二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.222 )
日時: 2011/02/03 20:30
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: PdKBVByY)

「マルヴィナ! 久しぶりだな!」
「キルガさん、おかえりっ!」
「おぅセリアス! 帰ってこれたって聞いて、あわてて来たぞ」
 マルヴィナは、仲間天使とハイタッチした。同じ剣術を学ぶ男天使がほとんどであった。
つまり、仲間の女天使はかなり少ない。
 一方キルガは、やはりというか一部の女天使に絶大な人気を誇って(?)いる。
少々距離が遠く見えるが、しっかりと彼の周りに集まっているという有り様である。
 ちなみに、セリアスは上級天使もしくは見習い天使の方に人気がある。
あの時世界樹を一緒に見に行った(行かされた)天使テルファもそこにいた。
「・・・しばらくしたら、世界樹に行こう。久しぶりだから、何かいろいろ話もしたいだろ?」
「あぁ、分かった」
「んじゃ、気が済んだら、“星の扉”に」
 了解、と答えた後、多分セリアスが一番早く行くだろうな、と思ったキルガであった。


 マルヴィナの、先ほど言った通り数少ない友達の女天使の二人。
 長めのツインテールに天使界製の眼鏡をかけた少女がチュラン。
栗色の、ぼさぼさロングヘアーの勝ち気そうな少女がリズィアナ、通称リズィー。
他によく話す奴らと言えばあとは男ばっかりである。特にチュランとリズィアナとよくいるのは
アレク、フェスタ、ラフ、カルテ、リーラス、・・・とそんなものだが、今回は関係ない話。
 チュランはイザヤールの幼なじみラフェットの弟子である。
リズィアナは、・・・イザヤールファンらしい。つまり実際にはそう関係なかった。
 ともかく、ラフェットの弟子、という立場から、チュランはラフェットに会うよう勧めた。
「最近石碑の前で祈ってばっかなんだ」チュランは言う。
「石碑・・・?」
「そ。イザヤールさんのお師匠様の石碑なんだってさ」今度はリズィアナだ。
「イザヤールさまの師匠? ・・・あれ、そういえばわたし、聞いたことないな・・・」
 それに何で石碑、と言いたげなマルヴィナに、チュランは呟くように答える。
「んー・・・その話するの、イザヤールさんがタブーにしちゃったんだけどね。多分ラフェット様なら教えてくれるよ」
「だろーね。ずっとマルヴィナとイザヤールさんの無事、祈ってたから・・・ね、ラフェットさんてさぁ、
どう見てもイザヤールさんのこと好きなんだよね?」
「「はい?」」
 マルヴィナとチュランの声が重なる。
「・・・あんたいきなり何言ってんの・・・?」チュランが呆然とした顔のまま言い、
「そりゃそうだろ幼なじみなんだから」“好き”の意味を別方向に捕らえた(というかそっち方面しか知らない)
マルヴィナが首を傾げながら答える。
「・・・二人とも疑問詞なんだ・・・マルヴィナはともかくチュランならわかると思ったのに」
「「だから何が?」」
 再び重なった鈍感少女二人の声に、リズィアナは本気で脱力した。


 チュランの言うとおり、ラフェットは石碑の前にいた。
 マルヴィナが話しかけると、ラフェットは驚き、また喜んだ。イザヤールが一緒でないことには、顔を曇らせていたが。
 そして、自分が祈っていた石碑に名を刻まれる天使のことを、マルヴィナが何も言っていなくても語りだす。

 石碑に刻まれた天使の名はエルギオス。

 かつて大いなる天使と呼ばれ、またイザヤールの師匠だった。
「マルヴィナは彼の孫弟子ということになるね。・・・カッコよかったよ、彼は。私も大好きだった」
 マルヴィナはへぇ、と頷く。憧れのラフェットが憧れる天使が師匠の師匠、・・・何だこのややこしい設定は。
「彼はね、ある村の守護天使だったんだ。でも、あるとんでもない嵐の日——不運にも彼は、
人間界に降り立つべく星の扉を通った直後でね。それ以来——天使界には帰ってこなかった」
「・・・・・・・・えっ」
「それ以来、その村には守護天使が誰も就いてなくてね。イザヤールもウォルロ村に行っちゃったっしょ。
だからそれ引き継いで、マルヴィナもウォルロ村守護天使になったわけだけど・・・もし彼がそのままいたら、
イザヤールもマルヴィナもその村を守護してたんだろね」
「・・・その村って」
「ごめん。名前忘れた」
 あっさり言って見せたラフェットだが、口調はやはり寂しげだ。
「・・・イザヤール、恐れてたんだよ。マルヴィナまで、もう戻って来ないんじゃないかってね。
人間界に降り立った天使はみんな戻って来ないし、あいつにまで何かあったらまずいって思ったんだけど・・・ダメ。
言っても聞かないんだよ。あいつ、見かけによらず弟子思いだからさ」
 ぽん、とマルヴィナの頭に手を置く。そして、はにかんだ。「愛されてることで」
「あい・・・」
 マルヴィナは考え込む。思いついたのはエリザの姿だった。
(・・・よく分かんないな・・・何なんだろ?)
 首を傾げかけるマルヴィナの頭から手を放し、ラフェットは石碑をもう一度見る。
「・・・イザヤール、きっと帰ってくるからさ。気長に待とうぜ。
あいつは諦め悪いから、かなり時間かかるかもしんないけどさ」
 いささか元気の戻ってきたラフェットは、そう言ってまた笑った。

