前に見える利益と、自分にとって“大切な何か”。……表現が悪いな。こうならどうだ? 目の前に財宝がある。しかし、財宝をとるには仲間を殺さなければならない。どちらかを選ばなければならないとしたら、キミならどちらを望む?」

 上手い答えが見つからず助けを求めるように南雲に目をやると、南雲も蓮の答えを聞こうとするかのように身を乗り出し、金色の瞳で蓮をじっと見つめていた。蓮は困った顔で交互に二人を見やると、仕方なしに自分の考えを述べ始める。

「えっと、僕なら、“大切な何か”を壊すのが怖くて、えっと仲間を殺すのが怖くて……きっと逃げてしまうと、仲間と共に財宝を捨てて逃げてしまうと思う。僕はそう言う臆病な人間だから」

 苦笑すると、蓮は景色に目をむけ、手すりを掴んだ。風が吹いて、三人の前髪を揺らした。
 
 周りにいる人間の顔振りはだいぶ変わり、男子中学生3人でなにやら話をしている光景は、明らかに浮いていた。外人らしい人間が興味深そうに三人を観察していた。

「けど、人は追い込まれると変わる。僕だって地理は大嫌いだけど、テスト前はかなり勉強して、赤点以上は取ろうとするしね。——それと同じで、例えば親から期待がかかっていてさ、レギュラーになれ、とか言われたらその“大切なもの”を壊すかも。あ、財宝で言うとだな。親が病気で大金が必要とかそう言う理由があれば、仲間をやってしまうかもしれない。人は状況によって、すぐに変わってしまうから」

 昔、蓮は母を喜ばせようとして取ってはいけないと言われた公園の花を摘んだことがある。
 あの年でやってはいけないと分かっていたはずなのに、悪いことをした。ルールを守る大人しい子が、一日でいたずら小僧に様変わり。このくらいなら軽いものだが、人が良くも悪くも簡単に変わることを蓮はよく知っていた。——そう、自分一人を置き去りにし、海に身を投げた親がそうなのだから。
 
 親のことを思い出した蓮は、自然と表情が曇り始めた。三人の間には表現に困る重い空気。だが、そこへ空気を吹っ飛ばすような明るいノリの声が聞こえた。

「晴矢様ぁ!」

「き、灸?」

 南雲がその人間の名を呼んで口をあんぐりと開け、涼野と蓮が瞠目する中、灸が観光客を左右に押しやりながら強引にこちらに近づいてきた。押しやられた観光客は少々迷惑そうである。
 狐の瞳に似た白い瞳。中には黒い線がある。無造作に跳ねた赤い髪。戦国時代に出てきそうな赤い紐で一つにまとめている。走るたび、その赤い髪が揺れた。
 もう少し手入れすれば可愛いのに、と蓮は内心で感想を述べる。Tシャツにジーパンと言うラフな格好で男のようだが、小さな胸のふくらみを蓮は見逃していなかった。灸はどかどかと南雲に近づくと、

「どこをほっつき歩いているんですか! むー……」

 南雲に片手で口をふさがれた。さらにもう片方の手で抱き込むように身体を拘束された。状況が読めない蓮は呆然とし、涼野はいつものことだ、と蓮に説明をしていた。
 灸は手足をばたつかせて抵抗し、南雲はそれをめんどくさそうに顔をしかめた。蓮に引きつった笑みを向ける。

「す、すまねぇな蓮! オレたち急用が……おら、帰るぞ灸」
「えー! 俺も蓮さんと話したいです!」

 言いながら南雲は、嫌がる灸の両手を掴んで、かなり強引に引っ張っていった。駄々をこねる子供を無理やり引っ張る親のようだ。蓮は呆気にとられてただ見つめることしかできなかった。

「またすぐにでも会おう。すまない」
「あ、大丈夫だよ。また会おうね」

 涼野が短く詫びを入れ、蓮は笑顔で遠ざかる三人の背中を見送った。

「壊さなければならない大切な人ってあの子かな?」

 それから清水寺から離れた住宅街で大きな怒声が響いた。雷が落ちるような大音量で、散歩中の犬が哀れなことに気絶した。辺りの住人は窓の鍵を閉めるなり、耳を塞いだりする。

「こらぁぁああ! 灸てめーっ! 何しにきやがった!」

「すいません! すいません! 俺はただ、お二人を呼びにきただけですよぉーっ! 研崎が呼んでいるんです!」

 今にも殴りそうな勢いの南雲を前に、灸はひたすら平謝り。言い訳をいくつ並べても、南雲には通じそうにない。南雲はますます目を吊り上げ、興奮して言い募る。

「空気を読め! オレと風介の正体が蓮にばれたらどうするつもりだ!」

「え、晴矢様が実はエイリア学園、マスターランクチーム『プロミネンス』のキャプテンで、風介様が同ランク『ダイヤモンドダスト』のキャプテンだってこと、言っていなかったんですか!?」

 驚いて灸が零した言葉に、南雲と涼野は辺りを見渡す。幸いなことに蓮も雷門中サッカー部もいない。いるのは、黒いハト一匹。金色の瞳を輝かせ、じっと三人を見下ろしている。

「だから、でかい声で言うなって何度言えばわかるんだ!」

 同時刻。清水寺の土産物屋と土産物屋の間に二人の少女がいた。こんな狭い場所にいるのも怪しいが、彼らの瞳はずっとある人物を追っていた。——土産物屋の前を駆け抜ける蓮の姿を。

「ねえ、レアン」

「なに、クララ?」

 レアンと呼ばれた少女が不機嫌そうな声で尋ねる。あまり仲はよくないらしい。

「ガゼル様とバーン様の幼馴染……ちょっとムカつくと思わないかしら?」

 クララが目の前を通り過ぎていく蓮を憎憎しげに見つめながら呟いて、レアンは鼻で笑う。

「ふ〜ん。あなたとわたし。珍しく気が合うのね」

「嫌だけど、プロミネンスに相談があるのよ」

「なあに? ダイヤモンドダストさん」

 クララは長いことレアンの耳に何やら耳打ちをしていた。
 蓮は彼らの前で塔子と合流し、何やら楽しげに話しながらクララとレアンから遠ざかっていく。レアンはその背中を見つめながら、

「・・・・・・ふふ。面白そうね」

 暗闇の中で笑った。

〜四章完〜

やっと四章おわったぁぁぁあああ!夢幻さんのオリキャラも初登場v本当に短編うっちゃらかして申し訳ないです;;必ず書きますorz

ちなみに解説〜南雲と涼野が言っている壊すべきものは「蓮との絆」。
永久に帰ってこないというのは、涼野の思いすぎみたいな感じです。蓮だったらきっと許してくれない。そんな悲しい心情があります;;
果てさてレアンとクララの企みは……?

さあて……佐久間と源田書けるかなぁ^^;初書きなので、キャラ崩壊の予感がします;;

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜久々本編☆ ( No.321 )
日時: 2011/03/08 18:45
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: おまけと次章予告は明日。長くなった。

>>ふぁいんさん
一応サッカー部にいるんですから強いデスヨw
設定上では南雲や涼野に負けない実力の持ち主って設定です♪

え〜誕生日かぁ。考えてません。今月中なら、いつでも蓮のバースデーメッセージは受け取ります((爆

蓮「ちょっとー! 僕の誕生日まともに考えろよ!」

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.322 )
日時: 2011/03/08 21:58
名前: ふぁいん (ID: ZgrHCz15)

しずくs、蓮君がかわいそうです。ではお誕生日おめでとう蓮君。今回はこれまた神展開です!三人の会話はいろんなたとえ話があって面白かったです!それとレアンとクララが気になります!五章もファイトです!応援してます!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.323 )
日時: 2011/03/09 16:48
名前: みーds (ID: b1kDOJaF)

クララがきになる。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.324 )
日時: 2011/03/11 15:48
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 悪人の台詞は思いつくけどなー

次章予告(蓮バージョン)

イプシロンを見失った僕らは、愛媛で子供たちが誘拐されているという話を聞いて、愛媛へと向かった。

そこで待っていたのは、真・帝国学園! 不動 明王(ふどう あきお)という謎の男と……え、一緒にいる人たちは鬼道くんの知り合い!? ど、どうなっているんだ!? しかも雷門を倒すって……?

そして雷門に忍び寄る第二の敵の影。彼らは憎悪と欲望を交え、静かに僕たちを誘う。
え、狙いは……!?

次回、第5章「希望と絶望」

ねえ、晴矢。風介。僕は生きていていいのかな……?



しがないおまけ〜遅い×100アンケート結果発表なんだよ!〜

キャスト

しずく
この小説を書いている人。それ以上でもそれ以下でもない。もうすぐ卒業式を迎えるわけだが、イナズマ熱は過熱する一方。親に3DSを買ってもらえずに凹んでます

しずく「3Dsかってもらえない絶望! イナズマイレブン4かってもらえん絶望! あとの絶望は……」

雫(しどけ)
とあるラノベをまんまオマージュした結果がこれだよ!

雫「どこぞのア●リアだよ」

ふぁーすと
しずく「はい、ようやくアンケートの結果発表です!」

雫「今回は6票(しずく自身のも入れて)も集まってよかったなぁ」

しずく「本当;;自分入れて2票くらいしか来ないと思っていただけに、アンケートが来たときには天井に頭ぶつけるほど飛び上がったZE☆え〜っと、ふぁいんさん、転寝さん、李央さん、ユクハさん、林檎さん、マジで土下座させてください。それと、コメントなくてもクリックしてくださるみなさまもいつも有難うございます^^」

雫「さあ、さあ。まずはキャラクター人気から発表♪」

①キャラクター人気投票!

しずく(紙を見て)「じつは前々から書いていて、誰が〜ってのはあっただけに気になってた!」

雫「して、結果は?」

しずく「wktk。一位はね〜五条勝(ごじょう まさる)。2位壁山で、三位はゴ……」

雫「これぞ雫の究極奥義! フォビディン・ウォーター! まるで意味が分からんぞ!」

しずく「目が、めがぁ〜!!!!!!!!! ばたっ」(←紙を落として倒れる)

雫「おい、一位発表しろよ。あ、しずくのやつ気絶してるわ。(紙を奪って)しょうがねーなー、おれがやるか。どうでもいいですが、計算方法は各アンケートごとに、1位→3点、二位→2点 三位→1点で計算し、その合計得点で決めたそうです。

え〜っと、なになに。

一位 涼野風介(ガゼル)&白鳥蓮
二位 南雲 晴矢(バーン)
三位 亜風炉 照美(アフロディ)

お〜主人公の蓮と涼野が同ランク。涼野はしずくが大好きだからな、本人も喜ぶだろ。2位も納得。で、三位はなんだ? アフロディは確か短編にしか出てないはずだが……」

しずく「びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛!」

雫「あ、復活した。ちぇ〜ザオリクとなえたかったのになぁ〜おい、しずく! 主催者として一言なんか言え」

しずく「蓮が予想外に票が集まって……かっこいいとかかわいいとか、賛美歌のような言葉の嵐でして。蓮が可愛いやかっこいいと思われていたのは意外ww」

雫「涼野、南雲、アフロディについてどうぞ」

しずく「涼野は、早い段階から出ていて(ここで白状しますが、この小説、初めは雷門との友情ストーリーにするつもりでした。が、いつのまにか主体が涼野と南雲に変化しましたww)北海道やら短編やらで書きまくってしまうほど気に入ってます。クールで偉そうな口調が可愛いww名台詞〜と言う言葉は作者にぐっと来ました。
南雲は、6月辺りから好きになり、出るまでにだいぶ時間を要してしまいました。熱くなりやすいキャラ好きです。同法則で前原圭一やサトシも好き。あれ、方向性違うや。
この小説の、もう一人の主人公は涼野と南雲かなぁ……個人的に
後、アフロディは完全に予想外ですww短編の反響かしら……? 
短編にアフロディがよく出てくるから、しずく好きなの? と友人に突っ込まれましたが、アフロディは普通に好き、なくらいです。が、短編には何故か出したくなる! なんでかなぁ」
ところで雷門組は全くランクインしてませんね^^;」

雫「おまえが見せ場書かないからだろ。雷門組にいい言葉やエピソードがなさすぎる!」

しずく「いや、(個人的に見せ場は蓮が南雲と涼野と共にいる場面だから)少なくて反省している。もっと考えてみるよ」

②台詞

しずく「これはバラつきがあるんで、被っていたものをリストアップ」
「僕は確かに”変わるかも”しれないけど、”基礎部分は残して”変わって行くと思う。『人間って忘れてしまう生き物』って言うだろ? 今日の日だって、細かいことは忘れるかも。けど、風介への思いは絶対変わらない。少なくとも、風介のことは絶対に忘れたりしない。この46億年間だっけ? 変わらない海と同じで」
By蓮、第3章

「黒ってのは便利な色だよなぁ? 混ぜればほとんどの色は黒に染まっていく。混ぜれば混ぜるほど、黒味は増して——やがては漆黒に染まる」
Byアツヤ 第四章

雫「前者は思い付きだっけ?」

しずく「そ〜なんにも考えずに書いた。なんか会話の流れで自然と思いついた、ので深い意味はないです。神とか心の広さを感じさせると感想がありましたが、作者はびっくりマーク×100くらい仰天しました! 中の人などいない。
……誰かいい台詞の書き方おしえて〜」

雫「はい、次」

しずく「アツヤのは繰り返しますが、ひぐらしのなく頃にから影響を絶大に受けています(日本語あってるか?)。特に罪滅ぼし編と暇つぶし編。しいて言うなら、梨花ちゃんの「東京へ帰れ」から思いつきました。やっぱり漫画やアニメは名言の宝庫ですねぇ〜♪ あんなの書けるようになりたいぜorz」

③蓮との絡みは……?

雫「来たな! 作者の趣味投票第一弾!」

しずく「結果ですが……涼野との絡みがダントツ人気でしたww6票中6票もあって作者は(スペース・ペンギン)になりました」

雫「(無視して)おまえが一番気合入れて描写しているしな〜受け入れてもらえてよかったな♪」

しずく「で、次が涼野が南雲セット」

雫「ふんふん」

しずく「でさ、期待にアフロディとヒロトがあるんだけど」

雫「うん」

しずく「アフロディは短編で絡んでいるかつ未来にある。が、ヒロトは皆無だ」

雫「作者がどのキャラ好きなのかよくわかります」


④大問題!? 蓮はイナズマジャパンとファイアードラゴン、どちらに行くべきか!

しずく「はい、6票中5表でファイアードラゴンでした

雫「聞くまでもないだろ。だってよぉ……
・蓮は南雲と涼野の幼馴染←超重要要素そのいち
・記憶を失っても友情は健在←その2
・蓮は、南雲と涼野のみ名前で呼んでいる←その3
・第一しずくはファイアードラゴン大好き

しずく「だって〜悪人だらけのチームにどう放り込めって言うんだよ!? 蓮、そんな性格じゃないし」

雫「蓮は演技力抜群だし(現実のお芝居は下手だけどねww)、リュウジみたいにキャラ作りすればおk」

しずく「ならその目に拝ませてやる……! ファイアードラゴンの名(迷?)言のかずかずぉ! あ、記憶で書いているので違うかもです」

「食い殺されないことだな。灼熱の牙を持つ龍に」by南雲

「恐れおののくがいい。龍の目が見据える凍てつく闇に」
「二つの包囲網の動きを見ていてごらん? 龍がキミたちを締め付けてくるよ?」
by涼野

「私たちの戦術は完璧なのです!」
「龍の誇りにかけて抜かせません!」
「龍の雄叫びを聞け!!」
「恐怖によって精神を支配する。」
「龍は今、牙をむいて飛び立つ!!」
↑チャンスゥ

雫「いいんじゃね? 悪人らしくって?」

しずく「蓮はこんなこと言わないから! だから間違いなく浮くね。妄想だけどさ〜こんな風になるかな? 台本なのと即興だから低クオリティ」

照「そう、ボクたちがファイアードラゴンだ!」

南「食い殺されないことだな。灼熱の牙を持つ龍に」

涼「恐れおののくがいい。龍の目が見据える凍てつく闇に」

蓮「え、え〜っと(かっこいい台詞続きに戸惑う)」

照「ほら、蓮。キミも何か言うんだ」

蓮「い、い凍てつく闇の瞳を持つ龍の牙に焼かれないことだな!」

南「ぱくるな」

涼「真似をするな」

ってなわけで、俺得すぎる設定の一部だとね、

試合前の相手国への挨拶では黙っている。だが、韓国3TOPに無理やり前に引きずり出され、悪人の台詞を求められる。
大抵南雲と涼野のキメ台詞をぱくり、場をしらけさせる。そして南雲と涼野に怒鳴られているとか

言葉で言えば『振り回されている』が適当だね」

雫「そこまで考えておいて、蓮はイナズマジャパンか?」

しずく「ま、それはこの小説が完結してからってことで。今度は真・帝国学園編。佐久間や源田と鬼道、そしてクララとレアンのたくらみ……また長くなりそうだ;;」

雫「ま、頑張れ」

しずく「これからも進めていきますので、応援よろしくお願いいたします♪ コメやクリック数など、いつも励まされてばかりです」

おわり☆

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.325 )
日時: 2011/03/11 16:00
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 地震すごかった・・・・・・ただいまネットに避難中??

>>ふぁいんさん
はい、おっしゃるとおりです。じゃあ3月30日(親の誕生日でww)
バースデーコメントありがとうございます♪
蓮も大喜びしていると思いますww30日は短編書いた方がいいかな。(笑)
今回の会話は、かなり頑張って書いたのですが、意味不明ですよね。ん〜蓮ならどうするか、と尋ねてその後の会話は5章に回したのでorz

コメントありがとうございました^^↓もよければ答えてください♪

>>ALL!答えてくださいませ!(またかよw)
蓮の誕生日短編を書くとしたら、蓮はイナズマジャパンとファイアードラゴンと、どっち所属がいいですか? 

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.326 )
日時: 2011/03/11 16:10
名前: 戒魔 ◆TpifAK1n8E (ID: kcj49vWg)

しずくs
大丈夫ですか!?
ミーは最近学校嫌で給食前に帰って家に居たんですが、
静岡でも震度四と、結構揺れていました。
今大津波警報ですよ!?
ちょっとミーの親戚が栃木で気になります。

〜ついでに〜
誕生日短編は・・・FD!!でもイナJでもイケますよ!!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.327 )
日時: 2011/03/11 16:27
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: くらくら〜

>>戒魔さん
あ、戒魔さん^^ご心配ありがとうございます><生きていますww
イナイレがあれば、地震が起きても生存しています(笑)

静岡のおうちの方は大丈夫ですか? 

私は卒業式の予行だけで帰れたので家にいました;;
特に物は落ちたりしませんでしたが、写真たてとコンビ二で買ったイナズマイレブンのDVDが棚から落ちました><

静岡は大津波警報!? 戒魔さんの家は海から近いですか? でしたら早く非難を……!
栃木のご親戚の方も無事であることを切に願っています;;

おおおおおおおおおおお!早速おこたえがきtぁあぁぁぁ(おかしい)

やっぱりFDかなぁ^^;この前のバレンタインもFDだったしww
FDは書いていて楽しいんですよ〜♪(おい)今度はアフロディたちによるびっくりサプライズとかww

ではでは、コメントありがとうございます^^
今度は戒魔さんの小説にも遊びに行きたいのですが、何か書かれていますか?

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.328 )
日時: 2011/03/11 16:44
名前: 戒魔 ◆TpifAK1n8E (ID: kcj49vWg)
参照: イナイレカードやグッツが机の上で散乱してた!!

しずくs

ミーは半登校拒否ですww
物・・・棚に置いていたイナイレカード(軽〜く五百枚くらい)と映画のグッツ、キャラ名鑑?同人誌が机で散乱してましたww
ちょっと前にあったプロモカード(鬼道は持ってない)の全員が・・・
キャラカードは大切なバダップ、エスカバ、フォックス、コヨーテ、マンティス、フィディオ、ロココ達が・・・
技カードではビックバン、ザ・バース、皇帝ペンギン3号、カポエィラスナッチ、ビックスパイダー、その他が・・・
机にすら無く床に落ちていました。

海からは遠いですよ。ただ、川が近いです。

小説・・・イナイレですけど、最近更新してないです。
今日なんか一つ更新しますよww

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.329 )
日時: 2011/03/11 16:56
名前: 霜歌 ◆P2rg3ouW6M (ID: HGEDmJJJ)

どうも^^
ご無沙汰しております^^;別の掲示板のほうでお世話になってます。
あちらの方で小説についてのコメントは書いたので以下雑談的なww

しずくさんの県では地震がありましたか?
私の県(群馬ですが;)では、6弱です;;
地盤が強い県で、3以上の揺れは経験した事がなかったので、し.ぬかと思いましたorz
あちらのスレに書いたように、私は今日の午前中に卒業式がありまして、帰ってきてまったりとしている時に、空の雲がおかしな色だなーさっきまで晴れてたのにー、と思ってたところで地震・・・という;
内陸の県なので、津波は平気でよかったです;
ただ、私の部屋では本棚の本や置物が部屋中にばらまかれております;

ちなみに、イナズマイレブンでは、私は一之瀬(たしかこういう名前だったかと;)が好きですー^^
EDがおでんの歌の時に見ていたら、一之瀬くんが初登場して、一目ぼれです//
キャラクターに一目ぼれしたのは、テレビアニメではカードキャプターさくらの小狼以来ですよ^^

ってことで、相変わらずの雑談失礼しました。
むこうにも、顔を出してくださいねー♪
では!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.330 )
日時: 2011/03/11 16:56
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)

戒魔さん

カードいっぱい持ってますね! 私は100枚くらいww
私はフォルダーに閉まってい、しかも机の中にあるので無事でした。

プロモカードは豪炎寺(ほら、後ろにアフロディたちがいますよね?)が入手できてから、満足して買ってませんww

戒魔さんのお部屋の惨状が思い浮かばれますorz
掃除大変そう><私はDVDと写真たては何とか戻しました。

後で更新されたら行きますね〜^^
私も短編小説をこれから書きますww

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.331 )
日時: 2011/03/11 18:34
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)

>>霜歌さん
うわぁ、すれ違いです><すぐに返せなくてごめんなさい;;
こちらまで来ていただいてとても嬉しいです^^

わたしのいる場所でも地震がありました;;東京ですが、山梨県よりの結構田舎に住んでますww

6弱もあったんですか!?ご無事で何よりです><
前に小学校で人工的に地震を起こせる車で、震度6は体験しましたが、全く立てずに、机の足を必死に掴んで机の中に潜っていた覚えがあります。

今日が卒業式だったのに災難ですね;;津波の心配はなくてよかったです><
地震雲はあるって前にTVでやってました。やはり雲の色が違うのは、地震の前触れのような気がします。

こちらは4弱ですね。自室でのんびり本を読んでいたらいきなり揺れたので、本を放り投げて机の中に潜り込みました。落ちたのはDVDと写真てて位で、他は何とか無事に済みました;;
平野にあるので津波は心配ありません。

一之瀬くんは目が可愛いですよね^^
あ、私もカードキャプターさくら大好きです。小狼はツバサ・クロニクルでも大好きでした><
私が惚れたキャラクターは、女性キャラでww(憧れ?)遊戯王のモンスターで『ガーディアン・エアトス』ですかね。ネイティブアメリカン風の格好ですが、りりしくて大好きです><

近いうちに向こうにも顔を出しますb雑談、楽しかったです^^
コメントありがとうございました♪

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.332 )
日時: 2011/03/12 07:45
名前: ふぁいん (ID: ZgrHCz15)

地震で部屋が死んだふぁいんですっ。しずくさんが無事でよかったですう。確かに大人しい蓮君がファイアードラゴンに入るのは大変そう。しかーし!振り回されていても蓮君は可愛いから許します!可愛いは正義
短編はファイアードラゴン希望!幼馴染トリオとアフロディの掛け合いが大好きです!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.333 )
日時: 2011/03/12 08:08
名前: 成神 瑠希亜 ◆Q2X1KHpOmI (ID: lUTEu1Y0)
参照: http://uranai.nosv.org/u.php/list/hinaxa/

しずくー!!

大丈夫か!?

関東マジやばかったw

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.334 )
日時: 2011/03/12 11:54
名前: 空屡 ◆iF1No6m8Lc (ID: OK6L9khJ)

長らく来れなくて、誠に恐れ入りますすみません———っ!
ちなみに元空梨逢ですお!今は空屡そらるですお!

な、なんか間空き過ぎちゃってホントごめんね……。取りあえず展開が全部神ってて素晴らしかったとだけ言っておく←
蓮くん可愛いよ蓮くん(この人危険

地震は学校で起きてましたねぇ。もうクラスの半数が泣き出して……。私ももらい泣きしちゃって……。
電車とか全部止まってたので歩いて帰りました。所有時間5時間とか^p^


いや、ホント間があいちゃってごめんね。これからも頑張って!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.335 )
日時: 2011/03/12 13:28
名前: 星沙 ◆RkKLSqUPDc (ID: IsQerC0t)
参照: 名前変ました!元ユクハw名はシャンシャw

しずく様〜〜〜〜〜!
大丈夫でしたか?
私は全然大丈夫です!
だけど……自分で作った(ガラスを削って作った)……グラスがorz(ボカロキャラを削ったのに……)
まぁ、イナイレ系のもの(自作グラスなど色々)は残っていたのが幸いww
震度2で落ちるところにおいておいてしまった自分が悪かったw

その時間は体育館で卒業練習中で3月にできた体育館ですから、ゆれなかった……
で、帰ってきてテレビ見ようとするとニュースだけ……

4章完結おめでとうございます!
ストーリーのおかげてチ溜まりがww
これからも応援しています!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.336 )
日時: 2011/03/12 15:52
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 白ハト=リアティ、黒ハト=ミスティ

第5章 希望と絶望 

 暗い部屋だった。何も見えない暗闇だけが広がり、肌を突き刺すような寒さが場を満たしている。
 その時、スイッチが入る音ともに黄色いスポットライトが上下灰色スーツ姿の男の姿を浮かび上がらせた。
 背ばかりがひょひょろとした男。緑の髪はかにの横足のように跳ね、頬は何かにえぐられたようにくぼんでいる。そして意地が悪そうな切れ長の黒い瞳。肌は生気を失ったような白さで、見ていて気持ちが悪い。
 そして、男の右肩には一羽のハトが止まっていた。白いが毛並みはくすんでおり、羽毛はぼさぼさだ。ただ色素が薄い金色の瞳だけはぎらぎらと暗闇を照らす街灯のごとく輝いている。

「ようやく戻ってきましたか。バーン、それにガゼル」

 男は誰もいない暗闇に語りかけた。しばらく男の声が反響していたが、すぐに静寂に包まれる。ややあって、ようやく不機嫌そうな声が返ってきた。

「なんだよ、研崎」

「父さんから何か命令でもあったのか?」

 パッと赤と青のスポットライトがつき、バーンとガゼルの姿を浮かび上がらせる。二人の長い影が床に広がる。
 赤いスポットライトに照らされるバーンは目の下に黒い切れ込みが入った南雲、青いスポットライトに照らされるガゼルは涼野その人だった。
 しかし、服装はいつもと違う。二人ともユニフォームのようなものに身を包んでいる。
 バーンは赤と白が基調のユニフォームに、下は黒に近い灰色のハーフパンツ。左腕に白いキャプテンマークをつけている。ユニフォームは赤い長袖で、白地のシャツ部分、胸元には紫のボタンのようなもの。周りを炎をかたどった赤い模様が描かれている。
 ガゼルは青と白が基調で、下は藍色のハーフパンツ。何故かユニフォームの両袖はまくりあげており、邪魔ではないかと思いたくなる。
ガゼルのユニフォームはバーンのものと同じく、胸元に紫のボタンのようなでっぱりがある。デザインは傍目には白い部分がキャンディーに真下からYの字をしたから突き刺した形に見えた。

 バーンとガゼルは声どおり、嫌そうな顔で腕を組み、研崎を睨んでいる。それを見た研崎は静かに首を振った。右肩の白ハトが落とされまいとして、鍵爪に力を入れる。研崎は小さく呻いた。

「いいえ。旦那さまは、“ジェネシス”の面倒を見るので忙しいのですよ」

 バーンとガゼルはほとんど同時に鼻を鳴らし、腕を解いた。

「だろーな。オレラらなんかよりグランの方がお気に入りだからな」

 バーンは他人事のように言った。どうやら研崎と話すのをめんどくさいと思っているらしい。先ほどからしきりに欠伸をして、研崎の顔をしかめさせている。

「だからこそ、父さんは、グランが率いる“ガイア”に、エイリア学園最強のチームであることを認める称号——“ジェネシス”を与えたのだろう」

 ガゼルもまた話を早く終わらせたいようだ。自分とは関係がないと言わんばかりの口調で述べ、バーンにかえるぞと声をかけ、研崎に背を向ける。
 それを見た研崎はニタァ、と笑い、帰ろうとするバーンとガゼルの背中に問いかけるような言葉を投げかけた。

「バーン、ガゼル。なに他人事のように言っているんです?」

 その瞬間、バーンとガゼルの足が止まった。靴音が反響し、辺りに響きわたる。
 二人は振り向いて、めんどくさそうな視線で研崎に目をやった。研崎は気味が悪い笑みを浮かべながら、言葉を続ける。

「あなたたちは、それでもマスターランクチームのキャプテンですか?」

「何が言いたいんだよ!」

 問いかけれたバーンは研崎に向き直り、つんけんな調子で返した。横ではガゼルが抗議するような瞳で研崎を睨みつけている。
 研崎は無言だった。気持ちが悪い笑みを口元に浮かべ、口を閉ざしていた。その時、

「ガゼルにバーン」

 若い男の子のような声がした。バーンとガゼルは身を震わせ、刺々しい視線を研崎の右肩に止まる白ハトに向ける。睨まれた白ハトの顔が、まるで人間のように歪む。嘲笑の形に。そしてパクパクと動く薄桃色の嘴は、流暢な日本語を紡いでいく。

「おまえたちはジェネシスの座を求めると思うよぉ〜」

「リアティ、口を慎みなさい(つつしみなさい)」

 研崎はリアティを叱ったが、リアティは喋り続ける。

「元々大仏。あ、間違えた。元々父さんに認めてもらうために、ここまで頑張ってきたんでしょ〜? なのにさ、ジェネシスの座を雷門と戦ってもいない“ガイア”に与えるなんておかしくな〜い?」

「……父さんの意思だ。私は気にしていない」

「オレもだ」

 ガゼルは、リアティから目をそらしながら自分を納得させるように呟いた。バーンも弱弱しい声で同意する。
 リアティはそんな二人を愉快そうに眺めていたが、不意に両翼を広げ、空中に飛び立つ。羽音が立ち、研崎の髪が揺れた。そのまま自分から目をそらしているガゼルの周りを円を描くように飛び回る。

「ふ〜ん。でもさ、不公平はよくないとリアティは思うんだよねぇ〜。今すぐ雷門を倒せば、大仏だって認めてくれると思うよぉ〜?」

 からかう声がガゼルの周りでくるくる回る。ガゼルはいつもの冷静な表情で——俯いていた。バーンはずかずかと飛び回るリアティに近づくと、リアティを片手で下に落とすように叩く。リアティはくすんだ羽を数枚落としながら落下し、地面に叩きつけられた。羽を伸ばして痙攣を起こしている。

「リアティ、旦那さまを『大仏』と呼ぶのは止めなさい」

 呆れたように研崎がため息をつきながら、研崎がリアティを両手ですくい上げる。
 研崎の両掌の中で起き上がったリアティは、ぴょーんと飛びおり、くすんだ羽を上下に動かして、宙のある一点に“止まっている”。そして嫌そうに、

「いいじゃ〜ん。めんどくさいし〜」

 口答えし、黙る。くるりと向き直り、リアティはバーンの前まで飛んだ。
 バーンは苦しそうな顔で頭を抱え、涼野はその横で明らかに悲しげな顔をしていた。リアティは、のんきに飛びながらそれを楽しそうに眺めている。

「雷門とは戦えば蓮が……」

 バーンは言葉を切った。
 頭が起きて欲しくない最悪のビジョンを見せつけてくる。雷門のユニフォームを纏う蓮がいる。周りには円堂を初めとする“今”の仲間たち。蓮はこちらに向かって、鋭い視線を投げかけてくる。きっと怒っているのだ。正体を隠し、普通の友達として付き合ってきたから。どうして嘘をついたんだ、と極限まで低められた声が問いかけてくる。そして。僕はお前を許さない、と蓮は低い声で続けてくる。可能性が高いビジョン。

「蓮とは、蓮とだけは戦いたくない」

 ガゼルは苦しそうに言葉を吐き出した。
 神などいないと改めて思った。神はいるとしたらこんなむごい仕打ちをしないだろう。かつて分かれた大切な人間とどうしてこんな最悪なタイミングで会ってしまったのだろう。もし会わなければ悩むことなどなかったのに。学校を破壊することに罪の意識は覚えなくても、彼に手を下すことだけはためらわれる。何故、何故なのか。理由を問う声が、脳内をぐるぐると巡る。

「ん〜? おまえたち、まだ幼馴染との関係ひきずってるんだぁ〜? あははっ!」

 リアティが馬鹿にするように高笑いをする。バーンとガゼルは何も言えず、恨めしそうにリアティに鋭い視線を送る。するとリアティは嘲笑の表情で二人を見つめ、今まで黙っていた研崎が二人に現実を突きつける。

「バーン、ガゼル。あなたたちは、自分たちがエイリア側の人間だということを忘れていませんか? それに白鳥は記憶喪失。何年かかってもあなたたちのことなど、絶対に思い出しませんよ」

 バーンとガゼルは思わず互いに見つめ合った。はっとしたような全く同じ顔。どうやら、全く同じことを考えているようだ。楽しかった幼少期には戻れない、と言うわかりすぎている現実のことだ。そして、自分たちがいかにかりそめの付き合いを楽しんでいるか。
 
彼らが見合う横で、リアティが一層高く笑う。人間なら抱腹絶倒と言うところか。羽を激しく上下に動かし、脚をばたばとさせている。

「そぉ〜そぉ〜! それにさぁ〜今、思い出したりしたら白鳥って子、かわいそうだよね。友達が実は敵側の人間だったなんてねぇ〜」

 バーンが再度リアティを黙らせようと近づき、それを察したリアティは素早く定位置である研崎の右肩に止まった。それから再度中に飛び、バーンとガゼルを見下ろす位置で止まる。

「どうせばれるんなら早いほうがいいよねぇ? ねぇ、早く雷門倒しちゃいなよぉ。プロミネンスとダイヤモンドダスト——どっちが先にジェネシスになるのかみものだねぇ〜」

 それ聞いたガゼルは歯を少しむき出してリアティを見、バーンはリアティに剣突(けんつく)を食わせる。

「おい、土鳩(どばと)! 話はそれだけか!」

 リアティは叱られてもけろりとしていた。滑るように部屋を縦横無尽に動き回り、バーンを小ばかにする調子で声を投げかける。

「な〜に怒ってるのぉ? 優しいリアティはおまえたちに助言してあげただけなのにぃ〜」

 バーンが両手で挟み込むようにリアティを捕まえようとして、リアティは素早く上へと飛んでかわす。掴み損ねた両手と両手が重なり、拍手(かしわで)を打ってしまった。
バーンは悔しそうに舌打ちをすると、リアティを嫌そうな顔で眺めているガゼルの肩を掴んだ。

「おい、土鳩の相手しないで帰るぞ」

 ガゼルは無言で首を縦に振り、こちらを気味悪い笑みを浮かべながら見続けている研崎に背を向けた。リアティは不適に笑うと、再度研崎の右肩に止まる。バーンとガゼルを浮かび上がらせるスポットライトが消え、彼らが闇と同化した時、

「ですが、バーン。ガゼル。だんな様に逆らうのも結構ですが、エイリア学園以外にあなたたちの居場所はないのですよ。それを心に刻んでおきなさい」

 研崎は釘をさすように口を開いた。返事も物音もなかった。ただ暗闇が広がるばかりだ。

「ちぇ〜。おもったより手ごわいなぁ〜」

 めんどくさそうにリアティがため息をつく。研崎は闇を見つめながら腕を組み、ポツリと零した。

「あの二人では、恐らく雷門を倒せないでしょう」

「幼馴染がいるからかぁ〜。でもね〜羽崎ぃ」

「……研崎です」

 研崎は肩に止まるリアティを見ながら切実に訴えた。しかしリアティに軽くかわされた。

「いいじゃ〜ん、羽崎で。でもね〜羽崎。人間は簡単に変わることができるんだよ? 強い友情で紡がれた(つむがれた)絆なんて、見せかけさ」

「しかし、ガゼルとバーンにとって、白鳥の存在は大きすぎるようですが」

 リアティは得意げに笑う。

「へへ〜わかってないなぁ、羽崎。バーンとガゼル、白鳥の絆は例えるなら谷と谷にかけられた一本の丸太橋さ。ちょっと手を加えてやれば、丸太はすぐに谷の底さぁ〜」

「ふむ、では策があるのですか?」

 研崎が尋ねると、リアティは自信満々に、

「あの二人はリアティのために必要なんだぁ〜。でもいきなりじゃ退屈だからぁ〜」

「から?」

「今回、少しだけ手を加えて二人が改心するか見てみようよぉ〜」

 やがて光が消え、辺りは再度闇に包まれていた。だが闇の中に爛々と輝く二つの金色の円があった。パッと赤いスポットライトがその姿を照らし出す。そこにいたのは、北海道でキャラバンの屋上にいた黒いハト。ライトの光で赤みを帯びた黒い体毛が輝いている。

「……バーン、ガゼル」

 黒いハトは闇を睨みながら、若い女の子のような声で呟いた。

*同時刻、沖縄。

『なんと、雷門がジェミニストームを……』

 商店街のTVをショーウィンドウ越しに見つめる男がいた。オレンジのフードつきパーカーに身を包み、その顔はうかがえない。しかし男は次々に移り変わる画面を食い入るように見つめていた。

「円堂、みんな」

 切なく彼らの名を呼びながら。


〜つづく〜
今回はリアティってなんだって思いになる話でしょうか。今回はバーンとガゼルの状況を描いてみました。そしてとある人をwwあまりにも空気が進んでいたので、です。

そして今回の地震について。私のところは震度4。
地盤が固いのか大きな被害はありませんでした;;
家でぼっちでしたので、とても不安でした。親と連絡がついたときには、思わず涙が;;

東北地方の被害が尋常ではなく、ニュースを見るたびに心が痛みます。
皆様はどのようにお過ごしですか?
安全に時が過ぎることを祈るばかり。
そしてこの小説が少しでも、みなさまの気持ちのやすらぎになるのなら幸いです

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.337 )
日時: 2011/03/12 18:39
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 地震では死なない=イナイレ大好きパワーww

>>ふぁいんさん
ふぁいさんもお部屋のお掃除大丈夫ですか;;
わたしの住居は奇跡的に物が落ちませんでしたが、落ちた写真縦がかけました・・・!留め金が欠け、どこかに消えました;;
蓮は可愛いですか。よし、メイド服を着させようかな〜(この後雫を見たものはいない)
やっぱりファイアードラゴン人気だなぁwwそーですよねー3TOPは私も大好きですwwファイアードラゴンって書いていて楽しいです。

コメントありがとうございました^^

>>成神 瑠希亜さん
お初です^^えっと、タメでオッケーですか? 
私も死ぬかと思ったorz机の下に潜っていて何とかしのいだww
後で遊びに行くねww

>>空屡
うはぁああああああ!来てくれてとっても嬉しい!あいして(だれよ、この変態)私もー……空の短編読んでいました。いってなくてすいません。後で顔を出してきます。

名前変えたんだね^^とてもおしゃれでセンスが光るよww

神ね〜髪の空耳だよっぺ。もう原作から脱線しているし、キャラ崩壊マジ乙状態wwしかも、風丸の神のアクア発言まだ入れてない!この五章でしっかり書いていくつもりでしかも雷門組みでは風丸を目立たせる気マンマン。
え、蓮が可愛い? 愛でてくれる人大好きです(おまえがおかしい)よ〜しまずはメイド服を着せて、それから(バーンによる制裁でしずくの姿は略) 
よく言われるよけど、どんなところかなww友人に聞いたら気が弱いところだそうだ。

5、5時間もかかって帰ったのか!?足大丈夫? 仲間がいたならよかったなぁ;;私は一人。

私は卒業式の予行があって早帰りだったから、家でアイポッド聞きながらのんびり読書していたら(しかもイナイレ劇場版小説ww)いきなり家が揺れた。本を放り投げて、机の下にだーイブ。後は揺れが収まるまでずっと机の下にいた。親は仕事でいないから夜まで一人orz

ではでは、コメントありがとう^^

>>星沙さん
きゃああ(おい)星沙さん、お久しぶりです><久しぶりにお見かけできて安心しましたww最近お客さん少ないので嬉しいです♪

私も日本の足で地面に立っております。ふっつーに生きていますww

震度2ってことはかなり遠くですね。どこに住んでいるんですか?
私は東京の左の方です。田舎です。

漫画キャラのグラスが……せっかく作ったのに悲しいですね;;
イナイレは残っていたんですか〜なんか不思議な感じがします。

こちらは写真たてとコンビニで購入したイナズマイレブンのDVDが震度4弱で落ちました。
卒業式予行で早く帰宅し、イナイレの劇場小説を『リグレット・メッセージ』をアイポッドで聞きながら優雅なタイム。
そして次の瞬間揺れが! 
本は放り投げ、アイポッドはイヤホン耳から抜いて抱きかかえながら机の下へごー。揺れが収まるまで待って外に出たら、棚から落ちたカオスのDVD発見。
バーンとガゼルが背中合わせで腕を組み、ドヤ顔でこっちを見ているのと目が合いましたwwなにこのラベルーと叫びながら、思わず噴出しながら、棚に戻しました。

テレビもニュースばっかりですよねorz見たい番組あったのに見れませんでした;;

またちだまりがっ……!嬉しいです(おい)

バレンタイン短編では私も鼻血出しまくりました。調子に乗って書いた、特に>>297->>298に欠けては暴走しているのがわかると思いますww
蓮はアフロディを抱きしめ(←チナンが勘違いするシーンが書きたかった結果)るシーン、ともに絵まで描いてもらっちゃいましたwwその1シーンの絵だけは欲しいとねだったんですww
しかもご丁寧に看病シーンまで書いてしまい。書いてから、自分がぱんぴーじゃないと改めて悟りましたww蓮とアフロディがブームになりかかっています。
蓮の誕生日短編はファイドラかイナズマジャパンか。悩みます;;

無駄に語りすぎてすいません。ではではコメントありがとうございました♪

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.338 )
日時: 2011/03/13 18:52
名前: 星沙 ◆GdYtMY4AZo (ID: KY1ouKtv)
参照: 元癒玖刃です!

