二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機 〜魔光石編〜 ( No.304 )
- 日時: 2011/06/10 16:58
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
8 試練の間
「円堂くん!!起きなさい!!!」
「後五ふ〜ん」
「もう〜」
ベッドの横で、木野は深いため息をついた。ベッドには幸せそうに寝ている少年—円堂守が時間通りに起きないのはいつものことだが、いいかげん早起きには慣れてほしいものである。木野は昨日円堂が豪炎寺たちと晩くまで夜更かししているのは知っていたが、楽しそうに話している声が聞こえた時、邪魔する気が失せてしまった。無理やりにでも寝かせるべきだったか、と少し心の中で後悔するが、今更遅い。しかし、豪炎寺や鬼道たちはどんなに夜更かししても時間通りに起きるはずなのだが、円堂だけはちがう体質の持ち主の様だ。その体質は木野にとってはいい迷惑である。
「ハァ……円堂くん、豪炎寺くんとか皆練習に行っちゃうよ?」
「ふぇ?ごーえんじたち……………ヤベェ!!!起きなくちゃ!!!」
「食堂で朝ごはん食べてからね!!」
「わかってるって!!」
円堂がベッドから飛び起き、そのまま部屋を出て行った。しかし、数秒経つと、扉から顔を出して、頭を掻きながら言った。
「で…食堂ってどこだっけ?」
「フフフ、ここ広いもんね」
「あっ、キャプテンやっと来ましたね」
「遅いぞ、円堂」
「う〜何で豪炎寺は起きれんだよ〜」
円堂が愚痴をこぼしながら、豪炎寺の隣に座った。すでに円堂以外は起きていて、朝食を食べ終わる頃だった。何人か目を眠そうにこすっているが、食事を口の中に詰めている。
「あっ、守くんが食べ終わったら、練習なんで、先に夏未さんたちのところへ行ってきまね」
「冬花さん、私も行きます」
「じゃあ、よろしくね。音無さん、冬花さん」
音無と冬花は「はい」と小さく答えると、そのまま、夏未たちの家へと向かった。
城下町の普通にどこでもありそうな小さな家が、夏未たちの物だ。木材でできている丈夫な扉を2、3回叩くと、すぐに中から夏未の返事をする声が聞こえた。
「はやいのね」
「いつもこんな感じですy「おっはよ〜!!」うわっ!!」
中から春奈が突然飛び出し、音無に抱きついた。
「今日も練習なの?」
「う、うん。それで、呼びに来たんだけど…」
「春奈、アンタはそろそろ守たちを呼びに行って」
扉を開けたまま、夏未は春奈に呼びかけるが、なかなか春奈は音無を離そうとはしない。抱かれている音無は少し苦しそうだ。
「えぇ〜、めんどk「いいから行きなさい」はいはい」
「もう一人の守くんたち、どこに行ったんですか?」
「いつも三時くらいから技の修行とかしてるの、休みのときはおそくまで寝てるけど」
「朝から早いんですね」
冬花が言うと、夏未は「男の子なんだから当然よ」と返した。いくら豪炎寺や鬼道でもそんなに早く起きるのは無理だろう、キャプテンに関しては言うまでもないが。考えるだけで無駄な時間を浪費するだけだ。
「見たいなら、私が連れてってあげるよ?もしかして、円堂たちの練習に役立つかもしれないし」
「でも、キャプテンたち待ってるし…」
「円堂くん達のことなら秋を起こしてから、言っておくよ。厳しいところかもしれないけど、少しくらいなら、円堂くんたちの役に立つんじゃないかな?」
「よし、じゃあ行こう!!」
春奈が音無の手を引っ張り、歩いて行った。その後を冬花が一礼すると、音無の後を追った。
「う〜そろそろ、秋を起こさなきゃ」
夏未は音無たちの姿が見えなくなるまで、見届けると、背伸びをして、扉を閉めた。
「すごいところだね……あれ?看板に何か書いてある」
「この字はここの国の絵文字なの、看板には「修行の間」って書いてるんだよ」
春奈に連れてこられた冬花と音無は、町から少し外れたところにやってきた。目の前には石で造られた五階建てくらいの家があり、上にある看板には二つの剣と扉が描かれている。
「ここにもう一人の守くんたちがいるんですか?」
「うん、多分今日は50層かな?」
「50!?そんなにあるの?でも、これ見ただけだと、五階くらいしかない気が…」
「うん、だって地下に修行できるところがあるもん、最下層には行ったことないけど、300くらいはあるって噂があるよ」
「一気に300まで行かないんですか?」
「行かないじゃなくて行けないの。私たちは一層ずつクリアしていかないと、次の層までは行けることができないからね」
「大変なんだ」
「それに、まだ最高でも83層までしか攻略してないから、その下はまだ謎だらけなの。ちなみに、83層をクリアしたのはもちろん夏未」
「こっちの夏未さん本当にすごいね」
「でも、クリアするにはどうするんですか?」
「それは各階にボスモンスターがいるの。でもそのモンスターがいる場所はものすごく広い空間から探さないといけないから、めんどくさいんだよね〜それで、ボスを倒せば、見事にクリアってこと」
「考えるだけで気が遠くなる…」
「フフッ、じゃあ、そろそろ入ろう!」
春奈たちは修行の間に入って行った。
「誰かいますか〜?」
中はとても広い空間が広がっていた。一番奥にはエレベーターの扉に似た様なものがある。
「あれ?今日は休みじゃないはずだけど…」
「出かけたんじゃないですか?」