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.223 )
日時: 2011/02/04 22:13
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: PdKBVByY)

 キルガの想像通り、一番初めに集合場所に来ていたのはセリアスだった。
待ちに待った世界樹との対面がうれしいんだろう——ということは、キルガに言われるまでもなく見え見えだった。
「あー、確かあの時セリアス、ここにいたん」
「言うな言うな言うなっ! いや反省してますマジです勘弁してくれっ」
「わたしが上級天使だったらそれは通用しないぞ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 完璧に黙らされた。

 ・・・ともかく、世界樹につく。セリアスはマルヴィナが初めて世界樹と対面した時のように、
その大きさ、美しさに数秒見とれる。
「すっげぇなぁ・・・柄にもないけど、なんか生命の神秘、って感じだな」
「[たまには]詩人だな、セリアス」
「いやぁ、それほどで——キルガ、それ褒めてんのけなしてんの?」
「半々」
「・・・・・・・・・・・・・あそ」
 即答され、一気に脱力するが、世界樹を前に再び立ち直る。
「俺、もしかしたら天使界史上一番幸せなやつかもしんない」
「単純かつおめでたいことで」マルヴィナは笑って、世界樹の南側に立つ。
 キルガは東に、セリアスは西に。それぞれ、左膝を地につき、右膝を立て、
両肘を足につけない程度に下げて両手を組む。“祈り”を表す。
 そして、——祈る。

 神経が、集中し始める——





             —————————————・・・・・さっ・・・






 ——前に、何かの倒れる音を、キルガもセリアスも前から聞いた。
「・・・っ、キルガ! マルヴィナがっ」
 セリアスの声に、キルガは目を開ける。祈りは、中断された。だが、それは彼らにとっては今はどうでもよかった。
マルヴィナが倒れている。そっちの方が重要だったのである。
「・・・マルヴィナ・・・?」
 彼女は、まるで眠るように倒れていた。顔が穏やかすぎる。息はしっかりとしていた。
 キルガは訝しげに首をかしげた。どう考えても、この眠り方は尋常ではない。
だが、なぜかこのまま起きないのではないかとは思わなかった。
「・・・ダメだ。埒があかねぇ。一回、戻ろうぜ」
 キルガは頷く。マルヴィナを背負うべく触れようとして、

「——っ!?」

 結界に触れたような痛みを覚えた。何かにはじかれたように。
「・・・マルヴィナ・・・? 一体、何があったんだ・・・?」
 答えは、なかった。





 ———————美しい庭園だった。
 どうやらわたしは、眠っていたらしい。頭が妙にくらくらした。
 ・・・ここはどこだ? ・・・一言で言うとしたら神秘的、という言葉しか思いつかないそこに、わたしがいる。

“ 人間は、この世にふさわしくない ”

 不意に聞こえたその低い声に、わたしはびくりと肩を震わせる。

“ 嘘をつき、平気で他人を貶める。そんな人間のなんと多いことか ”

 誰? 声だけで、圧倒されそうになる。

“ 私は、人間を滅ぼすことにした ”

 私のすぐ横を、赤い光がすごいスピードで通っていく。もう一度、ぎくりとした。
人間を、滅ぼす——?
ダメ、と声をあげたくて——声が出ない。
けれど、すぐにもう片方の横を、今度は青い光が通り抜ける——
 わたしの脳裏に、世界がうつった。赤い光が、世界に届くか、届かないか。
そんなところで、青い光が赤い光を止めた。二つの光が散った。
 お待ちください、と、綺麗な声が聞こえる。

“ 何故・・・止めるのだ。人間たちをかばう必要などないではないか ”
“ 私は人間を信じます。まだいるはずです、清き心を持った人間が! ”
“ 邪魔をするな、————! ”

 声が一瞬途切れる。誰かの名を呼んだように感じた——

“ ・・・私は人間を信じます ”

 悲しげな、綺麗な声がする。

“ 私は・・・身を以て、そのことを——— ”

 ・・・その瞬間、光がはじける。目の前が明るくなった。
それは、まぶしくて、暖かな、ひか———








 その瞬間、わたしは——












         Chess)おお。かつてないほどの超中途半端。でもこれ以上書くと2300文字オーバーしそうだし。
              これで〜いいのだ〜♪ (セリアス: 開き直るな&歌うな!!