ハイw初めて作ったヤツが砕けました☆
ま、自分自身あまりうまいと思えずにいましたw
私、結構鈍感(円堂並み)なんで、寝ているときに地震が来ても分かりませんw(夜は遅寝なんで、1時までは気付く)

私の住んでいる場所ですか??
特になんともいえませんが……愛知県の海に面していないところですw
筆柿ですw

でも、卒練のとき小説のヤツを先生に見つからないように書いていましたw
家に帰ってきて思ったこと……
星「アレ?私のグラス……ない?
って、本(コミック&小説)は大丈夫だろうか!」です
あいにく本が散らばっていました(イナイレは結構丁重に扱っているので、無事でしたw机の下の棚にしまってあるのでw)

棚から落ちたものは特にないですねwしいて言えばイラストノートw
開いていたページに噴く私w
色々書いてあった(最近のものではなかったw)姉と争ったイラスト……w
弟のお題に答えた風丸w結果は引き分けw(;・ω・)
苦い思い出w思わず隠すww
あぁ、本とは何故良い本ばかりなのだ〜★
最近そのおかげでw小遣いがww(今週だけで4冊買いましたw
(イナイレ除き4,5ぐらいは本の種類があるのでw)




そういえば、私はタメ、呼び捨てOKなのですが、しずく様をどうお呼びいたしたらよろしいでしょうか?

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.339 )
日時: 2011/03/22 12:26
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 停電近いのでコメント返しは後になりそうです;;

 三日後。サッカーの練習をし終えた雷門イレブンは、紅葉をキャラバンに乗せ、漫遊寺を後にしていた。まだ京都の中を走り、とある駐車場に停車していた。中で少し問題が起こっていたからだ。

 それぞれの席から身を乗り出しながら、後ろのある一点に視線を注ぐ雷門中サッカー部の面々。その顔には驚きと呆れが混ざり合っている。原因は、一番後ろの席で、鞄と鞄にはさまれて座る木暮だった。

「うっしっし〜」

 いたずらめいた笑みを浮かべながら木暮は引くように笑う。
木暮は何故か雷門のジャージに身を包んでいた。木暮の左右にある鞄も、数えると、数が一つ増えていた。
 木暮が仲間になった覚えがないだけに、円堂たちの頭には、疑問符が飛び交う。
 こうして見ると、木暮はかなり小柄だ。雷門中サッカー部のメンバーは全員、足が床に届いているが、木暮は届いていない。退屈そうに届かない足をぶらぶらさせている。もう10cm背が高ければ地面に足がつくだろうか。

「なんでキミがここにいるの!?」

 蓮が戸惑う円堂たちの気持ちを代弁すると、木暮は得意そうにそっくり返る。

「このイプシロンを破った木暮様が味方になるんだ。ありがたく思え! うしし〜!」

 “破った”のではなく、“試合放棄”が正しい。それを勘違いしているのか、誇張しているのかわからないが、自慢げに木暮は高笑いする。 それを聞いて大半のものは呆れたように目を細めるか、相手にせず無関心な態度を取るかのどちらかだった。だが、染岡は今にも木暮を殴ろうと席を立ち上がり、吹雪にたしなめられた。
 
 蓮は通路を挟んで隣に座る春奈と目を合わせ、苦笑しあう。そして、春奈の横から鬼道が殺気に溢れた刺々しい視線を送ってくることに気づいた。春奈は兄が殺気立っているのに気づかず笑いかけてくる。
 
 鬼道は無表情。しかしゴーグルの奥から発せられる力は恐ろしいほど強い。怒気を孕んだそれは、大抵の人間なら黙らせられるだろう。しかし蓮は屈せず、言い訳を必死に考えていた。
 その三人を余所に(よそに)瞳子は、木暮の足腰の力を買ってこのチームに入れたことを説明していた。

「木暮くんはDFに向いていると思ってこのキャラバンに入れたわ」

 おぉ、と納得する声が上がる。そしてよろしくな木暮、と挨拶が飛び交う中で、

「き、鬼道くん! 僕は春奈さんと今日初めて話したんだよ!」

 蓮は、鬼道の誤解を解こうとやっけになっていた。

 両親を事故で失い、二人きりの兄妹なせいか、鬼道は春奈をとても大切に思っている。かつて春奈と施設にいた頃は、いじめられっこの春奈を守っていたと言うのだ。
 だが少々度が過ぎることもある。いい例が春奈とあまり親しくなりすぎると、春奈に恋心を持ってるのではと疑われることだ。
 鬼道のことはチームメイトから注意されていたので、春奈とは軽い付き合い。が、今回春奈には自分の過去を打ち明け、同情の気持ちを抱かせてしまった。 最近、春奈の方から声をかけてくることが多くなってきて、同時に鬼道がいかめしい顔付きでこっちを見てくるのが増加したのも気のせいか。
 
 疑わしきは罰せずなどと言うが鬼道の場合、疑わしきは罰す。疑いをもたれようものなら、とことん追及するのが彼のやり方だ。

「そうなのか、春奈?」

「そうよ、お兄ちゃん。白鳥先輩はわたしと木暮くんにつらい過去を打ち明けてくれたの」

 鬼道が確認するように春奈に尋ね、春奈は同情の眼差しを蓮に向けながら頷いた。蓮は、優しい眼差しとナイフの切っ先のような怒気を同時に受け止め、作り笑いで応対していた。    

 そのうち鬼道と蓮の間に横たわる異様な空気に気づいた円堂たちの視線が、自然とそちらに集中する。固唾を呑み、成り行きを見守っていた。

「……ほう、過去を打ち明けられたのか」

 落ち着いた声音だが蓮は背筋を寒気が走り抜けるのを感じた。円堂たちが唾を飲み込む音がはっきりと聞こえる。
 同情とも哀れむともつかない視線が背中に突き刺さる。
 同情するなら助けて、と蓮は一応振り向いて、円堂たちに助けの視線を送るが、みなことごとく蓮から視線をそらした。一之瀬なんか親指を立ててごまかした。まさに万事休す。
 蓮は油切れ掛かったブリキのように首を動かしながら、鬼道のゴーグルに目をやる。中の赤い切れ長の目が、探るような目つきでこちらを睨んでいた。

「先輩はわたしたちとは違うけど、悲しい形で両親を失っているの」

 春奈が沈んだ口調で鬼道に語り、鬼道の目が見開かれた。円堂たちが驚いたように蓮へと視線を向ける。木暮だけは眉根を寄せていた。
 蓮は四方八方から飛んでくる視線を受け止めながら、春奈に目配せをした。控えめに春奈は首を縦に振ると、
 蓮は鬼道を見ながら、淡々と自分の過去を語った。ついでにどうして春奈に話すことになったのかもきちんと説明した。

 長いこと語った蓮を、鬼道は、円堂はずっと無言で見つめていた。
 鬼道の表情は疑うようなものから、徐々に哀れむようなものになっていた。そして勘違いして申し訳ないという思いも顔に表れ始めていた。円堂たちも複雑な表情で蓮の話を聞いている。
 やがて蓮が語り終えると、

「……春奈、円堂の横に座れ。白鳥は俺の横に座れ」

 鬼道は静かに指示を出し、蓮は春奈と席を入れ替えた。
 隣に座る鬼道はいつもの落ち着いた顔つき。ゴーグルの奥の瞳は穏やかな色をしていて、蓮は心内でほっとため息をつく。鬼道はお冠ではないらしい。

「すまない白鳥。オレは勘違いをしていたようだ」

 すまない、と開口一番に鬼道は蓮に謝った。
 何を、と聞こうとしたが聞くのも気が引けるので、蓮は聞かずにおいた。

「ううん。気にしていないから」

「一つ気づいたが」

 鬼道は前置きすると、

「この前まで自分がお荷物だと感じていることを隠していたな。それは両親の死に方と関っているんじゃないか?」

 円堂たちがどよめく。
 蓮は考え込むように目を伏せると、訥々(とつとつ)と語りだした。

「多分。何となくだけど、自分が迷惑をかけると、相手がいなくなる気がして怖いんだ。両親みたいに永遠に帰ってこないかも、って」

「だがオレたちは消えたりしない。むしろ思いをぶつけてもらわないと困るな」

 安心させるように鬼道が口元に笑みを見せ、蓮は持ち前の明るい笑みを向けた。雰囲気が少し明るくなった気がする。

「そうだね」

「ところで」

 鬼道は辺りを窺いながら、ぎりぎり聞き取れる位の声で蓮に耳打ちする。
 興味があるのか座席の近くにいた何人かが身を乗り出して声を聞こうとしたが、蓮と鬼道に睨まれ、後ずさった。

「白鳥。お前は春奈のことをどう思う?」

 蓮は鬼道の耳にそっと口を寄せ、ひそひそ声で、かなり早口で語りかける。

「明るくて優しいし……いい子だと思う」

「そうか。ならいい」

 満足げに笑うと鬼道は腕を組んで春奈を見た。春奈は可愛らしく小首をかしげ、取り巻きの後ろにいる目金がポツリと呟く。

「……シスコンですね」

 その後、蓮は鬼道と長いこと話し合っていた。春奈と鬼道の過去について散々聞かされた。勘違いは奇妙な友情へと変わったらしい。

「風丸?」

 その夜、目が覚めた蓮は窓の外から声がすることに気がついた。眠い瞼を擦りながら窓の鍵を外し、窓を開ける。涼しい夜風が蓮の前髪を舞い上げた。風が声を運んでくる。

「どうしたんだよ」

 心配するような円堂の声。窓の上から聞こえてくる。蓮は脇に丸めておいたジャージの上を羽織ると、みなを起こさないよう注意しながら外へと出た。木々がざわめく音を聞きながらキャラバンの屋根を見上げると、果たして円堂と風丸の後姿が見えた。二人とも足を崩して座っているようだ。蓮の方を向かない辺り気づいていないのだろう。風丸の青いポニーテールが暗闇の中でも、確認できるほど揺れている。

「円堂。オレたちはこのままでエイリア学園に勝てると思うか?」

「もちろんだ。みんな努力して、この前まで勝てなかったジェミニストームにも勝てたじゃないか!」

 風丸が真剣な声で聞いて、円堂が明るく答える。風丸の表情は伺えないが、蓮は風丸が何か悩んでいる様子であることをうっすらと感じ取っていた。無言で二人の姿を見上げ、様子を窺っている。

「でも、この前のイプシロン戦はどうだ? デザームの放った必殺技にオレたちは、何もできなかっただろ」

「…………」

 現実的な問題を風丸に突きつけられ、円堂は言葉を返せなかった。しばらく沈黙が二人を支配し、不意に風丸が沈黙を破るように呟く。

「“神のアクア”があれば」

 “神のアクア”と言われても蓮ははっとした。“
神のアクア”は、フットボール・フロンティアの雷門中の決勝戦の相手——世宇子(ぜうす)中学校が使った飲み物だ。一見、ただの水であるが実は身体能力を一時的に向上させるドーピングアイテムなのだ。蓮は実物を見たことはないものの、円堂たちから話は聞いていたので知識はあった。苦戦した様子や、世宇子のキャプテン、アフロディなる人間が強いこと。美しくも華麗な選手らしい。アフロディと言う人間に蓮は興味を覚えたが、会うことはできないと諦めていた。

 そして風丸は円堂に詰め寄る。横を向いたので、風丸の顔の輪郭が月に照らされはっきりと見えた。必死な顔つきで円堂を説得しようとしている。

(風丸くん、今すぐ強くなりたいの……?)

 蓮は風丸の思いを読み取ろうと、目と耳に意識を集中させた。風丸の顔を見上げ、声を聞く。

「なあ、円堂。世界を救うためなら、“神のアクア”を使っても許されるんじゃないか?」

「風丸!」

 円堂は非難するように風丸の名前を呼んだ。

「だってそうだろ!? エイリア学園もドーピングしているって鬼道が——」

 声を荒げ、風丸は言葉を続けようとしたが、円堂に肩をつかまれて言葉を切った。
 円堂は風丸の両肩をつかみ、風丸を見据えながら諭すように言う。

「あいつらがドーピングをしていたとしてしても。オレたちまでやったら、オレたちはエイリア学園と同じだ。勝つためにドーピングをするのはずるだ。努力すれば必ず勝てる」

 力強く言い切った円堂の言葉を聞きながら、蓮は心の中で円堂に問いかける。

(でも努力で追いつけないときはどうすればいいんだ? 円堂くん)

 すぐに効果が出ればいい。しかし努力の成果が出るのが遅ければどうなるのだろうか。このキャラバンの旅で求められるのは“早い成長”だ。エイリア学園は短期間でどんどん強くなる。こちらも素早く進化しないと敵わない。でもそのスピードに追いつけなけなくとも円堂はしっかり待ってくれるようだ。それが嬉しくもありプレッシャーでもあった。

「……そうだな」

 片手で肩に置かれた円堂の手を払いながら、風丸は暗い調子で答えた。円堂がもう片方の手も外すと、風丸はまた前を向き、俯いてしまった。落ち込むように丸められた背中が蓮の黒い瞳に焼きつく。

「悪い。一人で考えさせてくれ」

 風丸が沈んだ声で言って、円堂は無言で立ち上がる。そのまま地面へと降りる梯子の方へ進もうとしたとき、風丸が円堂を呼び止める。

「円堂。一つだけ教えてくれ」

 円堂がゆっくりと振り向いて、

「この戦いは、いつになったら終わるんだ?」

 蓮が答えられずに硬直している円堂を見ていると、後ろから小ばかにするような声が聞こえた。

「ふん。うつうつ悩みやがって」

「あ、アツヤ!」

 円堂たちに悟られないよう、蓮は小声で叫びながら振り向いた。後ろにいたのは吹雪。しオレンジの瞳。逆立つ白い髪——アツヤだ。
 気づかれたか心配なので後ろを見ると、円堂と風丸は対峙したまま固まっていた。

「よう白鳥。眠れないのか?」

「……なんだっていいだろ」

 アツヤは蓮に歩み寄り、嘲笑めいた顔で蓮に声をかけた。蓮は強張った顔でアツヤを睨んだ。口調も自然と荒くなる。

「……お前、少しは瞳にある黒を薄めたようだな」

 蓮の黒い瞳をじっと観察しながらアツヤは言った。今回は胸の奥にまで刺さるような視線ではなく、あくまで”観察”するような視線だ。恐ろしさは感じられない。

「わかるのか?」

 蓮は強張った面持ちを崩さずに尋ねた。
 アツヤは鼻を鳴らすと、白い歯をむき出しにして獰猛に笑う。すべてを見透かし得意になったような表情だ。

「ああ。でも、お前の分厚い黒の層は並大抵のことじゃ剥がせないな」

 唐突に今日感じた懐かしい感じが身体の奥底から、這いずって来た。身体の内を焦がすような熱い思い。頭はしびれ、全身は火照る。蓮は暑さにふらつきながら、額をキャラバンの側面に当てた。心地よい冷たさが額を冷ます。
 南雲や涼野の顔を思い浮かべながら、蓮は身体の熱にうなされるように言葉を零す。

「思い出そうとしても、思い出すことができない。手を伸ばせば届きそうな位置にあるのに、するりと僕の掌を通り抜けてしまう」

「……通り抜けた方がおまえの幸せになるからだろ」

 アツヤを問いただそうと後ろを向いたとき、アツヤは”消えていた”。そこにいたのは穏やかな顔付きの——士郎の方だ。

「あれ? ボク、どうして起きているのかな」

 アツヤとしての意識がないらしく、吹雪はせわしく辺りの様子を窺っていた。白いマフラーが風になびいている。

「アツ……暑いからじゃない?」

 蓮は適当なごまかしをでっちあげると、

「わかったよ!」

 吹雪は突っぱねるように同意した。

「へ?」

 話がかみ合わずに蓮が聞き返すように声を出すと、吹雪は驚いた顔で連のほうを向いた。どうやら、蓮に気がついていなかったらしい。
 吹雪は取り繕うように作り笑いを浮かべると、ゆっくりと蓮から後ずさる。

「ご、ごめんよ。独り言なんだ。じゃあ、おやすみ!」

 言うが早いか吹雪は逃げるようにキャラバンの中へ消えていった。揺れる白いマフラーを目で追いながら、蓮はため息をついた。寒くないのか無色透明のまま空気と同化した。
 キャラバンに背を当てたまま、蓮はずるずると崩れた。冷たさをジャージごしに感じながらしゃがみこむ。
 地面にキャラバンの黒い影が伸びている。吹雪の中にある”アツヤ”と言う”影”を隠そうとした吹雪。でも、自分はもうアツヤのことを知っている。

(そういえば吹雪くんと僕が同じってどういうことだろう?)

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.340 )
日時: 2011/03/15 13:52
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: イナイレパワーで乗り切るぞ!

>>星沙さん
今日、卒業式が延期になりましたぁ;;
今夜は6時から10時まで停電する予定で、先ほど食料を調達しました。それに家の周りでは電車が止まっていますorz星沙さんの周りは大丈夫ですか?

自分でつくられたのがすごい! 始めて作ったのに残念ですね><
私も小学校5年生で作った茶碗がありますが、銀魂やらひぐらしやら色々書いてあります。そしてそれを先生に出したwwなんかすごい冷めた目でしたね、先生。それに確か展覧会にも出されて(全員参加だしw)親がキャラ名すらすら言い当ててびっくり。今は小物入れと化していますw

私もチョ〜がつく程に鈍感ですww一度寝だすと目が覚めることは滅多にありませんww一応12時には寝ていますが……眠りが深いようです。
私が一時まで起きていたら、翌日寝不足になります;;一回ボンバーを買った日にファイアードラゴンが見たいがために徹夜してDsやって、翌日眠すぎて死にそうでしたww(アフロデイたち拝んだ瞬間にテンションMAXで眠気が吹っ飛びましたがww)

本が散らばったんですね;;イナイレは丁重に扱う……やっぱり好きなものに対する扱いって違いますよねww私もイナイレのカードだけはまともにファイリングしているし。

卒れんはずっと妄想タイムですww先生の話→脳内はイナイレの小説をどう進めるか。

イラストノートかぁ。風丸は見てみたいところですw
私も部屋を掃除していると、昔書いた痛い小説が出てきますww台本小説だし、効果音だらけだし(バーンって書いてあったなww)。描写が皆無。焼き捨てたくなりますが、机の中に隠しましたww

本はいいもの多いですよね;;4冊も買ったんですか!? すごい。

今月はイナズマのカードを買うのでお金がなくなりそうです。ビックカードコレクション2とプロマイドコレクション4.もち南雲&涼野狙いw
お守りプロモは韓国組がいるのを何とかゲットしましたが、wktkしすぎてけっこ〜つぎ込みました。エンスカイめえと歯軋りしてももう遅いw

私は買うより読むほうに夢中で頭痛がよくしますwwこの前も一冊ラノベ購入しました。まだ読めないww

あ、さんざん敬語で語っておいてすいません;;
私はタメも呼び捨てもオッケーですbしずくや好きな愛称をつけても大丈夫ですwwお好きにおよびくださいww

すごいgdgd語りまくって失礼しました。星沙さんと話せるとすごく嬉しいですww今回は敬語になってますが次はタメで行かせていただきます♪

ではではコメントありがとうございました^^

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.341 )
日時: 2011/03/15 21:40
名前: ふぁいん (ID: xLOyVEm6)

今回はアニメのあのシーンがしっかり再現されてます!蓮君アフロディに興味持つのがい意外性があります。短編では仲間ですから

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.342 )
日時: 2011/03/16 16:59
名前: 星沙(別PC) ◆GdYtMY4AZo (ID: IsQerC0t)

一時で寝不足ですか。
私の友人もそんな感じです!
自分、本を読んでいると寝なくても平均大丈夫なのですが、朝はgdgdですww
というか、あのノートは姉よりはマシだったのかもしれないですw
自分の絵に一言言ってみよう!
はい、ひどかったです。今見るとw


親が、キャラ名をスラスラと!?
私はそんなこと絶対ありませんwコミック&ゲーム以外はかくヲタですからw

あ、、、、、、w
クラブで作った作品が……色合い……完全にファドラカラーだったw(何でだろうなぁ〜
3つ葉が……カオスブレイク組w
チャンスゥ……わすれてた★(葱書いてあったけどwですw
↑気にしないでくださいです!

そういえば、私のところ、停電はないです(今のところ)

しずくは、大切なものは大切にするんですねw
私は一回DSのカセットをなくしかけたことがありますw

そういえば、しずくっていくつ?
私のプロフ〝仮〟
性別(女)
年齢(12)
特技(絵描、エチャはやがき、PCうち)
性格(人見知り系一匹狼、もじもじ属性)
↑なにがしたい、自分
地震が、打っている間に1回あったw震度3強w

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.343 )
日時: 2011/03/16 19:10
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 停電した。暗闇の中でジ・オーガプレイ

>>ふぁいんさん
風丸の、神のアクア発言回が再現できていればよいのですがorz
そういえばアフロディは短編では親しげに蓮とか呼んでますもんww一応気にはさせてみました。

コメントありがとうございます^^

>>星沙
今回からタメで行くよbかなりカオスになるかも。
私もあの古い小説は誰にも見せられない^^;
姉よりマシってお姉ちゃんのはどうなっているんだ^^;

星沙は隠れなのか・・・…うちは半公認状態。親も普通に銀魂なんか読んでるし。DVDを買うことは認めてくれないが←
イナイレは少し反応違うなぁ。いっしょに見ていると突っ込みまくってるwwこれサッカーじゃないとか。
いい名言がアラクネスが春奈に「あなたがいけにえに〜」とか言ってたよね?親の突っ込みは「このアラクネスとか言うのが生贄になればいい」とかひどいことを言っていたww
吹雪と涼野の区別がつかないらしく、部屋のファイドラポスター見るたびに吹雪君がバーンやアフロディといるとか言ってますw

やっぱり星沙もファドラ好きなんだ^^*私も短編が気づけばファドラだらけorz
三つ葉がカオスブレイクの色……おしゃれだね。チャンスゥはどうしたww

確かに”大切なもの”はね。どうでもいいものはあっさり売ったり、なくしたりします。全くプレイしていないボンバーのカセットが消えたり(友人が持ってましたが)。

では私もプロフを。年上だが気にせずタメでオッケーだよb

性別 生物学的には女
歳  15歳(中身は中二)
趣味 小説書くこと イラスト 読書←小説の方がマシ。
うし、性格も
(おっとり天然系(らしいです。友に言わせると)。一人行動がすき)

星沙は可愛い感じがする^^
地震があった!?こっちも停電の前にあったorz

停電ないのが羨ましい。
こっちは暗闇の中でジ・オーガやったり夕食食べたりしてた。

ではではコメントありがとう^^

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.344 )
日時: 2011/03/16 21:14
名前: 星沙(別PC) ◆GdYtMY4AZo (ID: KY1ouKtv)

停電はなくても、PCの接続が3回に1回フリーズするようになっていますたw
(ココ↓から、ヤバクなります)
チャンスゥ?あぁ、ゴメン忘れてたw(背景の色ともマッチしてくれなかったし……背景が黒なため、緑をあわせると、相当ヤバイ。蛍光色だったらあっていたのでは?だが、チャンスゥはそんな蛍光色キャラではない!)
というか、色的に緑は入れる場所がなかった……(自分、酷w
↑四葉描こうとしていたが、やっぱりカオスブレイク組カラーじゃないとみとめられない、星沙でした〜w

親が銀魂ですかっ!?
私の家はイナイレで兄弟そろって言い争いしていますw
(姉、弟VS星沙)
↑完全に姉、弟はジャパン大好きw
私だけ孤立していますw(勿論ジャパン好きだけど、ファドラには勝てない(勿論ジャパン組も好き)なんというか、ファドラのほうが、というか三人が……決め手かな☆
ん〜……でも、帝国も好きd(どっちかにしろw
えいりあも好きd(どれが一位w)

姉とは帝国大好き仲間ですが、敵対関係なのもあるんですよw
姉、元祖雷門派。私洗脳、闇落ち、悪役好きでなぜか敵対……w
姉と同じ意見なのはホント限られているw

姉の絵は完全なる萌え絵……といいましょうねww
私はアニメ再現派なんですよw(萌え系で書くときもありますが……

これからも更新がんばってください!
応援しています!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.345 )
日時: 2011/03/17 10:35
名前: ふぁいん (ID: FtPJcOXY)

追加読みました!蓮君が鬼道さんと仲良しなのにびっくり!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.346 )
日時: 2011/03/17 16:31
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 最後のコメントは消したなり。

 それから雷門中サッカー部は、広い公園に来ていた。
 円堂が練習をしたいと我を張り、瞳子も許可をしたので練習をすることになったのだ。公園には人口芝が植えられ、抜けるような青空の下に緑が広がる。雷門中サッカー部はユニフォームに着替えていた。
 広いので練習できるスペースは十分にあるが、ゴールはない。
 だが円堂がいる背後にゴールがあると思い、みなは思い思いに行動していく。
 その中で蓮は、FWの位置に立たされ、染岡と共に駆け上がっていた。風丸たちを敵と見立て、抜くように鬼道に指示された。
 当の鬼道は、少し離れた場所からじっと蓮の動きを観察している。

「抜かせるか」

 足の速い風丸が、ボールをキープする蓮にスライデイングタックルをしかける。蓮は冷静に、空いている左サイドにパスを出した。すぐさま染岡が受け取り、ぼうっとする木暮を抜いた。そしてボールは再び蓮の元へ。
 塔子と壁山が前に立ち塞がるが、蓮は塔子の左に行く素振りを見せた。

「ダメだよ、白鳥」

 塔子と壁山が左に注意を向け、右側への注意が薄くなった。その隙を突いて、蓮は塔子と壁山の間を通り抜ける。
 二人がフェイントであったことに気づいて、しまったという顔をした時には、蓮はすでに円堂の目の前に飛び込んできていた。一対一の決定的チャンスである。

「早いな、白鳥!」

 試合ではふらつく蓮の姿しか見ていなかっただけに、円堂は蓮を見直した。

 ——そういえば白鳥は落し物や地震にすぐ反応するよな。そういえばイプシロンのボールもカットしていたな。
 蓮が何かと敏感だったことを思い出し、円堂は納得する。蓮が右足を引いた。円堂も腰を下ろし、両手を前に突き出してシュート受ける体勢になる。

「くらえっ!」

 勇ましい掛け声と共に蓮がボールを蹴った。
 円堂から見て左側に向かって、まっすぐ飛んでくる。だがそれは円堂からするとかなり取りやすいボールだ。円堂はボールの元へ歩くと、両腕で包みこむように受け止めた。蓮は悔しそうな顔で肩をすくめる。

「あ〜。やっぱり止められた」

「なかなかいいシュートだぞ! 白鳥!」

 円堂は蓮を褒めながら、ぐっと親指を立てて笑いかけた。蓮は照れ笑いをしながら、円堂に頭を下げる。
 その光景を見ながら、鬼道は顎に腕を当てぶつぶつと独り言を呟いていた。

「白鳥は身体能力が高いようだな。だが……」

 染岡と共に駆け上がり、風丸を相手にしたときのこと。今度は風丸が逆にフェイントを仕掛けた。右に動くように見えるようわざと身体を右に向けた。すると蓮はがら空きの左側を突破しようとし、風丸がほくそ笑む。

「あっ!」

 蓮は進路を塞がれ、すれ違いざまにタックルを仕掛けられた。身体がバランスを崩した僅かな瞬間、ボールは風丸の足に張り付いていた。鬼道が片手を挙げて、それ以上動かないように指示する。

「あ〜僕の馬鹿ぁ。何度同じミスを繰り返せばすむんだ」

 蓮は自分を責め、右手で拳を作り自分の額を軽く叩いた。そこへ腕を組んだ鬼道が近づいてきて、蓮は叩くのをやめる。

「おまえはフェイントに弱いようだな。反応が速すぎて、逆にフェイントを食らっている」

「フェイントなのか本気なのか、見極めるのが苦手なんだよなぁ」

「それと、お前は吹雪のようなパワーファイターも苦手だな。よく“ボールウォチャー”になっているぞ」

「……強引に突っ込んでくる子に気圧されてしまうんだ」

 鬼道に自分の弱点を指摘され、蓮はしゅんとなりながら言った。

 大人しい蓮は、普段から強気な人間に押されてしまうことがある。それがサッカーのプレーにも影響しているらしく、サッカーをこなす上で荒々しいプレイヤーは天敵だ。
 相手が放つオーラや雰囲気に飲まれてしまい、ボールウォチャー(相手オフェンスやボールの動きに対応できず、ボールをただ見ているだけの状態になってしまった選手)になってしまうことがよくあるのだ。

「じゃあ、オレが特訓してやろうか?」

 特訓を終えて、染岡とこちらに来た吹雪——アツヤがからかう様に提案して、蓮はむっとした顔付きになった。反射的にその提案を突っぱねる。

「おまえには頼まない」

 蓮はアツヤに厳しい視線を向け、アツヤは小ばかにする笑みを返してくる。二人の間に漂う形容しがたい空気は、円堂たちを当惑させた。遠巻きに二人の様子を眺めている。
 見かねた染岡が二人の間を割るようにして入り込み、双方をなだめる。

「おい、吹雪そんな口調で言うなよ。白鳥、お前は吹雪が嫌いなのか? よくこいつと楽しそうに話しているじゃないか」

「そっちはDFの吹雪。FWの吹雪とは違う」

「どっちも吹雪だろ」

 警戒するような低い声で蓮が言い放ち、染岡は呆れた声を出して頭を抱えた。
“アツヤ”の存在を知るのは相変わらず蓮だけのようだ。FWになると性格が変わるのは、『試合のときは熱くなりやすい』と言うのが円堂たちの共通認識のようだった。
 
 アツヤは蓮を嘲笑の表情で見つめ、蓮の面持ちがますます固くなっていく。そこへ、颯爽(さっそう)と瞳子と紅葉が現れた。
 円堂たちの視線は自然とそちらに向き、アツヤは最後にもう一度口元を歪めて蓮を見た。その挑発的な表情に蓮は怒りを覚えたが、表には出さずに瞳子を見た。アツヤも瞳子を見る。

「次の目的地は愛媛よ」

 瞳子は円堂たちを見渡しながら言って、紅葉に向き直る。

「紅葉さん、説明してもらえるかしら?」

「みなさまは、愛媛で子供が誘拐される事件についてご存知でしょうか?」

「誘拐事件? エイリア学園と何の関係があるんだよ」

 染岡が聞いて、紅葉は淡々と答える。

「サッカーが上手い子供たちが次々と誘拐され、行方不明になっているのです。そしてその誘拐犯連中は、『エイリア学園』と名乗っています」

 『エイリア学園』と言う単語を聞いた途端、円堂たちの顔色が不安げなものになる。“名乗っている”だけではエイリア学園かどうか判断がつかないため、鬼道や蓮は難しい顔をした。

「エイリア学園の名前をかたっているのかよ!?」

「僕たちをおびき寄せるため、かな」

 信じられないと言わんばかりに染岡が声を張り上げるのを聞いて、蓮がふっと脳裏によぎった可能性を呟く。本当は頭で考えていただけなのだが、いつの間にか独り言になっていたようだ。円堂たちがええっ!? と一斉に驚きの声をあげてから、蓮はそのことに気がついた。
 目を丸くして円堂たちの驚愕の視線を受け止める蓮は、迷子の子供のようだ。
 紅葉はおろおろする蓮を余所に説明を続ける。

「わかりません。ですが、命からがら誘拐犯の元から戻ってきた子供たちは、みな『エイリア』と言う単語を呟いているようです」

 エイリア学園である可能性が濃厚になるにつれ、円堂たちは腕を組んだり、顎に手を当てたりと各々の姿勢で考え込み始めた。風丸が腕を組んで唸る横で、頭を使うのが苦手な円堂はすぐに音を上げた。退屈そうに持っていたサッカーボールをいじり始める。
 
 その時、明るいノリの曲が辺りに響き渡った。円堂たちは、顔を上げ、音の震源——鬼道へと一斉に注目した。鬼道は口をぽかんと開けていたが、すまないと言う様に片手を挙げると、ポケットに手を突っ込みながら円堂たちから離れていく。聞かれたくない相手なのだろうか。鬼道はポケットから携帯を取り出すと、円堂たちから2mほど離れたところで立ち止まって、通話ボタンを押した。

「オレだ」

『鬼道!』

 電話口から鼓膜が破れそうな大声がして、鬼道は反射的に携帯から耳を離した。離れている円堂は、電話の内容に興味があるのか鬼道の下へと歩み寄ってくる。後に何故か蓮が続く。鬼道は円堂と蓮の姿を確認すると、声量を落として電話の主に話しかける。

「氷冷(ひょうれい)か? どうした?」

『今どこに向かっている!?』

「え、愛媛だが」

 氷冷の焦っている声に、鬼道は戸惑いながら答えた。すると電話の向こうが無言になる。電話の向こうからは、命令する怒号とバタバタと走り回る音がする。しばらくして氷冷がかなり早口で、

『実は佐久間と源田が』

 そこから先は聞き取れなかった。

『こら〜!』

 可愛らしい間の抜けた声がした直後、氷冷が怒鳴る声がした。どうした、と鬼道が電話に語りかけるが、返ってきたのは無機質な、つーつーと言う音だけだった。氷冷は電話を切ってしまったようだ。

「い、今の声は洞面(どうめん)か?」

 鬼道が呆然としていると、円堂が明るく声をかけてきた。

「どうした、鬼道?」

「帝国学園のメンバーから電話があったが……すぐに切られてしまった」

「何かあったのかな?」

 蓮が不安そうに目を細め、鬼道は首を振る。

「わからない。だが愛媛につけばはっきりするだろう」

 この時、鬼道はかすかだが異様な胸のざわめきを覚えた。心臓を作る細胞一つ一つが、何かを訴えるかのようにむずむずするのだ。だがすぐに消えてしまったので、鬼道はさほど気にはしなかった。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.347 )
日時: 2011/03/17 16:54
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)

>>星沙
今回も再度カオスのターン!
PCの接続大丈夫か!?きっと影山かガルシルドのいんぼー((

確かにあの三色に黒はきついよねwチャンスゥって蛍光色キャラじゃないね。確実に原色系の(表現が違うかな?)キャラだと思う。
そうすると四葉の色はどうなるか気になる。
私的に蓮のイメージカラーが気になってきた^^チャンスウに似て髪は黒いし目も黒いし。でも性格は黒じゃない。明るい茶色かな((爆

あ、私も友達と対立しています。でもこちらにはファドラ仲間がいる(最近ネオジャパンに乗り換えようとしていますがw)ので、2対2くらい。
私も風丸や吹雪などジャパン組みには大好きな子がいるのですが、バーンやガゼルが決め手でファドラ好きになったwwアフロディも最近好きになりかかっていて……まずいです(なにが
エイリアも好きだし、マークも最近好きになってきたww好きな子だらけでグッズにめがーめがーいってしまう;;

友達は吹雪&佐久間、豪炎寺好きと好みが見事に分かれています。
それでも語りだすと意見があったりするので不思議です。
星沙とお姉さんの関係に似て、同じ意見は限られていて、いつももめにもめまくっていますw

元祖雷門は周りにはいないなぁ。私はエイリア(プロミネンスとダイヤモンドダスト)好き、友達はヒート大好き。
洗脳、闇堕ちも好みかもです。ダークエンペラーズなんかは風丸が好き。仲間の通称は「ヒロイン風丸」。

萌え派wwアニメ再現派ってことは、アニメのシーンを描いたりするの?すごいなあ^^
私は挿絵形式のを書いている。漫画の挿絵を真似して絵の技術向上にいそしんでます。

いつも応援ありがとう^^*星沙のコメントは励みになるよ><

>>ふぁいんさん
鬼道と蓮は仲良くさせてみたかったんですwなんか無理やり展開ですよねorz
ポジション的に助ける関係になるよう書きたいと思います。

コメントありがとうございました^^

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.348 )
日時: 2011/03/17 17:01
名前: (●A●) ◆ZAc0LgP5pA (ID: 0L8qbQbH)

しずく☆
やっほ〜☆めっちゃくちゃ久しぶり!!!!!!!!!!!
覚えてるよねッ!?あたしだよ〜☆
見ない間に更新してて読むの大変だったYO☆
しずくは元気そうでよかったZE☆
また毎回ココに来るからね〜!もう来れるしね!
しずくって何才だっけ?
それよりさ、あたしもイナイレのカード買ってたんだけど…全然当たんない!
バダップは当たったんだが…セインが当たらん!
あ〜当たんない〜〜!!最近は買わないがwww
イナイレのカード買ってあったんだよ!
それじゃあ、更新ファイト!!
                _,. --‐‐‐- 、
              , ''"       `ヽ
             /             \
            / ,.     _,∠ヽ、    、   ヽ、
           ,レ'     /,ィ‐;=、ヾl   ,A    ヽ
       __,,,/      / /7    ト、,ム' `!  レ'
     ,ィ´       /  `ヾ´     レ'`∧  !
     /       ,イ`ー、        〉゛ i レi´
     {∧     { \ |       -;   ,!  |
       ヽ∧   ヽ、_ `ヾ、        .イ  !
        ` \__ゝ_ノ   |   ` iー 'i´ l  ト、
              ,r=─--、ノ    L´--ノ、,人_,,ゝ
           /⌒ヽヽ、 \____ノ / ヽ
        /:|    \\ `<⌒ |/   .l
       く.: : :|   ー-、_.〉'´\_\..|,..='」. |
        \_|      |   _``「_)´ _) |
          ト、    .|\i_,..'´<\__.〉.|
          / l.      |  / / | `ー-、. |
            `>.|   \ | く   ト、  .>|
            〈 .|   \〉 .\/ >ー'´ .〉
          \|     \‐--‐'´〈.  /
             ├l     ├‐<7‾  l

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.349 )
日時: 2011/03/17 17:35
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 誕生に欲しいものは?上手いストーリーの書き方と描写と=文才

マリン
久しぶり^^*
最近はマリンのところに行けなくてごめんね;;マリンは地震、大丈夫だった?
読んでくれてありがとう^^マリンのように読んでくれる人がいるから、頑張ってかけるよ♪
私はいちおーは15歳。中身は14歳。いやもっと下かな……?