「出かけてるなら、カウンターのところに置手紙か何かが置いてあるはずだけど…いいや、それより守たちを呼びに行かなくちゃ」
春奈は警戒もせずに、ずかずかと奥に進んでいった。音無と冬花は少戸惑ったが、不安な気持ちを抱えながら春奈について行った。彼女たちは知らない、このカウンターに立っていた家主は二度と戻ってこないことを。
春奈が立ったのは、例のエレベーターの扉の前だった。転移門と呼ばれるらしく、これを使えば、皆が攻略したところまで行けるのだという。扉に入る前に、「50」と書かれているボタンを押し、扉が開く。扉の向こうは真っ白の空間が広がっている。その中に春奈たちは入って行った。
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機 〜魔光石編〜 ( No.305 )
- 日時: 2011/06/10 16:59
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
同じ空間が数秒続くと、いきなり周りが熱気に包まれ、空間が赤く照らされている洞窟へと姿を変えていた。赤い光の正体は勢いよく燃え炎だった。炎が辺りの空間を自分の光でほのかに照らしていたのだ。
前に晴矢が言っていたここの厳しさが改めて思い知った。
じっとしているだけでも、炎がじりじりと体力を削っていく。
「熱い…」
「ここは『灼熱の地獄』。でも、このくらいでへばったら、攻略なんて夢のまた夢の話だよ。それで、ここに守がいるはずだけど……」
春奈たちが耳を澄ませると、どこかで剣を振るう音が聞こえた。同時にぶつかり合う金属音も反響して聞こえる。
「熱いならここで待ってて、私の魔法でどうにか気温を下げるけど」
「ううん、私は大丈夫。冬花さんは?」
「私も大丈夫です」
二人の返事を聞くと、春奈は少し速さを下げて歩いた。
「ハァ、ハァ…もう一度」
ギュインと機械が高速回転する音が響くと、重い金属でできた石ころくらいの大きさの球が目にもとまらぬ速さで飛んできた。オレンジ色のバンダナの少年—守はそれを剣で一つ一つ真っ二つに切っていた。バンダナは目の位置までに下げられていて、視界が見えない状態で無数の球を刃の部分に当てている。
「目隠ししてるのに、ちゃんと当てている…」
「それに、球もきれいに切れていますね」
音無と冬花が感嘆の声をあげていた。こんなにも熱い空間、そして守がいる場所はバランスがとりにくそうな岩の上に立っている。下はマグマが流れてあり、もし落ちてしまったら確実に命はなくなるだろう。
「守〜!!そろそろ護衛だよ〜!!」
「もうか…」
守がつぶやくとバンダナを元の位置に戻し、大きな岩たちの上を跳びながら、春奈たちの方へ向かった。近くで見ると、守は全身汗だらけで、服がびしょ濡れになっている。まるで豪雨でも降ったのではないかと思わせた。しかし、表情には疲れたようすは一切ない。むしろまだ物足りなさそうだ。
「お前たちも来たのか?」
「はい、キャプテンたちの練習にも役に立つのではないかと思いまして」
「ここはレベルが七以上じゃないと、修行ができない。余所者が勝手に使えば、命を落としかねない」
「バ〜カ、そのくらいこの子たちもわかってる。それに誰もここで修行させるだなんて言ってない」
春奈が見下すような態度で言った。いつもなら怒るはずなのだが、今日は珍しく反抗すらしてこない。
「念のために言っただけだ」
「あれ?修也は?」
「修也なら夕香のところに行った」
「またか…アイツはおいといて、守は一旦家に帰ってシャワーでも浴びてきたら?」
「あぁ、そうする」
「じゃあ、戻ろう」
「うん(はい)」
四人はこの灼熱の地獄を後にした。
「そういえば、管理人さんどこに行ったのかな?」
「俺が行った時にはまだいたぞ?」
「そうなの?じゃあ、やっぱりお買いものかなぁ?」
「どうでもいい、そんなことは…」
守がぶっきらぼうに答え、早歩きで少し前を歩き始めた。
「じゃあ、俺は家に戻ってる」
「うん、夏未に伝えておく」
家の扉の前まで着くと、春奈たちと守は一旦別れた。途中何人もの人たちに心配されたが、守は笑いながら「大丈夫」と答え、町の人たちに安心させた。
「熱かった〜」
春奈は慣れているらしく元気に前を歩いているが、それとは裏腹に音無と冬花は汗が滴っている。
「音無さん、汗がすごいですね」
「冬花さんも」
「シャワー入ればよかったのに」
「でも、キャプテンたち待ってるから」
音無たちが河川敷に着くと、円堂たちはすでに練習を開始していた。そこには秋と夏未もいる。
音無たちが来たのが気づくと、慌てたように新しいタオルを用意した。
「音無さん、冬花さん汗がすごい…」
「あ、ありがとうございます、木野先輩」
音無と冬花は汗を拭き取り、渡された水を一気に飲み干した。
「どこまで行ってたの?」
「なんか…凄いところです…」
音無が力なく答えた。
「50層?」
「うん、守がそこにいるから行ったけど、この子たちには熱かったみたい」
そこへ一旦休憩を取るために、ドリンクを取りに来た円堂たちも、音無と冬花の汗に驚いていた。
「音無、フユッペ、すごい汗だな」
「俺たちよりすごくないか?」
風丸の言うとおり、音無と冬花の汗の量は尋常じゃない。いまだに、汗は滝のように流れている。
「気にしないでください、先輩方は練習してください」
「無理するなよ、春奈」
「うん、お兄ちゃんもね」
水を飲み終わるとすぐに円堂たちは練習に戻って行った。