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.224 )
日時: 2011/02/04 22:47
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: PdKBVByY)

「っ!!」
 ——その瞬間、わたしは、

 ・・・マルヴィナは、目を開けた。

「マルヴィナ!」
 目に見えたのは、キルガとセリアスの二人。
「・・・あ、あれ・・・? ここは?」マルヴィナの呟きに、
「・・・おいおいおいおおいおい(←“お”が一つ多いことに気付かず)、まさか記憶喪失ってことはないだろな!?
わたしはどこここは誰とか言わなきゃ、・・・アレ?」セリアスが混乱し、
「セリアス、逆」キルガが冷静に指摘、
「あ、そうだ、わたしは誰ここはどことか言わなきゃ問題ない!」セリアス訂正、
「・・・わたしはマルヴィナですか?」マルヴィナがちょっとボケてみて、
「聞くのかーーっ」どぉっと脱力するセリアス。ほぼ漫才である。
「・・・マルヴィナ。大丈夫?」
 最後のキルガの一言に、マルヴィナは頷いた。

「・・・何か、変な感じがする。・・・意識が別のところにあったような・・・」
「・・・人間界で“夢”と言われるものか?」
「分かんないよ。見たことないんだし——って、あれ? ・・・翼は?光輪は——」
 マルヴィナが座り込んだまま、背と頭の上を確認(実際には見えなかったが)する。何もなかった。
「・・・戻らなかった? ・・・いや、祈りを中断しちゃったからか」
「・・・多分」
「・・・そっか」
 溜め息をつき、ごめん、と謝る。“夢”の内容を、忘れないうちに話しておこうと思った。
そして、口を開いた——


———守護天使マルヴィナ、守護天使キルガ、候補セリアス・・・私の声が聞こえますか?


 だが、聞こえたのはマルヴィナの声ではない。無論、マルヴィナが発したわけでもない。
その声は、世界樹から聞こえた——
「・・・えっ? あ、あなたは・・・!?」
 言って、マルヴィナははっとした。先ほどの、綺麗な声。
今聞こえる声は、同じだった。

———今は名を語ることはできません。・・・一度人間界に落ちてもまたここへ戻って来れるとは、
     これも奇跡というべきでしょうか。・・・あなたたちに、お願いがあります。世界に散らばった女神の果実・・・
     それを、全て取り戻してほしいのです。私のチカラを宿せし青い木が、あなたたちをいざなうでしょう

「・・・女神の果実・・・」
「青い木・・・?」
 三人は復唱した。

———守護天使マルヴィナ。あなたに、一つの呪文を授けます。
     転移呪文・・・名は、“ルーラ”

「る、—————っ!?」
 今度は復唱できなかった。
マルヴィナの周りに、あのまぶしくて、暖かい光が生じる。
マルヴィナの中で、何かの封印が解かれたような感触がした。
 何かを身に着けた、そんな感触が——

———天使たち・・・どうか・・・果実・・お願・・・し・・・・・

 ・・・世界樹の光と声は、そこで消えた。



「・・・ど、どーなってんだ? 今の声、一体・・・」
 セリアスが変わらぬ体勢のまま、マルヴィナを見る。「なんかマルヴィナにかなり期待してたみたいだけど」
「分かんないって。・・・とりあえず、長老オムイさまにこのこと報告——」
「聞こえておったぞ、守護天使マルヴィナよ」
 別の場所から聞こえた言葉に、マルヴィナは立ち上がり、キルガは振り返り、セリアスは体勢を整える。
無論、長老オムイであった。近衛天使とともに、杖を片手に、しっかりと頷きながら。
「・・・今のはきっと、神のお告げ。お前たちが、女神の果実集めを命じられたのならば従うのみ!
マルヴィナ、キルガ、セリアス。再び人間界へ赴き、散らばった七つの果実を集め無事戻るのじゃ!」
「はっ」

 三人は、同時に了承した。わずか一ミリもずれずに。