バタップいいなぁ^^私はロニージョが当たったかな〜^^;
セインなら家の近くで500円で売ってたwwカオスブレイクは200円で売ってたしww

応援ありがとう^^これからも頑張りますb

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.350 )
日時: 2011/03/17 18:01
名前: 未来 ◆G8Jw4.nqFk (ID: 0L8qbQbH)

初めまして!あたしは 鈴木未来でs…あぁっ!本名出してしまいました。
すみません。聞かなかったコトにして下さい。
実際のヒトからは、「未来」と呼ばれます。
おもしろいです!更新頑張って下さいね!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.351 )
日時: 2011/03/17 20:34
名前: ふぁいん (ID: KEq/ufVV)

蓮君むちゃ強い!バーンにもガゼルにも負けませんね!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.352 )
日時: 2011/03/18 10:59
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 今日は再度停電なので更新できるか未定です><

>>未来さん
わぁ^^*久々の新しいお客様でとても嬉しいです^^
面白いですか!? 嬉しいお言葉をありがとうございます><これからも頑張って行きます!!

あ、はい今のは聞かなかったことに。
「未来」さんは、とても可愛いお名前ですね。

未来さんはイナズマイレブンのキャラの中で誰が好きですか?
それと、小説は何か書かれていますか? お書きになられていたら、是非読みたいです^^

では、ぜひまたいらしてくださいね^^

>>ふぁいんさん
いつもいつもコメントありがとうございます^^更新するたびにふぁいんさんの名前があると、嬉しくて宙まで飛び上がります。

蓮のサッカーの実力、全く描写していなかったので書きましたww
((今まで描写しなかった私が悪いんですが

個人的なイメージは、南雲や涼野と互角のプレイヤーを目指しています。でもそうすると最強設定になりかねないので、パワーバランスが難しい><

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.353 )
日時: 2011/03/18 13:20
名前: ミティア ◆cW98CwF.kQ (ID: xwXeKUvt)

しずくさんの生存確認!そしてここまでの展開はマジ神文&神回ですた。凍てつく闇とチューリップがマジ切なすぎて俺の涙腺決壊wwwwwww蓮君はマジヒロイン。罪作りデスナ!うまく書けるその文才ちょーだry

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.354 )
日時: 2011/03/19 10:36
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: ZgrHCz15)
参照: 携帯なのでコメント返しできません(-_-;)

「僕達、あまり歓迎されていないみたいだね」

 蓮が、隣にいる吹雪に声を潜めて話しかけて、

「そのようだね」

 吹雪は静かな声で同意。蓮の脇にいる染岡が、不安げな面持ちの吹雪と蓮を守るように、前に立ちふさがり、

「ったく。愛媛はどうなってるんだよ」


 小さく悪態をついた。

 京都を立って早くも数日が過ぎ、蓮たちは愛媛にやってきていた。
 愛媛は、日本でも有名な温泉地の一つだ。現在蓮たちがいる市街地は、小高い丘の上にある。まっすぐ進めば川とぶつかり、やがて埠頭(ふとう)に出る。埠頭は工業地帯特有のもので、遠くからでもうっすらとクレーンの姿を確認することができる。
 道の左右には、小綺麗な旅館風の建物と土産屋が軒を連ねている。旅館の近くには無料の足湯もある。円形の石造りの台座には、同じく石を削って彫られた龍が、開けた口からお湯を注いでいた。時折、風に乗って硫黄の香りが漂って来た。
この時期、愛媛は込み合うのが常なのに、温泉街は閑散としていた。土産屋は全てシャッターを締切ってしまい、いくつかの足湯は水が濁っている。人の姿もほとんど見受けられない。
 活気が見られず、寂れた温泉街のようだ。蓮が以前TV番組で見たときには、ひなびた雰囲気の温泉街だったのだが、名残すら見られない。閉じられたシャッターに張られた張り紙を、蓮はやるせない表情で眺めていた。
 そして僅かにいる人々は、刺すような視線を、立ち止まっている蓮たちに向けてくる。罪人を見る瞳そのもの。言葉にせずとも、蓮たちが歓迎されていないのは明らかだ。
 円堂が人々の警戒を解こうと、大きく手を振りながら近づこうとして、人々に逃げられた。

「オレたち嫌われているんッスかね」

 壁山が遠くなる人々の背中を悲しげに見送りながら、肩をすくめた。短気な染岡などは、人々に文句を言おうと足を一歩踏み出していた。鬼道がなだめ、一生懸命引きとどめていた。

「こんな状態じゃあ、話も聞けないよ」

 染岡の背中から顔を出して、辺りを見渡しながら、蓮は嘆いた。
情報は紅葉とネットが教えてくれた、サッカーが上手い子供が誘拐されている、と言う事実のみ。現地で話を聞けば、何とかなるだろうと踏んだ円堂たちだが、考えは甘かった。
 愛媛では子供たちがさらわれるせいで、現地の人々は観光客のような外部の人間を疑うようになっていたのだ。

「誘拐事件のせいで、皺寄せが、僕達よその人間に来ているのかも」

 勘が鋭い蓮がずばり言い当てて、鬼道が顎に手を当てて考え込む。円堂たちは、蓮の意図を掴めないらしく、怪訝な顔つきで蓮を眺めている。壁山は栗松と確認しあいながら、議論していたが、双方わかっていなかった。とちんかんな言葉が飛び交う。

「それもあるだろう。しかし、観光客が減った苛立ちもあるのではないか?」

「死活問題だしね」

 円堂たちの顔色が険しくなった。今の言葉で風丸や夏未は理解したようだが、壁山や栗松はきょとんとしている。
 そのことに気がついた鬼道が、説明をした。

「つまり、だ。愛媛の人々は、生活への不安と、オレたちが誘拐事件の犯人ではないかと言う猜疑心さいぎしんからあんな態度をとっているのだろう」

「そうなのか!」

 円堂が納得したような、していないような、声で叫んだ。すぐにう〜んと悶えている辺り、わかっていないのだろう。
 壁山と栗松が困った顔で互いを見つめあっているのを見、蓮は助け舟を出す。

「子供が誘拐されたのも、観光客が来ないのも僕達のせいかもって疑っているんだ」

「ひ、ひどいッス」


「むきー! オレたち何もしていないでヤンス!」

 蓮のシンプルな説明で理解した、壁山と栗松は憤る。
 でも、と蓮は制し、二人をなだめるように言葉を続ける。

「でも忘れないで。愛媛の人たちは、不安なんだ。僕達は、その不安を取り除きに来たんだ」

「え、それ本当!?」

 その時、円堂たちのものではない高い声がした。
 蓮たちが声の方に目をやると、茶色い髪をした男の子がいた。興味津々でに視線を蓮たちに投げ掛けている。

「どうしたのかな?」

 皆を代表して円堂が、男の子の前に進み出て、目線が対等となるようしゃがんだ。
 男の子は、必死な声で円堂に頼み込んできた。

「お兄ちゃん! ユウを助けて!」

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.355 )
日時: 2011/03/19 14:16
名前: 星沙 ◆RkKLSqUPDc (ID: IsQerC0t)
参照: 名前変ました!元ユクハw名はシャンシャw

はろ〜っすしずく!
私は昨日仮卒業をしてきましたww(内心は変わりませんが)
とりあえず担任にサインもらって(トランペットだからですw)
家でイラスト書いて、本屋行って、金欠になって……
おおっと、小説更新していますね!関心関心……!(それに比べて私は……
などとほざいていましたww
しずく〜!これからも応援していますぜぃ!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.356 )
日時: 2011/03/19 16:19
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 2ページになりそう。

「ユウくん?」

 円堂が問い返すと、男の子はしっかりと頷いた。

「ユウはとてもサッカーが上手くて、この前エイリア学園に連れて行かれちゃった。でも、何とか逃げ出して、帰ってきたんだ。でも、帰ってきてから様子が変なんだ」

「変って?」

「話しかけても返事しないし、大好きなサッカーもやらなくなったんだ」

 その言葉にエイリア学園に何かされたのかな、と円堂は考える。同意を求めるように雷門イレブンをちらりと見た。
 何か思うところがあるのか蓮だけは物思いにふけっていたが、円堂の視線に気がつくと顔を上げてにこりと笑った。他の仲間たちも、似たようなことを考えているのか、円堂の視線をしっかりと受け止めて返し、小さく首を縦に振った。

「じゃあ、オレたちが話しかけてみるよ。ユウくんはどこにいるのかな?」

「ユウは川辺にいるよ。いっつも一人でいるんだ」

 温泉街をまっすぐ進むと橋があった。石で作られた、幅2メートルほどの橋。車は通れず、往来するのは自転車と歩行者ばかり。橋を渡ってしまえば、そこは住宅街と旅館が混在する少し変わった景色へと変貌する。右手の建物の真下には川が流れている。横幅は2,3メートルありそうだが、深さはあまりない。川の流れは穏やかで、簡単に向こう岸に渡れそうだ。対岸には、多くのみかんの木が群生している。よく熟れたオレンジ色が自分の存在を主張するようになっている。壁山がそれを見てよだれを垂らしながら橋を渡り、木暮にたしなめられていた。
 
 サッカー部の人数が十何人もいるのだ。通行人の邪魔にならないよう、円堂たちは橋の脇に寄りながら、身を乗り出してユウスケの姿を探していた。
 その時、春奈が何かに気がついて、ある一点を指差しながら、大きな声を上げる。たまたま側にいた蓮は、ジャージの袖を鷲掴みにされ、春奈と同じ方向に強制的に向かせられた。

「キャプテン! あれがユウくんじゃないですか!」

 春奈が指差す先には、遠目だが、男の子の姿がはっきりと捉えられた。小学校低学年くらいの栗色の髪を持つ少年。短パンにTシャツと活発そうな格好だ。ずっと下を向き、川の水面を見続けている。騒ぐわけでも動くわけでもなく。じっと彫像のように佇んでいる。

「あれがユウくんだな。よし、みんな行くぞ!」

 円堂はユウの姿を確認すると、雷門サッカー部に声をかけてユウの元に直行する。
 橋を渡りきり、河川敷へと降りる階段の元まで走ると、一気に駆け降りた。川は飲めば体調不良を起こしそうな色をし、陽光を鈍く反射して煌いていた。魚が住むどころか、人の飲み水としても使えそうにない川だ。
 愛媛の河川敷は、雷門町の河川敷と違い、整備がされておらず砂利だらけ。そのせいで円堂たちは、足元の石に足をとられそうになったが、懸命にユウの元に寄った。

 だが、途中で蓮の足が遅くなってきた。円堂たちがどんどん遠ざかっていく。苦しそうに喘ぎながら、懸命に足を引きずって円堂たちの後を追おうとする。蓮の異変に気づいた吹雪が、立ち止まって蓮の元に戻り、「大丈夫?」と心配そうな顔付きで声をかける。蓮は「へーきへーき」と気丈を振舞うが、息は荒くなる一方で、声も弱々しかった。

「肩を貸すからいっしょに歩こうよ」

 吹雪が蓮に片手を差し出しながら笑いかけ、蓮は返事をする代わりに持てる限りの力で笑みを見せた。吹雪が差し出した手をしっかりと掴んだ。吹雪は蓮の腕を自分の肩に回し、空いた手で蓮の身体を支える。

 一方、蓮たちから離れた場所では。
ユウが、円堂たちの靴が砂利を踏みしめる音に反応したのか、一瞬だけ振り向いた。その瞳は、生気を感じない光の灯らない目だった。ユウはすぐに視線を川の方に戻してしまった。

「お〜いユウくん」

 気さくに円堂がユウの背中に声をかけるが、ユウは振り向かなかった。
 川のせせらぎが耳に涼しく、わりかしら温暖な愛媛の気候に汗をかいている円堂たちの気分をさわやかにした。

「こんにちは、ユウくん!」

 聞こえていないのかと思ったのか、円堂は先ほどよりも大きな声でユウに話しかける。しかしユウが動くことはなかった。円堂たちなど川辺の石のように思っているのか、何の反応も見せない。円堂たちとユウの間に響く川のせせらぎが空虚感を増大させた。

「弱ったなぁ」

 困ったように円堂は頭をかく。そして蓮と吹雪の姿が見えないことに気がついた。慌てて辺りを見渡し、後ろを向いたとき蓮と吹雪の姿を見つける。

 吹雪の肩に腕を回し、反対の腕で支えられながら、蓮は重い右足で踏み出し、引きずるように左足を前に出して進んでいた。苦痛に耐えるように唇をかみ締め、唇の輪郭がうっすらと赤色に浮かび上がっている。大地を一歩一歩踏みしめるような歩き方で、速度はかなり遅い。時折ふらついて倒れそうになり、吹雪が懸命に起こしていた。吹雪は蓮の歩調にあわせゆっくりと歩く。文句も言わず、蓮を励ましていた。

 ゆっくりとこちらに向かってくる蓮と吹雪のため、鬼道たちは一歩身を引いて道を開ける。蓮のつらそうな表情を見ながら、不安げに前へ進む蓮を凝視していた。
 円堂はだるそうな蓮に駆け寄ると、蓮は吹雪に身体を預けたまま目を閉じていた。

「キャプテン。白鳥くんのこの症状って、ジェミニストームのときと似ているよね?」

 蓮の顔には汗がびっちりと顔に張り付き、乱れた呼吸をしている。確かにジェミニストームとの戦いのときに起こした症状によく似ている。胸が痛み、頭がぼうっとする。ただ胸を押さえていないし、歩ける等ジェミニストーム時に比べれば幾分か軽い気もする。
 円堂は、蓮の頬を平手で軽く叩きながら呼びかける。

「白鳥大丈夫か?」

「……う、ん。へーき、だよ」

 すると、蓮は黒い瞳を半分ほど開き、ゆっくりと上半身を起こしながら、うわ言のように答える。息を吐くテンポは大分短くなっているが、頬の赤みは増し、黒い瞳は潤んでいる。熱があるように見えた円堂は、自分の額を蓮の額に押し当てた。少し熱かったので、反射的に身を引く。それを見た雷門中サッカー部は蓮をいたわる様に一瞥してから、警戒気味に辺りを見渡す。エイリア学園が近くにいると思ったのだ。

「まさか近くにエイリア学園がいるのか?」

 しかし辺りにはユウ以外誰もいない。
ユウに話しかけても無視されるだけなので、円堂たちは一度引き上げることにした。今度は円堂がぐったりしている蓮の肩を支え、来た道を引き返す。
 何故かユウから距離を置くたび、蓮の顔色がどんどんよくなった。頬の赤みは健康的な肌色に戻り、潤み閉じられていた瞳が完全に開かれる。姿勢も正しくなり、歩くスピードも早くなった。やがて円堂の支えなしでも平然と歩き回るようになり、円堂たちを安堵させた。

「もう大丈夫だよ!」

 階段を上り終えると、蓮は今までの症状が嘘であったように元気に跳ね回って見せる。円堂たちは微笑みながら蓮に視線を向ける。ジェミニストームのことを知らない木暮には、春奈が今までのいきさつを説明をしていた。
 しかし蓮が回復したことを喜ぶこともつかの間、ユウから話を聞き出せなかったという事実は雷門中サッカー部を悩ませていた

「話は聞けなかったな」

 風丸が残念そうに言って、円堂たちが一斉に頷く。

「う〜ん。どうすればいいのかなぁ」

 蓮が呟くと、ユウの友達である男の子がある提案をしてきた。

「だったらユウの父さんに話してみたら? ユウの家はすぐ近くなんだ」

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.357 )
日時: 2011/03/22 07:56
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: すいません;;親が帰ってきたので、コメント返しはまた後でにします

 「こっちだよ!」と元気に走っていくユウの友達を追うこと数分。川からさほど遠くないところにユウの家はあった。いや、家と言うより店でだろう。小奇麗なスポーツショップだった。客は一人もいない。ガラス戸の向こうには、バスケットボールやサッカーボールが整然と並べられている棚が見える。奥にあるカウンターでは、一人の男が上に設置されたTVに目をやっていた。恐らくユウの父親だろう。後姿がどことなくユウに似ている。
 
 ユウの友達は遠慮せずに、スポーツショップの中へと続く扉を押した。円堂たちも後に続く。少しほこっりぽい臭いがした。
 ちりんちりんとドアの上に下げられたベルが心地よい音で来客を告げ、男が「いらっしゃいませ」と気の乗らない声で応対しながら、振り返る。
 40を過ぎたくらいの黒縁めがねをかけた優しそうな男だ。直後、目を限界まで見開くと、座っていたパイプ椅子を蹴り倒しながら立ち上がった。

「あ、あなた方は雷門中サッカー部のみなさん!」

 思わぬ来客にユウの父親は、興奮で声を上擦らせながら、円堂たちを見やる。憧れの人間に会えたという恍惚の表情を浮かべていたが、すぐに真顔に戻る。
 倒したパイプ椅子を元に戻し、カウンター上に置かれたリモコンでTVを消した。ユウの父親が、リモコンをテーブルに置くのを確認すると、鬼道が前に進み出て話を切り出す。

「失礼ですが、ユウくんがエイリア学園から戻ってきたとお聞きしたのですが」

 ユウの父親は、ユウを見つめるように店の外へと目をやった。そして、小さくため息をつきながらパイプ椅子に腰を下ろす。

「なるほど。息子に話を聞きたくてここまで来たのですね。ですが、息子はごらんの有様です。毎日食事もろくにとらず、ああしてずっと川辺で一人、水の流れを眺めています。話しかけても言葉はユウスケの心に届かず、どうすればよいのかわかりません」

 ユウの父親は沈痛な面持ちで両肘をカウンターについて、頭をくしゃくしゃと掻き始めた。初めは平静を装って落ち着いた声音で話していたが、だんだん悲しむようなものになっていった。
 息子を心配する父親の気持ちに、円堂たちは同情しながら、ユウを救ってやりたいと決意を新たにした。しかし上手い方法が思いつかず、どうにもならない。

「エイリア学園に攫われて、怖い思いをしたんだろうな」

 蓮が同情するように口を開いて、円堂が何か思いついたような顔付きになる。考え込む蓮たちを見渡しながら、大声で叫んだ。

「じゃあ話は簡単だ! 大好きなサッカーをやって、嫌なことは全部忘れればいいんだ」

「そう簡単に言うけど、話しかけても無反応だったじゃないか。どうするの?」

 蓮に問われ、円堂は黙った。数秒ほど唸ると、嬉々とした表情でカウンターに近づく。カウンターから身を乗り出し、ユウの父親は少し身を引いた。円堂は、ユウの父親に顔を近づけて勢いよく尋ねる。

「そうだ、ユウくんのお父さん。ユウくんが、サッカーをやっていたときの品物ってありませんか!?」

「ス、スパイクならあるが」

 円堂の気迫に押されたユウの父親は、戸惑いながら返事をした。パイプ椅子から離れると、ボールが並べられた棚に近づく。円堂たちが好奇のまなざしを向ける中、ユウの父親は棚の一番上に置かれた箱を取り上げて戻ってきた。カウンターに置かれた箱を見ようと、雷門中サッカー部が周りに集まる中、ユウの父親は箱の蓋を外す。
 中には、紙で包まれたスパイクが入っていた。子供向きの小さいもので、緑の地にグリーンのラインが通っている。あちこちに泥がついていて、靴紐も汚れていて、相当使い込まれていることが分かる。

「これ、借りてもいいですか?」

「ああ。構わないよ」

 紙を外すと、円堂は箱の中からユウのスパイクを取り出して聞いた。断られても持って行きそうな雰囲気で蓮はひやひやしたが、ユウの父親はあっさり承諾してくれた。ユウのスパイクを掴むと、円堂は張り切って店を飛び出していく。
 蓮たちは慌てて円堂の後を追い、河川敷へと向かった。

 円堂が河川敷に降りる階段を下りた頃、蓮は染岡にユウに近づくことを止められていた。「ユウに近づいて体調が悪くなら、ここで待ってろ」と言われ、蓮は染岡の行為に甘えることにした。その際、吹雪が留守番役を買って出てくれて、蓮は吹雪と共に遠くから成り行きを見守ることになった。

「みんな。ユウくんをよろしく! みんななら大丈夫だ」

「ボクがしっかり白鳥くんを見ているから大丈夫だよ」

 階段を下りていく染岡たちに蓮が応援の言葉を投げかけ、大きく両手を振る。その横では、吹雪が染岡たちを安心させるように声を送った。別に逃げるわけではないので、蓮は少し苦笑していた。
 染岡たちは一度階段の途中で振り向くと、力強く頷いた。染岡などは、

「この染岡様がいりゃあ、サッカーの楽しさなんてすぐに思い出せるぜ」

 軽い口調だが頼もしいことを言って、親指を立てた。蓮は吹雪と共に親指を立てて返す。染岡はまかせろ言うように笑うと、階段を駆け下りていく。円堂はユウから少し離れた場所で染岡たちを待っていた。
 染岡たちが円堂に駆け寄ると、円堂は先陣を切ってユウに近づく。相変わらずユウは、円堂たちを無視していた。円堂は片手にスパイクを持ち、ユウの肩を掴んだ。
 ユウは小さな身体を震わせ、青ざめた顔でこちらを振り向く。円堂の手を乱暴に払いのけ、逃げ出そうとする。

「安心してくれ。オレたちはキミの敵じゃない」

 円堂が安心させるようにユウに語りかけながら、借りてきたスパイクを前に出した。それを見た途端、ユウの顔付きが変わる。怯えた顔が不思議そうな顔になる。

「あ、そのスパイク」

 ユウが言葉を零すと、円堂は明るく白い歯を見せて笑った。

「キミのお父さんからもらったんだ。お父さん、すっげー心配してたぜ!」

「……キミたちはだあれ?」

 少しは信頼してくれたようだが、まだ警戒心が残っている顔でユウが聞いてきた。円堂は、ユウにスパイクを返すと、片手で染岡たちを示しながらはっきりと答える。

「雷門中サッカー部だ」

「え、雷門中? じゃあぼくを助けてください!」

 その言葉を聞くと、ユウの顔から警戒心が消えた。真剣な声で助けを求めてきた。
 円堂たちはもちろん承諾し、ユウに守るという意志を見せるためポーズをとったりして見せた。    
 ユウは安堵したような怖がるような表情で、辺りを窺いながら話を続ける。

「何とか逃げてきたのですが、追っ手が来ていて」

「大丈夫だ。オレたちがついている」

 鬼道が断言し、ユウの肩に両手を置く。そしてユウを守るように、雷門中サッカー部の中に入れ、ゆっくりと階段に向かい始めた。

 ユウが近づくたび、蓮は異様なだるさに襲われる。身体がふらつき、また吹雪に身体を支えてもらった。
 ユウは雷門中サッカー部に守られながら階段を上りきると、はっとした顔でズボンのポケットに手を突っ込んだ。

「あ、そうだ。ぼく、この石を押し付けられたんです」

 ユウが円堂に差し出したのは、ペンダントだった。500円玉ほどの大きさで、6角形にカットされた紫色の石に、首にかけられるほどの長さの黒い紐が通されている。
 
 円堂はその石を見て寒気を覚えた。石の色は禍々しい紫で見ていて気持ちが悪い。宝石のようにきれいにカットされているのだが、どうしても綺麗とは思えなかった。底が見えない奈落のような闇を感じさせた。見ていると引き込まれそうで怖い。
 その時、円堂は風丸の声で我に返った。見ると、全員が焦った顔で蓮に注目している。

「白鳥、おい! 大丈夫か!?」

 見ると、吹雪に身体を支えられた蓮が呻き声を上げていた。苦痛で顔をゆがめながら、荒い息共に必死に言葉を吐き出している。風丸が耳を近づけて掠れた声を一生懸命聞こうとしている。

「この石見ると……すごく……くる、しい」

 蓮が苦しんでいたのはこの石のせいだったらしい。 どう見てもアメジストの変種などにしか見えないのだが、なにやら特殊な力があるようだ。風丸はこわばった顔でユウが差し出す石をにらみながら、鬼道に目をやる。

「鬼道、もしかすると白鳥がジェミニストーム戦のときにふらふらしてたのは、この石のせいじゃないか?」

 鬼道は腕を組むと、用心深くペンダントに顔を近づけ、顔をしかめた。

「これが、やつらの言っていた“エネルギー”である可能性が高いな」

「これが”エネルギー”……」

「でも、これはただの石にしか見えないッスね」

 風丸は石をじっと見つめ、壁山が恐々とペンダントを覗き込みながらのんきに呟いて、近くにいる蓮が喘ぎながら、必死に円堂たちに懇願する。

「おねがい。はやく……こわすかなにか……して」

 その言葉が通じたのか、円堂たちは憎憎しげにユウの掌を睨んだ。気にはなるが、仲間を苦しませる“嫌な”ものであることには変わらない。早く壊すに限る。
 染岡がジャージの袖をまくりながら、どかどかと大股でユウの差し出す掌まで近寄った。

「あっても白鳥が苦しむだけだし、さっさと壊しちまおうぜ」

「よし、じゃあオレが……」

 近くにいた円堂がユウの掌に乗せられたペンダントに手を近づけ、紫の石に円堂の指が触れた瞬間。石が欠けた。円堂の指が触れたところだけがポロポロとビスケットのように崩れる。円堂が驚いて石から指を離した瞬間、石に縦横無尽に亀裂が入り始めた。ガラスがきしむような音を立てながら、ヒビは蜘蛛の巣状に広がる。
 やがてガラスが割れるような音がし、紫の石は木っ端微塵に割れた。砕けた欠片はユウの手から零れ落ち、その姿をパステルカラーの砂に変えて消えていった。パステルカラーの砂は地面に落ちて消えるか、風に流されて見えなくなる。
 
 わずか5秒ほどの出来事を、円堂たちは瞬きもせずに凝視していた。石が砕けると同時に、蓮が喘ぐのをやめた。呼吸もいつもどおりに戻り、顔色もよくなっている。
 しばらく無言が続き、円堂がようやく声を張り上げた。

「え、く、砕けた!?」

「ようやく見つけたぞ小僧め!」

 石のことが気になるが、悩んでいる暇は与えられなかった。
 男の声がして、ユウが円堂の背中に隠れる。

〜つづく〜


Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.358 )
日時: 2011/03/19 19:47
名前: ふぁいん (ID: horemYhG)

今回はまた神文です!蓮君が苦しんでいるところは、直も苦しくさせられました。吹雪にささえらるなんてイイシチュ。変わって下さい!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.359 )
日時: 2011/03/21 13:30
名前: 夢歌 (ID: hbLXOO8r)

とても面白いです×100頑張れ!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.360 )
日時: 2011/03/22 12:20
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: ZgrHCz15)
参照: お知らせあり。

 謎の石が砕けたことを、驚くことを許さないように、野太い男の声がした。ユウがびくっと身を震わせ、円堂の背中に隠れる。ジャージの裾を強く握り締め、目をきつく閉じて身を縮めていた。

 ユウの様子がおかしいことに気がついた円堂たちは、一斉に声の方を見つめ——蓮と塔子だけが。はっとした顔つきで、声の主を眺める。
 以前夕香が描いた、『あやしいおじさん』の絵がそのまま実体化した連中がそこにいたからだ。

 背丈は円堂たちより遥かに高く、ニメートルはある。血の気を感じない肌の色をした顔で四十代を過ぎたおじさんに思える。連中に、髪は一本もなく、禿げ頭である。目を覆うのは、黒いフレームに赤いガラスをはめ込んだ怪しいデザインのゴーグル。濃い紫のハイネックセーターを着込み、上に丈の長いジャーンパーを羽織っている。連中は、分身の術でも使ったように、同じ背格好の奴らが五人横にならんでいる。
 
 蓮は夕香の絵を思い出しながら、塔子に視線を向けると、塔子は頷いた。どうやら様子を見よう、と同じことを考えていたらしい。
 横に並ぶ男たちは、円堂たちに気がつくと、苦虫を噛み潰した顔になった。五人は一斉に舌打ちし、

「ちぃ。雷門連中が、何故ここにいる」

「関係ない。奴らを潰し、あの小僧から石を取り返すのだ!」
 
 男の一人が強く言い放ち、円堂たちに詰め寄ってくる。
 蓮たちは、男たちを睨み据えながら、ユウを守るように円堂を取り囲み、円堂は両手を広げ、戦う意思を男たちに示す。辺りにいた人々は円堂たちから離れ、不安げに様子を伺っている。

「ガキごときに、なにができる!」

 不意に男の一人が、両腕を振り上げて蓮たちに躍りかかってきた。出さない辺り、どうやら、銃やナイフなどは持ち合わせていないようだ。
 蓮は、それを確認すると、不適な笑みを浮かべ、勇敢にも男に突っ込んでいく。たじろいでいた円堂たちが、止めようと手を伸ばすが、蓮は上手く身体を動かして避けた。

「白鳥先輩!」

「うわっ!」

 春奈が止めるように蓮の名前を呼んだ直後。恐怖で固まっていた木暮の身体が男の強烈なタックルで宙に舞った。それを合図に、残りの男たちも攻め混んでくる。

 雷門はめちゃめちゃだ。男に怖じけづき、逃げ出すもの。恐怖で固まり、男たちを見送ってしまうもの。何人かは、男たちに立ち向かったが、大人の力には敵わず、吹っ飛ばされ、身体が地面に叩き付けられた。

「みんな!」

 円堂は、叩き付けられた風丸たちを気遣かう声を飛ばす。だが、仲間の心配をしている暇はなかった。三人の男たちが、円堂に近づいているのだ。距離はもう、30センチメートルとない。ユウが裾を掴む力が、一層強くなるのを、円堂は感じた。

「大丈夫だ、ユウくん」

 円堂は庇うように、片手を広げて、迫り来る男たちと対峙する。男たちは、円堂の背中からユウを引きずり出そうと、片手を伸ばした。円堂になすすべはなく、男たちのての一本が、円堂の手を払いのけ、裾を握る小さな手に伸ばされた。円堂は、悔しそうに後ろを向いた。ユウが泣き叫ぶ。
 その時、男の手がユウの腕を掴む寸前で凍り付いた。円堂が反射的に前を見ると、地面に華麗に着地し、にっこりと微笑む蓮と吹雪の二人がいた。

「頑張ったけど、危なかったね、キャプテン」

「ぎりぎりセーフだよ。円堂くん」

 二人に労いの言葉をかけられ、円堂は状況を理解できないまま辺りを見渡す。
 四人の男たちが、そっくり返った姿勢で氷の彫刻になっていた。透明な氷は、陽光を受けて、その輪郭を際立たせ、光を反射して七色に輝いている。氷らされた男たちは、罰を受けて氷にされた囚人のようだ。周りにいる仲間たちは、つついて遊んだり、感心そうに眺めている。
 円堂は、氷の一つに歩み寄る。ひんやりとした冷気が、肌をくすぐる。
 まだ怯えているのか、ユウは円堂の背中から恐々と顔を出しながら、氷の男を見上げていた。円堂は、手でグーを作ると、氷を軽く叩いた。中々固く、拳がじんじんする。そして、手が冷えた。

「よく凍ってるでしょ?」

 蓮が吹雪を伴いながら円堂の元に来て、得意そうに言った。

「もしかして、〈アイスグラウンド〉と〈アイススパイクル〉で氷付けにしたのか!」

 円堂が気づいて声を張り上げると、蓮と吹雪は互いを見合い、小さく笑い声をたてた。

「そうそう! 二人の合作『氷のエイリアン』だよ。ねー吹雪くん」

「キミとの合作、とても楽しかったよ」

 蓮が冗談めかした調子で、吹雪に同意を求めた。吹雪は吹雪で、楽しそうに答えた。
 あまり捻っていないタイトルに円堂は、思わず失笑した。
しばらく和気あいあいと話していた三人だったが、春奈の何気ない一言で、それは止まる。

「あら? 木暮くんは?」

木暮の姿が、忽然と消えていた。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.361 )
日時: 2011/03/21 18:46
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: Mg3hHTO1)

お知らせ

こんばんは^^しずくです携帯更新の謝罪をさせていただきます。

最近、親が仕事でPCを使うきかいが増え、やれる時間が激減してきてしまいました,,

ですが、私の更新したいと言う意欲は衰えず、こうして携帯から更新している次第です。
改行や三点リーダーができず、読みずらくなっていますが、すいません。PC出来る時に、必ず直しますので、読まれるかたは申し訳ありません。
そして、携帯では小説は書けても、スレッドが全く読めない事態に陥っています。従って、折角コメントを頂いても、返せないまま小説を更新している状態に。
PC更新時に必ずお返ししますので、しずく無視しやがって! と、憤られないで、待っていて下さると有り難いです><

お詫びでした。
私情で携帯から更新することが増えますが。。
これからも、この小説をよろしくお願いします^^


Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.362 )
日時: 2011/03/21 23:25
名前: ふぁいん (ID: w1PAg8ZW)

今回はスピードたっぷりでした!ドキドキです!吹雪と蓮君可愛すぎ!でも合作なんて恐ろしい発言な気持ちです!木暮を蓮君助けてあげて!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.363 )
日時: 2011/03/22 09:12
名前: 空屡 ◆iF1No6m8Lc (ID: QGJGVn1c)

だ、大丈夫……?
しずくが更新できなくても私はいつまでもROMっt(ry ちゃんと読んでるから!(オイ
しかし相変わらずな神文。PCが神々しくなってるぜ。(真顔)

ああ、ユウ君か。あの子可愛かった(遠い目)←
とりあえず、クララ様とレアンちゃんが何するか楽しみだよ!((

では。コメント少なくてごめんね><
頑張って〜^^*

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.364 )
日時: 2011/03/22 10:04
名前: 星沙 ◆RkKLSqUPDc (ID: IsQerC0t)
参照: 名前変ました!元ユクハw名はシャンシャw

大丈夫です!
私はいつでもココにいますk(その割には小説更新してないが
これからも応援しますぜ!しずく様!(更新がんばってください!)

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜四章完結♪ ( No.365 )
日時: 2011/03/22 11:55
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 卒業式無事に終わった!万歳!〜参照が法外な値を記録しているぞw

しずくさんのひ・と・り・GO/TO
わぁぁああオソロシヤオソロシヤ。さ、参照が6000突破したー!
千ごとに大仰に驚いていますが、まさかここまで伸びるとは一年前には思いもしませんでした。クリックしてくださる人、読んでくださる人、みなさま一人ひとりに会って抱きつきたいくらいですwマジ感謝! しずくハイパーたちあがりーよ!

蓮の誕生日短編をお礼に早めに書く予定でいます(もち本編も書きますがw)


>>ミティアさん
はい、こちら生存しております。ミティアさん、応答どうぞ〜(笑)

”神”など程遠いgdgd展開ですが、そう言って下さるととっても嬉しいです^^
バーンとガゼルが切なかったですか!? そう言う系をめざして書いて(キャラ崩壊してるけどw)みたので、ほっとしました。三人が、これからどういう道筋を歩んでいくのか。それはお楽しみです。

蓮は最近ヒロインd(本人にホーリー・ウィングで修正)
女の子ならいい恋愛話になるのかな? と勝手に妄想しますが、やはり友情主体なのでこのまま走る。どーんと。

文才は私の方が欲しいですw

ではではコメントてんくすでした^^

>>星沙
コメント返しが遅れてごめん;;
もう卒業かぁ。私もようやく昨日卒業したww
私も某所でイナズマイレブン、プロマイドコレクション4の涼野&南雲を購入したら金欠w(→自分で当てようとしないむくい。買ったらデスタなんだもん。)

放射能が怖いから家に引きこもってる。本を読むか、DSいじるか、小説書くかのどれかw小説書く理由? 早くこれを終わらせて韓国組をかk(おい)。ええ、欲求不満です。不満です。フラストレーションですw

本当にいつも応援してくれてありがとう^^*
いつでもここに来てくれるって言葉だけで嬉しくて泣きそう;;大好きだー! 星沙!(うるさいよね)

星沙の小説にも遊びに行くぜ☆コメントありがとうございました^^

>>ふぁいんさん
神は他の方の小説につけるものですよ^^*私は普通の作文くらいが妥当ですw
今回はあの石【ネタバレ防止】で蓮が苦しんでいることを書きたかったので、また苦しませてしまいました;;書いていて胸が痛くなるときがあります。

私も吹雪に支えられたいです><かわってよr

いつもコメントありがとうございます^^

>>夢歌さん
初めまして^^
面白い×100もつけていただいてとっても嬉しいです><これからも書ける様に頑張って生きたいと思いますb
是非、また来て下さいね^^

>>空屡
会いたかったー!(え)
大丈夫。コメント返しは遅れそうだけど、小説だけは進められそうだぜー!でも携帯は不便だ。ここのスレッドの内容閲覧できないし、コメント来ていても読めないという歯がゆい自体。

神々しいなんて言ってくれてありがとう^^
でも空屡の方が私より格段に神文だよw

ユウ君はゲーム沿いで出してみた。目が可愛いよね^^
ところで、本名ユウスケだってことを小説書いてから思い出したw父ちゃんにユウスケって呼ばせたけど、書くときは『ユウ』表記になってる。

クララ様&レアンは時期に判明♪お楽しみに((

コメントしてくれるだけでも嬉しい! 私には十分すぎるほど多いよ><
応援ありがとう♪

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.366 )
日時: 2011/03/22 13:01
名前: 星沙 ◆RkKLSqUPDc (ID: IsQerC0t)
参照: 春休みとは……実に暇だ

しずくw6000とは最強すぎるです!
(私も違うサイト様で小説(なぜかポケモン)書いているのですが、ただいま約1周年ぐらいですwで、今参照が4566)
何故こんなに差がw(きっと、文才の差というヤツですよねww)

しずく、これから暇?
少し誰にも見つからないところで話みたいなのがあるのだw

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.367 )
日時: 2011/03/22 13:12
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: アンパンのMAD見てたww

>>星沙

たまたま見てみたらびっくしです。気づいたら6000……よく一年も続いたなってびっくりです。今まで書いた小説1年と持たなかったからw

星沙のように見てくれる人がいれるだけで頑張れるんだw

4566……十分多いと思うよ^^私のは参照はあっても、コメントが少ないから、星沙のポケモン小説の方が絶対に人気あるってw私のより、面白いと思う^^

今日は計画停電だから絶賛暇ちゅうだぜw
話? どうすればいいのかな? かな?(レナかよw

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.368 )
日時: 2011/03/22 13:13
名前: 星沙 ◆RkKLSqUPDc (ID: IsQerC0t)
参照: http://www.pokemon-br.com/commyunity/index.html

えっと、どこか人が少なくて暇な場所……そうだ!
URLのところのおしゃべりチャットこれるデスカ?(それかもし、しずくが携帯だったらしずくが決めてw)

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.369 )
日時: 2011/03/22 13:20
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 今はPC〜

今はPCだから平気w
携帯でやるときは名前を「携帯しずく」にしてっからねw
お誘いありがとう^^いってみるよ。

行ったけどそのまま入室すればいいのかな?

