二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.404 )
日時: 2011/04/18 19:28
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 2.TlWg7X)
参照: もうすぐ終わり。

 急に耳を両手で覆い、床に屈んでしまった蓮。聞きたくない言葉でもあるかのか、両耳を外部から遮断している。その顔には怯えと悲しみが窺える。雑多な感情が、苦悶の表情となって表れていた。助けを求めるがごとく全身が微かに震えている。アフロディたちは呆心配そうな顔つきで蓮を眺めていたが、

「……蓮」

 見かねたアフロディが、控えめに蓮の名前を呼ぶ。しかし、反応はない。
 変わらず耳を両手で塞ぎながら、水を入れすぎたコップから水が零れるように、震えた声で言葉をポツポツと発していた。

「……ねえ父さん、母さん。僕は生きていて、本当に良かったのかな? ——人間は結局ひとりぼっちなんだ。……僕の周りには、誰もいないよ」

 その言葉を聞いたアフロディたちは、悲しげな顔付きで互いを見やる。それは数秒間のことで、すぐに何かしらの行動を起こそうと言う表情に。確認するようにしっかりと頷き合うと、まず涼野が立ち上がり、蓮のもとに歩み寄る。そして、次に南雲、アフロディが涼野を真似、三人で蓮を囲んだ。蓮は変わらず屈んだままである。

 三人は目で合図し合うと、南雲と涼野は、一斉に蓮へと手を伸ばした。涼野は蓮の左肩、南雲は右肩に、それぞれ手をそっと置く。すると蓮は両手を耳から離し、弾かれたように顔をあげた。不安気に南雲と涼野の顔を交互に眺めた。
 二人の表情は柔らかかった。試合時には、まず見られない優しい面持ちだ。

 優しい二人の顔にぼうっとする蓮の前に、アフロディが前のめりになりながら、立った。穏和な笑みを口元に浮かべていた。南雲と涼野は蓮の肩を掴んだまま、アフロディはしっかり蓮に視線を据えたまま、

「蓮、生まれてきてくれてありがとう」

 三人は、声を揃えて、しっかりした声音で蓮に思いを伝えた。
 『誕生日おめでとう』と言う単語を予測し、身体を震わせていた蓮は、予想外の言葉にぼうっとするしかなかった。
 何と言われたのか、宇宙語で話しかけられたように、単語の意味をつかめない。言葉は耳に届いても、脳は理解しようとしない。ただ、胸の辺りだけは辛うじて『暖かい』と感じられる。
 呆然とする蓮の前に三人が並び、一番左にいる南雲が照れくさそうに人差し指で頬をかきながら、蓮から視線を逸らしながら、

「えーっと……まあ、今日生まれてきたから、オレたち仲良くなれたわけだろ? ありがとな、生まれてきてくれて。……だから、間違って生まれてきたなんて絶対に言うな。お前がいないと、風介やオレが困るんだよ」

 ぶっきらぼうながらも、つっかえつっかえに言いながらも、南雲は力強い口調で蓮に語りかけた。最後だけは蓮をしっかり見据え、

「……『僕なんて生まれてこなければよかった』と、もう一度言ってみろ。そんなことを言ったら、オレがお前を殴って、蓮には、生まれたことを喜んでいる
大切な”親友”がいるってことをわからせてやる」

 南雲は荒い口調ながらも、蓮のことを大切に思っていると言っているのだ。
 蓮は瞠目し、せわしく瞬きをしながら南雲を見つめていた。その顔には驚きだけが表れている。だが南雲の言葉の意味に気づくと、ゆっくりとはにかんだ。

 ただ嬉しいという感情が込み上げてきた。独りじゃないと痛快な思い。晴矢の優しさが胸にしみるようだった。相変わらず不器用な表現が晴矢らしいなぁと、心の中で小さく笑った。
 南雲の方に顔を向け、礼を述べるように目を細める。黒い瞳が潤み始めた。
 そんな中、今度は南雲の隣に並ぶ涼野が、柔らかい笑みを浮かべながら、口を開く。

「まずは礼を言おうではないか。蓮、生まれてきてくれてありがとう」

 蓮は潤んだ瞳をそのまま涼野に向け、人差し指で濡れた瞳を拭う。不思議そうな面持ちで涼野の言葉を待った。涼野は睨むような目付きで、蓮を見た。少し怒った声で、

「キミは、私や晴矢と出会ったことを間違っていたと思うか?」

 その質問で蓮は涼野がどうして憤っているかを察した。
 晴矢に風介、アフロディ。大切に思ってくれる人間がどんなに少なくとも三人もいるのに。自分勝手に孤独だと嘆き、自暴自棄に生まれてきてよかったのかと泣いて。そのことに腹をたてている——いや、気付かせるために芝居をうったのだろう。口にこそ出さないが、青緑の瞳は「私はキミと出会えてよかった」と訴えかけてくる。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.405 )
日時: 2011/04/18 19:26
名前: 携帯しず ◆UaO7kZlnMA (ID: 2.TlWg7X)
参照: コメント返し出来なくてすみませんorzどうすれば読めるのでしょう

 蓮は、素直に首を振って、穏やかに微笑んだ。

「ううん。最高の親友たちとの出会いを、間違ったなんて思ったことはないよ」

 アフロディを親友と呼べるかは微妙だが、彼も大切な友人である。晴矢、風介と同列の扱いをしたと思って、蓮は否定した。——いや、扱いの差なんてない。出会いも付き合った時間が短くても。今、楽しく付き合えるアフロディも親友だと考えるから。第一ランク付けは蓮の嫌いなことだ。
 それを聞いた涼野は満足そうに視線を柔らかくし、南雲は恥ずかしそうに腕を組んで、しきりに髪を弄った。アフロディは静かに口元に笑みを浮かべていた。目を凝らすと、頬がうっすらとだが朱に染まっている。

「ならば間違っていたと言うな。生まれたことを否定することは、”私たち”との出会いを拒絶することだ」

 涼野が珍しく手厳しい台詞を浴びせ、蓮は反省するようにしゅんとなった。そしてアフロディが追記する。

「ボクたち、キミが日を重ねるごとに落ち込んでいくのを見ていてつらかったんだよ。だから、ボクの思いを伝えよう。蓮、生まれてきてくれてありがとう」

 蓮は、改めて三人の顔を見渡した。三人とも、祝福する笑みを顔に作っている。純粋に誕生日を祝ってくれているのだ。

 三人の言葉が木霊みたいに頭のなかで何度も再現され、全身が熱くなる。暗い気持ちは吹き飛び、喜びと例えようのない幸福感が胸の奥底から突き上げてくる。何も考えられない程に。心臓はいつもよりも早く脈打ち、息も荒くなっている。

「……あれ」

 蓮は手の甲に冷たさを感じ、視線を落とした。手の甲が濡れている。反対側も同じだ。生暖かい液体が頬を伝い、手の甲に冷たくなって落ちていく。

 蓮は、泣いていた。嗚咽を漏らすこともしゃくりあげることもなく。ただ、ただ涙を手の甲に降らせていた。アフロディが「泣きたいなら思いっきり泣けばいい」と優しく声をかけ、蓮は引き寄せられるようにアフロディのベッドにうつ伏せで倒れこんだ。刹那、小さな泣き声が漏れた。それはだんだん大きくなり、とうとう全身まで震え始めた。堰を切ったように声を出して、蓮は鳴き始めた。

 今まで誕生日のたびに嘘をついて誤魔化した気持ちが爆発した。祝われて、普通に楽しく過ごしたいと言う思い。自分だけ生き残ったことを、果てには生まれたこと時代罪だと思っていた。けれど、違った。
 生まれたことを喜んでくれる仲間が、こんな手の届く場所にいたのだ。ありがとうと祝福し、こんな自分でも仲良くしてくれる親友たちが。
 考えると、誰にでもいいから認めてほしかった。こんな僕でも、生まれてきてよかったと。その欲しかったものがこんなにも近くに。

——仲間たちの暖かい言葉が全身の細胞一つ一つに行き渡り、身体が熱を帯びてくる。呼気も生温い。このまま天に召されてしまいそうなぬくもりの中、蓮はひたすら泣きじゃくった。大切なぬくもりに感謝しながら。
〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.406 )
日時: 2011/04/18 19:22
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 2.TlWg7X)
参照: 追記のお知らせ

 泣きじゃくり震える蓮の背中を、アフロディたちは無言で見つめていた。泣く蓮は、ひどく幼く見える。その幼さが逆に切なかった。すぐに消えてしまいそうな儚さがかいまみえたからだ。
 涙は、蓮が堪えてきた思いそのものだろう。生き残った罪悪感を避けるように誕生日から逃げ、ずっと生まれてきてごめんなさいと、毎年悩み続けてきたことを窺わせる。だが、生まれたことを祝福され、ようやく罪の意識から解放されたのだ。
 泣いて、心を浄化しているのだとアフロディは思った。なら、準備をしなければならない。

「南雲、涼野」

 思い立ったアフロディは、声を潜めて南雲と涼野に呼びかける。二人が振り向くと、

「これから準備だ」

 短い指令にもかかわらず、南雲と涼野は頷いた。アフロディも頷き返すと、踵を返し、髪を揺らしながら部屋から出ていった。扉は開け放たれたままになっている。

 残された南雲と涼野は、ベッドに近づいた。涼野はベッドの縁に座ると、身を乗りだし、震えている蓮の肩をそっと掴んだ。肩がびくっと持ち上がる。
 蓮が頭だけを動かして、涼野を見た。もう泣き止んでいるが、顔には涙が伝った後。鼻をすすり、人差し指で涙を拭っている。瞳には、悲しみのカケラがまだ残っている。

「……風介、晴矢」

 蓮は涙声で二人の名前を呼ぶと、ゆっくり身体を起こした。涼野が手を離すと、ベッドの上に体育座りになる。

「ありがとう」

 懸命に笑顔を作り、蓮は南雲と涼野に礼をいった。穏やかな陽射しのような、夜を照らす冴えた月の光のような笑み。
 久々に見た蓮の明るい笑みに南雲と涼野は、つられて目元を緩くした。

「本当のことを言うと、僕もみんなみたいに。普通に誕生日を祝われたかった」

 自虐的な光を瞳に宿しながら、蓮は二人に今まで溜めてきた思いを吐き出す。悲しげな声音だった。
 南雲と涼野はいつになく真剣な表現で話を聞き、続きを待っている。蓮は、しっかり二人を見据えると、

「生まれてきたこと、今日初めて誇りに思えた。祝われてもいいんだって、そう思えた」

 はっきりと断言した。それから少しもじもじと尻込みするように下を向いたが、すぐに顔をあげる。緊張した面持ちで、何かと構える南雲と涼野に向かって、

「こ、こんな圧倒的な仲間に囲まれて、僕は生まれてよかったと思う!」

 回らない口を無理に動かしたせいで、なんともたどたどしい口調になった。しかも、言おうとした単語と異なる単語が出てきた。しまったとは思ったが、もう遅い。南雲と涼野が、あんぐりと口を開けている。
 言ってから、蓮はひどい後悔の情に駆られた。圧倒的ってなんだ。素敵がどうやったら圧倒的になるんだ。

「……圧倒的じゃなくて、素敵だよ。間違えた」

 自分を責めながら、蓮は弱々しい声で訂正する。南雲はからかう笑みを浮かべて蓮を眺め、涼野は仕方がないと言わんばかりに腕を組む。むなしい訂正だった。さらに追い討ちをかけるように、

「こういう大事な場面で、言い間違えるなんてお前らしいな」

 南雲のからかいの一言。蓮はむっとし、南雲に噛みついた。南雲が楽しそうににやつき後ろに下がる。蓮は頬を膨らましながらじりじりと南雲に詰め寄る。

「な、なんだと晴矢! 僕だって、一生懸命に言ったのに!」

 そこへ涼野が二人の間に割り込み、涼野は蓮をなだめる。

「大丈夫だ、蓮。キミの言いたいことはわかった。私たちもキミと、こうしていられることを嬉しく思う」

「そ、そうかな」

 素直な蓮は足を止め、照れ笑いをした。南雲は涼野の後ろから顔をだし、しげしげと蓮の顔を見つめる。

「なあに、晴矢」

 南雲の視線に気がついた蓮は、不機嫌そうな声をだし、南雲を見た。

「やっと、いつもの蓮になったな。ったく、お前がへこんでいると、いじりがいがなくて退屈だったぜ」

 楽しそうに笑いながら南雲がそんなことを言って、蓮は小さく笑い声をたてる。南雲が、怪訝な顔つきになった。

「あんだよ」

「心配してくれてたんだ」

「ふん。蓮が元気ないと、オレまで調子が狂って困るんだよ。迷惑だからへこむなよ」

 困るや迷惑だと刺々しい単語を並べるわりに、南雲なちっとも困った顔をしていない。むしろ、励ますような顔。また意地張ってる。素直でない南雲を面白く感じた蓮は、控えめに笑うと、

「は〜い!」

 素直な子供じみた元気な声で返事した。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.407 )
日時: 2011/04/18 15:03
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 2.TlWg7X)
参照: 最後にgdgd解説来ます。

「ただいま」

 そこへ、アフロディが戻ってきた。少し大きめな白い箱を両手でしっかりと抱えている。南雲たちを避けるようにしてテーブルの前に動くと、箱をテーブルの上に置いた。
 南雲と涼野はすぐさまテーブルを取り囲んで足を崩し、箱の蓋を開けようとした。だが、アフロディが箱をかっさらう。南雲と涼野は、アフロディを睨んだ。蓮は、苦笑いを浮かべて、事態の行方を見守っている。

「早く食わせろ」

「そうだ。けちだぞ」

 南雲と涼野が抗議すると、アフロディはわざとらしく大きなため息をついて正座した。箱を机に置きながら、

「南雲、涼野。今日の主役は誰かわかっているかい?」

 蓮に視線を向けた。南雲と涼野も誘われるように蓮に顔を向ける。あ、と同時に声を漏らした。途端、南雲と涼野は笑みを作り、蓮を手招きする。早く箱の中のものを食べたいようだ。非情に単純でわかりやすい連中である。

 蓮はテーブルの前に、南雲と涼野の間に座ると、向かいのアフロディが箱を開けて、と目で合図を送ってくる。南雲と涼野に至っては、テーブルから身を乗りだし、そわそわしながら箱が開かれるのを待っている。蓮が箱を開けないのがじれったいらしく、急かすような視線を投げ掛けてくる。

