二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜魔法募集終了!〜 ( No.403 )
日時: 2011/06/21 19:30
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
参照: そろそろ、パソコン禁止令が下される……

14 平和か戦争か

「殺すってことなのか!?」

円堂が声を上げた。その声には少しだけ恐怖の色も混ざっていた。人が殺されるという恐怖だ。依然に守は表情を変えずに適当に答える。

「あぁ」
「いくら敵でも相手も命があるだろ!!そんなの簡単に奪っていいのかよ!?」
「……これが俺たちのやり方だ」
「けど!!」

いまだに円堂は反抗しようとする。しかし、次は反応すらせずにさっと食堂を出てしまった。

「あらら、最近あまり暴れてないからストレスが溜まったのかな?」

夏未が笑顔でのんきに言った。春奈は一切関心を示さずに大好物のフュームをパクパクと食べ続けている。顔がとても幸せそうにほぐれている。

「おい、夏未。止めないのか!?」
「円堂くん、もう一度言う、ここは貴方の世界じゃない」
「っ…!!」
「アンタの世界みたいに甘くはない、ここでは殺し合いをしなければ生きていくことはできないの!分かったならこれ以上抵抗するようなことは言わないで」
「……」

言い捨てるように言うと、夏未は同じく食堂を出て行くところで足を止めた。

「あっ、春奈、アンタはどうするの?」
「がんばってね〜」

と、手をヒラヒラさせながら言った。やる気はまったくないようだ。

「ハァ…姫をよろしくね。後、円堂くんたちもここで待機しててね」
「夏未、気を付けてね」

言葉の代わりに、笑顔で冬花に答えると、夏未は腰にある剣に手を置きながら食堂を出て行った。茜や晴矢たちもその後を追う。

「な、夏未様、攻撃班は…」
「足手まといはいらない。アンタもここで待機してなさい」
「は、はっ!!」

兵士は右胸に左手を当て、深々とお辞儀をした。



「行かなくていいの?」
「うん、いいの〜いいの〜だって、お前達の護衛もあるし〜」

春奈は大体五個目だろうか、フュームをほおばった。

「ごめん、少し疲れたんで部屋に戻ってます…」

冬花は顔を俯かせながら食堂を出て行った。少し辛そうな表情をしていた。


「……俺、納得行かねぇよ……いくら世界が違うからって、簡単に人を殺すなんて…」

円堂が拳を強く握りしめた。

「しょうがないでしょ、ここはお前たちの常識ってものは効かないの。冬花も苦しいけど、これがこの世界なの、じゃなきゃ生きていけない」
「……」
「本当にお前たちは幸せだね、平和な世界に生まれて」

言い終わると、最後の一口を口に中へ放り込んだ。もう、テーブルの上にはフュームはない。もの足りなさそうに、さっきまで、フュームをつかんでいた右手を握ったり開いたりさせた。

「…お前はこれでいいのか?」
「そんなのわかりゃしないよ、だって生まれてからこんな状態なんだもん、本当の平和なんて感じたこともないし、見たこともない。あったとしても、私はそんなの望んだりはしない。望んだところで、何になるっていうの?」
「…」

春奈の問いかけに、円堂も周りのみんなも黙り込んだ。円堂はいまだに悔しそうに唇をかんでいる。

「まっ、そういうことだからお前たちに護衛がついたんだし、元の世界に戻るまで死なせたりはしないよ。任務失敗したら、今度こそ本当にヒロトに首跳ばされちゃうし〜」
「あの…」

冬花が遠慮がちに言うと、皆の目線が自然に彼女に集まった。

「少し心配だから、もう一人の私のところに行ってていいかな?」
「場所、わかる?」
「昨日、見たから」
「だったら行けば?もし、なんかあったら叫べば行くから」
「はい」

冬花はスタスタと歩いて行った。

「う〜ん、この後どうする?食事も終わったし、外は今でない方がいいと思うけど」
「…ここにいる」
「ふ〜ん、別にいいけど」

春奈が眠そうに小さく欠伸をした直後、彼女の脳裏に声が響いた。

Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜魔法募集終了!〜 ( No.404 )
日時: 2011/06/21 19:30
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
参照: そろそろ、パソコン禁止令が下される……