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.370 )
日時: 2011/03/25 14:07
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: ZgrHCz15)

 木暮がいないことに気がついた円堂たちは、蓮と吹雪が氷付けにした男たちを問いただすことにした。

 男たちが溶ける前に、円堂たちは、ロープを四つ、キャラバンから持ってきた。太さも長さも十分あり、簡単にはほどけないだろう。
 男たちの氷が溶ける頃を見計らい、円堂たちは四つのグループに分かれて、それぞれロープを持って男に襲いかかった。
 数で敵わない男たちは、あっさりと捕えられ、ロープで身体をぐるぐる巻きにされた。手は後ろ手に縛られ、身動きはとれないようだ。

 男たちは、息を切らしながら、頭と足を激しく動かして逃げ出そうとするが、身体がエビのように反るだけだ。動かすタイミングは、計ったように同じで気持ち悪い。やがて疲れたのか、荒い呼吸をしながら、動くのを止める。

 蓮は、転がされた男の顔の近くに歩み寄る。隣に吹雪が並ぶ。
 男は、うつ伏せになっていたが、二人のスパイクが砂利を踏む音に気付くと、頭を持ち上げた。白い歯を剥き出しにした獰猛な顔で二人を睨む。
 蓮も吹雪も全く動じず、穏やかな二人にしては珍しく厳しい視線を、男に送った。

「木暮くんはどこ?」

「ふん。守秘義務だ」

 蓮が腕を組ながら率直に聞いて、男はつんけんした態度で答える。
 残りの三人も円堂たちが問い詰めているが、答えは似たり寄ったりだった。

「じゃあ、何で子供をさらったりしたんだい」

 吹雪が厳しい表情を崩さずに質問を変えると、男はにやりと怪しく笑った。

「気になるんなら、この先にある埠頭ふとうに行きな。そこで、すべてがわかる」

「口が滑ったな」

 揶揄するように蓮が言うと、男はますます嫌な笑みを深くする。

「わざと滑らせてやったのだ。オレたちが警察に捕まろうと、雷門が潰れるのは確実だからな。ははははっ!」

 頭だけを動かして、男は高笑いをした。蓮は睨むように目を細め、吹雪は驚いたのか目を丸くした。
そして、静かな川のせせらぎに混じり——パトカーのサイレンの音が聞こえ初めた。円堂が、知り合いの鬼瓦おにがわら刑事を呼んだのである。

「くっそ。木暮の行方はわからずじまいかよ」

「木暮くん、無事でいて」

 遠くなっていくパトカーを睨みながら、染岡は地団駄を踏んだ。横では、春奈が手を組んで木暮の無事を祈っていた。
 染岡は、八つ当たりに足元にあった小石を一つ掴むと、川に向かって放り投げた。小石は、弧を描きながら川に向かい、僅な水音としぶきを上げて、水の中に消える。
 それを目で追っていた鬼道は顔を上げ、円堂たちの方に振り向いた。

「……やはり、埠頭に行くしかないだろう」

「でも、罠だったらどうするんだ?」

 用心深い風丸が意見し、何人か顔を鬼道から反らした。返り討ちにされたら、という不安の色が顔に出ている。
 悩む鬼道に、蓮が助け船を出す。

「罠でも、手がかりはそれだけだ。可能性があるなら、食いつかなきゃ」

「そうだけど……!」

 風丸は何か言おうとして、口を閉ざした。物言いたげな顔つきで蓮の顔を見ている。

「オレは行くぜ」

 微妙な空気が漂う中、その空気を破るように円堂が声を発した。
 みなの視線が、自然と円堂に集中する。円堂はみなの視線を浴びながら、堂々と断言した。

「だって、仲間のピンチなんだぜ。罠でも、木暮の手がかりになりそうなら、行くべきだ」

「けど、襲われたりしたらどうするんだ?」

 風丸が聞いて、蓮が提案する。

「じゃあ、四人くらいで行ったらどうかな? 少ない方が動きやすそうだし、もし見つかっても、すぐに逃げられるんじゃないかな?」

「確かに大勢で行くより、行動できそうだな」

「白鳥! 頭いいな!」

 納得するように鬼道が呟き、円堂たちが素直に誉め称えた。蓮は、仲間の感心するような声にはにかみ、円堂が高らかに宣言する。

「さあ、木暮を救うぞ!」

 蓮たちは力強い雄叫びと共に拳を天に突き上げた。空は曇り始めていた。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.371 )
日時: 2011/03/24 12:45
名前: ふぁいん (ID: uM8899vc)

しずくs、6000おめでとです!みんな、容赦ないけど、蓮君は強い!かっこいいです!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.372 )
日時: 2011/03/25 14:03
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 1ページ目。今回はスパイみたいだww

 蓮の提案どおり、埠頭へ行く4人の少人数グループが作られた。
 チームのリーダー格である円堂、鬼道、そしてついて行くと言い張った風丸、鬼道の推薦により蓮。
 ユウのスポーツショップに仲間を残し、蓮たち4人は埠頭に向かった。

 川を北上するにつれ、家はどんどん減っていき、やがて工場が並ぶ工業地帯になった。工場の煙突からは黒い煙が天を汚すように立ち上がっている。
 辺りの空気は心なしか汚れていて、煙っぽい気がする。辺りに木や草の類が見受けられないせいだろう。蓮たちは何度も咳き込んでいた。
 また、汚れているのは空気だけではない。川の水も濁り、底が見えない。愛媛は人の心のようだ、と蓮は思う。
 ユウの話によると、川や空気が汚染され始めたのは、子供が攫われるようになってからだという。今の環境は、愛媛の人々の心を映し出す鏡のようなものだった。子供を解放すれば元に戻るかな、と心内で呟き、埠頭に足を進める。

 しばらく歩くと、ようやく埠頭が見えてきた。高い塀の向こうには、左右に広がる貸し倉庫。ペンキは真新しく、最近舗装されたばかりのようだ。ただ屋根だけは潮風でさびてしまっている。近くに荷物を持ち上げる赤いクレーンが寂しく佇んでいた。上空では、のんきにかもめが鳴きながら空を舞っている。日差しが強い。
 倉庫の向こうは当然ながら海に面している。簡単に超えられてしまいそうな車止めの向こうに、工業用物質が溶け込んでいる色をした海水が揺れていた。日が反射して

 円堂たちは、横に伸びる高い塀と塀の間に作られた、閉じられた鉄扉の間から中の様子を垣間見ていた。潮風が時折吹くものの、生ぬるく心地よくない。潮風で鬼道の青いマントがなびいて音を立てている。
 蓮だけは、鉄扉の脇近くの塀上に設置された妙な看板に目が行っている。白地に『真・帝国学園』と明朝体で大きくプリントされた謎の看板。しかし、風丸に袖を引っ張られ、鉄扉の中を見た。

「あ、さっき逮捕された奴らがいっぱいいるぞ」

 円堂が声を潜めながら鉄扉の向こうを指差す。海寄りの倉庫の扉の前には、先ほど逮捕された男と全く同じ姿・体格の男が立っていた。腕を組み前をじっと睨んでいる。こちらには気づいていないようだ。
 さらに、波止場近くには、やはり同じ姿の男が十人ほど歩いている。パトロールなのか、波止場の道を行ったり来たりしている。

「何か守っているようだね」

 蓮は水面を見ていたので、眩しさのため目を細めながら呟いた時。波止場を歩いていた男の一人がこちらに向かってきたので、円堂と風丸は鉄扉から見て左に、鬼道と蓮は右の塀に咄嗟(とっさ)に隠れた。四人とも強張った顔つきで互いを見やると、恐る恐る鉄扉の向こうに視線を送る。
 男は倉庫の前に立つ男に何か声をかけ、倉庫の前に立っていた男と共に倉庫の中に消えた。
 蓮は円堂と風丸を手招きし、円堂と風丸が素早く鉄扉の前を横切った。中の様子を窺う鬼道と蓮の横に来ると、同じタイミングで安心したようにため息をついた。

「ああ。あの倉庫に、木暮が閉じ込められていても不思議ではない」

 落ち着いたところで鬼道が蓮に同意するように言った。鬼道の横から港の様子を観察している蓮が、波止場前をうろついている男を指差し、何気なく言葉を零す。

「あの男たちって、複製かなにかしたロボットみたい」

 再度倉庫から男たちが出てくるのを見つけ、蓮と鬼道は身体を塀の方に引いた。鬼道は塀に背を当てながら腕を組む。

「あの石といい、あの連中といい、エイリア学園には、高度な科学技術があるようだな」

「本当。でもロボットくらいなら人でも作れそうだよね」

 
〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.373 )
日時: 2011/03/25 14:04
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 2ページ目。

 蓮の言葉に鬼道は手を顎に当てた。風丸と円堂と位置を入れ替え、物思いにふけ始める。二人が鉄扉の向こうを盗み見る間、蓮は若干下向き加減になっている鬼道に近づいた。

「人……か。恐らくだが、地球人の協力者もいるのだろう。宇宙人は知識と策、そして石だけを与え、やつらに協力する人間が今の事態を引き起こしているのかもしれない」

「それなら、エイリア学園の能力も説明がつくね。元々は人間だけど、あの石の力で能力を飛躍的(ひやくてき)に伸ばしているってね」

  鬼道の独り言に蓮は天を仰ぎながら同意した。その時、蓮は誰かに肩を叩かれた。気づかなかったが、鬼道が位置的に叩けない方の肩を叩かれた。
 蓮が反射的に振り向いたところ、一人の男が立っていた。
 歳が相当上であるように思える小太りの男だ。口元に白いひげをたっぷりと蓄え、目には丸い小さめなサングラス。頭には濃い紫のバンダナを巻き、中華風のバンダナと同じ色の服を着ている。蓮は敵かと思い、目つきを鋭くして睨むと、鉄扉を睨んでいた円堂が振り返り、小さく、だが明るい声を出した。

「あ、響木(ひびき)監督!」

 円堂が駆け寄ると、続いて風丸と鬼道も響木の周りに集まり始めた。その顔に恐怖や焦りといったものはなく、むしろ頼っているような顔付きだ。雷門の知り合いなのだろうか。
 蓮があんぐりと口を開けていると、響木の方から蓮に歩み寄ってきた。

「お前は雷門の新入り、白鳥だな?」

 その言葉で大まかな察しはついたものの、蓮は念を押すように一応、尋ねた。

「え、どうして僕の事を知っているんですか?」

「白鳥、響木監督はオレたち雷門サッカー部の監督なんだぜ!」

「普段は雷雷軒って言って、ラーメン屋の店主をやっているんだ」

 円堂と風丸が順々に小声で解説し、蓮は予想通りで納得した。
 蓮は緊張した新入りのようにびしっと体制を整え、よろしくおねがいしますと響木に頭を下げる。もちろん声量を落として。すると響木は苦笑しだす。

「そういえば転校初日にお前には迷惑をかけたな。ここで謝らせてもらう」

 今度は円堂たちがぽかんとする番だった。わけがわからないと言った顔で蓮に目を向け、蓮ははっとした顔でいつも通りの声量を出そうとして、慌てて口を塞ぐ。一息つくと、ひそひそ声で話し出した。

「あ、もしかして転校初日に傘美野に行くよう僕の家に電話かけてきたのも、転校初日なのに瞳子監督が僕のことを知っていたのも——」

「そうだ。俺が全て手を回した」

 蓮がもう気にしていません、と取り繕うと、円堂が口を開いた。

「ところで、響木監督がどうして愛媛に? 鬼瓦さんもいたみたいだし」

「愛媛で子供が攫われるという事件に、とある“男”が関っていると聞いてな。ここまで調べに来たんだ」

「“男”って?」

 蓮の問いに響木は、鬼道に哀れむような、ためらうような視線を投げかけたその様子を察した鬼道が首をかしげる。鬼道に何か関係があることだろうか。
 その時、蓮は先日鬼道の携帯に帝国学園の仲間から連絡があったことを思い出した。そしてすぐ上にある真・帝国学園の文字。とても無関係とは思えない。

「帝国学園で何かあったんですか?」

 心配そうに蓮が尋ねると、鬼道は口を開けた。ゴーグルの中の赤い瞳が驚きで揺れている。ここまで動揺を見せる鬼道は始めてみた。話してください、と懇願するような眼差しを鬼道は響木に向ける。動作がいつもより慌しく見える。響木は、話すのをためらうように考え込み始めた。
 しばし沈黙の時間が続き、響木が重い口を開く。

「実は影山 零治(かげやま れいじ)が、この愛媛にいる可能性があるんだ」

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.374 )
日時: 2011/03/25 14:18
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: ファイドラは怖い。マジ怖い。

>>ふぁいんさん
蓮はかっこいいですか^^好きでいてくれる方が多くて、作者としても幸せです^^
6000ww気づいたら行っていました。見てくださるアフロディな方々のおかげです。いっそ10000クリック目指してみますか((爆

お知らせ
蓮の誕生日短編はファイアードラゴンとイナズマジャパン両方書いてみようかなぁって思います。イナズマジャパンもそろそろ書きたくなってきたのでwでもファイドラの誘惑には負けられなかったorzストーリーは悩み中。案があったらお聞かせ願いm(おい)

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.375 )
日時: 2011/03/26 13:15
名前: ふぁいん (ID: C6pp1bGb)

影山登場!ワクワクします!短編も楽しみにしてます!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.376 )
日時: 2011/03/26 18:21
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 1ページ目w

 『影山 零治』の名を聞いた途端、円堂たちは計ったかのように瞠目した。中でも鬼道はひときわ大きく目を見開き、驚きの光を宿している。口まで無造作に開けられている。
 普段、わりかしら落ち着いている鬼道が、ここまで感情を顕にするのを蓮は初めて見た。誰が見ても感情を理解できるはっきりとした顔つき。蓮はその顔と円堂たちの顔を交互に眺めていた。

 鬼道はふらつく身体を支えるように、一歩後退した。顔中に冷や汗が張り付き、表情も凍り付いている。風丸が「おい、鬼道。大丈夫か?」と声をかけ、鬼道は戸惑いながら返事をする。思い詰めた顔で憎憎しげに塀をにらんだ。
 一方、影山がわからない蓮は、呆然とした表情で鬼道と風丸を見ていた。その横で、円堂が円堂にしては小さな声を上げた。

「か、影山がいるんですか!?」

「……ね、影山って?」

 蓮が遠慮がちに尋ね、円堂と風丸が同時に声を上げた。鬼道は鉄扉の方に走っていく。

「あ、そっか。白鳥はフットボールフロンティアの時にはいなかったもんな」

「あいつは卑怯(ひきょう)が服を着たような男だ。ところで、白鳥は『帝国学園』を聞いたことがあるか?」

 風丸は恨みがましく呟いてから話を切り替えて、蓮に聞いた。蓮は首を縦に振る。

「今年雷門が勝つまで、四十年間優勝し続けた王者の学校だろ?」

 蓮が生まれるずっと昔から、フットボールフロンティアで優勝を続けてきた帝国学園は、サッカーをやらないものですら名前を聞いたことがあると口をそろえる有名校だ。
 ただし、『帝国』の名かどうかは不明だが、通うには相当のお金が必要なのだという。一方で、中には帝国学園であることを誇りに思い、他校を見下す暴慢(ぼうまん)な人間もいると嫌な噂も絶えない。

「そうだ。そして、影山は帝国学園が四十年間勝ち続けた時代の監督、いや帝国の選手たちには『総帥(そうすい)』と呼ばれていたから総帥と呼ぶことにするか。総帥だった男だ」

 響木が説明して、蓮は初めて気がついた。
 帝国学園が勝ち続けていた間は、影山がずっと監督をしていたのだ。いくら帝国が強いとはいえ、選手は毎年入れ替わる。能力が高い選手が集まる年もあれば、全くと言っていいほど強くない年だってあるはずだ。いや、なければおかしい。“永遠の強さ”なんてありえない。
 
 授業で習った『平家物語』の一説に、『たけき者も遂(つい)にはほろびぬ、偏(ひとえ)に風の前の塵(ちり)に同じ』がある。勢いが盛んなものも、いつかは滅び去り、その姿は風の前の塵と同じだというわけだが、サッカーもそうだ。
 サッカーが上手かった友人は怪我し、サッカーができなくなってしまった。年をとった選手は引退する。大会で勝つ国は毎年変わる。——ずっと頂点に君臨し続けるのは無理だ。

「40年も無敗なんて、おかしい気がする。偶然にしては勝ちすぎだ」

 思ったことをそのまま言うと、鉄扉と睨み合いをしていた鬼道が首だけを蓮の方に向け、

「白鳥は鋭いな。あいつは——影山は、帝国が勝ち続けた四十年間の間、巧みに裏から手を伸ばし、帝国の相手校を潰してきた。ある時は相手校に喧嘩を起こすよう仕向け、ある時は相手校を試合で叩き潰し、またある時は鉄骨を落として相手校を怪我を負わせた」

 感情を押し殺した声で淡々と言った。感情を表に出さないように振舞っているようだが、顔は時折悔しそうに歪み、唇を強く噛んでいた。感情を隠すように時々前を向いた。
 苛立ち紛れに鉄扉を蹴ろうとしたのか、片足を引き、男がいることを蓮に注意されてしぶしぶ止めた。
 気持ちのやり場がないらしい。鉄扉の変わりに足元のコンクリを強く蹴りつけた。強く。何度も。何度も。その度に背中の青いマントが舞い上がる。頭の中の“影山”に攻撃しているのだろうか。
 蓮は目を細め、悲しそうに鬼道を眺めている。

 
〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.377 )
日時: 2011/03/28 15:07
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)

 影山と鬼道の間には、何かあるのだろう。しかしフットボールフロンティアの時にはいなかったから、理解はできない。
 蓮は地面を蹴り続ける鬼道に近づくと、落ち着いてというように鬼道の両肩を掴んだ。鬼道は地面を蹴るのを止め、顔をバッと上げた。
 ゴーグルの奥の瞳は驚いたように揺れていたが、すぐに怒りの光を宿す。

「……影山ってやる時は徹底的なんだね。ひどいやつだ」

 蓮は鬼道の肩から両手を離し、同調するように言った。鬼道は悔しそうな顔で天を仰ぐ。

「あいつは雷門を倒すことにした後は、世宇子中の名の下に“神のアクア”を作り、そのおかげでようやく逮捕された。だが、あいつはここにいる。あいつの企みは早く止めなくては……!」

 鬼道は鉄扉に近づこうとして、蓮は鬼道が何をしようとしているのか理解する。急いで両腕を伸ばしながら、鬼道の前に回りこむ。鬼道はこの前見せた怒気を孕んだ瞳で、蓮を睨み据えた。
 円堂たちが怖さのあまり身体をびくっと震わせる中、蓮は怖気づかずに強気な顔で鬼道と対峙している。鬼道が睨めば、睨み返す。普段の穏やかな態度からは想像がつかない、強気な態度だ。

「白鳥。そこをどけ! オレは影山と決着をつける必要がある!」

 鬼道が怒鳴り声を張り上げ、蓮は反射的に振り向いた。
やはり声が聞こえたらしく、波止場前をうろついていた男たちが一斉にこちらを向く。
 向かれる前に蓮は鬼道の腕を掴んで、無理矢理円堂たちがいる塀側に連れ込んだ。鬼道が蓮の手を払いのけようとし、蓮は、鬼道を睨みながら非難するような声で意見する。

「一つ聞くけど、僕たちまで捕まったら、木暮くんや他のみんなはどうなるんだよ?」

 その言葉でようやく鬼道は今の事態を思い出したような顔付きになった。「すまない」と短く謝ると、蓮に背を向けて俯いてしまう。
 蓮は鬼道の腕から手を外すと、心配そうな声で鬼道に話しかける。

「鬼道くんどうしたの? 急に焦りだして」

 すると今まで黙っていた円堂が動く。蓮の横に歩み寄ると、鬼道に控えめに声をかける。

「鬼道、白鳥に話してもいいよな?」

 鬼道はみなに背を向けたまま頷いた。背中から喪失感と怒りと悔しさと悲しみと——複雑な感情を感じさせられる。蓮は黙って鬼道を見つめていたが、円堂に向き直る。

「鬼道は元々帝国学園にいたんだ」

「え、帝国学園に?」

 話はこうだった。
 
 両親を早くに亡くした鬼道と春奈は養護施設に引き取られた。その養護施設で、鬼道はサッカーの才能を影山に見出され(みいだされ)、影山が鬼道財閥に養子縁組を推薦し、鬼道は鬼道家に引き取られたのだという。司令塔として育成され、それはサッカーにおいて司令塔であることは、多くの系列企業を束ねることのシミュレーションであるというのが理由らしい。こじつけっぽいと蓮は思ったが、あえて声には出さなかった。
 
 春奈も言っていたが、その後、施設に残された春奈は音無夫婦に引き取られ、二人はバラバラになってしまったのだ。春奈と鬼道の苗字が違うことは気にしてはいたが、こういう悲惨な過去だとは春奈の話を聞くまで蓮は知らなかった。
 春奈はごく普通に育ったのに対して、鬼道はずっと影山にサッカーを教わったのだという。そして当然のごとく帝国学園に入った。相手校を圧倒的な力で捻じ伏せていたらしい。今からは考え付かない。だが、雷門と一戦を交えたことで鬼道は変わる。
 影山が行う行為に疑問を持ち、雷門と再度戦うときには雷門の命を助けたらしい。もし鬼道が口を出さなければ、雷門は鉄骨の下敷きになっていたのだと言う。帝国学園は影山から離反し、自分たちのサッカーで戦った。
 この鉄骨が原因で影山は一度は警察に捕まったらしいが、証拠不足で釈放。今度は世宇子中を率いて、帝国学園を潰した。そして世宇子を倒すため、鬼道は雷門の仲間に——

「…………」

 長い話を聞き終わり、蓮は驚きと戸惑いが混じった顔で鬼道の背中に目をやっていた。風になびく鬼道の青いマントだけが音を立てている。
 鬼道が影山にこだわる理由が分かった気がする。離反したからこそ、逆に悪事を止めたいと思うのだろう。かつてサッカーを関ったからこそ、”悪事”を許せないのだろう。ただ鬼道が影山を拒絶するような態度から察するに、影山との関係を断ち切りたいのかもしれない。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.378 )
日時: 2011/03/26 18:31
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)

>>ふぁいんさん
影山ようやく登場w名前だけですけど、影山が出ると緊迫感が増しますよねw彼はイナズマの名悪役(イタリア戦のあれはすごいです)、出さねば気がすみません。あ〜でも、影山本人ご登場はまだだ先になりそう。木暮を助けないと。

短編のスト悩んでますorzファイドラとイナズマジャパンは対比的に書くことを考えていますが、筆が止まります。後、シーンが多すぎて泣く泣く削ってます。わたしの短編って長編になる傾向があるんですよ;;減らせるか文章とにらめっこ中w

ではでは、コメント有難うございました^^

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.379 )
日時: 2011/03/27 18:14
名前: ふぁいん (ID: 8w1jss8J)

鬼道さん切ないです!そして、蓮君がかっこよかったです。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.380 )
日時: 2011/03/27 20:24
名前: 空屡 ◆iF1No6m8Lc (ID: hquqghd4)

KAGEYAMA☆はははフルボッコにしてやんよ!(マテ
風丸さんのオカンっぷりに悶えましたが何か。母丸うううって叫びましたが何か。←

あああコメ少なくてごめんね…!しずくも頑張って!
では^^

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.381 )
日時: 2011/03/28 20:30
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 花粉凄いなぁorzしばらく暗いです。すいません;;

 長い間、蓮は無言で鬼道の背中を見つめ続けていた。
 鬼道は何を考えているのだろう。影山を止めるだけにしては、思い詰めすぎだ。それでも蓮はうっすらと鬼道の心情を察していた。子供の頃からサッカーを教わったということは、裏を返せば鬼道のサッカーは“影山のサッカー”そのものでもある。
 影山を否定したことは、自分自身のプレーを否定するに等しい。再度影山を否定することによって、己のサッカーが見えなくなって。果てない怒りの矛先を影山に向けている、そんな気がした。昔のオレではない、と自分に言い聞かせるような声で呟いたのを聞き、蓮は鬼道に近寄る。器用ではないけど、何か言葉をかけてやりたかった。

初めは物怖じをして、蓮は鬼道から一歩後退した。円堂と風丸が応援するような仕草をとり、小声で「がんばれ」と声を飛ばす。響木は腕を組んで成り行きを見持っているだけだ。口を出す気はないらしい。
蓮は円堂たちの方をむいて、首を縦に振る。覚悟を決めたような顔付きになると、鬼道の肩を軽く叩いた。鬼道は振り向かなかった。諦めず、蓮は鬼道の前に回りこむ。
 鬼道は俯いたまま、拳を震わせていた。軽く目を閉じると深呼吸し、蓮は鬼道の名をはっきりと呼んだ。

「ねえ、鬼道くん」

 びくっと身体を震わせ、鬼道は弾かれたように顔を上げた。赤い目がほとんど限界まで見開かれている。顔には脂汗が張り付いていた。蓮が近づいたことに気づいてなかったらしく、顔には驚愕と当惑の色が浮かんでいる。潮風になびくマントが一層激しく音を立てる。そのことを意に介しない振りをして、蓮は鬼道をしっかりと見据えた。

「僕たちも力を貸す。だから、いっしょに影山を倒そう」
「……白鳥」

 蓮の励ますようなそれでいて力強い声に、鬼道は小さく声を零した。蓮は持ち前の明るい笑みを鬼道に見せて、

「一人の悩みは十九人の悩み。みんなでいっしょに解決するんだ。ねっ?」

 大仰なことを言った。鬼道は、蓮の笑みに釣られるようにほんの僅かだが口角を上げる。その後ろでは、円堂と風丸も安心したように顔を綻ばしていた。響木はと言うと、何度も頷いていた。ちらっと響木を蓮が一瞥すると、響木はやったなと言うように親指を立てる。
蓮は苦笑しながら鬼道に向き直り、心内で手を貸してくれてもよかったのに、と愚痴っていた。
 一方、鬼道は何か引っかかるのか、腕を組みながら、ぶつぶつと独り言を言っている。

「十九人? 春奈たちや響木監督、瞳子監督を含めても今のチームには十八人しかいないはずだが……」

 そこまで述べて、鬼道は言葉を切った。何かに気づいたような顔になり、口元に得意げな笑みを浮かべる。顔を上げると、蓮に顔を向けた。

「なるほど。“あいつ”か」

 蓮は笑いながら首を縦に振った。
風丸や響木も気がついているらしく、わかったと言う表情をしている。円堂だけは風丸や鬼道をきょろきょろと見て、一人で唸っていた。風丸も蓮に視線を向け、

「ふっ、“あいつ”も含めた十九人だな?」

 確認するように蓮に尋ね、蓮は首肯。自分だけがわからないことに嫌気がさした円堂は、半ば泣きに近い声で蓮に聞く。

「なあ、白鳥。“あいつ”って誰だよ?」

「豪炎寺くん」

 蓮が短く答え、円堂はパンと手をたたいた。
今はいなくても、豪炎寺はきっと仲間のことを思い続けている。そんな気が、蓮はしていた。豪炎寺の面影を求めるように天を見上げる。円堂もつられるように空を振り仰いだ。
 のんきな海鳥たちが鳴きながら宙に舞っているだけ。白い髪も。炎を纏う強いボールも。あるわけはなかった。

「オレたち、愛媛まで来たんだな」

「そうだね」

 円堂が何気なく呟いて、蓮は同意する。互いに口を閉ざしあいながら、ずっと空を二人は眺めていた。海鳥たちはくるりと円を描くように飛びながら、うるさい声を出し続けている。

「豪炎寺くんが一緒にいたら戦ってくれたかな」

 蓮が独り言のように質問するように口を開くと、円堂はまだ空に目をやりながら、力強く言い切る。

「あいつも影山にひどい目に合わされたからな。いたら、絶対に戦っていたはずだ」

「もしかして夕香ちゃんの事故って影山のせい?」

「ああ。あいつ一年生の頃は、木戸川(きどかわ)って学校にいたんだ。そこでも、すっげー強いストライカーだったんだぜ!」

 嬉々として話す円堂の表情に暗い影がさす。やるせない思いが顔ににじみ出ている。恐らく、いなくなった豪炎寺のことを思い出させてしまったのだろう。風丸や鬼道にも目をやると、悲しげな表情をしていた。蓮は申し訳ない顔つきで円堂に身体を向ける。

「……けど、帝国学園と木戸川が戦うときになって、事故は起こったんだ。豪炎寺の応援に行こうとした夕香ちゃんは、交通事故にあって意識不明になってしまったんだ」

 円堂が息と共に重い言葉を吐き出し、蓮はまた頭で考えていたことが勝手に口から出る。

「……この前会った時は元気だったのに、そんなことがあったなんて」

 気づいたときには風丸や鬼道、円堂の三方向から不思議がる視線が向けられていた。
 そういえば夕香に会いに行った事は、円堂たちには『親の都合』で呼ばれたと処理されていることを今更思い出した。
 蓮は凍りつきそうになりながらも、何とか笑顔を作るが、それはとても引きつっていた。鬼道が探るような目つきになる。風丸は怪しむ顔付き、鈍い円堂だけが首をかしげていた。

「あれ? おまえ、夕香ちゃんに会ったことあるのか?」

 円堂が狙ったとしか思えないピンポイトをついた質問に、蓮は表には出さないが、全身を氷塊でなめられたような気分になった。蓮は、その問題を避けるように、震える声で言葉を濁した。そして円堂が話を続けるようしむける。

「え、えっと。それよりその後どうしたの?」

「豪炎寺は試合を放棄して病院に向かった。けど、そのせいで試合には出れず、木戸川は帝国学園に完敗した。夕香ちゃんが稲妻総合病院に移るのを契機に、オレたちの雷門中学校に転校してきたってわけだ。まあ、木戸川とは色々フットボールフロンティアであったけど、和解できたし、大丈夫だぜ」

「じゃあ、豪炎寺くんの分もお返ししてやろう!」

 円堂が重々しく説明していたが、最後は明るく断言し、蓮は先ほどの問題を流すように話を無理やりまとめた。話の流れをこっちに持ってきてしまえば勝ちだ。
 鬼道も風丸も諦め、力強く首を縦に振る。その時、鬼道が鉄扉に駆け寄り、被りついた。
 蓮たちも急いで鬼道の後ろに進むと、背伸びをしたり、ジャンプしたりして、中の様子を窺おうとした。すると鬼道が振り向き、人差し指を立てて口に当てながら、

「静かにしろ。あいつらが何か話しているぞ」

 小声で注意した。蓮たちは口を両手で塞ぐと、動くのをやめて、中をにらみつけた。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.382 )
日時: 2011/03/28 18:32
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)

>>ふぁいんさん
鬼道の心情はここら辺では複雑なので、書いてみましたが、結局ダメですねorzまだ帝国も出してなくてごめんなさい。

>>空屡
また来てくれてありがとう^^*コメ数むちゃ多いですwこんなに書いてくれると、嬉しいv

影山はフルボッコにしたい時期だよね(この頃は)。本当の”外道”って言葉が似合う時期。
それが3でああなるとは誰が予測できただろう。初見の時、本気でDSをベッドに落としてぽかーんとした。えとあの感嘆符で満たされた世界だったねw
母丸! 全く意識していなかったけど、そう言ってくれると嬉しいw確かに年長者のイメージで書いてるw風丸さんは真面目で大人っぽいイメージがあるw
まだ沖縄行ってないからにーにーいないしw

ではでは、コメント有難う^^

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.383 )
日時: 2011/03/29 19:42
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: そうえいば前回の十九人ってあってるのか?

 鬼道の指示で、蓮たちは音を立てないよう鉄扉に近づいた。声を殺しながら、強張った面持ちで中の様子を窺っている。静寂だけが鬼道たちを包み込んでいた。いつもは元気な円堂ですら、緊張した顔付きであることからみなが真剣であることが分かる。
 
 男たちは二人。やがて中からもう一人出てきて何やら話し込んでいる。三人とも違う反応をしているとはいえ、姿形が全く同じなのが不気味だ。ややこしいので、今倉庫から出てきた男は『男A』、元々立っていた二人は、『男B』、『男C』とそれぞれ表すことにしよう。特に深い意味はない。

「おい、そろそろ出発の時間だ」

「了解」

 男Aが早く倉庫の中に入るよう男BとCを促す。男Bはこくりと頷き、男Cは跳ねるような仕草をした。見た目こそ似ているが中身は微妙に異なるらしい。円堂たち五人は、新たな発見に思わず互いに顔を見合わせた。

「それとさっき捕まえたやつも連れて行くそうだ。早く支度をしろ」

「わかったにゃん。四十秒で支度するにゃん」

 男Cが変な語尾と共に崩れた敬礼。不覚にも円堂が噴出しそうになった。風丸が容赦なく円堂の口を片手で覆う。円堂は顔を真っ赤にして暴れた。風丸に口を塞がれた際、鼻まで塞がれたため、苦しいのだろう。息苦しそうに顔を歪め、抗議するように何か叫ぼうとしているが、言の葉にはならない。
 その様子を蓮は呆れたように眺めていたが、しばらくして風丸が円堂を解放した。それを見た蓮は、前を向く。

「風丸、塞ぎ方が悪いよ」

「悪いな」

 円堂が小声で抗議し、風丸も声を潜めて短く謝り、二人とも門の向こうを見やる。
 男たちA、B、Cが倉庫の中に消えると同時に、波止場前をうろついていた男たちが、一斉に身体を右に向けた。軍隊の行進のように揃った足並みで、蓮たちから見て左から右に進んでいく。男たちの気持ちが悪い行列は五分ほどで、全員が右の方向に進んだ。それ以上後には誰も続かなかった。
 
 見張りがいる可能性がある、と鬼道の意見で、蓮たちは十分ほど様子を見る。十分たったが誰も来ない。鬼道は中をにらみつけながら呟いた。

「……いなくなったようだな」

「よし、早く行こうぜ!」

 円堂が元気よく鉄扉に駆け寄り、無理やり引っ張る。が、鍵がかかっているらしく、びくともしない。
顔が見る見るうちに赤く染まり、唸り始めた円堂を見て、蓮は円堂に声をかける。

「任せて」

 蓮はジャージの袖を捲り上げると、身軽に鉄扉をよじ登り始める。
鬼道たちが驚いたように蓮を見上げる中、蓮は早くも鉄扉の上に腹を引っ掛け、両手足をだらしなく下げている体勢になっていた。そのまま器用に身体を動かし、鉄扉の向こうに飛び降りる。着地するとすぐに扉を閉めている閂(かんぬき)を外し、と鉄扉を開いた。鉄が地面にすれる甲高い音と共に、扉が開く。

「すごいな白鳥!」

「よじ登れるなんて、大した運動神経だぜ」

「来てもらって正解だったようだな」

 扉から入ってきた円堂たちが、次々に蓮を誉めそやす。蓮ははにかみとも苦笑ともつかない表情を浮かべていた。
 なんせ校門登りを自力習得したのが、遅刻を防ぐため。通っていた小学校の裏門には、ある時間を過ぎると先生がいない。従って、よじ登ってしまえば怒られることはないのだ。そのために習得した。これを説明するのはどうにも気が引ける。

「あの倉庫だな」

 円堂は、男たちが入っていった倉庫を指差す。
鬼道の指示により、辺りに気を配りながら慎重に進んだ。試合といい今といい、鬼道は優れたリーダーだなぁと蓮は改めて痛感する。
 倉庫と倉庫の間や波止場前と注意深く視覚と聴覚を働かせるが、見えるのは誰もいない港。聞こえるのは、海鳥の鳴き声と風の音。
 ゆっくり進むうちに、問題の倉庫の前についた。コンテナなどを置く長方形の建物だ。扉は開け放たれており、中から冷気がこちらに吹き付けてくる。円堂たちは身を震わせた。
 その冷気は、涼しい場所にあるものではなく、霊山や神社で感じる凛とした空気に近い。ただ、心地よいものではなく、身体を内から震え上がらせるような威圧感を纏ったもの。
 蓮は心がざわつき始める。そしてそのざわつきが的中するように、

「ふふ。待っていたわよ、雷門中サッカー部」

 まだ若い女の子の鋭い呼びかけが聞こえる。冷気が一層激しくなった。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.384 )
日時: 2011/03/30 18:21
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: Ph3KMvOd)

えっと……お邪魔します、桃李です^^

コメを頂いたのに、来るのが遅くなってすいませんでしたorz
ずっと前から見てたんですけど、タイミングを探していたらこんなことに……(

鬼道さんの心情が切なすぎて切なすぎて……涙腺崩壊ですねw 影山は酷い事ばっかだったけど、最期はあっけなかったなーとか思います。やっと良い人になったのにーみたいな。

校門登りwww蓮くん、さすがですwww
遅刻防止とは言え、運動神経がいいですね!羨ましいです。さすが、我等が蓮くん!←

女の子とは、誰なのでしょうか……?
オリキャラさんなのか、はたまたあの娘なのか……ドキドキしながら考えてますw

な、なんか短いうえにgdgdなコメをすいませんでした>< で、でもそれが桃李なのでご理解頂けると嬉しいです!(おま

また、栄養補給に読ませて頂きますね^^*
ではでは!

>>追記
三月三十日は蓮くんの誕生日だそうで……おめでとうございます^^

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.385 )
日時: 2011/03/29 20:48
名前: 星沙 ◆RkKLSqUPDc (ID: IsQerC0t)
参照: http://www.pokemon-br.com/commyunity/index.html

わお、蓮君運動神経良いな〜w
私は木登りぐらいしか……(学校の校門は低いので通れるというw)

今日は少し自分は麗羽の人格にて論破してきましたwwとても楽しかったww最後の最後にチェス板をひっくり返してみて、結論出してきましたw

最近メールの返しが遅いけどどうかしたの?

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.386 )
日時: 2011/03/30 19:49
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: ZgrHCz15)
参照: http://www.kigurumiya.com/item/animal/pengin.html

 三月も終わりのイナズマジャパン宿舎。澄んだ青空で今にも一眠りしたい気分ですが、イナズマジャパンの選手たちは何やら忙しいようです。

「守くん。このテーブルクロスが先だよ」

「え、そうなのか?」

 冬花が、花瓶をテーブルに置こうとしていた円堂にテーブルクロスを見せて注意します。白いレース状のそれを両手で広げ、机の上にふわっとかけました。
 円堂も手伝い、テーブルクロスを綺麗に伸ばすと、上に赤い花が一輪入った花瓶を置きます。
 その横では、春奈が試合の応援で使うメガホンを片手に、ひっきりなしに指示を出しています。別にメガホンがなくても、問題ないと思います。

「壁山くんたち一年生は、壁の飾り付け。他のみなさんは、部屋の準備です!」

 工事現場監督さながらに春奈が指示を出して、壁山たち一年生は、壁の装飾を始めます。
 色紙を切って、輪を作り、それを鎖状に繋げ、長い紙の鎖を作ります。
 立向居だけは、キャタツに乗り、高い場所に金と銀の星を張り付けていました。もちろん折り紙を切り抜いたものです。空から持ってきてません。作者が言うから間違いない。

「音無さん! 星を貼り終えました!」

「やりましたね! 立向居くん!」

 立向居が、キャタツの上からやりおえた清々しい顔つきを春奈に向けて、春奈はジャンプ。何で同い年なのに敬語なんでしょう。工事現場の上司と部下っ(修正されました)

 一方、二年生組は食堂の机と椅子をせっせと運んでいます。秋と虎丸は料理してますが、それはそれ。鬼道に不動産じゃないや。不動、佐久間に蓮は何故かいません。外出でしょうか。いいえ、サボりです。きっとそうじゃなイカ?