 蓮は幼馴染みの要望に応え、白い箱をそっと開けた。中には、生クリームのデコレーションケーキが鎮座していた。上にはブルーベリーやメロン、さくらんぼが散らされ、イチゴジャムがたっぷりとかけられている。デパートにありそうな高級なケーキだと思って、蓋を見ると、韓国でも名を馳せる有名なケーキ屋の名前。

「うわぁ、おいしそう」

 蓮は喜びと驚愕が混じった声をあげた。すると、アフロディが微笑みながら、

「ボクたち三人でお金を出しあって買ったんだよ」

「ま、他ならぬ蓮の誕生日だからな。けっこー奮発しちまったぜ」

 南雲が得意気に胸を張りながら、

「キミが以前、食べたがっていたからな」

 涼野はクールな口調で教えてくれた。

 そういえば、以前この店のケーキを食べたいと三人と会話したことがあるが、覚えているとは思わなかった。それだけ気にしていてくれたかと考えると、顔が火照る。頬を赤くしながら、相好を崩していた。
 それをアフロディが蓮が照れていることをめざとく発見し、愉快そうに指摘する。

「照れているね。可愛いよ、蓮」

「相変わらず可愛いとか余計な一言が多い」

 蓮は文句を言いながら、蓋をテーブルの脇にどかした。それからぽつりと、

「誕生日ってさ」

 呟いて、囁く調子で続ける。

「”絆”を確認する日だなって思えた。誰かが僕の側にいるんだあって思える、とても大切な日」

 アフロディたちは微笑んで聞いていたが、三人で顔をあわせると息を吸った。

「蓮、お誕生日おめでとう」

 三人が声を揃えて蓮を祝福し、蓮は心臓をくすぐられたような快感を覚えた。
 祝われることは、こんなにも嬉しいことなんだ。普通の人から見たら当たり前のことなのに、何故だか楽しくて仕方なかった。
 今まで嫌だ嫌だと避けてきたものは、こんなに素晴らしいことだったのだ。今日こうして生まれたことを認めてくれる仲間に出会え、その事に気づけた。

 ”初めて”の言葉は、今まで感じたことがないぬくもりに満ちていた。細胞に染み渡るような優しい響き。胸に感謝の念を起こさせる力。言葉の力を感じさせる。昔の日本人は言霊とやらを信仰していたが、あながち嘘ではないと考えさせられる。
 こんなにも素晴らしい言葉に釣り合う言葉は何だろう。蓮は、すぐに答えを見つけた。

「みんな、ありがとう!」

とびっきりの笑顔と、とびっきりの感謝の気持ち。

〜終わり〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.408 )
日時: 2011/04/18 00:03
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: wUEUf8c.)
参照: 解説ではない解説。しずくのぶっちゃけコーナー

解説は混沌と共に〜要はしずくのぶっちゃけ会〜
▼イナズマジャパン編
初めて書いたイナズマジャパン&蓮の短編です。書きたいままに書いたギャグ全開のカオス文ww
内容よみなおすとぶっとんでます、我ながら。睡眠薬とペンギンは失笑もんです。うん、蓮の誕生日と言う皮を被ったペンギン小説ですね、わかります。パロディも楽しかったですね。いくつか挙げるとACのあれとか、イカ娘とか。
虎丸とか飛鷹いなかったけ虎丸は名前だしたからいいよね←
読んでわかると思いますが、ペンギン着ぐるみ鬼道さんと不動と佐久間を書きたかったんです!構想を練っているときに、友達がガチャ●ンの着ぐるみパジャマを纏っていた(中二の合宿時)のを思いだし、じゃあペンギン。鬼道さんに似合うとおもい来ていただきました!不動と佐久間は巻き込まれて頂きました。画力ないので脳内イメージどまりですが、このシーン大好きです。マイブーム。え、蓮の誕生日はどうしたって?あ。誕生日〈ペンギンの作者でした。今、思うと春奈にもペンギン似合う気g。
春奈と言えば春奈を大分暴走させました。睡眠薬はきっと某探偵漫画のせいです。用法と用量と用紙は間違えないようにしましょう。約束です!(何がww)

▼ファイアードラゴン編 やっぱりしずくさんはファドラが好きなようです。長すぎました、ごめんなさい。エピソードを入れすぎましたorzシリアスが最後にほのぼの。

エキサイト先生に頼み込み、何とか翻訳していただいたタイトル。ですが、さすがエキサイト先生。訳した英語を和訳すると、初めの日本語と違うってどういうことですか?
初めに入れた日本語は、確か「闇はそして光へ」。蓮の心の変化をタイトルにし、そのまま格好よく英語にしちゃえと軽い気持ちでエキサイト先生にお願いしてあの有り様です。
こっちはイナズマジャパンの和気あいあいとは一転、いえ。間反対の物語にしました。感動的に仕上げようと試みました。少しでもうるっと来たら、しずくとして嬉しいことはありません。

こっちのテーマは「誕生日って何か」です。当たり前のように祝われる私達。しかし、それは何故か。なんて、生意気にも一端の哲学者になりきったわけですね^^;私なりの解釈は書きましたが、みなさんはどう思われますか?蓮にとってのアフロディたちのような仲間は、みなさまに必ずいると思います。かくいう私も誕生日には友人に感謝してばかりです。親を見れば、先祖の力を感じたり。

ちなみに変わった「生まれてきてくれてありがとう」のセリフ。当初、ガゼバンの短編で書こうとしたセリフから来ています。もっと源流を辿れば、ひぐらしのセリフ。太宰先生の小説ですね。
言ったのはバーンで、言われる側はガゼルの予定でした。書き上げてはいましたが、いかんせん。B●になりかねないので却下。話の骨格はこのファドラ短編と同じなので、大体なストーリーは似ています。

みなさまはイナズマジャパン編とファイアードラゴン編。どちらがお好みか気になるところです。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.409 )
日時: 2011/04/19 14:42
名前: ふぁいん (ID: FtPJcOXY)

感動しました!がちで泣きました!アフロディたちの優しさと蓮君の悲しみの表現が上手かったです!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.410 )
日時: 2011/04/19 14:43
名前: ふぁいん (ID: FtPJcOXY)

感動しました!がちで泣きました!アフロディたちの優しさ。蓮君の悲しみの表現が上手かったです!震える描写読んで、抱き締めてあげたくなりました。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.411 )
日時: 2011/04/23 18:37
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: PODBTIS5)
参照: クララとレアンの暴言パラダイス①——無意識の加害者

「だ、誰だ!?」

 冷気を吹き飛ばすように円堂が叫んだ。
 その声に反応するように吹き付けてくる冷気は収まった。しかし、肌をぞくぞくと撫でていく気味の悪い寒さはまだ肌に残っている。それは冷”気”でも、人が放つ”気”のように蓮には思えた。中にいる人間は普通の人間ないことだけは何となく感じ取っていた。
 
 蓮たちは顔をこわばらせながら、扉を乱暴に蹴破り、中に突入する。砂っぽい乾いた空気が喉を直撃し、蓮は咳き込んだ。風丸に背中を擦って介抱され、口を開けたまま立っている鬼道と円堂と同じ方向を見た。

 何もない灰色の床を、明り取りの窓から差し込む日差しが、照らしていた。光の中にほこりが舞っている。だが日差しは別のものを、倉庫の奥に浮かび上がらせていた。それは秋や夏未とさほど変わらない少女たちの影。

 一人は、以前バーンが纏っていたユニフォームをまとう少女。小さな胸のふくらみと細い腰が可愛らしい。背丈は秋ほどか。オレンジの髪をショートカットにしているが、前髪はカールを描くように渦を巻いていて、かなり独特のヘアスタイルだ。可愛い身体な半面、青い切れ長の瞳は吊り上っていて、きつそうな印象を与える。

 もう一人はオレンジの少女よりほんの少し背が低い少女。かなり小柄で、木暮と同じ背丈に見える。濃い青い髪をボブカットにし、もみあげを黄色い髪留めで止めていた。垂れ気味な黒い目に小さな桜色の唇が人形のよう。顔付きは固く、与える印象は冷たい。
 二人の少女は蓮たちと目が合うと、待っていたといわんばかりに口を歪めた。蓮たちは緊張のあまり生唾を飲み込む。静かなせいで、その音がはっきりと自分たちの耳に届いた。

「初めまして、かしら。あたしはエイリア学園マスターランクチーム、<プロミネンス>の一員、レアンよ」

「わたしは、同じくエイリア学園マスターランクチーム<ダイヤモンドダスト>の一員、クララ」

 オレンジの髪の少女——レアンと、青い髪の少女——クララは、淡々と自己紹介をする。
 『イプシロン』に続く新たなエイリア学園チームの登場に、蓮たちは驚きを隠せなかった。そういえば彼らはエイリア学園のチームだと名乗っているが、リーダーや他のメンバーが見当たらないのは何故かと蓮は思ったが、その疑問はすぐに消えた。驚愕の面持ちになりながらも、同時に緊張の面持ちも浮かべ、身構える。

「エイリア学園、オレたちに何のようだ! 木暮を返せ!」

 円堂が怒鳴ると、レアンとクララは目を伏せて静かに笑う。蓮は、背筋を寒さが駆け抜けた気がした。
 
「そうね。返してあげてもいいわ」

「なんだって?」

 予想外の言葉に円堂は聞き返すように言葉を漏らす。するとクララは、視線を横に動かし、黒い瞳で見据える。レアンもまた、同じ人物に目を向ける。——風丸の横にいる蓮に。

「あなたが、今すぐ雷門中サッカー部から去るのなら、ね」

 落ち着いた声音で、クララはしっかりと蓮の瞳に視線を合わせながら言った。目つきこそ凪のように穏やかであるものの、視線自体は刺々しいものだった。目が合った瞬間に初めて感じ取れる、地雷のようなものだ。憎悪や怒りがこもった視線に蓮はたじろぎそうになるが、負けじとレアンとクララを睨み返す。
 
「何を言っているんだ」

 蓮の低い声に、レアンとクララは蓮に向ける視線をますます厳しくした。蓮も目つきを鋭くする。蓮とレアン、クララの間には見えない空気がぴんと張り詰め、他のものが近づくことを拒んでいた。
 しばらく無言のにらみ合いが続いていたが、クララが口を開く。

「あなたがいると目障りなの」

 囁くような小さな声。けれど言葉はとても恐ろしい。円堂がクララに食って掛かろうとして、蓮が手を出して制する。風丸も鬼道も憤っているらしく、クララを睨む。続いてレアンが、

「あんたが雷門にいるとね、困る”お方”たちが居るのよ」

 クララの言葉は無視することにするが、レアンの言葉が引っかかる。僕が雷門に居ると困る人って誰だ? 

「それって、誰?」

「あなたに教える義務はないわ。ただ、一つだけ教えてあげる。あなたはね、その”お方”たちをとても傷つけているの」

 馬鹿にするような口調で言っていた言葉を切ると、クララは垂れている目を吊り上げる。今まで違い、無表情だった顔に怒りがはっきりと刻まれていた。瞳にも憎しみや怒りの感情がはっきりと見え、今までの冷静さが嘘のように思われる。

「あなたはなんにも知らずに、”お方”たちを悩ませているの。少しは罪の意識を持っているのかしら!? 答えなさいよ!」

 今までの冷静な口調とは打って変わり、激しい口調。唾が飛んできそうな勢いで、恐ろしい剣幕で蓮を問いただす。”気”が風となって身体に吹き付ける。円堂たちはクララの雰囲気に圧倒され、その場で立ち尽くしていた。蓮だけは、円堂たちの前に出た。円藤たちを守るように、腕を組んで仁王立ちになり、クララやレアンと対峙する。

「…………」

 何、わけの分からないことを言っているんだと言い返すように、クララに冷めた視線を送る。誰を悩ませているのかは知らないが、こいつらの言うことはいちゃもんの可能性が高い。根拠のないでたらめだ。嘘だけで、雷門をやめるわけなんてない。
 クララは呆れた顔付きで笑った。冷たい顔が哀れみを送ってくる。

「あなたは愚者ね。雷門中のサッカーは『仲間ごっこ』だってことに気づいていないんだもの」

「『仲間ごっこ』?」

 蓮は思わず尋ね返した。クララはレアンに目配せし、レアンが哀れむように——見下すようにせせら笑ってきた。

「あんた、エイリア学園との戦いで倒れてばかりで、大して活躍していないそうじゃない。試合で役に立てないような人が、どうして雷門にいるの?」

「……それは」

 蓮は頭に言葉が出てこず、口を閉ざしてしまう。レアンは、蓮の言葉尻を捕らえて畳み掛けてきた。クララと同じく、その瞳には強すぎる負の感情が渦巻いている。

「あら、咄嗟に答えられないの? やっぱり『仲間ごっこ』ね。どうせ『今は無理でも後で何とかなる』とか、言われていそうだけれど——それは、あなたを傷つけないための”嘘”。本当はみんな、あなたみたいに成長の見込みがない人は、やめてほしいと思っているの。でも、言えば双方の気分を害することになるわ。だから言わないの。自分が嫌な思いをしたくないから黙っている……雷門は、そんな自分勝手な人間の集まりよ」

 以前に悩んでいたことをぶりかえされ、それでも図星なことを指摘され、蓮は悲しくなった。今すぐ消えてしまいたかった。
 『試合で役に立てないような人が、どうして雷門にいるの?』と言うレアンの台詞が頭を支配し、何度も反芻する。円堂たちがレアンに噛み付く声も聞こえなくなっていた。
 
 ——チームのみんな本当は僕のことをどう思っているんだろう?
 倒れるたびに心配そうに優しい声をかけ、介抱してくれる仲間たち。しかし、それは”本心”ではなく、レアンの指摘するとおり”仕方なく”と言う可能性もある。今までもそう感じることはあったが、その可能性は打ち消してきた。本心は嫌だが、”チームメイト”として、仕方なく助けてやっているのかもしれない。早くサッカー部からいなくなってほしいと思われているかもしれない。

「……僕は、僕は……」

 蓮は頭を抱え、唸るような声を発した。何かを堪えるように唇をぎゅっと噛み、瞳を閉じている。身体が不安げに揺れていた。円堂たちが蓮に駆け寄り、三人で蓮の名前を呼ぶ。四人の様子を眺め、レアンとクララは顔を元の静かなものに戻した。レアンがすうっと短く息を吸い、
 