《春奈、聞こえる?》
「うん?夏未?」
「何も聞こえないぞ?」

円堂や音無たちが周りをキョロキョロ見渡すが、夏未はいない。

「通信用の魔法、相手の場所を特定できないと通信はできないけど…」
《無駄話はいいの、今敵が増えてる気がする、モニーターで確認してくれる?》
「は〜い」

すると、天井から大きな画面が下りてきた。モニーターに映像が映し出される。そこには蟻のように小さな人々がうやうやといる。

「ありゃ〜これは300以上いってるよ〜」
《ふぅ、こっちじゃ、上空から確認したいけど、危険だからな〜》
「うん、じゃあ、適当にがんばれ〜」
《余裕そうね…それともう一つなんだけど、モニーターに私たちを映してくれない?》
「いいけど〜何がしたいの〜?」
《春奈から見えるようにした方が、まだ安全かもしれないし…》
「はいは〜い」

次にモニーターの画面に夏未や守たちが映し出された。

「映したよ〜」
《ご苦労さん、通信は切らないでおくから、やばそうなとき話しかけて、絶対よ》
「了解〜夏未姉さん」

またふざけてるな、と心の中で愚痴をこぼしつつ、鞘から竜のマークが削られている大太刀を抜き取った。





一番最初に敵軍に突っ走ったのは守だ。剣に黄色と青がまじりあった雷を纏い、攻撃に備えて構える。

「国を荒らすんだったら、テメェ等の首はここで切り落とす!!」
「打て!!相手はレベル九の雷の剣士だ!!見くびるな!」

敵軍の隊長らしき人物が、左手を掲げて、部下に命令を下した。兵士たちはすぐに対応し、大砲の口を守に向ける。


「あいつ、そのまま突っ込む気かよ!」

モニーターで映像を見ていた綱海が声を上げた。円堂たちもかたずをのんで、画面を睨みつけている。

「大丈夫よ、大砲程度なら死にはしない。むしろ攻撃を受けても傷一つつかないよ」



「あの野郎…一人で目立ちやがって」
「修也は左の方、私は右に行く」

「お前らごとき、技を使うまでもねぇ!!俺の雷で塵になれ!!」

次々に大砲の弾が打ち出されるか、球は守をかすることはおろか、当たることさえもできない。

「失せろ!」

剣を振り上げると、雷が一気に地面を駆け、相手側の兵士たちに直撃する。当たると同時に、一人また一人と勢いよく倒れていく。

「俺たちもやるぞ」

晴矢が言うと、風介やリュウジたちが自分の武器を構えた。


悲鳴をあげる者もいれば、逃げ出そうともする者もいた。しかし、逃げ出すものは彼らの魔の手からは決して逃れることはできない。これがこの世界の裏の掟だ、自分に刃向うやつがいれば、倒していく、それが仲間であっても。でなければ兵士として生きていくことは不可能だ。その映像を、円堂たちは直視することができなかった。春奈は当たり前のように見守っている。

「クッ…」
「ハァ…見たくないなら、部屋に戻れば?」
「…」

円堂はそのまま何も答えず、ただ白い床を見つめていた。


大群はもう十分の一程度しか残っていなかった。それに敵軍は皆怯えていて、もう戦う必要はなさそうだ、と判断した夏未は、いまだにまだ戦おうとしている守と修也に、下がるように命令した。一度は反抗されたものの、睨むと彼らは素直に引き下がった。

「アンタたちの目的が知りたい、城に来てもらうよ?大人しくすれば、手荒な真似はしないと約束するわ」

兵士たちはガクガクと震える体を支えながら、何度もうなずいた。
足元には一人の青年の兵士が仰向け倒れている。

(あれ?こいつ等死んでない?)

夏未はその場にしゃがみ込み、守たちに斬られ、倒れている兵士たちの脈を確認する。まだほんのわずかだが、生きている鼓動が感じられる。斬られた傷跡を見れば、ギリギリ致命傷を避けているのがわかった。

(さっきの円堂くんの言葉に動かされたのかな?)

夏未が小さくクスッと笑った。

「何がおかしんだ?」

守が聞くと、夏未は首を横に振る。

「ううん、なんでもない。この倒れてる人たちも運ぶよ」
「結構、弱かったね〜」
「これでも一応刺客だろ?なのに弱すぎないか?」

晴矢が夏未に聞くが、彼女はどうせ終わったからいいよ、と軽く受け流した。どうせ、後でこいつらに尋問すれば全部吐いてくれるだろう。





「あら?まだ終わっていませんことよ?」

一人のお嬢様口調の澄んだ少女の声が響いた。声の方に視線を向けると、木の後ろに人のシルエットが現れる。