 ところでさっきから、イナズマジャパンは何の準備をしているのでしょう? イギリスみたいな親睦会〜。にしては、みなさんジャージ率高いです。ジャージで親睦会とは恐れ多い。
 あ、壁の上に手製の看板発見。段ボールを長方形に切って、紙を張り付けたモンです。でかでかと『hippy birthday! 白鳥 蓮!』の赤い文字。

 これ書いたの綱海です。文脈から判断するに、『happy』と書くつもりが『hippy』になっちゃったよう。 hippyとは、ヒッピー族のこと。説明すると長くなるんで、気になるかたはGoogleや電子辞書でどうぞ。

「綱海さん、これじゃあヒッピーですよ!」

「え? あ、いけねえ。オレとしたことが間違えちまったぜ」

あ、立向居が気付いた。キャタツを看板の真下に設置し、赤いマジックで”i”の文字に大きなバッテンつけます。上に””a”と書き直します。黒い卵は出ません。むーりむーりー。

「ところで白鳥くんは、まだ眠っているのかな」

 机を運び終えた吹雪が、手で軽く汗をぬぐいながら、天井を仰ぎながら呟きます。

「あいつ、いつもなら早起きなのに、珍しいな」

 吹雪の向かいに立つ風丸が言いました。
 蓮は基本的にチーム内では早起きです。朝から元気に自主トレしてます。

「もし主役の白鳥くんが起きてきたら、困っちゃうね」

「音無。昨日から、準備しておくべきだったんじゃないか?」

 風丸が春奈に話を振って、春奈は自信満々に断言しました。

「先輩は昼まで絶対に起きてきませんから、大丈夫です」

「どうしてかな」

「私が昨日、先輩の夕食にこっそり睡眠薬を混ぜたからです!」

 吹雪と風丸は呆然。そりゃそうです。色々間違っています。フツーそこまでするか?
 春奈は、口をぽかんと開ける二人をみて、必死に弁明しました。

「ちゃんと用法・容量ともに守っていますから、平気です!」

 そういう問題じゃない。風丸と吹雪の困惑は、ますます深くなる一方です。自然の反応ですね。
 ちなみに春奈が使用した睡眠薬は、サイレース、別名フルニトラゼパム。アメリカ国内に持ち込みが禁止されている薬です。マークたちは使えない。

「薬が切れるまで後、六時間です。吹雪先輩、風丸先輩早く、早く!」

 春奈が早くしてと風丸と吹雪をメガホンごしにせっつき、二人は渋々別の机を運び始めます。だからどこの工事現場d。向かいあい、机を持ち上げ、運びながら、

「……白鳥も大変だな」

「そうだね」

二人は苦笑いしました。

 それから太陽が一番高いところに昇る、確か南中でしたっけ。南中する頃になっても、春奈の手にかかった蓮はまだ眠っていました。
 眠気に耐え切れずベッドにダイブしたため、毛布も何もかけないで、うつ伏せのまま眠っています。ジャージのままだし、青い靴下も履きっぱなしです。いけません。と、蓮の部屋の扉が勢いよく開け放たれ、

「起きてください! 白鳥先輩!」

 嬉々とした表情で、メガホンから大きな声を飛ばすのは、春奈です。青い髪を振り乱しながらお部屋に侵入。あ、事件の超本人です。
 蓮は春奈が入っても、夢の世界の住人であることを止めません。背中が上がったり下がったりしてます。ありえない、何かの間違いではないか? 恐るべし睡眠薬。

「せんぱーい! 起きてください!」
 
 今度は、蓮の耳にメガホンを当てて大きな声を出します。耳元で大きな声を出せばどうなるか。はい、蓮は黒い目を限界まで見開いて、上半身を起こします。 耳をふさごうとして反対の耳しか塞げませんでした。声が雷のように右耳から左耳に駆け抜けたような気がします。耳がじんじんしていました。

「な、何? 春奈さん?」

 痛む耳に顔をしかめながら、蓮は声を絞り出します。前髪は跳ねています。気合で押さえつけました。
 春奈は蓮に詰め寄ると、ジャージの袖を鷲掴み。無理やり前に引っ張られ、蓮は危うくベッドから転倒するところでした。鬼道さんがいたらどう思うでしょう。ライオコット島のトップニュースになるところでした。

「先輩、早く食堂に行きましょう!」

「う、うん」

 蓮は春奈の気迫に圧倒され、唯々諾々(いいだくだく)と従います。ベッドから降りると、半ば春奈に引きづられるように階下へと降りていきました。この時、この人は自分の誕生日を忘れていました。
 
 そして食堂に着くなり、パンパンと何かが弾ける音。同時に火薬の匂いが鼻をつきます。びっくりして辺りを見渡すと、円堂たちが壁に沿うように並び、それぞれの手にクラッカーを持ち、蓮にこやかに笑いかけていました。鬼道たちこうていペンギン3号組はどこへエスケープ?

「お誕生日おめでとう、白鳥!」

 みんなが一斉に祝福の言葉を投げかけ、蓮は目を丸くします。途端、身体全身が火照るのを感じました。照れからか頬を染めて俯いちゃいます。春奈がお母さんで、恥ずかしがりやな子供の手を引いている構造に見えます。

「あ、ありがと……です」

 円堂たちをおろおろと見ながら、緊張からようやく吐き出した言葉はそれ。何故敬語になる。蓮は改めて周りを見渡します。
 壁は多くの星や鎖状に編みこまれたわっかでデコレーションされ、にぎらかに。途中、例の看板を見つけ、ヒッピーの言葉に思わず目を細めました。字から犯人も割り出した様子。呆れた視線を向けました。
 テーブルには花瓶が置かれ、クロスがかけられ、香ばしくきつね色に焼けたチキンや、新鮮そうな野菜を作ったサラダが並びます。おかわりは何倍でもどうぞ。昼前ですが筆者の胃袋が鳴ってます。またそのテーブルの一つには、大きなバースデーケーキが。残念ながら一段飾りですが、生クームといちごをふんだんに使ったデコレーションケーキです。火のついたろうそくがきちんと14本並んでました。

「あれ、ところで鬼道くんに不動くんに佐久間くんは?」

 三人がいないことに気づいた蓮が三人の姿を求めると、春奈はメガホンを口に当てて息を吸います。さあ、こんな時はあの人の名前を呼ぶのよ! せーの!

「お兄ちゃんたち、出てきてー!」

 声に円堂たちの視線が蓮の後ろに集中します。壁山や栗松が噴出して、小さく笑い声を立てています。蓮は不審に思いながら後ろを向いて、目の前の光景を全力で疑いました。
 そこにいたのは三匹のペンギン、いえ色違いのペンギン着ぐるみに身を包んだ鬼道と不動と佐久間でした。
 デフォルメ化された目とくちばしつきのフード。ペンギンの羽部分はしっかり再現されており、手が覆われています。ちなみに鬼道の色は黒、不動は赤、佐久間は紫となっています。足元は出てしまうためか靴下を履いていますが、三人とも黄色と言う統一っぷり。しかも三人とも、恐ろしいことによく似合っています。春奈の目に狂いはない様子。
 三人とも嫌そうな戸惑うよーな顔つきですが、円堂たちには馬鹿ウケ。腹を抱えて大爆笑しているもんが大勢います。控えめな吹雪や風丸ですら声を上げて笑ってました。大爆笑の渦です。笑われた本人たちは、困った顔付きに。蓮は、春奈からそっと離れると、恐る恐る尋ねてみます。

「さ、三人とも。……その格好はどうしたの?」

「……春奈に白鳥先輩のためと頼まれ、断る暇も与えられずにやる羽目になった」

「ったく、鬼道くんの妹はこえーな」

「オレもいつのまにか頭数に数えられていた。不動も同じだ」

 三人が苦々しく呟いて、蓮は激しく同情の意を示します。鬼道はシスコンですから。断れなかったらしいですが、他の二名は強引に巻き込まれた様子。春奈の勢いはつくづく怖いです。

「さあ、みなさんで先輩を祝う歌を歌いましょう!」

 ノリノリの春奈がメガホンを両手で持って叫んで、秋と冬花が手をたたき始めます。リズムとっているんです。ピアノなんてないしね。
 誕生日の定番ハッピーバースデーをみんなで、合唱します。大きく、楽しげな声が辺りに響き渡りました。ペンギン組みもちろん合唱。ですが時々、ぺーんと謎の奇声を発したり、わざとスキップしたりして、爆笑の渦を再度作るのです。本人たちは嫌そうで、ノリが悪いです。むしろそれが面白さを倍増させている様子。
 蓮もつられて勝手に歌っていましたが、その声は澄んだ美しい歌声。白鳥の苗字は伊達じゃありません。 そしてハッピーバースデー白鳥、と自分で自分に歌ってしまい、そのことに気づいたのは、歌い終わり、みんなが拍手をしながら駆け寄ってきたとき。蓮はあっと言う間にみんなに囲まれ、頭をくしゃくしゃと撫でられまくります。髪がものすごく乱れまくりました。

「よーし! 白鳥、ろうそくの火を消せ!」

 お祭り大好きな綱海が言って、みんなは自然と蓮が通れるように道を開けます。
 蓮はケーキの前に立つと、ろうそくの先端で揺れる小さな炎めがけて息を吹きかけます。一気に十四本すべて消えました。筆者はいつも2本くらい残りますが。そして白い煙と共に喝采が沸き起こります。蓮は喝采を背に受けながら、消え行く煙を見つめながら、

(最高のバースデー、かな)

 にっこりと微笑みました。
 しかし四月には春奈が蓮と同じ年になり、複雑な思いをすることになるのはまた別のお話です。

(こんな仲間に恵まれて、最高のバースデーだ)

〜FIN〜
携帯は三点リーダーもでないし、スペースもでなくて不便ですorz
久々の呆ラノベ調。アニメやcmのパロディネタがいくつかあるので、是非とも探してみて下さい。
今回は突っ込みどころしかないやw鬼道さんにコスプレさせたかったorz不動や佐久間も犠牲になっていますが、それはしずくの趣味ですw

描写が下手で想像しずらいと思うので、参考にした着ぐるみ画像をはっときます。不動や佐久間のは色違いですが、ご想像願いますw

あ、これから出かけるのでコメント返しは保留ですorz

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.387 )
日時: 2011/03/30 12:09
名前: ふぁいん (ID: siGOcKQj)

蓮君ハッピーバースデー!!鬼道さん可愛すぎ!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.388 )
日時: 2011/03/30 18:00
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: エキサイト先生は間違い多い^^;イナズマジャパンとは間反対のお話。

To the dark and light(アフロディたちサイド?)

 練習も終り、夕食が終わった韓国宿舎の食堂。食べ終わった配膳をカウンターに戻し終わった蓮は、ガラスのコップを掴んだままの姿勢で、たまたまカレンダーに目が行った。
 試合・練習の予定などをキャプテンであるチャンスウがまめに書き込んでいるもの。今日は三月二十三日、練習試合と称して小さい子供のチームと戦ったわけだ。その予定もきっちりと書き込んである。蓮は何気なく、まだ何も書かれていない次の週へと視線を向け、”ある日付け”で目が止まった。”ある日付け”を凝視し、黒い瞳が衝撃を受けたように開かれ、揺れている。弾みにガラスコップから手を離してしまった。
 蓮の手から落ちたガラスコップは、盛大な音共に砕け散る。その音に、雑談をしていたり、食事途中だったファイアードラゴンの選手たちが一斉に振り向いた。ガラスの細かい破片が、蛍光灯の光を受けて煌いていた。

「蓮? どうしたんだい?」

 座っていたアフロディが心配そうな表情で蓮に駆け寄る。
 蓮は血の気のうせた顔で、顔中に冷や汗をかいていた。わなわなと唇を震わせていたが、アフロディの声で我に返ったらしい。はっとした顔で辺りを見やると、チャンスゥたちがアフロディ同様心配そうな表情で眺めていた。

「……ごめん。ぼうっとしていたみたいだ」

 慌てて作り笑顔をすると、部屋を飛び出て、箒とちりとりを持ってくる。そして、床に落ちたガラスの破片を箒でちりとりに入れた。気を利かせたアフロディが古い新聞を蓮に差出し、それにガラスの破片を包み終えると、

「今日は疲れた。もう寝させてもらう」

 沈んだ声で、箒とちりとりを手にふらふらと部屋から出て行く。まるで幽霊のような後姿にチャンスゥたちは不安に駆られた。その直後、南雲と涼野がすくっと立ち上がり、蓮の後を追うように部屋を出て行く。
 アフロディは考え込むように顎に手を当てると、蓮が見ていたカレンダーの前に立った。それから蓮が凝視していた日付を、睨むように見る。『三月三十日』。今日から一週間後だ。

「この日に何かありそうだな」

「南雲や涼野に尋ねてみたらどうです? 彼ら、幼馴染なんでしょう?」

 チャンスゥの助言に従い、アフロディは南雲と涼野が戻ってくるのを待った。
 夕食を食べ終り、次々と選手が引き上げていく。とうとう残っているのがアフロディとチャンスゥのみになった位に、ようやく二人は戻ってきた。二人にしては珍しく沈痛な面持ちをし、椅子へ倒れこむように座る。アフロディは向かいに座ると、矢継ぎ早に質問を浴びせかけた。
 
「南雲、涼野、蓮は元気かい? どうして落ち込んでいるんだ? 蓮は明日以降大丈夫そうかい?」

「待てアフロディ。順番に話をさせろ」

 涼野が嘆息しながら、アフロディがなおも言葉を連ねようとするのを制止させる。アフロディが口を閉ざしたのを確認すると、南雲が訥々(とつとつ)と語り始めた。

「なんっつーか。蓮は完全に塞ぎこんでいる。まあ、明日になれば元気になるとは思うが、三十日までは時々ぼうっとする可能性があるな」

「どうしてだい? 三十日に何かあるのかい?」

 アフロディの質問に南雲と涼野は、お互いの意志を窺うように互顔を見合った。が、すぐに涼野が重い口を開く。

「……三月三十日は蓮の誕生日だ」

「え?」

 アフロディはきょとんとする。
 誕生日といえば、誰もが喜ぶ行事だからだ。ファイアードラゴンのメンバーも祝われるたびに喜んでいたし、そこにいる南雲や涼野、チャンスゥもチームメイトに祝われるたび、破顔一笑していた。

「誕生日なら祝ってあげるべきだろう?」

「祝えば、蓮は落ち込むぞ。『誕生日おめでとう』の一言ほど、あいつを傷つける言葉はないぜ」

 南雲がたしなめる様に言って、アフロディは蓮の顔を脳裏に思い浮かべる。愛くるしい笑みを浮かべ、ピッチを駆け回る姿。いつも元気な彼がどうして誕生日を憎んでいるのか、理解できない。

「……確か生みのご両親が身投げをしていましたよね」

 確認するようにチャンスゥが呟き、アフロディは南雲と涼野の顔を反射的に見た。南雲と涼野は、よく観察しないとわからない程小さく頷く。

「そのせいか、蓮は誕生日を嫌っているようだ。『両親を死なせて置いて、誕生日を祝われる資格などない』と先ほど呟いていたよ」

 悲しげに涼野が呟いて、アフロディは否定した。

「それは間違っているよ」

 涼野と南雲が驚いた面持ちでアフロディを見据える。

「誕生日はその人が”生まれてきたこと”を、誰かに祝福される最も美しい日だ。祝われる資格がない人間などいない。生きているのは、神に愛されているから、だ。だからな、そのことを蓮に教えるべきだ」

 アフロディはそこまで言い切ると、南雲と涼野の顔を交互に眺め、明確な意思を宿した強い瞳で二人に問いかけた。

「南雲も涼野も蓮の誕生日を共に祝いたいだろう?」

 涼野も南雲も僅かに口角を上げる。涼野は南雲を試すような視線を向け、

「可能なら祝ってやりたいな。そうだろう晴矢?」

「んな当たり前のことをいちいち聞くな、風介」

 南雲はかなりつっけんどんに返す。
 いつもならこのまま口喧嘩に入るところだが、蓮のために頑張りたいという根本的な思いが同じであるためか、口げんかはしなかった。そこへ今まで黙っていたチャンスゥが口を挟む。

「しかし、どうするのです? 白鳥のトラウマはかなり深いようですよ。下手をすれば……」

 チャンスゥの口調は厳しいが、やるならしっかりやれ、中途半端にやるのなら止めろ、と警告するもの。そのことをアフロディは、しっかり察していた。初めから失敗など恐れていない。幼馴染である南雲と涼野に比べれば大したことはできないかもしれないが、蓮に笑ってほしかった。雷門との練習試合の後に初めて見せられてから、蓮の明るい笑みにすっかり魅せられてしまっているのだ。

「これが出来るのは、きっとボクたちだけだ。他の誰にもできないことだよ」

 アフロディは力強い声で断言した。南雲や涼野も自然と力強く頷いていた。

〜つづく〜
短編第二段。今日中に終わるかなぁorz

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.389 )
日時: 2011/03/30 18:24
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)

>>桃李さん
いらっしゃいませー^^(スーパーのおばさんみたいw)
桃李さんに来て貰えてすっごく嬉しいです><思わず天井まで飛び上がっちゃいましたよ←

前々から読んで頂いていたんですか><私も桃李さんの小説を読んでいたながらコメントを出していなかったので、似たような感じですねw

鬼道さんの心情を切なく書いていたつもりなので、伝わって良かったです♪涙腺崩壊……初めて頂いたありがたきお言葉ですっ。影山は、ゲームで初見の時もここでああさせる意味があるのか? って思いました。ルシェ&鬼道がゴーグルをとるシーンは涙物でしたのにorz

校門登りは2回目になりますねw傘美野でも登ってますw
運動神経がいいことをアピールしておいて、試合では倒れっぱなしなのであまり意味がなかったり><私も運動神経ほしいです。我らが蓮はすごi(おい)

いえいえ、こんなに書いていただいてwもう二行とかでも、桃李さんのコメントならどんな量でもぶっ飛びます(すいません、きもくて)

栄養補給! じゃあ私は桃李さんの小説で、アドレナリンをフルMAXにしまs

ではではまた着て下さると嬉しいです^^

>>星沙
サッカーをやっているからスポーツ万能だ!(私がスポーツ万能な子が書きたかったからなんだw)しずくは木登り少しならできる。

論破ってどこで何をしてきたのかものすご〜く疑問に思う^^;最近友となら、イナズマイレブンで水掛け論を展開していたかなwファイアードラゴンについて、長いこと語ってたw結果は所謂平行線。決着つかなかったよorz

メールの件は……オッケーかな?

では、コメント有難う^^

>>ふぁいんさん
鬼道は暴走しました〜ナイフでも矢でもどんとこいです!
イナズマジャパンの短編は突っ込みどころしかありませんw楽しんでもらえたでしょうかw

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.390 )
日時: 2011/03/31 14:36
名前: ふぁいん (ID: cTgMt2qy)

今度は、かなしめなお話ですね!蓮君が見ていてかわいそうでした。誕生日を楽しく祝ってもらえるといいです!アフロディの優しさに、声を出して泣きました。バスタオルが二枚はいりますね!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.391 )
日時: 2011/03/31 15:40
名前: 星沙 ◆RkKLSqUPDc (ID: IsQerC0t)
参照: http://www.pokemon-br.com/commyunity/index.html

蓮君の気持ちがわかるよ……でも、誕生日じゃない分私のほうが浅いかな?家族でもないし……
蓮君は記憶としては薄いけど、私は最近だから濃いけどね(^^;
大丈夫、克服できるよきっと!(^^;
私は克服しないことにしてるけどねww忘れるといけないからw

でも、その傷はいつか癒えるってことは事実だ〜!
たとえどんな深い傷でもね☆^∀^)

蓮君の気持ちを痛感した星沙でした♪

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.392 )
日時: 2011/04/02 13:43
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 8gvA/W.A)
参照: これからケータイ投稿が増えるかも。

 自室へ引き上げて行った蓮を追いかけ、南雲と涼野は、食堂を飛び出た。

 二階に上がり、蓮の部屋前に来ると、扉は開け放たれていた。南雲程大雑把でない蓮は、マメに扉を閉めるはずだ。南雲と涼野は嫌な予感に駆られた。
 そのまま、部屋に足を踏み入れると、蓮は案の定、ベッドの上でうつ伏せになっていた。額の下で組まれた手を枕がわりにしている。ジャージや、靴下も脱がずそのまま倒れている。蓮の下にある毛布には、皺が寄っていた。

「……蓮、大丈夫か?」

 南雲が静かにドアを閉め、涼野はベッドの縁に腰掛け、気遣うような調子で声をかける。蓮は伏せたまま、顔だけを激しく横に振った。それきり動くことはなかった。
 涼野が対応に困った様で、腕を組む。顔つきも、どこか心配そうに見える。
 そこへ南雲が涼野の横にやって来た。南雲は、うつ伏せの蓮を、憐れむとも小馬鹿にするともつかない視線で眺めた。ややあって、蓮の背中にはっきりとした声音で問いかける。

「蓮。お前、誕生日嫌いだろ?」

 涼野が青緑の瞳を珍しく驚いたように大きく見開き、南雲を見た。その直後、しっかりした肯定の返事が聞こえる。

「ああ、嫌いだ」

 蓮は顔も上げずに返事をよこした。
 頭の中が、自分でも気が狂いそうなほど、様々な感情がごった返しているからだ。きっと今、親友二人の顔を網膜が認識したら、爆弾が爆発するように感情を押さえきれなくなる。
 けれど、この二人だけは、どうしても素の自分を露にしてしまう。心配するような視線を背中に感じ、言葉が喉までせり上がってきた。
 その優しい心は嬉しかったが、頭を支配するマイナスの感情にあっさり吸収されてしまう。だんだん優しい視線を感じるのが苦痛になってきた。蓮は、心内で二人に詫びながら、自虐的に思いを訥々と吐き出した。

「僕は、自分勝手に落ち込んでいるだけ。気にしないで、晴矢、風介。……誕生日は、生まれてきたことを祝う日だよね? 僕は、両親だけを死なせ、生きるためだけに生まれてきた。そんな自分に『生まれてきたことをおめでとう』なんて、祝われる資格なんてないよっ……!」

 独りでに声が震えた。
 晴矢と風介の顔も見ていないのに。誕生日は、生まれたことを祝福される日。両親を死なせ、のうのうと生き残る自分に、祝福される権利はない。誕生日はただ大人になったことを己だけで喜び、祝う必要などない。——自分だけは。
 幸せな、何をもって幸せとするかはわからないが。幸せなその他大勢は祝われてほしい。
 自分の誕生日は嫌なくせに、蓮は人の誕生日を祝うのは大好きだ。相手が喜ぶのが好きと言うのもあるが、幸せな時間を共有することで、自分の『祝ってほしい』気持ちに嘘をついているのだった。

「ごめん。今日は一人にさせてくれ」

 二人がいると、心はざわめくばかり。心のそこから、二人に出ていくよう頼んだ。自分の心情を察してくれたのか、すぐに扉が閉まる音がした。初めて上半身を起こして、降りあおぐと、二人の姿はない。気遣って何も言わずに出ていったに違いない。追究しなかった幼なじみの行為が胸に染みる。
 しかし、所詮しょせんは気休めだ。一人だと今度は、孤独感に苛まれる(さいなまれる)。全く人の心は、沈むときは何処まで沈めばきがすむのだろう。
 蓮は嘆息すると、仰向けになり、孤独感に身を委ねる。ふと天井に視線をはわせると、鍋の蓋みたな、 電球を覆うカバーの中に黒い影があった。誤ってカバーの中に入り込み、動けなくなった羽虫の哀れなすがた。蓮は、カバーの中にそっと、寂しげな口調で語りかける。

「僕とおんなじ。生まれる場所を間違えたね」


 死ぬのなら虫にならなければよかったのに。

 僕も悲しむなら、親と共に海のもくずになるべきだったのかな。

 外では、南雲と涼野が僅かにドアを開き、蓮の呟きを聞いていた。

「そんなことはない」

「間違ってたら、オレと風介との出会いも間違いだったのかよ」

 涼野の声ははっきりと蓮の言葉を否定し、南雲の声は怒りで震えていた。大切に思っている人間が二人も居るのに。悩みだすと自分の内部世界にどんどん突っ込んでいくのは、彼の悪い癖だった。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.393 )
日時: 2011/04/01 18:01
名前: ふぁいん (ID: bPAPej8q)

読んでいて心が苦しいです!しずくsは天才ですねっ!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.394 )
日時: 2011/04/02 14:12
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 8gvA/W.A)

 食堂に戻った南雲と涼野は、アフロディを交え蓮を元気づける具体的な方法について議論していた。しかし、そううまくはいかず。

「うーん」

 三人分の悶える声が零れた。アフロディたちは、腕を組んで難しい顔をしている。

 気を効かせたチャンスゥが、三人の前に湯気がたっているマグカップを置く。それに目もくれず、アフロディは頭を抱えて悶えていた。南雲は、やけくそになってマグカップを勢いよく傾けた。涼野は、蓮が心配なのか天井をじっと見つめていた。
 蓮を元気づけようと簡単に言ったものの、いい考えはなかなか出てこなかった。アフロディ、南雲、涼野は己の知恵を絞るものの、論点を迷走するばかり。最終的には、〈カオスブレイク〉を蓮にぶつければいいとか、血迷った発言が飛び出す始末だ。
 三人寄れば文殊の知恵とか言う格言があるが、それを言った人間を問いただしたくなる迷いようだ。
 見兼ねたチャンスゥが、アフロディたちに何度か助言しようとした。が、三人は自分たちでやると言って、チャンスゥが口を挟むのを嫌がる。普段、試合などで頭を使うことは、蓮やチャンスゥにやらせる三人が、自分たちだけで解決しようとすることに、チャンスゥは驚愕した。

(——これは彼ら自身で解決しなければならない問題ですね)

 これは、試合ではない。試合を組み立てるゲームメイカーは、必要ないのだ。否、彼ら自身で組み立てなければならない"試合"なのだ。相手の心理を的確に把握し、今の状況を的確に判断する。難しいことだが、アフロディたちには出来ると言う確信があった。チャンスゥは立ち上がると、静かに食堂から出た。

*
 時計の長針が一周し、外にはすっかり夜の帳が降りていた。チャンスゥが注いでくれたお茶は、すっかりぬるくなってしまっていた。三つとも、ほとんど減っていない。
 食堂はエアコンが聞いているので、心地よい暖かさが保たれていた。

 食堂に三人だけ残るアフロディたちは、すっかり気疲れしていた。アフロディは机に突っ伏し、南雲はそっくり返り、涼野は上に身体を伸ばしていた。三人とも顔に疲労の色が見えている。

「なあ、風介、アフロディ。誕生日ってなんなんだ?」

 南雲が体勢を前に戻しながら言葉を発し、アフロディが顔を上げて南雲を見る。その際、邪魔な髪は後ろに払った。

「南雲、いきなりどうしたんだい?」

 涼野とアフロディの不思議そうな視線を受けた南雲は、バツが悪そうに二人から視線を逸らした。

「誕生日って、なんなのかなぁって思っただけだよ。オレたちは当たり前に"嬉しい日"だと思うけど、蓮を見ると誕生日はなんだって思うんだよ」

「生まれた日をご馳走を食べたりして家族や友人と祝うことだろう?」

 アフロディがさも当然そうに答えて、南雲は肩を竦める。

「んな当たり前のことは、龍でもわかるぜ。じゃあ聞くけど、なんで祝うんだよ?」

「う〜ん。親なら『生まれてきてくれてありがとう』って、メッセージを伝えるためだな。友達は、『一緒にいてくれてありがとう』かな」


 何とか答えを捻り出したアフロディ。すると、今の今まで黙っていた涼野が、急に口を開き、

「……アフロディ。キミは初めになんといった?」

「え? 『生まれてきてくれてありがとう』?」

 戸惑いながらアフロディが答えると、涼野は何やら思いついたような表情で、二人の顔を交互に眺める。

「それだ。蓮は自分が生まれたことを、悪いことだと思い込んでいる。今の言葉をかければ、もしかすると」

 そこまで聞くと、アフロディは得心が行く顔つきになった。

「なるほど。”生まれた”と言う、行為自体を祝福するんだね?」

「……なんか恥ずかしいな」

 しかし南雲は恥ずかしがり、言うのをしぶっている。いくら幼馴染みでも、『生まれて来てくれてありがとう』等とは、面と向かっていいずらい。南雲は、どうすればよいか考え込んでいた。その様子を見つめていた涼野は、南雲の方に身体を向けると、話を切り出す。

〜つづく〜








Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.395 )
日時: 2011/04/02 14:25
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 8gvA/W.A)
参照: 長くなった。。

「蓮の両親は、海に飛び込む前に『あなただけは、幸せになって』と言っていたそうだ。両親が蓮を残したのは、愛していたからだ。生きている方が幸せだと、そう考えた。だが幼すぎて、そのことがよくわからなかったのだろう」

「皮肉だけどよ、蓮の生みの両親がそのまま生きていたら、オレたちはあいつと出会うことはなかったな」

 涼野が蓮を憐れむような口振りで言って、南雲は自虐的に笑う。今まで気付いていなかったが、もし蓮の生みの親が生きていたら、蓮は、風介や自分とも、サッカーとも出会うことはなかった。これは変えようのない真実。そのことを涼野に伝えると、はっとした顔になった。

「そうだな。出会っても、知らずにすれ違い、互いに気にもしないだろう。そう仮定すると、蓮はイナズマジャパンになったはずだ。彼の存在を知ったとしても、私たちはイナズマジャパンの、有能なパサー(パスで試合を組み立てるのを得意とする選手)としか、感じなかったかもしれないな」

「いや、野球かなんかやって、そっちの才能を開花させてたかもな」

「……味方としても、敵としても、同じフィールドに、立つことはなかったのかもしれないのか」

 寂し気に涼野が言葉を吐き出し、南雲は眉を潜める。悲劇は自分たち三人を出会わせた。ふと、蓮の自分が生まれてきたことは間違いだったのかな、と言う呟きが耳の奥に蘇った。あの悲劇を蓮はどう思っているのだろう。親が死んだ嫌な出来事なのか、自分たちと出会えた幸福な出来事なのか。いや、その両方か。幸福なんて思うはずがない。
 アフロディは、二人の表情を静かに窺っていた。退屈なのか、足をブラブラさせている。

「蓮の両親が死んだ"おかげ"で、オレたちは一緒にサッカーができる」

「…………」

 事実を突きつけるために、南雲はわざと"おかげ"と表現した。わかっていた。彼の両親の死を悲しむ一方で死んでいなかったら困ると思う自分がいることは。
 涼野も同じなのだろう。口を閉ざし、天井に——いや、天井よりも遥か上空に視線を送っていた。許しを請うような視線。蓮の両親に謝っているのかもしれない。
 

「そういえば、キミたち三人って、呼吸がぴったりだよね。パス回しも敵が付け入る隙をほとんど与えないし、連携も完璧だ」

 湿った場を取り繕うようにアフロディが二人に話しかけ、

「当たり前だぜ。蓮のアシストは、ファイアードラゴンで一番上手いし、オレたち三人が揃えば無敵なんだよ!」

 南雲は強気に言い放つ。涼野も即座に首肯した。やはり、この三人の絆は強いようだ。南雲も涼野が、蓮を馬鹿にしないことからも、それを窺える。

「私も同感だ。だからこそ、蓮に出会えたことを、彼の生みの両親のおかげだと感謝したい」

「でもそれって、蓮のご両親に『死んでくれたお陰で息子さんと仲良くなれました。感謝します』って言っているようなものだろう? 人の死を喜ぶのはよくないね」

 アフロディにズバリ指摘された涼野は、静かに首を横に振った。その顔には、申し訳無さと強い意志が混ざりあっている。

「本来思ってはいけないことなのは、十分わかっている。悲しいが、そう思ってしまう。あの悲劇がなければ、私たちは仲良くなれなかった。……その罪滅ぼしに、せめて、両親が蓮に伝えられなかったことを、生まれてきて、『生まれてきてくれてありがとう』と言う言葉を伝えたいのだ」


涼野は、はっきりとした声で、しっかりアフロディを見据えた。アフロディは、しばらく涼野の強い意志が現れた瞳を見つめていた。やがて降参するように息を長く吐き出し、身を乗り出す。

「……ボクは、幼なじみではないが、共に言っても構わないかい?」

 アフロディに協力してもよいか尋ねられ、南雲と涼野は、穏やかに微笑みあった。その笑みを、二人はそのままアフロディに向ける。

「オレたちで、あいつが喜んで誕生日を迎えられるようにしようぜ」

 南雲が宣誓し、手をすっと伸ばす。オレの手の上に重ねろ、と涼野とアフロディに目配せする。アフロディは殊勝に頷いたが、涼野は仏頂面で睨み付けてきた。今回は喧嘩をしている場合ではない。南雲はむっとしたが、無視。しかたなくアフロディに視線を向けた時、

「私は、蓮や晴矢との出会いを間違ったものだと、考えたことは一度もない」

 不意に涼野が、力強く断言し、南雲の手の上に自分の手を進んで乗せた。手の上の重みが少しまし、南雲は満足そうに笑った。そしてからかうように、

「お、今日は珍しく気が合うな風介?」

「勘違いするな。蓮のために、協力してやるだけだ」

 涼野は険のある顔で、重ねた自分の手に視線を落としながら、言い放つ。相変わらず素直ではないと、感想を心の奥にしまいこんだ。そして重ねた手を見て、

「 誰にも、オレが、蓮と風介と出会ったことは、間違ったものだと言わせないぜ」

「キミたち、ボクのことを忘れないでほしい」

 そこにアフロディの、白くほっそりとした手が重ねられる。

「ボクも、蓮と出会えてよかったと思える一人だ」

 アフロディが静かに笑みを浮かべた。三人分の重さは、結託の印。ここに作戦は始まった。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.396 )
日時: 2011/04/02 14:10
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 8gvA/W.A)

>>星沙
察してくれて、感動。その言葉をかければ、蓮もきっと元気になると思う。そうだよね、胸の傷はだんだんと癒されるはず。それをしっかり、乗り越えてって声をかけたくなる;;色々トラウマを背負っているのが悲しく出た回になった。

この前の、だよね・・・・・・蓮も克服はしない。けど、それを背負って前に進んでいくって言う流れを書ける様にしたい。

それでも、こんな風に思っていてくれる(アフロディ・南雲・涼野)がいて。作者ながら、ファイアードラゴンがどれだけ好きか痛感したorz

イナズマジャパンでもよかったけど、幼馴染の方が蓮をよく分かっている(?)と言う設定。

>>ふぁいんさん
わかります、駄文の天才ですねw
今回は初めてモチーフが悲しい感じなので、意味不明なストーリーになっていると思いますw後一回で終わるのでお待ちを。さあ、蓮はどうなるか、待っていてください^^

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.397 )
日時: 2011/04/02 22:19
名前: ふぁいん (ID: enDlMgfn)

蓮君とガゼル、バーンの出会いは絶対に間違っていません!三人とも、すっごく仲がいいし!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.398 )
日時: 2011/04/03 10:42
名前: 星沙(別PC) ◆GdYtMY4AZo (ID: KY1ouKtv)

癒「運命ってすごいと思えますねww」

でもさ、一歩間違うとすごいことに動くからできるだけ無心になってる作者星沙です!

癒「まともな正論もいえないんですか?
確かに一歩間違えば這い上がるの大変ですけどね〜、ま人生甘くないって事ですよ作者星沙w」

たしかに……甘くない。人生って歯車ですよね〜、かみ合わないと動かないというか……
いらない歯車を換えないといけないときもあるし、その部品だけ動かなくなったり

癒「作者も蓮君の気持ちは痛感できるでしょう?
かけがえのないものを失った気持ちぐらい……」

それ以前にぐらい、じゃなくて完全に分かるから!その気持ち分かるから!
じっさいの別PCじゃないほうその人のあだ名だから!記憶から消えないようにしてるから!

うむ。結論「人生とはいろいろかみ合って人生という
それはいつどうなるかわからない。つまり、いつ消えてもおかしくないということだ
つまり、その人という十字架を背負って生きていくのが人生というものだ
だが、背負わずにそこから逃げたらその時点で人生は狂い始める」です
蓮君!十字架を背負ってともに人生を歩もうではありませぬか!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.399 )
日時: 2011/04/18 19:38
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 2.TlWg7X)
参照: あと一回?