「ここまで言えば分かるでしょう?」

 静かな声で問う。蓮ははっとした顔でレアンを見て、円堂たちは厳しい目つきで応対した。

「さあ消えなさい、白鳥 蓮!」

 クララが怒りの炎を目に灯したまま叫んだ。

〜つづく〜
なんかまた親が帰ってきたー!(泣)すいません、コメントはメモッてますから後で携帯から返します。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.412 )
日時: 2011/04/23 22:27
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: sIzfjV5v)
参照: 偉そうなことを言える立場ではない

>>星沙
考えると、蓮の運命は悲しいけれど不思議なものだと思った訳です。それが、南雲と涼野の台詞に凝縮されている。もし蓮の両親がいたら、南雲と涼野とは会わなかった。運命は自分で選べる事柄にしろ、自分で選べない事柄にしろ、別れ道は幾つもある。私達は、その一つだけを進んでいる。
星沙の言う通り、歯車だね。ある時は部品を組み換え、時には捨てることが。噛み合わなくても、回転が反対になっても先に進んでしまう。リセットがきくこともきかないこともある。難しい事柄だ;;

蓮、気持ちわかってもらえてよかったね。私もかけがえのないものを失った経験あります。あの私は無力だった。いい言葉を生み出す知識も、歯向かう力も持っていなかったから。

蓮「…星沙さんありがとう。両親のこと、今だから認めて前に進むことができる。両親と一緒に藻屑になればよかったと思ったこともあるけど、そう言うと怒る子たちがいるから」

いつ、どうなるかわからないからこそ、今日一日、友達と過ごすことが有り難く幸せに思えてくる。十字架は誰にでもある。それを背負いながらも、前に進めるのが人間のたくましさだね、蓮。

蓮「たまには立ち止まってもいいと思う。僕の過去も消すことはできないけど、十字架を共に背負って、負担を減らしてくれる誰かは必ずいるから。その誰かにみんなは出会えると、僕は思う」

小説とは言え、蓮の心情にシンクロするしずくでした。なんか下らないことを偉そうに宣って、ごめんなさい。

>>ふぁいんさん
おりょ?似たような文章が二つも^^;
感動して頂けて、私が逆に感極まってきました。今回は初めて感動系を狙いましたが、うすっぺらいな〜と心配になっていたので。ふぁいんさんの一言で安心です。
コメントありがとうございました

>>霜歌さん
お久しぶりです!大ニュースを一番に知らせていただき、ありがとうございました^^
探検隊の発売、もう計画されていたんですね。そしてやはりすりーでぃーえすの魔の手がorz
買えないのに、発売されるソフトがおおすぎますwwしかも買った友達によると、立体的で目がチカチカするとのこと。あんまり目に優しくねーとぼやいてました。…ますます買えるかわからない。
雑談楽しかったですよ^^コメントありがとうございました!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.413 )
日時: 2011/04/24 14:43
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: iCAwesM8)

今更ですが蓮くん、お誕生日おめでとうございまs(遅い

ずーっと読んでいたのにも関わらず、今頃になってコメなんかしちゃってすいません!あ、来ないほうが良いですよねわかります(キリッ
イナズマジャパンのノリが好きですwさっすが春奈ちゃん!よくわかっていらっしゃるwペンギントリオ(←)は公式で見てみたいと思った今日この頃。
そうですね、お薬は用量と使用方法さえ間違えなければ大丈夫!(何が?

アフロさん達に感謝しきれないバカがここにいますううう(ry(黙れ
蓮くんの考えを変えてくれて(?)どうもありがとうございますですよ!←
うう……しずく様の天才っぷりを改めて確認しました(キララン 私には哲学なんて無縁ですからねw難しいことを考えられないバカです。頭がショートしちゃいます(ぇ

難しいですね……もしも蓮くんのご両親が生きていたら、会えていない訳ですか。でも、三人と蓮くんはどんな状況であれ、"出逢う"運命であってほしいです。どんな出逢い方かはわからないけど、今みたいに四人仲良くいてほしいです!(意味不明
つ、つまりですよ?ご両親が生きていたとしても、蓮くんと彼等は出会う運命であってほしいってことです何コレ意味不明じゃん!←
あー上の平仮名の固まりは無視して下さい。

レアンちゃんとクララちゃんキタアアアアア!(
と思ったけど、た、確かに暴言パラダイスですね^^;でも、その"お方"達を想ってのことだから……複雑ですね。大切な人を護りたいから、蓮くんを責めちゃうのかな?ああ、難しいです←

相変わらずgdgdなコメ、申し訳ないです; 高校、忙しいと思いますが頑張って下さい^^*

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.414 )
日時: 2011/04/25 17:00
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: PODBTIS5)

>>桃李さん
いえいえ、来て下さってとても嬉しいです^^私こそ忙しくなってあまりそちらに顔を出せずにすいませんorz月曜日・土曜日は暇ですが、その他は中々PCをいじる時間がなくて。。少なくとも行きます!

もうペンギンみたさに書いちまいましたw最初は鬼道だけの予定が、ジャパンなら佐久間と不動も着てもらいたいなぁと言うことで←結局混じっていただきました。私も公式で見たいです!絶対に似合うと思うんですよね、あの三人なら。アニメージ○ならいけそうですねw

ファドラは私も複雑な気持ちでいっぱいですねorz書いていて人生の複雑さを考えました。いえ、高校で倫理って言う時間があるんですよ! ソクラテスとかプラトンとか。あの辺りから着想。そして次回作のネタバレがちび〜っと混じっていたりw
ああ、駄文の天才ですね〜結局薄っぺらな内容になっちまったぜ☆
考えの変化が手に取れているといいのですが^^;

桃李さんの優しさに涙です;;
これに関しては難しいところですね・・・両親が生きていたら、蓮は南雲と涼野と幼少期に出会わない。そのまま雷門に転校して、ただの味方と敵で終わるように思えてしまうんです;;で、FFIでもイナズマジャパンとファイアードラゴンで翻弄したりされたりで終わる。
——でも、蓮がゼウスの一員←ちがくね?なら、韓国には行けるかもですし、どこかで出会い、親友となる運命もある。
人間って多くの選択肢があり、その中でいくつかは必ずこの韓国組みとつながっていると思いたい←って、これはしずくの意味不明な言葉です。日本語になっていません。

桃李さんは読解力がありありです><←?
クララとレアンの心情は”あのお方”思ってのものです。根本にあるのは彼女らなりの優しさ、です(偉そうなこといえませんが;;)
置かれている立場がああだからこそ、逆に攻める・・・とこんなストーリーを前々から考えていました^^;暗すぎて書くのも億劫になりますが、この章は色々な意味で折り返しにしたいんです^^

私もgdhdですいませんwこれから桃李さんのところに顔を出しますb

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.415 )
日時: 2011/04/27 21:22
名前: ふぁいん (ID: EI9VusTL)

クララとレアンの一言はひどすぎです!むかむかします!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.416 )
日時: 2011/05/04 15:40
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: PODBTIS5)
参照: イナイレ最終回よかった!…ガゼルとバーンを見納めしたかった←

 消えろ、とクララに言われ、蓮の思考は混乱の渦の中にあった。
 雷門の仲間は、倒れたり、体調が優れないと優しい言葉をかけてくれる。あれは”建前”で本音ではないのだろうか。建前であんなに優しい響きを持つわけない。けど、もしかしたら——考えれば考えるほど、頭が熱を帯びてくる。
 北海道のあの言葉も嘘よ、とクララの冷たい幻聴が聞こえ、熱が引いた。追い討ちをかけるように、レアンがだからあなたは愚者なのよと囁く。蓮は、悶えた。わからない、わからない。誰を困らせているのかも、誰が自分を必要としているのかも。

 蓮が頭を抱えている間、円堂たちは蓮に己の思いを真っ正面からぶつけていた。

「白鳥! オレたちは、お前に雷門中サッカー部にいてほしいと思っている!」

 と円堂が、

「奴らの言葉に惑わされるな。イプシロン戦でのお前の活躍をオレは知っているぞ」

 と鬼道が、

「お前は、これから活躍するんだろ! ここでにげだすな!」

 と風丸が。
 三人の言葉を聞いた蓮は、頭から手を離した。三人の思いを確かめるように、円堂、鬼道、風丸の順に顔を向ける。蓮に顔をむけられるたび、三人は力強く頷いた。本当だ、と答えているようだ。
 三人の真意を確かめた蓮は、強い意思を秘めた黒い瞳でレアンとクララを睨む。同時に、仲間を疑った自分を恥じ、拳を握る。しかし、クララとレアンは蔑むような顔で四人を眺めていた。

「僕は雷門を止めない」

 蓮が力強くいい放ち、レアンとクララは面白くなさそうに眉にしわを寄せる。感じる冷”気”が一層強くなる。肌に悪寒が生じる。

 これ以上何か言えば、恐ろしいことを起こす、とレアンとクララは無言でどすをきかせてきた。彼女らが発する冷”気”は、憎しみと怒りを交えた総身を粟立たせるものだ。でも、怖くない。蓮は、後ろに立つ三人に微笑みかける。三人は笑い返してくれた。——そう、仲間がいるから。
 勇気を得た蓮は、強い眼差しをクララとレアンに向け、続けた。

「僕はエイリア学園を倒すため、仲間と共に”ここ”にいる! ここが僕の居場所なんだ!」

 蓮が、今までに見せたことのない気迫で叫んだ。散々悩んだからこそ出てくる。はっきりとした、自信に満ちた叫び声だった。強い叫びは、冷”気”をかきけした。
 蓮の気迫にレアンとクララは圧倒され、目を限界まで見開いて固まっている。円堂たちは、「よく言ったな!」、「それでこそ雷門の一員だ」、「いいぞ、白鳥」と口々に蓮を誉めそやす。蓮は、親指を立ててウィンクしてみせた。それからクララとレアンに向き直り、みながかろうじて聞き取れる程の声量で、こぼした。

「……それに知りたいんだ」

 最後に晴矢と風介のことを、と誰にも聞こえない音量で追加しておいた。
 懐かしい気持ちを起こさせる彼ら。いつも、頭の片隅にもやががったように懐かしさの原因を思い出せない。しかし、旅を続ければわかる気がした。何となくと根拠のないものだが、その予感はある。

「やっぱりあなたは愚者だわ!」

 今まで黙っていたレアンが急に高く笑う。

「せっかく警告してあげたのに、突っぱねるんですもの」


 レアンが蓮を愚弄ぐろうし、蓮は挑発するような笑みを見せる。

「たった二人で何かする気?」

「……あなたに残された選択肢はひとつだけ」

 クララが哀れむように目を細め、細い声で呟いた。蓮は、円堂たちは身構える。ずっと立ち続けていたレアンが初めて動いた。スパイクが床を叩く音が、倉庫に何重にも響く。

「私たちに消されるって選択しか残っていないのよ」

 レアンが憎悪に満ちた声で言った。切れ長の青い瞳は、怒りに満たされ、背中からは怒りが赤く、憎しみが黒となって混ざりあっているように見えた。

「覚悟しなさい。<イグナイト・スティール>」

 レアンはその場で飛び上がると、勢いを保ったままスライディングを仕掛ける。その先にいるのは、——蓮。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.417 )
日時: 2011/04/30 17:54
名前: しずく ◆rbfwpZl7v6 (ID: PODBTIS5)
参照: 7000突破にひぐらしパロを忘れな草で書きます

>>ALL
気づいたら参照が……な、七千だとぅ!!??あーみなさま、一年以上もお付き合いいただきましてまことにありがとうございますwローペース過ぎますが、今年中には世界編に移行しますので!これからもよろしくお願いいたしますb

>>ふぁいんさん
クララとレアンの一言は非常そのものですよね;;私も普通にあのようなことを言われたら憤ります。は、何行っているの?と思います。

しかし、それは彼女らなりの「人を大切に思う気持ち」の裏返しです。”あのお方”たちを思うがゆえにやり場のない怒りを持ち、ああいて怒りの根源にぶつけてしまった…のですorz彼女らは、本当は人を思うことが出来る優しい子です←やり方さえ間違わなければ、いい子です!クララもレアンも大好きですから←あ、偉そうなことを行ってすいません。

ではコメントありがとうございました♪

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.418 )
日時: 2011/05/01 20:26
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: ewri1wGo)
参照: 話、暗すぎます。ごめんなさい;;

「あっ!」

蓮は、レアンの動きに敏感に反応した。スライディングが足に当たる寸前、飛び上がる。ジャンプで生じた僅な空間をレアンが滑っていった。その後には、炎が生じている。レアンが滑った後には、一本の炎の道。熱くはない上、すぐに消えた。
蓮の足の下を通りすぎると、憎々しい顔で振り向きながら、レアンは壁に激突した。
それでほっとしたが、

「ガゼルさまの痛みよ。<フローズン・スティール>!」

「白鳥! 避けろ!」

風丸の注意を促す叫びに振り返ると、クララがこちらにスライディングをしかけていた。普通のスライディングよりも速く蓮に襲いかかる。あっという間に蓮の前に来た。
先程のレアンと同じ体勢ではあるが、彼女がスライディングで通った道は凍っている。

「……しつこいよ」

風丸の注意で、蓮はまた宙に舞い上がって難を避けた。クララは当たらないと見るや素早く立ち上がり、また体勢を整えて<フローズン・スティール>をしかけてけてくる。また、ジャンプでやり過ごし地に着陸。
その後もクララとレアンの猛攻は続く。
蓮ばかりがターゲットにされ、円堂たちは蓮を守ろうと動くが、レアンに邪魔される。その隙にクララは、蓮に<フローズン・スティール>で攻撃した。蓮は、持ち前の運動神経でかわしつづけるものの、だんだんジャンプするタイミングが遅くなってきた。着地の度に荒い息を吐いている。
なにもできず、歯痒い思いで円堂たちは蓮が疲れていくのを見もることしかできなかった。
しばらくクララを避け続けていると、クララは勢い余って壁に足を激突した。蓮は、肩で息をしながらクララを睨んでいる。しかし——それに夢中で背後から<イグナイト・スティール>で迫るレアンに気づいていなかった。