 翌日。
 蓮は、胸に蟠り(わだかまり)を残したまま目が覚めた。
 布団を被らずに寝たので、身体がすっかり冷えきっている。あまりの寒さに、蓮は起き上がりながら、身体を震わせ、毛布で身体を包み込んだ。しばらくして、体内に血が駆け巡り始めると、何とか動ける程には体温が回復する。

 長い息を吐き出し、枕元に置かれたデジタル時計へと視線を向けると、既に七時半を過ぎていた。起きるのが最も遅いチナンですら七時には起床しているから、大分寝坊したことになる。
 通常の思考なら飛び起きるところだが、蓮は毛布を身体に巻き付けたまま、ぼうっと時計の文字盤を眺めていた。
 なぜか身体がだるい。身体を動かす気力が沸いてこない。サッカーの練習など億劫に感じられ、ずっと部屋に閉じ籠っていたい気分。
 
 時計の文字盤が一分進み、蓮気だるい自分を叱咤した。自分はまがりにも韓国代表。代表選手が練習をサボるなど、代表になれなかった選手に下げる頭がない。やらなくては、いや練習をサボるのは代表を止める時だ。
 ベッド前のタンスに目をうつせば、韓国のユニフォーム——赤いシャツとグレーのハーフパンツが、ハンガーに吊るされている。代表である証。己が代表だと言う現実を告げている。
 毛布を身体から外し、休みを要求する身体を無理矢理動かした。足を床に下ろすと、身体を引きずるようにして部屋から出た。そして、一段一段ゆっくりと階段を降り、食堂に向かう。
 足取りは重く、食堂が近づくにつれ、逃げたい衝動に駆られた。それでも身体を意思の力で食堂に向かわせ、閉まっている扉を勢いよく開けさせた。
 扉を開くと、各テーブルに着いている選手たちが、一斉に自分を見つめているのが目に入ってきた。チナンだけは手に茶碗を持っているが、他の選手の机には何も置かれていない。やはり寝過ごしたのだ。
 
 普段は早起きな蓮が寝坊したことが珍しいのか、選手たちは不思議そうな顔で蓮を見つめていた。ただアフロディ、南雲、涼野だけは探るような視線を蓮に投げ掛けている。その視線に気がついた蓮は、アフロディたちを一瞥すると、"笑顔"を作った。周りを見渡し、

「ごめん。寝坊しちゃった」

 わざと明るく謝った。演技であるが、本当に明るく謝っているように聞こえる。
 ほとんどの選手は騙され、「珍しいな」「気を付けろよ」等と軽く注意するだけでそれ以上なにも聞かなかった。安心するも束の間、幼馴染み二人だけはますます視線を険しくすることに気づく。間違いなく演技だと見破られているだろう。
 ——普段洞察力はないくせに、自分に対する洞察力だけは持っている困った幼馴染みだ。と蓮は文句を内心で呟き、逃げるように二人から視線をはずした。

「さ、今日の朝御飯は何かな」

 鼻歌を歌うような調子をわざと言いながら、蓮は朝食を取りに向かった。

*
 この一週間、練習はあまり集中出来なかった。
 練習にあまり身が入らず、蓮は絶えずぼうっとしていた。そのせいでパスミスが増え、チャンスゥに怒鳴られる機会がどっと増えてしまった。ファイアードラゴンのMFやDFを、翻弄する程度の力量をかろうじて保ってはいたが。
 
 いつもなら落ち込む蓮であるが、チャンスゥの言葉は耳から耳へと抜けてしまう。日に日に間違って生まれてきたのでは、と猜疑心が増したからだ。
答えの見つからない問いは蓮を孤独の中に沈めていった。
 表面上は明るく振る舞って元気に見せているが、内心はぼろ切れのようにズタズタと引き裂かれている。いつも言葉にならない悲鳴を上げていた。
 生まれてきてよかったのか、誰か教えてよと無言で叫ぶが誰も答えてくれない。苦しい。それでもファイアードラゴンの誰かに打ち明ける気にはならない。こんな問題にばか正直に答える人などいるわけないと勝手に決めつけていた。
 深く沈むと周りが見えなくなる蓮の悪い癖だった。
その間、アフロディたちはもちろん苦しむ蓮に気がついていた。
 表面上は毎日同じでも、日が進むごとに落ち込んでいく蓮の心を敏感に感じ取っていた。時折声はかけたが、沈む一方の蓮の心に光を与えることは出来なかった。それだけの闇。やはり誕生日に全てをかけるしかないと、歯痒い思いを噛み殺す。
 ——やがて、それぞれの思いが交差しあう三月三十日を迎えた。
〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.400 )
日時: 2011/04/07 13:41
名前: ふぁいん (ID: lwQfLpDF)

今日から学校でした!しずくsはいつから?
読んでいて心がちょー痛いです!アフロディたちがんばってほしいです!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.401 )
日時: 2011/04/18 19:32
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 2.TlWg7X)
参照: 高校は忙しく、ペースダウンしてますorz

「……ん」

 三月三十日の朝。カーテン越しに差し込む眩しい光で、蓮は目を覚ました。
 
 枕の元に置いた目覚まし時計に手を伸ばすと、『5:30』の表示。いつも目が覚める時間だ。今日はチャンスゥに叱られないなあ、と安心しつつ起き上がり、蓮はベッドから降りた。
 カーテンを引いて、窓の鍵を開けて、窓を開いた。涼しげな風が部屋の中に吹き込み、蓮の前髪を静かに揺らす。心地よい暖かさだが、身体の中を氷塊でなめられたような寒気を感じた。

 いや、腹の中に残っている”何か”が風に触れて寒気を”起こさせた”のだ。自分は一人ぼっち。生きる意味なんてきっとない人間だと改めて感じさせ、寒気が起こったのだ。
 蓮は風で身体を冷やしながら、窓辺の縁に腰掛け、瞼を閉じる。
 瞼の裏に雷門の仲間、南雲、涼野、アフロディ、ファイアードラゴンの仲間が駆け抜けていく。笑顔を浮かべていても、右から左へ去っていき、最後には誰も居なくなる。暗闇が広がっているだけだ。

 ——ああ、結局人間は一人ぼっちなんだなぁと結論付けると、瞼を開いた。背中越しに風を感じながら、蓮は小さくため息をつく。そして発した声は、蓮らしくない弱々しいものだった。

「はあ、早く明日にならないかな」

 毎年のことだが、誕生日は落ち込んでしまう。自分の生きる意味がわからなくて、思い詰めてしまうのだ。
 この時期学校は春休みなので、今まで一日家にこもって過ごしてきたが、今年は幸か不幸かひきこもることはできない。けれど翌日になってしまえば、取りあえず忘れることはできる。

 仕方ない。サッカーに集中して忘れよう。そう決意したときだった。扉が控えめに叩かれ少し開いた。ドアの隙間からアフロディが顔を出す。

「蓮、おはよう」

「……アフロディ。今日は早いんだね」

 アフロディに微笑まれ、蓮もつられるように、だが瞳は寂しげに伏せながら笑い返した。声に明るさがない。明るくするよう努めたが、無言な話だった。
 それを見たアフロディは何やら考え込むような仕草をとったが、すぐに真顔に戻った。

「これから、ボクの部屋に来てもらえるだろうか?」

 アフロディに聞かれ、蓮はめんどくさそうな顔で、僕みたいな人間が行っていいの? と言わんばかりに首をかしげる。
 どうせアフロディも自分のことなどわかってはいないと決めつけると、急に話す気が失せてしまったのだ。

 蓮を安心させるように、アフロディは優しく笑いかけた。何かしらの勘違いを起こしたと言うよりも、蓮の心を見抜き、今すぐ助けてあげるからと無言の主張をしたような笑いかたである。

 アフロディは、静かに蓮の部屋に足を踏み入れると、長い金髪を揺らしながら、蓮の隣に座った。そして、蓮の肩に手を回し、抱き込むように少し自分の身体に近づけた。柔らかい金の髪が蓮の頬にかかる。

「大丈夫だ。キミには、ボクや南雲、涼野がいる」

 アフロディの言葉の意味が取れず、蓮はしきりに瞬きをする。しかし、このくすぐったい感覚は何だろう。頬に触れるアフロディの髪ではなくて。
 ふっと視線を感じ、横を向くと、アフロディの薄茶色の瞳がじっとこっちを見つめていた。色白の肌によく映えている。誰もが認める美少年の存在は、蓮をかえってへこませた。
 蓮は、居心地が悪く、アフロディから視線を逸らす。アフロディは変わらず、蓮に視線を送り続けていた。

 美しいアフロディのように何かしら取り柄が欲しかったと、蓮は神を憎む。蓮は、落ち込むとき、やたら他人と己を比べ、いかに自分がダメな人間か証明する癖がある。下には下がいる、より多すぎる上を探してしまうのもまた、蓮の悪い癖だ。ひがむわけでも、妬むわけでもないが。無闇に他人と比べても、意味はない。

「……来てくれるかい?」

 アフロディが優しい声音で尋ね、蓮は小さく頷いた。先にアフロディが部屋から出て、蓮は波うつ金髪を追い掛ける。アフロディは自室へと続く扉の前に立つと、そっと扉を開けた。

 部屋には、丸いテーブルが置かれ、ジャージ姿の南雲と涼野が向かい合うように座っていた。初めは話し込んでいる様子だったが、アフロディと蓮の存在に気がつくと、顔をあげ、同時に口角をあげた。

「よお、寝坊助」

「今日は起きていたか」

 南雲と涼野がからかう調子で挨拶したが、

「……おはよう」

 蓮は沈んだ声で挨拶を返しただけだった。二人に食って掛かる元気がないあたり、かなり気が滅入っているようだ。
 南雲と涼野は互いにみあって頷き合うと、蓮に顔を向ける。

「ま、いいから座れよ」

 南雲が左にずれ、元々自分が座っていた空間を示しながら言った。蓮は躊躇するように一歩下がった。顔に怯えの色が現れている。

 誕生日を祝われるのでは、と蓮の第六感が蓮に語りかける。その瞬間、記憶が波となって押し寄せてきた。遠ざかる生みの両親の姿。最期、悲しげに歪んでいた両親の顔。そして、耳の奥で待っていたように母の今際いまわの言葉が今更蘇ってきた。

——蓮、あなただけは幸せになって

 母の言葉を聞きたくなくて。蓮は、自分の耳を両手で塞ぎ、しゃがみこんだ。
 ねえ母さん。僕は生きていて、本当に良かったのかな? 人間は結局ひとりぼっちなんだ。僕の周りには、誰もいないよ……

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.402 )
日時: 2011/04/13 22:38
名前: ふぁいん (ID: Wwp0q0mP)

蓮君には素敵な仲間がいるんですね!アフロディたちが優しすぎてちょー感動です!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.403 )
日時: 2011/04/16 09:58
名前: 霜歌 ◆P2rg3ouW6M (ID: At9Y2ED6)

お久しぶりです、しずくさん^^
いきなりなんですけれど、しずくさんに報告がありますb
ポケダンの次回作が、今年の秋に発売されるそうです!!
山の探検隊(DS)と、海の探検隊(3DS)です。
本当かどうかわからないので、ガセかもしれませんが・・・
とにかく一番最初に、しずくさんに知らせたかったもので^^;
では、乱文と雑談、失礼します;;;

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.404 )
日時: 2011/04/18 19:28
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 2.TlWg7X)
参照: もうすぐ終わり。

 急に耳を両手で覆い、床に屈んでしまった蓮。聞きたくない言葉でもあるかのか、両耳を外部から遮断している。その顔には怯えと悲しみが窺える。雑多な感情が、苦悶の表情となって表れていた。助けを求めるがごとく全身が微かに震えている。アフロディたちは呆心配そうな顔つきで蓮を眺めていたが、

「……蓮」

 見かねたアフロディが、控えめに蓮の名前を呼ぶ。しかし、反応はない。
 変わらず耳を両手で塞ぎながら、水を入れすぎたコップから水が零れるように、震えた声で言葉をポツポツと発していた。

「……ねえ父さん、母さん。僕は生きていて、本当に良かったのかな? ——人間は結局ひとりぼっちなんだ。……僕の周りには、誰もいないよ」

 その言葉を聞いたアフロディたちは、悲しげな顔付きで互いを見やる。それは数秒間のことで、すぐに何かしらの行動を起こそうと言う表情に。確認するようにしっかりと頷き合うと、まず涼野が立ち上がり、蓮のもとに歩み寄る。そして、次に南雲、アフロディが涼野を真似、三人で蓮を囲んだ。蓮は変わらず屈んだままである。

 三人は目で合図し合うと、南雲と涼野は、一斉に蓮へと手を伸ばした。涼野は蓮の左肩、南雲は右肩に、それぞれ手をそっと置く。すると蓮は両手を耳から離し、弾かれたように顔をあげた。不安気に南雲と涼野の顔を交互に眺めた。
 二人の表情は柔らかかった。試合時には、まず見られない優しい面持ちだ。

 優しい二人の顔にぼうっとする蓮の前に、アフロディが前のめりになりながら、立った。穏和な笑みを口元に浮かべていた。南雲と涼野は蓮の肩を掴んだまま、アフロディはしっかり蓮に視線を据えたまま、

「蓮、生まれてきてくれてありがとう」

 三人は、声を揃えて、しっかりした声音で蓮に思いを伝えた。
 『誕生日おめでとう』と言う単語を予測し、身体を震わせていた蓮は、予想外の言葉にぼうっとするしかなかった。
 何と言われたのか、宇宙語で話しかけられたように、単語の意味をつかめない。言葉は耳に届いても、脳は理解しようとしない。ただ、胸の辺りだけは辛うじて『暖かい』と感じられる。
 呆然とする蓮の前に三人が並び、一番左にいる南雲が照れくさそうに人差し指で頬をかきながら、蓮から視線を逸らしながら、

「えーっと……まあ、今日生まれてきたから、オレたち仲良くなれたわけだろ? ありがとな、生まれてきてくれて。……だから、間違って生まれてきたなんて絶対に言うな。お前がいないと、風介やオレが困るんだよ」

 ぶっきらぼうながらも、つっかえつっかえに言いながらも、南雲は力強い口調で蓮に語りかけた。最後だけは蓮をしっかり見据え、

「……『僕なんて生まれてこなければよかった』と、もう一度言ってみろ。そんなことを言ったら、オレがお前を殴って、蓮には、生まれたことを喜んでいる
大切な”親友”がいるってことをわからせてやる」

 南雲は荒い口調ながらも、蓮のことを大切に思っていると言っているのだ。
 蓮は瞠目し、せわしく瞬きをしながら南雲を見つめていた。その顔には驚きだけが表れている。だが南雲の言葉の意味に気づくと、ゆっくりとはにかんだ。

 ただ嬉しいという感情が込み上げてきた。独りじゃないと痛快な思い。晴矢の優しさが胸にしみるようだった。相変わらず不器用な表現が晴矢らしいなぁと、心の中で小さく笑った。
 南雲の方に顔を向け、礼を述べるように目を細める。黒い瞳が潤み始めた。
 そんな中、今度は南雲の隣に並ぶ涼野が、柔らかい笑みを浮かべながら、口を開く。

「まずは礼を言おうではないか。蓮、生まれてきてくれてありがとう」

 蓮は潤んだ瞳をそのまま涼野に向け、人差し指で濡れた瞳を拭う。不思議そうな面持ちで涼野の言葉を待った。涼野は睨むような目付きで、蓮を見た。少し怒った声で、

「キミは、私や晴矢と出会ったことを間違っていたと思うか?」

 その質問で蓮は涼野がどうして憤っているかを察した。
 晴矢に風介、アフロディ。大切に思ってくれる人間がどんなに少なくとも三人もいるのに。自分勝手に孤独だと嘆き、自暴自棄に生まれてきてよかったのかと泣いて。そのことに腹をたてている——いや、気付かせるために芝居をうったのだろう。口にこそ出さないが、青緑の瞳は「私はキミと出会えてよかった」と訴えかけてくる。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.405 )
日時: 2011/04/18 19:26
名前: 携帯しず ◆UaO7kZlnMA (ID: 2.TlWg7X)
参照: コメント返し出来なくてすみませんorzどうすれば読めるのでしょう

 蓮は、素直に首を振って、穏やかに微笑んだ。

「ううん。最高の親友たちとの出会いを、間違ったなんて思ったことはないよ」

 アフロディを親友と呼べるかは微妙だが、彼も大切な友人である。晴矢、風介と同列の扱いをしたと思って、蓮は否定した。——いや、扱いの差なんてない。出会いも付き合った時間が短くても。今、楽しく付き合えるアフロディも親友だと考えるから。第一ランク付けは蓮の嫌いなことだ。
 それを聞いた涼野は満足そうに視線を柔らかくし、南雲は恥ずかしそうに腕を組んで、しきりに髪を弄った。アフロディは静かに口元に笑みを浮かべていた。目を凝らすと、頬がうっすらとだが朱に染まっている。

「ならば間違っていたと言うな。生まれたことを否定することは、”私たち”との出会いを拒絶することだ」

 涼野が珍しく手厳しい台詞を浴びせ、蓮は反省するようにしゅんとなった。そしてアフロディが追記する。

「ボクたち、キミが日を重ねるごとに落ち込んでいくのを見ていてつらかったんだよ。だから、ボクの思いを伝えよう。蓮、生まれてきてくれてありがとう」

 蓮は、改めて三人の顔を見渡した。三人とも、祝福する笑みを顔に作っている。純粋に誕生日を祝ってくれているのだ。

 三人の言葉が木霊みたいに頭のなかで何度も再現され、全身が熱くなる。暗い気持ちは吹き飛び、喜びと例えようのない幸福感が胸の奥底から突き上げてくる。何も考えられない程に。心臓はいつもよりも早く脈打ち、息も荒くなっている。

「……あれ」

 蓮は手の甲に冷たさを感じ、視線を落とした。手の甲が濡れている。反対側も同じだ。生暖かい液体が頬を伝い、手の甲に冷たくなって落ちていく。

 蓮は、泣いていた。嗚咽を漏らすこともしゃくりあげることもなく。ただ、ただ涙を手の甲に降らせていた。アフロディが「泣きたいなら思いっきり泣けばいい」と優しく声をかけ、蓮は引き寄せられるようにアフロディのベッドにうつ伏せで倒れこんだ。刹那、小さな泣き声が漏れた。それはだんだん大きくなり、とうとう全身まで震え始めた。堰を切ったように声を出して、蓮は鳴き始めた。

 今まで誕生日のたびに嘘をついて誤魔化した気持ちが爆発した。祝われて、普通に楽しく過ごしたいと言う思い。自分だけ生き残ったことを、果てには生まれたこと時代罪だと思っていた。けれど、違った。
 生まれたことを喜んでくれる仲間が、こんな手の届く場所にいたのだ。ありがとうと祝福し、こんな自分でも仲良くしてくれる親友たちが。
 考えると、誰にでもいいから認めてほしかった。こんな僕でも、生まれてきてよかったと。その欲しかったものがこんなにも近くに。

——仲間たちの暖かい言葉が全身の細胞一つ一つに行き渡り、身体が熱を帯びてくる。呼気も生温い。このまま天に召されてしまいそうなぬくもりの中、蓮はひたすら泣きじゃくった。大切なぬくもりに感謝しながら。
〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.406 )
日時: 2011/04/18 19:22
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 2.TlWg7X)
参照: 追記のお知らせ

 泣きじゃくり震える蓮の背中を、アフロディたちは無言で見つめていた。泣く蓮は、ひどく幼く見える。その幼さが逆に切なかった。すぐに消えてしまいそうな儚さがかいまみえたからだ。
 涙は、蓮が堪えてきた思いそのものだろう。生き残った罪悪感を避けるように誕生日から逃げ、ずっと生まれてきてごめんなさいと、毎年悩み続けてきたことを窺わせる。だが、生まれたことを祝福され、ようやく罪の意識から解放されたのだ。
 泣いて、心を浄化しているのだとアフロディは思った。なら、準備をしなければならない。

「南雲、涼野」

 思い立ったアフロディは、声を潜めて南雲と涼野に呼びかける。二人が振り向くと、

「これから準備だ」

 短い指令にもかかわらず、南雲と涼野は頷いた。アフロディも頷き返すと、踵を返し、髪を揺らしながら部屋から出ていった。扉は開け放たれたままになっている。

 残された南雲と涼野は、ベッドに近づいた。涼野はベッドの縁に座ると、身を乗りだし、震えている蓮の肩をそっと掴んだ。肩がびくっと持ち上がる。
 蓮が頭だけを動かして、涼野を見た。もう泣き止んでいるが、顔には涙が伝った後。鼻をすすり、人差し指で涙を拭っている。瞳には、悲しみのカケラがまだ残っている。

「……風介、晴矢」

 蓮は涙声で二人の名前を呼ぶと、ゆっくり身体を起こした。涼野が手を離すと、ベッドの上に体育座りになる。

「ありがとう」

 懸命に笑顔を作り、蓮は南雲と涼野に礼をいった。穏やかな陽射しのような、夜を照らす冴えた月の光のような笑み。
 久々に見た蓮の明るい笑みに南雲と涼野は、つられて目元を緩くした。

「本当のことを言うと、僕もみんなみたいに。普通に誕生日を祝われたかった」

 自虐的な光を瞳に宿しながら、蓮は二人に今まで溜めてきた思いを吐き出す。悲しげな声音だった。
 南雲と涼野はいつになく真剣な表現で話を聞き、続きを待っている。蓮は、しっかり二人を見据えると、

「生まれてきたこと、今日初めて誇りに思えた。祝われてもいいんだって、そう思えた」

 はっきりと断言した。それから少しもじもじと尻込みするように下を向いたが、すぐに顔をあげる。緊張した面持ちで、何かと構える南雲と涼野に向かって、

「こ、こんな圧倒的な仲間に囲まれて、僕は生まれてよかったと思う!」

 回らない口を無理に動かしたせいで、なんともたどたどしい口調になった。しかも、言おうとした単語と異なる単語が出てきた。しまったとは思ったが、もう遅い。南雲と涼野が、あんぐりと口を開けている。
 言ってから、蓮はひどい後悔の情に駆られた。圧倒的ってなんだ。素敵がどうやったら圧倒的になるんだ。

「……圧倒的じゃなくて、素敵だよ。間違えた」

 自分を責めながら、蓮は弱々しい声で訂正する。南雲はからかう笑みを浮かべて蓮を眺め、涼野は仕方がないと言わんばかりに腕を組む。むなしい訂正だった。さらに追い討ちをかけるように、

「こういう大事な場面で、言い間違えるなんてお前らしいな」

 南雲のからかいの一言。蓮はむっとし、南雲に噛みついた。南雲が楽しそうににやつき後ろに下がる。蓮は頬を膨らましながらじりじりと南雲に詰め寄る。

「な、なんだと晴矢! 僕だって、一生懸命に言ったのに!」

 そこへ涼野が二人の間に割り込み、涼野は蓮をなだめる。

「大丈夫だ、蓮。キミの言いたいことはわかった。私たちもキミと、こうしていられることを嬉しく思う」

「そ、そうかな」

 素直な蓮は足を止め、照れ笑いをした。南雲は涼野の後ろから顔をだし、しげしげと蓮の顔を見つめる。

「なあに、晴矢」

 南雲の視線に気がついた蓮は、不機嫌そうな声をだし、南雲を見た。

「やっと、いつもの蓮になったな。ったく、お前がへこんでいると、いじりがいがなくて退屈だったぜ」

 楽しそうに笑いながら南雲がそんなことを言って、蓮は小さく笑い声をたてる。南雲が、怪訝な顔つきになった。

「あんだよ」

「心配してくれてたんだ」

「ふん。蓮が元気ないと、オレまで調子が狂って困るんだよ。迷惑だからへこむなよ」

 困るや迷惑だと刺々しい単語を並べるわりに、南雲なちっとも困った顔をしていない。むしろ、励ますような顔。また意地張ってる。素直でない南雲を面白く感じた蓮は、控えめに笑うと、

「は〜い!」

 素直な子供じみた元気な声で返事した。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.407 )
日時: 2011/04/18 15:03
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 2.TlWg7X)
参照: 最後にgdgd解説来ます。

「ただいま」

 そこへ、アフロディが戻ってきた。少し大きめな白い箱を両手でしっかりと抱えている。南雲たちを避けるようにしてテーブルの前に動くと、箱をテーブルの上に置いた。
 南雲と涼野はすぐさまテーブルを取り囲んで足を崩し、箱の蓋を開けようとした。だが、アフロディが箱をかっさらう。南雲と涼野は、アフロディを睨んだ。蓮は、苦笑いを浮かべて、事態の行方を見守っている。

「早く食わせろ」

「そうだ。けちだぞ」

 南雲と涼野が抗議すると、アフロディはわざとらしく大きなため息をついて正座した。箱を机に置きながら、

「南雲、涼野。今日の主役は誰かわかっているかい?」

 蓮に視線を向けた。南雲と涼野も誘われるように蓮に顔を向ける。あ、と同時に声を漏らした。途端、南雲と涼野は笑みを作り、蓮を手招きする。早く箱の中のものを食べたいようだ。非情に単純でわかりやすい連中である。

 蓮はテーブルの前に、南雲と涼野の間に座ると、向かいのアフロディが箱を開けて、と目で合図を送ってくる。南雲と涼野に至っては、テーブルから身を乗りだし、そわそわしながら箱が開かれるのを待っている。蓮が箱を開けないのがじれったいらしく、急かすような視線を投げ掛けてくる。

 蓮は幼馴染みの要望に応え、白い箱をそっと開けた。中には、生クリームのデコレーションケーキが鎮座していた。上にはブルーベリーやメロン、さくらんぼが散らされ、イチゴジャムがたっぷりとかけられている。デパートにありそうな高級なケーキだと思って、蓋を見ると、韓国でも名を馳せる有名なケーキ屋の名前。

「うわぁ、おいしそう」

 蓮は喜びと驚愕が混じった声をあげた。すると、アフロディが微笑みながら、

「ボクたち三人でお金を出しあって買ったんだよ」

「ま、他ならぬ蓮の誕生日だからな。けっこー奮発しちまったぜ」

 南雲が得意気に胸を張りながら、

「キミが以前、食べたがっていたからな」

 涼野はクールな口調で教えてくれた。

 そういえば、以前この店のケーキを食べたいと三人と会話したことがあるが、覚えているとは思わなかった。それだけ気にしていてくれたかと考えると、顔が火照る。頬を赤くしながら、相好を崩していた。
 それをアフロディが蓮が照れていることをめざとく発見し、愉快そうに指摘する。

「照れているね。可愛いよ、蓮」

「相変わらず可愛いとか余計な一言が多い」

 蓮は文句を言いながら、蓋をテーブルの脇にどかした。それからぽつりと、

「誕生日ってさ」

 呟いて、囁く調子で続ける。

「”絆”を確認する日だなって思えた。誰かが僕の側にいるんだあって思える、とても大切な日」

 アフロディたちは微笑んで聞いていたが、三人で顔をあわせると息を吸った。

「蓮、お誕生日おめでとう」

 三人が声を揃えて蓮を祝福し、蓮は心臓をくすぐられたような快感を覚えた。
 祝われることは、こんなにも嬉しいことなんだ。普通の人から見たら当たり前のことなのに、何故だか楽しくて仕方なかった。
 今まで嫌だ嫌だと避けてきたものは、こんなに素晴らしいことだったのだ。今日こうして生まれたことを認めてくれる仲間に出会え、その事に気づけた。

 ”初めて”の言葉は、今まで感じたことがないぬくもりに満ちていた。細胞に染み渡るような優しい響き。胸に感謝の念を起こさせる力。言葉の力を感じさせる。昔の日本人は言霊とやらを信仰していたが、あながち嘘ではないと考えさせられる。
 こんなにも素晴らしい言葉に釣り合う言葉は何だろう。蓮は、すぐに答えを見つけた。

「みんな、ありがとう!」

とびっきりの笑顔と、とびっきりの感謝の気持ち。

〜終わり〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.408 )
日時: 2011/04/18 00:03
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: wUEUf8c.)
参照: 解説ではない解説。しずくのぶっちゃけコーナー

解説は混沌と共に〜要はしずくのぶっちゃけ会〜
▼イナズマジャパン編
初めて書いたイナズマジャパン&蓮の短編です。書きたいままに書いたギャグ全開のカオス文ww
内容よみなおすとぶっとんでます、我ながら。睡眠薬とペンギンは失笑もんです。うん、蓮の誕生日と言う皮を被ったペンギン小説ですね、わかります。パロディも楽しかったですね。いくつか挙げるとACのあれとか、イカ娘とか。
虎丸とか飛鷹いなかったけ虎丸は名前だしたからいいよね←
読んでわかると思いますが、ペンギン着ぐるみ鬼道さんと不動と佐久間を書きたかったんです!構想を練っているときに、友達がガチャ●ンの着ぐるみパジャマを纏っていた(中二の合宿時)のを思いだし、じゃあペンギン。鬼道さんに似合うとおもい来ていただきました!不動と佐久間は巻き込まれて頂きました。画力ないので脳内イメージどまりですが、このシーン大好きです。マイブーム。え、蓮の誕生日はどうしたって?あ。誕生日〈ペンギンの作者でした。今、思うと春奈にもペンギン似合う気g。
春奈と言えば春奈を大分暴走させました。睡眠薬はきっと某探偵漫画のせいです。用法と用量と用紙は間違えないようにしましょう。約束です!(何がww)

▼ファイアードラゴン編 やっぱりしずくさんはファドラが好きなようです。長すぎました、ごめんなさい。エピソードを入れすぎましたorzシリアスが最後にほのぼの。

エキサイト先生に頼み込み、何とか翻訳していただいたタイトル。ですが、さすがエキサイト先生。訳した英語を和訳すると、初めの日本語と違うってどういうことですか?
初めに入れた日本語は、確か「闇はそして光へ」。蓮の心の変化をタイトルにし、そのまま格好よく英語にしちゃえと軽い気持ちでエキサイト先生にお願いしてあの有り様です。
こっちはイナズマジャパンの和気あいあいとは一転、いえ。間反対の物語にしました。感動的に仕上げようと試みました。少しでもうるっと来たら、しずくとして嬉しいことはありません。

こっちのテーマは「誕生日って何か」です。当たり前のように祝われる私達。しかし、それは何故か。なんて、生意気にも一端の哲学者になりきったわけですね^^;私なりの解釈は書きましたが、みなさんはどう思われますか?蓮にとってのアフロディたちのような仲間は、みなさまに必ずいると思います。かくいう私も誕生日には友人に感謝してばかりです。親を見れば、先祖の力を感じたり。

ちなみに変わった「生まれてきてくれてありがとう」のセリフ。当初、ガゼバンの短編で書こうとしたセリフから来ています。もっと源流を辿れば、ひぐらしのセリフ。太宰先生の小説ですね。
言ったのはバーンで、言われる側はガゼルの予定でした。書き上げてはいましたが、いかんせん。B●になりかねないので却下。話の骨格はこのファドラ短編と同じなので、大体なストーリーは似ています。

みなさまはイナズマジャパン編とファイアードラゴン編。どちらがお好みか気になるところです。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.409 )
日時: 2011/04/19 14:42
名前: ふぁいん (ID: FtPJcOXY)

感動しました!がちで泣きました!アフロディたちの優しさと蓮君の悲しみの表現が上手かったです!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.410 )
日時: 2011/04/19 14:43
名前: ふぁいん (ID: FtPJcOXY)

感動しました!がちで泣きました!アフロディたちの優しさ。蓮君の悲しみの表現が上手かったです!震える描写読んで、抱き締めてあげたくなりました。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.411 )
日時: 2011/04/23 18:37
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: PODBTIS5)
参照: クララとレアンの暴言パラダイス①——無意識の加害者

「だ、誰だ!?」

 冷気を吹き飛ばすように円堂が叫んだ。
 その声に反応するように吹き付けてくる冷気は収まった。しかし、肌をぞくぞくと撫でていく気味の悪い寒さはまだ肌に残っている。それは冷”気”でも、人が放つ”気”のように蓮には思えた。中にいる人間は普通の人間ないことだけは何となく感じ取っていた。
 
 蓮たちは顔をこわばらせながら、扉を乱暴に蹴破り、中に突入する。砂っぽい乾いた空気が喉を直撃し、蓮は咳き込んだ。風丸に背中を擦って介抱され、口を開けたまま立っている鬼道と円堂と同じ方向を見た。

 何もない灰色の床を、明り取りの窓から差し込む日差しが、照らしていた。光の中にほこりが舞っている。だが日差しは別のものを、倉庫の奥に浮かび上がらせていた。それは秋や夏未とさほど変わらない少女たちの影。

 一人は、以前バーンが纏っていたユニフォームをまとう少女。小さな胸のふくらみと細い腰が可愛らしい。背丈は秋ほどか。オレンジの髪をショートカットにしているが、前髪はカールを描くように渦を巻いていて、かなり独特のヘアスタイルだ。可愛い身体な半面、青い切れ長の瞳は吊り上っていて、きつそうな印象を与える。

 もう一人はオレンジの少女よりほんの少し背が低い少女。かなり小柄で、木暮と同じ背丈に見える。濃い青い髪をボブカットにし、もみあげを黄色い髪留めで止めていた。垂れ気味な黒い目に小さな桜色の唇が人形のよう。顔付きは固く、与える印象は冷たい。
 二人の少女は蓮たちと目が合うと、待っていたといわんばかりに口を歪めた。蓮たちは緊張のあまり生唾を飲み込む。静かなせいで、その音がはっきりと自分たちの耳に届いた。

「初めまして、かしら。あたしはエイリア学園マスターランクチーム、<プロミネンス>の一員、レアンよ」

「わたしは、同じくエイリア学園マスターランクチーム<ダイヤモンドダスト>の一員、クララ」

 オレンジの髪の少女——レアンと、青い髪の少女——クララは、淡々と自己紹介をする。
 『イプシロン』に続く新たなエイリア学園チームの登場に、蓮たちは驚きを隠せなかった。そういえば彼らはエイリア学園のチームだと名乗っているが、リーダーや他のメンバーが見当たらないのは何故かと蓮は思ったが、その疑問はすぐに消えた。驚愕の面持ちになりながらも、同時に緊張の面持ちも浮かべ、身構える。

「エイリア学園、オレたちに何のようだ! 木暮を返せ!」

 円堂が怒鳴ると、レアンとクララは目を伏せて静かに笑う。蓮は、背筋を寒さが駆け抜けた気がした。
 
「そうね。返してあげてもいいわ」

「なんだって?」

 予想外の言葉に円堂は聞き返すように言葉を漏らす。するとクララは、視線を横に動かし、黒い瞳で見据える。レアンもまた、同じ人物に目を向ける。——風丸の横にいる蓮に。

「あなたが、今すぐ雷門中サッカー部から去るのなら、ね」

 落ち着いた声音で、クララはしっかりと蓮の瞳に視線を合わせながら言った。目つきこそ凪のように穏やかであるものの、視線自体は刺々しいものだった。目が合った瞬間に初めて感じ取れる、地雷のようなものだ。憎悪や怒りがこもった視線に蓮はたじろぎそうになるが、負けじとレアンとクララを睨み返す。
 
「何を言っているんだ」

 蓮の低い声に、レアンとクララは蓮に向ける視線をますます厳しくした。蓮も目つきを鋭くする。蓮とレアン、クララの間には見えない空気がぴんと張り詰め、他のものが近づくことを拒んでいた。
 しばらく無言のにらみ合いが続いていたが、クララが口を開く。

「あなたがいると目障りなの」

 囁くような小さな声。けれど言葉はとても恐ろしい。円堂がクララに食って掛かろうとして、蓮が手を出して制する。風丸も鬼道も憤っているらしく、クララを睨む。続いてレアンが、

「あんたが雷門にいるとね、困る”お方”たちが居るのよ」

 クララの言葉は無視することにするが、レアンの言葉が引っかかる。僕が雷門に居ると困る人って誰だ? 

「それって、誰?」

「あなたに教える義務はないわ。ただ、一つだけ教えてあげる。あなたはね、その”お方”たちをとても傷つけているの」

 馬鹿にするような口調で言っていた言葉を切ると、クララは垂れている目を吊り上げる。今まで違い、無表情だった顔に怒りがはっきりと刻まれていた。瞳にも憎しみや怒りの感情がはっきりと見え、今までの冷静さが嘘のように思われる。

「あなたはなんにも知らずに、”お方”たちを悩ませているの。少しは罪の意識を持っているのかしら!? 答えなさいよ!」

 今までの冷静な口調とは打って変わり、激しい口調。唾が飛んできそうな勢いで、恐ろしい剣幕で蓮を問いただす。”気”が風となって身体に吹き付ける。円堂たちはクララの雰囲気に圧倒され、その場で立ち尽くしていた。蓮だけは、円堂たちの前に出た。円藤たちを守るように、腕を組んで仁王立ちになり、クララやレアンと対峙する。

「…………」

 何、わけの分からないことを言っているんだと言い返すように、クララに冷めた視線を送る。誰を悩ませているのかは知らないが、こいつらの言うことはいちゃもんの可能性が高い。根拠のないでたらめだ。嘘だけで、雷門をやめるわけなんてない。
 クララは呆れた顔付きで笑った。冷たい顔が哀れみを送ってくる。

「あなたは愚者ね。雷門中のサッカーは『仲間ごっこ』だってことに気づいていないんだもの」

「『仲間ごっこ』?」

 蓮は思わず尋ね返した。クララはレアンに目配せし、レアンが哀れむように——見下すようにせせら笑ってきた。

「あんた、エイリア学園との戦いで倒れてばかりで、大して活躍していないそうじゃない。試合で役に立てないような人が、どうして雷門にいるの?」

「……それは」

 蓮は頭に言葉が出てこず、口を閉ざしてしまう。レアンは、蓮の言葉尻を捕らえて畳み掛けてきた。クララと同じく、その瞳には強すぎる負の感情が渦巻いている。

「あら、咄嗟に答えられないの? やっぱり『仲間ごっこ』ね。どうせ『今は無理でも後で何とかなる』とか、言われていそうだけれど——それは、あなたを傷つけないための”嘘”。本当はみんな、あなたみたいに成長の見込みがない人は、やめてほしいと思っているの。でも、言えば双方の気分を害することになるわ。だから言わないの。自分が嫌な思いをしたくないから黙っている……雷門は、そんな自分勝手な人間の集まりよ」

 以前に悩んでいたことをぶりかえされ、それでも図星なことを指摘され、蓮は悲しくなった。今すぐ消えてしまいたかった。
 『試合で役に立てないような人が、どうして雷門にいるの?』と言うレアンの台詞が頭を支配し、何度も反芻する。円堂たちがレアンに噛み付く声も聞こえなくなっていた。
 
 ——チームのみんな本当は僕のことをどう思っているんだろう?
 倒れるたびに心配そうに優しい声をかけ、介抱してくれる仲間たち。しかし、それは”本心”ではなく、レアンの指摘するとおり”仕方なく”と言う可能性もある。今までもそう感じることはあったが、その可能性は打ち消してきた。本心は嫌だが、”チームメイト”として、仕方なく助けてやっているのかもしれない。早くサッカー部からいなくなってほしいと思われているかもしれない。

「……僕は、僕は……」

 蓮は頭を抱え、唸るような声を発した。何かを堪えるように唇をぎゅっと噛み、瞳を閉じている。身体が不安げに揺れていた。円堂たちが蓮に駆け寄り、三人で蓮の名前を呼ぶ。四人の様子を眺め、レアンとクララは顔を元の静かなものに戻した。レアンがすうっと短く息を吸い、
 
「ここまで言えば分かるでしょう?」

 静かな声で問う。蓮ははっとした顔でレアンを見て、円堂たちは厳しい目つきで応対した。

「さあ消えなさい、白鳥 蓮!」

 クララが怒りの炎を目に灯したまま叫んだ。

〜つづく〜
なんかまた親が帰ってきたー!(泣)すいません、コメントはメモッてますから後で携帯から返します。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.412 )
日時: 2011/04/23 22:27
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: sIzfjV5v)
参照: 偉そうなことを言える立場ではない

>>星沙
考えると、蓮の運命は悲しいけれど不思議なものだと思った訳です。それが、南雲と涼野の台詞に凝縮されている。もし蓮の両親がいたら、南雲と涼野とは会わなかった。運命は自分で選べる事柄にしろ、自分で選べない事柄にしろ、別れ道は幾つもある。私達は、その一つだけを進んでいる。
星沙の言う通り、歯車だね。ある時は部品を組み換え、時には捨てることが。噛み合わなくても、回転が反対になっても先に進んでしまう。リセットがきくこともきかないこともある。難しい事柄だ;;

蓮、気持ちわかってもらえてよかったね。私もかけがえのないものを失った経験あります。あの私は無力だった。いい言葉を生み出す知識も、歯向かう力も持っていなかったから。

蓮「…星沙さんありがとう。両親のこと、今だから認めて前に進むことができる。両親と一緒に藻屑になればよかったと思ったこともあるけど、そう言うと怒る子たちがいるから」

いつ、どうなるかわからないからこそ、今日一日、友達と過ごすことが有り難く幸せに思えてくる。十字架は誰にでもある。それを背負いながらも、前に進めるのが人間のたくましさだね、蓮。

蓮「たまには立ち止まってもいいと思う。僕の過去も消すことはできないけど、十字架を共に背負って、負担を減らしてくれる誰かは必ずいるから。その誰かにみんなは出会えると、僕は思う」

小説とは言え、蓮の心情にシンクロするしずくでした。なんか下らないことを偉そうに宣って、ごめんなさい。

>>ふぁいんさん
おりょ?似たような文章が二つも^^;
感動して頂けて、私が逆に感極まってきました。今回は初めて感動系を狙いましたが、うすっぺらいな〜と心配になっていたので。ふぁいんさんの一言で安心です。
コメントありがとうございました

>>霜歌さん
お久しぶりです!大ニュースを一番に知らせていただき、ありがとうございました^^
探検隊の発売、もう計画されていたんですね。そしてやはりすりーでぃーえすの魔の手がorz
買えないのに、発売されるソフトがおおすぎますwwしかも買った友達によると、立体的で目がチカチカするとのこと。あんまり目に優しくねーとぼやいてました。…ますます買えるかわからない。
雑談楽しかったですよ^^コメントありがとうございました!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.413 )
日時: 2011/04/24 14:43
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: iCAwesM8)

今更ですが蓮くん、お誕生日おめでとうございまs(遅い

ずーっと読んでいたのにも関わらず、今頃になってコメなんかしちゃってすいません!あ、来ないほうが良いですよねわかります(キリッ
イナズマジャパンのノリが好きですwさっすが春奈ちゃん!よくわかっていらっしゃるwペンギントリオ(←)は公式で見てみたいと思った今日この頃。
そうですね、お薬は用量と使用方法さえ間違えなければ大丈夫!(何が?

アフロさん達に感謝しきれないバカがここにいますううう(ry(黙れ
蓮くんの考えを変えてくれて(?)どうもありがとうございますですよ!←
うう……しずく様の天才っぷりを改めて確認しました(キララン 私には哲学なんて無縁ですからねw難しいことを考えられないバカです。頭がショートしちゃいます(ぇ

難しいですね……もしも蓮くんのご両親が生きていたら、会えていない訳ですか。でも、三人と蓮くんはどんな状況であれ、"出逢う"運命であってほしいです。どんな出逢い方かはわからないけど、今みたいに四人仲良くいてほしいです!(意味不明
つ、つまりですよ?ご両親が生きていたとしても、蓮くんと彼等は出会う運命であってほしいってことです何コレ意味不明じゃん!←
あー上の平仮名の固まりは無視して下さい。

レアンちゃんとクララちゃんキタアアアアア!(
と思ったけど、た、確かに暴言パラダイスですね^^;でも、その"お方"達を想ってのことだから……複雑ですね。大切な人を護りたいから、蓮くんを責めちゃうのかな?ああ、難しいです←

相変わらずgdgdなコメ、申し訳ないです; 高校、忙しいと思いますが頑張って下さい^^*

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.414 )
日時: 2011/04/25 17:00
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: PODBTIS5)

>>桃李さん
いえいえ、来て下さってとても嬉しいです^^私こそ忙しくなってあまりそちらに顔を出せずにすいませんorz月曜日・土曜日は暇ですが、その他は中々PCをいじる時間がなくて。。少なくとも行きます!