「白鳥!」

青ざめた顔で風丸が蓮の名を呼んだ時——蓮の身体は、仰向けで宙にふっとんでいた。吹き飛ばされた蓮は、呻き声を出しながら、つらそうに顔を歪めていた。レアンが下でほくそ笑み、素早く立ち上がる。そして、重力の法則で蓮が地面に落下する寸前、

「<フローズン・スティール>!」

楽しそうな声をあげながら、今度はクララが蓮の身体を宙に送る。蓮は、痛さから悲鳴をあげ、きつく閉じられた目から涙をこぼした。円堂たちが助けようと走り込み、レアンの<イグナイト・スティール>にまとめてぶっとばされた。壁際まで跳ばされて後頭部を強打し、崩れるように三人とも前にたおれこんだ。


「……み、みんな」

痛みに耐えながらも、宙にいる蓮は、倒れた円堂たちを心配そうに眺めていた。
その顔を見たかったと言わんばかりにレアンが高笑いをする。

「あはは! いいざまだわ。あなたのせいで仲間はきづついた。でも、バーン様の痛みはこんなものじゃない。もっともっと味わいなさい!」

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.419 )
日時: 2011/05/01 22:59
名前: ふぁいん (ID: V2/o1KYD)

れ、蓮君がアフロディのように!可哀想です!クララもレアンもひどい!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.420 )
日時: 2011/05/03 16:26
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: Wwp0q0mP)
参照: 早く帝国をorz

レアンが<イグナイト・スティール>で、蓮を空中に浮かせ。そして蓮が落ちると、クララが<フローズン・スティール>でまた宙に送り返す。下に行けばレアンが<イグナイト・スティール>で……蓮は、クララとレアンによって何回も空中へ撥ね飛ばされる。まるで蓮の身体をボールにし、バレーボールでもしているようだ。スライディングで蓮の身体を宙に浮かせ、落ちたらまたスライディングで打ち上げる。

蓮は、抵抗できずにされるがままになっていた。ジャージがあるのでまだよいが、身体に力はなく、動かすことすらできない。
跳ばされるたびに、焼けつくような痛みと刺すような痛みが交互に走り、激痛となって肌を蝕んだ。苦痛を耐える顔には冷や汗かびっしり張り付いている。息のテンポが速くなる。
レアンとクララは、スライディングが当たって痛くなるよう角度を計算しているらしい。やたらと腕を、弱い力で狙ってくる。どうやら長いこといたぶりたいようだ。
そのせいか足は平気だが、腕はもう感覚がなくなっていた。痺れていた。二人のスパイクが当たっても、痛くもない。スパイクの先が、肌をえぐるように当てられるのを感じるだけだ。

初めは痛みに耐えきれず、小さく呻き声や涙を漏らしていた。それでも唇をかんで、声を出さないよう必死に堪えていた。が、あまりにも早すぎる間隔で痛みが襲ってくるので、やがて声がでなくなる。息がつまり、視界が端から霞んできた。倉庫の窓や壁の輪郭が溶けるようにぼやけはじめる。

(……だめ、いしきが)

どさ、と身体が地面に落ちる音を聞いた。半拍ほど遅れて、床のひんやりとした冷たさが脳に伝わってくる。身体を動かしたいが、重りでもつけたように重く、動かなかった。

「……反省した?」

クララの冷ややかな声が降ってきた。蓮は力を振り絞って身体を震わせながら、頭だけを動かし、声の方を見上げる。霞ゆく視界にレアンとクララが、蔑むように見下ろす姿がぼんやりと映った。

「その顔だと、していないみたい。まあ何も知らずに消えた方が幸せね」

クララが静かに語りかけ、レアンも哀れむように口を開く。

「命は助けてあげるわ。”消えろ”って言うのは、エイリアとの戦いから”消えろ”ってことよ。この戦いであなたは、”いてはならない存在”なのよ。お仲間とおんなじで、病院で大人しくしていればいいのよ」

「……いやだ」

蓮は、レアンとクララを弱々しく睨みながら、ゆっくりと言葉を吐き出した。
かろうじて上半身を支えていた腕から力が抜け、蓮は床にうつ伏せになってしまった。

「あら、まだ話せる元気が残っていたの」

レアンが冷たい眼差しを送り、蓮はまた腕に力を込めて上半身を起こした。力ないが、強烈な光を宿した瞳で二人を捉える。速くなる呼吸のせいで、変な区切りかたをして話す。

「みんなと、仲間と、一緒に、戦うって、約束したから」

「バカじゃない」

クララは蓮を嘲笑うと、蓮の腕に軽く蹴りを入れた。蓮は、前につんのめりかかったが、歯を食い縛って、何とか持ちこたえる。

「仲間? あのおべっかをまだ信じていたのね」

レアンは小馬鹿にする口調で言いながら、勢いをつけ、蓮の背中に座った。
レアンの全体重をかけられ、腕で身体を支えられなくなった蓮は、呻いて、両手を前につき出すようにして上半身を伏せてしまった。レアンは椅子に座るように、伏せた蓮の背中の上で足を揺らしている。弱りきった蓮に抵抗する力はなく、少女の重みが身体を圧迫し、息がますます苦しくなるだけだ。

苦しむ蓮の前にクララが立ち、前髪をわしづかみにした。髪を引っ張り、蓮の顔をあげさせる。苦痛の色を顔に出しながらも、瞳は媚びていなかった。むしろ、抗うような意志を宿してクララを見据えていた。クララは、面白くなさそうに鼻をならして、蓮の顔を自分の顔に近づける。

「さっきから弱音の一つも吐かないけど、どうせ来ないとは言え、助けくらい求めたらどうなの? わたしに求めてもいいのよ」

「お前たちに、助けなんか求めない」

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.421 )
日時: 2011/05/04 03:21
名前: ふぁいん (ID: AzXYRK4N)

蓮君が可哀想です!これからの展開が気になります!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.422 )
日時: 2011/05/04 23:04
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: yWbGOp/y)

蓮がはっきりと言い切り、クララは驚いたように目を少し見開く。レアンは、変わらず腕を組んで、痛みに耐えながら、顔をあげさせられてもなお、睨み付ける蓮を背中から見下ろしていた。
蓮に助けを懇願する様子はなく、抵抗しようとする意志がはっきりと表れていた。苦痛で顔を歪め、荒い息を吐き出しながらも。残ったわずかな力で歯を剥き出しにし、弱々しくも厳しい視線を二人に向けた。
レアンは、退屈そうに頬づえをつきながら、気絶している円堂たちを一瞥すると、

「つまらない意地ね」

視線は蓮から逸らしながら、レアンは吐き捨てるように言った。馬鹿にする一言に、蓮は震える声で必死に言葉を紡ぐ。

「ぼ、僕には、サッカーが、導いて、くれた、な、か、まが、いる。彼らは、絶対に、ここに、く、る……」

ほとんど聞き取れない、掠れた声が蓮の口から発せられた。レアンが「元気だけはあるのね」と、呆れた声を出した。
話すにつれ語勢ごせいは、徐々に弱まり遂には消える。蓮は、なおも口を動かしているが、言葉にならない。虚しく口だけが動いていた。それを見ていたクララは、蓮の髪を掴みながら冷笑を浮かべた。

「来るわけないじゃない」

「来る!」

それを否定するがごとく——突如、蓮が大声をだしたことにクララとレアンは瞠目する。場を支配するような圧迫感が一瞬、流れた。あまりの気迫に、レアンは転がるように蓮の背中から飛び降りた。クララの手から、蓮の頭が落ちた。蓮は額を軽く床に打ち付けたものの、最後の力を腕に込め、手のひらを床につけた。震える上半身を起こしながら、凍り付く二人を睨む。ライオンが睨むような迫力にクララとレアンは、たじろいだ。

「僕は仲間を信じて待つんだ! だって、これが仲間たちを信じていると証明する……」

蓮は力の限り叫び、最後に「から」と続けようとした。しかし急に息がつまる。それに気づいた瞬間、全身から力が奪われていった。両腕が折れ、身体が床に引き寄せられる。冷たい空気が風となって吹き付けてくる中、視界がどんどん床の灰色に染まる。
倒れる直前、蓮の口がはっきりと動く。”ご”、”め”、”ん”と。特定の誰かに向けられたものではない。ただ、雷門のみんな、そして晴矢と風介に向けられたものであることは間違いない。
もうエイリア学園とは、戦えないみたいだ。そんな絶望が胸を支配する。でも、と蓮はその絶望を心のすみに追いやる。

その時。蓮は顎を床につけ、うつ伏せの姿勢のまま動かなくなっていた。意識はあるが、身体に力は残されていない。ただ、異様な達成感が身体全体を包み込んでいた。仲間を信じ、待つんだと言ってやれたから。そう、それでいい。……でも、ごめんね。この思い、みんなに伝えたかったよ。……ごめん。晴矢のことも風介のこともまだまだ知らない。キミたちは、僕の一体なんなんだ。はるや、ふうすけと言う響きは、いつも懐かしくて暖かい。暖かさの先にあるものは何なのか。それを知りたい——そう考えた瞬間、ここで旅が終わるのは嫌だと、頭の細胞たちが訴えてきた。本当の雷門の一員になるため、南雲と涼野を”探す”ため、ここで旅は終わってはいけないと蓮に告げる。しかし、

「……バーンさまとガゼルさまが手を下せないなら、あたしたちがくだすまでよ」

「あなたがいると、バーン様とガゼル様の居場所がなくなってしまうの」

クララとレアンが、自分を説得するように呟くのを聞いて、やはり見逃してもらえないことを悟る。視界の霞も一層酷くなってきた。目眩が波のように押し寄せてくるし、耳を貫くような耳鳴りもする。身体が悲鳴をあげているのだ。蓮は、消えかかる意識の中、バーンとガゼルのことを考えた。何故、バーンとガゼルは自分が雷門にいると困るのだろう。だが、考える間もなく、

「<フローズン・スティール>」

「<イグナイト・スティール>」

なんの感情もこもっていない声がはっきりと聞き取れた。これで最後だと通告する冷えきった声。蓮は、覚悟を決めて目を瞑った。
熱気と冷気がじわじわと両側から迫ってくるのを感じる。二つの気はぶつかり合い、蓮の辺りでは心地よいそよ風と化していた。その時間だけは、ゆっくりに思われた。レアンとクララの行動が、スローモーションで再生されたように——近づいてきた。イグナイト・スティールが生み出す炎が陽炎のように揺れ、フローズン・スティールが作った氷が光を反射して輝く。その二つは、とても美しく思えた。自分の最期を美しく飾るために光っているように思えた。クララとレアンのスパイクの底が、腕から僅か三十センチ位の場所に来て、蓮が瞳を一層強く瞑り、意識を投げ出そうとした——その時。

「<アトミック・フレア>!」

「<ノーザン・インパクト>!」

倉庫の入口から、立て続けに声がした。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.423 )
日時: 2011/05/06 07:38
名前: ふぁいん (ID: WV0XJvB9)

蓮君、絶対絶命!!助けてあげてほしいです!!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.424 )
日時: 2011/05/08 00:22
名前: ふぁいん (ID: ewri1wGo)

あげ!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.425 )
日時: 2011/05/08 15:29
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: YwspoyBV)

聞き覚えのある声がし、蓮ははっとしと目を開けた。頭からわずか数センチ上を、まず高熱を帯びた物体が通りすぎる。お湯が沸騰するのに似た音が耳に届く。肌寒いはずの気温が一気に上昇し、真夏並の暑さとなった。辺りは数秒のうちに、熱気に満たされる。蓮の肌にうっすらと汗が浮かび、熱気が空気を陽炎のように揺らす。蓮は、頭だけを動かして、真夏を作り上げるものを目で追った。それは、赤い隕石を連想させる、巨大な火の玉。正しくは火の玉のように膨らむ、炎を纏うサッカーボールだった。激しく炎を燃やしながら、レアンに近づいていく。豪炎寺の<ファイア・トルネード>を凌ぐ炎だ。炎が燃える勢いも、炎の大きさもこちらの方が勝っていた。
蓮が南雲のボールに見とれていると、今度は気温が一気に下がった。最初の気温を通り越し、真冬の寒さとなった。あまりの寒さに、蓮は頭を下げ、身を震わせた。頭の上を、風を伴いながら、物体がよぎったのだ。氷のような、冷気を放つ物体。何かと顔を上げると、凍り付いたペットボトル。透き通った氷の中に、スポーツ飲料のラベルが見える。凍り付いたペットボトルは、虹色の輝きを溢しながら、クララとの距離をどんどん縮めていた。
レアンもクララも、技を放つ体勢だったが、身軽にも身体を横に捻った。勢いがついていたせいで、壁際まで身体を回転させながら進んだ。<アトミック・フレア>と<ノーザン・インパクト>は彼女たちには当たらず、床に落ちる。火の玉も氷も消え、ただのサッカーボールとペットボトルに戻った。乾いた音をたてて、床に転がった。
レアンとクララは、壁に身体がぶつかると、素早く立ち上がり、振り返った。驚いた面持ちで、蓮を守るように立ち塞がる南雲と涼野を見る。南雲と涼野の顔には、強い怒りが露になっていた。敵意を目に灯し、威嚇するように白い歯を剥き出しにしている。蓮は、晴矢と風介が助けに来てくれた……と、二人の逞しい背中をぼんやり眺めていたが、とうとう意識を失った。崩れるように額を床につけ、それきり動かなくなる。


「蓮!」

涼野が心配そうに蓮の名を呼び、蓮に駆け寄った。南雲は、目を眇め、クララとレアンに食って掛かる。

「テメーら! 蓮に何したのか分かってんのか!」

南雲の怒声が、広い倉庫の中に反響した。南雲に同意するように、しゃがんで蓮の容態を窺っていた涼野も二人を睨む。南雲と涼野の迫力にクララとレアンは、びくっと華奢な身体を震わせた。しかし、レアンは懇願する光を目に宿し、

「バーンさま、ガゼルさま。何故そんな、塵芥川ちりあくたのような存在を守ろうとするのですか?」
青い瞳を潤ませながら、静かに南雲に尋ねた。南雲は無言でレアンを見つめながら答えない。レアンは、南雲の後ろにいる蓮を憎々し気に見やる。

「幼馴染み、だからですか?」

冷ややかにクララが聞いて、涼野は立ち上がって頷く。クララは、はっきりとわかるくらい動揺した。

「どうして、記憶のない幼馴染みを大切に思うんですか!」

クララの悲痛な叫びが、事実そのものが、涼野と南雲に突き付けられた。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦 ( No.426 )
日時: 2011/05/08 20:23
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: npMPGGPe)

風介くんのペットボトルシュートに驚きを隠せない桃李です!(

参照7000突破、おめでとうございます♪やはり人気の有る小説は違いますね^^

蓮くん、大丈夫でしょうかあばばばry……でも、レアンとクララの気持ちを考えると、やっぱり複雑に……やはり晴矢と風介が大切に思っているのは蓮くんなんですね。ああ、やっぱり複雑……なかなかすんなりと解決はしませんね;
緊張感の有る文章は、さすがしずくさんとしか言えません><私にこんなハイレベルなものは……無理です(キリッ

ところでアンケートですが答えにやってきちゃいましたよやふー!←

☆アンケート☆
①この小説で気にいっているシーンは? 3つまでOkです!理由もあるとなお嬉しいです♪

>>339のアツヤと蓮くんの会話とか好きです。
「思い出そうとしても、思い出すことができない。手を伸ばせば届きそうな位置にあるのに、するりと僕の掌を通り抜けてしまう」

「……通り抜けた方がおまえの幸せになるからだろ」

……切ないですっ!あ、これって台詞のほうに書いたほうが良いんでしょうか? ま、いいか!(

あと、『氷のエイリアン』も面白いですb蓮くんの光る芸術センスを感じます(キラッ


②続いてはセリフ。これもやはり3つまでどうぞ!

アツヤの「黒の瞳ってのは〜」(間違ってたらすいません;)とか、幼少蓮くんのあの名台詞ですねw本編じゃ無いけど、大好きですv

③これからの展開で気になる場所は?

近いところでは、真・帝国学園との戦いと沖縄です。沖縄ではあの人が帰ってくるだけでなく、バーンも登場してますし。
恐らくだいぶ先ですが、エイリア学園の"生徒"としてバーン&ガゼルが蓮くんの前に登場するシーンはどんな感じになるのだろうと楽しみにしています。重要な場面かなーっと勝手に思ってるのでw

読み返してみるとgdgdですね;答えるのは楽しかったのですが時間の都合で慌てた回答になってしまいました;すいませんです。
これからの展開が楽しみですっ!更新頑張って下さい。応援しています^^*

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.427 )
日時: 2011/05/11 23:13
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: ZtEKXS3z)
参照: 今、携帯の着信音は吹雪です☆

事実を突き付けられた南雲と涼野は、答えに窮し、顔に皺を寄せた。
蓮は、自分たちと過ごした日々をきれいに忘れている。だが、南雲と涼野の記憶に蓮はいる。変わっていない愛嬌のある笑み。幼少期に見せていたサッカーの片鱗。——戻れない楽しい日々だ。あの頃には戻れないが、新しく”友達”の関係は築けるとそう二人は信じていた。

「……記憶がなくとも」

涼野が口を開き、クララは絶望した顔つきで涼野を見る。口が少し開けられ、瞳が潤む。顔から血の気が失せていく。どうして、どうして、と狂ったように呟いていた。涼野は顔色一つ変えず、倒れた蓮を一瞥し、
「蓮は、私と晴矢の幼馴染みだ。そのことに変わりはない」

はっきりと言った。クララは、静かに首を振る。光の雫が弾けるように光った。
「ガゼルさま。もう昔には戻れません。彼を裏切って雷門を倒してください。……今、雷門を倒さないと、あたしたちの居場所はなくなります」

クララが先程とはちがい、はっきりと感情を露にした。必死、必死、必死。それしかなかった。彼女の訴えは実に切実なものだった。南雲と涼野は口を閉ざした。居場所は、エイリア学園しかない。分かりきっていることだった。このまま蓮を理由に雷門と戦わなければどうなるかも。分かりきっていることだった。
南雲と涼野が反論しないところに、クララが畳み掛けて言葉を投げ掛ける。

「父さんは『ジェネシス』だけしかいらないと言っています。わたしたちはいつ、エイリア学園からお払い箱になるかわからないんですよ!?」

南雲と涼野は悔しげに顔を歪めて、お互いを見、次に気絶した円堂たちを。最後に蓮の背中を見つめた。倒れたままの蓮の背中をじっと見つめていた。
レアンは苛立ちを隠すように腕を組んで、爪先で地面を叩いている。スパイクが床を叩く音が反響し、多くの人間が一斉に床を叩いているような錯覚を起こさせる。やがて爪先で床を叩くのを止めた。腕組みをとき、何も言わない背中に向かって、確認するように問いかける。

「バーンさま。わたしたちの居場所はエイリア学園だけ。このままその幼馴染みに拘っていると、プロミンスもダイヤモンドダストも居場所がなくなるんですよ?」

南雲と涼野は振り向かなかった。それどころか、倒れた蓮に近づくと、彼の近くにしゃがみこんでしまった。クララは悲しそうに目を伏せ、レアンは顔を真っ赤にした。

「……どうして何も言わないんですか」

静かで抑揚がない——だが、はっきりと怒りに震えた声でレアンは言った。
南雲も涼野も答えない。レアンとクララに背を向けたまま、一言も発しない。
しばらくの間、レアンは二人が何か言うのを待っていた。しかし、やがて限界に来たらしい。突然、

「バーンさまとガゼルさまの分からず屋!」

と、子供のように泣き叫んだ。その時だけ、南雲と涼野は悲しみと怒りが混ざった顔で振り向く。
同時にレアンを飲み込むように、彼女の背丈程の火柱がさっと立つ。人間の身体など簡単に焼いてしまいそうな勢いの炎だ。クララも慌てて、火柱の中に飛び込んでいった。わずか数秒もしないうちに火柱は、消える。消えた後には、何も残っていなかった。クララもレアンも、彼女たちが存在していた痕跡すら。火柱が持ち去ってしまったようだ。何もない、倉庫の床が広がる。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.428 )
日時: 2011/05/12 10:43
名前: ふぁいん (ID: ZtEKXS3z)

バーン様、ガゼル様、蓮君は本当に仲がいいんですね!羨ましいです!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.429 )
日時: 2011/05/13 23:08
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: /eEAG2r9)
参照: 次回から真・帝国がらみに……なるかな?


「風介、何でオレたち蓮に拘っているんだろうな」

南雲はクララとレアンが立っていた床を睨みながら、独り言同然に呟いた。前を向いて倒れた蓮の脇の下に手を突っ込み、蓮の身体を転がして仰向けにする。顔は苦痛に耐えるような表情だった。続けて、南雲は、蓮のジャージのチャックを下げて、右腕から、ジャージを脱がせにかかる。腕を触られると痛みが走るのか、蓮は小さくうめき声をあげた。見かねた涼野が変われ、と目で合図したが、南雲は続ける。蓮の腕で辛うじて肌色になっている部分をそっと掴み、やがて——唇を噛んだ。
蓮の右腕は、青い痣と赤い痣で覆われ、痛々しい。クララとレアンは、蓮が痛みをできるだけ感じるよう当てる部位を少しずつだがずらしていたのだ。
南雲と涼野が不安そうに蓮の顔を眺めていると、蓮の身体が少し動いた。

「……は、る、や? ふ、う、す、け?」

蓮はうっすらと目を開け、聞き取れるのがやっとの声で二人の名を呼んだ。
視界は霞がかかったようにぼんやりとし、ピントが合わない。ぶれてばかりだ。服の色で何とかわかるが、輪郭をなさない映像では、彼らがどんな表情かも、何を話しているかさえもわからない。身体にも力が入らず、口を動かして、二人の名前を呼ぶのが、やっとだった。助けられて、熱い思いが喉まで、熱い水が目までせり上がっているのに。表現できる程の元気が欲しいと、蓮は、ぼうっと思った。

一方、南雲と涼野は、膝を地面に付け、蓮を心配そうに覗きこんでいる。南雲は、蓮の手を床に下ろすと、
「……くそ、レアンもクララも蓮にこんなことしやがって」

憎々し気に呟き、舌打ちをした。蓮には、南雲の声が聞こえていない。わずかに見開かれた黒い瞳で、弱々しく南雲と涼野を見つめかえすだけ。

「……昔に戻れないことなど、分かっているが。少しでも、あの頃に戻りたいな。晴矢を”バーン”と呼ぶこともなく、蓮がいた昔に。三人で楽しくサッカーをやれていた頃に、な」

涼野が過去を回想するように天井へと視線を投げ掛けた。顔がだんだん綻んでいく。だが、どこか寂しげでもあった。蓮が忘れていようとも、南雲と涼野にとっては、暖かくも悲しい思い出だった。


「お前らしくねえこと言うな」

南雲は、涼野を元気づけようとしたのか、口元を歪め、涼野を茶化した。すると、涼野は短く鼻を鳴らし、からかうような瞳で南雲を見やる。

「キミこそ、『ジェネシス』の座は諦めたのか?」

南雲は首を横に振る。

「諦めてはいねーよ。オレも父さんに認められたい。けど、雷門と戦うのはごめんだ」

「……しかし、そのままだと私たちはエイリア学園から追放される」

涼野が苦し気に言葉を吐き出す。顔には、わずかに恐怖の色が浮かび、冷や汗が頬を伝って、手の甲に滴り落ちた。南雲も追い詰められたような面持ちになり、床を睨んだ。自然に作られた拳が、独りでに震える。やるせない気持ちが、二人を支配していた。

「最悪なことに、雷門にプロミンスの存在も、ダイヤモンドダストの存在ももうばれているしな」

「……私たちの正体がばれるのも、時間の問題か」

苦々しく涼野が言って、南雲と涼野は思わず顔を見合せた。気絶する円堂たちを一瞥。続いて、視線を落とした。そこには、また意識を失ったのか目を閉じたままの蓮。顔つきは、先程より、少しだけ穏やかになったものの、まだ苦しそうだ。顔には、汗が張り付き、早い呼吸を繰り返している。
南雲と涼野は、静かに頷きあった。立ち上がって蓮に近づくと、涼野は、蓮にジャージを着せ直す。右腕に袖を慎重に通し、再度チャックをあげる。そして、涼野は蓮の脇の下に手をいれ、南雲は方膝を地面について、背中を丸めた。蓮の身体を涼野は、背中を丸めた南雲の元までゆっくり引っ張ってくると、南雲の背に覆い被さるように乗せた。蓮の両腕が南雲の背中から、だらんと垂れる。南雲は、蓮の膝裏をしっかり持つと、立ち上がった。蓮は、南雲にしっかりおぶわれていた。

「……蓮、三人だけで少し話そうぜ」

南雲は少し振り向いて蓮に語りかけると、そのまま、ゆっくり倉庫の出入口に向かって歩く。横を涼野が、平行して歩いた。最後には外にでた。倉庫の中には、気絶した円堂たちだけが、取り残されてしまった。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.430 )
日時: 2011/05/15 13:20
名前: ふぁいん (ID: enDlMgfn)

れ、蓮君はどこに行くんですか!?

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.431 )
日時: 2011/05/16 18:18
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 0fWfwKh9)
参照: 珠香ちゃんと紺子ちゃんに世話を焼かれる桃花が好きだv

またまたお邪魔します、すいません; 第二弾も答えにきちゃいましたw
……なんだか凄い展開になっています。この後、三人はどういった会話をするのでしょうか?その前に蓮くんは大丈夫でしょうか?

①小説内で好きなキャラランキングベスト3(オリキャラもオッケー!)

1位【蓮くん!】 理由【サッカーも上手だし、何より振り回される彼が大好きですvかっこいいし可愛いし……おひさま園の職員さん、もっとやれやれ〜♪(殴】

2位【風介】 理由【美味しいキャラですよね(ジュル カッコいいですし、良いボケも噛ましてくれますwですが、シリアスな部分では儚い台詞を言っちゃって……あーもうカッコいいな!(】

3位【晴矢】 理由【荒々しい部分もありますが、蓮くんを想う気持ちは風介に負けてないと思います。風介と共に迷い悩み、今後、蓮くんとどう関わってくれるのか、期待ですvアフロディと晴矢で迷いましたが、晴矢くんに期待を込めて……】

②なんか蓮って色々絡んじゃってますが……誰との絡みが好き?(3つまでおっけー。二人以上もおっけーです。例えばガゼルとバーンとか)

【風介】 理由【蓮くんの前だと無邪気な部分が出てきたり、雷門と戦いたくない、と悩んだり。しずくさんが書く風介はとても人間味が溢れていて、涙物です。二人で写真を撮った場面や、風介を笑わせる蓮くん、そんな二人が大好きです(マテコラ】

【晴矢】 理由【番外編等を読んでいて、そう思いました。あーでも、仲良しな蓮くんと風介を見て、混ざりたいんだけど気が引けちゃって。じゃあ俺が、二人の笑顔を護ってやんよ!と二人を優しく見守る晴矢も良いなーとか妄想してます(自重 でも、三人揃って幼馴染トリオですもんねw忘れてください】

【アフロディ】 理由【ちょっと噛み合っていない会話等、大好きですv「韓国組と年を越そう!」の会話は腹筋崩壊ですw速攻で訂正を入れる蓮くんw】

③再度降臨、好きなセリフ!(3つまで!前回は理由がなかったので、追加です^)

【「僕は確かに”変わるかも”しれないけど、”基礎部分は残して”変わって行くと思う。『人間って忘れてしまう生き物』って言うだろ? 今日の日だって、細かいことは忘れるかも。けど、風介への思いは絶対変わらない。少なくとも、風介のことは絶対に忘れたりしない。この46億年間だっけ? 変わらない海と同じで」】 

理由【ちょ、蓮くん惚れるじゃないですkごめんカオスブレイクの準備しないでお願いだから】

④まだ終わってないけど、次回作のお話。半分も来ると考えたいです。
蓮は……どっちがいいでしょう!?