もうペンギンみたさに書いちまいましたw最初は鬼道だけの予定が、ジャパンなら佐久間と不動も着てもらいたいなぁと言うことで←結局混じっていただきました。私も公式で見たいです!絶対に似合うと思うんですよね、あの三人なら。アニメージ○ならいけそうですねw

ファドラは私も複雑な気持ちでいっぱいですねorz書いていて人生の複雑さを考えました。いえ、高校で倫理って言う時間があるんですよ! ソクラテスとかプラトンとか。あの辺りから着想。そして次回作のネタバレがちび〜っと混じっていたりw
ああ、駄文の天才ですね〜結局薄っぺらな内容になっちまったぜ☆
考えの変化が手に取れているといいのですが^^;

桃李さんの優しさに涙です;;
これに関しては難しいところですね・・・両親が生きていたら、蓮は南雲と涼野と幼少期に出会わない。そのまま雷門に転校して、ただの味方と敵で終わるように思えてしまうんです;;で、FFIでもイナズマジャパンとファイアードラゴンで翻弄したりされたりで終わる。
——でも、蓮がゼウスの一員←ちがくね?なら、韓国には行けるかもですし、どこかで出会い、親友となる運命もある。
人間って多くの選択肢があり、その中でいくつかは必ずこの韓国組みとつながっていると思いたい←って、これはしずくの意味不明な言葉です。日本語になっていません。

桃李さんは読解力がありありです><←?
クララとレアンの心情は”あのお方”思ってのものです。根本にあるのは彼女らなりの優しさ、です(偉そうなこといえませんが;;)
置かれている立場がああだからこそ、逆に攻める・・・とこんなストーリーを前々から考えていました^^;暗すぎて書くのも億劫になりますが、この章は色々な意味で折り返しにしたいんです^^

私もgdhdですいませんwこれから桃李さんのところに顔を出しますb

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.415 )
日時: 2011/04/27 21:22
名前: ふぁいん (ID: EI9VusTL)

クララとレアンの一言はひどすぎです!むかむかします!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.416 )
日時: 2011/05/04 15:40
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: PODBTIS5)
参照: イナイレ最終回よかった!…ガゼルとバーンを見納めしたかった←

 消えろ、とクララに言われ、蓮の思考は混乱の渦の中にあった。
 雷門の仲間は、倒れたり、体調が優れないと優しい言葉をかけてくれる。あれは”建前”で本音ではないのだろうか。建前であんなに優しい響きを持つわけない。けど、もしかしたら——考えれば考えるほど、頭が熱を帯びてくる。
 北海道のあの言葉も嘘よ、とクララの冷たい幻聴が聞こえ、熱が引いた。追い討ちをかけるように、レアンがだからあなたは愚者なのよと囁く。蓮は、悶えた。わからない、わからない。誰を困らせているのかも、誰が自分を必要としているのかも。

 蓮が頭を抱えている間、円堂たちは蓮に己の思いを真っ正面からぶつけていた。

「白鳥! オレたちは、お前に雷門中サッカー部にいてほしいと思っている!」

 と円堂が、

「奴らの言葉に惑わされるな。イプシロン戦でのお前の活躍をオレは知っているぞ」

 と鬼道が、

「お前は、これから活躍するんだろ! ここでにげだすな!」

 と風丸が。
 三人の言葉を聞いた蓮は、頭から手を離した。三人の思いを確かめるように、円堂、鬼道、風丸の順に顔を向ける。蓮に顔をむけられるたび、三人は力強く頷いた。本当だ、と答えているようだ。
 三人の真意を確かめた蓮は、強い意思を秘めた黒い瞳でレアンとクララを睨む。同時に、仲間を疑った自分を恥じ、拳を握る。しかし、クララとレアンは蔑むような顔で四人を眺めていた。

「僕は雷門を止めない」

 蓮が力強くいい放ち、レアンとクララは面白くなさそうに眉にしわを寄せる。感じる冷”気”が一層強くなる。肌に悪寒が生じる。

 これ以上何か言えば、恐ろしいことを起こす、とレアンとクララは無言でどすをきかせてきた。彼女らが発する冷”気”は、憎しみと怒りを交えた総身を粟立たせるものだ。でも、怖くない。蓮は、後ろに立つ三人に微笑みかける。三人は笑い返してくれた。——そう、仲間がいるから。
 勇気を得た蓮は、強い眼差しをクララとレアンに向け、続けた。

「僕はエイリア学園を倒すため、仲間と共に”ここ”にいる! ここが僕の居場所なんだ!」

 蓮が、今までに見せたことのない気迫で叫んだ。散々悩んだからこそ出てくる。はっきりとした、自信に満ちた叫び声だった。強い叫びは、冷”気”をかきけした。
 蓮の気迫にレアンとクララは圧倒され、目を限界まで見開いて固まっている。円堂たちは、「よく言ったな!」、「それでこそ雷門の一員だ」、「いいぞ、白鳥」と口々に蓮を誉めそやす。蓮は、親指を立ててウィンクしてみせた。それからクララとレアンに向き直り、みながかろうじて聞き取れる程の声量で、こぼした。

「……それに知りたいんだ」

 最後に晴矢と風介のことを、と誰にも聞こえない音量で追加しておいた。
 懐かしい気持ちを起こさせる彼ら。いつも、頭の片隅にもやががったように懐かしさの原因を思い出せない。しかし、旅を続ければわかる気がした。何となくと根拠のないものだが、その予感はある。

「やっぱりあなたは愚者だわ!」

 今まで黙っていたレアンが急に高く笑う。

「せっかく警告してあげたのに、突っぱねるんですもの」


 レアンが蓮を愚弄ぐろうし、蓮は挑発するような笑みを見せる。

「たった二人で何かする気?」

「……あなたに残された選択肢はひとつだけ」

 クララが哀れむように目を細め、細い声で呟いた。蓮は、円堂たちは身構える。ずっと立ち続けていたレアンが初めて動いた。スパイクが床を叩く音が、倉庫に何重にも響く。

「私たちに消されるって選択しか残っていないのよ」

 レアンが憎悪に満ちた声で言った。切れ長の青い瞳は、怒りに満たされ、背中からは怒りが赤く、憎しみが黒となって混ざりあっているように見えた。

「覚悟しなさい。<イグナイト・スティール>」

 レアンはその場で飛び上がると、勢いを保ったままスライディングを仕掛ける。その先にいるのは、——蓮。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.417 )
日時: 2011/04/30 17:54
名前: しずく ◆rbfwpZl7v6 (ID: PODBTIS5)
参照: 7000突破にひぐらしパロを忘れな草で書きます

>>ALL
気づいたら参照が……な、七千だとぅ!!??あーみなさま、一年以上もお付き合いいただきましてまことにありがとうございますwローペース過ぎますが、今年中には世界編に移行しますので!これからもよろしくお願いいたしますb

>>ふぁいんさん
クララとレアンの一言は非常そのものですよね;;私も普通にあのようなことを言われたら憤ります。は、何行っているの?と思います。

しかし、それは彼女らなりの「人を大切に思う気持ち」の裏返しです。”あのお方”たちを思うがゆえにやり場のない怒りを持ち、ああいて怒りの根源にぶつけてしまった…のですorz彼女らは、本当は人を思うことが出来る優しい子です←やり方さえ間違わなければ、いい子です!クララもレアンも大好きですから←あ、偉そうなことを行ってすいません。

ではコメントありがとうございました♪

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.418 )
日時: 2011/05/01 20:26
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: ewri1wGo)
参照: 話、暗すぎます。ごめんなさい;;

「あっ!」

蓮は、レアンの動きに敏感に反応した。スライディングが足に当たる寸前、飛び上がる。ジャンプで生じた僅な空間をレアンが滑っていった。その後には、炎が生じている。レアンが滑った後には、一本の炎の道。熱くはない上、すぐに消えた。
蓮の足の下を通りすぎると、憎々しい顔で振り向きながら、レアンは壁に激突した。
それでほっとしたが、

「ガゼルさまの痛みよ。<フローズン・スティール>!」

「白鳥! 避けろ!」

風丸の注意を促す叫びに振り返ると、クララがこちらにスライディングをしかけていた。普通のスライディングよりも速く蓮に襲いかかる。あっという間に蓮の前に来た。
先程のレアンと同じ体勢ではあるが、彼女がスライディングで通った道は凍っている。

「……しつこいよ」

風丸の注意で、蓮はまた宙に舞い上がって難を避けた。クララは当たらないと見るや素早く立ち上がり、また体勢を整えて<フローズン・スティール>をしかけてけてくる。また、ジャンプでやり過ごし地に着陸。
その後もクララとレアンの猛攻は続く。
蓮ばかりがターゲットにされ、円堂たちは蓮を守ろうと動くが、レアンに邪魔される。その隙にクララは、蓮に<フローズン・スティール>で攻撃した。蓮は、持ち前の運動神経でかわしつづけるものの、だんだんジャンプするタイミングが遅くなってきた。着地の度に荒い息を吐いている。
なにもできず、歯痒い思いで円堂たちは蓮が疲れていくのを見もることしかできなかった。
しばらくクララを避け続けていると、クララは勢い余って壁に足を激突した。蓮は、肩で息をしながらクララを睨んでいる。しかし——それに夢中で背後から<イグナイト・スティール>で迫るレアンに気づいていなかった。

「白鳥!」

青ざめた顔で風丸が蓮の名を呼んだ時——蓮の身体は、仰向けで宙にふっとんでいた。吹き飛ばされた蓮は、呻き声を出しながら、つらそうに顔を歪めていた。レアンが下でほくそ笑み、素早く立ち上がる。そして、重力の法則で蓮が地面に落下する寸前、

「<フローズン・スティール>!」

楽しそうな声をあげながら、今度はクララが蓮の身体を宙に送る。蓮は、痛さから悲鳴をあげ、きつく閉じられた目から涙をこぼした。円堂たちが助けようと走り込み、レアンの<イグナイト・スティール>にまとめてぶっとばされた。壁際まで跳ばされて後頭部を強打し、崩れるように三人とも前にたおれこんだ。


「……み、みんな」

痛みに耐えながらも、宙にいる蓮は、倒れた円堂たちを心配そうに眺めていた。
その顔を見たかったと言わんばかりにレアンが高笑いをする。

「あはは! いいざまだわ。あなたのせいで仲間はきづついた。でも、バーン様の痛みはこんなものじゃない。もっともっと味わいなさい!」

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.419 )
日時: 2011/05/01 22:59
名前: ふぁいん (ID: V2/o1KYD)

れ、蓮君がアフロディのように!可哀想です!クララもレアンもひどい!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.420 )
日時: 2011/05/03 16:26
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: Wwp0q0mP)
参照: 早く帝国をorz

レアンが<イグナイト・スティール>で、蓮を空中に浮かせ。そして蓮が落ちると、クララが<フローズン・スティール>でまた宙に送り返す。下に行けばレアンが<イグナイト・スティール>で……蓮は、クララとレアンによって何回も空中へ撥ね飛ばされる。まるで蓮の身体をボールにし、バレーボールでもしているようだ。スライディングで蓮の身体を宙に浮かせ、落ちたらまたスライディングで打ち上げる。

蓮は、抵抗できずにされるがままになっていた。ジャージがあるのでまだよいが、身体に力はなく、動かすことすらできない。
跳ばされるたびに、焼けつくような痛みと刺すような痛みが交互に走り、激痛となって肌を蝕んだ。苦痛を耐える顔には冷や汗かびっしり張り付いている。息のテンポが速くなる。
レアンとクララは、スライディングが当たって痛くなるよう角度を計算しているらしい。やたらと腕を、弱い力で狙ってくる。どうやら長いこといたぶりたいようだ。
そのせいか足は平気だが、腕はもう感覚がなくなっていた。痺れていた。二人のスパイクが当たっても、痛くもない。スパイクの先が、肌をえぐるように当てられるのを感じるだけだ。

初めは痛みに耐えきれず、小さく呻き声や涙を漏らしていた。それでも唇をかんで、声を出さないよう必死に堪えていた。が、あまりにも早すぎる間隔で痛みが襲ってくるので、やがて声がでなくなる。息がつまり、視界が端から霞んできた。倉庫の窓や壁の輪郭が溶けるようにぼやけはじめる。

(……だめ、いしきが)

どさ、と身体が地面に落ちる音を聞いた。半拍ほど遅れて、床のひんやりとした冷たさが脳に伝わってくる。身体を動かしたいが、重りでもつけたように重く、動かなかった。

「……反省した?」

クララの冷ややかな声が降ってきた。蓮は力を振り絞って身体を震わせながら、頭だけを動かし、声の方を見上げる。霞ゆく視界にレアンとクララが、蔑むように見下ろす姿がぼんやりと映った。

「その顔だと、していないみたい。まあ何も知らずに消えた方が幸せね」

クララが静かに語りかけ、レアンも哀れむように口を開く。

「命は助けてあげるわ。”消えろ”って言うのは、エイリアとの戦いから”消えろ”ってことよ。この戦いであなたは、”いてはならない存在”なのよ。お仲間とおんなじで、病院で大人しくしていればいいのよ」

「……いやだ」

蓮は、レアンとクララを弱々しく睨みながら、ゆっくりと言葉を吐き出した。
かろうじて上半身を支えていた腕から力が抜け、蓮は床にうつ伏せになってしまった。

「あら、まだ話せる元気が残っていたの」

レアンが冷たい眼差しを送り、蓮はまた腕に力を込めて上半身を起こした。力ないが、強烈な光を宿した瞳で二人を捉える。速くなる呼吸のせいで、変な区切りかたをして話す。

「みんなと、仲間と、一緒に、戦うって、約束したから」

「バカじゃない」

クララは蓮を嘲笑うと、蓮の腕に軽く蹴りを入れた。蓮は、前につんのめりかかったが、歯を食い縛って、何とか持ちこたえる。

「仲間? あのおべっかをまだ信じていたのね」

レアンは小馬鹿にする口調で言いながら、勢いをつけ、蓮の背中に座った。
レアンの全体重をかけられ、腕で身体を支えられなくなった蓮は、呻いて、両手を前につき出すようにして上半身を伏せてしまった。レアンは椅子に座るように、伏せた蓮の背中の上で足を揺らしている。弱りきった蓮に抵抗する力はなく、少女の重みが身体を圧迫し、息がますます苦しくなるだけだ。

苦しむ蓮の前にクララが立ち、前髪をわしづかみにした。髪を引っ張り、蓮の顔をあげさせる。苦痛の色を顔に出しながらも、瞳は媚びていなかった。むしろ、抗うような意志を宿してクララを見据えていた。クララは、面白くなさそうに鼻をならして、蓮の顔を自分の顔に近づける。

「さっきから弱音の一つも吐かないけど、どうせ来ないとは言え、助けくらい求めたらどうなの? わたしに求めてもいいのよ」

「お前たちに、助けなんか求めない」

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.421 )
日時: 2011/05/04 03:21
名前: ふぁいん (ID: AzXYRK4N)

蓮君が可哀想です!これからの展開が気になります!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.422 )
日時: 2011/05/04 23:04
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: yWbGOp/y)

蓮がはっきりと言い切り、クララは驚いたように目を少し見開く。レアンは、変わらず腕を組んで、痛みに耐えながら、顔をあげさせられてもなお、睨み付ける蓮を背中から見下ろしていた。
蓮に助けを懇願する様子はなく、抵抗しようとする意志がはっきりと表れていた。苦痛で顔を歪め、荒い息を吐き出しながらも。残ったわずかな力で歯を剥き出しにし、弱々しくも厳しい視線を二人に向けた。
レアンは、退屈そうに頬づえをつきながら、気絶している円堂たちを一瞥すると、

「つまらない意地ね」

視線は蓮から逸らしながら、レアンは吐き捨てるように言った。馬鹿にする一言に、蓮は震える声で必死に言葉を紡ぐ。

「ぼ、僕には、サッカーが、導いて、くれた、な、か、まが、いる。彼らは、絶対に、ここに、く、る……」

ほとんど聞き取れない、掠れた声が蓮の口から発せられた。レアンが「元気だけはあるのね」と、呆れた声を出した。
話すにつれ語勢ごせいは、徐々に弱まり遂には消える。蓮は、なおも口を動かしているが、言葉にならない。虚しく口だけが動いていた。それを見ていたクララは、蓮の髪を掴みながら冷笑を浮かべた。

「来るわけないじゃない」

「来る!」

それを否定するがごとく——突如、蓮が大声をだしたことにクララとレアンは瞠目する。場を支配するような圧迫感が一瞬、流れた。あまりの気迫に、レアンは転がるように蓮の背中から飛び降りた。クララの手から、蓮の頭が落ちた。蓮は額を軽く床に打ち付けたものの、最後の力を腕に込め、手のひらを床につけた。震える上半身を起こしながら、凍り付く二人を睨む。ライオンが睨むような迫力にクララとレアンは、たじろいだ。

「僕は仲間を信じて待つんだ! だって、これが仲間たちを信じていると証明する……」

蓮は力の限り叫び、最後に「から」と続けようとした。しかし急に息がつまる。それに気づいた瞬間、全身から力が奪われていった。両腕が折れ、身体が床に引き寄せられる。冷たい空気が風となって吹き付けてくる中、視界がどんどん床の灰色に染まる。
倒れる直前、蓮の口がはっきりと動く。”ご”、”め”、”ん”と。特定の誰かに向けられたものではない。ただ、雷門のみんな、そして晴矢と風介に向けられたものであることは間違いない。
もうエイリア学園とは、戦えないみたいだ。そんな絶望が胸を支配する。でも、と蓮はその絶望を心のすみに追いやる。

その時。蓮は顎を床につけ、うつ伏せの姿勢のまま動かなくなっていた。意識はあるが、身体に力は残されていない。ただ、異様な達成感が身体全体を包み込んでいた。仲間を信じ、待つんだと言ってやれたから。そう、それでいい。……でも、ごめんね。この思い、みんなに伝えたかったよ。……ごめん。晴矢のことも風介のこともまだまだ知らない。キミたちは、僕の一体なんなんだ。はるや、ふうすけと言う響きは、いつも懐かしくて暖かい。暖かさの先にあるものは何なのか。それを知りたい——そう考えた瞬間、ここで旅が終わるのは嫌だと、頭の細胞たちが訴えてきた。本当の雷門の一員になるため、南雲と涼野を”探す”ため、ここで旅は終わってはいけないと蓮に告げる。しかし、

「……バーンさまとガゼルさまが手を下せないなら、あたしたちがくだすまでよ」

「あなたがいると、バーン様とガゼル様の居場所がなくなってしまうの」

クララとレアンが、自分を説得するように呟くのを聞いて、やはり見逃してもらえないことを悟る。視界の霞も一層酷くなってきた。目眩が波のように押し寄せてくるし、耳を貫くような耳鳴りもする。身体が悲鳴をあげているのだ。蓮は、消えかかる意識の中、バーンとガゼルのことを考えた。何故、バーンとガゼルは自分が雷門にいると困るのだろう。だが、考える間もなく、

「<フローズン・スティール>」

「<イグナイト・スティール>」

なんの感情もこもっていない声がはっきりと聞き取れた。これで最後だと通告する冷えきった声。蓮は、覚悟を決めて目を瞑った。
熱気と冷気がじわじわと両側から迫ってくるのを感じる。二つの気はぶつかり合い、蓮の辺りでは心地よいそよ風と化していた。その時間だけは、ゆっくりに思われた。レアンとクララの行動が、スローモーションで再生されたように——近づいてきた。イグナイト・スティールが生み出す炎が陽炎のように揺れ、フローズン・スティールが作った氷が光を反射して輝く。その二つは、とても美しく思えた。自分の最期を美しく飾るために光っているように思えた。クララとレアンのスパイクの底が、腕から僅か三十センチ位の場所に来て、蓮が瞳を一層強く瞑り、意識を投げ出そうとした——その時。

「<アトミック・フレア>!」

「<ノーザン・インパクト>!」

倉庫の入口から、立て続けに声がした。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.423 )
日時: 2011/05/06 07:38
名前: ふぁいん (ID: WV0XJvB9)

蓮君、絶対絶命!!助けてあげてほしいです!!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.424 )
日時: 2011/05/08 00:22
名前: ふぁいん (ID: ewri1wGo)

あげ!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.425 )
日時: 2011/05/08 15:29
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: YwspoyBV)

聞き覚えのある声がし、蓮ははっとしと目を開けた。頭からわずか数センチ上を、まず高熱を帯びた物体が通りすぎる。お湯が沸騰するのに似た音が耳に届く。肌寒いはずの気温が一気に上昇し、真夏並の暑さとなった。辺りは数秒のうちに、熱気に満たされる。蓮の肌にうっすらと汗が浮かび、熱気が空気を陽炎のように揺らす。蓮は、頭だけを動かして、真夏を作り上げるものを目で追った。それは、赤い隕石を連想させる、巨大な火の玉。正しくは火の玉のように膨らむ、炎を纏うサッカーボールだった。激しく炎を燃やしながら、レアンに近づいていく。豪炎寺の<ファイア・トルネード>を凌ぐ炎だ。炎が燃える勢いも、炎の大きさもこちらの方が勝っていた。
蓮が南雲のボールに見とれていると、今度は気温が一気に下がった。最初の気温を通り越し、真冬の寒さとなった。あまりの寒さに、蓮は頭を下げ、身を震わせた。頭の上を、風を伴いながら、物体がよぎったのだ。氷のような、冷気を放つ物体。何かと顔を上げると、凍り付いたペットボトル。透き通った氷の中に、スポーツ飲料のラベルが見える。凍り付いたペットボトルは、虹色の輝きを溢しながら、クララとの距離をどんどん縮めていた。
レアンもクララも、技を放つ体勢だったが、身軽にも身体を横に捻った。勢いがついていたせいで、壁際まで身体を回転させながら進んだ。<アトミック・フレア>と<ノーザン・インパクト>は彼女たちには当たらず、床に落ちる。火の玉も氷も消え、ただのサッカーボールとペットボトルに戻った。乾いた音をたてて、床に転がった。
レアンとクララは、壁に身体がぶつかると、素早く立ち上がり、振り返った。驚いた面持ちで、蓮を守るように立ち塞がる南雲と涼野を見る。南雲と涼野の顔には、強い怒りが露になっていた。敵意を目に灯し、威嚇するように白い歯を剥き出しにしている。蓮は、晴矢と風介が助けに来てくれた……と、二人の逞しい背中をぼんやり眺めていたが、とうとう意識を失った。崩れるように額を床につけ、それきり動かなくなる。


「蓮!」

涼野が心配そうに蓮の名を呼び、蓮に駆け寄った。南雲は、目を眇め、クララとレアンに食って掛かる。

「テメーら! 蓮に何したのか分かってんのか!」

南雲の怒声が、広い倉庫の中に反響した。南雲に同意するように、しゃがんで蓮の容態を窺っていた涼野も二人を睨む。南雲と涼野の迫力にクララとレアンは、びくっと華奢な身体を震わせた。しかし、レアンは懇願する光を目に宿し、

「バーンさま、ガゼルさま。何故そんな、塵芥川ちりあくたのような存在を守ろうとするのですか?」
青い瞳を潤ませながら、静かに南雲に尋ねた。南雲は無言でレアンを見つめながら答えない。レアンは、南雲の後ろにいる蓮を憎々し気に見やる。

「幼馴染み、だからですか?」

冷ややかにクララが聞いて、涼野は立ち上がって頷く。クララは、はっきりとわかるくらい動揺した。

「どうして、記憶のない幼馴染みを大切に思うんですか!」

クララの悲痛な叫びが、事実そのものが、涼野と南雲に突き付けられた。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦 ( No.426 )
日時: 2011/05/08 20:23
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: npMPGGPe)

風介くんのペットボトルシュートに驚きを隠せない桃李です!(

参照7000突破、おめでとうございます♪やはり人気の有る小説は違いますね^^

蓮くん、大丈夫でしょうかあばばばry……でも、レアンとクララの気持ちを考えると、やっぱり複雑に……やはり晴矢と風介が大切に思っているのは蓮くんなんですね。ああ、やっぱり複雑……なかなかすんなりと解決はしませんね;
緊張感の有る文章は、さすがしずくさんとしか言えません><私にこんなハイレベルなものは……無理です(キリッ

ところでアンケートですが答えにやってきちゃいましたよやふー!←

☆アンケート☆
①この小説で気にいっているシーンは? 3つまでOkです!理由もあるとなお嬉しいです♪

>>339のアツヤと蓮くんの会話とか好きです。
「思い出そうとしても、思い出すことができない。手を伸ばせば届きそうな位置にあるのに、するりと僕の掌を通り抜けてしまう」

「……通り抜けた方がおまえの幸せになるからだろ」

……切ないですっ!あ、これって台詞のほうに書いたほうが良いんでしょうか? ま、いいか!(

あと、『氷のエイリアン』も面白いですb蓮くんの光る芸術センスを感じます(キラッ


②続いてはセリフ。これもやはり3つまでどうぞ!

アツヤの「黒の瞳ってのは〜」(間違ってたらすいません;)とか、幼少蓮くんのあの名台詞ですねw本編じゃ無いけど、大好きですv

③これからの展開で気になる場所は?

近いところでは、真・帝国学園との戦いと沖縄です。沖縄ではあの人が帰ってくるだけでなく、バーンも登場してますし。
恐らくだいぶ先ですが、エイリア学園の"生徒"としてバーン&ガゼルが蓮くんの前に登場するシーンはどんな感じになるのだろうと楽しみにしています。重要な場面かなーっと勝手に思ってるのでw

読み返してみるとgdgdですね;答えるのは楽しかったのですが時間の都合で慌てた回答になってしまいました;すいませんです。
これからの展開が楽しみですっ!更新頑張って下さい。応援しています^^*

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.427 )
日時: 2011/05/11 23:13
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: ZtEKXS3z)
参照: 今、携帯の着信音は吹雪です☆

事実を突き付けられた南雲と涼野は、答えに窮し、顔に皺を寄せた。
蓮は、自分たちと過ごした日々をきれいに忘れている。だが、南雲と涼野の記憶に蓮はいる。変わっていない愛嬌のある笑み。幼少期に見せていたサッカーの片鱗。——戻れない楽しい日々だ。あの頃には戻れないが、新しく”友達”の関係は築けるとそう二人は信じていた。

「……記憶がなくとも」

涼野が口を開き、クララは絶望した顔つきで涼野を見る。口が少し開けられ、瞳が潤む。顔から血の気が失せていく。どうして、どうして、と狂ったように呟いていた。涼野は顔色一つ変えず、倒れた蓮を一瞥し、
「蓮は、私と晴矢の幼馴染みだ。そのことに変わりはない」

はっきりと言った。クララは、静かに首を振る。光の雫が弾けるように光った。
「ガゼルさま。もう昔には戻れません。彼を裏切って雷門を倒してください。……今、雷門を倒さないと、あたしたちの居場所はなくなります」

クララが先程とはちがい、はっきりと感情を露にした。必死、必死、必死。それしかなかった。彼女の訴えは実に切実なものだった。南雲と涼野は口を閉ざした。居場所は、エイリア学園しかない。分かりきっていることだった。このまま蓮を理由に雷門と戦わなければどうなるかも。分かりきっていることだった。
南雲と涼野が反論しないところに、クララが畳み掛けて言葉を投げ掛ける。

「父さんは『ジェネシス』だけしかいらないと言っています。わたしたちはいつ、エイリア学園からお払い箱になるかわからないんですよ!?」

南雲と涼野は悔しげに顔を歪めて、お互いを見、次に気絶した円堂たちを。最後に蓮の背中を見つめた。倒れたままの蓮の背中をじっと見つめていた。
レアンは苛立ちを隠すように腕を組んで、爪先で地面を叩いている。スパイクが床を叩く音が反響し、多くの人間が一斉に床を叩いているような錯覚を起こさせる。やがて爪先で床を叩くのを止めた。腕組みをとき、何も言わない背中に向かって、確認するように問いかける。

「バーンさま。わたしたちの居場所はエイリア学園だけ。このままその幼馴染みに拘っていると、プロミンスもダイヤモンドダストも居場所がなくなるんですよ?」

南雲と涼野は振り向かなかった。それどころか、倒れた蓮に近づくと、彼の近くにしゃがみこんでしまった。クララは悲しそうに目を伏せ、レアンは顔を真っ赤にした。

「……どうして何も言わないんですか」

静かで抑揚がない——だが、はっきりと怒りに震えた声でレアンは言った。
南雲も涼野も答えない。レアンとクララに背を向けたまま、一言も発しない。
しばらくの間、レアンは二人が何か言うのを待っていた。しかし、やがて限界に来たらしい。突然、

「バーンさまとガゼルさまの分からず屋!」

と、子供のように泣き叫んだ。その時だけ、南雲と涼野は悲しみと怒りが混ざった顔で振り向く。
同時にレアンを飲み込むように、彼女の背丈程の火柱がさっと立つ。人間の身体など簡単に焼いてしまいそうな勢いの炎だ。クララも慌てて、火柱の中に飛び込んでいった。わずか数秒もしないうちに火柱は、消える。消えた後には、何も残っていなかった。クララもレアンも、彼女たちが存在していた痕跡すら。火柱が持ち去ってしまったようだ。何もない、倉庫の床が広がる。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.428 )
日時: 2011/05/12 10:43
名前: ふぁいん (ID: ZtEKXS3z)

バーン様、ガゼル様、蓮君は本当に仲がいいんですね!羨ましいです!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.429 )
日時: 2011/05/13 23:08
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: /eEAG2r9)
参照: 次回から真・帝国がらみに……なるかな?


「風介、何でオレたち蓮に拘っているんだろうな」

南雲はクララとレアンが立っていた床を睨みながら、独り言同然に呟いた。前を向いて倒れた蓮の脇の下に手を突っ込み、蓮の身体を転がして仰向けにする。顔は苦痛に耐えるような表情だった。続けて、南雲は、蓮のジャージのチャックを下げて、右腕から、ジャージを脱がせにかかる。腕を触られると痛みが走るのか、蓮は小さくうめき声をあげた。見かねた涼野が変われ、と目で合図したが、南雲は続ける。蓮の腕で辛うじて肌色になっている部分をそっと掴み、やがて——唇を噛んだ。
蓮の右腕は、青い痣と赤い痣で覆われ、痛々しい。クララとレアンは、蓮が痛みをできるだけ感じるよう当てる部位を少しずつだがずらしていたのだ。
南雲と涼野が不安そうに蓮の顔を眺めていると、蓮の身体が少し動いた。

「……は、る、や? ふ、う、す、け?」

蓮はうっすらと目を開け、聞き取れるのがやっとの声で二人の名を呼んだ。
視界は霞がかかったようにぼんやりとし、ピントが合わない。ぶれてばかりだ。服の色で何とかわかるが、輪郭をなさない映像では、彼らがどんな表情かも、何を話しているかさえもわからない。身体にも力が入らず、口を動かして、二人の名前を呼ぶのが、やっとだった。助けられて、熱い思いが喉まで、熱い水が目までせり上がっているのに。表現できる程の元気が欲しいと、蓮は、ぼうっと思った。

一方、南雲と涼野は、膝を地面に付け、蓮を心配そうに覗きこんでいる。南雲は、蓮の手を床に下ろすと、
「……くそ、レアンもクララも蓮にこんなことしやがって」

憎々し気に呟き、舌打ちをした。蓮には、南雲の声が聞こえていない。わずかに見開かれた黒い瞳で、弱々しく南雲と涼野を見つめかえすだけ。

「……昔に戻れないことなど、分かっているが。少しでも、あの頃に戻りたいな。晴矢を”バーン”と呼ぶこともなく、蓮がいた昔に。三人で楽しくサッカーをやれていた頃に、な」

涼野が過去を回想するように天井へと視線を投げ掛けた。顔がだんだん綻んでいく。だが、どこか寂しげでもあった。蓮が忘れていようとも、南雲と涼野にとっては、暖かくも悲しい思い出だった。


「お前らしくねえこと言うな」

南雲は、涼野を元気づけようとしたのか、口元を歪め、涼野を茶化した。すると、涼野は短く鼻を鳴らし、からかうような瞳で南雲を見やる。

「キミこそ、『ジェネシス』の座は諦めたのか?」

南雲は首を横に振る。

「諦めてはいねーよ。オレも父さんに認められたい。けど、雷門と戦うのはごめんだ」

「……しかし、そのままだと私たちはエイリア学園から追放される」

涼野が苦し気に言葉を吐き出す。顔には、わずかに恐怖の色が浮かび、冷や汗が頬を伝って、手の甲に滴り落ちた。南雲も追い詰められたような面持ちになり、床を睨んだ。自然に作られた拳が、独りでに震える。やるせない気持ちが、二人を支配していた。

「最悪なことに、雷門にプロミンスの存在も、ダイヤモンドダストの存在ももうばれているしな」

「……私たちの正体がばれるのも、時間の問題か」

苦々しく涼野が言って、南雲と涼野は思わず顔を見合せた。気絶する円堂たちを一瞥。続いて、視線を落とした。そこには、また意識を失ったのか目を閉じたままの蓮。顔つきは、先程より、少しだけ穏やかになったものの、まだ苦しそうだ。顔には、汗が張り付き、早い呼吸を繰り返している。
南雲と涼野は、静かに頷きあった。立ち上がって蓮に近づくと、涼野は、蓮にジャージを着せ直す。右腕に袖を慎重に通し、再度チャックをあげる。そして、涼野は蓮の脇の下に手をいれ、南雲は方膝を地面について、背中を丸めた。蓮の身体を涼野は、背中を丸めた南雲の元までゆっくり引っ張ってくると、南雲の背に覆い被さるように乗せた。蓮の両腕が南雲の背中から、だらんと垂れる。南雲は、蓮の膝裏をしっかり持つと、立ち上がった。蓮は、南雲にしっかりおぶわれていた。

「……蓮、三人だけで少し話そうぜ」

南雲は少し振り向いて蓮に語りかけると、そのまま、ゆっくり倉庫の出入口に向かって歩く。横を涼野が、平行して歩いた。最後には外にでた。倉庫の中には、気絶した円堂たちだけが、取り残されてしまった。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.430 )
日時: 2011/05/15 13:20
名前: ふぁいん (ID: enDlMgfn)

れ、蓮君はどこに行くんですか!?

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.431 )
日時: 2011/05/16 18:18
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 0fWfwKh9)
参照: 珠香ちゃんと紺子ちゃんに世話を焼かれる桃花が好きだv

またまたお邪魔します、すいません; 第二弾も答えにきちゃいましたw
……なんだか凄い展開になっています。この後、三人はどういった会話をするのでしょうか?その前に蓮くんは大丈夫でしょうか?

①小説内で好きなキャラランキングベスト3(オリキャラもオッケー!)

1位【蓮くん!】 理由【サッカーも上手だし、何より振り回される彼が大好きですvかっこいいし可愛いし……おひさま園の職員さん、もっとやれやれ〜♪(殴】

2位【風介】 理由【美味しいキャラですよね(ジュル カッコいいですし、良いボケも噛ましてくれますwですが、シリアスな部分では儚い台詞を言っちゃって……あーもうカッコいいな!(】

3位【晴矢】 理由【荒々しい部分もありますが、蓮くんを想う気持ちは風介に負けてないと思います。風介と共に迷い悩み、今後、蓮くんとどう関わってくれるのか、期待ですvアフロディと晴矢で迷いましたが、晴矢くんに期待を込めて……】

②なんか蓮って色々絡んじゃってますが……誰との絡みが好き?(3つまでおっけー。二人以上もおっけーです。例えばガゼルとバーンとか)

【風介】 理由【蓮くんの前だと無邪気な部分が出てきたり、雷門と戦いたくない、と悩んだり。しずくさんが書く風介はとても人間味が溢れていて、涙物です。二人で写真を撮った場面や、風介を笑わせる蓮くん、そんな二人が大好きです(マテコラ】

【晴矢】 理由【番外編等を読んでいて、そう思いました。あーでも、仲良しな蓮くんと風介を見て、混ざりたいんだけど気が引けちゃって。じゃあ俺が、二人の笑顔を護ってやんよ!と二人を優しく見守る晴矢も良いなーとか妄想してます(自重 でも、三人揃って幼馴染トリオですもんねw忘れてください】

【アフロディ】 理由【ちょっと噛み合っていない会話等、大好きですv「韓国組と年を越そう!」の会話は腹筋崩壊ですw速攻で訂正を入れる蓮くんw】

③再度降臨、好きなセリフ!(3つまで!前回は理由がなかったので、追加です^)

【「僕は確かに”変わるかも”しれないけど、”基礎部分は残して”変わって行くと思う。『人間って忘れてしまう生き物』って言うだろ? 今日の日だって、細かいことは忘れるかも。けど、風介への思いは絶対変わらない。少なくとも、風介のことは絶対に忘れたりしない。この46億年間だっけ? 変わらない海と同じで」】 

理由【ちょ、蓮くん惚れるじゃないですkごめんカオスブレイクの準備しないでお願いだから】

④まだ終わってないけど、次回作のお話。半分も来ると考えたいです。
蓮は……どっちがいいでしょう!?