【ファイアードラゴン】

理由【……すいません、この場に及んでFD選んじゃってすいません;でもやっぱり、FDの蓮くん好きだなーって思って。アジア決勝でイナズマジャパンに負けても、四人なら「俺たちの世界への挑戦は、終わっちまったなー」「でも、また次があるさ」「そうだよ! 僕たちが揃ってるファイアドラゴンだよ?」「……"最高で最強"の私達が、な」みたいなwすいません、語りすぎました;】

やっぱり暴走してますねwでも、もう気にしない!楽しかったから!(自重はどうした
ではでは、すいませんでした;

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.432 )
日時: 2011/06/11 16:25
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: PODBTIS5)
参照: あんまりかけなかたーです;;

 その後、誰もいなくなった倉庫で目を覚ました円堂たちは、すぐにクララにレアン、そして蓮の姿が見えないことに気が付いた。
 鬼道はすぐさま倉庫の外に飛び出し、円堂と風丸は、倉庫の中をくまなく探す。しかし、南雲と涼野に捕まった蓮は、当然ここにいない。気絶していた円堂たちは、当然そのことを知らない。クララとレアン、そして二人に狙われている蓮。この三人がまとめて姿を消せば、自ずと悪い方向に発想は進む。蓮がクララとレアンに連れていかれたのでは、と言う最悪な方向に。

「……くそ、なんでオレには力がないんだ」

 風丸が自分自身を叱るような口調で呟き、倉庫の壁を足で蹴った。何度も、何度も。歯を食い縛り、目付きを鋭くして俯いていた。そこへ円堂が背後から近づいてきて、風丸は壁を蹴りつけるのを止める。振り向き、どこか嘲笑うような笑みを円堂に向け、

「なあ、円堂。仲間一人をエイリア学園から守れない連中に、エイリア学園を倒すなんて無理だ」

「そんなことない!」

 風丸は、自虐的に笑った。その言葉を聞いた円堂は、即座に否定する。きょとんとしている風丸の両肩にしっかりと手を載せ、彼の茶色い瞳をしっかりと見据える。風丸は円堂に見つめられ、目を少し見開き、戸惑うように瞬きをしていた。

「風丸、オレたちはずっと特訓で強くなってきただろ? 白鳥だって、やっとあいつ本来のサッカーができるようになってきたし、オレたちだって、前は負けたジェミニ・ストームに勝てたじゃないか!」

「そうかもな」


 円堂は、力強く風丸に語りかけた。今までの成果を。倒れる回数も減り、徐々にだが本来の自分のプレーをみせはじめた蓮を。そう、みんなは確実に成長しているんだ。円堂は、それを風丸にわかってほしかった。しかし、風丸は何もわかっていない、と言いたげな顔をした。円堂から目をそらし、曖昧に答えた。

「……風丸?」

 円堂は、心配そうに風丸の名前を呼ぶ。風丸は、無言で、肩に置かれた円堂の手を自分の手で掴んで順番に外し、一人で倉庫の外に走っていってしまった。揺れる青いポニーテールが、激しく揺れていた。風丸が走る音が、冷たく倉庫に何十にも反響する。

「…………」

 風丸の心情を全く察することができなかった円堂は、目を細めると、急いで倉庫を後にした。
 すると、思いもかけない人物がそこにいた

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.433 )
日時: 2011/05/28 19:07
名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: PODBTIS5)
参照: テストなんて爆発しておk

「こ、木暮!?」

 そこにいたのは、浚われたはずの木暮だった。
 円堂たちが心配して駆け寄るが、木暮に目立った外傷はない。浚われた当時の服装のままで。誘拐されていたというのに、元気そうな顔で、「うしし〜」と決まりの笑い声を披露してくれた。

「うしし〜この木暮さまが捕まりっぱなしなわけないだろ? ……と言いたいところだけど」

 木暮は笑うような顔つきから、急に神妙な顔つきとなり、小さくため息をはく。何か問題があったらしい。安心しかかっていた円堂たちは、木暮の表情の変化に目を細めた。

「どうした木暮?」

 鬼道が心配そうに尋ね、木暮は悔しそうに舌打ちした。

「ほんとのこと言っちゃうと、あいつらはキャプテンたちに”ある言付け”をしろって、オレを逃がしたんだ」

「”ある言付け”?」

「『三日後に、東京にある帝国学園に来い』って」



 蓮は夢を見ていた。白恋中学で見たような真夏の夢だった。照りつける強い灼熱の日差しの中、幼い自分は両手でサッカーボールを両手で持って、興味深そうに見ている。どうやらサッカーを始めようとしているらしい。辺りは知らない公園の中らしい。ブランコやジャングルジムが見えている。
 前回と同じく、”今”の自分は傍観者として幼い自分を見下ろしていた。しかし、灼熱の太陽やセミの音を聞いても、暑さは全く感じられない。
 蓮は、ためしに幼い自分に触れようと手を伸ばしたところ、自分の手は幼い自分の身体を貫通した。それでも血は出たりしない。肉体を貫通するような嫌な感覚もしなかった。何もない空間に手を突っ込んでいるような感覚だった。慌てて手を戻すと、手は無事に幼い自分の身体から抜かれた。今、自分に触覚はないのだと感じさせられた。ちょうど映画を見ているような……過去と言う”フィルム”の”観客”なのだ。

「ねえ、これなあに?」

 蓮ははっとして目を見開いた。サッカーボールを知らないということは、初めてサッカーに触れた日の記憶かもしれない。南雲や涼野が出てくるのではないかと、蓮は期待して辺りを見渡すが誰もいない。誰もいないのに、幼い蓮はきゃっきゃっとはしゃいだ。

「”さっかー”っていうの? おもしろそうだね!」

 幼い蓮は誰かと話しているようだ。しかし、辺りに人の姿は見えないし、声もしない。それなのに、幼い蓮は喜んだり、ぷうと頬を膨らませて不機嫌に言い返したりしていた。蓮自身に独り言を言う癖はない。となると、考えられるのはただ一つ。——誰かがいるのだ。サッカーを教えようとしている誰かが。時折だが、雑音が混じって聞き取れない部分があるから、そこが名前なのだろう。幼い自分の話から察するに同じ年頃、恐らく二人。「ふたりともひどーい!」と何度も怒っているから、からかわれているのだろう。でも、姿は見えないのは。

(……多分、僕が忘れているからだ)

 
〜つづく〜
テスト前なので、更新が低迷します><忘れな草の方が中心になるかもしれません。
代わりにこねたを。とあるライトノベルのパロディです!
テストの珍回答。
ファドラ+蓮の地理編

Q.中国の正式名称と首都を答えよ。

チャンスゥの回答
「ああ……正式名称は、中華人民共和国。首都は北京ですね」

さすが天才ゲームメイカー。模範的な答えです。

アフロディの回答
「正式名称? 陸の中の国だろう。首都は北京だね」
中国は海に面していますが。

涼野の回答
「こんな下らないことに、答えている暇などない」

あなたの内申かかっていますよ!?

南雲の回答
「中国は中央王国だろ。首都は……バンコクか?」

中国四千年の歴史が大復活。

蓮の回答
「せーしきめいしょう? うーん。「中華料理中毒で国民は毎日中華料理を食べている国」で、県庁所在地は……偽王将ぎおうしょうだよね」

コメントしようがありません。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.434 )
日時: 2011/05/28 07:13
名前: 水玲 (ID: Qb.Gx.Ei)

どうも!しずくさん、覚えてますか?
「火竜の〜」のところにいた水玲です!

えへへ、アンケートの第二弾、答えに来ました。(ちゃんと小説もみてますよ)

①小説内で好きなキャラランキングベスト3(オリキャラもオッケー!)

1位【蓮】 理由【サッカー上手でかっこいいし、地理が苦手ですごいボケをしてかわいいし…大好きです】

2位【風介】 理由【エイリア組で1,2を争う位好き。彼にも過去に何かがあったと信じてる!】

3位【晴矢】 理由【エイリア組でry。ほんと、もうかっこいいです】

②なんか蓮って色々絡んじゃってますが……誰との絡みが好き?(3つまでおっけー。二人以上もおっけーです。例えばガゼルとバーンとか)


【風介】 理由【この2人を見ると、「こんな友達って、いいな」って思います】


(あと2人書きたいけど、都合上割愛)

③再度降臨、好きなセリフ!(3つまで!前回は理由がなかったので、追加です^)

【「僕は確かに”変わるかも”しれないけど、”基礎部分は残して”変わって行くと思う。『人間って忘れてしまう生き物』って言うだろ? 今日の日だって、細かいことは忘れるかも。けど、風介への思いは絶対変わらない。少なくとも、風介のことは絶対に忘れたりしない。この46億年間だっけ? 変わらない海と同じで」】 

理由【まさに格言!まさに名台詞!!かっこいい!】

④まだ終わってないけど、次回作のお話。半分も来ると考えたいです。
蓮は……どっちがいいでしょう!?

【両方】

理由【……ごめんなさい意味わかりませんね。
   要約すると、「FD(ファイアードラゴン)が良い!風介も晴矢もアフロディもいるから!」→「でもIJ(イナズマジャパン)も捨てがたい…」→「そうだ。いっそFDがIJと闘った後にIJに引き抜かれればいいじゃん!」
   というアホな回路が働いた結果ですはい】


暴走した結果、最後とんでもないのが出ましたががんばってくださいしずくさん。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.435 )
日時: 2011/05/28 19:29
名前: しずく ◆rbfwpZl7v6 (ID: PODBTIS5)

コメント溜まらせてすいませんでしたー!しかもテスト前と言う、あまり許されぬ身なので短文になってしまいますが、お許しを;;

>>ふぁいんさん
蓮はどこに連れて行かれるのか……お楽しみに(おい)あ、また夢の回想が入ってますが、一応重要シーンになるはずです(へ)

>>桃李さん
風介は天然です!サッカーボールを持ってき忘れたので、そこらへんに落ちてたペットボトルをボール代わりにしていました。でも、威力は抜群ですw
7000突破は桃李さんやお客様のおかげです><桃李さんも、お客さんたくさんいて人気ありますよ><私のよりもコメント等も多いし……憧れちゃいます^^

クララ&レアンは自分でも複雑です。結局幼馴染をとってしまう二人ですが、仲間である二人のことも大切に思っています(後でそのシーンを書きますが)。この辺りは三人にとって大きな転換期なので、そこら辺を表現できたらなぁと思います。緊張感が出ていてよかったです……スピード感のある文章の印象が出せればいいなぁと思っていたので、安心しました><

アンケート有難うございます^^後で蓮たちコメントつきで返事をまとめてあげるので、お待ちください(え)うう、テストェ……コメントありがとうございました

p.s最後の蓮+アフロディたちの意見は私も思わず感動してまっしゅ←最高で最強……電気うなぎに触れたくらいのしびれが全身を駆け抜けました。こういうのを感動と呼ぶんです、分かります。
実は私も桃花ちゃんと吹雪君こんな感じかな〜と勝手に思うときがあるので、機会があれば言ってみたいです^^

>>水玲さん
おおおおお、お久しぶりですね^^もちろん覚えています♪
小説挫折してごめんなさいorzやはり先設定はネタバレになりかねないので止めてしまいましたorzしかし、いつかは蓮がファドラ設定のオリジナルストーリーを書きたいと思います。一時期書いていたヨンと関るお話なんてプロットだけはあったり。
もし、もしです。水玲さんがファドラ設定の蓮を読みたいとお思いなら、短編集の「忘れな草」で是非リクをしていただければいくつでも書きます(爆)それで罪滅ぼしになればよいのですが;;

アンケート返しはまた今度ですが、最後だけコメント。
両方の予定ですw世界編では、蓮がFDに一時期的にですが所属するオリジナル(別名低クオリティ章)を考えていたりします。
でも、それもいいですよね><久遠「この選手は優秀だな」→円堂「オレたちの仲間だし、イナズマジャパンに入れようぜ!」→久遠「よし引抜だ」と言うのが今一瞬妄想されましたw

ではでは、コメント有難うございました^^

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.436 )
日時: 2011/05/30 22:40
名前: ふぁいん (ID: LhIkzBF8)

木暮君が無事でよかったです。テストファイトです!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.437 )
日時: 2011/06/04 14:38
名前: ローン (ID: ZtEKXS3z)

初めましてすごい神文ですねこれからも応援しています

イナズマイレブン】〜試練の戦い ( No.438 )
日時: 2011/06/11 16:18
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: PODBTIS5)
参照: もうすぐ真・帝国にいけるはず?

 はしゃぐ幼い自分を見つめながら、蓮は初めて心から過去を思い出したいと考えた。
 風介、それに晴矢とであうたび、込み上げる懐かしさの原因を探ろうとは思う。しかし、暖かい懐かしさに身を委ねながら、蓮は、その原因をまともに探ろうとはしなかった。理由は、蓮がその原因を探ろうとしない。つまりは、問題そのものから思考を逸らしていたのが原因だ。風介と晴矢といるだけで楽しい——その明るい感情が、彼の正しい理性や思考を排除していたのである。
 例えば、エイリアン学園が行く場所によくいる、風介に晴矢。蓮は、もちろんこの偶然には早くから気付いていた。ただ、二人に会えることが嬉しいあまり、そのことについては、考えないようにしていた。考えてしまうと、大切な二人を疑うような気がして、申し訳ないと感じていたのだ。

「思い出せ、白鳥 蓮」

 蓮は目を閉じ、己の胸辺りに手を当てた。厳しい口調で、自分自身に語りかける。全神経で頭を向かって、意識させる。

「僕にサッカーを教えたのは、誰なんだ?」

 問うても、答えはない。聞いたのは、”自分自身”なのだから。だから、頭の奥底にある、記憶を引っ張り出そうと試みる。だが。思い出そうとすればするほど、頭痛が酷くなっていく。思い出すことに脳が反発するかのごとく、頭には締め付けられたような激痛が走り、立て続けに様々な画像が瞬間的に浮かんでは、消える。
 伸ばされた二つの手。宙に舞うサッカーボール。そして、京都で見た煌めく鈍い光。はっきりとした画像は、そこで終わった。だが、痛みは洪水のように押し寄せてくる。まるで思い出すことはいけない、と警告するかのように。

 蓮は、頭を抱え、苦痛に顔を歪めた。オモイダシタイ、オモイダシタイ。ただそれだけを願って、痛みに耐えていた。そこへ、答えるように、

「……思い出すのはムリです」

 綺麗な、若い女性の声がした。はっとして顔をあげるが、そこには、誰もいない。考えるのを止めたからか、波が引くように、痛みも引いていった。

 蓮は、用心深く辺りを見渡す。幼い自分の記憶世界、ここは映画のようなものだ。すぐ近くに世界は広がるが、触ることも感じることもできない。だが、今の声は確実に蓮に語りかけていた。——何故干渉することができるのだろう。

「こっち、こっち」

 蓮がキョロキョロしていると、呆れた声が降ってきた。
 驚いて上を見ると、そこには北海道で見たカラスのようなハトのような真っ黒い鳥が一羽、羽を動かしていた。宙から、蓮を見下ろしていた。

「き、キミ、北海道の……!」

 と、黒い鳥に呼び掛け、蓮は、我ながらアホなことをしたものだと思った。鳥は話さない。そんな当たり前のことを忘れ、話しかけた自分がバカらしい。
 蓮は、自分の行為ながら吹き出してしまう。すると、黒い鳥の目が、人間が不満を訴えるのと同じように——細めた。鳥の顔が不機嫌を形作っている。蓮は、この世のものとは思えない光景に呆然。すると、

「失礼なお方です。私は話せるんです〜」

 黒い鳥が、喋った。開かれた形よい黄色い嘴から、すらすらと流暢な日本語を生み出した。人間が話しているとしか思えない上手さだ。蓮は思わず我が目を疑い、鳥を凝視した。鳥は、嫌そうに蓮を睨み付け、プリプリする。

「ニンゲンは、”ハクション”とやらでしゃべる動物に慣れているはずなのに、実際に見ると、どうして信じようとしないんですか〜」

 何か勘違いをしている黒い鳥に、

「ふぃ、フィクションのことかな?」

 さりげなく間違えていることを伝えた。すると、黒い鳥はビー玉のような金色の瞳を大きく見開き、羽を激しく動かした。

「あ、それだです! ”フィクション”だです!」

 満足げに言って、上空を弧を描くように飛ぶ謎の黒い鳥。蓮は、その鳥を探るような目つきで見ていた。やがて、

「……キミがこの世界を作っているの?」

 ポツリと零すと、黒い鳥は孤を描くのをやめた。一気に下降すると、地面に両足をつけ、羽をたたんだ。頭を僅かに上げ、金色の瞳をゆるくする。人間が微笑むような、例えるなら先生が生徒を褒めるような。そんな表情だと蓮は思った。

「キミではありません。私の名はミスティ。……夫、話がそれましたです。如何にもです。ニンゲンにしては頭がいいです」

 表情そのままの柔らかい声で黒い鳥——ミスティは言った。
 だが、その笑顔が逆に不気味なものに思えてくる。全てを知っている、とでも言いたげな余裕が漂っている笑みだ。ミスティが何だか不気味に思えてきて、蓮は顔を強張らせる。その横では対照的に無邪気に笑う幼い蓮が、サッカーボールを何もない空間に蹴っていた。
 ミスティはただただ笑みを形作りながら、

「あなたは北海道や京都で昔のことを少しですが思い出したです。それも私の力です」

 蓮は全身を稲妻が走り抜けるのを感じた。

「ミスティ、お前は僕の記憶喪失に関っているんだろ!?」

 ただの直感に過ぎなかったが。蓮はミスティが勝手に関っていると決め付け、強い口調で迫る。ミスティは無表情だった。動じず、像のように固まっていた。
 人の大切な記憶を勝手に奪われたのが許せない、と蓮は腹の底から煮えくり返るような怒りが沸いてきた。その勢いのまま怒鳴ってしまった。しかしそれはわずか数十秒で急速に冷めていってしまう。
 本当は思い出せないイライラを、憂さ晴らしとしてミスティにぶつけているだけに過ぎない、と言ってから気づいた。言ってから後悔した。
 何か言葉をかけようとミスティを見ると、ミスティは金色の瞳を伏せていた。何かを後悔するような表情。蓮は思わず目を瞬かせる。するとミスティの嘴が小さく開かれた。

「……そう、とも言えますです」

 ミスティは弱々しく蓮の問いに答えた。

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.439 )
日時: 2011/06/10 16:52
名前: ふぁいん (ID: l0i1WlFj)

黒い鳥、可愛いです!ハクションって何の間違いですか!?

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.440 )
日時: 2011/06/11 16:23
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: PODBTIS5)
参照: ミスティ登場←この子はキーキャラになるはず

>>ふぁいんさん
テストは終わりました〜玉砕しましたが、小説を書く手とパソコンを打つ指だけは残っていますw
ミスティ可愛いですかw有難うございます。ミスティが間違えていたのは”フィクション”です。あ、元ネタは月曜日にやっている、あるカードゲームです。遊馬可愛すぎる…orzおっと、語り失礼。コメント有難うございました!

>>ローンさん
久々の新しいお客様で、とても嬉しいです><
褒めていただいてありがとうございますwローンさんはイナズマイレブンではどのキャラクターが好きですか?よければ教えてくださいね♪コメント、有難うございました^^

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.441 )
日時: 2011/06/22 22:32
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: l0i1WlFj)
参照: 高校って忙しいorz保留、これから増えます。

「すごく曖昧だね」

蓮が冷笑を浮かべながら言うと、ミスティは、身体を縮め、頭を垂れた。何か考えているのか、金の瞳には、後悔の色が色濃く出ている。

「……事実そうです」

ミスティはポツリと溢すと、それきりむっつりと押し黙ってしまう。
蓮は、それを見て、黙る隙は与えんとばかりに問いを重ねた。

「関わった割には、どうして僕の記憶を中途半端に蘇らせようとするの?」

「正直言って、迷ったのです。でも、あなたは旅を初めてすぐ、風介に出会ってしまったわです。……あの時から、計画の歯車は狂い始めたのです。運命は、神は、一体何を考えているのかわからんです。”モノマネネコ”さんがやりやすいように、狂い始めたです」


”モノマネネコさん”。その単語を、蓮の脳は即座に翻訳する。”ネコ”をキャット——つまり、英語に変換した。
そして、モノマネキャット……モノマネキャット……と、モノマネの意味でかつキャットにくっつけても、きちんとした単語となるものを探した。なかなか出てこなかったが、しばらくしてふっとある単語を閃く。

「……『copycat』」

蓮が呟くと、ミスティは意外そうな顔で瞬きをした。この鳥は、母国語だけではなく、英語も理解できるようだ。かなり高い知識レベルにいる生物であるが、蓮にはその正体は全くわからない。

「こぴーきゃっとですです? ああ、モノマネネコさんの英語ねです」

「copycatの意味は、模倣犯——ある犯罪を真似て、同じような事件を起こす人間のこと」

「……今まで、エイリア学園はあちこちで事件を起こしてやがったです。私は、モノマネネコさんを放置してきたです」

そこまで言うと、ミスティは悔やむように地面を睨み付ける。
今までの口振りから考えるに、ミスティは間違いなくエイリア学園の関係者。が、その割には彼女(?)の態度が、蓮にはどうもしっくり来ない。今まで会ったエイリアン学園の連中と違い、雷門を倒そうとか敵意らしいものはない。失った記憶を思い出させてしまう特殊能力から察するに、ミスティには人ばなれした、所謂「超能力」がある気がする。その気になれば、雷門中サッカー部に何かしらの悲劇が起きているはずだ。——と見せかけた罠かもしれないが。

「やがったって、キミ、関係者でしょ?」

蓮が呆れたように声をかけると、ミスティは頭を垂れたまま両翼を大きく広げる。つやのある黒い羽は、磨き抜いた黒曜石に似た輝きを宿していた。そして、ミスティはかぎづめで大地を蹴ると、みるみるうちに大空へと消え去っていってしまう。


〜つづく〜


Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.442 )
日時: 2011/06/22 22:45
名前: 携帯しずく (ID: l0i1WlFj)

更新終わったので上げます

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.443 )
日時: 2011/06/27 19:52
名前: ふぁいん (ID: PODBTIS5)

お久しぶりです!ミスティは頭いいですね・・・最近更新ないですが大丈夫ですか!続き待ってます!

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.444 )
日時: 2011/06/29 15:23
名前: 携帯しずく (ID: TW9kGICx)
参照: また保留。

「あ、待って!」

そう蓮が、叫んでミスティを捕らえようと、手を伸ばした刹那——周りの風景が揺れた気がした。気のせいかと思って前を見つめると、辺りがいつのまにか黒一色に塗り潰された世界へと変貌している。左右、上下、どこを見ても闇だらけ。ただその中で、蓮だけが色を保って存在していた。幼い蓮も、ミスティも。誰もいなかった。音も、臭いもせず、気持ちよい闇が肌にベッタリと張り付いていた。

『……わかってるわです』
どこからか、ミスティの絶望的な声が聞こえる。が、姿はない。飛び去った割には、声ははっきり聞こえるから近くにいることは間違いない。この暗闇そのものが、ミスティなのか。

『人間は、か弱き子羊。……もう、あなたたちには、なにもできない』

ミスティが憔悴しきった声で呟いた。それに対し、蓮は、力強い声で反論する。
「雷門は、必ずエイリア学園に勝つよ」

答えの代わりに、目の前で光が弾けた。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.445 )
日時: 2011/07/03 19:13
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: hg1Gx/0a)
参照: またアンケートとろうかな←番外編?

光が治まると同時に、蓮ははっと目を開けた。そこに広がるのは、幼い日を再現したスクリーンではなく。うっすらと汚れた白い天井だった。顔だけを横に動かすと、窓。設置された白いカーテンが、風をはらんで静かに揺れている。風に乗って、アルコールのような臭いが鼻へと連れてこられていた。

(え、ここって病院?)

辺りの風景や臭いから、ここが病院だと悟った蓮は、目をパチパチさせた。
蓮の言葉通り、彼は病院のベッドに寝かされていた。服も上下無地の青いパジャマに着替えさせられ、両腕は包帯でぐるぐる巻きにされている。その腕から、蓮は鈍い痛みを感じていた。チクチクと針の先端で何度も刺されるような痛み——それは、ここが現実だと言う何よりの証だった。蓮は、雷門の仲間を心配しながら、病室のなかをみわたす。
あまり広くはない個室。ドアのわきに、洗面台、窓の近くにベッドが置かれている。ベッドは病院にある、鉄製の頑丈なものだ。
キャラバンの座席より固く、寝心地はあまりよくない……と蓮が内心でごちていると、引き戸式のドアが開く音がし、南雲と涼野が部屋に入ってきた。

「晴矢、それに風介!」

南雲と涼野の姿を見つけた蓮は、嬉しそうな声を上げた。その時、無意識のうちに上半身を勢いよく起こしてしまったため、腕の痛みが強くなってしまう。

「……いったー」

蓮は、顔をしかめながら腕を擦る。その様子を南雲と涼野はぼうっと眺めていた。やがて蓮は二人の視線に気づき、呆れられたのかと思いながら二人を逆に見つめる。二人とも、ぼんやりとした顔付きで、蓮を見てはいるが、視界に入っていない様子だ。

「風介、晴矢」

名前を呼ぶが反応はない。何回か呼んだが反応はない。痺れを切らした蓮は、少々声を荒くして、二人に呼び掛ける。

「ねえ、風介!晴矢!聞いてるのか?」

すると、南雲と涼野は驚いたように瞬きをする。そして、ゆっくりと蓮に向き直った。

「よう、蓮」

南雲は蓮に笑いかけた。が、その笑顔に蓮は、違和感を覚えたが、面に出さず、挨拶を返した。

「傷は痛むか?」

「まだ少しね」

涼野に聞かれ、蓮は、苦笑しながら正直に答えた。涼野は、蓮のぐるぐる巻きにされた腕を睨むように見、やがて背中を向けてしまった。横では、南雲がやはり蓮に背を向けている。まるで何かみたくないものをみたかのように。
蓮は、沈んだ背中たちに声をかけようと口を開くが、言葉が思い付かず、閉じてしまった。三人の間は沈黙で支配されている。そして、蓮は、南雲と涼野との間に”何か”を感じ取っていた。人が「壁」とか「距離」と呼ぶものだと気づくのに、あまり時間は様さなかった。前は違った。晴矢は出会ったばかりでなんとも言えないが、風介は、違った。少し前の風介は、常に歩みよってくれた。何の因果か知らないが、旅先でちょくちょく出会い、そのたびに近づいて来てくれた。悩みを聞いてくれたし、アドバイスもしてくれた。北海道での思い出は、今も目を閉じればはっきりと思い出せる。暗闇の中で、潮風に翻る銀髪。暗闇の中でも、はっきりと見えた青緑の瞳。目を開けると、その風介は、いない。近くにいると素直に思うことができない。実際は近くにいるのだろうが、かなり離れた場所にいるように思えてしまう。それは、悩みがあるのに言ってくれないせいだ。蓮自身、なるべく風介に隠し事をしないと決めてきた。近くにいて、支えようとしてくれる彼に失礼だと思ったからである。しかし、風介はどうか。晴矢と共に悩んでいるようであるが、全く話をしてくれない。何だか、信用されていないようで、悲しくなる。
悩みがあるなら、相談して、と視線で背中に訴えるが、何も返ってこなかった。
「コピーキャットに、バーンにガゼル……か」

やるせない思いのまま、蓮は呟いた。晴矢と風介のことは後にしよう、と別のことを頭で考えていたところ、独り言として出てしまっただけなのだが。そのバーンとガゼルと言う単語の直後、南雲と涼野がほとんど同時に振り返った。二人とも、目が大きく見開かれ、顔から血の気が失せている。

「二人ともどうしたの?」

南雲と涼野の異変を察知した蓮は、ベッドから身を乗り出しながら、心配そうに尋ねる。

「いや。何でもない」

涼野はこれ以上聞かないでくれと言うように、蓮から視線を逸らした。蓮は、悲しげに目を伏せ、黙って頷く。

「な、なあ。蓮」

その時、南雲に呼び掛けられ、蓮は顔を上げる。南雲は躊躇うようにキョロキョロしていたが、しっかりと蓮を見据えた。

「お前は、バーンとガゼルをどう思う……?」

南雲にしては珍しく、遠慮がちに聞いた。この二人がバーンとガゼルを知っているような口振りであることに気づいたが、蓮はそのことは一旦忘れ、聞かれた質問に淡々と答える。

「今回の一件は、二人の私怨でその二人は関係なそうだし。わからないよ。レアンとクララの口振りから察するにさ、彼らってキャプテンだと思うんだ。でも、僕は、彼らに危害を加えた覚えがない。会ったこともないのに、僕が傷つけているってどういうことなのかな」

蓮の意見を聞いた二人は安堵と罪悪感が混じったような顔で、互いを見やる。
二人だけの問題かもしれない。けれども、部外者であるのは苦しかった。居心地の悪さから、蓮は、二人に背中を向けるようにベッドに横になる。

「……キミは、二人を許せるか」

〜つづく〜

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.446 )
日時: 2011/07/03 19:38
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: aQf5AfGs)
参照: アンケートだべ!