【ファイアードラゴン】

理由【……すいません、この場に及んでFD選んじゃってすいません;でもやっぱり、FDの蓮くん好きだなーって思って。アジア決勝でイナズマジャパンに負けても、四人なら「俺たちの世界への挑戦は、終わっちまったなー」「でも、また次があるさ」「そうだよ! 僕たちが揃ってるファイアドラゴンだよ?」「……"最高で最強"の私達が、な」みたいなwすいません、語りすぎました;】

やっぱり暴走してますねwでも、もう気にしない!楽しかったから!(自重はどうした
ではでは、すいませんでした;

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.432 )
日時: 2011/06/11 16:25
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: PODBTIS5)
参照: あんまりかけなかたーです;;

 その後、誰もいなくなった倉庫で目を覚ました円堂たちは、すぐにクララにレアン、そして蓮の姿が見えないことに気が付いた。
 鬼道はすぐさま倉庫の外に飛び出し、円堂と風丸は、倉庫の中をくまなく探す。しかし、南雲と涼野に捕まった蓮は、当然ここにいない。気絶していた円堂たちは、当然そのことを知らない。クララとレアン、そして二人に狙われている蓮。この三人がまとめて姿を消せば、自ずと悪い方向に発想は進む。蓮がクララとレアンに連れていかれたのでは、と言う最悪な方向に。

「……くそ、なんでオレには力がないんだ」

 風丸が自分自身を叱るような口調で呟き、倉庫の壁を足で蹴った。何度も、何度も。歯を食い縛り、目付きを鋭くして俯いていた。そこへ円堂が背後から近づいてきて、風丸は壁を蹴りつけるのを止める。振り向き、どこか嘲笑うような笑みを円堂に向け、

「なあ、円堂。仲間一人をエイリア学園から守れない連中に、エイリア学園を倒すなんて無理だ」

「そんなことない!」

 風丸は、自虐的に笑った。その言葉を聞いた円堂は、即座に否定する。きょとんとしている風丸の両肩にしっかりと手を載せ、彼の茶色い瞳をしっかりと見据える。風丸は円堂に見つめられ、目を少し見開き、戸惑うように瞬きをしていた。

「風丸、オレたちはずっと特訓で強くなってきただろ? 白鳥だって、やっとあいつ本来のサッカーができるようになってきたし、オレたちだって、前は負けたジェミニ・ストームに勝てたじゃないか!」

「そうかもな」


 円堂は、力強く風丸に語りかけた。今までの成果を。倒れる回数も減り、徐々にだが本来の自分のプレーをみせはじめた蓮を。そう、みんなは確実に成長しているんだ。円堂は、それを風丸にわかってほしかった。しかし、風丸は何もわかっていない、と言いたげな顔をした。円堂から目をそらし、曖昧に答えた。

「……風丸?」

 円堂は、心配そうに風丸の名前を呼ぶ。風丸は、無言で、肩に置かれた円堂の手を自分の手で掴んで順番に外し、一人で倉庫の外に走っていってしまった。揺れる青いポニーテールが、激しく揺れていた。風丸が走る音が、冷たく倉庫に何十にも反響する。

「…………」

 風丸の心情を全く察することができなかった円堂は、目を細めると、急いで倉庫を後にした。
 すると、思いもかけない人物がそこにいた

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.433 )
日時: 2011/05/28 19:07
名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: PODBTIS5)
参照: テストなんて爆発しておk

「こ、木暮!?」

 そこにいたのは、浚われたはずの木暮だった。
 円堂たちが心配して駆け寄るが、木暮に目立った外傷はない。浚われた当時の服装のままで。誘拐されていたというのに、元気そうな顔で、「うしし〜」と決まりの笑い声を披露してくれた。

「うしし〜この木暮さまが捕まりっぱなしなわけないだろ? ……と言いたいところだけど」

 木暮は笑うような顔つきから、急に神妙な顔つきとなり、小さくため息をはく。何か問題があったらしい。安心しかかっていた円堂たちは、木暮の表情の変化に目を細めた。

「どうした木暮?」

 鬼道が心配そうに尋ね、木暮は悔しそうに舌打ちした。

「ほんとのこと言っちゃうと、あいつらはキャプテンたちに”ある言付け”をしろって、オレを逃がしたんだ」

「”ある言付け”?」

「『三日後に、東京にある帝国学園に来い』って」



 蓮は夢を見ていた。白恋中学で見たような真夏の夢だった。照りつける強い灼熱の日差しの中、幼い自分は両手でサッカーボールを両手で持って、興味深そうに見ている。どうやらサッカーを始めようとしているらしい。辺りは知らない公園の中らしい。ブランコやジャングルジムが見えている。
 前回と同じく、”今”の自分は傍観者として幼い自分を見下ろしていた。しかし、灼熱の太陽やセミの音を聞いても、暑さは全く感じられない。
 蓮は、ためしに幼い自分に触れようと手を伸ばしたところ、自分の手は幼い自分の身体を貫通した。それでも血は出たりしない。肉体を貫通するような嫌な感覚もしなかった。何もない空間に手を突っ込んでいるような感覚だった。慌てて手を戻すと、手は無事に幼い自分の身体から抜かれた。今、自分に触覚はないのだと感じさせられた。ちょうど映画を見ているような……過去と言う”フィルム”の”観客”なのだ。

「ねえ、これなあに?」

 蓮ははっとして目を見開いた。サッカーボールを知らないということは、初めてサッカーに触れた日の記憶かもしれない。南雲や涼野が出てくるのではないかと、蓮は期待して辺りを見渡すが誰もいない。誰もいないのに、幼い蓮はきゃっきゃっとはしゃいだ。

「”さっかー”っていうの? おもしろそうだね!」

 幼い蓮は誰かと話しているようだ。しかし、辺りに人の姿は見えないし、声もしない。それなのに、幼い蓮は喜んだり、ぷうと頬を膨らませて不機嫌に言い返したりしていた。蓮自身に独り言を言う癖はない。となると、考えられるのはただ一つ。——誰かがいるのだ。サッカーを教えようとしている誰かが。時折だが、雑音が混じって聞き取れない部分があるから、そこが名前なのだろう。幼い自分の話から察するに同じ年頃、恐らく二人。「ふたりともひどーい!」と何度も怒っているから、からかわれているのだろう。でも、姿は見えないのは。

(……多分、僕が忘れているからだ)

 
〜つづく〜
テスト前なので、更新が低迷します><忘れな草の方が中心になるかもしれません。
代わりにこねたを。とあるライトノベルのパロディです!
テストの珍回答。
ファドラ+蓮の地理編

Q.中国の正式名称と首都を答えよ。

チャンスゥの回答
「ああ……正式名称は、中華人民共和国。首都は北京ですね」

さすが天才ゲームメイカー。模範的な答えです。

アフロディの回答
「正式名称? 陸の中の国だろう。首都は北京だね」
中国は海に面していますが。

涼野の回答
「こんな下らないことに、答えている暇などない」

あなたの内申かかっていますよ!?

南雲の回答
「中国は中央王国だろ。首都は……バンコクか?」

中国四千年の歴史が大復活。

蓮の回答
「せーしきめいしょう? うーん。「中華料理中毒で国民は毎日中華料理を食べている国」で、県庁所在地は……偽王将ぎおうしょうだよね」

コメントしようがありません。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.434 )
日時: 2011/05/28 07:13
名前: 水玲 (ID: Qb.Gx.Ei)

どうも!しずくさん、覚えてますか?
「火竜の〜」のところにいた水玲です!

えへへ、アンケートの第二弾、答えに来ました。(ちゃんと小説もみてますよ)

①小説内で好きなキャラランキングベスト3(オリキャラもオッケー!)

1位【蓮】 理由【サッカー上手でかっこいいし、地理が苦手ですごいボケをしてかわいいし…大好きです】

2位【風介】 理由【エイリア組で1,2を争う位好き。彼にも過去に何かがあったと信じてる!】

3位【晴矢】 理由【エイリア組でry。ほんと、もうかっこいいです】

②なんか蓮って色々絡んじゃってますが……誰との絡みが好き?(3つまでおっけー。二人以上もおっけーです。例えばガゼルとバーンとか)


【風介】 理由【この2人を見ると、「こんな友達って、いいな」って思います】


(あと2人書きたいけど、都合上割愛)

③再度降臨、好きなセリフ!(3つまで!前回は理由がなかったので、追加です^)

【「僕は確かに”変わるかも”しれないけど、”基礎部分は残して”変わって行くと思う。『人間って忘れてしまう生き物』って言うだろ? 今日の日だって、細かいことは忘れるかも。けど、風介への思いは絶対変わらない。少なくとも、風介のことは絶対に忘れたりしない。この46億年間だっけ? 変わらない海と同じで」】 

理由【まさに格言!まさに名台詞!!かっこいい!】

④まだ終わってないけど、次回作のお話。半分も来ると考えたいです。
蓮は……どっちがいいでしょう!?

【両方】

理由【……ごめんなさい意味わかりませんね。
   要約すると、「FD(ファイアードラゴン)が良い!風介も晴矢もアフロディもいるから!」→「でもIJ(イナズマジャパン)も捨てがたい…」→「そうだ。いっそFDがIJと闘った後にIJに引き抜かれればいいじゃん!」
   というアホな回路が働いた結果ですはい】


暴走した結果、最後とんでもないのが出ましたががんばってくださいしずくさん。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.435 )
日時: 2011/05/28 19:29
名前: しずく ◆rbfwpZl7v6 (ID: PODBTIS5)

コメント溜まらせてすいませんでしたー!しかもテスト前と言う、あまり許されぬ身なので短文になってしまいますが、お許しを;;

>>ふぁいんさん
蓮はどこに連れて行かれるのか……お楽しみに(おい)あ、また夢の回想が入ってますが、一応重要シーンになるはずです(へ)

>>桃李さん
風介は天然です!サッカーボールを持ってき忘れたので、そこらへんに落ちてたペットボトルをボール代わりにしていました。でも、威力は抜群ですw
7000突破は桃李さんやお客様のおかげです><桃李さんも、お客さんたくさんいて人気ありますよ><私のよりもコメント等も多いし……憧れちゃいます^^

クララ&レアンは自分でも複雑です。結局幼馴染をとってしまう二人ですが、仲間である二人のことも大切に思っています(後でそのシーンを書きますが)。この辺りは三人にとって大きな転換期なので、そこら辺を表現できたらなぁと思います。緊張感が出ていてよかったです……スピード感のある文章の印象が出せればいいなぁと思っていたので、安心しました><

アンケート有難うございます^^後で蓮たちコメントつきで返事をまとめてあげるので、お待ちください(え)うう、テストェ……コメントありがとうございました

p.s最後の蓮+アフロディたちの意見は私も思わず感動してまっしゅ←最高で最強……電気うなぎに触れたくらいのしびれが全身を駆け抜けました。こういうのを感動と呼ぶんです、分かります。
実は私も桃花ちゃんと吹雪君こんな感じかな〜と勝手に思うときがあるので、機会があれば言ってみたいです^^

>>水玲さん
おおおおお、お久しぶりですね^^もちろん覚えています♪
小説挫折してごめんなさいorzやはり先設定はネタバレになりかねないので止めてしまいましたorzしかし、いつかは蓮がファドラ設定のオリジナルストーリーを書きたいと思います。一時期書いていたヨンと関るお話なんてプロットだけはあったり。
もし、もしです。水玲さんがファドラ設定の蓮を読みたいとお思いなら、短編集の「忘れな草」で是非リクをしていただければいくつでも書きます(爆)それで罪滅ぼしになればよいのですが;;

アンケート返しはまた今度ですが、最後だけコメント。
両方の予定ですw世界編では、蓮がFDに一時期的にですが所属するオリジナル(別名低クオリティ章)を考えていたりします。
でも、それもいいですよね><久遠「この選手は優秀だな」→円堂「オレたちの仲間だし、イナズマジャパンに入れようぜ!」→久遠「よし引抜だ」と言うのが今一瞬妄想されましたw

ではでは、コメント有難うございました^^

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.436 )
日時: 2011/05/30 22:40
名前: ふぁいん (ID: LhIkzBF8)

木暮君が無事でよかったです。テストファイトです!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.437 )
日時: 2011/06/04 14:38
名前: ローン (ID: ZtEKXS3z)

初めましてすごい神文ですねこれからも応援しています

イナズマイレブン】〜試練の戦い ( No.438 )
日時: 2011/06/11 16:18
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: PODBTIS5)
参照: もうすぐ真・帝国にいけるはず?

 はしゃぐ幼い自分を見つめながら、蓮は初めて心から過去を思い出したいと考えた。
 風介、それに晴矢とであうたび、込み上げる懐かしさの原因を探ろうとは思う。しかし、暖かい懐かしさに身を委ねながら、蓮は、その原因をまともに探ろうとはしなかった。理由は、蓮がその原因を探ろうとしない。つまりは、問題そのものから思考を逸らしていたのが原因だ。風介と晴矢といるだけで楽しい——その明るい感情が、彼の正しい理性や思考を排除していたのである。
 例えば、エイリアン学園が行く場所によくいる、風介に晴矢。蓮は、もちろんこの偶然には早くから気付いていた。ただ、二人に会えることが嬉しいあまり、そのことについては、考えないようにしていた。考えてしまうと、大切な二人を疑うような気がして、申し訳ないと感じていたのだ。

「思い出せ、白鳥 蓮」

 蓮は目を閉じ、己の胸辺りに手を当てた。厳しい口調で、自分自身に語りかける。全神経で頭を向かって、意識させる。

「僕にサッカーを教えたのは、誰なんだ?」

 問うても、答えはない。聞いたのは、”自分自身”なのだから。だから、頭の奥底にある、記憶を引っ張り出そうと試みる。だが。思い出そうとすればするほど、頭痛が酷くなっていく。思い出すことに脳が反発するかのごとく、頭には締め付けられたような激痛が走り、立て続けに様々な画像が瞬間的に浮かんでは、消える。
 伸ばされた二つの手。宙に舞うサッカーボール。そして、京都で見た煌めく鈍い光。はっきりとした画像は、そこで終わった。だが、痛みは洪水のように押し寄せてくる。まるで思い出すことはいけない、と警告するかのように。

 蓮は、頭を抱え、苦痛に顔を歪めた。オモイダシタイ、オモイダシタイ。ただそれだけを願って、痛みに耐えていた。そこへ、答えるように、

「……思い出すのはムリです」

 綺麗な、若い女性の声がした。はっとして顔をあげるが、そこには、誰もいない。考えるのを止めたからか、波が引くように、痛みも引いていった。

 蓮は、用心深く辺りを見渡す。幼い自分の記憶世界、ここは映画のようなものだ。すぐ近くに世界は広がるが、触ることも感じることもできない。だが、今の声は確実に蓮に語りかけていた。——何故干渉することができるのだろう。

「こっち、こっち」

 蓮がキョロキョロしていると、呆れた声が降ってきた。
 驚いて上を見ると、そこには北海道で見たカラスのようなハトのような真っ黒い鳥が一羽、羽を動かしていた。宙から、蓮を見下ろしていた。

「き、キミ、北海道の……!」

 と、黒い鳥に呼び掛け、蓮は、我ながらアホなことをしたものだと思った。鳥は話さない。そんな当たり前のことを忘れ、話しかけた自分がバカらしい。
 蓮は、自分の行為ながら吹き出してしまう。すると、黒い鳥の目が、人間が不満を訴えるのと同じように——細めた。鳥の顔が不機嫌を形作っている。蓮は、この世のものとは思えない光景に呆然。すると、

「失礼なお方です。私は話せるんです〜」

 黒い鳥が、喋った。開かれた形よい黄色い嘴から、すらすらと流暢な日本語を生み出した。人間が話しているとしか思えない上手さだ。蓮は思わず我が目を疑い、鳥を凝視した。鳥は、嫌そうに蓮を睨み付け、プリプリする。

「ニンゲンは、”ハクション”とやらでしゃべる動物に慣れているはずなのに、実際に見ると、どうして信じようとしないんですか〜」

 何か勘違いをしている黒い鳥に、

「ふぃ、フィクションのことかな?」

 さりげなく間違えていることを伝えた。すると、黒い鳥はビー玉のような金色の瞳を大きく見開き、羽を激しく動かした。

「あ、それだです! ”フィクション”だです!」

 満足げに言って、上空を弧を描くように飛ぶ謎の黒い鳥。蓮は、その鳥を探るような目つきで見ていた。やがて、

「……キミがこの世界を作っているの?」

 ポツリと零すと、黒い鳥は孤を描くのをやめた。一気に下降すると、地面に両足をつけ、羽をたたんだ。頭を僅かに上げ、金色の瞳をゆるくする。人間が微笑むような、例えるなら先生が生徒を褒めるような。そんな表情だと蓮は思った。

「キミではありません。私の名はミスティ。……夫、話がそれましたです。如何にもです。ニンゲンにしては頭がいいです」

 表情そのままの柔らかい声で黒い鳥——ミスティは言った。
 だが、その笑顔が逆に不気味なものに思えてくる。全てを知っている、とでも言いたげな余裕が漂っている笑みだ。ミスティが何だか不気味に思えてきて、蓮は顔を強張らせる。その横では対照的に無邪気に笑う幼い蓮が、サッカーボールを何もない空間に蹴っていた。
 ミスティはただただ笑みを形作りながら、

「あなたは北海道や京都で昔のことを少しですが思い出したです。それも私の力です」

 蓮は全身を稲妻が走り抜けるのを感じた。

「ミスティ、お前は僕の記憶喪失に関っているんだろ!?」

 ただの直感に過ぎなかったが。蓮はミスティが勝手に関っていると決め付け、強い口調で迫る。ミスティは無表情だった。動じず、像のように固まっていた。
 人の大切な記憶を勝手に奪われたのが許せない、と蓮は腹の底から煮えくり返るような怒りが沸いてきた。その勢いのまま怒鳴ってしまった。しかしそれはわずか数十秒で急速に冷めていってしまう。
 本当は思い出せないイライラを、憂さ晴らしとしてミスティにぶつけているだけに過ぎない、と言ってから気づいた。言ってから後悔した。
 何か言葉をかけようとミスティを見ると、ミスティは金色の瞳を伏せていた。何かを後悔するような表情。蓮は思わず目を瞬かせる。するとミスティの嘴が小さく開かれた。

「……そう、とも言えますです」

 ミスティは弱々しく蓮の問いに答えた。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.439 )
日時: 2011/06/10 16:52
名前: ふぁいん (ID: l0i1WlFj)

黒い鳥、可愛いです!ハクションって何の間違いですか!?

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.440 )
日時: 2011/06/11 16:23
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: PODBTIS5)
参照: ミスティ登場←この子はキーキャラになるはず

>>ふぁいんさん
テストは終わりました〜玉砕しましたが、小説を書く手とパソコンを打つ指だけは残っていますw
ミスティ可愛いですかw有難うございます。ミスティが間違えていたのは”フィクション”です。あ、元ネタは月曜日にやっている、あるカードゲームです。遊馬可愛すぎる…orzおっと、語り失礼。コメント有難うございました!

>>ローンさん
久々の新しいお客様で、とても嬉しいです><
褒めていただいてありがとうございますwローンさんはイナズマイレブンではどのキャラクターが好きですか?よければ教えてくださいね♪コメント、有難うございました^^

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.441 )
日時: 2011/06/22 22:32
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: l0i1WlFj)
参照: 高校って忙しいorz保留、これから増えます。

「すごく曖昧だね」

蓮が冷笑を浮かべながら言うと、ミスティは、身体を縮め、頭を垂れた。何か考えているのか、金の瞳には、後悔の色が色濃く出ている。

「……事実そうです」

ミスティはポツリと溢すと、それきりむっつりと押し黙ってしまう。
蓮は、それを見て、黙る隙は与えんとばかりに問いを重ねた。

「関わった割には、どうして僕の記憶を中途半端に蘇らせようとするの?」

「正直言って、迷ったのです。でも、あなたは旅を初めてすぐ、風介に出会ってしまったわです。……あの時から、計画の歯車は狂い始めたのです。運命は、神は、一体何を考えているのかわからんです。”モノマネネコ”さんがやりやすいように、狂い始めたです」


”モノマネネコさん”。その単語を、蓮の脳は即座に翻訳する。”ネコ”をキャット——つまり、英語に変換した。
そして、モノマネキャット……モノマネキャット……と、モノマネの意味でかつキャットにくっつけても、きちんとした単語となるものを探した。なかなか出てこなかったが、しばらくしてふっとある単語を閃く。

「……『copycat』」

蓮が呟くと、ミスティは意外そうな顔で瞬きをした。この鳥は、母国語だけではなく、英語も理解できるようだ。かなり高い知識レベルにいる生物であるが、蓮にはその正体は全くわからない。

「こぴーきゃっとですです? ああ、モノマネネコさんの英語ねです」

「copycatの意味は、模倣犯——ある犯罪を真似て、同じような事件を起こす人間のこと」

「……今まで、エイリア学園はあちこちで事件を起こしてやがったです。私は、モノマネネコさんを放置してきたです」

そこまで言うと、ミスティは悔やむように地面を睨み付ける。
今までの口振りから考えるに、ミスティは間違いなくエイリア学園の関係者。が、その割には彼女(?)の態度が、蓮にはどうもしっくり来ない。今まで会ったエイリアン学園の連中と違い、雷門を倒そうとか敵意らしいものはない。失った記憶を思い出させてしまう特殊能力から察するに、ミスティには人ばなれした、所謂「超能力」がある気がする。その気になれば、雷門中サッカー部に何かしらの悲劇が起きているはずだ。——と見せかけた罠かもしれないが。

「やがったって、キミ、関係者でしょ?」

蓮が呆れたように声をかけると、ミスティは頭を垂れたまま両翼を大きく広げる。つやのある黒い羽は、磨き抜いた黒曜石に似た輝きを宿していた。そして、ミスティはかぎづめで大地を蹴ると、みるみるうちに大空へと消え去っていってしまう。


〜つづく〜


Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.442 )
日時: 2011/06/22 22:45
名前: 携帯しずく (ID: l0i1WlFj)

更新終わったので上げます

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.443 )
日時: 2011/06/27 19:52
名前: ふぁいん (ID: PODBTIS5)

お久しぶりです!ミスティは頭いいですね・・・最近更新ないですが大丈夫ですか!続き待ってます!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.444 )
日時: 2011/06/29 15:23
名前: 携帯しずく (ID: TW9kGICx)
参照: また保留。

「あ、待って!」

そう蓮が、叫んでミスティを捕らえようと、手を伸ばした刹那——周りの風景が揺れた気がした。気のせいかと思って前を見つめると、辺りがいつのまにか黒一色に塗り潰された世界へと変貌している。左右、上下、どこを見ても闇だらけ。ただその中で、蓮だけが色を保って存在していた。幼い蓮も、ミスティも。誰もいなかった。音も、臭いもせず、気持ちよい闇が肌にベッタリと張り付いていた。

『……わかってるわです』
どこからか、ミスティの絶望的な声が聞こえる。が、姿はない。飛び去った割には、声ははっきり聞こえるから近くにいることは間違いない。この暗闇そのものが、ミスティなのか。

『人間は、か弱き子羊。……もう、あなたたちには、なにもできない』

ミスティが憔悴しきった声で呟いた。それに対し、蓮は、力強い声で反論する。
「雷門は、必ずエイリア学園に勝つよ」

答えの代わりに、目の前で光が弾けた。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.445 )
日時: 2011/07/03 19:13
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: hg1Gx/0a)
参照: またアンケートとろうかな←番外編?

光が治まると同時に、蓮ははっと目を開けた。そこに広がるのは、幼い日を再現したスクリーンではなく。うっすらと汚れた白い天井だった。顔だけを横に動かすと、窓。設置された白いカーテンが、風をはらんで静かに揺れている。風に乗って、アルコールのような臭いが鼻へと連れてこられていた。

(え、ここって病院?)

辺りの風景や臭いから、ここが病院だと悟った蓮は、目をパチパチさせた。
蓮の言葉通り、彼は病院のベッドに寝かされていた。服も上下無地の青いパジャマに着替えさせられ、両腕は包帯でぐるぐる巻きにされている。その腕から、蓮は鈍い痛みを感じていた。チクチクと針の先端で何度も刺されるような痛み——それは、ここが現実だと言う何よりの証だった。蓮は、雷門の仲間を心配しながら、病室のなかをみわたす。
あまり広くはない個室。ドアのわきに、洗面台、窓の近くにベッドが置かれている。ベッドは病院にある、鉄製の頑丈なものだ。
キャラバンの座席より固く、寝心地はあまりよくない……と蓮が内心でごちていると、引き戸式のドアが開く音がし、南雲と涼野が部屋に入ってきた。

「晴矢、それに風介!」

南雲と涼野の姿を見つけた蓮は、嬉しそうな声を上げた。その時、無意識のうちに上半身を勢いよく起こしてしまったため、腕の痛みが強くなってしまう。

「……いったー」

蓮は、顔をしかめながら腕を擦る。その様子を南雲と涼野はぼうっと眺めていた。やがて蓮は二人の視線に気づき、呆れられたのかと思いながら二人を逆に見つめる。二人とも、ぼんやりとした顔付きで、蓮を見てはいるが、視界に入っていない様子だ。

「風介、晴矢」

名前を呼ぶが反応はない。何回か呼んだが反応はない。痺れを切らした蓮は、少々声を荒くして、二人に呼び掛ける。

「ねえ、風介!晴矢!聞いてるのか?」

すると、南雲と涼野は驚いたように瞬きをする。そして、ゆっくりと蓮に向き直った。

「よう、蓮」

南雲は蓮に笑いかけた。が、その笑顔に蓮は、違和感を覚えたが、面に出さず、挨拶を返した。

「傷は痛むか?」

「まだ少しね」

涼野に聞かれ、蓮は、苦笑しながら正直に答えた。涼野は、蓮のぐるぐる巻きにされた腕を睨むように見、やがて背中を向けてしまった。横では、南雲がやはり蓮に背を向けている。まるで何かみたくないものをみたかのように。
蓮は、沈んだ背中たちに声をかけようと口を開くが、言葉が思い付かず、閉じてしまった。三人の間は沈黙で支配されている。そして、蓮は、南雲と涼野との間に”何か”を感じ取っていた。人が「壁」とか「距離」と呼ぶものだと気づくのに、あまり時間は様さなかった。前は違った。晴矢は出会ったばかりでなんとも言えないが、風介は、違った。少し前の風介は、常に歩みよってくれた。何の因果か知らないが、旅先でちょくちょく出会い、そのたびに近づいて来てくれた。悩みを聞いてくれたし、アドバイスもしてくれた。北海道での思い出は、今も目を閉じればはっきりと思い出せる。暗闇の中で、潮風に翻る銀髪。暗闇の中でも、はっきりと見えた青緑の瞳。目を開けると、その風介は、いない。近くにいると素直に思うことができない。実際は近くにいるのだろうが、かなり離れた場所にいるように思えてしまう。それは、悩みがあるのに言ってくれないせいだ。蓮自身、なるべく風介に隠し事をしないと決めてきた。近くにいて、支えようとしてくれる彼に失礼だと思ったからである。しかし、風介はどうか。晴矢と共に悩んでいるようであるが、全く話をしてくれない。何だか、信用されていないようで、悲しくなる。
悩みがあるなら、相談して、と視線で背中に訴えるが、何も返ってこなかった。
「コピーキャットに、バーンにガゼル……か」

やるせない思いのまま、蓮は呟いた。晴矢と風介のことは後にしよう、と別のことを頭で考えていたところ、独り言として出てしまっただけなのだが。そのバーンとガゼルと言う単語の直後、南雲と涼野がほとんど同時に振り返った。二人とも、目が大きく見開かれ、顔から血の気が失せている。

「二人ともどうしたの?」

南雲と涼野の異変を察知した蓮は、ベッドから身を乗り出しながら、心配そうに尋ねる。

「いや。何でもない」

涼野はこれ以上聞かないでくれと言うように、蓮から視線を逸らした。蓮は、悲しげに目を伏せ、黙って頷く。

「な、なあ。蓮」

その時、南雲に呼び掛けられ、蓮は顔を上げる。南雲は躊躇うようにキョロキョロしていたが、しっかりと蓮を見据えた。

「お前は、バーンとガゼルをどう思う……?」

南雲にしては珍しく、遠慮がちに聞いた。この二人がバーンとガゼルを知っているような口振りであることに気づいたが、蓮はそのことは一旦忘れ、聞かれた質問に淡々と答える。

「今回の一件は、二人の私怨でその二人は関係なそうだし。わからないよ。レアンとクララの口振りから察するにさ、彼らってキャプテンだと思うんだ。でも、僕は、彼らに危害を加えた覚えがない。会ったこともないのに、僕が傷つけているってどういうことなのかな」

蓮の意見を聞いた二人は安堵と罪悪感が混じったような顔で、互いを見やる。
二人だけの問題かもしれない。けれども、部外者であるのは苦しかった。居心地の悪さから、蓮は、二人に背中を向けるようにベッドに横になる。

「……キミは、二人を許せるか」

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.446 )
日時: 2011/07/03 19:38
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: aQf5AfGs)
参照: アンケートだべ!

さっき上に書いた番外編の話をちょっぴり…ま、どうせ七夕近いから、しずくのやつ番外で自分の祈りを赤裸々に書く気だろ?と大半のかたが思ったと思いますが、半分正解ですww七夕近いし、短編集の方に七夕の短編を書こうかと思ってます←季節ネタ大好きだよ。で、8500突破もかねてアンケートにしたいと思います^^七夕事態はもうすぐで、しずくはストライカーズ買えないとか悲しい日ですが、旧暦の七夕に合わせようかと。←つまりは、8月7日アップの予定です。アンケート来るかな…。

*アンケートなんですね* もう想像力豊かなあなたは、お気づきだと思いますが、やはり蓮関連です。

1—相手はズバリ誰?
①イナズマジャパン!みんなでわいわいやるんだべさ〜。

②この試練の戦い定番、ファイアードラゴン。スリートップとキャプテンが巻き起こす珍騒動?

③ファイアードラゴンですが、アフロディを排除。晴矢と風介、蓮だけで過ごしてみる。幼馴染み同士、本音を暴露しあうとか?幼少海藻のっと、幼少回想もあるよ。

④久遠監督と過ごしてみる。←俺得ww

⑤イナズマジャパンですが、海外組を招いてみる。常識はずれな七夕が幕を開けます?

番号【】
よければ理由も【】

2—出来れば、その七夕に期待する話とか、あの子とお風呂でどき☆みたいな出会いがほしいとか……要望を書いてくださると嬉しいです
【】

*ありがとうございます*
後で、作者もやろう。
ちなみに次回いこう、やっと帝国に行けそうorz

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.447 )
日時: 2011/07/03 20:49
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 6B38yoz9)

1—相手はズバリ誰?

番号【③】
よければ理由も【④の誘惑にも負けそうだったのですが、幼馴染の三人でのんびりと過ごして頂けたらとw】

2—出来れば、その七夕に期待する話とか、あの子とお風呂でどき☆みたいな出会いがほしいとか……要望を書いてくださると嬉しいです
【おひさま園の七夕思い出話も三人にしてもらいたい……とか在り来たりですね、わかります】

お久しぶりです^^ 最近、お忙しいようなので心配していましたが……
れっ蓮くん大丈夫ですか!? と思ったら晴矢、風介、結構大変な事態に陥ってますね……続きがものすごく気になります><
参照8500突破おめでとうございます。もう流石ですとしか言いようがないですっ^^*

アンケート一番乗りかなーとか思いながら書き込んでましたw
季節ネタ楽しいですよね!というかしずくさんのアンケート読むまでもうすぐ七夕だということを忘れてた自分爆← ストライカーズ、めちゃくちゃ欲しいです。でも親の目が冷たいよどうしましょう!( そう言えばストライカーズの公式サイト、すっごいですねw個人的には円堂のお嫁さんが一番気になるのですが、一番遠い目標になってるし……哀しいです;

あ、なんか語りすぎてますね……でも気にしない!(
ではでは、お邪魔しました;

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.448 )
日時: 2011/07/04 09:35
名前: ふぁいん (ID: 907dJaBJ)

番号【③!】
よければ理由も【やっぱりこの三人で決まりでしょう!蓮君たち大好きです!】

2—出来れば、その七夕に期待する話とか、あの子とお風呂でどき☆みたいな出会いがほしいとか……要望を書いてくださると嬉しいです
【やはり幼少回想!特に蓮君は、前の短編の言葉があるのでチョー期待です。】

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.449 )
日時: 2011/07/04 16:52
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: PODBTIS5)
参照: 最近乙女ゲームに近づきつつある私。

>>桃李さん
お久しぶりです!向こうにも書きましたがコンサートと書いていやああああと読む奴のせいで中々来れませんでしたorz8500は桃李さんやみなさまのおかげですっ。私が無駄にクリックした回数も多数含まれていると思われます←
あ、もう季節ネタ大好きですw王道大好きですもんw私も昨日友達がもうすぐ七夕だねーと呟くのを聞くまでは忘れていました。で、聞いて季節ネタは必ず書かなきゃいけないと思っていた私は俄然やる気になっていたり←
アンケート有難うございます^^やはり幼馴染コンビで来られたか!④に惹かれるとはまさか同士ですか!?友達には即否定されたのですが、こちらも面白いような気がしちゃうんですよね。大介さんと過ごすのも悪くない。サッカーについて永遠と語りあって終わる七夕。もはや七夕の域を超えてます。
在り来たりでも嬉しいですよ!お日様園時代の七夕話書…王道ですが子供らしい恥ずかしい思い出とか、三人でどう過ごしたとか。妄想がひっきりなしに膨らみますどうしましょう。
ところで桃李さんはお願いはどうしますか?私は多分3つくらい書きますかね〜もっと文章を上手くなりたいと部屋のTV地デジにしてとかテスト・・・ぐすんとか。いつもありがとうございます^^

>>ふぁいんさん
アンケートテンクスです^^
やっぱり幼馴染は大人気ですね。最近蓮に関する妄想って、ガゼバンしかできないんですけどどうすればいいですか←
うーん。七夕で書いたお願いに恥ずかしいものを蓮に書かせればいいんですね〜今からとっても楽しみですw

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.450 )
日時: 2011/07/05 14:08
名前: 夢歌 ◆a5QxxPCyHs (ID: PODBTIS5)

番号【③】
よければ理由も【この三人で萌え死にしたいww】

2—出来れば、その七夕に期待する話とか、あの子とお風呂でどき☆みたいな出会いがほしいとか……要望を書いてくださると嬉しいです
【】

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.451 )
日時: 2011/07/05 19:13
名前: 星沙 ◆RkKLSqUPDc (ID: IsQerC0t)
参照: あぁ〜。期末でヤバス((

番号【3】
よければ理由も【排除しましょうk(
たまには排除して3人で語り合うのもいいですよね〜きっと】

2—出来れば、その七夕に期待する話とか、あの子とお風呂でどき☆みたいな出会いがほしいとか……要望を書いてくださると嬉しいです
【特に要望がないというwww】

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.452 )
日時: 2011/08/29 23:44
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: WV0XJvB9)
参照: コメント返しは合宿後に

「「蓮!」」
二人ぶんの名前を呼ぶ声と共に、ドアが乱雑に開かれれ、南雲と涼野が蓮の部屋に入ってきました。二人とも目がつり上げて、蓮を睨んでいてなんだか怖い。……ですが、蓮は中でまさかのお着替え途中。ベッドの上にはパジャマが上下畳まれ、上半身はすっぽんぽん。体が細くて筋肉がむだなくついてるとか描写はめんどいんでパス。こら、そこ数行前の描写読んで興奮しない。
蓮は、片手にファドラの赤いシャツを握り締めたままの体勢で硬直しています。南雲と涼野も固まりました。微妙な沈黙が三人の間に流れます。やがて蓮は、二人とまともに目があった瞬間、湯沸し器のごとく顔を真っ赤にして、

「ノックくらいしろ!」

怒りに任せ、身近にあったジャージの上と枕を南雲と涼野に投げ付けます。人に枕とジャージは投げてはいけません。涼野は素早くしゃがみました。涼野の頭上をまず枕、ややあってジャージが通りすぎて、ちょうど涼野の真後ろに立っていた南雲に襲い掛かりました。まず南雲は先にとんできたジャージに顔を覆われ、続いて枕が彼の顔面にクリーヒット。ごうと声にならない悲鳴が上がり、はらりとジャージが剥がされます。枕もジャージも、そのまま南雲の足元に落っこちました。ですが南雲は、ぼうっとしません。目を吊り上げるとすぐさま反撃にでます。
「蓮、何しやがる!?」
足元に落ちていた枕をお返しと言わんばかりに、蓮に向かって投げます。が、俊敏性が売りな蓮にはあっさりとかわされてしまいました。南雲は、舌をならし、蓮は交わして、あたまからすっぽりと赤いシャツを被りました。着替える間は結構あった気がしますが、それはそれ。
「もう、朝から何の騒ぎ?」蓮は、むすっとしながら南雲と涼野を見て問いかけます。朝から騒ぎを起こされるのには慣れっこなので、いつも通りの対応と言えるでしょう。慣れるって怖いね。
その言葉に、二人は思い出したように「あ」と声を出して、蓮に詰め寄るのです。そして、おもむろに南雲に腕を掴まれ、
「いいから来い!」
「はーなーせー!」
反論することも許されないまま、かなり強い力で部屋から引きずり出されたのでした。
*
南雲が蓮を解放したのは、食堂の窓際でした。そこには、一本の笹が立て掛けてあります。カラフルな短冊が緑のなかに彩りを作り出しています。笹は、アフロディがAmazo○で購入した模造品ですが、実によく出来てます。茎の色や細かい笹の葉が本物そっくりに再現されていますね。ちなみに短冊は、ファドラの皆さま方が書いたものですよ。「今年は日本式にした方が美しいと思わないかい?」と、やっぱりアフロディが提案して、みなさんで短冊を書くことになったんです。ちなみに笹に短冊飾る文化は日本独自のものだそう。間違っていたらごめんなさい。
「蓮、これはどういうことだよ!?」
お怒りの南雲は、笹の下の方に飾られていた一枚の短冊をビシッと指差します。蓮は、首をかしげながらその短冊を手ですくうように持ち上げて、読み上げました。
「えー『馬鹿な晴矢と風介に、サッカーで勝てますように 白鳥 蓮』って、えぇ!?」
書いた覚えのない短冊に、蓮は絶叫。明らかに他人の字で願い事と名前が書いてあります。蓮は爪があまいじゃなくて詰めがあまい犯人に笑いかけます。自分ならわからないようにパソコンで打つか、脅迫文みたいに新聞の文字を切り抜くと考えましたがみなさんは真似をしないように。
蓮の頭が回り始めます。頭の中では、情報が忙しく駆け巡ってます。短冊の綺麗な字体には、見覚えがありましぞ……と頭の引き出しを片っ端から開けていく漣じゃなくて蓮。南雲と涼野が「馬鹿とはどういうことだ」と詰問しても、全く聞こえていない様子。ものすごい集中力です。しばらくすると、蓮は手を伸ばし、一枚の短冊を笹から外しました。そこには、似たような字で『ボクがさらに美しくなりますように』と書いてあります。名前は書いていませんが、こんなことを書く奴はファドラに一人しかいません。一人いれば十分です。
「アフロディったら、またイタズラして……」
蓮は、実にいい笑顔で優しく呟きました。優しい声ですが、顔には血管が浮かび上がっていますし、アフロディの短冊をくしゃっと握り潰してます。と、そんなことを全く知らない南雲と涼野が蓮に近付きます。

「蓮、オレに喧嘩を売るとはいい度胸だな。龍に食われる覚悟はできているか?」

「蓮、見損なったぞ。凍てつく龍の瞳に脅えるがいい」

蓮が振り向いた瞬間、彼らが頭を下げたのはゆうまでもありません。後、アフロディが翌日粛正されたのはまた別の話。蓮がファドラ内で、『微笑みが最も龍に近い男』と呼ばれるだけはあります。

「あのねえ、短冊ちゃんと見てよ! 僕の字じゃないでしょ」

それから蓮は、握り潰してぐちゃぐちゃになった短冊と、問題の短冊を二人に差し出して一生懸命に説明。南雲と涼野は、怪訝な顔付きで両方を見比べていましたが、やがて納得したらしく、

「これは私たちを陥れようとした罠だったのか」

普通気付くよね。と蓮は、内心で思いましたが言いませんでした。

「……だよな。アンタの字にしちゃ綺麗すぎると思ったぜ」

と南雲の皮肉混じりの言葉を、

「晴矢より雑じゃないもん」
嫌みで返す蓮。当然短気な南雲は、食って掛かってきます。

「あんだと!?」
「だって事実じゃないか」
「言ったな蓮」
「ああ、言いましたけど何か?」
「落ち着け、二人とも。それでは、アフロディの思う壺だぞ」
低レベルな争いが繰り広げられそうになるところを、涼野がなだめます。獣レベルのいがみ合いです。二人は、黙ってにらみあいますが、渋々と言った感じに喧嘩をやめました。南雲と涼野の喧嘩も、蓮と南雲の喧嘩もあまりレベルが変わらないのは、仲良しな証拠でしょう。
ここで、そういえばと南雲が呟きました。
〜つづく〜
ひさひざ更新ですwしずくは明日から群馬で修行してきます!多分二日ほど音沙汰なくなりますが、生きてますよ←
群馬から更新できたとしても、短編が限界な気がします。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.453 )
日時: 2012/01/04 18:40
名前: fainn (ID: 9kyB.qC3)

上げます・

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.454 )
日時: 2012/05/16 19:37
名前: sizku ◆UaO7kZlnMA (ID: 9kyB.qC3)

保管のため上げです><

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.455 )
日時: 2012/07/15 22:51
名前: あいん (ID: 9kyB.qC3)

あげ。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.456 )
日時: 2013/01/04 23:04
名前: しずく (ID: 9kyB.qC3)

そろそろ再開予定のためあげ;;

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.457 )
日時: 2014/02/14 23:31
名前: しずく ◆CD1Pckq.U2 (ID: ErSo6VVm)

皆様、二年ぶり…かな?しずくです。
まず謝罪から。二年近く小説の更新を放置してしまい申し訳ありませんでした。
しかし、最近またイナズマ熱が再燃致しまして、この小説を再開させることにしました。
ただいま映像版でこの小説の世界版を書いているのでその小説と平行する形になりますが、蓮とバンガゼの話をきちんと終わらせたいと思います。よろしければ、またお願い致します。

2014 2 14 しずく

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.458 )
日時: 2014/02/16 16:36
名前: しずく (ID: Qz56zXDk)

この小説ですが、二次小説の映像版にお引っ越し致します。
しばらくは移転作業のためこのスレの丸々コピーになりますが、それが終わり次第続きを書いていきます。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.459 )
日時: 2014/07/07 15:26
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 9kyB.qC3)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=26160

 おそばせながらコピー完了しました。
 上から現在のスレへ飛べますので、来てくださるとうれしいです。