さっき上に書いた番外編の話をちょっぴり…ま、どうせ七夕近いから、しずくのやつ番外で自分の祈りを赤裸々に書く気だろ?と大半のかたが思ったと思いますが、半分正解ですww七夕近いし、短編集の方に七夕の短編を書こうかと思ってます←季節ネタ大好きだよ。で、8500突破もかねてアンケートにしたいと思います^^七夕事態はもうすぐで、しずくはストライカーズ買えないとか悲しい日ですが、旧暦の七夕に合わせようかと。←つまりは、8月7日アップの予定です。アンケート来るかな…。

*アンケートなんですね* もう想像力豊かなあなたは、お気づきだと思いますが、やはり蓮関連です。

1—相手はズバリ誰?
①イナズマジャパン!みんなでわいわいやるんだべさ〜。

②この試練の戦い定番、ファイアードラゴン。スリートップとキャプテンが巻き起こす珍騒動?

③ファイアードラゴンですが、アフロディを排除。晴矢と風介、蓮だけで過ごしてみる。幼馴染み同士、本音を暴露しあうとか?幼少海藻のっと、幼少回想もあるよ。

④久遠監督と過ごしてみる。←俺得ww

⑤イナズマジャパンですが、海外組を招いてみる。常識はずれな七夕が幕を開けます?

番号【】
よければ理由も【】

2—出来れば、その七夕に期待する話とか、あの子とお風呂でどき☆みたいな出会いがほしいとか……要望を書いてくださると嬉しいです
【】

*ありがとうございます*
後で、作者もやろう。
ちなみに次回いこう、やっと帝国に行けそうorz

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.447 )
日時: 2011/07/03 20:49
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 6B38yoz9)

1—相手はズバリ誰?

番号【③】
よければ理由も【④の誘惑にも負けそうだったのですが、幼馴染の三人でのんびりと過ごして頂けたらとw】

2—出来れば、その七夕に期待する話とか、あの子とお風呂でどき☆みたいな出会いがほしいとか……要望を書いてくださると嬉しいです
【おひさま園の七夕思い出話も三人にしてもらいたい……とか在り来たりですね、わかります】

お久しぶりです^^ 最近、お忙しいようなので心配していましたが……
れっ蓮くん大丈夫ですか!? と思ったら晴矢、風介、結構大変な事態に陥ってますね……続きがものすごく気になります><
参照8500突破おめでとうございます。もう流石ですとしか言いようがないですっ^^*

アンケート一番乗りかなーとか思いながら書き込んでましたw
季節ネタ楽しいですよね!というかしずくさんのアンケート読むまでもうすぐ七夕だということを忘れてた自分爆← ストライカーズ、めちゃくちゃ欲しいです。でも親の目が冷たいよどうしましょう!( そう言えばストライカーズの公式サイト、すっごいですねw個人的には円堂のお嫁さんが一番気になるのですが、一番遠い目標になってるし……哀しいです;

あ、なんか語りすぎてますね……でも気にしない!(
ではでは、お邪魔しました;

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.448 )
日時: 2011/07/04 09:35
名前: ふぁいん (ID: 907dJaBJ)

番号【③!】
よければ理由も【やっぱりこの三人で決まりでしょう!蓮君たち大好きです!】

2—出来れば、その七夕に期待する話とか、あの子とお風呂でどき☆みたいな出会いがほしいとか……要望を書いてくださると嬉しいです
【やはり幼少回想!特に蓮君は、前の短編の言葉があるのでチョー期待です。】

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.449 )
日時: 2011/07/04 16:52
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: PODBTIS5)
参照: 最近乙女ゲームに近づきつつある私。

>>桃李さん
お久しぶりです!向こうにも書きましたがコンサートと書いていやああああと読む奴のせいで中々来れませんでしたorz8500は桃李さんやみなさまのおかげですっ。私が無駄にクリックした回数も多数含まれていると思われます←
あ、もう季節ネタ大好きですw王道大好きですもんw私も昨日友達がもうすぐ七夕だねーと呟くのを聞くまでは忘れていました。で、聞いて季節ネタは必ず書かなきゃいけないと思っていた私は俄然やる気になっていたり←
アンケート有難うございます^^やはり幼馴染コンビで来られたか!④に惹かれるとはまさか同士ですか!?友達には即否定されたのですが、こちらも面白いような気がしちゃうんですよね。大介さんと過ごすのも悪くない。サッカーについて永遠と語りあって終わる七夕。もはや七夕の域を超えてます。
在り来たりでも嬉しいですよ!お日様園時代の七夕話書…王道ですが子供らしい恥ずかしい思い出とか、三人でどう過ごしたとか。妄想がひっきりなしに膨らみますどうしましょう。
ところで桃李さんはお願いはどうしますか?私は多分3つくらい書きますかね〜もっと文章を上手くなりたいと部屋のTV地デジにしてとかテスト・・・ぐすんとか。いつもありがとうございます^^

>>ふぁいんさん
アンケートテンクスです^^
やっぱり幼馴染は大人気ですね。最近蓮に関する妄想って、ガゼバンしかできないんですけどどうすればいいですか←
うーん。七夕で書いたお願いに恥ずかしいものを蓮に書かせればいいんですね〜今からとっても楽しみですw

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.450 )
日時: 2011/07/05 14:08
名前: 夢歌 ◆a5QxxPCyHs (ID: PODBTIS5)

番号【③】
よければ理由も【この三人で萌え死にしたいww】

2—出来れば、その七夕に期待する話とか、あの子とお風呂でどき☆みたいな出会いがほしいとか……要望を書いてくださると嬉しいです
【】

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.451 )
日時: 2011/07/05 19:13
名前: 星沙 ◆RkKLSqUPDc (ID: IsQerC0t)
参照: あぁ〜。期末でヤバス((

番号【3】
よければ理由も【排除しましょうk(
たまには排除して3人で語り合うのもいいですよね〜きっと】

2—出来れば、その七夕に期待する話とか、あの子とお風呂でどき☆みたいな出会いがほしいとか……要望を書いてくださると嬉しいです
【特に要望がないというwww】

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.452 )
日時: 2011/08/29 23:44
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: WV0XJvB9)
参照: コメント返しは合宿後に

「「蓮!」」
二人ぶんの名前を呼ぶ声と共に、ドアが乱雑に開かれれ、南雲と涼野が蓮の部屋に入ってきました。二人とも目がつり上げて、蓮を睨んでいてなんだか怖い。……ですが、蓮は中でまさかのお着替え途中。ベッドの上にはパジャマが上下畳まれ、上半身はすっぽんぽん。体が細くて筋肉がむだなくついてるとか描写はめんどいんでパス。こら、そこ数行前の描写読んで興奮しない。
蓮は、片手にファドラの赤いシャツを握り締めたままの体勢で硬直しています。南雲と涼野も固まりました。微妙な沈黙が三人の間に流れます。やがて蓮は、二人とまともに目があった瞬間、湯沸し器のごとく顔を真っ赤にして、

「ノックくらいしろ!」

怒りに任せ、身近にあったジャージの上と枕を南雲と涼野に投げ付けます。人に枕とジャージは投げてはいけません。涼野は素早くしゃがみました。涼野の頭上をまず枕、ややあってジャージが通りすぎて、ちょうど涼野の真後ろに立っていた南雲に襲い掛かりました。まず南雲は先にとんできたジャージに顔を覆われ、続いて枕が彼の顔面にクリーヒット。ごうと声にならない悲鳴が上がり、はらりとジャージが剥がされます。枕もジャージも、そのまま南雲の足元に落っこちました。ですが南雲は、ぼうっとしません。目を吊り上げるとすぐさま反撃にでます。
「蓮、何しやがる!?」
足元に落ちていた枕をお返しと言わんばかりに、蓮に向かって投げます。が、俊敏性が売りな蓮にはあっさりとかわされてしまいました。南雲は、舌をならし、蓮は交わして、あたまからすっぽりと赤いシャツを被りました。着替える間は結構あった気がしますが、それはそれ。
「もう、朝から何の騒ぎ?」蓮は、むすっとしながら南雲と涼野を見て問いかけます。朝から騒ぎを起こされるのには慣れっこなので、いつも通りの対応と言えるでしょう。慣れるって怖いね。
その言葉に、二人は思い出したように「あ」と声を出して、蓮に詰め寄るのです。そして、おもむろに南雲に腕を掴まれ、
「いいから来い!」
「はーなーせー!」
反論することも許されないまま、かなり強い力で部屋から引きずり出されたのでした。
*
南雲が蓮を解放したのは、食堂の窓際でした。そこには、一本の笹が立て掛けてあります。カラフルな短冊が緑のなかに彩りを作り出しています。笹は、アフロディがAmazo○で購入した模造品ですが、実によく出来てます。茎の色や細かい笹の葉が本物そっくりに再現されていますね。ちなみに短冊は、ファドラの皆さま方が書いたものですよ。「今年は日本式にした方が美しいと思わないかい?」と、やっぱりアフロディが提案して、みなさんで短冊を書くことになったんです。ちなみに笹に短冊飾る文化は日本独自のものだそう。間違っていたらごめんなさい。
「蓮、これはどういうことだよ!?」
お怒りの南雲は、笹の下の方に飾られていた一枚の短冊をビシッと指差します。蓮は、首をかしげながらその短冊を手ですくうように持ち上げて、読み上げました。
「えー『馬鹿な晴矢と風介に、サッカーで勝てますように 白鳥 蓮』って、えぇ!?」
書いた覚えのない短冊に、蓮は絶叫。明らかに他人の字で願い事と名前が書いてあります。蓮は爪があまいじゃなくて詰めがあまい犯人に笑いかけます。自分ならわからないようにパソコンで打つか、脅迫文みたいに新聞の文字を切り抜くと考えましたがみなさんは真似をしないように。
蓮の頭が回り始めます。頭の中では、情報が忙しく駆け巡ってます。短冊の綺麗な字体には、見覚えがありましぞ……と頭の引き出しを片っ端から開けていく漣じゃなくて蓮。南雲と涼野が「馬鹿とはどういうことだ」と詰問しても、全く聞こえていない様子。ものすごい集中力です。しばらくすると、蓮は手を伸ばし、一枚の短冊を笹から外しました。そこには、似たような字で『ボクがさらに美しくなりますように』と書いてあります。名前は書いていませんが、こんなことを書く奴はファドラに一人しかいません。一人いれば十分です。
「アフロディったら、またイタズラして……」
蓮は、実にいい笑顔で優しく呟きました。優しい声ですが、顔には血管が浮かび上がっていますし、アフロディの短冊をくしゃっと握り潰してます。と、そんなことを全く知らない南雲と涼野が蓮に近付きます。

「蓮、オレに喧嘩を売るとはいい度胸だな。龍に食われる覚悟はできているか?」

「蓮、見損なったぞ。凍てつく龍の瞳に脅えるがいい」

蓮が振り向いた瞬間、彼らが頭を下げたのはゆうまでもありません。後、アフロディが翌日粛正されたのはまた別の話。蓮がファドラ内で、『微笑みが最も龍に近い男』と呼ばれるだけはあります。

「あのねえ、短冊ちゃんと見てよ! 僕の字じゃないでしょ」

それから蓮は、握り潰してぐちゃぐちゃになった短冊と、問題の短冊を二人に差し出して一生懸命に説明。南雲と涼野は、怪訝な顔付きで両方を見比べていましたが、やがて納得したらしく、

「これは私たちを陥れようとした罠だったのか」

普通気付くよね。と蓮は、内心で思いましたが言いませんでした。

「……だよな。アンタの字にしちゃ綺麗すぎると思ったぜ」

と南雲の皮肉混じりの言葉を、

「晴矢より雑じゃないもん」
嫌みで返す蓮。当然短気な南雲は、食って掛かってきます。

「あんだと!?」
「だって事実じゃないか」
「言ったな蓮」
「ああ、言いましたけど何か?」
「落ち着け、二人とも。それでは、アフロディの思う壺だぞ」
低レベルな争いが繰り広げられそうになるところを、涼野がなだめます。獣レベルのいがみ合いです。二人は、黙ってにらみあいますが、渋々と言った感じに喧嘩をやめました。南雲と涼野の喧嘩も、蓮と南雲の喧嘩もあまりレベルが変わらないのは、仲良しな証拠でしょう。
ここで、そういえばと南雲が呟きました。
〜つづく〜
ひさひざ更新ですwしずくは明日から群馬で修行してきます!多分二日ほど音沙汰なくなりますが、生きてますよ←
群馬から更新できたとしても、短編が限界な気がします。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.453 )
日時: 2012/01/04 18:40
名前: fainn (ID: 9kyB.qC3)

上げます・

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.454 )
日時: 2012/05/16 19:37
名前: sizku ◆UaO7kZlnMA (ID: 9kyB.qC3)

保管のため上げです><

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.455 )
日時: 2012/07/15 22:51
名前: あいん (ID: 9kyB.qC3)

あげ。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜アンケートやってます☆ ( No.456 )
日時: 2013/01/04 23:04
名前: しずく (ID: 9kyB.qC3)

そろそろ再開予定のためあげ;;

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.457 )
日時: 2014/02/14 23:31
名前: しずく ◆CD1Pckq.U2 (ID: ErSo6VVm)

皆様、二年ぶり…かな?しずくです。
まず謝罪から。二年近く小説の更新を放置してしまい申し訳ありませんでした。
しかし、最近またイナズマ熱が再燃致しまして、この小説を再開させることにしました。
ただいま映像版でこの小説の世界版を書いているのでその小説と平行する形になりますが、蓮とバンガゼの話をきちんと終わらせたいと思います。よろしければ、またお願い致します。

2014 2 14 しずく

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.458 )
日時: 2014/02/16 16:36
名前: しずく (ID: Qz56zXDk)

この小説ですが、二次小説の映像版にお引っ越し致します。
しばらくは移転作業のためこのスレの丸々コピーになりますが、それが終わり次第続きを書いていきます。

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.459 )
日時: 2014/07/07 15:26
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 9kyB.qC3)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=26160

 おそばせながらコピー完了しました。
 上から現在のスレへ飛べますので、来てくださるとうれしいです。